(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135564
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】レーザー加工ヘッド移動装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/08 20140101AFI20230921BHJP
B23K 26/064 20140101ALI20230921BHJP
【FI】
B23K26/08 Z
B23K26/064 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040843
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】300017946
【氏名又は名称】佐藤 敏
(74)【代理人】
【識別番号】110002653
【氏名又は名称】弁理士法人アズテックIP
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敏
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168CB03
4E168CB15
(57)【要約】
【課題】環境温度変化、不規則な振動、予想外の加速度、厳しい精度要求等を満たす位置決め機構を備えるレーザー加工ヘッド移動装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のレーザー加工ヘッド移動装置1は、被加工物をレーザー照射によって加工する機構を備えるレーザー加工ヘッドを、X軸、Y軸およびZ軸の直交する3軸に沿って移動させる機構を有するレーザー加工ヘッド移動装置において、X軸胴体部と、X軸胴体部と結合するX軸腕部とを備えるX軸コアモジュール100と、Y軸胴体部と、Y軸胴体部の両端から屈曲するY軸屈曲部とを備え、Y軸胴体部にX軸コアモジュール100のX軸胴体部をガイドするX軸受センターレールを備えるY軸コアモジュール200と、Z軸胴体部と、X軸コアモジュール100のX軸腕部にガイドされるX軸固定ブラケットを備えるZ軸エレベータモジュール300と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物をレーザー照射によって加工する機構を備えるレーザー加工ヘッドを、X軸、Y軸およびZ軸の直交する3軸に沿って移動させる機構を有するレーザー加工ヘッド移動装置において、
X軸胴体部と、前記X軸胴体部と結合するX軸腕部とを備えるX軸コアモジュールと、
Y軸胴体部と、前記Y軸胴体部の両端から屈曲するY軸屈曲部とを備え、前記Y軸胴体部に前記X軸コアモジュールの前記X軸胴体部をガイドするX軸受センターレールを備えるY軸コアモジュールと、
Z軸胴体部と、前記X軸コアモジュールの前記X軸腕部にガイドされるX軸固定ブラケットとを備えるZ軸エレベータモジュールと、
前記X軸コアモジュールの前記X軸胴体部をX軸受センターレールに沿って摺動させるY軸移動機構と、
前記Z軸エレベータモジュールの前記X軸固定ブラケットを前記X軸腕部に沿って摺動させるX軸移動機構と、
前記Z軸エレベータモジュールの前記X軸固定ブラケットが前記X軸腕部に保持されながら、前記Z軸胴体部が前記X軸固定ブラケットの爪部に保持されながら前記Z軸胴体部を摺動させるZ軸移動機構と、を備えるレーザー加工ヘッド移動装置。
【請求項2】
前記X軸コアモジュールの前記X軸胴体部および前記X軸腕部、前記Y軸コアモジュールの前記Y軸胴体部および前記Y軸屈曲部ならびに前記Z軸エレベータモジュールの前記Z軸胴体部および前記X軸固定ブラケットは、それぞれが鋳鉄一体成形されていることを特徴とする請求項1に記載のレーザー加工ヘッド移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工ヘッド移動装置に関するものであり、詳しくは、耐環境性指向を備えるレーザー加工ヘッド移動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザー光線を用いて加工を行う設備の一形態としては、レーザーヘッドを上方から制御し、作業台に置いたワークにレーザーを照射するというものがある。例えば、特許文献1に開示されたレーザ切断機は、一対の橋門とそれらを接続する中央梁とを備え、中央梁は交差梁を保持しており、その交差梁はレーザ切断ヘッドを支持し、レーザ切断ヘッドが、中央梁の長手方向と、中央梁の長手方向と直交する交差梁のガイド方向に沿って動く構造となっている。
【0003】
また、近年はレーザーの高性能化が進んでおり、特にレーザー焦点径の縮小化によって、相対的にワーク位置決め精度が高度化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヘッドが基台となる部分と一体化した設備は、設備の大型化や高精度化を考えるときに、基台部分の大型化と剛性の強化などの、相応の設置環境が要求される。レーザーの高性能化が進む中であっても、設備環境の改善は簡単ではなく、従来のレーザー加工設備ではユーザーの要求を満たせない恐れがある。対象ワークの物流要求多義、生産数量多寡、稼働時間、その他設備能力としての広範な対応性を満たす必要がある。また、レーザーヘッドのみを改善したい場合に基台部分から交換するとなると、大がかりな改修が必要となる。
【0006】
そこで、本発明は、環境温度変化、不規則な振動、予想外の加速度、様々なユーザー要求等を満たす位置決め機構を備えるレーザー加工ヘッド移動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のレーザー加工ヘッド移動装置は、前記した目的を達成せんとするもので、請求項1の手段は、被加工物をレーザー照射によって加工する機構を備えるレーザー加工ヘッドを、X軸、Y軸およびZ軸の直交する3軸に沿って移動させる機構を有するレーザー加工ヘッド移動装置において、X軸胴体部と、前記X軸胴体部と結合するX軸腕部とを備えるX軸コアモジュールと、Y軸胴体部と、前記Y軸胴体部の両端から屈曲するY軸屈曲部とを備え、前記Y軸胴体部に前記X軸コアモジュールの前記X軸胴体部をガイドするX軸受センターレールを備えるY軸コアモジュールと、Z軸胴体部と、前記X軸コアモジュールの前記X軸腕部にガイドされるX軸固定ブラケットとを備えるZ軸エレベータモジュールと、前記X軸コアモジュールの前記X軸胴体部をX軸受センターレールに沿って摺動させるY軸移動機構と、前記Z軸エレベータモジュールの前記X軸固定ブラケットを前記X軸腕部に沿って摺動させるX軸移動機構と、前記Z軸エレベータモジュールの前記X軸固定ブラケットが前記X軸腕部に保持されながら、前記Z軸胴体部が前記X軸固定ブラケットの爪部に保持されながら前記Z軸胴体部を摺動させるZ軸移動機構と、を備える。
【0008】
また、請求項2の手段は、前記X軸コアモジュールの前記X軸胴体部および前記X軸腕部、前記Y軸コアモジュールの前記Y軸胴体部および前記Y軸屈曲部ならびに前記Z軸エレベータモジュールの前記Z軸胴体部および前記X軸固定ブラケットは、それぞれが鋳鉄一体成形されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のレーザー加工ヘッド移動装置は、X、YおよびZ軸の位置関係構成を鋳鉄一体成形モジュール製とし、全体をシンプルで薄型軽量化する事で移動体質量を軽減し、誤差要因となり得る応力による撓み、歪み等を排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のレーザー加工ヘッド移動装置の全体の上方斜視図である。
【
図2】本発明のレーザー加工ヘッド移動装置の全体の下方斜視図である。
【
図3】本発明のレーザー加工ヘッド移動装置のX軸コアモジュールの斜視図である。
【
図4】本発明のレーザー加工ヘッド移動装置のY軸コアモジュールの斜視図である。
【
図5】本発明のレーザー加工ヘッド移動装置のZ軸エレベータモジュールの斜視図である。
【
図6】本発明のレーザー加工ヘッド移動装置を設置した第1の使用例を表す斜視図である。
【
図7】本発明のレーザー加工ヘッド移動装置を設置した第2の使用例を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を図面にしたがって説明する。
【実施例0012】
図1は、本発明のレーザー加工ヘッド移動装置1の全体の上方斜視図である。また、
図2は、本発明のレーザー加工ヘッド移動装置1の全体の下方斜視図である。レーザー加工ヘッド移動装置1は、大別して、X軸コアモジュール100、Y軸コアモジュール200およびZ軸エレベータモジュール300を備え、一体として加工設備に取り付けて用いるモジュールとなる。
【0013】
図3は、レーザー加工ヘッド移動装置1のX軸コアモジュール100の斜視図である。X軸コアモジュール100は平面視で全体としてT字型の構造をなし、ほぼ直方体状のX軸胴体部110と、同じくほぼ直方体状のX軸腕部120を有し、X軸胴体部110の一方の先端部111と、X軸腕部120の底面部121の中間部121aとが結合する。X軸腕部120の左右側面部にはY軸受部122a、122bが形成される。X軸腕部120の上面部123は背面部124側に延伸したZ軸受部124aが形成される。X軸腕部120の背面部124にはY軸受部122aの内側部122a1から、Y軸受部122bの内側部122b1まで段部125が設けられる。本実施例においては、X軸腕部120の長手方向をX軸方向とする。
【0014】
図4は、レーザー加工ヘッド移動装置1のY軸コアモジュール200の斜視図である。Y軸コアモジュール200は平面視で全体としてコの字型の構造をなし、両端のY軸屈曲部210、220に、X軸受サイドレール211、221が設けられる。また、Y軸コアモジュール200のY軸胴体部230にはX軸受センターレール231が形成される。本実施例においては、Y軸屈曲部210、220の長手方向をY軸方向とする。X軸受センターレール231はX軸胴体部110をY軸方向にガイドし、X軸受サイドレール211、221は、X軸腕部120をY軸方向にガイドする。
【0015】
図5は、レーザー加工ヘッド移動装置1のZ軸エレベータモジュール300の斜視図である。Z軸エレベータモジュール300はほぼ直方体状のZ軸胴体部310と、Z軸胴体部310の正面部に設けられるZ軸ボールねじ軸311と嵌合してZ軸方向に摺動可能に設けられるX軸固定ブラケット320からなる。X軸固定ブラケット320は、Z軸胴体部310を保持する図示しない爪部を備える。本実施例においては、Z軸胴体部310長手方向をZ軸方向とする。X軸腕部120は、X軸固定ブラケット320をX軸方向にガイドする。
【0016】
Z軸エレベータモジュール300はZ軸移動機構を備える。Z軸エレベータモジュール300の上面収容部314に取り付けられるZ軸サーボモーター330を駆動源として、X軸コアモジュール100のZ軸受部124aと嵌合するX軸固定ブラケット320がZ軸方向に固定された状態で、Z軸胴体部310がZ軸方向にガイドされながら摺動する。具体的には、Z軸移動機構は、Z軸エレベータモジュール300のX軸固定ブラケット320がX軸腕部120に保持されながら、Z軸胴体部310のZ軸ボールねじ軸311がX軸固定ブラケット320の図示しない爪部に保持されながらZ軸胴体部310を摺動させる。
【0017】
X軸コアモジュール100はX軸移動機構を備える。Z軸エレベータモジュール300のX軸方向への移動は、段部125の図示しない内部収容部に収容される図示しないX軸駆動用モーターマグネットを駆動源として、X軸コアモジュール100のZ軸受部124aと嵌合するX軸固定ブラケット320が、Y軸受部122aの内側部122a1から、Y軸受部122bの内側部122b1までX軸方向に摺動する。このとき、Z軸エレベータモジュール300のZ軸胴体部310とX軸固定ブラケット320は一体としてX軸方向に移動する。
【0018】
Y軸コアモジュール200はY軸移動機構を備える。Z軸エレベータモジュール300のY軸方向への移動は、Y軸胴体部230の図示しない内部収容部に収容される図示しないY軸駆動用モーターマグネットを駆動源として、X軸受センターレール231と嵌合するX軸コアモジュール100のX軸胴体部110が、Y軸胴体部230の内部を摺動する。このとき、Z軸エレベータモジュール300は、X軸コアモジュール100と一体としてY軸方向に移動する。また、X軸コアモジュール100のX軸胴体部110およびX軸腕部120は、XY軸からなるXY平面と平行に、かつ、Y軸方向に沿って移動する。
【0019】
図6はレーザー加工ヘッド移動装置1を櫓型レーザー加工設備500に設置した使用例を表す斜視図である。レーザー加工ヘッド移動装置1はY軸コアモジュール200を櫓型レーザー加工設備500に固定して用いられる。Y軸コアモジュール200が櫓型レーザー加工設備500に固定されたレーザー加工ヘッド移動装置1のZ軸エレベータモジュール300の底面部312にはヘッド装着部313が設けられ、ヘッド装着部313にレーザー加工ヘッド400が取り付けられる。レーザー加工ヘッド400は、被加工物をレーザー照射によって加工する機構を備える。
【0020】
X軸駆動用モーターマグネット、Y軸駆動用モーターマグネットおよびZ軸サーボモーター330は、図示しない制御装置によって制御される。制御装置の制御によって、レーザー加工ヘッド移動装置1は、レーザー加工ヘッド400をX軸、Y軸およびZ軸方向に、所定の範囲内で任意に移動させることができる。
【0021】
図6の櫓型レーザー加工設備500はレーザー加工ヘッド移動装置1の使用例の一例であり、本発明のレーザー加工ヘッド移動装置1は、他のレーザー加工設備にも使用可能である。
図7はレーザー加工ヘッド移動装置1をフロントゲート型レーザー加工設備600に設置した使用例を表す斜視図である。本発明のレーザー加工ヘッド移動装置1は、Y軸コアモジュール200を固定できるレーザー加工設備であれば、あらゆる環境で使用可能である。
【0022】
X軸コアモジュール100のX軸胴体部110およびX軸腕部120、ならびに、Y軸コアモジュール200のY軸屈曲部210、220およびY軸胴体部230は、鋳鉄一体成形とすることが好適である。また、Z軸エレベータモジュール300のZ軸胴体部310も鋳鉄成形とすることが好適である。レーザー加工ヘッド移動装置1の各モジュールをシンプルで薄型軽量化とすることで移動体質量を軽減し、誤差要因となり得る応力による撓み、歪み等を排除することができる。
【0023】
また、本発明のレーザー加工ヘッド移動装置1は、全体としてモジュール化され、X軸移動機構、Y軸移動機構およびZ軸移動機構を内蔵する構成である。そのため、本発明の範囲内で多様なレーザー加工ヘッド移動装置1を選択的に設備に設置して使用することができ、または設備の規模や環境を問わずに本発明のレーザー加工ヘッド移動装置1を設置することができる。さらに、床から上部に大きな空間を確保できる設備であれば、ワークの移動や物流、治具設置等の細工手段が自由に構築可能となる。
【0024】
各モジュールの駆動モーターの構成は、先述の例示にとどまらず、多様な構成とすることができる。各モジュールの駆動モーターは、Z軸については、Z軸サーボモーター330のように直動型とし、単純化、小型化とすることが好適であり、X軸およびY軸については、リニアスライドモーターとし、簡潔、省スペース化とすることが好適である。また、駆動モーターの収容部の構成は、応力で歪みにくい枡形、例えば溶接製缶、鋳物製構造とすることが好適である。