(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135512
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】壁開口部の浸水防止構造
(51)【国際特許分類】
E06B 5/00 20060101AFI20230921BHJP
E04H 9/14 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E04H9/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040760
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】小山 徹
【テーマコード(参考)】
2E139
2E239
【Fターム(参考)】
2E139AA07
2E139AC19
2E239AC04
(57)【要約】
【課題】壁開口部付近の美観が損なわれるのを回避しながら、水害発生時には迅速に浸水防止を図ることができる壁開口部の浸水防止構造を提供する。
【解決手段】住宅10は、外壁12に形成された窓開口部16と、その窓開口部16に設けられた窓枠21とを備えている。窓枠21は、一対の縦枠部22a,22bを有している。住宅10は、止水シート41を備えている。止水シート41は、窓開口部16の下部領域16aを閉鎖する展開状態とされることで、窓開口部16を通じた居室11への水の浸入を防止する。外壁12の内部には、縦枠部22aに沿って上下方向に延びる収容空間31が形成されている。収容空間32は、止水シート41を巻き取り状態で収容可能となっている。収容空間31は、縦枠部22aが取り外されることにより、窓開口部16側に開放されるようになっている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕切壁に形成された壁開口部と、その壁開口部に設けられた開口枠とを備え、
前記開口枠は、その枠部として、前記壁開口部の側縁部に設けられる一対の縦枠部と、前記壁開口部の上縁部に設けられる上枠部とを有する建物に適用され、
前記壁開口部の少なくとも下部領域を閉鎖する展開状態とされることで、前記壁開口部を通じた水の浸入を防止する止水シートを備える壁開口部の浸水防止構造であって、
前記仕切壁の内部には、前記枠部に沿って延び前記枠部により前記壁開口部側から覆われているとともに、前記止水シートを巻き取り状態又は折り畳み状態で収容可能な収容空間が形成され、
前記収容空間を覆う前記枠部は、取り外し可能又は移動可能に設けられた第1枠部であり、
前記第1枠部が取り外されるか又は移動されることにより、前記収容空間が前記壁開口部側に開放されることを特徴とする壁開口部の浸水防止構造。
【請求項2】
前記第1枠部は、前記縦枠部であることを特徴とする請求項1に記載の壁開口部の浸水防止構造。
【請求項3】
前記収容空間には、前記止水シートが前記巻き取り状態又は前記折り畳み状態で前記第1枠部に沿って収容されており、
前記止水シートは、その一端部が前記収容空間の内部に固定されているとともに、前記収容空間が前記開放された場合に、他端側が前記収容空間から引き出されることにより前記展開状態に移行可能となっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の壁開口部の浸水防止構造。
【請求項4】
前記第1枠部は、前記各縦枠部のうちの一方である第1縦枠部であり、他方の縦枠部は第2縦枠部であり、
前記止水シートの他端部は前記第1縦枠部に固定されており、
前記第1縦枠部は取り外し可能に設けられているとともに、取り外した前記第1縦枠部を前記第2縦枠部に隣接する位置まで移動させることにより、前記止水シートを前記展開状態に移行させることが可能となっていることを特徴とする請求項3に記載の壁開口部の浸水防止構造。
【請求項5】
前記仕切壁は、屋内外を仕切る外壁であり、
前記壁開口部は、前記外壁に形成されていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の壁開口部の浸水防止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁開口部の浸水防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、集中豪雨に伴う河川の決壊等により建物等への浸水がたびたび生じている。そこで、建物内への浸水対策として、建物の開口部に設けられる止水構造が提案されている。例えば、特許文献1の止水構造は、建物の開口部(例えば、玄関口)の屋内側に着脱可能な止水板を設けることで、開口部を通じた建物内への浸水防止を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した止水構造は、水害発生時には迅速に設置するのが望ましい。このため、通常時においては、止水構造を構成する止水板等の部材を、例えば開口部付近の壁際に保管しておくと都合がよいと考えられる。しかしながら、そうすると、保管中の部材により開口部付近の美観が損なわれてしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、壁開口部付近の美観が損なわれるのを回避しながら、水害発生時には迅速に浸水防止を図ることができる壁開口部の浸水防止構造を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明の壁開口部の浸水防止構造は、仕切壁に形成された壁開口部と、その壁開口部に設けられた開口枠とを備え、前記開口枠は、その枠部として、前記壁開口部の側縁部に設けられる一対の縦枠部と、前記壁開口部の上縁部に設けられる上枠部とを有する建物に適用され、前記壁開口部の少なくとも下部領域を閉鎖する展開状態とされることで、前記壁開口部を通じた水の浸入を防止する止水シートを備える壁開口部の浸水防止構造であって、前記仕切壁の内部には、前記枠部に沿って延び前記枠部により前記壁開口部側から覆われているとともに、前記止水シートを巻き取り状態又は折り畳み状態で収容可能な収容空間が形成され、前記収容空間を覆う前記枠部は、取り外し可能又は移動可能に設けられた第1枠部であり、前記第1枠部が取り外されるか又は移動されることにより、前記収容空間が前記壁開口部側に開放されることを特徴とする。
【0007】
第1の発明によれば、水害発生時に、止水シートを壁開口部の所定の開口領域を閉鎖する展開状態とすることで、壁開口部を通じた水の浸入を防止することができる。また、仕切壁の内部には、枠部(第1枠部)により壁開口部側から覆われた収容空間が形成されており、通常時には、その収容空間に止水シートを巻き取り状態又は折り畳み状態で収容しておくことができる。これにより、壁開口部周辺の美観が損なわれるのを回避することができる。
【0008】
また、壁開口部に設けられた開口枠のうち、収容空間を覆う第1枠部は、取り外し可能又は移動可能に設けられている。この場合、第1枠部を取り外すか移動させることにより、収容空間を壁開口部側に開放することができる。このため、水害発生時には、収容空間から止水シートを引き出して、速やかに展開状態とすることができる。これにより、迅速に浸水防止を図ることができる。
【0009】
第2の発明の壁開口部の浸水防止構造は、第1の発明において、前記第1枠部は、前記縦枠部であることを特徴とする。
【0010】
第2の発明によれば、第1枠部が縦枠部となっているため、その縦枠部を取り外すか又は移動させることにより収容空間を開放させることができる。上枠部を取り外したり移動させたりする場合には、上枠部が天井付近の高さに設けられているため、その作業が大変であると考えられるが、上記の構成によれば、比較的その作業がし易い。そのため、水害発生時に、速やかに収容空間を開放し、止水シートを展開させることができる。
【0011】
第3の発明の壁開口部の浸水防止構造は、第1又は第2の発明において、前記収容空間には、前記止水シートが前記巻き取り状態又は前記折り畳み状態で前記第1枠部に沿って収容されており、前記止水シートは、その一端部が前記収容空間の内部に固定されているとともに、前記収容空間が前記開放された場合に、他端側が前記収容空間から引き出されることにより前記展開状態に移行可能となっていることを特徴とする。
【0012】
第3の発明によれば、第1枠部を取り外すか又は移動させることで収容空間を開放した後、止水シートの他端側を収容空間から引き出すことにより、止水シートを展開状態に移行することができる。これにより、水害発生時に、より迅速に浸水防止を図ることができる。
【0013】
第4の発明の壁開口部の浸水防止構造は、第3の発明において、前記第1枠部は、前記各縦枠部のうちの一方である第1縦枠部であり、他方の縦枠部は第2縦枠部であり、前記止水シートの他端部は前記第1縦枠部に固定されており、前記第1縦枠部は取り外し可能に設けられているとともに、取り外した前記第1縦枠部を前記第2縦枠部に隣接する位置まで移動させることにより、前記止水シートを前記展開状態に移行させることが可能となっていることを特徴とする。
【0014】
第4の発明によれば、止水シートの他端部が第1縦枠部に固定されており、その第1縦枠部を取り外して第2縦枠部に隣接する位置まで移動させることで、止水シートを展開状態に移行させることができる。この場合、第1縦枠部を第2縦枠部に固定等することにより、止水シートの展開状態を容易に維持することが可能となる。
【0015】
第5の発明の壁開口部の浸水防止構造は、前記仕切壁は、屋内外を仕切る外壁であり、前記壁開口部は、前記外壁に形成されていることを特徴とする。
【0016】
第5の発明によれば、屋内外を仕切る壁開口部に浸水防止構造が設けられているため、建物内への浸水を好適に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図5】止水シートの展開状態において窓開口部を居室側から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態の住宅10は、居住空間としての居室11を有している。なお、
図1及び
図2は、窓開口部16を居室11側から見た図である。
【0019】
図1及び
図2に示すように、住宅10には、居室11を屋外と仕切る外壁12が設けられている。外壁12には、居室11と屋外とを連通する窓開口部16が形成されている。窓開口部16は、居室11の床部13の床面から天井部14に向けて延びる掃き出し窓とされ、正面視矩形状をなしている。なお、窓開口部16は壁開口部に相当し、外壁12は仕切壁に相当する。
【0020】
窓開口部16の周縁部には、サッシ枠18と窓枠21とが設けられている。サッシ枠18及び窓枠21は、いずれも矩形枠状に形成されており、屋内外方向に並べて配置されている。サッシ枠18が屋外側に配置され、窓枠21が屋内側に配置されている。なお、窓枠21は、開口枠に相当する。
【0021】
サッシ枠18には、サッシ戸19が開閉可能に設けられている。サッシ戸19は、引き違い式で複数設けられており、それらサッシ戸19は、窓開口部16の幅方向に沿ってスライド移動することが可能なガラス戸になっている。
【0022】
窓枠21は、窓開口部16の各側縁部17に設けられた一対の縦枠部22と、窓開口部16の上縁部23に設けられた上枠部24と、窓開口部16の下縁部25に設けられた下枠部26とを有している。各縦枠部22は、上枠部24と下枠部26との間に配設されている。
【0023】
ここで、本実施形態では、窓開口部16に、屋外側から窓開口部16を通じて居室11に水が浸入するのを防止する浸水防止構造が設けられている。以下、その浸水防止構造の構成について、
図1及び
図2を参照しつつ説明する。
【0024】
図1及び
図2に示すように、外壁12は、屋外に面して設けられた外壁面材33と、居室11に面して設けられた内壁面材32とを有している。外壁面材33は、例えば窯業系サイディングボードよりなり、内壁面材32は、例えば石膏ボードよりなる。外壁面材33と内壁面材32とは屋内外方向に離間対向して配置されている。
【0025】
外壁12の内部には、後述する止水シート41を収容可能な収容空間31が設けられている。収容空間31は、各縦枠部22のうち一方の縦枠部22aと内壁面材32とにそれぞれ隣接しており、縦枠部22aに沿って上下に延びる縦長空間となっている。収容空間31は、縦枠部22aにより窓開口部16側から覆われているとともに、内壁面材32により居室11側から覆われている。より詳しくは、内壁面材32の裏面側には、上下方向に延びる縦フレーム34が固定され、その縦フレーム34は縦枠部22aと内壁面材32の壁幅方向に離間対向して配置されている。そして、それら対向する縦枠部22aと縦フレーム34との間が収容空間31となっている。
【0026】
収容空間31には、縦枠部22aに沿って上下に延びるカバー部材35が設けられている。カバー部材35は、縦枠部22aの上下方向の全域に亘って延びている。カバー部材35は略筒状をなしており、詳しくは略四角筒状をなしている。カバー部材35は、その外面を内壁面材32及び縦枠部22aに当接させた状態で内壁面材32に固定されている。また、カバー部材35には、その内外を連通するスリット部36が設けられている。スリット部36は上下方向に延びており、縦枠部22aの側を向いている。
【0027】
収容空間31には、縦枠部22aに沿って上下に延びる略円柱状のポール38が設けられている。ポール38は、カバー部材35の内部に設けられ、周方向に回転することが可能となっている。
【0028】
収容空間31には、止水シート41が設けられている。止水シート41は、防水性を有する略長方形状のシート材からなる。止水シート41は、収容空間31に巻き取り状態で収容されている。止水シート41は、水害発生時に窓開口部16に展開されることで、窓開口部16を通じた屋外から居室11への浸水を防止するものとなっている(
図5参照)。
【0029】
止水シート41は、ポール38に巻き取られた状態で、カバー部材35の内部に収容されている。詳しくは、止水シート41は、その短手方向を上下方向に向けた状態でポール38に巻き取られている。この場合、止水シート41は、縦枠部22aに沿って上下に延びる向きでカバー部材35の内部(ひいては収容空間31)に収容されている。また、止水シート41は、その上下方向(短手方向)の長さが窓開口部16の高さ寸法の半分以下とされている。止水シート41は、収容空間31に収容された状態で、その下端部が窓開口部16の下端部と略同じ高さに位置し、その上端部が窓開口部16の中間部と略同じ高さ位置に位置している。
【0030】
止水シート41は、その長手方向の一端部がポール38に固定されている。したがって、止水シート41の上記一端部は、収容空間31の内部に固定されている。また、止水シート41の長手方向の他端部は、スリット部36を通じてカバー部材35の外部に出た状態とされ、縦枠部22aに固定されている。なお、スリット部36のスリット幅は、止水シート41の厚さ寸法と略同一とされている。
【0031】
続いて、水害発生時に止水シート41を展開状態とすることで、窓開口部16を通じた浸水防止を図る浸水防止作業の手順について、
図3~
図5を参照しつつ説明する。なお、
図5では、説明の便宜上、止水シート41にドットハッチを付している。
【0032】
縦枠部22aは、窓開口部16の側縁部17に取り外し可能に設けられている。縦枠部22aは、窓開口部16の側縁部17に対してビス43止めされている。詳しくは、縦枠部22aには、上下方向に所定の間隔で複数のビス孔45が設けられ、これらのビス孔45を通じてビス43が側縁部17に設けられたカバー部材35にねじ込まれている。これにより、ビス43を外して縦枠部22aをカバー部材35から取り外すことが可能となっている。
【0033】
浸水防止作業に際してはまず、各ビス43を取り外すことで、縦枠部22aを側縁部17から取り外す。これにより、
図3に示すように、収容空間31は、窓開口部16側に開放される。なお、縦枠部22aは、第1枠部に相当する。
【0034】
次いで、縦枠部22aを、他方の縦枠部22(以下、縦枠部22bという)に向けて移動させる。そうすると、止水シート41は、縦枠部22aに追従して収容空間31(カバー部材35)から引き出されていく。この際、止水シート41は、ポール38が周方向に回転することで繰り出され、スリット部36の内周面に対して摺動しつつ展開されていく。
【0035】
そして、
図4に示すように、縦枠部22aを縦枠部22bに隣接する位置まで移動させる。詳しくは、縦枠部22aを縦枠部22bの窓開口部16側に隣接する位置まで移動させる。そうすると、
図5に示すように、止水シート41は、窓開口部16の下部領域16aを閉鎖する展開状態となる。このように、本浸水防止構造によれば、縦枠部22aをカバー部材35から取り外し、縦枠部22bに隣接する位置まで移動させることにより、止水シート41を展開状態に移行させることが可能となっている。これにより、窓開口部16を通じた居室11への浸水を防止することができる。なお、縦枠部22aは第1縦枠部に相当し、縦枠部22bは第2縦枠部に相当する。
【0036】
次いで、縦枠部22aを縦枠部22bに対して固定する。具体的には、縦枠部22bには、縦枠部22aの各ビス孔45と対応する位置にそれぞれビス穴46が設けられている。縦枠部22aのビス孔45を通じてビス43を縦枠部22bのビス穴46にねじ込むことで、縦枠部22aを縦枠部22bに固定する(
図4参照)。これにより、止水シート41の展開状態を維持することができる。
【0037】
次いで、止水シート41と下枠部26との境界部をブチルテープ等の防水テープ48により塞ぐ。防水テープ48は、上記境界部の全域に亘って設けられ、止水シート41と下枠部26とにそれぞれ貼り付けられる。これにより、止水シート41と下枠部26との間における水密性を確保することができる。同様に、スリット部36と止水シート41との境界部や各縦枠部22a,22bの境界部についても、防水テープ48で覆うようにするとよい。これにより、それら境界部における水密性を好適に確保することができる。
【0038】
以上、詳述した上記実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0039】
上記実施形態によれば、水害発生時に、止水シート41を窓開口部16の下部領域16aを閉鎖する展開状態とすることで、窓開口部16を通じた居室11への水の浸入を防止することができる。また、外壁12の内部には、縦枠部22aにより窓開口部16側から覆われるとともに、内壁面材32により居室11側から覆われた収容空間31が形成されており、通常時には、その収容空間31に止水シート41を巻き取り状態で収容しておくことができる。これにより、窓開口部16周辺の美観が損なわれるのを回避することができる。
【0040】
また、窓開口部16に設けられた窓枠21のうち、収容空間31を覆う縦枠部22aは、取り外すことが可能に設けられている。この場合、縦枠部22aを取り外すことにより、収容空間31を窓開口部16側に開放することができる。このため、水害発生時には、収容空間31から止水シート41を引き出して、速やかに展開状態とすることができる。これにより、迅速に浸水防止を図ることができる。
【0041】
上記実施形態によれば、縦枠部22aが取り外し可能となっているため、その縦枠部22aを取り外すことにより収容空間31を開放させることができる。上枠部24を取り外す場合には、上枠部24が天井付近の高さに設けられているため、その作業が大変であると考えられるが、上記の構成によれば、比較的その作業がし易い。そのため、水害発生時に、速やかに収容空間31を開放し、止水シート41を展開させることができる。
【0042】
上記実施形態によれば、側縁部17から縦枠部22aを取り外すことで収容空間31を開放した後、止水シート41の他端側を収容空間31(カバー部材35)から引き出すことにより、止水シート41を展開状態に移行することができる。これにより、水害発生時に、より迅速に浸水防止を図ることができる。
【0043】
上記実施形態によれば、止水シート41の他端部が縦枠部22aに固定されており、その縦枠部22aを取り外して縦枠部22bに隣接する位置まで移動させることで、止水シート41を展開状態に移行させることができる。また、各縦枠部22同士をビス43等により固定することで、止水シート41の展開状態を容易に維持することができる。
【0044】
上記実施形態によれば、外壁12に設けられた窓開口部16に浸水防止構造が設けられている。これにより、住宅10内への浸水を好適に防止することができる。
【0045】
上記実施形態によれば、止水シート41は、縦枠部22aに沿って上下に延びるポール38に巻き取られた状態で収容空間31に収容されている。これにより、止水シート41を縦枠部22aに沿った向きで保持することが容易となる。また、止水シート41に折り目が付くことを抑制できるため、止水シート41の状態をより良好に保つことができる。
【0046】
上記実施形態によれば、縦枠部22aは、側縁部17に設けられたカバー部材35に対してビス43止めされている。つまり、止水シート41を収容するカバー部材35は、縦枠部22aを側縁部17に固定する下地としても兼用されている。これにより、縦枠部22aを側縁部17に好適に固定することができる。
【0047】
本発明は、上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0048】
(1)上記実施形態では、止水シート41は巻き取り状態で収容空間31に収容されているが、これに限定されない。止水シートは、折り畳み状態で収容空間に収容するようにしてもよい。その際、止水シートは、展開方向に複数回外折りした状態で第1枠部に沿って収容するとよい。また、止水シートの一端部は、収容空間の内部に固定することが好ましく、例えば仕切壁の壁面材の裏面(収容空間側の面)に固定することが考えられる。なお、止水シートの折り畳み方については、止水シートを収容空間内に収容可能であれば特に限定されない。
【0049】
(2)上記実施形態では、止水シート41は、その各側端部がポール38と縦枠部22aとにそれぞれ固定されており、縦枠部22aを縦枠部22bに隣接させる位置まで移動させることで、止水シート41を展開状態にするようにしたが、これに限定されない。例えば、止水シートは第1枠部に固定されていなくてもよく、止水シートを直接つかんで引き出す(展開する)ようにしてもよい。また、止水シートは、その各側端部がどこにも固定されていないものであってもよい。例えば、止水シートを折り畳んだ状態で収容空間に収容しておき、水害発生時には、止水シート全体を収容空間から取り出して使用するようにしてもよい。
【0050】
(3)上記実施形態では、窓枠21は、一対の縦枠部22と上枠部24と下枠部26とを有しているが、これに限定されない。開口枠は、一対の縦枠部と上枠部とを有していればよく、下枠部は必須の構成ではない。また、上記実施形態では、上枠部24が各縦枠部22の上方に設けられているが、各縦枠部22の上端部の間に上枠部24が配設されるようにしてもよい。その場合、上枠部24を取り外してから縦枠部22aを取り外すことになる。なお、窓開口部16の上縁部23から取り外された上枠部24は、下枠部26に載置するとともに、移動後の縦枠部22aと側縁部17とにより挟まれた状態にするとよい。その際、上枠部24は、防水テープ48やビス等を用いて下枠部26に固定するとよい。これにより、各縦枠部22同士が離間したり、水圧で止水シート41が居室11方向に撓んだりするのを好適に抑制することができる。
【0051】
(4)上記実施形態では、収容空間31は、縦枠部22aに沿って設けられているが、これに限定されない。収容空間は、上枠部24に沿って設けられていてもよいし、下枠部26に沿って設けられていてもよい。それらの場合、上枠部や下枠部が第1枠部に相当することになる。また、収容空間31の形状は、止水シートを収容可能であれば特に限定されない。カバー部材35の形状は、四角筒状に限定されるものではなく、例えば、円筒状であってもよい。カバー部材35は、縦枠部22aの上下方向の全域に亘って延びている必要はなく、止水シートを収容可能であればよい。ただし、縦枠部を好適に固定可能である点からすると、上記実施形態の構成が望ましい。なお、カバー部材35は、必須の構成ではない。
【0052】
(5)上記実施形態では、止水シート41が、窓開口部16の下部領域16a(詳しくは下部領域16aのみ)を塞ぐようになっているが、これに限定されない。例えば、止水シート41の上下方向寸法を窓開口部16の上下方向寸法と略同じとし、止水シート41が窓開口部16の全域を塞ぐようにしてもよい。要するに、止水シート41は、窓開口部16の少なくとも下部領域16aを塞ぐことが可能であれば、その大きさは任意としてよい。
【0053】
(6)上記実施形態では、縦枠部22aは、取り外し可能に設けられているが、これに限定されない。例えば、第1枠部は、回動軸を介して仕切壁に取り付けられており、第1枠部を回動移動させることで、収容空間を開放できる構成が考えられる。また、第1枠部はスライド移動可能に仕切壁に取り付けられており、第1枠部をスライド移動させることで収容空間を開放できる構成としてもよい。
【0054】
(7)上記実施形態では、縦枠部22aは、その全体を取り外すようになっているが、これに限定されない。例えば、第1枠部は、その長手方向の中間部で分割されており、下部のみが取り外し又は移動可能となっていてもよい。
【0055】
(8)上記実施形態では、防水テープ48等を用いて浸水防止構造の水密性を確保するようにしていたが、水密性を確保する方法については、特に限定されるものではない。例えば、止水シートの下端側の一部を、居室側に折り曲げるとともに下枠部上に配置し、止水シートの下枠部上の部分に重りを載置するようにしてもよい。重りとしては、例えば、金属材料等からなるおもり部材を用いてもよいし、上枠部を上縁部に取り外し可能に設ける構成において、取り外し後の上枠部を用いてもよい。
【0056】
(9)上記実施形態では、掃き出し窓からなる窓開口部16に本発明の浸水防止構造を適用したが、ドアが設けられた玄関口や勝手口等のドア開口部(壁開口部に相当)に本発明を適用してもよい。また、本発明の浸水防止構造は、必ずしも人の出入りが可能な窓開口部16やドア開口部、すなわち出入口に適用する必要はなく、人の出入りが不能な窓部(壁開口部に相当)に適用してもよい。
【0057】
また、本発明の浸水防止構造は、外壁12に形成された壁開口部だけでなく、住宅10内の間仕切壁(仕切壁に相当)に形成された出入口(壁開口部に相当)に適用してもよい。かかる出入口にも、その周縁部に開口枠が設けられている場合があり、その場合、本発明を適用することが可能となる。かかる構成では、住宅10内への浸水が生じた場合に、その水が出入口を通じて住宅10の奥側に浸入するのを防止することが可能となる。
【0058】
(10)本発明を適用する建物は、住宅に限定されるものではない。また、ユニット式建物に限定されるものではなく、鉄骨軸組工法により構築される建物や、在来木造工法により構築される建物等、その他の建物であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
10…建物としての住宅、12…仕切壁としての外壁、16…壁開口部としての窓開口部、16a…下部領域、17…側縁部、21…開口枠としての窓枠、22a…第1枠部及び第1縦枠部としての縦枠部、22b…第2縦枠部としての縦枠部、23…上縁部、24…上枠部、31…収容空間、41…止水シート。