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特開2023-135566既存建物の建替え方法および建替え建物
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  • 特開-既存建物の建替え方法および建替え建物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135566
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】既存建物の建替え方法および建替え建物
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20230921BHJP
   E02D 29/05 20060101ALI20230921BHJP
   E02D 31/12 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
E04G23/02 C
E02D29/05 Z
E02D31/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040846
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 徹
(72)【発明者】
【氏名】森山 多加浩
(72)【発明者】
【氏名】田中 龍一
(72)【発明者】
【氏名】秋月 通孝
【テーマコード(参考)】
2D147
2E176
【Fターム(参考)】
2D147AA00
2D147AA05
2E176AA01
2E176BB36
(57)【要約】
【課題】地下水位が既存地下躯体の底面よりも高い既存建物を建替える際に、工期の短縮および建設コストの削減を実現できる、既存建物の建替え方法を提供すること。
【解決手段】既存建物の建替え方法は、地下水位Wが既存地下躯体11の底面よりも高い既存建物1を建替える方法である。既存地下躯体11は、底面を構成する既存耐圧盤13および側面を構成する既存地下外壁14を有する。既存建物の建替え方法は、既存地下外壁14のうち地下水位W以深となる部分および既存耐圧盤13を存置して、既存地下躯体11の内部を解体して、既存耐圧盤13および既存地下外壁14で囲まれた地下空間Sを形成するステップS2と、地下空間Sに新設地下躯体30を構築するステップS3と、を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存地下躯体を備えかつ地下水位が前記既存地下躯体の底面よりも高い既存建物の建替え方法であって、
前記既存地下躯体は、底面を構成する既存耐圧盤および側面を構成する既存地下外壁を有し、
少なくとも前記既存地下外壁のうち地下水位以深となる部分および前記既存耐圧盤を存置して、前記既存地下躯体の内部を解体して、前記既存耐圧盤および前記既存地下外壁で囲まれた地下空間を形成する工程と、
前記地下空間に新設地下躯体を構築する工程と、を含むことを特徴とする既存建物の建替え方法。
【請求項2】
既存地下躯体を備えかつ地下水位が前記既存地下躯体の底面よりも高い既存建物を建て替えた建替え建物であって、
前記既存地下躯体は、前記既存地下躯体の底面を構成する既存耐圧盤と、
前記既存耐圧盤の外周部から少なくとも地下水位の高さまで延びる既存地下外壁と、
前記既存耐圧盤および前記既存地下外壁で囲まれた空間に構築された新設地下躯体と、を備えることを特徴とする建替え建物。
【請求項3】
前記既存耐圧盤の底面から下方に延びる既存杭および/または新設杭をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の建替え建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存建物の建替え方法、および、この既存建物の建替え方法により建て替えた建替え建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、地下水位の高い地盤に設けられた既存地下躯体を有する既存建物の建替え方法が提案されている(特許文献1~3参照)。
特許文献1には、地下水位の高い地盤に建てられた地下躯体のある建物の基礎に、地上躯体の解体により減少する重量のうち、浮力に抵抗する重量の新築基礎を構築し、その後、新築基礎に新築の地下躯体を構築しつつ既存の地下躯体および既存の地上躯体を解体する、建物の建替工法が示されている。
特許文献2には、地下水圧が作用する既存構造物の少なくとも耐圧版を残して既存構造物を解体し、既存耐圧版上に新築構造物を構築する場合に、その解体途中で、既存耐圧版上に新設杭施工用ケーシングを地下水圧の水頭よりも高く設置し、ケーシングを通じて新たにコンクリート杭を打設し、コンクリート杭の杭頭部分と既存構造物の耐圧版とを一体的に接合して地下水圧に抵抗させる、既存構造物の解体時における浮力対策方法が示されている。
【0003】
特許文献3には、地下水対策を施して建替対象地における新設構造物の底盤部分からの地下水の湧出を阻止しながら、地下構造部と地上構造部とを有する既設構造物を解体して少なくとも地下構造部を有する新設構造物を構築する構造物の建替方法であって、地下水対策として、既設の地下構造部の底側部位を解体せずに止水部として残して底側部位に浮上抵抗力を付与する浮上抵抗措置と、地下水を揚水する揚水措置とを、建替対象地においてエリアを分けて実施する、構造物の建替方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-339816号公報
【特許文献2】特開2007-177410号公報
【特許文献3】特開2016-79567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、地下水位が既存地下躯体の底面よりも高い既存建物を建替える際に、工期の短縮および建設コストの削減を実現できる、既存建物の建替え方法および建替え建物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、地下水位の高い敷地に建てられた既存建物を対象とする建替え方法であり、既存地下外壁の地下水位以深となる部分および既存耐圧盤を存置することで、既存地下外壁および既存耐圧盤で囲まれた地下空間へ地下水が浸入するのを防止しつつ、既存地下外壁および既存耐圧盤の重量が地下水による浮力に抵抗するので、工期の短縮や建設コストの削減が可能である点に着眼して、本発明に至った。
第1の発明の既存建物の建替え方法は、既存地下躯体(例えば、後述の既存地下躯体11)を備えかつ地下水位(例えば、後述の地下水位W)が前記既存地下躯体の底面よりも高い既存建物(例えば、後述の既存建物1)の建替え方法であって、前記既存地下躯体は、底面を構成する既存耐圧盤(例えば、後述の既存耐圧盤13)および側面を構成する既存地下外壁(例えば、後述の既存地下外壁14)を有し、少なくとも前記既存地下外壁のうち地下水位以深となる部分および前記既存耐圧盤を存置して、前記既存地下躯体の内部を解体して、前記既存耐圧盤および前記既存地下外壁で囲まれた地下空間(例えば、後述の地下空間S)を形成する工程(例えば、後述のステップS2)と、前記地下空間に新設地下躯体(例えば、後述の新設地下躯体30)を構築する工程(例えば、後述のステップS3)と、を含むことを特徴とする。
【0007】
ここで、少なくとも既存耐圧盤を存置するとは、既存耐圧盤のみを存置する場合や、既存耐圧盤に加えてこの既存耐圧盤上の既存基礎の一部を存置する場合を含む。
この発明によれば、地下水位以深となる部分の既存地下外壁および既存耐圧盤を存置したので、既存地下外壁および既存耐圧盤で囲まれた地下空間に地下水が浸入するのを防止できる。よって、この地下空間に容易に新設地下躯体を構築できる。
また、地下水位以深となる部分の既存地下外壁および既存耐圧盤の重量が地下水による浮力に抵抗するので、既存地下躯体を解体する際、既存地下躯体の浮き上がりを防止できる。また、地下水による浮力に抵抗するために新たに重量物を設ける必要がないので、工期の短縮および建設コストの削減を実現できる。
また、地下水位以深となる部分の既存地下外壁および既存耐圧盤が地下水の浸入を防止するため、地下水の浸入に対して新たに遮水体を設ける必要がなく、工期の短縮および建設コストの削減を実現できる。
【0008】
第2の発明の建替え建物は、既存地下躯体(例えば、後述の既存地下躯体11)を備えかつ地下水位(例えば、後述の地下水位W)が前記既存地下躯体の底面よりも高い既存建物(例えば、後述の既存建物1)を建て替えた建替え建物(例えば、後述の建替え建物4、4A、4C)であって、前記既存地下躯体は、前記既存地下躯体の底面を構成する既存耐圧盤(例えば、後述の既存耐圧盤13)と、前記既存耐圧盤の外周部から少なくとも地下水位の高さまで延びる既存地下外壁(例えば、後述の既存地下外壁14)と、前記既存耐圧盤および前記既存地下外壁で囲まれた空間に構築された新設地下躯体(例えば、後述の新設地下躯体30)と、を備えることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、建替え建物の新設地下躯体を構築する際に、地下水位以深となる部分の既存地下外壁および既存耐圧盤が、地下水の浸入を防止しつつ浮力に抵抗するため、地下水の浸入に対して新たに遮水体を設けたり、地下水による浮力に対して新たに重量物を設けたりする必要がなく、工期の短縮および建設コストの削減を実現できる。
【0010】
第3の発明の建替え建物は、前記既存耐圧盤の底面から下方に延びる既存杭および/または新設杭をさらに備えることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、地下水位以深となる部分の既存地下外壁および既存耐圧盤の重量に加えて、既存杭および/または新設杭の引き抜き抵抗が、地下水による浮力に抵抗するので、既存地下躯体を解体する際、既存地下躯体の浮き上がりをより確実に防止できる。
また、既存杭および/または新設杭が、地下水による浮力に抵抗するので、地下水による浮力に対して新たに重量物を設ける必要がなく、建設コストを削減できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、地下水位が既存地下躯体の底面よりも高い既存建物を建替える際に、工期の短縮および建設コストの削減を実現できる、既存建物の建替え方法および建替え建物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る既存建物の建替え方法により建替えられる既存建物の縦断面図である。
図2】第1実施形態に係る既存建物を建替え手順のフローチャートである。
図3】第1実施形態に係る既存建物の建替え手順の説明図(その1、既存地下躯体の内部を解体した状態)である。
図4】第1実施形態に係る既存建物の建替え手順の説明図(その2、建替え建物を構築した状態)である。
図5】既存地下躯体の内部を解体した際に既存地下躯体が浮き上がるか否かを検討するための図である。
図6】第2実施形態に係る建替え建物の縦断面図である。
図7】第2実施形態に係る既存建物の建替え手順の説明図(杭打ち機で新設杭を構築した状態)である。
図8】第3実施形態に係る既存建物の建替え手順の説明図(杭打ち機で新設杭を構築した状態)である。
図9】第4実施形態に係る建替え建物の縦断面図である。
図10】第4実施形態に係る既存建物の建替え手順の説明図(既存地下躯体の内部を解体した状態)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、既存耐圧盤と、既存地下外壁の地下水位以深となる部分と、を浮力抵抗手段および遮水手段とする、地下階を有する既存建物の建替え方法および建替え建物である。
本発明の第1実施形態では、既存建物は、既存耐圧盤と、既存地下外壁の地下水位以深となる部分と、既存杭と、を備えており、既存耐圧盤および既存地下外壁で囲まれた地下空間に新設地下躯体を構築する(図1図5)。
第2、第3実施形態では、第1実施形態の建替え建物に、さらに新設杭を追加したものである(図6図7)。第4実施形態は、第1実施形態の建替え建物に、さらに新設地下外壁を設けたものである(図9図10)。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る既存建物の建替え方法により建替えられる既存建物1の縦断面図である。
既存建物1は、地盤2中に構築された既存杭10と、地盤2中で既存杭10の上に構築された既存地下躯体11と、既存地下躯体11の上に構築された既存地上躯体12と、を備える。既存地下躯体11は、底面を構成する既存耐圧盤13を含む既存基礎17と、側面を構成する既存地下外壁14と、を有する。既存地下外壁14は、既存耐圧盤13の外周部から地表面3まで延びている。既存杭10は、既存耐圧盤13の底面から下方に延びている。
【0015】
また、地盤2中には、既存地下躯体11の既存地下外壁14の外周面に沿って、土(Soil)とセメント系懸濁液とを地盤中の掘削孔内または掘削溝内で混合攪拌を行うことで造成される、既存山留め壁であるSMW(ソイルセメント連続壁、Soil Mixing Wall)20が構築されている。SMW20には、所定間隔おきに芯材21が打ち込まれており、これら芯材21は、既存地下躯体11に一体化している。
また、地盤2中には、地下水が存在しており、地下水位Wは、地表面3よりも低く、既存地下躯体11の底面よりも高くなっている。
【0016】
以下、既存建物1を建て替える手順について、図2のフローチャートを参照しながら説明する。
ステップS1では、既存地上躯体12を既存1階床面15上まで解体する(図1参照)。
ステップS2では、図3に示すように、既存地下外壁14および既存耐圧盤13を存置して、既存地下躯体11の内部を解体する。具体的には、既存地下躯体11の既存地下外壁14を残して、この既存地下外壁14で囲まれた内側の躯体を上から既存耐圧盤13の上面まで解体する。これにより、既存耐圧盤13および既存地下外壁14で囲まれた地下空間Sが形成される。この状態で、既存地下躯体11に作用する浮力に対して、既存地下躯体11の既存耐圧盤13および既存地下外壁14の躯体重量、既存杭10の引抜耐力、ならびにSMW20の芯材21の引抜き摩擦抵抗が抵抗し、既存地下躯体11が浮き上がらないようになっている。
ステップS3では、図4に示すように、既存耐圧盤13および既存地下外壁14で囲まれた地下空間Sに新設地下躯体30を構築する。
ステップS4では、図4に示すように、新設地下躯体30上に新設地上躯体31を構築して、建替え建物4とする。
【0017】
以下、既存地下躯体の内部を解体して地下空間を形成した際に、地下水の浮力により既存地下躯体が浮き上がるか否かについて、図5を参照しながら検討する。
まず、既存地下躯体11に作用する浮力w1を求める。水頭差Hは、以下の式で表わされる。
H=21.45m(既存地下躯体下面の深さ)-5.0m(被圧水頭)
=16.45m
【0018】
よって、既存地下躯体に作用する浮力w1は、以下の式で表わされる。
w1=4012m(既存地下躯体の底面の面積)×16.45m(水頭差)
×1t/m=65997t
【0019】
既存地下躯体の重量w2は、49888tである。
既存杭の引抜耐力w3は、以下の式で表わされる。
w3=998kN(既存杭1本当たりの引抜耐力)×113本(杭本数)
=112774kN
=11507t
【0020】
SMWの引抜き摩擦抵抗w4を求める。SMWの引抜き摩擦抵抗は、既存地下躯体の下面よりも下側の芯材のみが引き抜きに対して抵抗するものとする。したがって、芯材の長さ(根入長)Lsは、26.5m-21.45m=5.05mとなる。また、地盤の平均N値Nsを20、片面の芯材の周長Lを256mとすると、SMWの引抜き摩擦抵抗w4は、以下の式で表わされる。
w4=1/3×(10×Ns×Ls/3)×L×2
=57906kN
=5908t
【0021】
よって、地下水の浮力により既存地下躯体が浮き上がるか否かの判定式は、以下のようになる。
(w2+w3+w4)/w1
=(49888+11507+5908)/65997
=1.02>1.0
したがって、地下水の浮力による既存地下躯体の浮き上がりを防止できる。
【0022】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)地下水位W以深となる部分の既存地下外壁14および既存耐圧盤13を存置したので、既存地下外壁14および既存耐圧盤13で囲まれた地下空間Sに地下水が浸入するのを防止できる。よって、この地下空間Sに容易に新設地下躯体30を構築できる。
また、地下水位W以深となる部分の既存地下外壁14および既存耐圧盤13の重量が地下水による浮力に抵抗するので、既存地下躯体11を解体する際、既存地下躯体11の浮き上がりを防止できる。また、地下水による浮力に抵抗するために新たに重量物を設ける必要がないので、工期の短縮および建設コストの削減を実現できる。
また、地下水位以深となる部分の既存地下外壁14および既存耐圧盤13が地下水の浸入を防止するため、地下水の浸入に対して新たに遮水体を設ける必要がなく、工期の短縮および建設コストの削減を実現できる。
【0023】
(2)地下水位以深となる部分の既存地下外壁14および既存耐圧盤13の重量に加えて、既存杭10の引き抜き抵抗が地下水による浮力に抵抗するので、既存地下躯体11を解体する際、既存地下躯体11の浮き上がりをより確実に防止できる。
また、既存杭10が地下水による浮力に抵抗するので、地下水による浮力に対して新たに重量物を設ける必要がなく、建設コストを削減できる。
【0024】
〔第2実施形態〕
図6は、本発明の第2実施形態に係る建替え建物4Aの縦断面図である。
本実施形態では、既存耐圧盤13および既存地下外壁14で囲まれた地下空間Sに、新設地下躯体30を構築するとともに新設杭32を構築して、建替え建物4とした点が、第1実施形態と異なる。この新設杭32は、既存耐圧盤13の底面から下方に延びている。
具体的には、ステップS2において、図7に示すように、既存地下躯体11のうち新設杭32の直上に位置する部分を解体して、上下に連続する開口16を形成する。次に、開口16を通して、既存耐圧盤13上から地下水位Wより高い位置までケーシング41を設置するとともに、既存1階床面15上に杭打ち機40を載せて、杭打ち機40により、ケーシング41の内側に新設杭32を構築する。その後、既存地下外壁14および既存耐圧盤13を存置して、既存地下躯体11の内部を解体する。なお、本実施形態では、新設杭32の引抜耐力も浮力に抵抗する。
本実施形態によれば、上述の(1)、(2)と同様の効果がある。
【0025】
〔第3実施形態〕
本実施形態では、新設杭32の構築方法が第2実施形態と異なる。
すなわち、ステップS2において、図8に示すように、既存地下躯体11のうち新設杭32の直上に位置する部分を含む中央部のみを、既存耐圧盤13の上面まで解体する。次に、既存耐圧盤13上から地下水位Wより高い位置までケーシング41を設置するとともに、既存耐圧盤13上に杭打ち機40を載せて、杭打ち機40により、ケーシング41の内側に新設杭32を構築する。その後、既存地下外壁14を残して、既存地上躯体12の外周部を既存耐圧盤13の上面まで解体する。なお、本実施形態では、新設杭32の引抜耐力も浮力に抵抗する。
本実施形態によれば、上述の(1)、(2)と同様の効果がある。
【0026】
〔第4実施形態〕
図9は、本発明の第4実施形態に係る建替え建物4Cの縦断面図である。
本実施形態では、既存地下外壁14の外側に新設地下外壁33を設ける点が、第1実施形態と異なる。
すなわち、ステップS2において、図10に示すように、既存地下外壁14の外側に新設地下外壁33を構築して既存耐圧盤13に接合し、その後、新設地下外壁33の内側を既存耐圧盤13の上面まで解体する。なお、本実施形態では、新設地下外壁33の重量も浮力に抵抗する。
本実施形態によれば、上述の(1)、(2)と同様の効果がある。
【0027】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上述の各実施形態では、ステップS2において、既存地下外壁14および既存耐圧盤13を存置して、既存地下躯体11の内部を解体することで、既存耐圧盤13および既存地下外壁14で囲まれた地下空間Sを形成したが、これに限らない。すなわち、既存地下外壁14、既存耐圧盤13、およびこの既存耐圧盤13上の既存基礎17の一部を存置して、既存地下躯体11の内部を解体することで、既存耐圧盤13を含む既存基礎17および既存地下外壁14で囲まれた地下空間を形成してもよい。
また、上述の各実施形態では、既存建物1に既存杭10およびSMW20が設けられているが、これに限らず、既存杭10やSMW20が設けられていなくてもよい。
また、上述の各実施形態では、既存山留壁として、芯材21が所定の間隔おきに打ち込まれたSMW20を設けたが、これに限らず、場所打ち杭壁としてもよい。
また、第4実施形態では、既存耐圧盤13よりも上に位置する既存地下外壁14およびSMW20を全て撤去したが、これに限らず、既存耐圧盤13よりも上に位置する既存地下外壁14やSMW20の一部を存置してもよい。
【符号の説明】
【0028】
1…既存建物 2…地盤 3…地表面 4、4A、4C…建替え建物
10…既存杭 11…既存地下躯体 12…既存地上躯体
13…既存耐圧盤 14…既存地下外壁 15…既存1階床面 16…開口
17…既存基礎 20…SMW(ソイルセメント連続壁) 21…芯材
30…新設地下躯体 31…新設地上躯体 32…新設杭
33…新設地下外壁 40…杭打ち機 41…ケーシング
W…地下水位 S…地下空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10