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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135474
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 23/00 20060101AFI20230921BHJP
   H05B 11/00 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
F25D23/00 302Z
H05B11/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040712
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】河杉 翔伍
(72)【発明者】
【氏名】森 貴代志
(72)【発明者】
【氏名】新帯 亮平
(72)【発明者】
【氏名】米野 範幸
【テーマコード(参考)】
3K086
3L345
【Fターム(参考)】
3K086AA10
3K086BA09
3K086BB02
3K086CB04
3K086CC02
3K086CD12
3L345AA02
3L345AA24
3L345BB02
3L345CC01
3L345EE03
3L345EE33
3L345EE53
3L345FF13
3L345FF14
3L345FF35
3L345FF41
3L345FF49
3L345FF50
3L345GG26
(57)【要約】
【課題】保存物を安定して過冷却状態とすることのできる冷蔵庫を提供する。
【解決手段】
本開示の冷蔵庫は、保存物を収納可能で冷却可能な貯蔵空間を有する少なくとも1つの貯蔵室と、貯蔵空間と保存物とを冷却する冷却部と、貯蔵空間に設けられた発振電極と、発振電極に対向し、貯蔵空間に設けられた対向電極と、発振電極と対向電極との間に印加する高周波電界を形成して保存物に高周波を照射する高周波電界形成部と、冷却部と、高周波電界形成部と、を制御する制御部と、を備え、制御部は、保存物を冷却しつつ保存物に高周波を照射して、保存物が過冷却状態となった後に、保存物の冷却を継続しつつ保存物への高周波の照射を停止して、保存物の相変化を進行させる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保存物を収納可能で冷却可能な貯蔵空間を有する少なくとも1つの貯蔵室と、
前記貯蔵空間と前記保存物とを冷却する冷却部と、
前記貯蔵空間に設けられた発振電極と、
前記発振電極に対向し、前記貯蔵空間に設けられた対向電極と、
前記発振電極と前記対向電極との間に印加する高周波電界を形成して前記保存物に高周波を照射する高周波電界形成部と、
前記冷却部と、前記高周波電界形成部と、を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記保存物を冷却しつつ前記保存物に高周波を照射して、
前記保存物が過冷却状態となった後に、前記保存物の冷却を継続しつつ前記保存物への高周波の照射を停止して、前記保存物の相変化を進行させる、
冷蔵庫。
【請求項2】
さらに、前記保存物の温度を検出する温度検出部、を備え、
前記制御部は、前記温度検出部により検出された前記保存物の温度に基づいて、前記保存物への高周波の照射の停止を制御する、
請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記制御部は、前記保存物の温度が前記保存物の凍結点よりも低い所定の閾値以下であることに基づいて、前記保存物への高周波の照射を停止する、
請求項2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記制御部は、前記温度検出部により検出された前記保存物の温度に基づいて、前記保存物に照射する高周波の出力を変化させる、
請求項2または3に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記制御部は、前記温度検出部により検出された前記保存物の温度に基づいて、前記保存物への高周波の照射の開始を制御する、
請求項2から4のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記制御部は、前記保存物の温度が前記保存物の凍結点以下であることに基づいて、前記保存物への高周波の照射を開始する、
請求項5に記載の冷蔵庫。
【請求項7】
前記温度検出部は、前記保存物の温度を測定するサーミスタにより構成される、
請求項2から6のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項8】
前記温度検出部は、前記貯蔵空間の気温を検出する温度センサにより構成される、
請求項2から6のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項9】
前記温度検出部は、前記保存物の温度を測定するサーモパイルにより構成される、
請求項2から6のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項10】
さらに、前記保存物の相変化を検出する相変化検出部、を備え、
前記制御部は、前記相変化検出部の検出値に基づいて、前記保存物への高周波の照射を停止する、
請求項1から9のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項11】
前記相変化検出部は、前記発振電極から前記高周波電界形成部へ戻る反射波を検出する反射波検出センサにより構成され、
前記制御部は、前記発振電極から出力された高周波に対する反射波の割合を示す反射率に基づいて、前記保存物への高周波の照射を停止する、
請求項10に記載の冷蔵庫。
【請求項12】
前記制御部は、前記反射率を測定するために前記保存物に高周波を照射する第1照射モードと、前記第1照射モードよりも高い出力で前記保存物に高周波を照射する第2照射モードと、により前記高周波電界形成部を駆動する、
請求項11に記載の冷蔵庫。
【請求項13】
前記相変化検出部は、前記保存物の静電容量を検出する静電容量センサにより構成され、
前記制御部は、前記保存物の静電容量に基づいて、前記保存物への高周波の照射を停止する、
請求項10に記載の冷蔵庫。
【請求項14】
前記制御部は、第1冷却モードと、前記第1冷却モードよりも冷却能力の高い第2冷却モードと、により前記冷却部を駆動する、
請求項1から13のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項15】
前記制御部は、前記保存物を冷却しつつ前記保存物に高周波を照射する場合に、前記冷却部を前記第1冷却モードで駆動し、前記保存物の冷却を継続しつつ前記高周波の照射を停止する場合に、前記冷却部を前記第2冷却モードで駆動する、
請求項14に記載の冷蔵庫。
【請求項16】
前記冷却部は、前記貯蔵空間を冷却する冷却ファンを含み、
前記制御部は、前記第2冷却モードにおける前記冷却ファンの回転数を、前記第1冷却モードにおける前記冷却ファンの回転数よりも大きくする、
請求項14または15に記載の冷蔵庫。
【請求項17】
前記冷却部は、冷気を形成し、
前記制御部は、前記第2冷却モードにおける前記冷気の温度を、前記第1冷却モードにおける前記冷気の温度よりも低くする、
請求項14から16のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項18】
前記制御部は、前記高周波のデューティ比を変化させることにより、前記保存物に照射する高周波の出力を変化させる、
請求項4に記載の冷蔵庫。
【請求項19】
前記制御部は、前記高周波の出力電圧を変化させることにより、前記保存物に照射する高周波の出力を変化させる、
請求項4に記載の冷蔵庫。
【請求項20】
さらに、前記発振電極から前記高周波電界形成部へ戻る反射波を検出する反射波検出センサ、を備え、
前記制御部は、前記発振電極から前記高周波電界形成部へ戻る反射波を検出し、前記発振電極から出力された高周波に対する反射波の割合を示す反射率を調整することで、前記保存物に照射する高周波の出力を変化させる、
請求項4に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷凍機能を備えた冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な冷蔵庫は、冷凍室を備えており、食材および食品等の保存物を冷凍して、冷凍品として長期保存のために使用される。保存物を冷凍する際に、電界または磁場を印加することにより、氷結晶の生成を抑制して細胞破壊を抑制することが検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の冷凍装置は、閉空間内に、被冷凍物に交番電界を作用させる交番電界発生手段および/または磁場を作用させる磁場発生手段を備え、被冷凍物に交番電界および/または磁場を作用させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-214751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の冷凍装置では、保存物の細胞破壊を抑制する点で、未だ改善の余地がある。
【0006】
本開示は、保存物の細胞破壊を抑制することのできる冷蔵庫を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様にかかる冷蔵庫は、保存物を収納可能で冷却可能な貯蔵空間を有する少なくとも1つの貯蔵室と、貯蔵空間と保存物とを冷却する冷却部と、貯蔵空間に設けられた発振電極と、発振電極に対向し、貯蔵空間に設けられた対向電極と、発振電極と対向電極との間に印加する高周波電界を形成して保存物に高周波を照射する高周波電界形成部と、冷却部と、高周波電界形成部と、を制御する制御部と、を備え、制御部は、保存物を冷却しつつ保存物に高周波を照射して、保存物が過冷却状態となった後に、保存物の冷却を継続しつつ保存物への高周波の照射を停止して、保存物の相変化を進行させる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によると、保存物の細胞破壊を抑制することのできる冷蔵庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1にかかる冷蔵庫の縦断面を示す図
図2図1の冷蔵庫における冷凍/解凍室を示す縦断面図
図3図1の冷蔵庫に設けられた誘電加熱機構の構成を示すブロック図
図4】保存物を凍結する際の、保存物の表面および中心の温度と時間との関係を示すグラフ
図5】冷蔵庫における凍結処理を説明するためのフローチャート
図6図5の凍結処理における各要素の状態を示す波形図
図7】実施の形態2にかかる冷蔵庫における凍結処理を説明するためのフローチャート
図8図7の凍結処理における各要素の状態を示す波形図
図9】実施の形態2の変形例1にかかる冷蔵庫における凍結処理を説明するためのフローチャート
図10図9の凍結処理における各要素の状態を示す波形図
図11】実施の形態2の変形例2にかかる冷蔵庫における凍結処理の各要素の状態を示す波形図
図12】実施の形態2の変形例3にかかる冷蔵庫における凍結処理の各要素の状態を示す波形図
図13】実施の形態2の変形例4にかかる冷蔵庫における凍結処理の各要素の状態を示す波形図
図14】実施の形態3にかかる冷蔵庫における凍結処理を説明するためのフローチャート
図15図14の凍結処理における各要素の状態を示す波形図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本発明に至った経緯)
一般的な冷蔵庫の冷凍室で食材または食品などの保存物を凍結させる場合、保存物に冷気を当てることで保存物を凍結させる。この場合、保存物の表面から冷やされるため、保存物の表面の水分から凍結する。保存物の表面の水分が凍結して氷結晶が形成されると、保存物の中心部分の水分が毛細管現象により表面に移動する。このため、表面に氷結晶が発生し、保存物の中心付近が乾燥した状態となってしまう。このような保存物を解凍すると、表面で成長した氷結晶が保存物の細胞膜を破壊して、弾力性を失いパサパサとした食感となったり、保存物中のうまみ成分がドリップとして流出したりしてしまうことがある。
【0011】
そこで、保存物を冷凍する際に、保存物に交番電界を作用させることにより、氷結晶の発生を抑制することが検討されている。例えば、特許文献1には、被冷凍物に交番電界を作用させる冷凍装置が記載されている。
【0012】
しかし、特許文献1に記載の冷凍装置では、保存物に発生してしまった氷結晶を融解することは難しく、凍結すると保存物の細胞膜が破壊されてしまうという課題がある。本発明者(ら)は、保存物が凍結を開始する前に、保存物に高周波を照射することにより、氷結晶を融解しつつ保存物を過冷却状態とすることで、保存物の細胞破壊を抑制することができることを見出した。さらに、過冷却深度を深くすることにより、保存物の凍結時間を短くすることができるため、細胞破壊の抑制効果が高いことを見出した。
【0013】
ここで、保存物の凍結点と、保存物が過冷却状態となって到達した温度との温度差を過冷却深度と称する。なお、凍結点は、保存物に含まれる水が凍り始める温度を示す。保存物の過冷却深度を深くするほど、保存物の凍結時間を短くすることができるため、保存物を解凍したときの細胞破壊の抑制効果が大きくなる。したがって、過冷却深度を深くするよう、保存物に高周波を作用させることが好ましい。
【0014】
本発明者(ら)は、氷結晶を融解しつつ保存物を冷却することで、保存物を安定して過冷却状態にする冷蔵庫について検討し、以下の発明に至った。
【0015】
本開示の第1態様にかかる冷蔵庫は、保存物を収納可能で冷却可能な貯蔵空間を有する少なくとも1つの貯蔵室と、貯蔵空間と保存物とを冷却する冷却部と、貯蔵空間に設けられた発振電極と、発振電極に対向し、貯蔵空間に設けられた対向電極と、発振電極と対向電極との間に印加する高周波電界を形成して保存物に高周波を照射する高周波電界形成部と、記冷却部と、高周波電界形成部と、を制御する制御部と、を備え、制御部は、保存物を冷却しつつ保存物に高周波を照射して、保存物が過冷却状態となった後に、保存物の冷却を継続しつつ保存物への高周波の照射を停止して、保存物の相変化を進行させる。
【0016】
このような構成により、保存物の細胞破壊を抑制することのできる冷蔵庫を提供することができる。
【0017】
本開示の第2態様にかかる冷蔵庫は、さらに、保存物の温度を検出する温度検出部、を備え、制御部は、温度検出部により検出された保存物の温度に基づいて、保存物への高周波の照射の停止を制御してもよい。
【0018】
このような構成により、所望の過冷却深度を達成するよう高周波を照射することができ、保存物の細胞破壊の抑制効果を向上させることができる。
【0019】
本開示の第3態様にかかる冷蔵庫において、制御部は、保存物の温度が保存物の凍結点よりも低い所定の閾値以下であることに基づいて、保存物への高周波の照射を停止してもよい。
【0020】
このような構成により、所望の過冷却深度を達成することができ、保存物の細胞破壊を抑制することができる。
【0021】
本開示の第4態様にかかる冷蔵庫において、制御部は、温度検出部により検出された保存物の温度に基づいて、保存物に照射する高周波の出力を変化させてもよい。
【0022】
このような構成により、保存物の温度に応じて、照射する高周波の出力の大きさを変えることができ、より早く所望の過冷却深度に到達させることができる。このため、凍結完了までの時間を短縮して、保存物の細胞破壊を抑制することができる。
【0023】
本開示の第5態様にかかる冷蔵庫において、制御部は、温度検出部により検出された保存物の温度に基づいて、保存物への高周波の照射の開始および停止を制御してもよい。
【0024】
このような構成により、保存物が過冷却状態となってから高周波の照射を開始して冷却時間を短縮することができるため、冷蔵庫の省電力化に寄与する。また、保存物が過冷却状態に入りやすいタイミングを検知することができ、保存物を安定して過冷却状態とすることができる。
【0025】
本開示の第6態様にかかる冷蔵庫において、制御部は、保存物の温度が保存物の凍結点以下であることに基づいて、保存物への高周波の照射を開始してもよい。
【0026】
このような構成により、保存物が過冷却状態となってから高周波を照射することができるため、冷却時間を短縮することができ、省電力化に寄与する。
【0027】
本開示の第7態様にかかる冷蔵庫において、温度検出部は、保存物の温度を測定するサーミスタにより構成されてもよい。
【0028】
このような構成により、保存物が過冷却状態となる前後の温度をばらつきを小さくしつつ検出することができるため、保存物を安定して過冷却状態とすることができる。
【0029】
本開示の第8態様にかかる冷蔵庫において、温度検出部は、貯蔵空間の気温を検出する温度センサにより構成されてもよい。
【0030】
このような構成により、ハードウェアを追加することなく保存物の温度変化を算出することができるため、冷蔵庫の製造コストを低減することができる。
【0031】
本開示の第9態様にかかる冷蔵庫において、温度検出部は、保存物の温度を測定するサーモパイルにより構成されてもよい。
【0032】
このような構成により、保存物が過冷却状態となる前後の温度をばらつきを小さくしつつ検出することができるため、保存物を安定して過冷却状態とすることができる。また、サーモパイルは、非接触で温度を検出することができるため、衛生的である。
【0033】
本開示の第10態様にかかる冷蔵庫は、さらに、保存物の相変化を検出する相変化検出部、を備え、制御部は、相変化検出部の検出値に基づいて、保存物への高周波の照射を停止してもよい。
【0034】
このような構成により、保存物の凍結が開始したことに基づいて、高周波の照射を停止することができる。
【0035】
本開示の第11態様にかかる冷蔵庫において、相変化検出部は、発振電極から高周波電界形成部へ戻る反射波を検出する反射波検出センサにより構成され、制御部は、発振電極から出力された高周波に対する反射波の割合を示す反射率に基づいて、保存物への高周波の照射を停止してもよい。
【0036】
このような構成により、容易に保存物の相変化を検出することができる。
【0037】
本開示の第12態様にかかる冷蔵庫において、制御部は、反射率を測定するために保存物に高周波を照射する第1照射モードと、第1照射モードよりも高い出力で前記保存物に高周波を照射する第2照射モードと、により高周波電界形成部を駆動してもよい。
【0038】
このような構成により、保存物の凍結状態を検出する場合には高周波の出力を下げて、保存物を過冷却状態にする場合には氷結晶の融解を促すために高周波の出力を上げることができる。
【0039】
本開示の第13態様にかかる冷蔵庫において、相変化検出部は、保存物の静電容量を検出する静電容量センサにより構成され、制御部は、保存物の静電容量に基づいて、保存物への高周波の照射を停止してもよい。
【0040】
このような構成により、保存物の相変化の検出精度を向上させることができる。このため、保存物の過冷却状態が解除されたことを検出して高周波の照射を停止することができ、保存物の冷凍品質を向上させることができる。
【0041】
本開示の第14態様にかかる冷蔵庫において、制御部は、第1冷却モードと、第1冷却モードよりも冷却能力の高い第2冷却モードと、により冷却部を駆動してもよい。
【0042】
このような構成により、冷却能力の異なる2つの冷却モードにより冷却部を駆動することができるため、冷却スピードを向上させることができる。
【0043】
本開示の第15態様にかかる冷蔵庫において、制御部は、保存物を冷却しつつ保存物に高周波を照射する場合に、冷却部を前記第1冷却モードで駆動し、保存物の冷却を継続しつつ高周波の照射を停止する場合に、冷却部を前記第2冷却モードで駆動してもよい。
【0044】
このような構成により、保存物を過冷却状態とする場合には、第1冷却モードを使用し、過冷却状態を解除して保存物を凍結させる場合には、冷却能力の高い第2冷却モードを使用することができ、冷却スピードを向上させて細胞破壊を抑制しつつ保存物を冷凍することができる。
【0045】
本開示の第16態様にかかる冷蔵庫において、冷却部は、貯蔵空間を冷却する冷却ファンを含み、制御部は、第2冷却モードにおける冷却ファンの回転数を、第1冷却モードにおける冷却ファンの回転数よりも大きくしてもよい。
【0046】
このような構成により、簡易な構成で2つの冷凍モードを実現することができる。
【0047】
本開示の第17態様にかかる冷蔵庫において、冷却部は、冷気を形成し、制御部は、第2冷却モードにおける冷気の温度を、第1冷却モードにおける冷気の温度よりも低くしてもよい。
【0048】
このような構成により、簡易な構成で2つの冷凍モードを実現することができる。
【0049】
本開示の第18態様にかかる冷蔵庫において、制御部は、高周波のデューティ比を変化させることにより、保存物に照射する高周波の出力を変化させてもよい。
【0050】
このような構成により、簡素な構成で高周波の出力を変化させることができ、製造コストを低減することができる。
【0051】
本開示の第19態様にかかる冷蔵庫において、制御部は、高周波の出力電圧を変化させることにより、保存物に照射する高周波の出力を変化させてもよい。
【0052】
このような構成により、簡素な構成で高周波の出力を変化させることができ、製造コストを低減することができる。
【0053】
本開示の第20態様にかかる冷蔵庫は、さらに、発振電極から高周波電界形成部へ戻る反射波を検出する反射波検出センサ、を備え、制御部は、発振電極から高周波電界形成部へ戻る反射波を検出し、発振電極から出力された高周波に対する反射波の割合を示す反射率を調整することで、保存物に照射する高周波の出力を変化させてもよい。
【0054】
このような構成により、簡素な構成で高周波の出力を変化させることができ、製造コストを低減することができる。
【0055】
以下、本発明の冷蔵庫にかかる実施の形態として、冷凍機能を備えた冷蔵庫について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、本発明の冷蔵庫は、以下の実施の形態において説明する冷蔵庫の構成に限定されるものではなく、冷凍機能のみを有する冷凍庫においても適用可能であり、以下の実施の形態において説明する技術的特徴を有する各種冷蔵庫および冷凍庫を含むものである。したがって、本発明において、冷蔵庫とは、冷蔵室、および/または冷凍室を備える構成である。
【0056】
また、以下の実施の形態において示す数値、形状、構成、ステップ、およびステップの順序などは、一例を示すものであり、本発明を限定するものではない。以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。なお、実施の形態においては、変形例においても同じ要素には同じ符号を付して、説明を省略する場合がある。また、図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示している。
【0057】
(実施の形態1)
[全体構成]
本発明の冷蔵庫にかかる実施の形態1について、図面を参照しながら説明する。図1は、実施の形態1にかかる冷蔵庫10の縦断面を示す図である。図1において、左側が冷蔵庫10の正面側であり、右側が冷蔵庫10の背面側である。冷蔵庫10は、主に鋼板により形成された外箱1と、ABSなどの樹脂で成形された内箱2と、外箱1と内箱2との間の空間に充填発泡された断熱材(例えば、硬質発泡ウレタン)40とにより形成された断熱箱体で構成されている。
【0058】
冷蔵庫10の断熱箱体は複数の貯蔵室を備えており、それぞれの貯蔵室の正面側開口には開閉可能な扉が配設されている。それぞれの貯蔵室は扉の閉成により冷気が漏洩しないように密閉される。実施の形態1の冷蔵庫10においては、最上部の貯蔵室が冷蔵室3である。冷蔵室3の直下の両側には、製氷室4と冷凍/解凍室5の2つの貯蔵室が並設されている。さらに、製氷室4と冷凍/解凍室5の直下には冷凍室6が設けられており、冷凍室6の直下である最下部には野菜室7が設けられている。実施の形態1の冷蔵庫10における各貯蔵室は、上記の構成を有しているが、この構成は一例であり、各貯蔵室の配置構成は仕様などに応じて設計時に適宜変更可能である。
【0059】
冷蔵室3は、食品などの保存物を冷蔵保存するために凍らない温度、具体的な温度例としては1℃~5℃の温度帯で維持される。野菜室7は、冷蔵室3と同等もしくは若干高い温度帯、例えば2℃~7℃に維持される。冷凍室6は、冷凍保存のために冷凍温度帯、具体的な温度例としては、例えば-22℃~-15℃に設定される。冷凍/解凍室5は、通常は冷凍室6と同じ冷凍温度帯に維持され、ユーザの解凍指令に応じて、収納されている保存物(冷凍品)を解凍するための解凍処理が行われる。冷凍/解凍室5の構成、および解凍処理に関する詳細については後述する。
【0060】
冷蔵庫10の上部には、機械室8が設けられている。機械室8には、圧縮機9および冷凍サイクル中の水分除去を行うドライヤ等の冷凍サイクルを構成する部品などが収容されている。なお、機械室8の配設位置としては冷蔵庫10の上部に限定されるものではなく、冷凍サイクルの配設位置などに応じて適宜決定されるものであり、冷蔵庫10の下部などの他の領域に配設してもよい。
【0061】
冷蔵庫10の下側領域にある冷凍室6と野菜室7の背面側には、冷却室11が設けられている。冷却室11には、冷気を生成する冷凍サイクルの構成部品である冷却器12、および冷却器12が生成した冷気を各貯蔵室(3、4、5、6、7)に送風する冷却ファン13が設けられている。冷却器12が生成した冷気は、冷却ファン13により各貯蔵室に繋がる風路18を流れて、各貯蔵室に供給される。それぞれの貯蔵室に繋がる風路18にはダンパー19が設けられており、圧縮機9と冷却ファン13の回転数制御とダンパー19の開閉制御により、それぞれの貯蔵室が所定の温度帯に維持される。冷却室11の下部には、冷却器12やその周辺に付着する霜や氷を除霜するための除霜ヒータ14が設けられている。除霜ヒータ14の下部には、ドレンパン15、ドレンチューブ16、蒸発皿17が設けられており、除霜時などに生じる水分を蒸発させる構成を有する。なお、冷却室11が本開示の「冷却部」に相当する。
【0062】
実施の形態1の冷蔵庫10には操作部47(後述の図3参照)が備えられている。ユーザが操作部47において冷蔵庫10に対する各種の指令(例えば、各貯蔵室の温度設定、急冷指令、解凍指令、製氷停止指令など)を行うことができる。また、操作部47には異常の発生などを報知する表示部を有している。なお、冷蔵庫10においては、無線通信部を備えて無線LANネットワークに接続して、ユーザの外部端末から各種指令を入力する構成としてもよい。また、冷蔵庫10においては音声認識部を備えて、ユーザが音声による指令を入力する構成としてもよい。
【0063】
図2は、図1の冷蔵庫10における冷凍/解凍室5を示す縦断面図である。冷凍/解凍室5は、冷凍/解凍室5内に収納された食品等の保存物を冷凍温度帯で保持する冷凍庫であるとともに、冷蔵庫10において当該保存物に対する解凍指令が入力されたときには、誘電加熱により解凍処理を行う解凍室となる。
【0064】
冷凍/解凍室5においては、冷凍室6と同じ冷凍温度帯に維持できるように、冷却器12において生成された冷気が、冷凍/解凍室5の背面側および天面側に設けられた風路18を流れ、冷凍/解凍室5の天面に設けられた複数の冷気導入孔20から冷凍/解凍室5に導入される。冷却室11から冷凍/解凍室5に通じる風路18にはダンパー19が設けられており、ダンパー19の開閉制御により冷凍/解凍室5が所定の冷凍温度帯に維持され、収容された保存物が冷凍保存される。
【0065】
冷凍/解凍室5の背面には、冷気排気孔21が形成されている。冷凍/解凍室5に導入されて冷凍/解凍室5の内部を冷却した冷気は、冷気排気孔21から戻り風路34を通って冷却室11に戻り、冷却器12により再冷却される。即ち、実施の形態1の冷蔵庫10においては、冷却器12により形成された冷気が循環される構成である。
【0066】
冷凍/解凍室5において貯蔵空間の内面を構成する天面、背面、両側面、および底面は、電気絶縁性の材料で成形された樹脂材の内面部材32で形成されている。また、冷凍/解凍室5の正面側開口には扉29が設けられており、扉29の閉成により冷凍/解凍室5の貯蔵空間が密閉される。実施の形態1の冷凍/解凍室5には、上部が開放した収納ケース31が扉29の背面側に設けられており、扉29の前後方向への開閉動作により収納ケース31が同時に前後に移動する構成である。扉29の前方向への開動作により、収納ケース31に対する食品などの保存物の投入、および取り出しを容易なものとしている。
【0067】
次に、冷凍/解凍室5に冷凍保存されている保存物に対して、冷凍処理および解凍処理を行うために誘電加熱を行う誘電加熱機構について説明する。
【0068】
図3は、図1の冷蔵庫10に設けられた誘電加熱機構の構成を示すブロック図である。実施の形態1における誘電加熱機構は、電源部48からの電力が入力されて所定の高周波信号を形成する発振回路22、整合回路23、発振電極24、対向電極25、および制御部50を備えている。半導体素子を用いて構成された発振回路22は、小型化されており、冷蔵庫10の機械室8に設けられている。発振回路22は、同軸ケーブルにより整合回路23に電気的に接続されている。整合回路23は、冷凍/解凍室5の背面側の空間である電極保持領域30(図2参照)に配設されている。発振回路22および整合回路23は、発振電極24と対向電極25との電極間に印加する高周波電界を形成するための高周波電界形成部となる。
【0069】
発振電極24は、冷凍/解凍室5の天面側に配設された平面電極である。対向電極25は、冷凍/解凍室5の底面側に配設された平面電極である。発振電極24と対向電極25は、冷凍/解凍室5の貯蔵空間を介して対向して配設されており、対向間隔が予め設定された所定の間隔に設定されている。この結果、実施の形態1における誘電加熱機構においては、発振電極24と対向電極25とが略平行に配設される。なお、本発明において、「略平行」とは、本質的に平行の状態を示すものであるが、加工精度などのばらつきに起因する誤差を含むことを示している。
【0070】
発振電極24は貯蔵空間の一方に設けられ、対向電極25は貯蔵空間を挟んで貯蔵空間の他方に設けられている。誘電加熱機構を構成する背面側の整合回路23、天面側の発振電極24、および底面側の対向電極25は、内面部材32により覆われており、保存物の接触による焼けを確実に防止することができる。
【0071】
なお、実施の形態1の構成においては、冷凍/解凍室5の貯蔵空間を構成する天面部に発振電極24を設け、冷凍/解凍室5の貯蔵空間の底面部に対向電極25を設けた構成で説明するが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、発振電極24と対向電極25が貯蔵空間を介して対向する構成であればよく、上下逆の配置や、左右方向に対向する配置でも同様の効果を奏する。
【0072】
図2に示したように、冷凍/解凍室5においては、冷却器12からの冷気が風路18を通って冷凍/解凍室5の天面側から導入される構成を有している。冷凍/解凍室5の天面側において、風路18の下面には発振電極24が配設されており、冷却室11からの冷気が発振電極24上を流れる構成である。実施の形態1の冷蔵庫10は、外箱1と内箱2とその間に充填発泡された断熱材40とにより断熱箱体が形成されており、この断熱箱体において貯蔵室が形成される空間は寸法精度が高いものではない。冷凍/解凍室5が形成される空間においては、天面側に風路18となる領域が形成されるため、この風路18となる領域が断熱箱体における寸法のバラツキを吸収できる空間となる。
【0073】
発振回路22は、高周波の電圧を出力する。発振回路22が高周波電圧を出力することにより、発振回路22が接続された発振電極24と対向電極25との間に電界が形成され、冷凍/解凍室5の発振電極24と対向電極25との間の貯蔵空間に配置された誘電体である保存物が誘電加熱される。
【0074】
整合回路23は、発振電極24と対向電極25と冷凍/解凍室5に収容された保存物とによって形成される負荷インピーダンスが、発振回路22の出力インピーダンスと整合するように調節するものである。整合回路23は、インピーダンスを整合させることにより、出力した電磁波に対する反射波を最小化している。実施の形態1における誘電加熱機構には、発振電極24から発振回路22の方へ戻る反射波を検出する反射波検出部51が設けられている。したがって、発振回路22は反射波検出部51および整合回路23を介して発振電極24に電気的に接続されている。制御部50は、整合回路23においてインピーダンス整合されて発振回路22から出力される電磁波と、反射波検出部51が検出した反射波とに基づいて、電磁波出力に対する反射波出力の割合(反射率)を算出し、その算出結果に基づいて後述するように各種制御を行っている。また、実施の形態1における誘電加熱機構には、食品などの保存物の静電容量を検出する静電容量センサ33が設けられている。反射波検出部51または静電容量センサ33は、保存物の相変化を検出することができ、本開示の「相変化検出部」に相当する。
【0075】
図3のブロック図に示すように、誘電加熱機構においては、制御部50が、ユーザによる設定操作を行う操作部47や庫内温度を検出する温度センサ49などの信号に基づいて、発振回路22および整合回路23を駆動制御している。制御部50はCPUで構成されており、ROM等のメモリに格納された制御プログラムが実行されて各種制御を行っている。
【0076】
なお、発振回路22と整合回路23と発振電極24とを接続する正極側の配線の長さとしては、短いことが望ましいため、発振回路22と整合回路23の高周波電界形成部を冷凍/解凍室5の背面側の電極保持領域30に配設する構成としてもよい。
【0077】
温度センサ(温度検出部)49は、保存物の表面温度および中心温度を測定することのできるセンサである。温度センサ49としては、例えば、サーミスタまたはサーモパイルを採用することができる。例えば、サーミスタまたはサーモパイルは、電場が発生しない場所に設けられる。また、温度センサ49は、冷凍/解凍室5の庫内の気温を測定することのできる温度計であってもよい。
【0078】
[冷凍/解凍室の凍結処理]
実施の形態1の冷蔵庫10においては、操作部47からのユーザの指令に基づいて冷凍/解凍室5内の庫内に新たに投入された非凍結食品に対して凍結処理を行うことが可能である。実施の形態1では、保存物が凍結を開始する前に高周波を照射することにより、保存物中の水分により発生する氷結晶を融解させて、保存物を過冷却状態にする。過冷却状態とは、保存物が凍結温度以下まで冷却されても保存物の相変化が起こらない状態、すなわち、凍結点以下であっても保存物が凝固していない状態を示す。保存物を過冷却状態とすることにより、保存物の相変化の開始、すなわち凍結開始から、保存物の相変化の完了、すなわち保存物が完全に凍結するまでの時間を短くすることができる。
【0079】
図4は、保存物を凍結する際の、保存物の表面および中心の温度と時間との関係を示すグラフである。冷凍/解凍室5の保存物は、冷却されるとともに、高周波電界形成部により高周波を照射される。保存物が冷却されると、保存物中の水分が氷結晶となり保存物が凍結されているが、高周波を照射することにより氷結晶は融解する。このため、保存物が凍結しはじめる温度である凍結点を下回っても、保存物の相変化が進行しない。この状態が過冷却状態であり、図4の時間t1からt2に示される。過冷却状態では、保存物の相変化が進行しないため、保存物の表面温度および中心温度はともに下降し続ける。
【0080】
実施の形態1では、例えば、高周波の照射を停止することにより、氷結晶が急速に成長するため過冷却状態が解除される。過冷却状態が解除されると、凝固熱によって保存物の温度は凍結点付近まで急上昇し(図4の時間t2)、保存物は凍結を開始する。保存物が凍結を開始するとは、保存物中の水分が液相から固相への相変化を開始することを意味する。図4に示すように、保存物に高周波を照射しながら冷却することで、保存物の表面と中心とで、同程度の過冷却深度とすることができる。
【0081】
保存物の凍結が開始されると、保存物の温度は緩やかに下降する。保存物を過冷却状態にしてから凍結させることで、凍結完了までの時間(図4の時間t2から時間t3、および時間t2から時間t4)を短くすることができる。凍結完了までの時間を短くすることにより、液相と固相との2つの相に分かれる時間が短くなり、水の移動を抑制して細胞破壊を低減することができる。なお、一般的に、保存物の凍結は表面から進行するため、図4に示すように、凍結完了までの時間は中心よりも表面の方が短くなっている。凍結が完了すると、保存物の温度は冷凍/解凍室5の設定温度まで下降する。
【0082】
図5は、冷蔵庫10における凍結処理を説明するためのフローチャートである。図6は、図5の凍結処理における各要素の状態を示す波形図である。図5および図6を参照して、冷蔵庫10における凍結処理について説明する。図5のフローチャートに示す各ステップは、制御部50のCPUがROM等のメモリに格納された制御プログラムを実行することによって行われる。
【0083】
まず、冷凍/解凍室5に保存物があるか否かを判定する(ステップS11)。冷凍/解凍室5における保存物の有無は、反射波検出部51により検出される反射率または静電容量センサ33により検出される保存物の静電容量に基づいて判定される。
【0084】
冷凍/解凍室5に保存物が投入されると、図6に示すように、時間t11で反射率または静電容量の値がR1からR2に変化する。なお、反射率と静電容量とは、保存物の相変化に対して同様の傾向を示すため、以後、反射率を用いて説明する。制御部50は、反射率の変化に基づいて冷凍/解凍室5に保存物が投入されたと判定する(ステップS11のYes)。制御部50が、冷凍/解凍室5に保存物が存在しないと判定する場合(ステップS11のNo)、ステップS11を繰り返す。冷凍/解凍室5に保存物が投入された判定したときから、または投入される前から、冷凍/解凍室5には冷却器12からの冷気が導入されており、以後説明する各ステップを実行する間、冷凍/解凍室5は常に冷却されている。
【0085】
次に、保存物が凍結開始前であるか否かを判定する(ステップS12)。保存物が凍結開始前であるか否かは、反射率または静電容量に基づいて判定される。保存物の反射率は、保存物が液相であるか固相であるかにより異なる。図6の例では、保存物が凍結前(液相状態)である場合に反射率R2が検出され、保存物が凍結後(固相状態)であると反射率R3が検出される。保存物が凍結している間、すなわち液相と固相が混在している間は、反射率R2から徐々に反射率が低下し、保存物が完全に凍結すると反射率R3を示す。
【0086】
制御部50は、検出された反射率に基づいて保存物が凍結開始前であるか否かを判定する。具体的には、反射波検出部51により反射率R2が検出されたときに保存物が凍結開始前であると判定し、反射波検出部51により反射率R2より小さい値が検出された場合は凍結開始後であると判定する。
【0087】
保存物が凍結開始前である場合(ステップS12のYes)、制御部50は高周波の照射を開始する(ステップS13)。ステップS13では、制御部50は、保存物を冷却しつつ、保存物に高周波を照射して、保存物を過冷却状態にする。保存物が凍結開始後である場合(ステップS12のNo)、処理を終了する。保存物の凍結が開始されている場合、高周波を照射せずに冷却のみで保存物を凍結させる。図6に示す例では、時間t12で高周波の照射が開始されている。
【0088】
高周波の照射を開始すると、反射率は反射率R2を維持しつつ、保存物の温度は凍結点f1以下に低下し、保存物は過冷却状態となる。保存物に高周波を照射すると、保存物中の水に対して与えられる高周波エネルギーよりも保存物中の氷に対して与えられる高周波エネルギーの方が大きくなる。照射する高周波としては、例えば、6MHz以上300MHz以下の周波数帯の高周波を採用することができる。
【0089】
保存物が凍結開始前である場合、保存物を冷却しつつ高周波を照射することで、氷結晶を高周波で融解しながら保存物の温度を下げることができる。一方、水に対して与えられる高周波エネルギーは氷に対するエネルギーより小さいため、高周波出力を調整することで、高周波により水が加熱されにくいため、保存物の温度を下げることができる。したがって、保存物の凍結開始前に高周波を照射することにより、保存物を安定して過冷却状態にすることができ、過冷却深度を深くすることができる。
【0090】
次に、保存物の温度が保存物の凍結点f1よりも低い所定の閾値f2以下であるか否かを判定する(ステップS14)。制御部50は、温度センサ49により検出された値に基づいて、保存物の温度が所定の閾値f2を下回っているか否かを判定する。保存物の温度が所定の閾値f2以下であることに基づいて(ステップS14のYes)、制御部50は保存物への高周波の照射を停止する(ステップS15)。すなわち、制御部50は、温度センサ49により検出された保存物の温度に基づいて、保存物への高周波の照射を停止する。
【0091】
保存物への高周波の照射は、保存物が過冷却状態となった後、すなわち、保存物が反射率R2を示す液相状態であり保存物の温度が凍結点未満に下がった後に停止される。ステップS15で、制御部50は、保存物の冷却を継続しつつ保存物への高周波の照射を停止して、保存物の相変化を進行させる。保存物の温度が所定の閾値以上である場合(ステップS14のNo)、ステップS14が繰り返される。すなわち、保存物の温度が所定の閾値f2を下回るまで、高周波の照射が続けられる。図6の例では、時間t13で保存物の温度が所定の閾値f2を下回り、高周波の照射が停止される。
【0092】
過冷却状態のまま保存物の温度が所定の閾値を下回ることで、所望の過冷却深度を達成することができたと判定することができる。所望の過冷却深度を達成することで、保存物の凍結開始から凍結完了までの時間を短縮することができ、細胞破壊を抑制することができる。
【0093】
図6に示すように、時間t13で高周波の照射が停止されると、保存物の温度は凍結点f1付近まで急上昇する。これは、高周波の照射を停止したことにより、保存物の過冷却状態が解除され、保存物中の水分が凝固しはじめて凝固熱によって温度が上昇したためである。過冷却状態が解除された保存物は凍結を開始し、徐々に温度が下がっていく。保存物の凍結が開始されると、保存物中に水と氷とが共存する状態となる。このため、保存物の温度は比較的緩やかに低下していく。また、保存物の凍結が開始されたことに伴い、保存物の反射率も反射率R2から徐々に低下する。
【0094】
その後、冷却を続けて保存物の凍結が完了すると、時間t14で保存物中の水分がすべて氷となり保存物の反射率が反射率R3で一定の値となる。
【0095】
[効果]
上述した実施の形態によると、保存物の細胞破壊を抑制することのできる冷蔵庫を提供することができる。
【0096】
冷凍/解凍室5に投入された保存物が凍結を開始する前に高周波を照射することで、保存物の氷結晶を融解しつつ保存物の温度を下げて、保存物を過冷却状態にすることができる。保存物を過冷却状態にすると、過冷却状態が解除された後、保存物の凍結が完了するまでの時間を短くすることができる。保存物の凍結が完了するまでの時間が短くなると、保存物の中心の水分が表面に移動して細胞破壊が起こるのを抑制することができる。
【0097】
また、保存物を冷却しつつ保存物に高周波を照射することで、氷結晶を融解しつつ過冷却深度を深くすることができる。過冷却深度を深くすることで、過冷却状態を解除するまでに保存物から奪った顕熱が大きくなるため、さらに凍結完了までの時間を短くすることができ、保存物の細胞破壊を抑制することができる。
【0098】
なお、上述した実施の形態では、保存物の反射率に基づいて保存物の相変化の開始および完了を検出する例について説明したが、これに限定されない。例えば、静電容量センサ33により検出された保存物の静電容量に基づいて、保存物の相変化の開始および終了を検出してもよい。
【0099】
また、上述した実施の形態では、反射率または静電容量に基づいて保存物が凍結開始前であるか否かを判定する例について説明したが、これに限定されない。例えば、温度センサ49により検出された温度に基づいて、保存物が凍結開始前であるか否かを判定してもよい。
【0100】
また、上述した実施の形態では、保存物の温度が所定の閾値以下となったことに基づいて高周波の照射を停止する例について説明したが、これに限定されない。例えば、保存物への高周波の照射を開始してから所定の時間が経過したことに基づいて、高周波の照射を停止してもよい。
【0101】
また、制御部50は、反射率を測定するために保存物に高周波を照射する第1照射モードと、第1照射モードよりも高い出力で保存物に高周波を照射する第2照射モードと、により高周波電界形成部を駆動してもよい。反射率を測定する場合には、比較的出力の低い第1照射モードとすることで、反射率を測定する場合に、保存物が温まることを防止することができる。その結果、凍結時間を短縮することができる。
【0102】
また、上述した実施の形態では、高周波電界形成部が、発振電極と対向電極との間に印加する高周波電界を形成して保存物に高周波を照射する例について説明したが、これに限定されない。例えば、アンテナ等が保存物に高周波を照射してもよい。
【0103】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2にかかる冷蔵庫について説明する。なお、実施の形態2では、主に実施の形態1と異なる点について説明する。実施の形態2においては、実施の形態1と同一または同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態2では、実施の形態1と重複する記載は省略する。
【0104】
図7は、実施の形態2にかかる冷蔵庫10における凍結処理を説明するためのフローチャートである。図8は、図7の凍結処理における各要素の状態を示す波形図である。実施の形態2では、制御部50が第1冷却モードおよび第2冷却モードにより冷却室11を駆動する点で、実施の形態1と異なる。
【0105】
図7を参照して、実施の形態2にかかる冷蔵庫10の凍結処理について説明する。図7のフローチャートにおいて、ステップS21、S23~S26は、図5のステップS11、S12~S15と同一の処理であるため説明を省略する。
【0106】
実施の形態2では、制御部50が第1冷却モードと第1冷却モードよりも冷却能力の高い第2冷却モードとにより冷却室11を駆動する。第2冷却モードでは、例えば、冷却ファン13の回転数を第1冷却モードにおける冷却ファン13の回転数よりも大きくすることにより、冷却能力を高くすることができる。または、第2冷却モードでは、例えば、冷却器12により生成される冷気の温度を第1冷却モードにおける冷気の温度よりも低くすることで、冷却能力を高くすることができる。または、第2冷却モードでは、例えば、圧縮機9の回転数を第1冷却モードにおける圧縮機9の回転数よりも大きくすることにより、冷却能力を高くすることができる。
【0107】
冷凍/解凍室5に保存物が投入されたことを検出すると(ステップS21のYes)、制御部50は、冷却室11を第1冷却モードで駆動する(ステップS22)。例えば、冷凍/解凍室5に保存物を投入した時点で、第2冷却モードである場合、または冷却動作が停止している場合には、制御部50が第1冷却モードで冷却室11を駆動する。冷凍/解凍室5に保存物を投入した時点ですでに第1冷却モードである場合には、制御部50は、第1冷却モードを継続する。図8の例では、冷凍/解凍室5に保存物が投入される前から、制御部50は第1冷却モードで冷却室11を駆動している。
【0108】
次に、保存物が凍結開始前であるか否かを判定する(ステップS23)。保存物が凍結開始前であるか否かの判定処理は、実施の形態1と同一である。保存物が凍結開始前でない場合(ステップS23のNo)、ステップS27に進み、制御部50は冷却室11を第2冷却モードで駆動する。保存物が凍結開始前でない場合とは、すなわち、保存物の凍結が始まっている状態である。保存物の凍結が開始されている場合には、高周波を照射せずに冷却能力の高い第2冷却モードに切り替えることで、保存物を凍結させる。保存物が凍結開始前である場合ステップS24~S26が実行される。ステップS24~S26の処理は実施の形態1のステップS13~S15と同一である。
【0109】
ステップS26で制御部50により高周波が停止されると、またはステップS23で制御部50により保存物が凍結開始前でないと判定されると、制御部50は、冷却室11を第2冷却モードで駆動する(ステップS27)。図8の例では、時間t23で冷却モードが第1冷却モードから第2冷却モードに切り替えられている。保存物の凍結が開始されたところで第1冷却モードよりも冷却能力の高い第2冷却モードに切り替えることで、保存物の凍結開始から凍結完了までの時間(時間t23から時間t24までの時間)を短くすることができる。このため、保存物の細胞破壊を抑制して冷凍することができる。実施の形態2では、制御部50は、保存物を冷却しつつ保存物に高周波を照射する場合に、冷却室11を第1冷却モードで駆動し、保存物の冷却を継続しつつ高周波の照射を停止する場合に、冷却室11を第2冷却モードで駆動する。
【0110】
冷却モードを第2冷却モードに切り替えた後、制御部50は、保存物の凍結が完了したか否かを判定する(ステップS28)。保存物の凍結が完了したか否かは、保存物の反射率に基づいて行うことができる。保存物の凍結が開始されると、保存物が凍結開始前であることを示す反射率R2から反射率が徐々に低下する。図8の例では、時間t23からt24までの間に、保存物の凍結が開始されて徐々に保存物の相変化が進行していることを示している。保存物中の水分がすべて氷になると、すなわち、保存物の相変化が完了すると(図8の時間t24)、反射率が反射率R3で一定になる。制御部50は、反射波検出部51により検出された反射率が、所定の値R3であることに基づいて保存物の凍結が完了したと判定する。
【0111】
制御部50が、保存物の凍結が完了したと判定すると(ステップS28のYes)、制御部50は冷却モードを第1冷却モードに切り替える(ステップS29)。保存物の凍結が完了した場合、保存物が凍結した状態を維持すればよいため、その時点での保存物の温度を維持できればよい。このため、第2冷却モードよりも冷却能力の低い第1冷却モードに切り替えることで、冷蔵庫10の省電力化に寄与する。制御部50が、保存物の凍結が完了していないと判定すると(ステップS28のNo)、ステップS28が繰り返される。すなわち、制御部50は、保存物の凍結が完了するまで、冷却室11を第2冷却モードで駆動し、保存物の凍結が完了すると、冷却室11を第1冷却モードで駆動する。
【0112】
[効果]
上述した実施の形態によると、保存物の凍結開始から凍結完了までの時間を短くすることができるため、保存物の細胞破壊を抑制することができる。
【0113】
[変形例]
図9は、実施の形態2の変形例1にかかる冷蔵庫10における凍結処理を説明するためのフローチャートである。図10は、図9の凍結処理における各要素の状態を示す波形図である。
【0114】
制御部50は、保存物が凍結開始前かつ保存物が過冷却状態である場合に、保存物への高周波の照射を開始してもよい。図9のステップS231において、制御部50は、保存物の反射率および温度に基づいて、保存物が凍結開始前かつ過冷却状態であるか否かを判定する。具体的には、図10に示すように、制御部50は、保存物の温度が凍結点f1を下回り、かつ、反射率が反射率R2である場合に、保存物に高周波を照射する。図10の例では、時間t32から高周波が照射されている。
【0115】
保存物が過冷却状態となってから高周波の照射を開始することで、より速く所望の過冷却深度に到達させることができる。すなわち、冷凍/解凍室5に保存物が投入されてから所望の過冷却深度に到達するまでの時間を短くすることができる。図8の例では、冷凍/解凍室5に保存物が投入された時間t21から所望の過冷却深度に到達する時間t23までの時間は長さL1である。一方、図10のように、保存物が過冷却状態となってから高周波を照射すると、冷凍/解凍室5に保存物が投入された時間t31から所望の過冷却深度に到達する時間t33までの時間は長さL2となる。図8および図10からわかるように、過冷却深度に到達するまでの時間は、図8の長さL1よりも図10の長さL2の方が短い。これは、保存物が過冷却状態となってから高周波を照射することにより、所望の過冷却深度に到達するまでの時間を短縮することができるためである。このため、凍結完了までの時間(時間t31から時間t34までの時間)を短縮することができる。
【0116】
なお、変形例1において、制御部50は、高周波の照射を停止した後に第2冷却モードに切り替えず、第1冷却モードを維持してもよい。
【0117】
図11は、実施の形態2の変形例2にかかる冷蔵庫における凍結処理の各要素の状態を示す波形図である。制御部50は、温度センサ49により検出された保存物の温度に基づいて、保存物に照射する高周波の出力を変化させてもよい。
【0118】
図11の変形例2では、制御部50は、保存物の温度が所定の閾値f3に到達するまで(時間t42から時間t43まで)は、高周波の出力をHIGHとする。保存物の温度が所定の閾値f3を下回り所定の閾値f2に到達するまで(時間t43から時間t44まで)、制御部50は、高周波の出力をHIGHよりも小さいLOWにする。制御部50は、高周波の出力電圧を変化させることにより、保存物に照射する高周波の出力をHIGHおよびLOWに変化させることができる。
【0119】
保存物の温度が凍結点に近い場合には、高周波の出力を高くすることで、氷結晶を効率的に融解して、安定して過冷却状態とすることができる。
【0120】
なお、変形例2において、制御部50は、高周波の照射を停止した後に第2冷却モードに切り替えず、第1冷却モードを維持してもよい。
【0121】
また、変形例2では、制御部50が、高周波の出力電圧を変化させることにより、保存物に照射する高周波の出力を変化させる例について説明したが、これに限定されない。例えば、反射率を調整することで、保存物に照射する高周波の出力を変化させてもよい。
【0122】
また、変形例2では、保存物の温度に基づいて、高周波のデューティ比を変化させることにより、保存物に照射する高周波の出力を変化させてもよい。より具体的には、保存物の温度の低下に応じて、高周波のデューティ比が小さくなるよう出力を調整してもよい。
【0123】
図12は、実施の形態2の変形例3にかかる冷蔵庫における凍結処理の各要素の状態を示す波形図である。制御部50は、保存物が凍結開始前かつ保存物が過冷却状態である場合に、保存物への高周波の照射を開始し、温度センサ49により検出された保存物の温度に基づいて、保存物に照射する高周波の出力を変化させてもよい。
【0124】
このような構成により、氷結晶を効率的に融解しつつ、所望の過冷却深度に到達するまでの時間を短縮することができる。
【0125】
なお、変形例3では、制御部50は、高周波の照射を停止した後に第2冷却モードに切り替えず、第1冷却モードを維持してもよい。
【0126】
図13は、実施の形態2の変形例4にかかる冷蔵庫における凍結処理の各要素の状態を示す波形図である。変形例2および変形例3では、保存物の温度が低下するにつれて、高周波の出力をHIGHからLOWに低下させる例について説明したが、制御部50は、保存物の温度が低下するにつれて、高周波の出力をLOWからHIGHに上昇させてもよい。
【0127】
図13の例では、保存物の温度が所定の閾値f3(例えば-4℃とする)に下がるまで(時間t52から時間t53まで)の間、制御部50は、高周波の出力をLOWにする。保存物の温度が所定の閾値f3を下回ってから所定の閾値f2に下がるまで(時間t53から時間t54まで)の間、制御部50は、高周波の出力をHIGHにする。
【0128】
一般的に、保存物が過冷却状態である場合、保存物の温度が-4℃程度までは氷結晶がほとんど発生しないが、保存物の温度が-4℃から-10℃程度までは氷結晶の発生確率が高くなることが知られている。例えば、氷結晶の発生しにくい温度帯では、高周波の出力をLOWにして、保存物が氷結晶の発生しやすい温度帯になったときに、高周波の出力を上げることで、より効率的に氷結晶を融解させることができる。このため、より安定して保存物を過冷却状態にすることができる。
【0129】
なお、実施の形態2の変形例4にかかる冷蔵庫において、制御部50は、保存物が凍結開始前かつ保存物が過冷却状態である場合に、保存物への高周波の照射を開始し、温度センサ49により検出された保存物の温度に基づいて、保存物に照射する高周波の出力を変化させてもよい。
【0130】
また、実施の形態2の変形例4にかかる冷蔵庫において、制御部50は、第2冷却モードに切り替えず、第1冷却モードを維持してもよい。
【0131】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3にかかる冷蔵庫について説明する。なお、実施の形態3では、主に実施の形態2と異なる点について説明する。実施の形態3においては、実施の形態2と同一または同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態3では、実施の形態2と重複する記載は省略する。
【0132】
図14は、実施の形態3にかかる冷蔵庫10における凍結処理を説明するためのフローチャートである。図15は、図14の凍結処理における各要素の状態を示す波形図である。実施の形態3では、保存物の凍結が開始されたことに基づいて、制御部50が高周波の照射を停止する点で、実施の形態2と異なる。
【0133】
図14を参照して、実施の形態3にかかる冷蔵庫10の凍結処理について説明する。図14のフローチャートにおいて、ステップS21~S24、S26~S29は、図7のステップS21~S24、S26~S29と同一の処理であるため説明を省略する。
【0134】
実施の形態3では、制御部50は、保存物への高周波の照射中に保存物の過冷却状態が解除されたことに基づいて、高周波の照射を停止する。ステップS251において、制御部50は、検出された反射率が、保存物が液相状態であることを示す反射率R2よりも反射率が低下している場合に、高周波の照射を停止する(ステップS26)。図15の例では、時間t63で反射率の低下を検出し、高周波の照射が停止されている。高周波の照射を停止した後は、実施の形態2と同様に、冷却モードを第1冷却モードから第2冷却モードに切り替える(ステップS27)。
【0135】
図15の例では、高周波を所定のデューティ比で照射しているが、例えば、保存物の温度または反射率等に基づいてデューティ比を変化させてもよい。または、保存物の温度または反射率等に基づいて、高周波の出力を変化させてもよい。
【0136】
なお、制御部50は、保存物が凍結開始前かつ保存物が過冷却状態である場合に、保存物への高周波の照射を開始してもよい。
【0137】
また、制御部50は、第2冷却モードに切り替えず、第1冷却モードを維持してもよい。
【0138】
[効果]
上述した実施の形態により、意図しないタイミングで保存物の過冷却状態が解除された場合に高周波の照射を停止して、保存物の凍結を開始することができる。
【0139】
本発明をある程度の詳細さをもって実施の形態において説明したが、実施の形態の開示内容は構成の細部において変化してしかるべきものであり、実施の形態における要素の置換、組合せ、および順序の変更は請求された本発明の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明の冷蔵庫においては、保存物に対する冷凍、貯蔵、解凍のそれぞれを所望の状態となるように処理することができる構成を有しているため、冷蔵庫の付加価値を高めた構成であり、高い市場価値を有するものである。
【符号の説明】
【0141】
1 外箱
2 内箱
3 冷蔵室
4 製氷室
5 冷凍/解凍室
6 冷凍室
7 野菜室
8 機械室
9 圧縮機
10 冷蔵庫
11 冷却室
12 冷却器
13 冷却ファン
14 除霜ヒータ
15 ドレンパン
16 ドレンチューブ
17 蒸発皿
18 風路
19 ダンパー
20 冷気導入孔
21 冷気排気孔
22 発振回路
23 整合回路
24 発振電極
25 対向電極
26 天面側電磁波シールド
27 背面側電磁波シールド
28 正面側電磁波シールド
29 扉
30 電極保持領域
31 収納ケース
32 内面部材
33 静電容量センサ
34 戻り風路
40 断熱材
49 温度センサ(温度検出部)
50 制御部
51 反射波検出部
図1
図2
図3
図4
図5
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図15