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<図1>
  • -吸引治具、吸引装置、及び吸引方法 図1
  • -吸引治具、吸引装置、及び吸引方法 図2
  • -吸引治具、吸引装置、及び吸引方法 図3
  • -吸引治具、吸引装置、及び吸引方法 図4
  • -吸引治具、吸引装置、及び吸引方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135541
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】吸引治具、吸引装置、及び吸引方法
(51)【国際特許分類】
   F04B 37/16 20060101AFI20230921BHJP
   E01H 1/08 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
F04B37/16 Z
E01H1/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040806
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】593080294
【氏名又は名称】株式会社カンドー
(71)【出願人】
【識別番号】314011910
【氏名又は名称】株式会社サーフ・エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100140693
【弁理士】
【氏名又は名称】木宮 直樹
(72)【発明者】
【氏名】廣田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】根本 秀幸
【テーマコード(参考)】
2D026
3H076
【Fターム(参考)】
2D026AC02
3H076AA21
3H076BB11
3H076BB26
3H076CC51
3H076CC92
3H076CC94
(57)【要約】
【課題】容易かつ効率良く吸引対象物を収集できる、真空ポンプに用いる吸引治具、当該吸引治具を備える吸引装置、吸引方法を提供する。
【解決手段】吸引対象物P、Wを吸引するためのルーツ真空ポンプ153に用いる吸引治具201であって、吸引対象物P、Wが通る吸入口3と、吸入口3に連通する内部通路5と、を有する吸引部7と、吸引部7に水撃作用が生じることを防止する水撃防止手段151から圧縮気体を供給できる供給部9と、を備え、供給部9からの圧縮気体は、吸入口3の近傍であって内部通路5へ供給される吸引治具201、吸引治具201を備える吸引装置101及び吸引方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引対象物を吸引するために負圧を供給できる真空ポンプに用いる吸引治具であって、
前記吸引対象物が通る吸入口と、前記吸入口に連通する内部通路と、を有する吸引部と、
前記吸引部に水撃作用が生じることを防止する水撃防止手段から、前記負圧より高い圧力値を有する気体を供給できる供給部と、を備え、
前記供給部からの前記気体は、前記吸入口の近傍であって前記内部通路へ供給されることを特徴とする吸引治具。
【請求項2】
前記吸引部は、第1及び第2の吸入管と、前記第1及び第2の吸入管に連通する第3の吸入管と、を有するY字形状であり、
前記吸入口は、前記第1の吸入管に設けられる第1の吸入口と、前記第2の吸入管に設けられる第2の吸入口と、を有し、
前記第1の吸入口及び第2の吸入口より下流側に前記気体が供給されるように前記供給部が前記吸引部に連結されている請求項1に記載の吸引治具。
【請求項3】
前記吸引対象物を前記吸入口へ誘導するための誘導部を備え、
前記誘導部は、前記第1及び第2の吸入管から突出する請求項2に記載の吸引治具。
【請求項4】
前記吸引部の前記内部通路が、上流側に向かい拡開している請求項1に記載の吸引治具。
【請求項5】
前記吸引部は、前記吸引対象物を攪拌するための攪拌部を備える請求項1~4のいずれか一項に記載の吸引治具。
【請求項6】
負圧気体を供給する真空ポンプと、
前記負圧気体の圧力値より高い気体を供給する圧縮気体供給部と、
前記真空ポンプ及び前記圧縮気体供給部に連通する請求項1~5のいずれか一項に記載の吸引治具と、を備える吸引装置。
【請求項7】
吸引対象物を吸引する吸引方法であって、
前記吸引対象物を吸引するために吸引部の吸引口に負圧を付与し、
前記負圧が付与されている状態において、前記吸引口より下流側に前記負圧より高い圧力値を有する気体が付与されることを特徴とする吸引方法。
【請求項8】
前記吸引対象物を攪拌する請求項7に記載の吸引方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体、又は液体及び/若しくは気体が混在する固体の混合物である吸引対象物を吸引するために真空ポンプに利用する吸引治具、吸引治具を備える吸引装置、及び吸引対象物を吸引する吸引方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に配置されるガス管等である管状部材に予期せずに亀裂や穴が生じると、管状部材の内部に砂、土、ごみ等の異物が進入することがある。従来より、管状部材の内部から当該異物を排出するために、ロータリ・ブロワ(ルーツ式)もしくはルーツ真空ポンプが利用されている(特許文献1参照。)。当該ルーツ真空ポンプは、ケーシングと、ケーシング内に、並列配置され、回転可能な複数のロータと、を備え、複数のロータ同士が非接触で、互いに反対方向に回転することで、ケーシングに設けられる吸込口を介し気体を捕捉し、圧縮し、吐出口から気体を排出する構成である。
【0003】
昨今、海底火山から噴出する軽石や、海に投棄されるポリ袋やペットボトル等のプラスチックゴミ、当該ブラスチックが破片化したマイクロプラスチック粒子等の海洋ゴミを収集するための方策が提案されている。現状、海岸に打ち上げられた海洋ゴミは人手により収集したり、水中ポンプ、サンドポンプ、エジェクタ等の吸引装置が利用されたりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60-75793
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の吸引装置では、吸引する対象物である吸引対象物の特性や、吸引対象物が存在する環境によっては、吸引対象物を、簡易かつ効率良く吸引することが難しいのが実情である。また、吸引対象物が、海岸や川等に存在するために、吸引対象物が固体と、液体及び/又は気体とを含む場合には、所謂ウォーターハンマー現象(水撃作用)により、吸引装置や吸入管が破損する恐れがある。さらに、従来の吸引装置を小型化することが難しい。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものである。すなわち、容易かつ効率良く吸引対象物を収集できる、真空ポンプに用いる吸引治具、当該吸引治具を備える吸引装置、吸引方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
後述の解決手段は、発明者等が鋭意検討することにより、吸引される吸引対象物が通る流路内の圧力が急激に変動することにより生じるウォーターハンマー現象は、吸引対象物に含まれる固体と、気体及び/又は液体とが相対的に混在する状態で、移動すると防止できる、という知見に基づくものである。
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の吸引治具の第1の態様は吸引対象物を吸引するために負圧を供給できる真空ポンプに用いる吸引治具であって、
前記吸引対象物が通る吸入口と、前記吸入口に連通する内部通路と、を有する吸引部と、
前記吸引部に水撃作用が生じることを防止する水撃防止手段から、前記負圧より高い圧力値を有する気体を供給できる供給部と、を備え、
前記供給部からの前記気体は、前記吸入口の近傍であって前記内部通路へ供給される。
【0009】
また、本発明の吸引治具の第2の態様によれば、前記第1の態様の吸引治具であって、前記吸引部は、第1及び第2の吸入管と、前記第1及び第2の吸入管に連通する第3の吸入管と、を有するY字形状であり、
前記吸入口は、前記第1の吸入管に設けられる第1の吸入口と、前記第2の吸入管に設けられる第2の吸入口と、を有し、
前記第1の吸入口及び第2の吸入口より下流側に前記気体が供給されるように前記供給部が前記吸引部に連結されている。
【0010】
本発明の吸引治具の第3の態様によれば、前記第2の態様の吸引治具であって、前記吸引対象物を前記吸入口へ誘導するための誘導部を備え、
前記誘導部は、前記第1及び第2の吸入管から突出する。
【0011】
本発明の吸引治具の第4の態様によれば、前記第1の態様の吸引治具であって、前記吸引部の前記内部通路が、上流側に向かい拡開している。
【0012】
本発明の吸引治具の第5の態様によれば、前記第1乃至4のいずれかの態様の吸引治具であって、前記吸引部は、前記吸引対象物を攪拌するための攪拌部を備える。
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の吸引装置の第1の態様は、負圧気体を供給する真空ポンプと、
前記負圧気体の圧力値より高い気体を供給する圧縮気体供給部と、
前記真空ポンプ及び前記圧縮気体供給部に連通する前記第1~5の態様のいずれかの態様の吸引治具と、を備える。
【0014】
さらに、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の吸引方法の第1の態様は、吸引対象物を吸引する吸引方法であって、
前記吸引対象物を吸引するために吸引部の吸引口に負圧を付与し、
前記負圧が付与されている状態において、前記吸引口より下流側に前記負圧より高い圧力値を有する気体が付与される。
本発明の吸引方法の第2の態様は、前記第1の態様の吸引方法であって、前記吸引対象物と、を攪拌する。
【0015】
本明細書において、圧縮気体とは、加圧された気体全般を意味し、気体の種類は特に限定されない。負圧とは、気体圧力が大気圧より低い圧力であり、吸引治具に負圧を付与するとは、吸引口の空気圧力を大気圧より低くすることを意味する。
【0016】
また、本明細書における供給部とは、圧縮気体を生成するエアコンプレッサー等から圧縮気体を供給するための供給管や、負圧より高い圧力値の気体を供給できる手段である弁部材、例えば大気に連通するための開閉自在な開閉バルブ等を意味する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の吸引治具、吸引装置、及び吸引方法によれば、吸引対象物を吸引する際に圧縮気体を供給できる構成であるため、ウォーターハンマー現象が発生することを防止でき確実かつ容易に吸引対象物を収集することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(a)は、第1の実施形態に係る吸引治具の斜視図であり、(b)は、図1(a)の正面図であり、(c)は、図1(a)の平面図である。
図2図1に示される吸引治具を備える吸引装置により吸引作業を模式的に示す模式図である。
図3】吸引対象物が吸込みホース内を流れる状態を模式的に示す図であり、(a)は、第1の実施形態に係る吸引治具により吸引される吸引対象物を流路方向に示す(図3(b)のIIIAに沿う断面)図であり、(b)は、図3(a)のIIIB矢視図であり、(c)は、吸引治具を備えずに吸引される吸引対象物を流路方向に示す(図3(d)のIIICに沿う断面)図であり、(d)は、図3(c)のIIID矢視図である。
図4】(a)は、第1の実施形態に係る吸引治具の一部を示す部分背面図であり、(b)は、図4(a)に示される吸引治具を矢印IV方向に見る側面図である。
図5】(a)は、第2の実施形態に係る吸引治具の斜視図であり、(b)は、図5(a)に示される吸引治具の正面図であり、(c)は、図5(a)に示される吸引治具の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明を適用した実施形態及び変形例に係る吸引治具について図面を参照しつつ説明する。なお、各図において、同一の構成要素には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する。また、本発明は、この実施形態及び変形例に限定されるものではない。
【0020】
〔第1の実施形態〕
図1(a)は、第1の実施形態に係る吸引治具201の斜視図であり、図1(b)は、図1(a)に示される吸引治具201の正面図であり、図1(c)は、図1(a)に示される吸引治具201の平面図であり、図4(a)は、第1の実施形態に係る吸引治具201の一部を示す部分背面図(図1(c)の矢印d)であり、図4(b)は、図4(a)に示される吸引治具201を矢印IV方向に(第1及び第2の吸入管71、73が連結する連結部位の中央から)見る側面図である。
である。
【0021】
図1に示される吸引治具201は、吸引対象物である軽石を吸引するためのルーツ真空ポンプ(図3の符号101参照。)に用いられる。吸引治具201は、軽石が通る吸入口3(31、33)と、吸入口3に連通する内部通路5と、を有する中空の吸引部7と、吸引部7に水撃作用が生じることを防止する水撃防止手段から圧縮空気が供給される供給管9と、を備える。さらに、吸引部7は、第1及び第2の吸入管71、73と、第1及び第2の吸入管71、73に連通する第3の吸入管75と、を有するY字形状である。吸入管71は、第1の吸入管71の先端部側(内部通路5の上流側)に設けられる第1の吸入口131と、第2の吸入管73の先端部側(内部通路5の上流側)に設けられる第2の吸入口133と、を有する。また、第1、第2及び第3の吸入管71、73、75の一端部は互いに連結され、第1、第2及び第3の吸入管71、73、75の内部空間が連通する。また、第1及び第2の吸入管71、73の先端部(他端部)は閉じている。なお、第3の吸入管75の他端部は、後述する吸込みホース159に連通する。また、第1及び第2の吸入管71、73は、鋭角を有し連結されている。
【0022】
また、第3の吸入管73と第1及び第2の吸入管71、73との間には、流体が定常に流れるように、吸引対象物を攪拌するための攪拌部22が設けられている(図4参照。)。攪拌部22の内部空間である攪拌空間26は、第1及び第2の吸入管71、73と連通する。ここで、第1及び第2の吸入管71、73の、攪拌部22の攪拌空間26に連絡する開口24の図4の背面視における寸法は、攪拌空間26を規定する図4の背面視における寸法より小さく寸法付けられている。このように、開口24と攪拌空間26との寸法関係に設定することで、気体、液体、固体といった相の異なる吸引対象物同士の混合を促すことができる。
【0023】
吸引治具201は、さらに、吸引部7から突出する第1の誘導部21及び第2の誘導部17(第1及び第2の延長誘導部173、175)を備える。なお、第1及び第2の吸入管71、73は、長手方向に垂直な方向の断面視で略円形状であり、平面状に延在する第1及び第2の吸入口131、133により切り欠きられている。
【0024】
また、供給管9は、第1の供給管91と、第2の供給管93とを有し、それぞれ、第1及び第2の吸入管71、73に連結され、第1及び第2の供給管91、93は、第1及び第2の吸入管71、73に連通し、エアコンプレッサー等の圧縮気体供給部151(図3参照。)からの圧縮空気が第1及び第2の吸入管71、73に供給される。また、第1及び第2の供給管91、93は、第1及び第2の吸入口131、133より下流側(第1及び第2の吸入管71、73の先端部に対し第3の供給管95側)であって、第1及び第2の吸入管71、73に連結されている。
【0025】
径寸法が一定の円筒形状である第1及び第2の吸入管71、73に設けられる第1及び第2の吸入口31、33は、長手方向において、ほぼ中央に配置され、図1(b)の正面視において、周方向上方に開口する。また、図4(b)に示されるように、吸引治具201の側面視において、第1及び第2の吸入管71、73が連結する連結部位の中央を通る直線Xが、水平方向に延在する第3の吸入管75の中央線Yに対し、角度Q(鈍角)を有するように、吸引治具201は構成されている。
【0026】
吸引治具201は、第1の誘導部21を備えるため、吸引部7の中央部にある吸引対象物が、吸入口3の方向へ移動することを促進できる。また、第2の誘導部17は、吸入口3の上流側端部の近傍から延びる板状部材であり、第1及び第2の吸入管71、73の先端部近傍に存在する吸引対象物の吸入口3への誘導を促進できる。
【0027】
さらに、本実施形態の吸引治具201には、把持部13を備え、作業者が吸引作業中に吸引治具201を保持し、所望の場所へ吸引治具201を移動することができる。
【0028】
〔吸引装置〕
吸引治具201を備える吸引装置101について図2を参照しつつ説明する。図2は、図1に示される吸引治具201を備える吸引装置101により吸引作業を行う状態を模式的に示す模式図である。吸引装置101は、圧縮気体供給手段、具体的には、圧縮空気を供給する圧縮気体供給部151と、負圧気体を供給するロータリ・ブロワ(ルーツ真空ポンプ)153と、吸引対象物が堆積される中間タンク(ホッパー)157と、圧縮気体供給部151及びロータリ・ブロワ153を駆動するための発電機等の駆動源155と、を備える。
【0029】
中間タンク157は、吸込みホース159を介し吸引治具201に連結されている。また、中間タンク157は、吸風ホース161を介しロータリ・ブロワ153に連結されている。ロータリ・ブロワ153に生成される負圧力は、吸風ホース161、吸込みホース159を介し、吸引治具201に供給される。中間タンク157の内部は、固体物を捕獲するためのレシーバ163が配置される。吸引対象物が吸込みホース159を介しレシーバ163に到達すると、軽石等の固体物が、レシーバ163に獲得され、液体物は、レシーバ163を通り抜け、中間タンク157の内部空間内に収容される。
【0030】
上記構成の吸引装置101は、駆動源155が起動されると、圧縮気体供給部151とロータリ・ブロワ153が作動し、吸引治具201の吸入口3を介し吸引力が海水W及び海水Wに浮遊する軽石Pに付与される。吸引力を吸入口3に付与する際に、吸引部7の内部通路内の、吸入口3より下流側の位置に、圧縮空気が圧縮気体供給部151から供給管9を介し供給される。このように、圧縮空気が付与されることにより、吸引部7の内部通路や、当該内部通路に連通する吸込みホース159、吸風ホース161等の流路において、ウォーターハンマー現象が発生することを防止できる。
【0031】
以下に、吸引装置101において、吸込みホース159内の流路を通る吸引対象物について図3を参照しつつ説明する。図3は、吸引対象物が吸込みホース159内を流れる状態を模式的に示す図であり、図3(a)は、第1の実施形態に係る吸引治具201を介し吸引される吸引対象物が流れる状態を示す(図3(b)のIIIAに沿う断面)図であり、(b)は、図3(a)のIIIA矢視図であり、図3(c)は、吸引治具201を利用せずに吸引される吸引対象物が流れる状態を示す(図3(d)のIIICに沿う断面)図であり、(b)は、図3(a)のIIIC矢視図である。なお、図3(b)、図3(d)において、吸込みホース159は、その中心軸心に沿った断面で示されている。
【0032】
図3(c)、(d)が示すように、吸引治具201を利用せずに吸引対象物を吸引した場合には、吸引対象物に含まれる構成要素の割合が流路途中で変化する場合があり、吸引対象物である流体物が定常に流れないことがある。具体的には、流体物が、流体方向において気体Gが相対的に多い流体部位と、液体Wが相対的に多い流体部位とが流路方向に発生する、いわゆる水柱分離現象が生じることがある。この水柱分離現象では、流路方向に関し、流体物の圧力変動が起き、ウォーターハンマー現象が発生すると、吸引装置101が故障することがある。
【0033】
一方、図3(a)、(b)に示されるように、吸込みホース159の長手方向に延びる中心軸心に沿って気体Gを主とする気体相が配置され、吸込みホース159の内面側には、液体Wを主とする液体相が配置される。本実施形態の吸引治具201を利用することで、気体G及び/又は液体Wと、軽石Pとを有する二相流又は三相流を定常的に形成するこができる。なお、本実施形態は、真空ポンプ101により供給される負圧気体の圧力より高い圧力の気体を供給管9から供給する構成に加え、吸引対象物を攪拌するための攪拌部22の攪拌空間26を備える構成であるため、吸引対象物である流動体を定常に流すことをより確実にできる。
【0034】
〔第2の実施形態〕
第2の実施形態に係る吸引治具301について、第1の実施形態1と異なる点を中心に図5を参照しつつ説明する。よって、特に説明しない構成、効果、仕様態様については、吸引治具1と同じである。図5(a)は、第2の実施形態に係る吸引治具301の斜視図であり、図5(b)は、図5(a)に示される吸引治具301の正面図であり、図5(c)は、図5(a)に示される吸引治具301の平面図である。
【0035】
吸引治具301は、平面視で略三角形状の治具本体8を備え、治具本体8は、下流側(第3の吸入管75側)から上流側(吸入口3)に向かい拡開する底板81と、底板81に対し平行に延在する天板85と、底板81と天板85とを連結し、底板81及び天板85に対し垂直に延在する側板82、83と、吸引対象物が通る吸入口3を規定し、天板85の上面に対し垂直に延在する前板84と、を有する。従って、治具本体8の内部空間、すなわち吸引対象物が通る通路は、平面視で上流側に拡開する。なお、治具本体8の内部空間に連通し、吸引対象物を排出するための第3の吸入管75は、第1の実施形態と同様に、吸込みホース159(図2参照。)に連結されている。また、前板84の縦方向(図5(b)の上下方向)長さ、横方向(図5(b)の上下方向)長さを変更することで、吸引対象物に合わせ吸入口3の寸法や形状を適宜変更できる。
【0036】
さらに、天板85と、側板82、83とには、供給管9(91,93、97)が連結され、第1~第3の供給管91、93、97は、第4の供給管95に連続し、気体供給ホース165(図2参照。)を介し圧縮気体供給部151(図2参照。)に連結されている。よって、供給管9から圧縮空気が、治具本体8の内部空間を介し、吸入口3に供給される。また、側板82及び83の先端部には、吸引対象物を底板81側に誘導するための誘導部92が設けられている。
【0037】
上記実施形態では、供給管には、圧縮気体を供給する構成を採用しているが、本発明は、本構成に限定されない。すなわち、真空ポンプにより供給される負圧の圧力値より高い圧力値を有する気体を供給できる弁部材を供給管の代わりに適用しても、本発明の目的が達成できることは言うまでもない。
なお、上記実施形態では、ルーツ真空ポンプを備える構成を用いて説明したが、本発明はルーツ真空ポンプを備える構成に限定されず、吸引対象物を吸引するための種々の真空ポンプに適用できることは言うまでもない。さらに、上記実施形態で採択した誘導体を設けるか否か、誘導体の数、形状、位置等については、吸引治具の使用目的、必要な吸引力に応じて適宜変更できることは言うまでもない。
【0038】
また、上記実施形態では、2又は3つの供給管9を介し、治具の内部空間に圧縮気体を供給する構成であるが、供給管9が連結される位置や数は、中間タンク157(図2参照。)までに吸引対象物が通る流路において圧力の急激な変化を生じることがないように維持できる範囲において適宜変更できることは言うまでもない。
【0039】
上記実施形態例の吸引部の断面形状は、多角形状、円形状、楕円形状等、種々の形状に変更できることは言うまでもない。さらに、第1及び第2の実施形態の吸入口は、正面視において、矩形状であるが、本発明は本形状に限定されず、多角形状、円形状、楕円形状等、種々の形状に変更できることは言うまでもない。本実施形態例の吸引部は、一体成型される構成であるが、本発明は本構成に限定されない。例えば、第1~第3の吸入管を別体構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0040】
1、201、301 吸引治具
3、31、35 吸入口
5 内部通路
7 吸引部
8 治具本体
9、91、93、95 供給管(供給部)
13 把持部
17、21、92 誘導部
26 攪拌空間
71、第1の吸入管
73 第2の吸入管
75 第3の吸入管
81 天板
82、83 側板
84 前板
85 天板
111 第1の壁部
113 第2の壁部
131 第1の吸入口
133 第2の吸入口
151 圧縮気体供給部
153 ロータリ・ブロワ(ルーツ真空ポンプ)
155 駆動源
157 中間タンク(ホッパー)
159 吸込みホース
161 吸風ホース
163 レシーバ
165 気体供給ホース
173、175 延長誘導部
海水(液体、吸引対象物)W
軽石(固体、吸引対象物)P
空気(気体、吸引対象物)G
図1
図2
図3
図4
図5