(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135561
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】噴霧水耕栽培プラント及び噴霧水耕栽培方法
(51)【国際特許分類】
A01G 31/00 20180101AFI20230921BHJP
B01J 19/08 20060101ALI20230921BHJP
B01F 23/231 20220101ALI20230921BHJP
B01F 23/2373 20220101ALI20230921BHJP
B01F 25/45 20220101ALI20230921BHJP
C02F 1/68 20230101ALI20230921BHJP
【FI】
A01G31/00 601C
A01G31/00 601A
B01J19/08 C
B01F23/231
B01F23/2373
B01F25/45
C02F1/68 510A
C02F1/68 520B
C02F1/68 520C
C02F1/68 530A
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040836
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000116079
【氏名又は名称】ローレルバンクマシン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(71)【出願人】
【識別番号】520514827
【氏名又は名称】学校法人青葉学園
(71)【出願人】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】山縣 芳和
(72)【発明者】
【氏名】中西 秀行
(72)【発明者】
【氏名】小澤 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】沖野 晃俊
(72)【発明者】
【氏名】末永 祐磨
(72)【発明者】
【氏名】劉 智志
(72)【発明者】
【氏名】大澤 泰樹
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 篤郎
(72)【発明者】
【氏名】天野 有里子
(72)【発明者】
【氏名】宇野 雄一
【テーマコード(参考)】
2B314
4G035
4G075
【Fターム(参考)】
2B314MA23
2B314PA08
2B314PB20
2B314PB22
4G035AB07
4G035AC26
4G035AE13
4G075AA03
4G075BA08
4G075CA25
4G075DA02
4G075DA18
4G075EB41
4G075EC21
(57)【要約】
【課題】肥料や水を低減しつつ植物の生育を促進する噴霧水耕栽培を実現する噴霧水耕栽培プラント及び噴霧水耕栽培方法を提供する。
【解決手段】噴霧水耕栽培プラント1は、植物Pの地中部を容器2a内に露出させた状態で支持部2bが植物Pを支持し、植物Pを水耕栽培する栽培槽2と、植物Pの地下部に液体を噴射する噴霧ヘッド43と、噴霧ヘッド43に液体を供給する液供給路42と、を備え、液体は、活性種を含むプラズマ機能液Lである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の地中部を容器内に露出させた状態で支持部が前記植物を支持し、前記植物を水耕栽培する栽培槽と、
前記植物の地下部に液体を噴射する液体噴射部と、
前記液体噴射部に前記液体を供給する液体供給部と、
を備え、
前記液体は、活性種を含むプラズマ機能液であることを特徴とする噴霧水耕栽培プラント。
【請求項2】
プラズマ生成ガスから生成されたプラズマガスを溶媒に導入して前記プラズマ機能液を生成するプラズマ機能液製造装置をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の噴霧水耕栽培プラント。
【請求項3】
前記プラズマ機能液製造装置は、前記液体噴射部が噴射したプラズマ機能液を回収し、前記栽培槽から前記プラズマ機能液製造装置に還流させるプラズマ機能液回収部を備えていることを特徴とする請求項2に記載の噴霧水耕栽培プラント。
【請求項4】
前記溶媒は、水又は液体肥料を含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の噴霧水耕栽培プラント。
【請求項5】
前記プラズマ生成ガスは、空気、二酸化炭素ガス、酸素ガス、窒素ガスのうち少なくとも1種類を含むことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の噴霧水耕栽培プラント。
【請求項6】
前記プラズマ生成ガスの酸素濃度は、90%以上であることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の噴霧水耕栽培プラント。
【請求項7】
前記プラズマ生成ガスの酸素濃度は、90%以上95%以下であることを特徴とする請求項6に記載の噴霧水耕栽培プラント。
【請求項8】
前記プラズマ生成ガスの窒素濃度が、0.5%以上であることを特徴とする請求項6又は7に記載の噴霧水耕栽培プラント。
【請求項9】
前記プラズマ機能液製造装置は、
前記活性種を含むプラズマガスを生成するプラズマガス発生部と、
前記プラズマガスを放出するプラズマガス放出部と、
前記溶媒を貯留するプラズマ機能液生成槽を備え、前記プラズマガスを前記溶媒に導入させて前記プラズマ機能液を生成するプラズマ機能液生成部と、
を備え、
前記プラズマガス発生部は、前記プラズマ機能液生成槽の外部に配置され、
前記プラズマガス放出部は、前記プラズマ機能液生成槽に貯留された溶媒中に浸漬され、前記プラズマガスを気泡状態で放出する多孔質部材であることを特徴とする請求項2乃至8のいずれか1項に記載の噴霧水耕栽培プラント。
【請求項10】
前記プラズマ機能液製造装置は、
高周波電圧が印可される第1の電極と、前記第1の電極に空間を介して対向して配置され、アースに接続された金属製の多孔質部材から成る第2の電極と、前記空間にプラズマ生成ガスを供給するガス供給路と、を備え、前記第1の電極と第2の電極との間に高周波電圧を印加して前記空間内のプラズマ生成ガス中でプラズマを発生させて活性種を含むプラズマガスを生成するプラズマガス発生部と、
前記溶媒を貯留して前記第1の電極及び第2の電極を浸漬させるプラズマ機能液生成槽を備え、前記第2の電極を通過した気泡状態の前記プラズマガスを前記溶媒に導入させて前記プラズマ機能液を生成するプラズマ機能液生成部と、
を備えていることを特徴とする請求項2乃至8のいずれか1項に記載の噴霧水耕栽培プラント。
【請求項11】
気泡状の前記プラズマガスの発生初期の平均直径が1μm以上100μm未満であることを特徴とする請求項9又は10に記載の噴霧水耕栽培プラント。
【請求項12】
前記プラズマ機能液は、大気圧プラズマ放電により生成されることを特徴とする請求項2乃至11のいずれか1項に記載の噴霧水耕栽培プラント。
【請求項13】
前記噴射する液体の噴射直後の平均粒径が、30μm以下であることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の噴霧水耕栽培プラント。
【請求項14】
植物の地中部を容器内に露出させた状態で支持部が前記植物を支持し、前記植物を水耕栽培する栽培槽と、
前記植物の地下部に液体を噴射する液体噴射部と、
前記液体噴射部に前記液体を供給する液体供給部と、
を備えている噴霧水耕栽培プラントを用いた植物栽培方法であって、
前記液体は、活性種を含むプラズマ機能液であり、
前記液体噴射部は、前記プラズマ機能液を前記植物の地下部に噴射することを特徴とする噴霧水耕栽培方法。
【請求項15】
前記活性種は、酸素濃度90%以上の酸素ガスから生成されることを特徴とする請求項14に記載の噴霧水耕栽培方法。
【請求項16】
前記酸素ガスの酸素濃度は、90%以上95%以下であることを特徴とする請求項15に記載の噴霧水耕栽培方法。
【請求項17】
前記酸素ガスには、窒素濃度0.5%以上の窒素ガスが含まれていることを特徴とする請求項15又は16に記載の噴霧水耕栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴霧水耕栽培プラント及び噴霧水耕栽培方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマを植物栽培に適用する技術が研究されている。特に、プラズマ処理されたガス(プラズマガス)を液体(溶媒)に導入して、この液体を水耕栽培に適用することで、植物の生育を促進することが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、プラズマ処理により発生した活性種を含む溶解液を植物に噴霧して病原体や虫等を殺菌することが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-216872号公報
【特許文献2】特開2020-130085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、植物の根に液体肥料を含む液体を噴霧する水耕栽培では、液体の使用量を減らすことで、費用面での経済的コストを削減し、液体肥料による環境への悪影響を低減するとともに、植物の生育を促進するというニーズが高まっている。
【0005】
そこで、肥料や水を低減しつつ植物の生育を促進する噴霧水耕栽培を実現するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る噴霧水耕栽培プラントは、植物の地中部を容器内に露出させた状態で支持部が前記植物を支持し、前記植物を水耕栽培する栽培槽と、前記植物の地下部に液体を噴射する液体噴射部と、前記液体噴射部に前記液体を供給する液体供給部と、を備え、前記液体は、活性種を含むプラズマ機能液である構成とした。
【0007】
また、本発明に係る噴霧水耕栽培方法は、植物の地中部を容器内に露出させた状態で支持部が前記植物を支持し、前記植物を水耕栽培する栽培槽と、前記植物の地下部に液体を噴射する液体噴射部と、前記液体噴射部に前記液体を供給する液体供給部と、を備えている噴霧水耕栽培プラントを用いた植物栽培方法であって、前記液体は、活性種を含むプラズマ機能液であり、前記液体噴射部は、前記プラズマ機能液を前記植物の地下部に噴射する構成とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、洗浄効果や除菌効果を有する活性種を保持するプラズマ機能液が、植物の地中部に直接供給されることにより、プラズマ機能液に含まれる活性種が、短時間で植物に吸収されるため、植物を低コストで効率良く生育させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る噴霧水耕栽培プラントの構成を示す模式図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態に係る噴霧水耕栽培プラントの構成を示す模式図である。
【
図3】変形例に係るプラズマ機能液製造装置の構成を示す模式図である。
【
図4】変形例に係るプラズマ機能液製造装置の要部を示す縦断面図である。
【
図5】実験例1に関する実験手順を示す模式図である。
【
図7】実験例2に関する実験手順を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の各種実施形態について図面に基づいてそれぞれ説明する。なお、以下では、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0011】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0012】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0013】
<第1の実施形態>
まず、本発明の第1の実施形態に係る噴霧水耕栽培プラント1Aについて図面に基づいて説明する。
図1は、噴霧水耕栽培プラント1Aの構成を示す模式図である。噴霧水耕栽培プラント1Aは、植物Pを噴霧水耕栽培するための栽培槽2と、プラズマ機能液製造装置10と、を備えている。
【0014】
栽培槽2は、容器2aと、植物Pを支持して容器2a内に植物Pの地下部が成長する空間を形成する支持部2bと、を備えている。
【0015】
プラズマ機能液製造装置10は、プラズマガス発生部であるプラズマヘッド20を備えている。プラズマヘッド20は、プラズマを生成するものであれば如何なる構成であっても構わないが、大気圧付近の圧力でプラズマを発生させる大気圧プラズマ装置が好ましい。大気圧プラズマ装置は、真空プラズマ装置等の低圧プラズマ装置に比べて、装置サイズが小型で、操作性に優れ、且つ安全性が高い。さらに、大気圧プラズマ装置は、低圧プラズマ装置に比べて、高濃度の活性種を生成可能である。
【0016】
プラズマヘッド20の内部には、互いに隙間を空けて対向して配置された板状の第1の電極21及び第2の電極22が設けられている。第1の電極21は、電源23により高周波電圧が印加される。また、第2の電極22は、アース24に接続されている。
【0017】
第1の電極21、第2の電極22の間の空間には、コンプレッサー25を介してプラズマ生成ガスが送られる。プラズマ生成ガスは、プラズマを発生させるガスであり、空気、二酸化炭素ガス、酸素ガス、窒素ガスのうち少なくとも1種類を含む。プラズマ生成ガスの酸素濃度が90%以上、好ましくは90%以上95%以下の場合には、優れた洗浄効果や除菌効果を奏する。プラズマ生成ガスは、必要に応じて図示しない酸素濃縮器により、予め酸素濃度を調整しても構わない。なお、プラズマ生成ガスの酸素濃度が100%未満の場合、プラズマ生成ガスには窒素成分等が含まれる。特に、空気中の窒素をゼオライトに吸着させて高濃度の酸素を生成するPSA方式を用いた酸素濃縮機を使用して酸素濃度95%のプラズマ生成ガスを生成した場合、理論上0.5%程度の窒素が含まれる。
【0018】
プラズマヘッド20は、ガス搬送路31を介してプラズマガス放出部30に接続されている。プラズマヘッド20とプラズマガス放出部30とが離間していることにより、プラズマヘッド20内で生じた熱が、プラズマガス放出部30に伝わることが抑制されている。
【0019】
ガス搬送路31は、一方端がプラズマヘッド20に接続され、他方端がプラズマガス放出部30に接続されており、プラズマヘッド20で生成されたプラズマガスを、プラズマガス放出部30に送る。なお、プラズマガスは、プラズマガス放出部30からプラズマヘッド20への逆流を抑制する程度に加圧されている。
【0020】
プラズマガス放出部30は、後述するプラズマ機能液生成槽41に貯留された溶媒S中に浸漬されている。プラズマガス放出部30は、例えば、中空の略円筒状に形成されており、外周面に多数の孔32が形成された多孔質部材である。プラズマガス放出部30は、内部に供給されたプラズマガスを孔32に通過させることにより、プラズマガスの気泡Bをプラズマ機能液生成槽41内の溶媒Sに導入させる。
【0021】
孔32の孔径は、プラズマ機能液生成槽41内の溶媒Sに導入させる気泡Bの発生初期の気泡径に応じた任意の大きさに変更可能である。例えば、孔32の孔径に応じて、気泡径が1μm~100μm程度のマイクロバブルや、気泡径が数十nm~1μm程度のウルトラファインバブルを生成可能である。
【0022】
気泡Bには、プラズマ生成ガスの種類に応じて、オゾン、過酸化水素、水酸化ラジカル、窒素酸化物、一重項酸素等の活性種が含有されている。本明細書において「活性種」とは、プラズマ生成ガスがプラズマにより活性化されて生成されたラジカル等である。プラズマガスに含まれるラジカルは、プラズマガスを生成するためのプラズマ生成ガスの種類によって異なり、例えば、プラズマ生成ガスに酸素成分が含まれる場合には、酸素ラジカル類が生じ、プラズマ生成ガスに窒素成分が含まれる場合には、窒素酸化物ラジカル類が生じる。また、硝酸態窒素(硝酸ラジカル)は植物の生育に有用である。
【0023】
プラズマガス放出部30は、例えば、金属、セラミックス又はプラスチック製、好ましくは銅、銀又はそれらの合金を使用する。これにより、銅イオン又は銀イオンを溶媒Sに導入させ、プラズマ機能液Lの洗浄効果や除菌効果が増進される。
【0024】
プラズマ機能液製造装置10は、プラズマ機能液Lを生成するプラズマ機能液生成部40を備えている。本明細書において「プラズマ機能液L」とは、プラズマガスに保持された活性種が溶媒S中で気泡Bに保持された後に徐々に溶媒Sに溶解した溶液をいう。すなわち、プラズマ機能液Lには、気泡Bに保持されている活性種又は溶媒Sに溶解した活性種が含まれる。溶媒Sに活性種が溶解することにより、溶媒S自体が洗浄、除菌され、また、プラズマ機能液Lは、他の物体を洗浄、除菌する。
【0025】
プラズマ機能液生成部40は、溶媒Sを貯留してプラズマガス放出部30を溶媒S中に浸漬するプラズマ機能液生成槽41を備えている。プラズマ機能液生成槽41には、従来のような旋回流方式と比べて、溶媒Sを撹拌する撹拌翼等が設けられておらず、溶媒S中では気流の発生が抑制されている。溶媒Sは、超純水、イオン交換水、精製水又は蒸留水等の水又は無機栄養素を含む溶液、若しくは液体肥料等であるが、これらに限定されるものではない。なお、溶媒Sに液体肥料を用いる場合、プラズマ機能液Lが液体肥料に含まれる菌類を殺菌できるとともに、植物Pの生育に好適な活性種を液体肥料に含有させることができる。また、プラズマヘッド20が、プラズマ機能液生成槽41外に配置され、プラズマガスが、溶媒Sに浸漬されたプラズマガス放出部30から溶媒Sに導入されることにより、従来のようなベンチュリー方式と比べて、プラズマガスを生成する際の発熱でプラズマ機能液Lに含まれる活性種の活性が失われることを抑制でき、活性種の寿命を長期化することができる。
【0026】
気泡Bは、溶媒S中に保持される時間が長いマイクロバブル又はウルトラファインバブルが好ましい。特に、気泡Bがウルトラファインバブルである場合、気泡Bに浮力がほとんど作用しないため、気泡状態が長時間に亘って保持される。
【0027】
プラズマ機能液生成部40は、液体供給部としての液供給路42と、液体噴射部としての噴霧ヘッド43と、を備えている。
【0028】
液供給路42は、プラズマ機能液Lを容器2aに送る。液供給路42は、上流端がプラズマ機能液生成槽41に接続され、途中で3つに分岐し、先端が3つの噴霧ヘッド43にそれぞれ接続されている。液供給路42で送られるプラズマ機能液Lは、図示しないポンプ等を用いて噴霧ヘッド43に圧送される。
【0029】
3つの噴霧ヘッド43は、容器2aの底部に位置決めされており、プラズマ機能液Lを植物Pの地中部に向けてそれぞれ噴霧する。噴霧ヘッド43の数は、植物Pの数や噴霧ヘッド43がプラズマ機能液Lを噴霧する範囲に応じて増減可能である。プラズマ機能液Lが噴霧された植物Pの根等は、プラズマ機能液Lに含まれる活性種により除菌又は殺菌される。
【0030】
噴霧ヘッド43から噴霧されるプラズマ機能液Lの平均粒径は、30μm以下が好ましい。これにより、噴霧ヘッド43から噴霧されたプラズマ機能液Lは、容器2a内で所定時間は漂うとともに、植物Pの地中部に到達しなかった活性種もプラズマ機能液Lの雰囲気中に漂う。
【0031】
噴霧ヘッド43は、図示しないコントローラによって動作制御される。コントローラは、図示しないセンサ等により取得した温度や植物Pの生育状況に応じて、噴霧ヘッド43がプラズマ機能液Lを噴霧するタイミングや量を制御する。なお、噴霧ヘッド43からのプラズマ機能液Lの噴霧を停止すれば、植物Pの地中部が空気に晒され、植物Pは十分な酸素を吸収できる。
【0032】
このようにして、本実施形態に係る噴霧水耕栽培プラント1Aは、植物Pの地中部を容器2a内に露出させた状態で支持部2bが植物Pを支持し、植物Pを水耕栽培する栽培槽2と、植物Pの地下部に液体を噴射する噴霧ヘッド43と、噴霧ヘッド43に液体を供給する液供給路42と、を備え、液体は、活性種を含むプラズマ機能液Lである構成とした。
【0033】
この構成によれば、洗浄効果や除菌効果を有する活性種を保持するプラズマ機能液Lが、植物Pの地中部に直接供給されることにより、プラズマ機能液Lに含まれる活性種が、短時間で植物Pに吸収されるため、植物Pを低コストで効率良く生育させることができる。
【0034】
また、本実施形態に係る噴霧水耕栽培プラント1Aは、プラズマ生成ガスの酸素濃度が、90%以上である構成とした。
【0035】
この構成によれば、酸素濃度90%以上のプラズマ生成ガスから洗浄効果や除菌効果に優れた活性種を保持するプラズマガスが生成されることにより、長寿命の活性種を含む洗浄効果や除菌効果に優れたプラズマ機能液Lを得ることができる。
【0036】
また、本実施形態に係る噴霧水耕栽培プラント1Aは、プラズマ生成ガスの酸素濃度が、90%以上95%以下である構成とした。
【0037】
この構成によれば、小型の酸素濃縮器を使用して簡便にプラズマ生成ガスを得られるとともに、酸素濃度が過度に高い場合に生成されるオゾンの発生が抑制されるため、作業性や経済性に優れたプラズマ機能液Lを得ることができる。
【0038】
また、本実施形態に係る噴霧水耕栽培プラント1Aは、プラズマ生成ガスの窒素濃度が、0.5%以上である構成とした。
【0039】
この構成によれば、プラズマ機能液Lに、プラズマ生成ガスに含まれる窒素ガスに由来する硝酸イオンが溶解するため、植物の生育に好適なプラズマ機能液Lを得ることができる。
【0040】
また、本実施形態に係る噴霧水耕栽培プラント1Aは、気泡状の前記プラズマガスの発生初期の平均直径が1μm以上100μm未満である構成とした。
【0041】
この構成によれば、マイクロバブル又はウルトラファインバブルの気泡Bが長時間に亘って保持されるため、プラズマ機能液Lに含まれる活性種を長時間に亘って維持することができる。
【0042】
また、本実施形態に係る噴霧水耕栽培プラント1Aは、噴霧ヘッド43が噴射するプラズマ機能液Lの噴射直後の平均粒径が、30μm以下である構成とした。
【0043】
この構成によれば、噴霧ヘッド43から噴霧されたプラズマ機能液Lは、容器2a内で所定時間は漂うとともに、植物Pの地中部に到達しなかった活性種もプラズマ機能液Lの雰囲気中に漂うため、植物Pの地中部に吸収され易く、活性種を効率良く使用することができる。
【0044】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態に係る噴霧水耕栽培プラント1Bについて図面に基づいて説明する。
図2は、第2の実施形態に係る噴霧水耕栽培プラント1Bの構成を示す模式図である。なお、本実施形態に係る噴霧水耕栽培プラント1Bは、上述した第1の実施形態に係る噴霧水耕栽培プラント1Aと以下の点で相違し、その他の構成は共通する。したがって、共通する構成は、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0045】
プラズマ機能液生成部40は、容器2aとプラズマ機能液生成槽41とを接続する液循環路44を備えている。液循環路44は、上流端が容器2aに接続され、下流端がプラズマ機能液生成槽41に接続されている。植物Pに吸収されずに容器2a内に滞留したプラズマ機能液Lは、図示しないポンプ等により液循環路44を介して容器2aからプラズマ機能液生成槽41に還流される。
【0046】
容器2aから還流されたプラズマ機能液Lがプラズマ機能液生成槽41に貯められた溶媒Sに混入され、プラズマガス放出部30から放出されたプラズマガスの気泡Bが、プラズマ機能液生成槽41に貯められた溶媒Sに導入される。このようにして、活性種が溶解したプラズマ機能液Lが、プラズマ機能液生成部40と栽培槽2との間を循環する。
【0047】
また、溶媒Sに含まれる液体肥料の肥料としての寿命は、活性種の寿命よりも長いため、上述したように活性種を供給し続けることにより、液体肥料を繰り返し使用することができる。
【0048】
<変形例>
次に、プラズマ機能液製造装置10の変形例について図面に基づいて説明する。
図3は、本変形例に係るプラズマ機能液製造装置50の構成を示す模式図である。
図4は、プラズマ機能液製造装置50の要部を示す縦断面図である。なお、本変形例に係るプラズマ機能液製造装置50は、上述したプラズマ機能液製造装置10と以下の点で相違し、その他の構成は共通する。したがって、共通する構成は、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0049】
プラズマ機能液製造装置50は、プラズマガス発生部であるプラズマヘッド60を備えている。プラズマヘッド60は、プラズマを生成するものであれば如何なる構成であっても構わないが、大気圧付近の圧力でプラズマを発生させる大気圧プラズマ装置が好ましい。大気圧プラズマ装置は、真空プラズマ装置等の低圧プラズマ装置に比べて、装置サイズが小型で、操作性に優れ、且つ安全性が高い。さらに、大気圧プラズマ装置は、低圧プラズマ装置に比べて、高濃度の活性種を生成可能である。
【0050】
プラズマヘッド60は、円柱状の第1の電極61と、中空の略円筒状に形成されて第1の電極61を収容する第2の電極62と、を備えている。第1の電極61と第2の電極62とは、略同軸上に配置されている。第1の電極61及び第2の電極62は、プラズマ機能液生成槽41に貯留された溶媒S中に浸漬されている。
【0051】
第1の電極61は、プラズマ機能液生成槽41外に配置された電源63に給電ケーブル63aを介して接続されている。第2の電極62は、プラズマ機能液生成槽41外に配置されたアース64にアース線64aを介して接続されている。
【0052】
第1の電極61の外周には誘電体が被覆されて成る誘電体層65が設けられている。第1の電極61と第2の電極62との間に誘電体層65が介在することにより、プラズマを安定して発生させることができる。
【0053】
第1の電極61、第2の電極62の間の空間には、プラズマ機能液生成槽41外に配置されたコンプレッサー66からガス供給路66aを介してプラズマ生成ガスが送られる。ガス供給路66aの下流端は、支持部材68を貫通して、プラズマヘッド60内まで延伸されている。プラズマ生成ガスは、空気、二酸化炭素ガス、酸素ガス、窒素ガスのうち少なくとも1種類を含む。プラズマ生成ガスの酸素濃度が90%以上、好ましくは90%以上95%以下に設定される。なお、プラズマ生成ガスの酸素濃度が100%未満の場合、プラズマ生成ガスには窒素成分等が含まれる。プラズマ生成ガスの窒素成分は、5%以下が好ましい。第1の電極61と第2の電極62との間に高周波電圧が印加されると、プラズマ生成ガスからプラズマが生成される。
【0054】
第2の電極62の両端には、円板状の支持部材67、68が配置されている。支持部材67は、第2の電極62の先端側に設けられている。支持部材68は、第2の電極62の基端側に設けられ、第1の電極61、誘電体層65及びガス供給路66aを支持している。なお、
図3、
図4中の符号69は、給電ケーブル63a、アース線64a等を保護する保護管である。
【0055】
第2の電極62は、プラズマガス放出部を兼ねている。すなわち、第2の電極62は、外周面に多数の孔32が形成された金属製の多孔質部材である。第2の電極62は、好ましくは銅、銀又はそれらの合金を使用する。これにより、銅イオン又は銀イオンを溶媒Sに導入させることができる。第2の電極62は、内部に供給されたプラズマガスを孔32に通過させることにより、プラズマガスの気泡Bをプラズマ機能液生成槽41内の溶媒Sに導入させる。
【0056】
導電性を示す第2の電極62がアース64に接続されることにより、装置を簡素化且つ小型化するとともに、装置を持ち運び可能に構成することができる。また、金属製の第2の電極62は熱伝導率が高く、プラズマで発生した熱を効率良く溶媒Sに放熱できるため、活性種への熱の影響を抑制することができる。さらに、第2の電極62全体でプラズマが発生するため、プラズマヘッド60内で偏りなく略均一にプラズマガスを発生させることができ、気泡Bを溶媒Sへ容易に拡散することができる。
【実施例0057】
(実験例1)
プラズマ生成ガスとして酸素、二酸化炭素、空気(Air)、窒素を用いた場合に生成される各プラズマガスの殺菌効果について比較実験を行った。
【0058】
まず、精製水248ml、胞子液2mlを混合して胞子懸濁液250mlを作成した。胞子液の胞子には、Fusarium oxysporum f.sp. fragariae: NBRC 31982を使用した。この胞子は、主にイチゴ萎黄病の原因となる胞子であり、除菌もしくは殺菌することで、イチゴの疾病を防除して生育阻害や枯死を抑制できる。
【0059】
次に、
図5に示すように、胞子懸濁液50mlをビーカー101に入れ、プラズマバブリング装置100でプラズマガスによるプラズマ処理を行った。プラズマ生成部であるマルチガスプラズマジェット102で生成されたプラズマガスは、筒状配管103を経由して胞子懸濁液に浸漬されているプラズマガス放出部である多孔質フィルタ104に送られ、多孔質フィルタ104を介して胞子懸濁液に気泡状態で導入される。筒状配管103の長さを約90mm、多孔質フィルタ104の長さを約20mm、導入されるプラズマガスの流量を3SLPMにそれぞれ設定した。
【0060】
プラズマガスを生成するために用いられるプラズマ生成ガスとして、酸素、二酸化炭素、空気(Air)、窒素の4種類を用意し、それぞれから生成されたプラズマガスを気泡状態で胞子懸濁液に導入する時間(処理時間)を0秒、120秒、300秒、600秒とした。
【0061】
そして、気泡状態のプラズマガスが導入された胞子懸濁液1mlを、段階希釈した後にシャーレ105に入れられた寒天培地に滴下し、常温で2日間培養した後に胞子の発芽量をカウントした。その結果を
図6に示す。
【0062】
図6によれば、プラズマ生成ガスに酸素ガスを用いた場合のプラズマガスでは120秒、プラズマ生成ガスに二酸化炭素ガスを用いた場合のプラズマガスでは300秒以上、プラズマ生成ガスに空気を用いた場合のプラズマガスでは600秒以上をバブリングで導入することにより、優れた殺菌効果が得られることが分かる。一方、プラズマ生成ガスに窒素ガスを用いた場合のプラズマガスの殺菌効果は、酸素、二酸化炭素又は空気から生成されたプラズマガスに比べると小さいことが分かる。これらの結果から、プラズマ生成ガスとして酸素ガスを使用する場合が最も有効であることが分かる。
【0063】
(実験例2)
次に、プラズマ生成ガスに含まれる酸素ガスの酸素濃度とプラズマガスの殺菌効果との関係を検証する実験を行った。
【0064】
図7に示すように、精製水50mlをビーカー101に入れ、プラズマバブリング装置100を用いてプラズマガスを精製水に導入した。具体的には、プラズマ生成部であるマルチガスプラズマジェット102で生成されたプラズマガスが、筒状配管103を経由して精製水に浸漬されているプラズマガス放出部である多孔質フィルタ104に送られ、多孔質フィルタ104を介して精製水に気泡状態で導入される。筒状配管103の長さを約90mm、多孔質フィルタ104の長さを約20mm、導入されるプラズマガスの流量を3SLPMにそれぞれ設定した。
【0065】
プラズマ生成ガスとして以下の5種類を用意し、それぞれから生成されたプラズマガスを気泡状態で胞子懸濁液に導入する時間(処理時間)を60秒、300秒とした。
・プラズマ生成ガス1:空気(Air)100%(酸素21%、窒素78%、アルゴン1%)
・プラズマ生成ガス2:酸素40%、窒素58%、アルゴン2%
・プラズマ生成ガス3:酸素70%、窒素27%、アルゴン3%
・プラズマ生成ガス4:酸素90%、窒素6%、アルゴン4%
・プラズマ生成ガス5:酸素100%
【0066】
そして、気泡状態のプラズマガスが導入された精製水990μlに胞子液10μlを混合して10分間静置して胞子懸濁液を作成した。胞子液の胞子には、Fusarium oxysporum f.sp. fragariae: NBRC 31982 を使用した。そして、胞子懸濁液1mlを段階希釈した後にシャーレ105に入れられた寒天培地に滴下し、常温で2日間培養した後に生存菌数をカウントした。その結果を
図8に示す。
【0067】
図8によれば、プラズマ生成ガスの酸素濃度を90%、100%に設定した場合、バブリング時間(処理時間)が60秒、300秒で生存菌数が著しく減少して顕著な殺菌効果が見られた。一方、プラズマ生成ガスの酸素濃度を酸素21%、酸素40%、酸素70%に設定した場合、酸素濃度90%、100%に比べると生存菌数の減少すなわち殺菌効果が小さい。
【0068】
(実験例3)
次に、プラズマ生成ガスに含まれる酸素ガスの酸素濃度とプラズマガスの殺菌効果との関係をさらに詳しく検証する実験を行った。
【0069】
実験例2と同様にして、精製水990μlを胞子液10μlに混合して胞子懸濁液を作成した。胞子液の胞子には、実験例2と同様に、Fusarium oxysporum f.sp. fragariae: NBRC 31982である。
【0070】
プラズマ生成ガスとして以下の3種類を用意し、それぞれから生成されたプラズマガスを気泡状態で胞子懸濁液に導入する時間(処理時間)を10秒、20秒、30秒、60秒とした。その結果を
図9に示す。
・プラズマ生成ガス6:酸素80%、窒素17%、アルゴン3%
・プラズマ生成ガス7:酸素90%、窒素6%、アルゴン4%
・プラズマ生成ガス8:酸素100%
【0071】
図9によれば、プラズマ生成ガスの酸素濃度を90%、100%に設定した場合、バブリング時間(処理時間)10秒以上で生存菌数が著しく減少して顕著な殺菌効果が得られることが分かる。一方、プラズマ生成ガスの酸素濃度を80%に設定した場合には、生存菌数の減少すなわち殺菌効果は、酸素濃度90%、100%に比べると小さい。
【0072】
なお、実験例2のプラズマ生成ガス4と実験例3のプラズマ生成ガス7とは、それぞれ同じ成分で実験を行ったものの、実験に使用した胞子液の単位容積当たりの胞子数は実験の度に異なり、シャーレで培養する前の生存菌数が異なっているため、
図8及び
図9の生存菌数の絶対値は異なっている。実験例2のプラズマ生成ガス5と実験例3のプラズマ生成ガス8についても同様である。
【0073】
このように、プラズマ生成ガスとしては酸素ガスが非常に有効であり、特に、その酸素濃度が少なくとも90%以上の場合には顕著な殺菌効果が得られることが分かる。しかしながら、酸素濃度が95%より高くした場合、非常に高価な高濃度酸素発生機が必要であり実用的でないのに対して、酸素濃度を95%以下に設定した場合には、小型の酸素濃縮器を使用することが可能である。また、酸素濃度が過度に高い場合、生成されるオゾンの量が増えるため、人体や植物等への影響が懸念される。特に、酸素濃度が95%より高くなると、液中に導入したオゾンが液中に溶け込まず空気中に放出されるため、別途オゾン対策が必要となる。従って、作業性やコスト面を考慮すると、酸素濃度は90%以上95%以下が好適である。
【0074】
酸素濃度が95%以下の場合、プラズマ生成ガスには窒素ガスも含有される。そのため、プラズマ機能液L中の活性種には、植物の生育に係る栄養素として機能する硝酸イオンが発生する。
【0075】
また、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り、上記以外にも種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。