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特開2023-135516酸化マグネシウム分散液、その製造方法及び酸化マグネシウム薄膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135516
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】酸化マグネシウム分散液、その製造方法及び酸化マグネシウム薄膜
(51)【国際特許分類】
   C01F 5/06 20060101AFI20230921BHJP
【FI】
C01F5/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040772
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000119988
【氏名又は名称】宇部マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大渕 孝之
(72)【発明者】
【氏名】久保 寛明
(72)【発明者】
【氏名】三谷 敦志
(72)【発明者】
【氏名】岡田 文夫
(72)【発明者】
【氏名】瀬田 竜也
【テーマコード(参考)】
4G076
【Fターム(参考)】
4G076AA02
4G076AB06
4G076AB09
4G076BA38
4G076BD02
4G076CA10
4G076CA14
4G076CA26
4G076DA18
4G076DA30
(57)【要約】
【課題】基板全体に酸化マグネシウム薄膜を均一に製膜することができる酸化マグネシウム分散液を提供する。
【解決手段】結晶子径が35nm未満の酸化マグネシウム粒子と、メタノール及び/又はエタノールと、非ビシナルである多価アルコールと、を含む、酸化マグネシウム分散液、であって、前記酸化マグネシウム分散液の全体量に対して、酸化マグネシウム粒子を1~25.0質量%、メタノール又はエタノールを50~98.5質量%、非ビシナルである多価アルコールを0.5~49.0質量%、の範囲にて含む、酸化マグネシウム分散液である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶子径が35nm未満の酸化マグネシウム粒子と、メタノール及び/又はエタノールと、非ビシナルである多価アルコールと、を含む、酸化マグネシウム分散液、であって、
前記酸化マグネシウム分散液の全体量に対して、酸化マグネシウム粒子を1~25.0質量%、メタノール及び/又はエタノールを50~98.5質量%、非ビシナルである多価アルコールを0.5~49.0質量%、の範囲にて含む、酸化マグネシウム分散液。
【請求項2】
前記非ビシナルである多価アルコールが炭素数3~7の非ビシナルジオールであって、且つ融点が25℃以下である請求項1に記載の酸化マグネシウム分散液。
【請求項3】
マグネシウム化合物をか焼して、又は、金属マグネシウムを気相酸化して、結晶子径35nm未満の酸化マグネシウム粒子を得る工程と、
前記酸化マグネシウム粒子を、メタノール及び/又はエタノールと、非ビシナルである多価アルコールとに分散する工程を含む、酸化マグネシウム分散液の製造方法であって、
前記酸化マグネシウム分散液の全体量に対して、酸化マグネシウム粒子を1~25.0質量%、メタノール及び/又はエタノールを50~98.5質量%、非ビシナルである多価アルコールを0.5~49.0質量%、の範囲にて含む、酸化マグネシウム分散液の製造方法。
【請求項4】
マグネシウム化合物をか焼、又は、金属マグネシウムを気相酸化して、結晶子径35nm未満の酸化マグネシウム粒子を得る工程と、
前記酸化マグネシウム粒子を、メタノール及び/又はエタノールと、非ビシナルである多価アルコールとに分散する工程を含む、酸化マグネシウム分散液の製造方法であって、
前記分散する工程が、予め酸化マグネシウムと、メタノール及び/又はエタノールとを分散する工程と、更に非ビシナルである多価アルコールを添加して酸化マグネシウム分散液を得る工程とを含み、
前記酸化マグネシウム分散液の全体量に対して、酸化マグネシウム粒子を1~25.0質量%、メタノール及び/又はエタノールを50~98.5質量%、非ビシナルである多価アルコールを0.5~49.0質量%、の範囲にて含む、酸化マグネシウム分散液の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし2のいずれか一項に記載の酸化マグネシウム分散液を塗布製膜することで得られた結晶子径35nm未満の酸化マグネシウムで構成された酸化マグネシウム薄膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化マグネシウム分散液、その製造方法及び酸化マグネシウム薄膜に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化マグネシウム薄膜はAC型PDP(交流型プラズマディスプレイパネル)の誘電体保護層、MRAM(磁気抵抗メモリー)及びTMR素子(トンネル磁気抵抗素子)の絶縁膜、有機EL素子及びバリアフィルムの水分吸着層として利用されている。
これら酸化マグネシウム薄膜は、一般に電子ビーム蒸着法、スパッタ法、CVD法などの蒸着法により製造されている。しかし、蒸着法は真空中で成膜するため、真空チャンバーや真空ポンプなどの真空装置が必要であり、製造設備が大掛かりとなる。
【0003】
一方、常圧での成膜が可能な方法として、塗布法が知られている。塗布法は、酸化マグネシウム粒子あるいは後処理により酸化マグネシウムが得られる中間体の分散液を基板上に塗布して製膜する方法であり、真空装置を必要とせず、また製膜速度が蒸着法と比較して速いという利点がある。このため、酸化マグネシウム薄膜を製膜するための分散液が提案されている。
【0004】
特許文献1には、炭素原子数3~5の一価アルコール中に、酸化マグネシウム粒子が0.05~20質量%の範囲にて分散されてなり、動的光散乱法によって測定された酸化マグネシウム粒子の体積累積粒径D50が5~100nmの範囲にある酸化マグネシウム粒子分散液が記載されている。
【0005】
特許文献2には、極性有機溶媒中に、酸化マグネシウム粒子が分散液全体量に対して0.05~20質量%の範囲となる量にて分散されてなり、動的光散乱法によって測定された酸化マグネシウム粒子の体積累積粒径D50が5~20nmの範囲にあり、D10/D90が0.3以上である酸化マグネシウム粒子分散液が記載されている。
【0006】
特許文献3には、炭素原子数が1~5の範囲にある一価アルコール中に、酸化マグネシウム粒子が1~40質量%の範囲にて分散されていて、動的光散乱法によって測定される酸化マグネシウム粒子の体積累積粒径D50が5~90nmの範囲にある酸化マグネシウム粒子分散液であって、該分散液の水分含有量が9000質量ppm以下である酸化マグネシウム粒子分散液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006-225240号公報
【特許文献2】特開2007-137695号公報
【特許文献3】特開2014-114178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1から3で用いられた一価アルコールの分散液は乾燥に要する時間が短く、酸化マグネシウム分散液をスピンコート成膜にて厚い膜を形成するために遅い回転数とした場合、塗布液が濡れ広がる前に乾燥してしまい、基板全体に酸化マグネシウム薄膜を均一に製膜することができないという問題があった。
本発明は、基板全体に酸化マグネシウム薄膜を均一に製膜することができる酸化マグネシウム分散液、酸化マグネシウム分散液の製造方法及び当該酸化マグネシウム薄膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は鋭意検討の結果、メタノール及び/又はエタノールと高沸点溶媒として非ビシナルである多価アルコールとの混合溶媒を用いることで乾燥時間を伸ばす制御が可能となり、且つ、ゲル化が発生せず、塗布製膜で強固な密着性が発現する酸化マグネシウム分散液が得られることを見いだして本発明を完成した。ここでゲル化とは酸化マグネシウム分散液が時間経過と共に粘度上昇を起こし流動性が失われる現象を示す。
【0010】
すなわち、本発明は、結晶子径が35nm未満の酸化マグネシウム粒子と、メタノール及び/又はエタノールと、非ビシナルである多価アルコールと、を含む、酸化マグネシウム分散液、であって、前記酸化マグネシウム分散液の全体量に対して、酸化マグネシウム粒子を1~25.0質量%、メタノール及び/又はエタノールを50~98.5質量%、非ビシナルである多価アルコールを0.5~49.0質量%、の範囲にて含む、酸化マグネシウム分散液を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、マグネシウム化合物をか焼して、又は、金属マグネシウムを気相酸化して、結晶子径35nm未満の酸化マグネシウム粒子を得る工程と、前記酸化マグネシウム粒子を、メタノール及び/又はエタノールと、非ビシナルである多価アルコールとに分散する工程を含む、酸化マグネシウム分散液の製造方法であって、前記酸化マグネシウム分散液の全体量に対して、酸化マグネシウム粒子を1~25.0質量%、メタノール及び/又はエタノールを50~98.5質量%、非ビシナルである多価アルコールを0.5~49.0質量%、の範囲にて含む、酸化マグネシウム分散液の製造方法を提供するものである。
【0012】
更に、本発明は、マグネシウム化合物をか焼、又は、金属マグネシウムを気相酸化して、結晶子径35nm未満の酸化マグネシウム粒子を得る工程と、前記酸化マグネシウム粒子を、メタノール及び/又はエタノールと、非ビシナルである多価アルコールとに分散する工程を含む、酸化マグネシウム分散液の製造方法であって、前記分散する工程が、予め酸化マグネシウムと、メタノール及び/又はエタノールとを分散する工程と、更に非ビシナルである多価アルコールを添加して酸化マグネシウム分散液を得る工程とを含み、前記酸化マグネシウム分散液の全体量に対して、酸化マグネシウム粒子を1~25.0質量%、メタノール及び/又はエタノールを50~98.5質量%、非ビシナルである多価アルコールを0.5~49.0質量%、の範囲にて含む、酸化マグネシウム分散液の製造方法を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、上記の酸化マグネシウム分散液を塗布製膜することで得られた結晶子径35nm未満の酸化マグネシウムで構成された酸化マグネシウム薄膜を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、基板全体に酸化マグネシウム薄膜を均一に製膜することができる酸化マグネシウム分散液、酸化マグネシウム分散液の製造方法及び当該酸化マグネシウム薄膜を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好適な実施形態を以下に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
本発明の酸化マグネシウム分散液は、結晶子径が35nm未満の酸化マグネシウム粒子と、メタノール及び/又はエタノールと、非ビシナルである多価アルコールと、を含む。また、必要に応じて分散剤やバインダ、レベリング剤等を含んでもよい。ただし、高純度な酸化マグネシウム薄膜を得るためには必須成分である酸化マグネシウムと一価アルコールと多価アルコールを含み、添加剤である分散剤やバインダ、レベリング剤等を含まない分散液であることが好ましい。本発明の酸化マグネシウム分散液は酸化マグネシウムと一価アルコールと多価アルコールのみからなることがより好ましい。
【0017】
酸化マグネシウム粒子の結晶子径は、分散液中での酸化マグネシウム粒子の分散状態を長期的に安定化させ、かつ塗布時の密着性を発現させる観点から、35nm未満であり、20nm以下であることが好ましく、15nm以下であることがより好ましい。また、結晶子径の下限は特に限定されないが、必要以上に微小化するのは酸化マグネシウム製造が困難になるため、1nm以上であることが好ましく、3nm以上であることがより好ましく、5nm以上であることが特に好ましい。
【0018】
また、酸化マグネシウム粒子は、平均粒子径が塗布膜の平滑性を保持する観点から一般に5~200nmの範囲、好ましくは10~150nmの範囲、更に好ましくは10~60nmの範囲にある。
【0019】
また、本発明では、メタノール及び/又はエタノールを用いる。これらの一価アルコールを用いることで、塗布製膜時の密着性の発現、及び、分散状態の長期的維持が可能となる。
【0020】
なお、非ビシナルである多価アルコールは、2つの隣接した炭素原子それぞれに水酸基が結合していない多価アルコールを意味し、特には炭素数3~7であって、且つ融点が25℃以下であるものが好ましい。このような非ビシナルの多価アルコールとしては、例えば、1、3-プロパンジオール(融点:-27℃)、1,4-ブタンジオール(融点:20℃)、2-メチル-1,3-プロパンジオール(融点:25℃以下)、2,4-ペンタンジオール(融点:25℃以下)、1,5-ペンタンジオール(融点:-18℃)、1、5-ヘキサンジオール(融点:25℃以下)、2,5-ヘキサンジオール(融点:25℃以下)、2,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオール(融点:8℃)、2-メチル-2,4-ペンタンジオール(融点:―40℃)、3-メチル-1,5-ペンタンジオール(融点:25℃以下)、1,7-ヘプタンジオール(融点:20℃)、3-メチル-1,3-ブタンジオール(融点:-50℃)を挙げることができる。
高沸点溶媒として上述のような非ビシナルである多価アルコールを用いることで乾燥時間を伸ばす制御が可能となり、且つ、ゲル化が発生しない酸化マグネシウム分散液が得られる
【0021】
酸化マグネシウム分散液中の酸化マグネシウム粒子の含有量は、1.0~25質量%の範囲にあることが好ましく、3~20質量%の範囲であることがより好ましく、5~15質量%の範囲にあることが更に好ましい。これによって、酸化マグネシウム分散液中での酸化マグネシウム粒子の分散状態を長期的に安定化させ、且つ、当該分散液のゲル化を抑制することができる。
【0022】
また、酸化マグネシウム分散液中のメタノール及び/又はエタノールの含有量は、50.0~98.5質量%であり、50.0~96.0質量%が好ましく、50~93.5質量%がより好ましく、酸化マグネシウム分散液中の多価アルコールの含有量は、0.5~49.0質量%であり、1.0~45.0質量%が好ましく、1.5~40.0質量%がより好ましい。これによって、当該分散液のゲル化を抑制し、且つ、乾燥時間を広範囲に調整することが可能になる。
【0023】
本発明の酸化マグネシウム分散液は、以下のようにして製造することができる。
最初に、マグネシウム化合物をか焼して結晶子35nm未満の酸化マグネシウム粒子を得る。マグネシウム化合物としては、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムなどを好適に用いることができる。この場合、脱水や脱炭酸により所定の酸化マグネシウム粒子を得ることができる。マグネシウム化合物をか焼して得た酸化マグネシウム粒子は、1000℃で1時間加熱後のMgOの純度が95質量%以上であることが好ましく、97質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上が更に好ましい。
【0024】
また、結晶子35nm未満の酸化マグネシウム粒子は、気相酸化法により得られたものを用いることもできる。気相酸化法によって製造された酸化マグネシウム粒子は、一般に一次粒子が立方体状の粒子で、純度が99.98質量%以上と高純度である。気相酸化法とは、金属マグネシウム蒸気と酸素とを接触させて金属マグネシウム蒸気を酸化させることによって、酸化マグネシウム粒子を得る方法である。
【0025】
次いで、上述のようにして得た酸化マグネシウム粒子と、メタノール及び/又はエタノールと、非ビシナルの多価アルコールとを混合分散させて酸化マグネシウム分散液を得る。混合分散は、例えばロッキングミル、ペイントシェーカー、メディアミル、湿式ジェットミル、ロールミル分散機、超音波ホモジナイザー等を用いて行うことができる。なお、上記混合分散は、原料の酸化マグネシウム粒子の結晶子径が変化しない程度のエネルギーを加えて行う。したがって混合分散前後で平均粒子径が小さくなる場合はあるが、結晶子径に実質的な変化は生じない。
【0026】
また、本発明の酸化マグネシウム分散液は、以下のようにして製造することもできる。
最初に、上述のようにして酸化マグネシウム粒子を得る。次いで、当該酸化マグネシウム粒子をメタノール及び/又はエタノールに分散させた後、当該分散液に非ビシナルの多価アルコールを添加して混合・分散し、目的とする酸化マグネシウム分散液を得る。なお、上記同様に、混合分散は、原料の酸化マグネシウム粒子の結晶子径が変化しない程度のエネルギーを加えて行う。したがって混合分散前後で平均粒子径が小さくなる場合はあるが、結晶子径に実質的な変化は生じない。
【0027】
酸化マグネシウム分散液は、酸化マグネシウム薄膜を塗布法により製造する際の原料として有利に使用することができる。すなわち、酸化マグネシウム分散液を基板の上に塗布し、乾燥することによって酸化マグネシウム薄膜を製造することができる。酸化マグネシウム分散液を基板の上に塗布する方法としては、スピンコート法、ディッピング法、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、カーテンコート法、グラビア印刷法、シルクスクリーン法、インクジェット法などを用いることができる。
【0028】
酸化マグネシウム分散液を用いた塗布法により形成された酸化マグネシウム薄膜は、酸化マグネシウム粒子の膜状集合体である。このため、酸化マグネシウム薄膜の結晶子径は原料の酸化マグネシウムと同程度となる。すなわち、本発明の酸化マグネシウム分散液を用いた塗布法により形成された酸化マグネシウム薄膜は結晶性である。ここで結晶性とは、X線回折の測定にて酸化マグネシウムのピーク、例えば2θ=43°が認められることの意であり、その他の物質を含むことを妨げない。
【実施例0029】
実施例1
塩基性炭酸マグネシウム25g(平均粒子径:8.2μm、結晶子径:21.2nm)をアルミナ坩堝に入れ、箱型電気式加熱炉にて600℃、90分か焼して酸化マグネシウム粉末(平均粒子径:6.9μm、結晶子径:10.0nm)を得た。
次いで、容量100mLのポリプロピレン樹脂製ボトル容器に、酸化マグネシウム粉末(結晶子径10.0nm)6.0g、メタノール54.0g、及びジルコニア製球状メディア(ニッカトー社製、ジルコニアボール YTZ-0.1、直径:0.1mm)100gを投入して、蓋をした。次いで、ロッキングミル(RM―05、セイワ技研社製)を用いて50Hzにて4時間振とうして分散処理を行った。分散処理後、デカンテーションによってメディアを分離した。分散処理後の溶液10.0gに対して、1,3-プロパンジオール0.3gを添加して1分混合し、酸化マグネシウム分散液を調製した。
得られた分散液に対して、以下に示す評価を行い表1に示した。
【0030】
実施例2
1,3-プロパンジオールを0.5gとした以外は実施例1と同様にして分散液を調製した。得られた分散液に対して、以下に示す評価を行い表1に示した。
【0031】
実施例3
1,3-プロパンジオールを1.0gとした以外は実施例1と同様にして分散液を調製した。得られた分散液に対して、以下に示す評価を行い表1に示した。
【0032】
実施例4
1,3-プロパンジオールを2.0gとした以外は実施例1と同様にして分散液を調製した。得られた分散液に対して、以下に示す評価を行い表1に示した。
【0033】
実施例5
1,3-プロパンジオールを3.3gとした以外は実施例1と同様にして分散液を調製した。得られた分散液に対して、以下に示す評価を行い表1に示した。
【0034】
実施例6
1,3-プロパンジオールを5.0gとした以外は実施例1と同様にして分散液を調製した。得られた分散液に対して、以下に示す評価を行い表1に示した。
【0035】
実施例7
1,3-プロパンジオール0.3gの代わりに1,5-ペンタンジオールを0.3gとした以外は実施例1と同様にして分散液を調製した。得られた分散液に対して、以下に示す評価を行い表1に示した。
【0036】
実施例8
1,5-ペンタンジオールを0.5gとした以外は実施例7と同様にして分散液を調製した。得られた分散液に対して、以下に示す評価を行い表1に示した。
【0037】
実施例9
1,5-ペンタンジオールを1.0gとした以外は実施例7と同様にして分散液を調製した。得られた分散液に対して、以下に示す評価を行い表1に示した。
【0038】
実施例10
1,5-ペンタンジオールを2.0gとした以外は実施例7と同様にして分散液を調製した。得られた分散液に対して、以下に示す評価を行い表1に示した。
【0039】
実施例11
1,5-ペンタンジオールを3.3gとした以外は実施例7と同様にして分散液を調製した。得られた分散液に対して、以下に示す評価を行い表1に示した。
【0040】
実施例12
1,5-ペンタンジオールを5.0gとした以外は実施例7と同様にして分散液を調製した。得られた分散液に対して、以下に示す評価を行い表1に示した。
【0041】
実施例13
酸化マグネシウム粉末を12.0g、メタノールを48.0gとした以外は実施例3と同様にして分散液を調製した。得られた分散液に対して、以下に示す評価を行い表1に示した。
【0042】
実施例14
塩基性炭酸マグネシウムのか焼条件を950℃、60分として酸化マグネシウム粉末(平均粒子径:5.7μm、結晶子径:30.0nm)を得た以外は実施例3と同様にして分散液を調製した。得られた分散液に対して、以下に示す評価を行い表1に示した。
【0043】
実施例15
酸化マグネシウム粉末を気相酸化法により製造された市販品(宇部マテリアルズ株式会社製500A、平均粒子径4.4μm、結晶子径:31.9nm)とし、か焼工程を省略した以外は実施例3と同様にして分散液を調製した。得られた分散液に対して、以下に示す評価を行い表1に示した。
【0044】
実施例16
1,3-プロパンジオール0.3gの代わりに2-メチル-1,3-プロパンジオールを2.0gとした以外は実施例1と同様にして分散液を調製した。得られた分散液に対して、以下に示す評価を行い表1に示した。
【0045】
実施例17
1,3-プロパンジオール0.3gの代わりに2-メチル-2,4-ペンタンジオールを2.0gとした以外は実施例1と同様にして分散液を調製した。得られた分散液に対して、以下に示す評価を行い表1に示した。
【0046】
実施例18
1,3-プロパンジオール0.3gの代わりに3-メチル-1,3-ブタンジオールを2.0gとした以外は実施例1と同様にして分散液を調製した。得られた分散液に対して、以下に示す評価を行い表1に示した。
【0047】
実施例19
1,3-プロパンジオール0.3gの代わりに3-メチル-1,5-ペンタンジオールを2.0gとした以外は実施例1と同様にして分散液を調製した。得られた分散液に対して、以下に示す評価を行い表1に示した。
【0048】
比較例1
塩基性炭酸マグネシウム25g(平均粒子径:8.2μm、結晶子径:21.2nm)をアルミナ坩堝に入れ、箱型電気式加熱炉にて600℃90分か焼して酸化マグネシウム粉末(平均粒子径:6.9μm、結晶子径:10.0nm)を得た。
次いで容量100mLのポリプロピレン樹脂製ボトル容器に、酸化マグネシウム粉末(結晶子径10.0nm)6.0g、メタノール54.0g、ジルコニア製球状メディア(ニッカトー社製、ジルコニアボール YTZ-0.1、直径:0.1mm)100gを投入して、蓋をした。次いで、ロッキングミル(RM―05、セイワ技研社製)を用いて50Hzにて4時間振とうして分散処理を行った。分散処理後、デカンテーションによってメディアを分離し、酸化マグネシウム分散液を得た。
得られた分散液に対して、以下に示す評価を行い表2に示した。
【0049】
比較例2
メタノールを使用せず、1,3-プロパンジオール54.0gを用いてロッキングミルによる分散処理をした以外は比較例1と同様にして分散液を調製した。得られた分散液に対して、以下に示す評価を行い表2に示した。
【0050】
比較例3
1,3-プロパンジオール0.3gの代わりに1,2-エタンジオールを1.0gとした以外は実施例1と同様にして分散液を調製した。得られた分散液に対して、以下に示す評価を行い表2に示した。
【0051】
比較例4
1,2-エタンジオールを2.0gとした以外は比較例3と同様にして分散液を調製した。得られた分散液に対して、以下に示す評価を行い表2に示した。
【0052】
比較例5
1,3-プロパンジオール0.3gの代わりに1,2-プロパンジオールを2.0gとした以外は実施例1と同様にして分散液を調製した。得られた分散液に対して、以下に示す評価を行い表2に示した。
【0053】
比較例6
1,3-プロパンジオール0.3gの代わりに1,2-ペンタンジオールを2.0gとした以外は実施例1と同様にして分散液を調製した。得られた分散液に対して、以下に示す評価を行い表2に示した。
【0054】
比較例7
1,3-プロパンジオール0.3gの代わりにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を2.0gとした以外は実施例1と同様にして分散液を調製した。得られた分散液に対して、以下に示す評価を行い表2に示した。
【0055】
比較例8
1,3-プロパンジオール0.3gの代わりにテトラデカンを2.0gとした以外は実施例1と同様にして分散液を調製した。得られた分散液に対して、以下に示す評価を行い表2に示した。
【0056】
比較例9
酸化マグネシウム粉末を18.0g、メタノールを42.0gとした以外は実施例3と同様にして分散液を調製した。得られた分散液に対して、以下に示す評価を行い表2に示した。
【0057】
比較例10
塩基性炭酸マグネシウムのか焼条件を950℃、180分として酸化マグネシウム粉末(平均粒子径:5.7μm、結晶子径:35.0nm)を得た以外は実施例3と同様にして分散液を調製した。得られた分散液に対して、以下に示す評価を行い表2に示した。
【0058】
比較例11
メタノールを使用せず、1-ブタノール54.0gを用いてロッキングミルによる分散処理をした以外は比較例1と同様にして分散液を調製した。得られた分散液に対して、以下に示す評価を行い表2に示した。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
◇結晶子径評価方法
下記の条件でサンプルを測定しアルミナ焼結板を標準試料として装置による回折ピークの広がり補正を行った。得られたX線回折パターンのX線回折ピークの半価幅から以下の方法により結晶子径を求めた。
酸化マグネシウム:(200)面
塩基性炭酸マグネシウム:(110)面
(条件)
X線回折装置(ブルカー・エイエックスエス社製 NEW D8 ADVANCE)、X線源:CuKα(Niフィルター)、管電圧:40kV、管電流:40mA、検出器:1次元半導体高速検出器 LynxEye、発散スリット:0.30度、ステップサイズ:0.015度、計数時間:0.65秒/ステップ
シェラー法 L=Kλ/(βcosθ)
L:結晶子径
K:シェラー定数(0.9)
λ:波長(1.5418Å) (X線源:CuKα(Niフィルター使用))
β:半価幅
θ:ブラッグ角
【0062】
◇塩基性炭酸マグネシウム、原料酸化マグネシウム粉末の平均粒子径測定方法
レーザー回折散乱法(マイクロトラック・ベル株式会社製、MT-3000EXII)にて、以下の条件にて測定した。
(条件)
サンプルをエタノールに投入後、前処理として装置内蔵の超音波分散装置にて40W3分間分散処理を行った。その後粒度分布の測定を行い個数基準の平均粒子径を求めた。
◇酸化マグネシウム分散液の平均粒子径測定方法
動的光散乱法(ゼータサイザーナノZS、マルバーン社製)にて、以下の条件で測定し、体積基準の平均粒子径を求めた。なお、一価アルコールと非ビシナル多価アルコールとを用いた分散液は、用いた一価アルコールにて10倍に希釈した後に測定を行った。
(条件)
測定セル:ポリスチレン(10mm×10mm×45mm)
試料パラメータ(MgO) RI:1.735 吸収率:0.000
分散媒パラメータ:Methanol(温度:25.0℃、粘度:0.5476cP、RI:1.326)
Ethanol(温度:25.0℃、粘度:1.2000cP、RI:1.361)
温度:25.0℃
平衡時間:0秒
測定角度:173° Backscatter(NIBS default)
測定時間:自動
測定回数:3回
測定間隔の設定:0秒
【0063】
◇酸化マグネシウム分散液の半硬化乾燥時間測定方法
酸化マグネシウム分散液1.5gを50mmホウケイ酸ガラス(D263Teco、50×50mm、t0.7mm)に滴下し、スピンコーター(1H―DX2、ミカサ株式会社)にて回転数100rpmで3秒間回転させ、その後5秒間かけて回転数1,000rpmまで加速し、回転数1,000rpmで5秒間回転させた。その後3秒間かけて減速し停止させた。JIS K5600―1-1に規定される常温乾燥(24.5℃、50%RH)を行い、スピンコート停止時点から半硬化乾燥状態になるまでの時間を測定し、「30秒以下(「<30」と表記。)」、「30秒超60秒以下(「30~60」と表記。)」、「60秒超180秒以下(「60~180」と表記。)」、「180秒超300秒以下(「180~300」と表記。)」、「300秒より長い(「300<」と表記。)」で区別した。
【0064】
◇密着性評価方法
酸化マグネシウム分散液1.5gをホウケイ酸ガラス(D263Teco、50×50mm、t0.7mm、SCHOTT社製)に滴下し、スピンコーター(1H―DX2、ミカサ株式会社)にて回転数100rpmで5秒間回転させ、その後10秒間かけて回転数1,000rpmまで加速し、回転数1,000rpmで10秒間回転させた。その後5秒間かけて減速し停止させた。スピンコート停止後1分間静置し、その後100℃で15分加熱して完全に乾燥させた。
JIS-K5600付着性試験に適合した18mm幅のクロスカット試験・碁盤目試験準拠テープ(ニチバンセロテープ(登録商標))を塗布後の薄膜に貼り付けて剥がすことで密着性を評価した。テープ貼り付け面積に対し、テープ粘着面に酸化マグネシウムが全く付着しないものを◎とし、付着面積が半分未満のものを○とし、付着面積が半分以上のものを×とした。
【0065】
◇経時安定性評価方法
調製した酸化マグネシウム分散液を、ガラス製のスクリュー式バイアル管(マルエム社製、スクリュー管 No.3(21×45))に3gを封入し25℃にて2週間放置した。2週間放置後にゲル化、固形分の沈降のいずれもが起こっていないものを○とし、いずれかが起こっているものを×とした。
【0066】
表1から明らかなように、結晶子径が35nm未満の酸化マグネシウム粒子を使用するとともに、一価アルコールとしてメタノール使用し、多価アルコールとして非ビシナルの多価アルコールを使用し、酸化マグネシウム粒子を1~25.0質量%、メタノールを50~98.5質量%、非ビシナルである多価アルコールを0.5~49.0質量%の範囲で含む酸化マグネシウム分散液は、ゲル化を抑制して経時安定性に優れ、更には乾燥時間を遅らせることで均一で厚い膜を形成することができる。そして当該酸化マグネシウム分散液を用いて形成した塗布膜は、密着性に優れる。
【0067】
一方、多価アルコールを使用しない比較例1においては、密着性及び経時安定性は良好であるが、乾燥時間が早く、均一な厚膜の形成が困難なことが分かる。また、メタノールを使用しない比較例2及び比較例11は、経時安定性及び乾燥時間の遅延化を図ることはできるが密着性に劣ることが分かる。更に、ビシナルの多価アルコールやアルコール以外の溶媒を用いた比較例3-8、酸化マグネシウムの配合量が25質量%を超える比較例9、原料酸化マグネシウムの結晶子径が35nm以上である比較例10においては経時安定性に劣ることが分かる。