(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135503
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】円筒形カットアウト
(51)【国際特許分類】
H01H 85/20 20060101AFI20230921BHJP
H01H 85/22 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
H01H85/20 B
H01H85/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040750
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000102636
【氏名又は名称】エナジーサポート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小寺 克昌
(72)【発明者】
【氏名】福田 裕輔
【テーマコード(参考)】
5G502
【Fターム(参考)】
5G502AA01
5G502AA20
5G502BA02
5G502BC04
5G502BD03
5G502BD07
5G502CC13
5G502GG02
(57)【要約】
【課題】軽量化された円筒形カットアウトを実現する。
【解決手段】
円筒形カットアウトは、配電線と高圧機器側配線に接続される。この円筒形カットアウトは、配電線とヒューズ筒の双方に接続する上部電極を内部に有するとともに、絶縁材料で形成されている上部カットアウト本体と、高圧機器側配線とヒューズ筒の双方に接続する下部電極を内部に有するとともに、絶縁材料で形成されている下部カットアウト本体を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電線と高圧機器側配線に接続される円筒形カットアウトにおいて、
配電線とヒューズ筒の双方に接続する上部電極を内部に有するとともに、絶縁材料で形成されている上部カットアウト本体と、
高圧機器側配線とヒューズ筒の双方に接続する下部電極を内部に有するとともに、絶縁材料で形成されている下部カットアウト本体と、
を備えている円筒形カットアウト。
【請求項2】
上部カットアウト本体は、下部カットアウト本体の一部を被覆する筒状の被覆部を有し、
下部カットアウト本体は、被覆部内に挿入される筒状の挿入部を有し、
上部電極が挿入部に接した状態で、下部カットアウト本体が上部カットアウト本体に固定されている請求項1に記載の円筒形カットアウト。
【請求項3】
挿入部の上面部に、上部電極の一部を挿入する挿入孔が設けられている請求項2に記載の円筒形カットアウト。
【請求項4】
上部電極は、ヒューズ筒を把持するための一対の把持部を有し、
一対の把持部が、前記挿入孔に挿入されている請求項3に記載の円筒形カットアウト。
【請求項5】
上部電極は、一対の把持部を連結するとともに第1貫通孔が設けられている連結部を有し、
上部カットアウト本体は、上部カットアウト本体の外部と連通する第2貫通孔を有し、
下部カットアウト本体は、挿入部の上端部の一部を塞ぐとともに第3貫通孔が設けられている上面部を有し、
上部電極と上部カットアウト本体と下部カットアウト本体が、第1,第2,第3貫通孔を通過するとともに配電線の被固定部に固定される固定部材によって、固定されている請求項4に記載の円筒形カットアウト。
【請求項6】
上部カットアウト本体と下部カットアウト本体が、上部カットアウト本体の被覆部の下端部と下部カットアウト本体の挿入部の下端部を固定することによって固定されている請求項1から5のいずれか一項に記載の円筒形カットアウト。
【請求項7】
被覆部の外周面に、円筒形カットアウトの外面の沿面距離を増大させるための傘部材が取り付けられている請求項1から6のいずれか一項に記載の円筒形カットアウト。
【請求項8】
被覆部の外周面に、傘部材を被覆部に固定するための固定部が設けられている請求項7に記載の円筒形カットアウト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、配電線と高圧機器側配線に接続される円筒形カットアウトに関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
変圧器等を保護するため、配電線と高圧機器側配線の間に円筒形カットアウトが配置される。典型的に、円筒形カットアウトは、セラミックス製(磁器製)の円筒形カットアウト本体が用いられる。特許文献1に、円筒形カットアウトの重量を低減するため、円筒形カットアウト本体の一部を樹脂(又はゴム)製とした円筒形カットアウトが開示されている。具体的には、特許文献では、電力ヒューズを収容する部位をセラミックス製とし、配電線及び機器と接続するための引出し線を収容する部位を樹脂(又はゴム)製とし、円筒形カットアウトを軽量化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したように、特許文献1の円筒形カットアウトは、円筒形カットアウト本体のうち、配電線側及び機器側の引出し線が収容される部位を樹脂製とすることで、円筒形カットアウトの軽量化に成功している。しかしながら、設置作業の効率を向上させるため、円筒形カットアウトのさらなる軽量化が求められている。本明細書は、従来よりも軽量化された円筒形カットアウトを実現するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示する円筒形カットアウトは、配電線と高圧機器側配線に接続される。この円筒形カットアウトは、配電線とヒューズ筒の双方に接続する上部電極を内部に有するとともに、絶縁材料で形成されている上部カットアウト本体と、高圧機器側配線とヒューズ筒の双方に接続する下部電極を内部に有するとともに、絶縁材料で形成されている下部カットアウト本体を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図7】
図2のVII-VII線に沿った断面図を示す。
【
図8】円筒形カットアウトに固定部材を取り付けた状態を示す。
【
図11】下部カットアウト本体の部分拡大図を示す。
【
図14】円筒形カットアウトの変形例(上部カットアウト本体)を示す。
【
図15】円筒形カットアウトの変形例(下部カットアウト本体)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(円筒形カットアウト)
円筒形カットアウトは、外部電線を介し、配電線と変圧器等の高圧機器との間に接続される。円筒形カットアウトは、円筒形カットアウト本体と、円筒形カットアウト本体内に配置されるヒューズ筒(電力ヒューズ)を備えている。電力ヒューズは、円筒形カットアウト本体内に配置されている上部電極及び下部電極に接続される。なお、上部電極は配電線に接続され、下部電極は高圧機器側の配線に接続される。
【0008】
(円筒形カットアウト本体)
円筒形カットアウト本体は、絶縁材料(樹脂)で形成されている。具体的には、円筒形カットアウト本体は、絶縁材料で形成されている上部カットアウト本体と、絶縁材料で形成されている下部カットアウト本体で構成されている。絶縁材料の一例として、カーボンブラックを添加したエチレン系樹脂が挙げられる。上部カットアウト本体内には上部電極が収容され、下部カットアウト本体内には下部電極が収容されている。このような円筒形カットアウト本体は、一部または全部がセラミックス製の従来の円筒形カットアウト本体と比較して、重量を低減することができる。
【0009】
上部カットアウト本体と下部カットアウト本体の一方に筒状の被覆部が設けられ、他方に筒状の挿入部が設けられていてよい。例えば、上部カットアウト本体に被覆部が設けられ、下部カットアウト本体に挿入部が設けられている場合、挿入部を被覆部内に挿入した状態で上部カットアウト本体と下部カットアウト本体が固定される。すなわち、被覆部は、下部カットアウト本体(挿入部)を被覆する。なお、挿入部内には、電力ヒューズが配置される。また、被覆部と挿入部は、被覆部と挿入部の一方に溝部を設け、他方に突部を設け、溝部と突部を係合させることによって上部カットアウト本体と下部カットアウト本体が固定されていてよい。これにより、上部カットアウト本体と下部カットアウト本体と固定するための接着剤、固定金具等を省略することができる。円筒形カットアウトの部品数を低減することができるとともに、円筒形カットアウトを廃棄する際の分解(分別)を容易にすることができる。
【0010】
上部カットアウト本体に被覆部が設けられ、下部カットアウト本体に挿入部が設けられている場合、上部電極は、挿入部に接した状態で上部カットアウト本体に固定されていてよい。すなわち、上部電極は、上部カットアウト本体と挿入部(下部カットアウト本体の一部)に挟持され、上部カットアウト本体内に固定(位置決め)されてよい。これにより、上部電極を上部カットアウト本体に固定するための接着剤、固定金具等を省略することができる。円筒形カットアウトの部品数を低減することができるとともに、円筒形カットアウトを廃棄する際の分解を容易にすることができる。
【0011】
(上部カットアウト本体)
上部カットアウト本体に、円筒形カットアウトの外面の沿面距離を増大させるための上部傘部が設けられていてよい。これにより、円筒形カットアウトの絶縁性能を向上させることができる。また、上部傘部の径方向端部に、径方向外側に向けて突出する第1突出部が設けられていてよい。この場合、第1突出部の周方向の一部が、他の部分よりも上方位置に設けられていてよい。また、第1突出部の周方向の他の一部が、他の部分よりも下方位置に設けられていてよい。そして、第1突出部は、上方位置から下方位置に向けて傾斜していてよい。この場合、上方傘部に付着した水滴(雨水等)は、上方位置から下方位置に向けて第1突出部上を流れる。
【0012】
上部カットアウト本体に被覆部が設けられ、下部カットアウト本体に挿入部が設けられている場合、挿入部の上端部に、上部電極の一部を挿入する挿入孔が設けられてよい。例えば、上部電極が電力ヒューズを把持するための一対の把持部を有し、一対の把持部が、挿入孔に挿入されていてよい。円筒形カットアウト本体内における上部電極の位置決めを、より確実に行うことができる。また、挿入部内に配置されている電力ヒューズの上部側電極と上部電極との係合をより確実に行うことができる。
【0013】
上記したように、上部電極は、配電線に接続される。上部電極と配電線を接続(固定)するための固定部材を用いて、上部カットアウト本体、上部電極及び下部カットアウト本体をさらに強固に固定することもできる。具体的には、上部電極に、上述した一対の把持部を連結するための連結部を形成する。そして、その連結部に貫通孔(第1貫通孔)を形成する。また、上部カットアウト本体に、上部カットアウト本体の外部と連通する貫通孔(第2貫通孔)を形成する。第2貫通孔は、上部電極の連結部(第1貫通孔)に対向する位置に形成する。さらに、下部カットアウト本体に、挿入部の上端部の一部を塞ぐ上面部を形成する。そして、その上面部に貫通孔(第3貫通孔)を形成する。第3貫通孔も、上部電極の連結部(第1貫通孔)に対向する位置に形成する。そして、上部電極と配電線を接続するための固定部材を、第1,第2,第3貫通孔を通過させ、配電線の被固定部に固定する。これにより、上部カットアウト本体、上部電極及び下部カットアウト本体が固定部材によって固定される。
【0014】
上部カットアウト本体に被覆部が設けられ、下部カットアウト本体に挿入部が設けられている場合、円筒形カットアウトを他の部材(電柱等)に取り付けるための取付金具が、被覆部に固定されてよい。この場合、被覆部の表面に、被覆部の外部に向けて突出しているとともに取付金具の上下方向の移動を規制するための第1規制部と、被覆部の外部に向けて突出しているとともに取付金具の周方向への移動を規制するための第2規制部が設けられていてよい。これにより、取付金具を円筒形カットアウトに強固に取り付けることができる。換言すると、取付金具に対して、円筒形カットアウトの位置決めを行うことができる。
【0015】
第1規制部は、円筒形カットアウトの軸線に対して直交する第1方向の両側面の少なくとも一方に設けられていてよい。また、第2規制部は、円筒形カットアウトの軸線及び第1方向に直交する第2方向の両側面のうちの少なくとも一方に設けられていてよい。換言すると、円筒形カットアウトの周方向において、第1規制部と第2規制部がおよそ90度ずれた位置に設けられていてよい。円筒形カットアウトの周方向において円筒形カットアウトの上下方向への移動を規制する部分と、円筒形カットアウトの周方向への移動を規制する部分が重複することを避けることができる。
【0016】
第1規制部は、被覆部の上下方向に間隔をあけて設けられている一対の突部であってよい。また、第2規制部も、被覆部の周方向に間隔をあけて設けられている一対の突部であってよい。この場合、第2方向の両側面に第2規制部が設けられており、一方の側面に設けられいる一対の突部の間隔が、他方の側面に設けられている一対の突部の間隔より狭くてよい。典型的に、取付金具は、先端側(円筒形カットアウトが取り付けられる被取付部材(電柱等)から離れた側)をボルトで締め付けることにより、円筒形カットアウトに取り付ける。一方の側面に突部の間隔が狭い第2規制部を設けることにより、ボルトによる締め代を確保することができる。この場合、一方の側面に設けられている一対の突部は、円筒形カットアウトに対して円筒形カットアウトが取り付けられる被取付部材とは反対側で、取付金具の屈曲部と係合する。また、他方の側面に設けられている一対の突部は、円筒形カットアウトに対して円筒形カットアウトが取り付けられる被取付部材側で、取付金具の屈曲部と係合する。
【0017】
(下部カットアウト本体)
下部カットアウト本体は、下部電極を収容する円筒部を有していてよい。また、円筒部には、下部電極に接続される高圧機器側配線が通過する円筒状の突出口が設けられていてよい。突出口は、円筒部の外周面から、円筒部の径方向外側に伸びていてよい。なお、円筒部の径方向サイズは、上述した上部傘部の径方向サイズより小さくてよい。これにより、円筒部が雨水等で濡れることを抑制することができる。
【0018】
(下部傘部材)
カットアウト本体は、上部カットアウト本体及び下部カットアウト本体に加え、上部カットアウト本体に被覆部に、円筒形カットアウトの上下方向の外面長さを増大させるための傘部材(下部傘部)が取り付けられていてよい。被覆部に傘部材を取り付けることにより、円筒形カットアウトの絶縁性能をさらに向上させることができる。なお、被覆部に傘部材を取り付ける場合、被覆部の外周面に、傘部材を被覆部に固定するために固定部が設けられていてよい。傘部材を被覆部(上部カットアウト本体)に固定するための部品(ボルト等)を省略することができる。上部カットアウト本体に傘部(上部傘部)が設けられている場合、傘部材は、上部傘部の下方に設けられていてよい。すなわち、上部カットアウト本体に傘部(が設けられている場合、上部カットアウト本体に取り付けられる傘部は、下部傘部と捉えることができる。また、下部傘部の径方向端部に、径方向外側に向けて突出する第2突出部が設けられていてよい。
【実施例0019】
(第1実施例)
図1を参照し、高圧カットアウト100について説明する。高圧カットアウト100は、配電線路上に設けられ、変圧器等の機器を保護するために用いられる。高圧カットアウト100の外装は、主に、樹脂製の上部カットアウト本体30と、樹脂製の下部カットアウト本体70と、樹脂製の下部傘部50によって構成されている。上部カットアウト本体30、下部カットアウト本体70及び下部傘部50は、絶縁性を有し、エチレン系材料を含む材料で形成されている。絶縁性を有するエチレン系材料とは、具体的には、カーボンブラックを添加したエチレン系樹脂等である。詳細は後述するが、上部カットアウト本体30と下部カットアウト本体70は固定されており、下部傘部50は上部カットアウト本体30に固定されている。
【0020】
高圧カットアウト100は、重力方向において、上部カットアウト本体30が上側、下部カットアウト本体70が下側になるように設置される。高圧カットアウト100の内部には、ヒューズ筒8及び消弧筒6が配置されている。ヒューズ筒8は、消弧筒6の内側に配置されている。ヒューズ筒8は、上下方向に伸びており、上部電極4と下部電極12を接続している。ヒューズ筒8内には、ヒューズ10が配置されている。上部カットアウト本体30の上部に、円錐状の上部モールドコーン3が固定されている。引出線1が、上部モールドコーン3を通過している。引出線1は、上部電極4と導通しており、配電線に接続される。下部カットアウト本体70の側面に、下部モールドコーン16が固定されている。引出線18が、下部モールドコーン16を通過している。引出線18は、接続板14を介して下部電極12と導通しており、変圧器等の機器に接続される。以下、高圧カットアウト100を構成している各部品について詳細に説明する。
【0021】
図2から
図4を参照し、上部カットアウト本体30について説明する。
図2に示すように、上部カットアウト本体30は、主に、上部傘部32と被覆部36を備えている。被覆部36は、筒状であり、下部カットアウト本体70の一部を被覆している。下部カットアウト本体70の詳細は後述する。上部傘部32の上端、すなわち、上部カットアウト本体30の上端には、突出部31が設けられている。上部傘部32は、上方から下方に向けて径が広がっており、下端の径方向端部に第1突出部34が設けられている(
図1も参照)。第1突出部34は、上部傘部32の外周面を一巡しており、上方部34aから下方部34bに向けて傾斜している傾斜部34cが設けられている。上方部34aは、第1突出部34の他の部分より最も上方に位置している。下方部34bは、第1突出部34の他の部分より最も下方に位置している。なお、
図1に示すように、下部傘部50の下端の径方向端部にも突出部(第2突出部)54が設けられている。
【0022】
被覆部36は、上部傘部32より下方に設けられている。被覆部36の外周面には、第1規制部36a,第2規制部36b,36cが設けられている。第1規制部36a,第2規制部36b,36cは、いずれも、被覆部36の外周面から径方向外側に向けて突出している。第1規制部36a及び第2規制部36b,36cは、後述する取付金具を固定する際に利用される。また、被覆部36の外周面には、下端側より固定部38が嵌め込まれている。固定部38は、高圧カットアウト100の傘部材として機能する下部傘部50を固定する際に利用される(
図1も参照)。固定部38は、ゴム製の円環状部材である。固定部38には、環状のスリット切欠部が形成されている。スリット切欠部に下部傘部50の上端を嵌め込むことにより、下部傘部50を被覆部36(上部カットアウト本体30)に固定する。被覆部36の下端には、一対の(2個の)溝部40が設けられている。一対の溝部40は、被覆部36の軸線に対して対称の位置に設けられている。各溝部40は、T字状の切り欠きであり、下部カットアウト本体70を固定するために利用される。
【0023】
図3及び
図4に示すように、上部カットアウト本体30の上方には、突出部31の内径と同一の上部電線収容部31aが設けられている。上部モールドコーン3の下端円筒部は、上部電線収容部31aに挿入されている。また、上部電線収容部31aの壁面には、径方向内側に向けて突出する凸部42が設けられている。上部電線収容部31aの壁面に2個の凸部42が設けられており、凸部42、42は、上部電線収容部31aの中心に対して対称に設けられている。一対の凸部42は、上部モールドコーン3の下端円筒部の外周面に設けられている一対の凹部(図示省略)と嵌合する。一対の凸部42と一対の凹部が嵌合することによって、上部カットアウト本体30(高圧カットアウト100)に対して上部電線が回転することが防止される。被覆部36の上部には、上方向かうに従って内径が小さくなっている傾斜部46が設けられている。また、傾斜部46よりも上方に、内径が傾斜部46の最小径よりも小さい規制段部45が設けられている。
【0024】
傾斜部46は、後述する下部カットアウト本体70の挿入部74(
図9も参照)を被覆部36に挿入する際、挿入部74を被覆部36の中心に案内することに利用される。また、規制段部45は、挿入部74が被覆部36の上端段部45aに接触することを防止するために利用される。具体的には、通常、挿入部74は、規制段部45に接触し、上端段部45aには接触しない。なお、上部電線収容部31aと被覆部36内の空間は、貫通孔(第2貫通孔)44によって連通している。第2貫通孔44は、上部電極4を固定する際に利用される。
【0025】
上部傘部32の内周面には、下方に伸びる襞部33が設けられている。襞部33の下端は、上部傘部32の下端(第1突出部34)よりも上方に位置している。そのため、上部カットアウト本体30を側方から観察すると、襞部33は観察されない(
図2も参照)。襞部33を設けることにより、高圧カットアウト100の外面の沿面距離が増大し、高圧カットアウト100の絶縁性能が向上する。下部傘部50の内周面には、下方に伸びる襞部50aが設けられている。襞部50aの下端は、下部傘部50の下端よりも上方に位置している。そのため、上部カットアウト本体30を側方から観察すると、襞部50aは観察されない。襞部50aを設けることにより、高圧カットアウト100の外面の沿面距離が増大し、高圧カットアウト100の絶縁性能が向上する。
【0026】
次に、
図5を参照し、引出線1及び上部電極4を上部カットアウト本体30に固定した状態について説明する。上部モールドコーン3は、突出部31を覆うように上部カットアウト本体30に取り付けられている。そのため、上部電線収容部31aを通じて高圧カットアウト100内への雨水の侵入を防止することができる。配電線に接続される引出線1は、上部モールドコーン3の下端円筒部内に配置されている金属製の固定部材5に固定されている。また、上部電極4は、ボルト7によって固定部材5に固定されている。より具体的には、上部電極4は、ヒューズ筒8と把持する一対の把持部11と、一対の把持部11を連結する連結部13によって構成されている。ボルト7には、ネジ部7a、円筒部7b、円盤状の係止部7cが形成されており、ネジ部7aは、上部モールドコーン3の固定部材5にネジ固定されている。円筒部7bは、後述する下部カットアウト本体70の挿入部74の貫通孔75を貫通し、係止部7cは、後述する下部カットアウト本体70の挿入部74の上面部72に係止するよう構成されている。連結部13には、貫通孔(第1貫通孔)13aが設けられている。また、詳細は後述するが、下部カットアウト本体70の挿入部74の先端の中央部分に、貫通孔(第3貫通孔)75が設けられている。また、貫通孔75の周りに、上部電極4の把持部11を挿入するために挿入孔73が設けられている。高圧カットアウト100では、把持部11を挿入孔73に挿入した状態で挿入部74の先端を規制段部45に接触させ、ボルト7を、挿入部74の内側から貫通孔13a、44,75を通過させ、固定部材5に固定する。すなわち、ボルト7により、下部カットアウト本体70と上部電極4が一体となって固定部材5に固定されているとともに、上部モールドコーン3が上部カットアウト本体30に取り付けられている。ボルト7を固定する際、上部電極4の連結部13は上端段部45aによって形成される空間内に位置する。
【0027】
次に、
図6から
図8を参照し、上部カットアウト本体30の被覆部36の特徴(第1規制部36a,第2規制部36b,36cの特徴)について説明する。被覆部36は、上部傘部32より下方に設けられている。被覆部36の外周面には、第1規制部36a,第2規制部36b及び固定部38が設けられている。第1規制部36a,第2規制部36b及び固定部38は、いずれも、被覆部36の外周面から径方向外側に向けて突出している。第1規制部36a及び第2規制部36bは、取付金具90を強固に固定するために利用される。
【0028】
図6に示すように、被覆部36の周面の2箇所に、第1規制部36aが設けられている。第1規制部36aは、被覆部36の中心に対して対称の位置に設けられている。すなわち、第1規制部36aは、被覆部36の軸線(高圧カットアウト100の軸線)に対して直交する方向(第1方向)の両面に設けられている。また、
図8に示すように、第1規制部36aが設けられている各部分(第1方向の2箇所)では、第1規制部36aは、被覆部36の上下方向に間隔を開けて2個設けられている。上下の第1規制部36aにより、取付金具90を被覆部36に取り付けたときに、取付金具90が上下方向に移動することを規制できる。
【0029】
図7に示すように、第2規制部36b,36cも、被覆部36の周面の2箇所に設けられている。具体的には、第2規制部36bと第2規制部36cは、被覆部36の中心に対して対称の位置に設けられている。なお、第2規制部36b,36cは、被覆部36の軸線(高圧カットアウト100の軸線)及び第1規制部36a,36aが設けられている方向(第1方向)に直交する方向(第2方向)に設けられている。
図7及び
図8から明らかなように、2個の第2規制部36bが、被覆部36の周方向に間隔を開けて、上下方向に伸びている。また、2個の第2規制部36cが、被覆部36の周方向に間隔を開けて、上下方向に伸びている。第2規制部36b,36bの間隔(周方向距離)は、第2規制部36c,36cの間隔より狭い。
【0030】
図8に示すように、取付金具90は、被覆部36の外周の形状に沿った部分(円弧部分)を有しており、先端側の直線部分がボルト91で固定されている。典型的に、電柱等の高圧カットアウト100が取り付けられる被取付部材から離れた部分(直線部分)が、ボルト91締めされる。高圧カットアウト100では、先端側の円弧部分と直線部分の境界部分(屈曲部)が第2規制部36bと係合し、被取付部材側の円弧部分と直線部分の境界部分(屈曲部)が第2規制部36cと係合する。取付金具90を被覆部36に取り付けたときに、取付金具90の各屈曲部が夫々第2規制部36b、第2規制部36cと係合するため、取付金具90が被覆部36に対して回転することを規制できる。
【0031】
なお、
図8から明らかなように、高圧カットアウト100では、第1突出部34の上方部34aが取付金具90の直線部分を覆っている。換言すると、第1突出部34の下方部34bが取付金具90の円弧部分を覆っている。上部傘部32に付着した雨水は、第1突出部34の下方部34bから落下する。そのため、上部傘部32から落下した雨水が、取付金具90(直線部分)に落下することを抑制することができる。その結果、高圧カットアウト100の外面(上部傘部32)と取付金具90が閃絡することを抑制することができる。すなわち、耐電圧性能が向上させることができる。
【0032】
次に、
図9から
図12を参照し、下部カットアウト本体70について説明する。
図9に示すように、下部カットアウト本体70は、大径の円筒部78と、円筒部78よりも小径であるとともに円筒部78から上方に伸びている筒状の挿入部74を備えている。円筒部78内には、下部電極12が収容されている(
図1も参照)。挿入部74は、上部カットアウト本体30の被覆部36に挿入される。また、挿入部74内にはヒューズ筒8及び消弧筒6が配置される。
【0033】
挿入部74の下端の外周面に、被覆部36の溝部40(
図2を参照)と係合する一対の係合部76が設けられている。一対の係合部76は、挿入部74の軸線に対して対称の位置に設けられている。一対の係合部76は、挿入部74の下端の外周面から径方向外側に突出している突部である。各係合部76を各溝部40に係合させ、熱可塑性接着剤等にて固定することにより、下部カットアウト本体70が上部カットアウト本体30に対して回転することを防止できる。上述したように、下部カットアウト本体70(挿入部74)は、ボルト7を利用して上部カットアウト本体30に固定されている(
図5も参照)。係合部76と溝部40は、下部カットアウト本体70と上部カットアウト本体30を補助的に固定する補助固定部と捉えることができる。なお、
図11に示すように、係合部76には、凸部76aと凸部76aの周囲に設けられている凹部76bが形成されている。係合部76の凸部76a及び凹部76bと、被覆部36のT字状の切欠き(溝部40)とを熱可塑性接着剤等で固定することにより、上部カットアウト本体30は、下部カットアウト本体70に固定され、上下方向及び回転方向の移動が防止される。
【0034】
図10に示すように、挿入部74の上面部72に、貫通孔(第3貫通孔)75が設けられている。上述したように、ボルト7の円筒部7bが貫通孔75を通過し、上部モールドコーン3の固定部材5にボルト7の円筒部7aがネジ固定される(
図5も参照)。ネジ固定の際、挿入部74の上面部72の内側面に、ボルト7の係止部7cが接触するため、上部モールドコーン3と下部カットアウト本体70が固定される。これにより、上部カットアウト本体30と下部カットアウト本体70固定される。また、上面部72には、貫通孔75の周囲に2個の挿入孔73が設けられている。各挿入孔73は、貫通孔75の中心に対して対称の位置に設けられている。各挿入孔73のサイズは、上部電極4の把持部11の先端部(上端部)のサイズよりも大きい。より具体的には、上部電極4の把持部11が挿入部74に対して少し回動できるように、上部電極4の把持部11の先端部より少し大きく形成されている。これにより、上部電極4の把持部11は、挿入孔73のサイズと把持部11のサイズの差の範囲内で、ボルト7の軸線を中心に回動することができる。なお、ボルト7を固定部材5に固定する際、上部電極4の一対の把持部11が挿入孔73を通過する。そのため、把持部11は、挿入部74の内側に存在する。その結果、把持部11は、挿入部74内に配置されているヒューズ筒8を把持することができる。
【0035】
図9に示すように、円筒部78の周面には、下部モールドコーン16を取り付けるための突出部80が設けられている(
図1も参照)。突出部80は、円筒状であり、下部モールドコーン16が雨水に濡れることを防止している。変圧器等の機器に接続される引出線18は、下部モールドコーン16の下部電線収容部16aに配置されている金属製の固定部材16bに固定されている。また、接続板14は、一端がボルト16cによって固定部材16bに固定されており、他端が下部電極12にネジ止めされている。下部モールドコーン16の外周には、突出襞(図示省略)が形成されている。突出襞は、下部モールドコーン16を突出部80内に挿入した際に、突出部80の内周面に接触する。突出襞によって、雨水が下部モールドコーン16の内部に侵入することを防止することができる。円筒部78の周面には、円筒部78の内外を連通する貫通孔84が設けられている。貫通孔84は、突出部80に囲まれた部分の中央に設けられている。固定部材16bは、貫通孔84を通過する。
【0036】
また、突出部80の内側に、円筒部78の外周面から径方向外側に突出している2個の凸部82が設けられている。凸部82,82は、貫通孔84の中心に対して対称に設けられている。凸部82は、下部電線(図示省略)の外周面に設けられている凹部と嵌合する。凸部82によって、下部カットアウト本体70(高圧カットアウト100)に対して下部電線が回転することを防止できる。高圧カットアウト100では、固定部材16bを貫通孔84に挿入した状態で接続板14を円筒部78の内面に接触させ、ボルト16cによって、下部モールドコーン16と接続板14を円筒部78に固定する(
図1も参照)。なお、円筒部78の下部86には、開閉蓋88が取り付けられている。
【0037】
図12は、円筒部78の下部86の端面86aを示している。端面86aには、6個のねじ孔86bが設けられている。ねじ孔86bを利用して、開閉蓋88を円筒部78に固定する。
図13に示すように、開閉蓋88は、円環状の平板部88aと、平板部88aの表面から突出しており、ねじ穴が設けられている6個の突出部88bと、平板部88aの内周側から突出している円筒状の突出部88cを備えている。突出部88cの突出高さは、突出部88bの突出高さより高い。また、平板部88a裏面には、ゴム製の蓋部89が設けられている。蓋部89には、複数のスリット89aが設けられている。開閉蓋88は、蓋部89を挟んだ状態で、円筒部78のねじ孔86bにねじ留めされている。開閉蓋88を円筒部78に固定することにより、通常、円筒部78の下端は塞がれている。一方、ヒューズ筒8を高圧カットアウト100に挿入、あるいは、高圧カットアウト100から抜き出すときは、ヒューズ筒8が蓋部89を通過する際にスリット89aによって蓋部89が変形するので、開閉蓋88を円筒部78から取り外すことなくヒューズ筒8の着脱を行うことができる。
【0038】
(第2実施例)
図14を参照し、高圧カットアウト100aについて説明する。高圧カットアウト100aは、上部カットアウト本体130の構造が、高圧カットアウト100の上部カットアウト本体30の構造と異なる。そのため、以下の説明では、上部カットアウト本体130についてのみ説明する。また、上部カットアウト本体130について、上部カットアウト本体30と実質的に同じ構造については、上部カットアウト本体30に付した参照番号を付すことにより、説明を省略することがある。
【0039】
上部カットアウト本体130の上端面131に、金属製の端子部105が固定されている。端子部105は、ボルト7及びナット9によって上部カットアウト本体130に固定されている。端子部105は、上部電線2を囲う保護部105aと、上部電線2に接触する接触部105bを備えている。保護部105aと接触部105bは、ボルト17で固定されている。また、端子部105の周囲には、樹脂製の保護カバー103が設けられている。保護カバー103によって、端子部105が雨水に濡れることを防止している。高圧カットアウト100aの場合、端子部105が上部カットアウト本体130の外部に設けられている。そのため、上部電線2を上部カットアウト本体の内部まで挿入する形態(例えば、高圧カットアウト100)と比較して、上部電線2を高圧カットアウトに接続する作業を容易にすることができる。
【0040】
(第3実施例)
図15を参照し、高圧カットアウト100bについて説明する。高圧カットアウト100bは、下部カットアウト本体170の構造が、高圧カットアウト100の下部カットアウト本体70の構造と異なる。そのため、以下の説明では、下部カットアウト本体170についてのみ説明する。また、下部カットアウト本体170について、下部カットアウト本体70と実質的に同じ構造については、下部カットアウト本体70に付した参照番号を付すことにより、説明を省略することがある。
【0041】
下部カットアウト本体170では、円筒部78の周面に、下部配線引き込み部180が設けられている。下部配線引き込み部180には、下部配線引き込み孔184が設けられている。下部カットアウト本体170の場合、下部モールドコーンを用いることなく、下部配線を高圧カットアウト100b(下部カットアウト本体170)内に導入することができる。なお、高圧カットアウト100bにおいて、上部カットアウト本体30に代えて、上部カットアウト本体130を用いてもよい。
【0042】
(他の変形例)
上記実施例では、上部カットアウト本体30に、下部傘部50を取り付けた高圧カットアウトについて説明した。しかしながら、高圧カットアウトは、必ずしも下部傘部50を備えていなくてもよい。例えば、上部カットアウト本体30の被覆部36の長さを長くし、高圧カットアウトの外面の沿面距離を長くすれば、下部傘部50を省略することができる。あるいは、下部傘部50を省略し、上部カットアウト本体30の被覆部36に複数の襞を設けてもよい。この場合も、高圧カットアウト100の外面の沿面距離を長く確保することができる。なお、被覆部36に複数の襞を設ける場合、襞は、被覆部36の外側に張り出す円形形状であってよい。
【0043】
また、上記実施例では、下部傘部50の上端を上部カットアウト本体30の固定部38に嵌め込んで、下部傘部50を上部カットアウト本体30に固定する例について説明した。しかしながら、下部傘部50を上部カットアウト本体30に固定することができれば、固定手法として種々の手法を採り得る。
【0044】
上記実施例では、円筒部78の下部86に開閉蓋88及び蓋部89を取り付ける例について説明した。しかしながら、円筒部78の下部86を塞ぐことができれば、例えば、円筒部78の下部86に樹脂製の密閉栓を嵌め込んでもよい。その場合、密閉栓が落下することを防止するため、密閉栓と下部カットアウト本体を紐で結んでもよい。
【0045】
上記実施例では、樹脂製の下部カットアウト本体70の挿入部74を、樹脂製の上部カットアウト本体3の被覆部36内に挿入する例について説明した。さらに、挿入部74の外側と被覆部36の内側の間に、磁器製の円筒を配置してもよい。挿入部74及び被覆部36の強度が向上し、高圧カットアウトの耐久性が向上する。
【0046】
上記実施例では、下部カットアウト本体70の係合部76を上部カットアウト本体30の溝部40に嵌め込み、両者を熱可塑性接着剤等で固定する例について説明した。しかしながら、下部カットアウト本体70の係合部76を上部カットアウト本体30の溝部40に嵌め込む構造に代え、両者をねじ又はピン等で固定してもよい。下部カットアウト本体70を上部カットアウト本体30固定することができれば、両者の固定手法は特に限定されず、任意の固定手法を採ることができる。
【0047】
第1実施例では、ボルト7を用いて上部モールドコーン3を上部カットアウト本体30に取り付け、ボルト16cを用いて下部モールドコーン16を下部カットアウト本体70に取り付ける例について説明した。しかしながら、上部モールドコーン3の固定、及び/又は、下部モールドコーン16の固定は、ボルト固定と接着剤固定を併用してもよい。モールドコーン3,16をカットアウト本体30,70により強固に固定することができるとともに、カットアウト本体30,70内への雨水の侵入も防止することができる。
【0048】
第1実施例では挿入部74内に消弧筒6を配置する例について説明した。しかしながら、内面に消弧筒が形成された1部品の挿入部を用いてもよい。これにより、円筒形カットアウトの部品数を削減することができる。
【0049】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。