(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013552
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】リンク装置および延伸機
(51)【国際特許分類】
B29C 55/16 20060101AFI20230119BHJP
【FI】
B29C55/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021117833
(22)【出願日】2021-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉松 尚暁
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 一郎
【テーマコード(参考)】
4F210
【Fターム(参考)】
4F210AJ08
4F210AM24
4F210AR12
4F210QA02
4F210QC07
4F210QG01
4F210QG18
4F210QL04
4F210QL05
4F210QL06
4F210QL09
4F210QL16
(57)【要約】
【課題】狭い間隔で膜を把持することができるリンク装置を実現する。
【解決手段】リンク装置10R,10Lは、無端チェーンを構成するように連結され、2本のレールに沿って移動可能な複数のリンク機構11を有する。それぞれのリンク機構11は、レールホルダ24,25と、レールホルダ24に設けられ、回転しながら一方のレールに沿って移動する複数のガイドローラ30と、レールホルダ25に設けられ、回転しながら他方のレールに沿って移動する複数のガイドローラ30と、を有する。複数のリンク機構11には、レールホルダ24に3個のガイドローラ30が設けられている3ローラリンク機構11Aと、レールホルダ24に2個のガイドローラ30が設けられている2ローラリンク機構11Bと、が含まれ、3ローラリンク機構11Aと2ローラリンク機構11Bとは交互に配置される。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜を引き延ばす延伸機に用いられるリンク装置であって、
無端チェーンを構成するように連結され、2本のレールに沿って移動可能な複数のリンク機構を有し、
それぞれの前記リンク機構は、
第1のレールホルダ及び第2のレールホルダと、
前記第1のレールホルダと前記第2のレールホルダとに跨るベース部材と、
一端が前記第2のレールホルダと回転可能に連結され、他端が他のリンク機構が備える前記第1のレールホルダと回転可能に連結されるリンクプレートと、
前記ベース部材に設けられ、前記膜を把持するクリップと、
前記第1のレールホルダに設けられ、回転しながら前記2本のレールの一方に沿って移動する複数のガイドローラと、
前記第2のレールホルダに設けられ、回転しながら前記2本のレールの他方に沿って移動する複数のガイドローラと、を有し、
前記複数のリンク機構には、前記第1のレールホルダに3個の前記ガイドローラが設けられている3ローラリンク機構と、前記第1のレールホルダに2個の前記ガイドローラが設けられている2ローラリンク機構と、が含まれ、
前記3ローラリンク機構と前記2ローラリンク機構とが交互に配置されている、リンク装置。
【請求項2】
請求項1に記載のリンク装置において、
前記3ローラリンク機構の前記第1のレールホルダに、外径が同一の2個の小径ガイドローラと、前記小径ガイドローラよりも外径が大きい1個の大径ガイドローラと、が設けられ、
前記小径ガイドローラは、前記レールの一側に沿って移動し、前記大径ガイドローラは、前記レールの他側に沿って移動する、リンク装置。
【請求項3】
請求項2に記載のリンク装置において、
前記2ローラリンク機構の前記第1のレールホルダに、前記大径ガイドローラと同一の外径を有する2個の大径ガイドローラが設けられ、
1個の前記大径ガイドローラは、前記レールの一側に沿って移動し、他の1個の前記大径ガイドローラは、前記レールの他側に沿って移動する、リンク装置。
リンク装置。
【請求項4】
請求項3に記載のリンク装置において、
隣り合う前記3ローラリンク機構と前記2ローラリンク機構とは、前記3ローラリンク機構に設けられている2個の前記小径ガイドローラの一方と、前記2ローラリンク機構に設けられている2個の前記大径ガイドローラの一方とが部分的に重なり合うまで近接可能である、リンク装置。
【請求項5】
請求項4に記載のリンク装置において、
前記3ローラリンク機構に設けられている2個の前記小径ガイドローラは、回転軸の方向で異なる高さに配置され、かつ、径方向一部が互いに重なり合っている、リンク装置。
【請求項6】
請求項5に記載のリンク装置において、
前記大径ガイドローラの外径が37mmであり、
前記小径ガイドローラの外径が32mmであり、
隣り合う前記リンク機構の間の最小ピッチが40mmである、リンク装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のリンク装置において、
前記ガイドローラは、シャフトに装着された転がり軸受の外輪である、リンク装置。
【請求項8】
膜の搬送および延伸を行う一対のリンク装置を備える延伸機であって、
それぞれの前記リンク装置は、無端チェーンを構成するように連結され、2本のレールに沿って移動可能な複数のリンク機構を有し、
それぞれの前記リンク機構は、
第1のレールホルダ及び第2のレールホルダと、
前記第1のレールホルダと前記第2のレールホルダとに跨るベース部材と、
一端が前記第2のレールホルダと回転可能に連結され、他端が他のリンク機構が備える前記第1のレールホルダと回転可能に連結されるリンクプレートと、
前記ベース部材に設けられ、前記膜を把持するクリップと、
前記第1のレールホルダに設けられ、回転しながら前記2本のレールの一方に沿って移動する複数のガイドローラと、
前記第2のレールホルダに設けられ、回転しながら前記2本のレールの他方に沿って移動する複数のガイドローラと、を有し、
前記複数のリンク機構には、前記第1のレールホルダに3個の前記ガイドローラが設けられている3ローラリンク機構と、前記第1のレールホルダに2個の前記ガイドローラが設けられている2ローラリンク機構と、が含まれ、
前記3ローラリンク機構と前記2ローラリンク機構とが交互に配置されている、延伸機。
【請求項9】
請求項8に記載の延伸機において、
前記3ローラリンク機構の前記第1のレールホルダに、外径が同一の2個の小径ガイドローラと、前記小径ガイドローラよりも外径が大きい1個の大径ガイドローラと、が設けられ、
前記3ローラリンク機構が有する2個の前記小径ガイドローラは、一方の前記レールの一側に沿って移動し、前記3ローラリンク機構が有する1個の前記大径ガイドローラは、一方の前記レールの他側に沿って移動し、
前記2ローラリンク機構の前記第1のレールホルダに、前記大径ガイドローラと同一の外径を有する2つの大径ガイドローラが設けられ、
前記2ローラリンク機構が有する1個の前記大径ガイドローラは、他方の前記レールの一側に沿って移動し、前記2ローラリンク機構が有する他の1個の前記大径ガイドローラは、他方の前記レールの他側に沿って移動する、延伸機。
【請求項10】
請求項9に記載の延伸機において、
隣り合う前記3ローラリンク機構と前記2ローラリンク機構とは、前記3ローラリンク機構に設けられている2個の前記小径ガイドローラの一方と、前記2ローラリンク機構に設けられている2個の前記大径ガイドローラの一方とが部分的に重なり合うまで近接可能である、延伸機。
【請求項11】
請求項10に記載の延伸機において、
前記大径ガイドローラの外径が37mmであり、
前記小径ガイドローラの外径が32mmであり、
隣り合う前記リンク機構の間の最小ピッチが40mmである、延伸機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リンク装置および延伸機に関する。
【背景技術】
【0002】
シートやフィルムなどの膜を搬送しながら縦方向や横方向に引き延ばす延伸機が知られている。例えば、特許文献1には、シート状物の縦延伸と横延伸とを一度に行う同時二軸延伸機が開示されている。特許文献1に開示されている同時二軸延伸機は、リンク装置を備えており、そのリンク装置は、折尺状に連結された複数の等長リンク装置(リンク機構)を備えている。
【0003】
特許文献1に開示されている同時二軸延伸機では、シート状物を把持している複数の等長リンク装置(リンク機構)の間隔を変化させることにより、シート状物を引き伸ばす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
引き延ばされた膜の特性を向上させるためには、膜を把持する間隔(チャッキング幅)を狭くすることが望ましい。
【0006】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態のリンク装置は、2本のレールに沿って移動可能な複数のリンク機構を有する。それぞれの前記リンク機構は、第1のレールホルダ及び第2のレールホルダと、前記第1のレールホルダに設けられ、回転しながら前記2本のレールの一方に沿って移動する複数のガイドローラと、前記第2のレールホルダに設けられ、回転しながら前記2本のレールの他方に沿って移動する複数のガイドローラと、を有する。前記複数のリンク機構には、前記第1のレールホルダに3個の前記ガイドローラが設けられている3ローラリンク機構と、前記第1のレールホルダに2個の前記ガイドローラが設けられている2ローラリンク機構と、が含まれ、前記3ローラリンク機構と前記2ローラリンク機構とは交互に配置される。
【発明の効果】
【0008】
一実施形態によれば、特性の良いシート,フィルムその他の膜を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】延伸機の構造を模式的に示す他の平面図である。
【
図4】閉じられた複数のリンク機構を示す平面図である。
【
図5】開かれた複数のリンク機構を示す平面図である。
【
図6】複数のリンク機構の一部を示す上方斜視図である。
【
図7】複数のリンク機構の一部を示す下方斜視図である。
【
図8】3ローラリンク機構の1つを示す拡大図である。
【
図9】2ローラリンク機構の1つを示す拡大図である。
【
図10】複数のリンク機構が最小ピッチまで閉じられたときのガイドローラの位置関係を示す説明図である。
【
図11】2ローラリンク機構のチャッキング部に作用するモーメントの説明図である。
【
図12】3ローラリンク機構のチャッキング部に作用するモーメントの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一または実質的に同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0011】
<製造システムの構成>
図1は、延伸機を含む薄膜製造システムを示す模式図である。
図1に示される薄膜製造システム1は、押出装置(押出機,混練押出機)2,Tダイ3,原反冷却装置4,延伸機5,引き取り装置6および巻き取り装置7を有する。
【0012】
薄膜製造システム1では、次のようなプロセスによって薄膜が製造される。まず、押出装置2の原料供給部(原料投入口,ホッパ)2aに原料が供給される。押出装置2に供給される原料は、樹脂材料(例えば、ペレット状の熱可塑性樹脂材料)や添加剤などからなる。押出装置2に供給された原料は、混練(混合)されながら搬送される。具体的には、押出装置2に供給された原料は、押出装置2内で、スクリューの回転によって前方へ送られながら溶融され、かつ、混練される。押出装置2によって混練された原料(混練物)は、Tダイ3に供給される。Tダイ3に供給された混練物は、Tダイ3のスリットから原反冷却装置4に向けて押し出される。押出装置2からTダイ3に供給された混練物は、Tダイ3を通過することにより、所定の形状(ここでは、フィルム状)に成形される。
【0013】
Tダイ3から押し出された混練物は、原反冷却装置4において冷却されて膜8になる。膜8は、固化状態(固体状態)の樹脂膜である。より特定的には、膜8は、熱可塑性樹脂膜である。Tダイ3からは、膜8が連続的に押し出される。この結果、延伸機5に膜8が連続的に供給される。
【0014】
延伸機5に供給された膜8は、延伸機5によってMD方向およびTD方向に延伸される。延伸機5によって延伸処理(引き伸ばし処理)が施された膜8は、引き取り装置6を介して巻き取り装置7に搬送され、巻き取り装置7に巻き取られる。巻き取り装置7に巻き取られた膜8は、必要に応じて切断される。
【0015】
図1に示される薄膜製造システム1は、上記のようなプロセスによって薄膜を製造する。もっとも、薄膜製造システム1は、製造する薄膜の特性などに応じて種々の変更が可能である。例えば、
図1に示される引き取り装置6の近傍に抽出槽が設置され、膜8に含まれる可塑剤(例えば、パラフィン)が除去される場合もある。
【0016】
薄膜製造システム1を構成している延伸機5は、膜8をMD方向に搬送しながら、その膜8をMD方向およびTD方向に引き延ばす。言い換えれば、MD(Machine Direction)方向は、膜8の搬送方向である。また、TD(Transverse Direction)方向は、膜8の搬送方向と交差する方向である。そこで、以下の説明では、MD方向を“搬送方向”または“縦方向”と呼び、TD方向を“横方向”と呼ぶ場合がある。MD方向(搬送方向,縦方向)とTD方向(横方向)とは、互いに交差する方向であり、より特定的には、互いに直交する方向である。つまり、
図1に示される延伸機5は、膜8を搬送しながら、その膜8を互いに交差する二方向に同時に延伸させることが可能な延伸機であり、一般的に“同時二軸延伸機”と呼ばれる。
【0017】
<延伸機>
図2,
図3は、延伸機の構造を模式的に示す平面図である。延伸機5は、一対のリンク装置10を有している。一対のリンク装置10は、平面視において互いに離間している。以下の説明では、一対のリンク装置10の一方を“リンク装置10R”と呼び、一対のリンク装置10の他方を“リンク装置10L”と呼ぶ場合がある。
【0018】
図2,
図3では、リンク装置10Rは、搬送方向(MD方向)に対して右側(R側)に配置されおり、リンク装置10Lは、搬送方向(MD方向)に対して左側(L側)に配置されている。リンク装置10Rとリンク装置10Lとは、TD方向に離間しており、膜8を挟んでTD方向に対向している。膜8は、リンク装置10Rとリンク装置10Lとの間のスペースをMD方向に搬送される。言い換えれば、対向するリンク装置10Rとリンク装置10Lとの間のスペースは、膜8を搬送するための搬送路として機能する。
【0019】
図3を参照する。延伸機5は、搬送方向(MD方向)に沿って3つの領域20A,20B,20Cに分けられる。領域20Aは、予熱領域(プレヒート領域)であり、領域20Bは、延伸領域であり、領域20Cは、熱固定領域である。領域20A,20B,20Cは、この順で搬送方向(MD方向)に並んでいる。
【0020】
延伸機5における膜8の入口(
図2,
図3中に「IN」と示されている部分)は、領域20Aに存在している。また、延伸機5における膜8の出口(
図2,
図3中に「OUT」と示されている部分)は、領域20Cに存在している。そして、膜8の入口がある領域20Aと膜8の出口がある領域20Cとの間に、延伸処理が行われる領域20Bが存在している。
【0021】
熱処理部9は、領域20Aの一部,領域20Bの全部および領域20Cの一部を覆っている。また、熱処理部9は、リンク装置10R,10Lの中央部を覆っており、リンク装置10R,10Lによって搬送される膜8を加熱する。本実施形態の熱処理部9は、膜8を所望の温度に加熱可能なオーブンによって形成されている。膜8は、リンク装置10R,10Lに把持された状態で、熱処理部9としてのオーブンの庫内を通過する。
【0022】
<リンク装置>
リンク装置10R,10Lのそれぞれは、無端チェーンを構成するように連結された複数のリンク機構11を有しており、それぞれのリンク機構11は、膜8を把持する治具であるクリップ21を備えている。膜8は、リンク装置10Rを構成しているリンク機構11が備えるクリップ21と、リンク装置10Lを構成しているリンク機構11が備えるクリップ21と、によって保持される。すなわち、膜8の一側(R側/右側)は、リンク装置10Rが備える複数のクリップ21によって把持され、膜8の他側(L側/左側)は、リンク装置10Lが備える複数のクリップ21によって把持される。
【0023】
リンク装置10R,10Lが備えるリンク機構11は、支持台(ベッド)の上に配置された一対のレール13,14上を走行する。レール14は、レール13の外側に配置され、レール13を取り囲んでいる。別の見方をすると、レール13は、レール14の内側に配置され、レール14に取り囲まれている。そこで、レール13は“内側レール”と呼ばれ、レール14は“外側レール”と呼ばれることもある。また、レール13は“基準レール”や“SPレール”と呼ばれ、レール14は“MDレール”と呼ばれることもある。
【0024】
レール13,14は、領域20A,20B,20Cに亘って環状に配置されている。より特定的には、レール13,14は、膜8の入口がある領域20Aで折り返されるとともに、膜8の出口がある領域20Cで折り返されて、領域20A,20B,20Cに亘って環状に配置されている。
【0025】
リンク装置10Rは、レール13の内側に配置された3つのスプロケット15,16,17を有する。同様に、リンク装置10Lは、レール13の内側に配置された3つのスプロケット15,16,17を有する。それぞれのリンク装置10R,10Lが有するスプロケット15,16は、領域Aに配置されており、それぞれのリンク装置10R,10Lが有するスプロケット17は、領域Cに配置されている。もっとも、スプロケット15,16は、領域Aの一部を覆っている熱処理部9の外に配置されている。また、スプロケット17は、領域Cの一部を覆っている熱処理部9の外に配置されている。つまり、それぞれのリンク装置10R,10Lのスプロケット15,16,17は、熱処理部9としてのオーブンの庫外に配置されている。
【0026】
リンク装置10R,10Lが備える複数のリンク機構11は、レール13,14に沿って移動可能な状態で、レール13,14上に配置されている。リンク装置10Rのスプロケット15,16,17は、リンク装置10Rの複数のリンク機構11と係合する。よって、スプロケット15,16,17が回転すると、リンク装置10Rの複数のリンク機構11に駆動力が働き、それらリンク機構11がレール13,14に沿って移動(走行)する。
【0027】
リンク装置10Lのスプロケット15,16,17は、リンク装置10Lの複数のリンク機構11と係合する。よって、スプロケット15,16,17が回転すると、リンク装置10Lの複数のリンク機構11に駆動力が働き、それらリンク機構11がレール13,14に沿って移動(走行)する。
【0028】
つまり、レール13,14は、複数のリンク機構11を所定方向に移動(走行)させるためのガイドレールである。
【0029】
以下の説明では、
図3に示されるリンク装置10R,10Lのそれぞれについて、膜8と対向する側を“膜側”と呼び、膜側と反対側を“リターン側”と呼ぶ場合がある。つまり、クリップ21が膜8を把持した状態で、複数のリンク機構11が入口(IN)から出口(OUT)に向かって移動する側(サイド)が膜側である。また、膜側の反対に位置し、クリップ21が膜8を把持しない状態で、複数のリンク機構11が出口(OUT)から入口(IN)に向かって移動する側(サイド)がリターン側である。
【0030】
隣り合うリンク機構11間の間隔(ピッチ)は、レール13とレール14との間の間隔(離間距離)に応じて変化する。言い換えれば、レール13とレール14との離間距離を調節することにより、隣り合うリンク機構11間の間隔を調節することができる。なお、
隣り合うリンク機構11間の間隔(ピッチ)は、“リンクピッチ”と呼ばれることもある。
【0031】
図4は、閉じられた複数のリンク機構を示す平面図である。
図5は、開かれた複数のリンク機構を示す平面図である。
図4,
図5に示されるように、レール13,14の離間距離L1が小さくなるほど、隣り合うリンク機構11が成す角度が大きくなり、隣り合うリンク機構11間のピッチPが大きくなる。一方、レール13,14の離間距離L1が大きくなるほど、隣り合うリンク機構11が成す角度が小さくなり、隣り合うリンク機構11間のピッチPが小さくなる。
【0032】
なお、
図4に示されているピッチPは40mmであり、
図5に示されているピッチPは200mmである。つまり、
図5には、
図4に示されているリンク機構11を縦方向の倍率が5倍になるまで開いた状態が示されている。また、
図4に示されている複数のリンク機構11は、隣り合うリンク機構11同士が最も接近するまで閉じられている。つまり、隣り合うリンク機構11間の最小ピッチは40mmである。
【0033】
既述のとおり、それぞれのリンク機構11は、膜8を把持するクリップ21を有している。よって、隣り合うリンク機構11間のピッチPの増減に応じて、隣り合うクリップ21間のピッチも増減する。具体的には、レール13,14の離間距離L1が減少すると、リンク機構11のピッチPが増大する。そして、リンク機構11のピッチPが増大すると、クリップ21のピッチも増大する(
図4→
図5)。一方、レール13,14の離間距離L1が増大すると、リンク機構11のピッチPが減少する。そして、リンク機構11のピッチPが減少すると、クリップ21のピッチも減少する(
図5→
図4)。
【0034】
なお、複数のリンク機構11のそれぞれがクリップ21を備えているので、隣り合う2つのリンク機構11間のピッチと、それらリンク機構11が備える2つのクリップ21間のピッチとは、同一である。すなわち、
図4,
図5に示されているピッチPは、隣り合うリンク機構11間のピッチであると同時に、隣り合うクリップ21間のピッチでもある。
【0035】
<延伸機の動作>
図1に示される原反冷却装置4から延伸機5に供給された膜8は、延伸機5の入口でリンク装置10R,10Lにより把持される。具体的には、膜8は、
図2,
図3に示されるリンク装置10R,10Lのリンク機構11が備えるクリップ21によって把持される。より具体的には。膜8の幅方向一側がリンク装置10Rのリンク機構11が備えるクリップ21によって把持され、膜8の幅方向他側がリンク装置10Lのリンク機構11が備えるクリップ21によって把持される。
【0036】
幅方向両側がクリップ21によって把持された膜8は、クリップ21を含むリンク機構11の移動に伴って、延伸機5の入口から出口に向かって搬送され、領域20A(予熱領域),領域20B(延伸領域),領域20C(熱固定領域)をこの順で通過する。膜8は、領域20B(延伸領域)を通過する過程でMD方向およびTD方向に引き伸ばされる。その後、膜8は、領域20C(熱固定領域)を経て出口に到達し、クリップ21から外される。クリップ21から外された膜8は、引き取り装置6に搬送され、引き取り装置6から巻き取り装置7に搬送される。
【0037】
図3に示されるように、領域20A(予熱領域)では、リンク装置10Rのリンク機構11が走行するレール13,14と、リンク装置10Lのリンク機構11が走行するレール13,14との間の間隔(離間距離)L2は、ほぼ一定である。このため、領域20Aでは、膜8に対するTD方向の延伸処理は行われない。従って、領域20Aでは、搬送される膜8の幅(TD方向の寸法)は変化せず、一定のままである。
【0038】
また、領域20Aの膜側では、リンク装置10Rのリンク機構11が走行するレール13とレール14との間の間隔(離間距離)L1は、ほぼ一定である。このため、領域20Aの膜側では、リンク装置10Rのリンク機構11のピッチPはほぼ一定であり、従って、リンク装置10Rのクリップ21のピッチもほぼ一定である。
【0039】
また、領域20Aの膜側では、リンク装置10Lのリンク機構11が走行するレール13とレール14との間の間隔(離間距離)L1も、ほぼ一定である。このため、領域20Aの膜側では、リンク装置10Lのリンク機構11のピッチPはほぼ一定であり、従って、リンク装置10Lのクリップ21のピッチもほぼ一定である。
【0040】
この結果、領域20Aでは、膜8に対するMD方向の延伸処理は行われない。つまり、領域20Aでは、TD方向にもMD方向にも、膜8に対する延伸処理は行われない。
【0041】
次に、領域20Bにおける延伸機5の動作について説明する。領域20Bでは、搬送方向(MD方向)に進むに従って、リンク装置10Rのリンク機構11が走行するレール13,14と、リンク装置10Lのリンク機構11が走行するレール13,14との間の間隔(離間距離)L2が徐々に大きくなっている。このため、領域20Bでは、膜8は、搬送方向(MD方向)に進むに従ってTD方向に引っ張られて引き伸ばされる。言い換えれば、領域20Bでは、搬送方向(MD方向)に進むに従って、膜8の幅(TD方向の寸法)が徐々に大きくなる。
【0042】
また、領域20Bの膜側では、搬送方向(MD方向)に進むに従って、リンク装置10Rのリンク機構11が走行するレール13とレール14との間の間隔(離間距離)L1が徐々に小さくなっている。また、領域20Bの膜側では、リンク装置10Lのリンク機構11が走行するレール13とレール14との間の間隔(離間距離)L1も徐々に小さくなっている。
【0043】
このため、領域20Bの膜側では、搬送方向(MD方向)に進むに従って、リンク装置10Rのリンク機構11のピッチPが徐々に大きくなり、それに従ってリンク装置10Rのクリップ21のピッチも徐々に大きくなる。また、領域20Bの膜側では、搬送方向(MD方向)に進むに従って、リンク装置10Lのリンク機構11のピッチPが徐々に大きくなり、それに従ってリンク装置10Rのクリップ21のピッチも徐々に大きくなる。
【0044】
この結果、領域20Bでは、搬送方向(MD方向)に進むに従って、膜8は、MD方向に引っ張られて引き伸ばされる。従って、領域20Bでは、搬送方向(MD方向)に進むに従って、膜8は、TD方向およびMD方向に引き伸ばされる(延伸される。)。すなわち、領域20Bでは、TD方向およびMD方向の延伸処理が、膜8に対して施される。
【0045】
次に、領域20Cにおける延伸機5の動作について説明する。領域20Cでは、リンク装置10Rのリンク機構11が走行するレール13,14と、リンク装置10Lのリンク機構11が走行するレール13,14との間の間隔(離間距離)L2は、ほぼ一定である。このため、領域20Cでは、膜8に対するTD方向の延伸処理は行われない。従って、領域20Cでは、搬送される膜8の幅(TD方向の寸法)は変化せず、一定のままである。
【0046】
また、領域20Cの膜側では、リンク装置10Rのリンク機構11が走行するレール13とレール14との間の間隔(離間距離)L1は、ほぼ一定である。このため、領域20Cの膜側では、リンク装置10Rのリンク機構11のピッチPはほぼ一定であり、従って、リンク装置10Rのクリップ21のピッチもほぼ一定である。
【0047】
同様に、領域20Cの膜側では、リンク装置10Lのリンク機構11が走行するレール13とレール14との間の間隔(離間距離)L1は、ほぼ一定である。このため、領域20Cの膜側では、リンク装置10Lのリンク機構11のピッチPはほぼ一定であり、従って、リンク装置10Lのクリップ21のピッチもほぼ一定である。
【0048】
この結果、領域20Cでは、膜8に対するMD方向の延伸処理は行われない。つまり、領域20Cでは、TD方向にもMD方向にも、膜8に対する延伸処理は行われない。
【0049】
上述のように、領域20Aの膜側では、リンク装置10Rのリンク機構11のピッチPは一定に維持され、かつ、リンク装置10Lのリンク機構11のピッチPも一定に維持される。その後、領域20Bの膜側では、リンク装置10Rのリンク機構11のピッチPおよびリンク装置10Lのリンク機構11のピッチPが徐々に拡大される。そして、領域20Cの膜側では、リンク装置10Rのリンク機構11のピッチPは再び一定に維持され、リンク装置10Lのリンク機構11のピッチPも再び一定に維持される。このため、領域20Cの膜側におけるリンク機構11のピッチPは、領域20Aの膜側におけるリンク機構11のピッチPよりも大きい。別の見方をすると、領域20Cの膜側におけるクリップ21のピッチは、領域20Aの膜側におけるクリップ21のピッチよりも大きい。さらに別の見方をすると、領域20C内で各リンク装置10R,10Lのリンク機構11が走行するレール13,14の離間距離L1は、領域20A内で各リンク装置10R,10Lのリンク機構11が走行するレール13,14の離間距離L1よりも小さい。
【0050】
<リンク機構>
図6は、複数のリンク機構の一部を示す上方斜視図である。
図7は、複数のリンク機構の一部を示す下方斜視図である。リンク装置10R,10Lが備える複数のリンク機構11のそれぞれは、クリップ21に加えて、上段リンクプレート22と、下段リンクプレート23と、一対のレールホルダ24,25と、一対のレールホルダ24,25に跨るベース部材26と、を有している。一方のレールホルダ24は、レール14上に配置され、他方のレールホルダ25は、レール13上に配置される。
【0051】
上段リンクプレート22および下段リンクプレート23は、平面視において直線的に延びる板状の部材である。ベース部材26は、平面視において直線的に延びている点で上段リンクプレート22および下段リンクプレート23と共通しているが、これらよりも厚みが厚い。
【0052】
それぞれのリンク機構11の上段リンクプレート22および下段リンクプレート23の一端は、当該リンク機構11のレールホルダ25に回転可能に連結されている。一方、それぞれのリンク機構11の上段リンクプレート22および下段リンクプレート23の他端は、隣りのリンク機構11のレールホルダ24に回転可能に連結されている。
【0053】
それぞれのリンク機構11のベース部材26の一端は、当該リンク機構11のレールホルダ24に回転可能に連結され、それぞれのリンク機構11のベース部材26の他端は、当該リンク機構11のレールホルダ25に回転可能に連結されている。
【0054】
それぞれのリンク機構11のレールホルダ24,25には、回転しながらレール13,14に沿って移動する複数のガイドローラ30が設けられている。もっとも、隣り合う2つのリンク機構11の間で、ガイドローラ30の総数が異なっている。
【0055】
具体的には、あるリンク機構11のレールホルダ24には3個のガイドローラ30が設けられているが、このリンク機構11の前後に配置されている他のリンク機構11のレールホルダ24には2個のガイドローラ30が設けられている。別の見方をすると、あるリンク機構11のレールホルダ24には2個のガイドローラ30が設けられているが、このリンク機構11の前後に配置されている他のリンク機構11のレールホルダ24には3個のガイドローラ30が設けられている。
【0056】
一方、全てのリンク機構11のレールホルダ25には、2個のガイドローラ30が設けられている。つまり、リンク装置10R,10Lでは、合計5個のガイドローラ30を備えるリンク機構11と、合計4個のガイドローラ30を備えるリンク機構11と、が交互に配置されている。より特定的には、3個のガイドローラ30が設けられたレールホルダ24を備えるリンク機構11と、2個のガイドローラ30が設けられたレールホルダ24を備えるリンク機構11と、が交互に配置されている。
【0057】
以下の説明では、3個のガイドローラ30が設けられたレールホルダ24を備えるリンク機構11を“3ローラリンク機構11A”と呼び、2個のガイドローラ30が設けられたレールホルダ24を備えるリンク機構11を“2ローラリンク機構11B”と呼ぶ場合がある。
【0058】
<3ローラリンク機構(2つのレールホルダの連結構造)>
図8は、3ローラリンク機構の1つを示す拡大図である。3ローラリンク機構11Aのレールホルダ24は、レール14の上に、当該レール14を横断するように配置される。このとき、レールホルダ24の長手方向中央は、レール14の直上または略直上に配置される。よって、レールホルダ24の長手方向一端側は、レール14の内側(レール13と対向する側)に突出し、レールホルダ24の長手方向他端側は、レール14の外側(レール13と対向する側と反対側)に突出する。
【0059】
3ローラリンク機構11Aのレールホルダ25は、レール13の上に、当該レール13を横断するように配置される。このとき、レールホルダ25の長手方向中央は、レール13の直上または略直上に配置される。よって、レールホルダ25の長手方向一端側は、レール13の内側(レール14と対向する側)に突出し、レールホルダ25の長手方向他端側は、レール13の外側(レール14と対向する側と反対側)に突出する。
【0060】
レールホルダ24には、ベース部材26の一端が回転可能に連結されるリンクシャフト40が設けられており、レールホルダ25には、ベース部材26の他端が回転可能に連結されるリンクシャフト41が設けられている。リンクシャフト40は、レール14の内側に突出しているレールホルダ24の一端側に設けられている。一方、リンクシャフト41は、レール13の直上または略直上に位置しているレールホルダ25の長手方向中央に設けられている。
【0061】
レールホルダ25に設けられているリンクシャフト41には、ベース部材26の一端に加えて、上段リンクプレート22および下段リンクプレート23の一端も回転可能に連結されている。なお、上段リンクプレート22および下段リンクプレート23の他端は、隣り合う他のリンク機構11(2ローラリンク機構11B)のレールホルダ24に設けられているリンクシャフト40に回転可能に連結される。
【0062】
リンクシャフト40は、レール14側のリンク軸である。また、リンクシャフト41は、レール13側のリンク軸である。リンクシャフト40は、レール14の内側に突出しているレールホルダ24の一端側に設けられている。よって、3ローラリンク機構11Aでは、レール14側のリンク軸がレール14の中心から外れている。一方、リンクシャフト41は、レール13の直上または略直上に位置しているレールホルダ25の長手方向中央に設けられている。よって、3ローラリンク機構11Aでは、レール13側のリンク軸は、レール13の中心と一致している。なお、クリップ21は、レール14の外側に突出しているレールホルダ24の端部に設けられている。
【0063】
<3ローラリンク機構(一方のレールホルダに設けられるガイドローラ)>
3ローラリンク機構11Aのレールホルダ24には、互いに平行な3本のローラシャフト42,43,44が設けられている。レールホルダ24がレール14上に配置されると、ローラシャフト42,43は、レール14の一側(内側)に配置され、ローラシャフト44は、レール14の他側(外側)に配置される。
【0064】
ローラシャフト42,43,44の一部はレールホルダ24に圧入されており、ローラシャフト42,43,44の他の一部はレールホルダ24の下方に突出している。レールホルダ24の下方に突出しているローラシャフト42,43,44の突出部に、ガイドローラ30が回転自在に装着されている。
【0065】
具体的には、ローラシャフト42,43には、外径が同一のガイドローラ30がそれぞれ回転自在に装着されている。ローラシャフト44には、ローラシャフト42,43に装着されているガイドローラ30よりも外径が大きなガイドローラ30が回転自在に装着されている。
【0066】
以下の説明では、ローラシャフト42に装着されているガイドローラ30を“小径ガイドローラ31a”と呼び、ローラシャフト43に装着されているガイドローラ30を“小径ガイドローラ31b”と呼び、ローラシャフト44に装着されているガイドローラ30を“大径ガイドローラ32”と呼ぶ場合がある。尚、小径ガイドローラ31aおよび小径ガイドローラ31bの外径は32mmであり、大径ガイドローラ32の外径は37mmである。
【0067】
もっとも、レールホルダ24に設けられている3つのガイドローラ30は、シャフトに装着された転がり軸受の外輪である点で共通している。よって、小径ガイドローラ31aは、ローラシャフト42を回転軸として回転し、小径ガイドローラ31bは、ローラシャフト43を回転軸として回転する。また、大径ガイドローラ32は、ローラシャフト44を回転軸として回転する。
【0068】
小径ガイドローラ31aと小径ガイドローラ31bとは、回転軸の方向で異なる高さに配置されている。さらに、小径ガイドローラ31aと小径ガイドローラ31bとは、径方向一部が互いに重なり合っている。
【0069】
図8に示される3ローラリンク機構11Aでは、小径ガイドローラ31aは、回転軸の方向で小径ガイドローラ31bよりも高い位置に配置されている。言い換えれば、小径ガイドローラ31bは、回転軸の方向で小径ガイドローラ31aよりも低い位置に配置されている。別の見方をすると、小径ガイドローラ31aと小径ガイドローラ31bとが段違いで配置されている。
【0070】
上記のような小径ガイドローラ31aと小径ガイドローラ31bとの上下関係は、3ローラリンク機構11Aによって異なる。
図6,
図7に示される5つのリンク機構11が図中の矢印方向に移動(走行)すると仮定する。移動方向で1番目(先頭)に位置している3ローラリンク機構11Aの小径ガイドローラ31aと小径ガイドローラ31bとの上下関係は、
図8に示される上下関係と同一である。つまり、小径ガイドローラ31aが高位置に配置され、小径ガイドローラ31bが低位置に配置されている。
【0071】
一方、2番目(全てのリンク機構11の中では3番目)に位置している3ローラリンク機構11Aの小径ガイドローラ31aと小径ガイドローラ31bとの上下関係は、
図8に示される上下関係と反対である。つまり、小径ガイドローラ31aが低位置に配置され、小径ガイドローラ31bが高位置に配置されている。
【0072】
要するに、小径ガイドローラ31aが高位置に配置され、小径ガイドローラ31bが低位置に配置されている3ローラリンク機構11Aと、小径ガイドローラ31aが低位置に配置され、小径ガイドローラ31bが高位置に配置されている3ローラリンク機構11Aと、が交互に並んでいる。もっとも、隣り合う2つの3ローラリンク機構11Aの間には、2ローラリンク機構11Bが介在している。
【0073】
小径ガイドローラ31aが高位置に配置され、小径ガイドローラ31bが低位置に配置されている3ローラリンク機構11Aでは、レールホルダ24と小径ガイドローラ31bとの間に、小径ガイドローラ31aの厚み以上の隙間が存在している。一方、小径ガイドローラ31aが低位置に配置され、小径ガイドローラ31bが高位置に配置されている3ローラリンク機構11Aでは、レールホルダ24と小径ガイドローラ31aとの間に、小径ガイドローラ31bの厚み以上の隙間が存在している。
【0074】
レールホルダ24には、支持ローラ50(
図7)が回転自在に設けられている。支持ローラ50は、レールホルダ24の長手方向で小径ガイドローラ31a,31bと大径ガイドローラ32との間に配置されている。さらに、支持ローラ50の回転軸は、小径ガイドローラ31a,31bや大径ガイドローラ32の回転軸と直交している。
【0075】
レールホルダ24がレール14上を移動する際、小径ガイドローラ31a,31bは、回転しながらレール14の内側面に沿って移動する。レールホルダ24がレール14上を移動する際、大径ガイドローラ32は、回転しながらレール14の外側面に沿って移動する。レールホルダ24がレール14上を移動する際、支持ローラ50は、回転しながらレール14の上面を移動する。
【0076】
支持ローラ50は、レール14の上面と常に接し、レールホルダ24を支持する。一方、レールホルダ24のより円滑な移動を実現すべく、小径ガイドローラ31a,31bとレール14の内側面との間には僅かな隙間(クリアランス)が設けられる。同様の理由により、大径ガイドローラ32とレール14の外側面との間にも僅かな隙間(クリアランス)が設けられる。
【0077】
<3ローラリンク機構(他方のレールホルダに設けられるガイドローラ)>
再び
図8を参照すると、3ローラリンク機構11Aのレールホルダ25には、互いに平行な2本のローラシャフト45,46が設けられている。レールホルダ25がレール13上に配置されると、ローラシャフト45は、レール13の一側(内側)に配置され、ローラシャフト46は、レール13の他側(外側)に配置される。
【0078】
ローラシャフト45,46の一部はレールホルダ25に圧入されており、ローラシャフト45,46の他の一部はレールホルダ25の下方に突出している。レールホルダ25の下方に突出しているローラシャフト45,46の突出部に、ガイドローラ30が回転自在に装着されている。
【0079】
具体的には、ローラシャフト45,46には、大径ガイドローラ32と同一の外径を有するガイドローラ30がそれぞれ回転自在に装着されている。以下の説明では、ローラシャフト45に装着されているガイドローラ30を“大径ガイドローラ33a”と呼び、ローラシャフト46に装着されているガイドローラ30を“大径ガイドローラ33b”と呼ぶ場合がある。
【0080】
もっとも、レールホルダ25に設けられている2つのガイドローラ30は、シャフトに装着された転がり軸受の外輪である点で共通している。よって、大径ガイドローラ33aは、ローラシャフト45を回転軸として回転する。また、大径ガイドローラ33bは、ローラシャフト46を回転軸として回転する。
【0081】
レールホルダ25には、支持ローラ51(
図7)が回転自在に設けられている。支持ローラ51は、レールホルダ25の長手方向で大径ガイドローラ33aと大径ガイドローラ33bとの間に配置されている。さらに、支持ローラ51の回転軸は、大径ガイドローラ33a,33bの回転軸と直交している。
【0082】
レールホルダ25がレール13上を移動する際、大径ガイドローラ33aは、回転しながらレール13の内側面に沿って移動する。レールホルダ25がレール13上を移動する際、大径ガイドローラ33bは、回転しながらレール13の外側面に沿って移動する。レールホルダ25がレール13上を移動する際、支持ローラ51は、回転しながらレール13の上面を移動する。
【0083】
支持ローラ51は、レール13の上面と常に接し、レールホルダ25を支持する。一方、レールホルダ25のより円滑な移動を実現すべく、大径ガイドローラ33aとレール13の内側面との間には僅かな隙間(クリアランス)が設けられる。同様の理由により、大径ガイドローラ33bとレール13の外側面との間にも僅かな隙間(クリアランス)が設けられる。
【0084】
<2ローラリンク機構(2つのレールホルダの連結構造)>
図9は、2ローラリンク機構の1つを示す拡大図である。2ローラリンク機構11Bのレールホルダ24は、レール14の上に、当該レール14を横断するように配置される。このとき、レールホルダ24の長手方向中央は、レール14の直上または略直上に配置される。よって、レールホルダ24の長手方向一端側は、レール14の内側(レール13と対向する側)に突出し、レールホルダ24の長手方向他端側は、レール14の外側(レール13と対向する側と反対側)に突出する。
【0085】
2ローラリンク機構11Bのレールホルダ25は、レール13の上に、当該レール13を横断するように配置される。このとき、レールホルダ25の長手方向中央は、レール13の直上または略直上に配置される。よって、レールホルダ25の長手方向一端側は、レール13の内側(レール14と対向する側)に突出し、レールホルダ25の長手方向他端側は、レール13の外側(レール14と対向する側と反対側)に突出する。
【0086】
レールホルダ24には、ベース部材26の一端が回転可能に連結されるリンクシャフト40が設けられており、レールホルダ25には、ベース部材26の他端が回転可能に連結されるリンクシャフト41が設けられている。リンクシャフト40は、レール14の内側に突出しているレールホルダ24の一端側に設けられている。一方、リンクシャフト41は、レール13の直上または略直上に位置しているレールホルダ25の長手方向中央に設けられている。
【0087】
レールホルダ25に設けられているリンクシャフト41には、ベース部材26の一端に加えて、上段リンクプレート22および下段リンクプレート23の一端も回転可能に連結されている。なお、上段リンクプレート22および下段リンクプレート23の他端は、隣りのリンク機構11(3ローラリンク機構11A)のレールホルダ24に回転可能に連結される。
【0088】
リンクシャフト40は、レール14側のリンク軸である。また、リンクシャフト41は、レール13側のリンク軸である。リンクシャフト40は、レール14の内側に突出しているレールホルダ24の一端側に設けられている。よって、2ローラリンク機構11Bでは、レール14側のリンク軸がレール14の中心から外れている。一方、リンクシャフト41は、レール13の直上または略直上に位置しているレールホルダ25の長手方向中央に設けられている。よって、2ローラリンク機構11Bでは、レール13側のリンク軸は、レール13の中心と一致している。
【0089】
上記のとおり、3ローラリンク機構11Aのレール14側のリンク軸はレール14の中心から外れており、レール13側のリンク軸はレール13の中心と一致している。つまり、本実施形態では、リンク装置10R,10LのMDレール側のリンク軸はレール中心から外れており、SPレール側のリンク軸はレール中心と一致している。
【0090】
なお、2ローラリンク機構11Bのクリップ21は、3ローラリンク機構11Aのクリップ21と同じく、レール14の外側に突出しているレールホルダ24の端部に設けられている。
【0091】
<2ローラリンク機構(一方のレールホルダに設けられるガイドローラ)>
2ローラリンク機構11Bのレールホルダ24には、互いに平行な2本のローラシャフト62,63が設けられている。レールホルダ24がレール14上に配置されると、ローラシャフト62は、レール14の一側(内側)に配置され、ローラシャフト63は、レール14の他側(外側)に配置される。
【0092】
ローラシャフト62,63の一部はレールホルダ24に圧入されており、ローラシャフト62,63の他の一部はレールホルダ24の下方に突出している。レールホルダ24の下方に突出しているローラシャフト62,63の突出部に、ガイドローラ30が回転自在に装着されている。
【0093】
具体的には、ローラシャフト62,63には、3ローラリンク機構11Aの大径ガイドローラ32と同一の外径を有するガイドローラ30がそれぞれ回転自在に装着されている。以下の説明では、ローラシャフト62に装着されているガイドローラ30を“大径ガイドローラ34a”と呼び、ローラシャフト63に装着されているガイドローラ30を“大径ガイドローラ34b”と呼ぶ場合がある。
【0094】
もっとも、レールホルダ24に設けられている2つのガイドローラ30は、シャフトに装着された転がり軸受の外輪である点で共通している。よって、大径ガイドローラ34aは、ローラシャフト62を回転軸として回転し、大径ガイドローラ34bは、ローラシャフト63を回転軸として回転する。
【0095】
3ローラリンク機構11Aを挟んで隣り合う2つの2ローラリンク機構11Bの間で、大径ガイドローラ34aの高さが異なる。
図9に示される2ローラリンク機構11Bの大径ガイドローラ34aは、隣り合う他の2ローラリンク機構11Bの大径ガイドローラ34aよりも回転軸の方向で高い位置に配置されている。
【0096】
図6,
図7に示される5つのリンク機構11が図中の矢印方向に移動(走行)すると仮定する。移動方向で1番目(全てのリンク機構11の中では2番目)に位置している2ローラリンク機構11Bの大径ガイドローラ34aは、回転軸の方向で
図9に示される大径ガイドローラ34aと同じ位置(高位置)に配置されている。
【0097】
一方、2番目(全てのリンク機構11の中では4番目)に位置している2ローラリンク機構11Bの大径ガイドローラ34aは、回転軸の方向で
図9に示される大径ガイドローラ34aよりも低い位置(低位置)に配置されている。
【0098】
つまり、大径ガイドローラ34aが高位置に配置されている2ローラリンク機構11Bと、大径ガイドローラ34aが低位置に配置されている2ローラリンク機構11Bと、が交互に並んでいる。もっとも、隣り合う2つの2ローラリンク機構11Bの間には、3ローラリンク機構11Aが介在している。
【0099】
大径ガイドローラ34aが低位置に配置されている2ローラリンク機構11Bでは、レールホルダ24と大径ガイドローラ34aとの間に、当該大径ガイドローラ34aの厚み以上の隙間が存在している。
【0100】
2ローラリンク機構11Bのレールホルダ24にも、支持ローラ50(
図7)が回転自在に設けられている。支持ローラ50は、レールホルダ24の長手方向で2つの大径ガイドローラ34a,34bの間に配置されている。さらに、支持ローラ50の回転軸は、大径ガイドローラ34a,34bの回転軸と直交している。
【0101】
レールホルダ24がレール14上を移動する際、大径ガイドローラ34aは、回転しながらレール14の内側面に沿って移動し、大径ガイドローラ34bは、回転しながらレール14の外側面に沿って移動する。レールホルダ24がレール14上を移動する際、支持ローラ50は、回転しながらレール14の上面を移動する。
【0102】
支持ローラ50は、レール14の上面と常に接し、レールホルダ24を支持する。一方、レールホルダ24のより円滑な移動を実現すべく、大径ガイドローラ34aとレール14の内側面との間には僅かな隙間(クリアランス)が設けられる。同様の理由により、大径ガイドローラ34bとレール14の外側面との間にも僅かな隙間(クリアランス)が設けられる。
【0103】
<2ローラリンク機構(他方のレールホルダに設けられるガイドローラ)>
再び
図9を参照すると、2ローラリンク機構11Bのレールホルダ25には、互いに平行な2本のローラシャフト65,66が設けられている。レールホルダ25がレール13上に配置されると、ローラシャフト65は、レール13の一側(内側)に配置され、ローラシャフト66は、レール13の他側(外側)に配置される。
【0104】
ローラシャフト65,66の一部はレールホルダ25に圧入されており、ローラシャフト65,66の他の一部はレールホルダ25の下方に突出している。レールホルダ25の下方に突出しているローラシャフト65,66の突出部に、ガイドローラ30が回転自在に装着されている。
【0105】
具体的には、ローラシャフト65,66には、大径ガイドローラ34a,34bと同一の外径を有するガイドローラ30がそれぞれ回転自在に装着されている。以下の説明では、ローラシャフト65に装着されているガイドローラ30を“大径ガイドローラ35a”と呼び、ローラシャフト66に装着されているガイドローラ30を“大径ガイドローラ35b”と呼ぶ場合がある。
【0106】
もっとも、レールホルダ25に設けられている2つのガイドローラ30は、シャフトに装着された転がり軸受の外輪である点で共通している。よって、大径ガイドローラ35aは、ローラシャフト65を回転軸として回転する。また、大径ガイドローラ35bは、ローラシャフト66を回転軸として回転する。
【0107】
2ローラリンク機構11Bのレールホルダ25にも、支持ローラ51(
図7)が回転自在に設けられている。支持ローラ51は、レールホルダ25の長手方向で2つの大径ガイドローラ35a,35bの間に配置されている。さらに、支持ローラ51の回転軸は、大径ガイドローラ35a,35bの回転軸と直交している。
【0108】
レールホルダ25がレール13上を移動する際、大径ガイドローラ35aは、回転しながらレール13の内側面に沿って移動する。レールホルダ25がレール13上を移動する際、大径ガイドローラ35bは、回転しながらレール13の外側面に沿って移動する。レールホルダ25がレール13上を移動する際、支持ローラ51は、回転しながらレール13の上面を移動する。
【0109】
支持ローラ51は、レール13の上面と常に接し、レールホルダ25を支持する。一方、レールホルダ25のより円滑な移動を実現すべく、大径ガイドローラ35aとレール13の内側面との間には僅かな隙間(クリアランス)が設けられる。同様の理由により、大径ガイドローラ35bとレール13の外側面との間にも僅かな隙間(クリアランス)が設けられる。
【0110】
<クリップ>
それぞれのリンク機構11に設けられているクリップ21は、本体部70,把持部71,バネ部72などを有している。本体部70は、レールホルダ24に固定されている。把持部71は、本体部70に上下に動作可能に取り付けられている。バネ部72は、把持部71が下方に向かって動作するように、把持部71を付勢する。バネ部72の付勢によって把持部71が下方に向かって動作することにより、本体部70と把持部71との間に膜8が挟まれる。つまり、クリップ21によって膜8が把持される。一方、バネ部72の付勢に抗して把持部71を上方に向かって動作させると、膜8の把持が解除される。
【0111】
<リンク機構が閉じられたときのガイドローラの位置関係>
図10は、複数のリンク機構が最小ピッチまで閉じられたときのガイドローラの位置関係を示す説明図である。
【0112】
本実施形態では、隣り合う3ローラリンク機構11Aと2ローラリンク機構11Bとは、お互いのガイドローラ30同士が部分的に重なり合うまで近接可能である。
【0113】
上記のとおり、3ローラリンク機構11Aと2ローラリンク機構11Bとは交互に並んでいる。さらに、3ローラリンク機構11Aのみに着目すると、小径ガイドローラ31aが高位置に配置され、小径ガイドローラ31bが低位置に配置されている3ローラリンク機構11Aと、小径ガイドローラ31aが低位置に配置され、小径ガイドローラ31bが高位置に配置されている3ローラリンク機構11Aと、が交互に配置されている。
【0114】
また、2ローラリンク機構11Bのみに着目すると、大径ガイドローラ34aが高位置に配置されている2ローラリンク機構11Bと、大径ガイドローラ34aが低位置に配置されている2ローラリンク機構11Bと、が交互に並んでいる。
【0115】
リンク機構11が閉じられると、2ローラリンク機構11Bの高位置に配置されている大径ガイドローラ34a(「A」)が、前後の3ローラリンク機構11Aの低位置に配置されている小径ガイドローラ31a,31bに重なる。より特定的には、2ローラリンク機構11Bの大径ガイドローラ34aの径方向一部が、前後の3ローラリンク機構11Aの小径ガイドローラ31a,31bの径方向一部の上に重なる。
【0116】
また、リンク機構11が閉じられると、2ローラリンク機構11Bの低位置に配置されている大径ガイドローラ34a(「B」)が、前後の3ローラリンク機構11Aの高位置に配置されている小径ガイドローラ31a,31bに重なる。より特定的には、2ローラリンク機構11Bの大径ガイドローラ34aの径方向一部が、3ローラリンク機構11Aの小径ガイドローラ31a,31bの径方向一部の下に重なる。
【0117】
別の見方をすると、3ローラリンク機構11Aの高位置に配置されている小径ガイドローラ31a,31bの径方向一部が、2ローラリンク機構11Bの低位置に配置されている大径ガイドローラ34aとレールホルダ24との間に入り込む。
【0118】
<リンク機構の最小ピッチ>
本実施形態のリンク装置10R,10Lは、連結された複数のリンク機構11を有している。より特定的には、リンク装置10R,10Lは、複数の3ローラリンク機構11Aおよび2ローラリンク機構11Bを有している。さらに、3ローラリンク機構11Aと2ローラリンク機構11Bとは交互に配置されている。
【0119】
したがって、全てのリンク機構11が3ローラリンク機構11Aである形態に比べて、隣り合うリンク機構11間の最小ピッチが小さい。また、2つ以上の3ローラリンク機構11Aが連続して配置された形態と比べても、隣り合うリンク機構11間の最小ピッチが小さい。
【0120】
また、3ローラリンク機構11Aのレールホルダ24に設けられている2つの小径ガイドローラ31a,31bは、径方向一部が互いに重なり合っている。よって、小径ガイドローラ31a,31bの外径を小さくすることなく、3ローラリンク機構11Aが小型化されている。別の見方をすると、小径ガイドローラ31a,31bの強度を確保しつつ、3ローラリンク機構11Aが小型化されている。3ローラリンク機構11Aが小型化されることにより、隣り合うリンク機構11間の最小ピッチがさらに小さくなっている。
【0121】
加えて、隣り合う3ローラリンク機構11Aと2ローラリンク機構11Bとは、お互いのガイドローラ30同士が部分的に重なり合うまで近接可能である。この結果、隣り合うリンク機構11間の最小ピッチがさらに小さくなっている。
【0122】
樹脂フィルムや樹脂シートなどの樹脂膜を延伸させる場合、当該樹脂膜を把持する間隔(チャッキング幅)を狭くすると、分子配向や結晶構造の等方性が良好な樹脂膜を得ることができる。そして、分子配向や結晶構造の等方性が良好な樹脂膜は、力学的特性,熱的特性,光学的特性,表面特性などの様々な特性が優れている。
【0123】
本実施形態では、複数のリンク機構11のそれぞれに設けられているクリップ21によって膜8を把持して引き延ばす。よって、隣り合うリンク機構11間の最小ピッチが膜8を把持する間隔(チャッキング幅)に相当する。つまり、隣り合うリンク機構11間の最小ピッチが小さい本実施形態のリンク装置10R,10Lを用いれば、上記特性を含む膜8の様々な特性を向上させることができる。
【0124】
<チャッキング部に作用するモーメント>
図11は、2ローラリンク機構のチャッキング部に作用するモーメントの説明図である。
図12は、3ローラリンク機構のチャッキング部に作用するモーメントの説明図である。
【0125】
3ローラリンク機構11Aおよび2ローラリンク機構11Bは、レールホルダ24に設けられているクリップ21によって膜8を把持する。つまり、クリップ21は、膜8を把持するチャッキング部である。
【0126】
クリップ21が設けられているレールホルダ24は、リンクシャフト40を介してベース部材26に回転可能に連結されている。別の見方をすると、チャッキング部は、レール14側のリンク軸を回転軸として回転可能である。また、上記のとおり、レール14とレールホルダ24に設けられているガイドローラ30との間にはクリアランスが設けられている。
【0127】
したがって、
図11に示される2ローラリンク機構11Bのレールホルダ24に時計回りのモーメントM1が作用すると、レールホルダ24が時計回りに回転する。すると、大径ガイドローラ34bがレール14の側面に当たり、モーメントM1を打ち消す力Fが生じる。
【0128】
また、
図11に示される2ローラリンク機構11Bのレールホルダ24に反時計回りのモーメントM2が作用すると、レールホルダ24が反時計回りに回転する。このときも、大径ガイドローラ34bがレール14の側面に当たり、モーメントM2を打ち消す力Fが生じる。
【0129】
図12に示される3ローラリンク機構11Aのレールホルダ24に時計回りのモーメントM1が作用すると、レールホルダ24が時計回りに回転する。すると、小径ガイドローラ31aがレール14の側面に当たり、モーメントM1を打ち消す力Fが生じる。
【0130】
また、
図12に示される3ローラリンク機構11Aのレールホルダ24に反時計回りのモーメントM2が作用すると、レールホルダ24が反時計回りに回転する。すると、小径ガイドローラ31bがレール14の側面に当たり、モーメントM2を打ち消す力Fが生じる。
【0131】
図11に示されているレールホルダ24が時計回りに回転したときに、大径ガイドローラ34bがレール14に当たるまでの移動距離(D1a)と、
図12に示されているレールホルダ24が時計回りに回転したときに、小径ガイドローラ31aがレール14に当たるまでの移動距離(D2a)と、を比較すると、D2aはD1aよりも短い(D2a<D1a)。
【0132】
図11に示されているレールホルダ24が反時計回りに回転したときに、大径ガイドローラ34bがレール14に当たるまでの移動距離(D1b)と、
図12に示されているレールホルダ24が反時計回りに回転したときに、小径ガイドローラ31bがレール14に当たるまでの移動距離(D2b)と、を比較すると、D2bはD1bよりも短い(D2b<D1b)。
【0133】
つまり、3ローラリンク機構11Aおよび2ローラリンク機構11Bに同じモーメントが作用したとき、3ローラリンク機構11Aのチャッキング部の移動量は、2ローラリンク機構11Bのチャッキング部の移動量よりも小さい。別の見方をすると、3ローラリンク機構11Aのチャッキング部は、2ローラリンク機構11Bのチャッキング部に比べて、モーメントに対する安定性に優れている。
【0134】
2ローラリンク機構11Bのみでリンク装置10R,10Lを構成すれば、隣り合うリンク機構11間の最小ピッチをさらに小さくすることができる。しかし、2ローラリンク機構11Bのみでリンク装置10R,10Lを構成した場合、モーメントに対するチャッキング部の安定性が低下する。モーメントに対するチャッキング部の安定性が低下すると、膜8に捻れが生じたり、膜8が裂けたりする虞がある。
【0135】
つまり、3ローラリンク機構11Aと2ローラリンク機構11Bとが交互に配置されている本実施形態のリンク装置10R,10Lでは、モーメントに対するチャッキング部の安定性を低下させることなく、隣り合うリンク機構11間の最小ピッチが狭められている。
【0136】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態および実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態または実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、それぞれのリンク機構が有するガイドローラは、1つの転がり軸受の外輪によって形成してもよく、2つ以上の転がり軸受の外輪によって形成してもよい。例えば、多段に重ねた2つ以上の転がり軸受の外輪によって1つのガイドローラを形成してもよい。もっとも、ガイドローラは転がり軸受の外輪に限定されない。また、ガイドローラの寸法(外径や厚みなど)は、適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0137】
1 薄膜製造システム
2 押出装置(押出機、混練押出機)
2a 原料供給部(原料投入口,ホッパ)
3 Tダイ
4 原反冷却装置
5 延伸機
6 引き取り装置
7 巻き取り装置
8 膜
9 熱処理部
10,10R,10L リンク装置
11 リンク機構
11A 3ローラリンク機構
11B 2ローラリンク機構
13,14 レール
15,16,17 スプロケット
20A,20B,20C 領域
21 クリップ
22 上段リンクプレート
23 下段リンクプレート
24,25 レールホルダ
26 ベース部材
30 ガイドローラ
31a,31b 小径ガイドローラ
32 大径ガイドローラ
33a,33b,34a,34b,35a,35b 大径ガイドローラ
40,41 リンクシャフト
42,43,44,45,46 ローラシャフト
50,51 支持ローラ
62,63,65,66 ローラシャフト
70 本体部
71 把持部
72 バネ部