(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135504
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】円筒形カットアウト
(51)【国際特許分類】
H01H 85/20 20060101AFI20230921BHJP
H01H 85/22 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
H01H85/20 B
H01H85/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040751
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000102636
【氏名又は名称】エナジーサポート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小寺 克昌
(72)【発明者】
【氏名】福田 裕輔
【テーマコード(参考)】
5G502
【Fターム(参考)】
5G502AA01
5G502AA10
5G502AA20
5G502BA02
5G502BC04
5G502BD03
5G502CC13
5G502GG02
(57)【要約】
【課題】閃絡の発生を抑制し得る円筒形カットアウトを提供する。
【解決手段】
円筒形カットアウトは、配電線と高圧機器側配線に接続される。この円筒形カットアウトは、配電線とヒューズ筒の双方に接続する上部電極を内部に有する上部カットアウト本体と、高圧機器側配線とヒューズ筒の双方に接続する下部電極を内部に有する下部カットアウト本体を備えている。また、上部カットアウト本体は、円筒形カットアウトの外面の沿面距離を増大させるための上部傘部を有している。この円筒形カットアウトでは、上部傘部の径方向端部に、径方向外側に向けて突出する第1突出部が設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電線と高圧機器側配線に接続される円筒形カットアウトにおいて、
配電線とヒューズ筒の双方に接続する上部電極を内部に有する上部カットアウト本体と、
高圧機器側配線とヒューズ筒の双方に接続する下部電極を内部に有する下部カットアウト本体と、を備えており、
上部カットアウト本体は、円筒形カットアウトの外面の沿面距離を増大させるための上部傘部を有しており、
上部傘部の径方向端部に、径方向外側に向けて突出する第1突出部が設けられている円筒形カットアウト。
【請求項2】
上部カットアウト本体は、下部カットアウト本体の一部を被覆する筒状の被覆部を有しており、
被覆部に、円筒形カットアウトの外面の沿面距離を増大させるための下部傘部が設けられており、
下部傘部の径方向端部に、径方向外側に向けて突出する第2突出部が設けられている請求項1に記載の円筒形カットアウト。
【請求項3】
第1突出部の周方向の一部が、他の部分よりも上方位置に設けられており、
第1突出部の周方向の他の一部が、他の部分よりも下方位置に設けられており、
第1突出部は、上方位置から下方位置に向けて傾斜している請求項1または2に記載の円筒形カットアウト。
【請求項4】
下部円筒カット本体は、下部電極を収容する円筒部を有しており、
円筒部の径方向サイズが、上部傘部の径方向サイズより小さい請求項1から3のいずれか一項に記載の円筒形カットアウト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、配電線と高圧機器側配線に接続される円筒形カットアウトに関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
変圧器等を保護するため、配電線と高圧機器側配線の間に円筒形カットアウトが配置される。特許文献1の円筒形カットアウトは、外周面に、外面の沿面距離を増大させるための傘部(襞部)が設けられている。また、特許文献1の円筒形カットアウトは、取付金具を用いて、電柱等の被取付部材に固定される。取付金具は、傘部の下方で円筒形カットアウトに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
取付金具を傘部の下方に取り付けると、傘部の下端と取付金具の距離が近くなる。傘部の下端と取付金具の距離が近くなると、傘部と取付金具の間で閃絡が起こるおそれがある。そのため、閃絡が起こりにくい円筒形カットアウトが必要とされている。本明細書は、閃絡の発生を抑制し得る円筒形カットアウトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示する円筒形カットアウトは、配電線と高圧機器側配線に接続される。この円筒形カットアウトは、配電線とヒューズ筒の双方に接続する上部電極を内部に有する上部カットアウト本体と、高圧機器側配線とヒューズ筒の双方に接続する下部電極を内部に有する下部カットアウト本体を備えている。また、上部カットアウト本体は、円筒形カットアウトの外面の沿面距離を増大させるための上部傘部を有している。この円筒形カットアウトでは、上部傘部の径方向端部に、径方向外側に向けて突出する第1突出部が設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】第1実施例の上部カットアウト本体の側面図を示す。
【
図3】第1実施例の上部カットアウト本体の部分断面図を示す。
【
図4】第1実施例の上部カットアウト本体の正面図を示す。
【
図5】第1実施例の円筒形カットアウトに固定部材を取り付けた状態を示す。
【
図6】第2実施例の円筒形カットアウトに固定部材を取り付けた状態を示す。
【
図7】第2実施例の上部カットアウト本体の正面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(円筒形カットアウト)
円筒形カットアウトは、外部電線を介し、配電線と変圧器等の高圧機器との間に接続される。円筒形カットアウトは、円筒形カットアウト本体と、円筒形カットアウト本体内に配置されるヒューズ筒(電力ヒューズ)を備えている。電力ヒューズは、円筒形カットアウト本体内に配置されている上部電極及び下部電極に接続される。なお、上部電極は配電線に接続され、下部電極は高圧機器側の配線に接続される。
【0008】
(円筒形カットアウト本体)
円筒形カットアウト本体は、絶縁材料(樹脂)で形成されている。具体的には、円筒形カットアウト本体は、絶縁材料で形成されている上部カットアウト本体と、絶縁材料で形成されている下部カットアウト本体で構成されている。絶縁材料の一例として、カーボンブラックを添加したエチレン系樹脂が挙げられる。上部カットアウト本体内には上部電極が収容され、下部カットアウト本体内には下部電極が収容されている。このような円筒形カットアウト本体は、一部または全部がセラミックス製の従来の円筒形カットアウト本体と比較して、重量を低減することができる。
【0009】
上部カットアウト本体と下部カットアウト本体の一方に筒状の被覆部が設けられ、他方に筒状の挿入部が設けられていてよい。例えば、上部カットアウト本体に被覆部が設けられ、下部カットアウト本体に挿入部が設けられている場合、挿入部を被覆部内に挿入した状態で上部カットアウト本体と下部カットアウト本体が固定される。すなわち、被覆部は、下部カットアウト本体(挿入部)を被覆する。なお、挿入部内には、電力ヒューズが配置される。また、被覆部と挿入部は、被覆部と挿入部の一方に溝部を設け、他方に突部を設け、溝部と突部を係合させることによって上部カットアウト本体と下部カットアウト本体が固定されていてよい。これにより、上部カットアウト本体と下部カットアウト本体と固定するための接着剤、固定金具等を省略することができる。円筒形カットアウトの部品数を低減することができるとともに、円筒形カットアウトを廃棄する際の分解(分別)を容易にすることができる。
【0010】
上部カットアウト本体に被覆部が設けられ、下部カットアウト本体に挿入部が設けられている場合、上部電極は、挿入部に接した状態で上部カットアウト本体に固定されていてよい。すなわち、上部電極は、上部カットアウト本体と挿入部(下部カットアウト本体の一部)に挟持され、上部カットアウト本体内に固定(位置決め)されてよい。これにより、上部電極を上部カットアウト本体に固定するための接着剤、固定金具等を省略することができる。円筒形カットアウトの部品数を低減することができるとともに、円筒形カットアウトを廃棄する際の分解を容易にすることができる。
【0011】
(上部カットアウト本体)
上部カットアウト本体に、円筒形カットアウトの外面の沿面距離を増大させるための上部傘部が設けられていてよい。これにより、円筒形カットアウトの絶縁性能を向上させることができる。また、上部傘部の径方向端部に、径方向外側に向けて突出する第1突出部が設けられていてよい。この場合、第1突出部の周方向の一部が、他の部分よりも上方位置に設けられていてよい。また、第1突出部の周方向の他の一部が、他の部分よりも下方位置に設けられていてよい。そして、第1突出部は、上方位置から下方位置に向けて傾斜していてよい。この場合、上方傘部に付着した水滴(雨水等)は、上方位置から下方位置に向けて第1突出部上を流れる。
【0012】
上部カットアウト本体に被覆部が設けられ、下部カットアウト本体に挿入部が設けられている場合、挿入部の上端部に、上部電極の一部を挿入する挿入孔が設けられてよい。例えば、上部電極が電力ヒューズを把持するための一対の把持部を有し、一対の把持部が、挿入孔に挿入されていてよい。円筒形カットアウト本体内における上部電極の位置決めを、より確実に行うことができる。また、挿入部内に配置されている電力ヒューズの上部側電極と上部電極との係合をより確実に行うことができる。
【0013】
上記したように、上部電極は、配電線に接続される。上部電極と配電線を接続(固定)するための固定部材を用いて、上部カットアウト本体、上部電極及び下部カットアウト本体をさらに強固に固定することもできる。具体的には、上部電極に、上述した一対の把持部を連結するための連結部を形成する。そして、その連結部に貫通孔(第1貫通孔)を形成する。また、上部カットアウト本体に、上部カットアウト本体の外部と連通する貫通孔(第2貫通孔)を形成する。第2貫通孔は、上部電極の連結部(第1貫通孔)に対向する位置に形成する。さらに、下部カットアウト本体に、挿入部の上端部の一部を塞ぐ上面部を形成する。そして、その上面部に貫通孔(第3貫通孔)を形成する。第3貫通孔も、上部電極の連結部(第1貫通孔)に対向する位置に形成する。そして、上部電極と配電線を接続するための固定部材を、第1,第2,第3貫通孔を通過させ、配電線の被固定部に固定する。これにより、上部カットアウト本体、上部電極及び下部カットアウト本体が固定部材によって固定される。
【0014】
上部カットアウト本体に被覆部が設けられ、下部カットアウト本体に挿入部が設けられている場合、円筒形カットアウトを他の部材(電柱等)に取り付けるための取付金具が、被覆部に固定されてよい。この場合、被覆部の表面に、被覆部の外部に向けて突出しているとともに取付金具の上下方向の移動を規制するための第1規制部と、被覆部の外部に向けて突出しているとともに取付金具の周方向への移動を規制するための第2規制部が設けられていてよい。これにより、取付金具を円筒形カットアウトに強固に取り付けることができる。換言すると、取付金具に対して、円筒形カットアウトの位置決めを行うことができる。
【0015】
第1規制部は、円筒形カットアウトの軸線に対して直交する第1方向の両側面の少なくとも一方に設けられていてよい。また、第2規制部は、円筒形カットアウトの軸線及び第1方向に直交する第2方向の両側面のうちの少なくとも一方に設けられていてよい。換言すると、円筒形カットアウトの周方向において、第1規制部と第2規制部がおよそ90度ずれた位置に設けられていてよい。円筒形カットアウトの周方向において円筒形カットアウトの上下方向への移動を規制する部分と、円筒形カットアウトの周方向への移動を規制する部分が重複することを避けることができる。
【0016】
第1規制部は、被覆部の上下方向に間隔をあけて設けられている一対の突部であってよい。また、第2規制部も、被覆部の周方向に間隔をあけて設けられている一対の突部であってよい。この場合、第2方向の両側面に第2規制部が設けられており、一方の側面に設けられいる一対の突部の間隔が、他方の側面に設けられている一対の突部の間隔より狭くてよい。典型的に、取付金具は、先端側(円筒形カットアウトが取り付けられる被取付部材(電柱等)から離れた側)をボルトで締め付けることにより、円筒形カットアウトに取り付ける。一方の側面に突部の間隔が狭い第2規制部を設けることにより、ボルトによる締め代を確保することができる。この場合、一方の側面に設けられている一対の突部は、円筒形カットアウトに対して円筒形カットアウトが取り付けられる被取付部材とは反対側で、取付金具の屈曲部と係合する。また、他方の側面に設けられている一対の突部は、円筒形カットアウトに対して円筒形カットアウトが取り付けられる被取付部材側で、取付金具の屈曲部と係合する。
【0017】
(下部カットアウト本体)
下部カットアウト本体は、下部電極を収容する円筒部を有していてよい。また、円筒部には、下部電極に接続される高圧機器側配線が通過する円筒状の突出口が設けられていてよい。突出口は、円筒部の外周面から、円筒部の径方向外側に伸びていてよい。なお、円筒部の径方向サイズは、上述した上部傘部の径方向サイズより小さくてよい。これにより、円筒部が雨水等で濡れることを抑制することができる。
【0018】
(下部傘部材)
カットアウト本体は、上部カットアウト本体及び下部カットアウト本体に加え、上部カットアウト本体に被覆部に、円筒形カットアウトの上下方向の外面長さを増大させるための傘部材(下部傘部)が取り付けられていてよい。被覆部に傘部材を取り付けることにより、円筒形カットアウトの絶縁性能をさらに向上させることができる。なお、被覆部に傘部材を取り付ける場合、被覆部の外周面に、傘部材を被覆部に固定するために固定部が設けられていてよい。傘部材を被覆部(上部カットアウト本体)に固定するための部品(ボルト等)を省略することができる。上部カットアウト本体に傘部(上部傘部)が設けられている場合、傘部材は、上部傘部の下方に設けられていてよい。すなわち、上部カットアウト本体に傘部(が設けられている場合、上部カットアウト本体に取り付けられる傘部は、下部傘部と捉えることができる。また、下部傘部の径方向端部に、径方向外側に向けて突出する第2突出部が設けられていてよい。
【実施例0019】
(第1実施例)
図1を参照し、高圧カットアウト100について説明する。高圧カットアウト100は、配電線路上に設けられ、変圧器等の機器を保護するために用いられる。高圧カットアウト100の外装は、主に、樹脂製の上部カットアウト本体30と、樹脂製の下部カットアウト本体70と、樹脂製の下部傘部50によって構成されている。上部カットアウト本体30、下部カットアウト本体70及び下部傘部50は、絶縁性を有し、エチレン系材料を含む材料で形成されている。絶縁性を有するエチレン系材料とは、具体的には、カーボンブラックを添加したエチレン系樹脂等である。詳細は後述するが、上部カットアウト本体30と下部カットアウト本体70は固定されており、下部傘部50は上部カットアウト本体30に固定されている。
【0020】
高圧カットアウト100は、重力方向において、上部カットアウト本体30が上側、下部カットアウト本体70が下側になるように設置される。高圧カットアウト100の内部には、ヒューズ筒8及び消弧筒6が配置されている。ヒューズ筒8は、消弧筒6の内側に配置されている。ヒューズ筒8は、上下方向に伸びており、上部電極4と下部電極12を接続している。ヒューズ筒8内には、ヒューズ10が配置されている。上部カットアウト本体30の上部に、円錐状の上部モールドコーン3が固定されている。引出線1が、上部モールドコーン3を通過している。引出線1は、上部電極4と導通しており、配電線に接続される。下部カットアウト本体70の側面に、下部モールドコーン16が固定されている。引出線18が、下部モールドコーン16を通過している。引出線18は、接続板14を介して下部電極12と導通しており、変圧器等の機器に接続される。以下、高圧カットアウト100を構成している各部品について詳細に説明する。
【0021】
図2から
図4を参照し、上部カットアウト本体30について説明する。
図2に示すように、上部カットアウト本体30は、主に、上部傘部32と被覆部36を備えている。被覆部36は、筒状であり、下部カットアウト本体70の一部を被覆している。下部カットアウト本体70の詳細は後述する。上部傘部32の上端、すなわち、上部カットアウト本体30の上端には、突出部31が設けられている。上部傘部32は、上方から下方に向けて径が広がっており、下端の径方向端部に第1突出部34が設けられている(
図1も参照)。第1突出部34は、上部傘部32の外周面を一巡している。周方向において、第1突出部34の上部傘部32からの突出長さは等しい。また、第1突出部34には、上方部34aから下方部34bに向けて傾斜している傾斜部34cが設けられている。上方部34aは、第1突出部34の他の部分より最も上方に位置している。下方部34bは、第1突出部34の他の部分より最も下方に位置している。なお、
図1に示すように、下部傘部50の下端の径方向端部にも突出部(第2突出部)54が設けられている。下部傘部50の径方向の大きさは、上部傘部32の径方向の大きさと同一である。また、突出部54は、下部傘部50の外周面を一巡しており、周方向において突出部54の下部傘部50からの突出長さは等しい。
【0022】
被覆部36は、上部傘部32より下方に設けられている。被覆部36の外周面には、第1規制部36a,第2規制部36b,36cが設けられている。第1規制部36a,第2規制部36b,36cは、いずれも、被覆部36の外周面から径方向外側に向けて突出している。第1規制部36a及び第2規制部36b,36cは、後述する取付金具を固定する際に利用される。また、被覆部36の外周面には、下端側より固定部38が嵌め込まれている。固定部38は、高圧カットアウト100の傘部材として機能する下部傘部50を固定する際に利用される(
図1も参照)。固定部38は、ゴム製の円環状部材である。具体的には、固定部38には、環状のスリット切欠部が形成されている。スリット切欠部に下部傘部50の上端を嵌め込むことにより、下部傘部50を被覆部36(上部カットアウト本体30)に固定する。被覆部36の下端には、一対の(2個の)溝部40が設けられている。一対の溝部40は、被覆部36の軸線に対して対称の位置に設けられている。各溝部40は、T字状の切り欠きであり、下部カットアウト本体70を固定するために利用される。
【0023】
図3及び
図4に示すように、上部カットアウト本体30の上方には、突出部31の内径と同一の上部電線収容部31aが設けられている。また、上部電線収容部31aの壁面には、径方向内側に向けて突出する凸部42が設けられている。上部電線収容部31aの壁面に2個の凸部42が設けられており、凸部42、42は、上部電線収容部31aの中心に対して対称に設けられている。一対の凸部42は、上部モールドコーン3の下端円筒部の外周面に設けられている一対の凹部(図示省略)と嵌合する。一対の凸部42と一対の凹部が嵌合することによって、上部カットアウト本体30(高圧カットアウト100)に対して上部電線が回転することが防止される。被覆部36の上部には、上方向かうに従って内径が小さくなっている傾斜部46が設けられている。また、傾斜部46よりも上方に、内径が傾斜部46の最小径よりも小さい規制段部45が設けられている。
【0024】
傾斜部46は、後述する下部カットアウト本体70の挿入部74(
図1を参照)を被覆部36に挿入する際、挿入部74を被覆部36の中心に案内することに利用される。また、規制段部45は、挿入部74が被覆部36の上端段部45aに接触することを防止するために利用される。具体的には、通常、挿入部74は、規制段部45に接触し、上端段部45aには接触しない。しかしながら、例えば挿入部74の長さが製造誤差等により設計値より長くなった場合、あるいは、被覆部36の長さが設計値より短くなった場合、挿入部74の先端が規制段部45に接触することにより、挿入部74が被覆部36の上端段部45aに接触することを防止することができる。なお、上部電線収容部31aと被覆部36内の空間は、貫通孔(第2貫通孔)44によって連通している。第2貫通孔44は、上部電極4を固定する際に利用される。
【0025】
上部傘部32の内周面には、下方に伸びる襞部33が設けられている。襞部33の下端は、上部傘部32の下端(第1突出部34)よりも上方に位置している。そのため、上部カットアウト本体30を側方から観察すると、襞部33は観察されない(
図2も参照)。襞部33を設けることにより、高圧カットアウト100の外面の沿面距離が増大し、高圧カットアウト100の絶縁性能が向上する。下部傘部50の内周面には、下方に伸びる襞部50aが設けられている。襞部50aの下端は、下部傘部50の下端よりも上方に位置している。そのため、上部カットアウト本体30を側方から観察すると、襞部50aは観察されない。襞部50aを設けることにより、高圧カットアウト100の外面の沿面距離が増大し、高圧カットアウト100の絶縁性能が向上する。
【0026】
図5に示すように、取付金具90は、被覆部36の外周の形状に沿った部分(円弧部分)を有しており、先端側の直線部分がボルト91で固定されている。典型的に、電柱等の高圧カットアウト100が取り付けられる被取付部材から離れた部分(直線部分)が、ボルト91締めされる。高圧カットアウト100では、先端側の円弧部分と直線部分の境界部分(屈曲部)が第2規制部36bと係合し、被取付部材側の円弧部分と直線部分の境界部分(屈曲部)が第2規制部36cと係合する。取付金具90を被覆部36に取り付けたときに、取付金具90の各屈曲部が夫々第2規制部36b、第2規制部36cと係合するため、取付金具90が被覆部36に対して回転することを規制できる。
【0027】
なお、
図5から明らかなように、高圧カットアウト100では、第1突出部34の上方部34aが取付金具90の直線部分を覆っている。換言すると、第1突出部34の下方部34bが取付金具90の円弧部分を覆っている。上部傘部32に付着した雨水は、上部傘部32の表面を流れ、第1突出部34に到達する。第1突出部34に到達した雨水のうち上方部34aに到達した雨水は、傾斜部34cの上面を流れ、下方部34bの端部(第1突出部34の最も低い位置)に移動する。そして、雨水は、第1突出部34の下方部34bの端部から落下する。すなわち、上部傘部32に付着した雨水は、第1突出部34の下方部34bの端部から落下する。そのため、上部傘部32から落下した雨水が、取付金具90(直線部分)に落下することを抑制することができる。その結果、高圧カットアウト100の外面(上部傘部32)と取付金具90が閃絡することを抑制することができる。
【0028】
図1に戻り、下部カットアウト本体70について簡単に説明する。
図1に示すように、下部カットアウト本体70は、大径の円筒部78と、円筒部78よりも小径であるとともに円筒部78から上方に伸びている筒状の挿入部74を備えている。円筒部78内には、下部電極12が収容されている。挿入部74は、上部カットアウト本体30の被覆部36に挿入される。また、挿入部74内にはヒューズ筒8及び消弧筒6が配置される。なお、円筒部78の径方向サイズは、上部傘部32の径方向サイズより小さい。
【0029】
(第2実施例)
図6及び
図7を参照し、高圧カットアウト100の変形例について説明する。本実施例の高圧カットアウトは、上部カットアウト本体130の第1突出部134の構造が第1実施例の上部カットアウト本体30の第1突出部34の構造と異なる。そのため、以下の説明では、上部カットアウト本体130についてのみ説明する。また、上部カットアウト本体130について、上部カットアウト本体30と実質的に同じ構造については、上部カットアウト本体30に付した参照番号を付すことにより、説明を省略することがある。
【0030】
上部カットアウト本体130は、上部傘部132と被覆部136を備えている。上部傘部132は、上方から下方に向けて径が広がっており、下端の径方向端部に第1突出部134が設けられている。第1突出部134は、上部傘部132の外周面の2箇所に形成されており、上方部134aから下方部134bに向けて傾斜している傾斜部134cが設けられている。上方部134aと下方部134bの上部傘部132の径方向外側への突出長さは等しい。上方部134aは、第1突出部134の他の部分より最も上方に位置している。下方部134bは、第1突出部134の他の部分より最も下方に位置している。
また、両下方部134bは、互いに接続されず途切れている。その結果、部カットアウト本体130には、2個の第1突出部134が設けられているといえる。
【0031】
なお、
図6、
図7から明らかなように、上部カットアウト本体130においても、第1突出部134の上方部134aが取付金具90の直線部分を覆っている。換言すると、第1突出部134の下方部134bが取付金具90の円弧部分を部分的に覆っている。上部傘部132に付着した雨水は、第1突出部134の下方部134bの端部から落下する。詳述すると上部傘部132に付着した雨水は、上部傘部132の表面を流れ、第1突出部134に到達する。第1突出部134に到達した雨水のうち上方部134aに到達した雨水は、傾斜部134cの上面を流れ、下方部134bの端部(第1突出部134の最も低い位置)に移動する。そして、雨水は、第1突出部34の下方部34bの端部から落下する。すなわち、上部傘部132に付着した雨水は、第1突出部134の下方部134bの端部から落下する。そのため、上部傘部132から落下した雨水が、取付金具90(直線部分)に落下することを抑制することができる。その結果、上部傘部132の外面と取付金具90が閃絡することを抑制することができる。また、両下方部134bが接続されていないので、雨水は下方部134bの端部から確実に落下し、下方部134bの上面に雨水や汚染物が残存ことを抑制することができる。
【0032】
(他の変形例)
第2実施例では、上方部134aと下方部134bの上部傘部132の径方向外側への突出長さが等しい例について説明した。しかしながら、上方部134aの径方向外側への突出長さと、下方部134bの径方向外側への突出長さは異なっていてもよい。例えば、上方部134aの径方向外側への突出長さを、下方部134bの径方向外側への突出長さより長くしてもよい。この場合、上方部134aが取付金具90の直線部分を覆う面積が増大し、上部傘部132の外面と取付金具90が閃絡することをさらに抑制することができる。なお、第1実施例の上部傘部32においても、上方部34aの径方向外側への突出長さを、下方部34bの径方向外側への突出長さより長くしてもよい。
【0033】
上記実施例では、下部傘部50の突出部54が、下部傘部50の外周面を一巡しており、周方向において突出部54の下部傘部50からの突出長さが等しい例について説明した。しかしながら、下部傘部50の突出部54の構造を、上部傘部132の第1突出部134の構造と同様にしてもよい。すなわち、突出部54を下部傘部50の外周面の2箇所に形成し、下方部を互いに接続されず途切れさせてもよい。また、突出部54においても、上方部の径方向外側への突出長さを、下方部の径方向外側への突出長さより長くしてもよい。
【0034】
上記実施実施例では、上部傘部32,132の径方向の大きさと下部傘部50の径方向の大きさが同一である例について説明した。しかしながら、上部傘部32,132と下部傘部50の径方向の大きさは、異なっていてもよい。例えば、下部傘部50の径方向の大きさを、上部傘部32,132の径方向の大きさより大きくしてもよい。下部傘部50の径方向の大きさは、下部カットアウト本体70の円筒部78の径方向の大きさよりも大きければ適宜変更することもできる。
【0035】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。