(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135584
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】調湿性塗膜の形成方法及びその積層構造体
(51)【国際特許分類】
B05D 1/36 20060101AFI20230921BHJP
E04F 13/00 20060101ALI20230921BHJP
E04F 13/02 20060101ALI20230921BHJP
B05D 5/00 20060101ALI20230921BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
B05D1/36 Z
E04F13/00
E04F13/02 C
B05D5/00 F
B05D7/24 303B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144483
(22)【出願日】2022-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2022040342
(32)【優先日】2022-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000159032
【氏名又は名称】菊水化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山内 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】竹本 ひかる
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 洋平
(72)【発明者】
【氏名】村山 美優
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴久
【テーマコード(参考)】
4D075
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075AC57
4D075BB60X
4D075BB60Z
4D075CA33
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4D075EC01
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4D075EC25
4D075EC30
4D075EC51
(57)【要約】
【課題】基材表面に、調湿性塗膜を有した場合であっても、その調湿性塗膜に吸水され、蓄えられた水分により、その基材の強度などの性能を低下させることが少ない調湿性塗膜の形成方法を提供するものである。
【解決手段】基材の表面に、合成樹脂を主成分とした塗料により吸水緩和層を形成させた後に、合成樹脂と無機質の多孔物質の吸水性充填材を含む塗材により調湿性塗膜を形成させることである。
さらに、前記合成樹脂を主成分とした塗料により形成された吸水緩和層の透水量が5ml以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に、
合成樹脂を主成分とした塗料により吸水緩和層を形成させた後に、
合成樹脂と無機質の多孔物質の吸水性充填材を含む塗材により調湿性塗膜を形成させる調湿性塗膜の形成方法。
【請求項2】
前記合成樹脂を主成分とした塗料により形成された吸水緩和層の透水量が5ml以下である請求項1に記載の調湿性塗膜の形成方法。
【請求項3】
前記基材の透水量が5ml以上である請求項1又は請求項2に記載の調湿性塗膜の形成方法。
【請求項4】
前記基材が金属である請求項1又は請求項2に記載の調湿性塗膜の形成方法。
【請求項5】
基材の表面に、
合成樹脂を主成分とした吸水緩和層と、
合成樹脂と無機質の多孔物質の吸水性充填材を含む調湿性塗膜が積層されている積層構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建築物の室内の内壁面,天井面に用いることができ、それらを構成する板材にも適用することができる調湿性塗膜の形成方法及びその積層構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の内壁面や天井面には、それらの美観の向上や汚れ防止などから、壁紙を貼付けたり、塗料により塗装が行われてきた。また、表面に各種意匠を施した内装ボードなども用いられている。これにより、美観のあるきれいな室内を得ることができた。
さらに、室内の快適性を求めるために、これら内装材に各種付加価値を付けたものが数多く提案されてきた。
【0003】
この付加価値の一つに室内の湿度を調整することができる調湿性のある内装材がある。この内装材を室内の壁面や天井面に設けることで、それらの面に調湿性を持たせることができ、室内の湿度をある一定範囲に調整することができ、快適な室内空間を得ることができる。
代表的な提案として特許文献1に記載されたものが挙げられる。これは、吸水性ポリマーを含む被覆材組成物により湿気吸水層を設ける結露防止塗装法が記載されている。これにより、結露の発生を可及的に抑制することが可能となったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の建築用壁材では、この建築用壁材により形成された層で吸水された水分が、基材へ移動し、その水分により基材の強度低下を起こすことなどがある。場合によっては、基材に移動した水分により、基材内部で凍害が起こることもある。
これは、建築用壁材による層が吸水した水分が室内の湿度に応じ放出されるため、水分が比較的長く層に留まることが多いことと、基材が吸水した場合には、その吸水した水分の放出がスムーズに行われないためである。
【0006】
また、近年の建物の室内壁面を構成している基材は、定寸に裁断された板材により構成されることが多く、その基材によっては、吸水された水分により、膨張するものもあるため、基材が動き調湿性塗膜に割れが生じることもある。
特に、基材と基材との継ぎ目の部分では、その傾向が多くなり、調湿性塗膜が硬い場合では、その割れなどが発生し易いこともある。
【0007】
本開示は、基材表面に、調湿性塗膜を有した場合であっても、その調湿性塗膜に吸水され、蓄えられた水分により、その基材の強度などの性能を低下させることが少ない調湿性塗膜の形成方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
基材の表面に、合成樹脂を主成分とした塗料により吸水緩和層を形成させた後に、合成樹脂と無機質の多孔物質の吸水性充填材を含む塗材により調湿性塗膜を形成させることである。
これにより、調湿性塗膜に吸水され、蓄えられた水分により、その基材の強度などの性能を低下させることが少ないことになる。
【0009】
前記合成樹脂を主成分とした塗料により形成された吸水緩和層の透水量が5ml以下であることにより、調湿性塗膜の吸水された水分が、基材側表面に移動し難くなり、合成樹脂と無機質の多孔物質の吸水性充填剤を含む塗材の付着性も良好なこととなる。
【0010】
前記基材の透水量が5ml以上であることにより、吸水性のある基材であっても、調湿性塗膜に蓄えられた水分の基材への移動が少なくなり、基材の変化が少ないものとなり、良好な調湿効果を得ることができる。
【0011】
前記基材が金属であっても、調湿性塗膜に蓄えられた水分の影響で、基材である金属表面の錆の発生を少なくすることができる。
【0012】
基材の表面に、合成樹脂を主成分とした吸水緩和層と、合成樹脂と無機質の多孔物質の吸水性充填剤を含む調湿性塗膜が積層されているものである。
これにより、調湿性塗膜に吸水され、蓄えられた水分により、その基材の強度などの性能を低下させることが少ないものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の実施形態を説明する。本開示は、基材の表面に、合成樹脂を主成分とした塗料により吸水緩和層を形成させた後に、合成樹脂と無機質の多孔物質の吸水性充填材を含む塗材により調湿性塗膜を形成させることである。
まず、吸水緩和層は基材の表面に積層され、その層により、後述される調湿性塗膜に吸水されて蓄えられた水分を基材側へ移動し難くするためのものである。又、調湿性塗膜が水などの溶媒を含む塗材の場合には、その塗材の塗布後の溶媒の移動も調整することができるものである。
【0014】
また、基材中にある水分の移動もし難くなり、調湿性塗膜の性能も十分に発揮することができるものである。
この吸水緩和層は、合成樹脂を主成分とする塗料により形成されるものであり、その塗料を塗布し、硬化乾燥させることにより得られるものである。
【0015】
この合成樹脂には、アクリル樹脂,シリコーン樹脂,アクリルシリコン樹脂,フッ素樹脂,ポリウレタン樹脂,スチレン樹脂,エポキシ樹脂,メラミン樹脂,アルキッド樹脂,塩化ビニル樹脂,酢酸ビニル樹脂,ポリエステル樹脂,ポリエーテル樹脂,フェノール樹脂,ケトン樹脂等の樹脂がある。
これらの合成樹脂を水に分散させた合成樹脂エマルションを用いることが多い。この合成樹脂エマルションを用いた塗料は、水を溶媒とした水性塗料になり、塗料の取扱いや作業性の点から好ましく使われる。
【0016】
また、溶剤型の塗料に比べ、合成樹脂の粒子径を比較的大きくすることができるため、基材へ塗布した後に、基材に合成樹脂が吸い込まれることが少なく、基材表面にしっかりとした吸水緩和層を形成することができる。
これらの合成樹脂は、単独又は2種類以上を混合して用いても良い。これらを構成するモノマーは、単独又は共重合した一般的なものが使われる。
【0017】
これら合成樹脂を用いた合成樹脂エマルションの中でも、耐水性の良いアクリル系合成樹脂エマルション,アクリルスチレン系合成樹脂エマルション,アクリルシリコン系合成樹脂エマルション,ウレタン系合成樹脂エマルションが好ましく用いられる。
また、これらの合成樹脂エマルションは、耐水性の他にも塗料適性,塗膜の物性や入手の容易性などの点でも好適に用いられる。
【0018】
この吸水緩和層を形成する塗料には、必要に応じ、顔料成分を含ませることができる。
この顔料成分には、酸化チタン,酸化亜鉛などの白色顔料、酸化鉄などの無機系の顔料や有機系顔料などの着色顔料、炭酸カルシウム,カオリン,タルク,クレー,水酸化アルミニウム,ベントナイト,ホワイトカーボン,沈降性バリウムなどの体質顔料があり、単独又は複数種を組み合わせて用いることができる。
【0019】
これら顔料成分を塗料中に混合することが好ましく、特に白色顔料や体質顔料を用いることがより好ましい形態となる。この場合、白色など着色タイプの吸水緩和層となる。
また、水酸化アルミニウムを混合することで、吸水緩和層の難燃性を向上させることができ、吸水緩和層と調湿塗膜との積層構造体の難燃性能も向上させることができる。
【0020】
これら白色顔料や体質顔料などの顔料成分を混合することで、吸水緩和層を密な状態とすることができ、基材への吸水をより低くすることができる。又、その層の厚みが確保し易いものとなる。
また、珪砂や寒水砂などの骨材を加えることも可能であり、他にゼオライト、パーライトなどの軽量骨材などもある。更に繊維なども加えることも可能である。又、無機系の骨材の他にも有機系の骨材も用いることができる。
【0021】
これら骨材を加えることで、吸水緩和層の表面積を増やし、調湿性塗膜との密着が良好なものとなる。
また、その効果が損なわない限りにおいて、必要に応じて通常の塗料用添加剤を使用することができる。この添加剤には、消泡剤,分散剤,湿潤剤などとして用いられる界面活性剤、造膜助剤,防凍剤などとして用いられる高沸点溶剤がある。
【0022】
また、粘度,粘性調整のための増粘剤やレベリング剤、防腐剤、防藻剤、防黴剤、抗菌剤、pH調整剤、架橋剤、シランカップリング剤等のように一般に塗料に配合されている各種添加剤を必要に応じて添加することができる。
これらの中でも防藻剤、防黴剤を添加することが好ましく行われている。この防藻剤、防黴剤を塗料に添加することで、これにより得られた吸水緩和層や調湿性塗膜及び基材が調湿性塗膜に吸水して蓄えられた水分の影響での黴,藻の発生を抑制することができる。
【0023】
この添加量は、合成樹脂成分の固形分に対して、0.3~21重量%の範囲であることが好ましく、この範囲内であれば十分な効果を得ることができる。
防藻剤、防黴剤には、公知のものを用いればよく、トリアジン系化合物,イミダゾール系化合物,フタルイミド系化合物,スファミド系化合物,ニトリル系化合物,有機尿素系化合物,ハロゲン系化合物,フェノール系化合物,無機塩,ベンゾチアゾール系化合物などを用いることができる。
【0024】
これらの化合物は、単独で用いても、2種類以上の化合物を併用してもよく、好ましく行われている。これは、防藻剤や防黴剤には、その効果に特徴があり、特定のものに効果がない場合もあることから、2種類以上用いることがある。
この中でも、トリアジン系化合物とイミダゾール系化合物とを併用することが最も好ましい。
【0025】
トリアジン系化合物には、2-メチルチオ-4,6-ビス(エチルアミノ)-s-トリアジン、2-メチルチオ-4-第三級ブチルアミノ-6-シクロプロピルアミノ-s-トリアジン、2-メチルチオ-4-テトラブチル-6-シクロプロピルアミノ-s-トリアジン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリエチル-s-トリアジンがある。
【0026】
イミダゾール系化合物(ベンズイミダゾール系化合物を含む)の例としては、チアベンダゾール(TBZ),2-(カルボメトキシアミノ)-ベンズイミダゾール、2-メトメキシカルボニルアミノベンズイミダゾール、6-ジクロル-1-フェノキシカルボニル-2-トリフルオロメチルベンズイミダゾール、4,5,6,7-テトラクロル-2-トリフルオロメチルベンズイミダゾールがある。
【0027】
トリアジン系化合物とイミダゾール系化合物の配合割合は、10:1~1:10の範囲が好ましく、3:1~1:3の範囲がより好ましいものである。
このように構成される吸水緩和層を形成する塗料は、基材と調湿性塗膜の密着性を向上させるプライマーであることが好ましく、基材が金属である場合では、錆止め効果のあるものであることが好ましく、防錆剤を添加することも可能である。
【0028】
この防錆剤には、脂肪族カルボン酸,芳香族カルボン酸,アルケニルコハク酸,ザルコシン酸,アルキルカルボン酸,二塩基酸,芳香族石油スルホン酸,アルキルスルホン酸,アリールスルホン酸,アルキルアリールスルホン酸などがある。
これらの有機酸、有機酸の塩、アミン化合物等を挙げることができる。
また、市販されている防錆塗料も使用可能であり、その使用できるものは、合成樹脂を主成分とした防錆塗料で、吸水緩和層を形成することができるものである。
【0029】
また、この吸水緩和層は複数の塗料による塗膜で構成されることもあり、好ましい場合もある。例えば、基材表面に付着性の良好な塗膜を形成させた後に、防水性が良好な塗膜を形成させ、吸水緩和層を構成させることである。
このように複数の塗膜により吸水緩和層を構成させることで、塗膜の特徴を有効に活用することができるものとなる。
【0030】
次に、合成樹脂と無機質の多孔物質の吸水性充填材を含む塗材により形成される調湿性塗膜について説明する。
この調湿性塗膜は、塗膜の周囲の大気中からの水蒸気や塗膜表面で発生した結露水などの水分を吸湿し、塗膜周辺が乾燥した状態となったときには、吸湿された水を放湿することができるものである。
【0031】
この調湿性塗膜は、合成樹脂と無機質の多孔物質の吸水性充填材を含む塗材であり、その塗材を塗布し、硬化乾燥させることにより得られるものである。
この合成樹脂は、吸水性充填材などの塗材を構成する各種材料を繋ぎ合わせ、塗膜を形成させるもので、被塗装面と塗膜を密着させるためのバインダーであり、調湿性塗膜の硬さに影響するもので、水分の吸放湿など塗膜の動きに対応させるための要素の1つである。
【0032】
この合成樹脂は、上記記載の吸水緩和層に用いられるものと同じで、アクリル樹脂,シリコーン樹脂,アクリルシリコン樹脂,フッ素樹脂,ポリウレタン樹脂,スチレン樹脂,エポキシ樹脂,メラミン樹脂,アルキッド樹脂,塩化ビニル樹脂,酢酸ビニル樹脂,ポリエステル樹脂などの合成樹脂が使われる。
これらの合成樹脂を水に分散させた合成樹脂エマルションを用いられることが多く、後述する無機質の多孔物質の吸水性充填材との混和性が優れているものである。そのため、水を溶媒とした水性塗材になり、その取扱いや作業性の点から好ましく使われる。
【0033】
この合成樹脂エマルションも同様で、耐水性の良いアクリル系合成樹脂エマルション,アクリルスチレン系合成樹脂エマルション,アクリルシリコン系合成樹脂エマルション,ウレタン系合成樹脂エマルションが好ましく用いられる。
この合成樹脂のガラス転移点(以下、Tg)が-20~40℃の範囲が好ましい。-20℃より低い場合では、形成された塗膜に手垢など汚染物質が付き易くなる。又、水分を吸収する時に空気中の埃など汚染物質も塗膜に寄り易くなるため、その汚染物質も塗膜表面近くに多くなり、それらが付き易くなる。
【0034】
40℃より高い場合では、形成された塗膜が硬くなり、水分の吸放湿など塗膜の動きに対応し難くなる場合があり、塗膜の割れなどの原因になることもある。
より好ましくは、-15~30℃の範囲であり、この範囲であることから塗膜の汚れ難さと水分の吸放湿などによる塗膜の動きに対応した柔らかく、塗膜の割れの少ないバランスの取れたものとなる。
【0035】
無機質の多孔物質の吸水性充填材は、水の吸放出性能や水を蓄える性能により調湿性塗膜の調湿性能に大きく影響するもので、吸放出性能の持続性が優れ、不燃性の材料であることから用いられる。又、合成樹脂エマルションとの混和性、入手も容易であり、粒子径なども豊富なものである。
この吸水性充填材は、孔に大気中の水分などの水蒸気を吸水するもので、珪藻土,ゼオライト,シリカゲル,アルミナ,石灰,アロフェン,カオリン,ハロイサイト,軽石,白土、シラス,セライト,タルク,石膏,バーミキュライト,ベントナイトなどがある。
【0036】
また、ポゾラン,セメント,セピオライト,アルミナシリケート,シリカアルミネート,カルシウムシリケート,マグネシアシリケート,シリカマグネシアネート,活性炭等がある。
これら吸水性充填材は、その吸水性能などの調湿性能,安定性や作業性などの塗料適性,耐水性などの塗膜物性により適宜選択されるものであり、特にその種類を限定するものではないが、その吸放湿性能より、珪藻土が好ましく用いられる。
【0037】
この珪藻土は、珪藻と呼ばれる単細胞藻類の化石化したもので、この珪酸質の堆積物を乾燥、粉砕し、微粒子にしたものを用いることができる。その主成分は、二酸化珪素であり、化学的にも安定で、その表面には、無数の0.1~0.2μmの微細な孔が円形や針状に規則正しく配列している。
この無数の微細な孔を持つ超多孔質な構造のため、比較的軽量で、比表面積がきわめて大きく、優れた吸水性能があり、それにより、室内の湿度が高い場合に水分を多孔質で吸着し、湿度が低い場合に水分を放出する調湿性がある。
【0038】
また、この調湿性の他に、消臭性能や無数の微細な孔にある空気により、断熱効果のある塗膜を得ることができる。
この吸水性充填材の平均粒子径は、1.0~30.0μmの範囲のものである。1.0μmより小さい場合には、その表面積が増え、合成樹脂エマルション塗料との混和性が低下し、得られる塗料の粘度も上がり作業性も低下し、形成された塗膜が脆く、硬いものとなる。
【0039】
30.0μmより大きい場合には、表面積が少なくなるため、吸水性能などの調湿性の効率が悪くなる。又、形成される調湿性塗膜に吸水性充填材の粒子が露出し、所望の仕上がりを得ることができない。又、室内に浮遊する埃などが溜まり易くなる。
好ましくは、3.0~25.0μmの範囲で、より好ましくは15μm程度のものであり、合成樹脂エマルション塗料の作業性も良く、塗膜の仕上がりも良好で、汚れ難いものとなる。
【0040】
また、この吸水性充填材が、後述される他の体質顔料などよりも小さいことが好ましく、水蒸気が取込み易く、放出し易いものとすることができる。
吸水性充填材の含有量は塗材に対して、5.0~50.0重量%の範囲であることが好ましい。この範囲内であれば、十分な調湿効果を得ることができる。
【0041】
この含有量が5.0重量%より少ない場合では、塗膜への吸水量が少なく、調湿性の劣るものであり、50.0重量%より多い場合では、その吸水性能のため、塗材中の配合水も吸収し、調湿性塗膜を形成する塗材の作業性が劣り、塗布が難しいものとなる。
また、形成された塗膜が硬くなり、調湿での塗膜の動きに対して十分に対応できず、調湿性塗膜の割れや変形などの原因になることもある。
【0042】
さらに、形成された調湿性塗膜への吸水量が多く、塗膜への吸水量が増え、塗膜にかかる重量が増し負荷が掛かることから、塗膜の剥がれや割れの原因にもなることがある。
好ましくは、10.0~25.0重量%の範囲で、この範囲であれば、作業性が良好で、調湿性が優れた塗材が得やすくなり、水分の吸放湿での塗膜の動きに対して十分に対応できるものとなる。
【0043】
このように合成樹脂と無機質の多孔物質の吸水性充填材を含む塗材は構成され、更に顔料成分や骨材を加えることができる。
この顔料成分は、上記記載の吸水緩和層に用いられるものと同じで、酸化チタン,酸化亜鉛などの白色顔料、酸化鉄などの無機系の顔料や有機系顔料などの着色顔料、炭酸カルシウム,カオリン,タルク,クレー,水酸化アルミニウム,ベントナイト,ホワイトカーボン,沈降性バリウムなどの体質顔料がある。
【0044】
これらの顔料成分は、単独又は複数種を組み合わせて用いることが可能であり、好ましく行われている。
これら顔料成分を塗料中に混合することで、調湿性塗膜の調湿性能を調節することができ、特に白色顔料や体質顔料を用いることがより好ましい形態となる。又、珪砂などの骨材やパーライトなどの軽量骨材、繊維なども加えることも可能である。
【0045】
特にパーライトなどの軽量骨材を用いた場合、調湿塗膜の断熱性層を向上させることができる。
これら白色顔料や体質顔料などの顔料成分を混合することで、吸水性充填材の量を減らすことができ、所望の調湿性能を得ることができる。
【0046】
また、塗料用添加剤を使用することができ、消泡剤,分散剤,湿潤剤などとして用いられる界面活性剤、造膜助剤,防凍剤などとして用いられる高沸点溶剤がある。
他に、粘度,粘性調整のための増粘剤やレベリング剤、防腐剤、防藻剤、防黴剤、抗菌剤、pH調整剤、架橋剤、シランカップリング剤等のように一般に塗料に配合されている各種添加剤を必要に応じて添加することができる。
【0047】
これらの中でも防藻剤、防黴剤を添加することがあり、得られた調湿性塗膜に吸水して蓄えられた水分の影響での発生する黴,藻を抑制することができ、合成樹脂成分に対して、0.3~2.0重量%の範囲で添加することで、十分な効果を得ることができる。
防藻剤や防黴剤には、公知のものを用いればよく、上記記載のようにトリアジン系化合物,イミダゾール系化合物,フタルイミド系化合物などがあり、単独で用いても、2種類以上の化合物を併用してもよく、好ましく行われている。
【0048】
この防藻剤、防黴剤には、その効果に特徴があり、特定の藻や黴に効果がない場合もあることから、2種類以上用いることがある。
この中でも、トリアジン系化合物とイミダゾール系化合物とを併用することが好ましく、トリアジン系化合物とイミダゾール系化合物の配合割合は、10:1~1:10の範囲が好ましく、3:1~1:3の範囲がより好ましいものである。
【0049】
さらに、ホルムアルデヒド等の有害ガスを吸着するためのガス吸着剤、難燃性をより向上させるための難燃剤なども加えることができ、潜熱蓄熱材を含有させることも可能である。
吸水緩和層を形成させる合成樹脂を主成分とした塗料と調湿性塗膜を形成させる合成樹脂と無機質の多孔物質の吸水性充填材を含む塗材は、上記記載のように構成され、基材の表面に、塗布され、積層構造体を形成するものである。
【0050】
これら塗料及び塗材は、各構成材料を混合分散することにより得ることができる。この混合分散の方法は特に制限されるものではなく、一般的なミキサーなどの混合機により行うことができる。
これら塗料及び塗材は、通常の塗装方法である吹付塗装,塗装用ローラー,刷毛,コテなどの器具を用いて基材に対して塗布される。
【0051】
また、この調湿性塗膜は、シート状に加工したものであっても良い。この調湿性塗膜シートは、上記記載の成分を均一に混練した混練物を、シート化することにより得ることができる。
混練は、常温で行っても加熱して行っても良く、混練する方法としては、ニーダーやバンバリーミキサー、ミキシングロールなどの混練機などの公知の方法が使用できる。
【0052】
混練された混合物をそのまま又はペレット状にしたものを押し出し成型機によりシート状にすることや混合物を複数のロールの間に挟んで成型する方法,熱ローラーにより圧延する方法などがあり、特に制限されるものではない。
これらの方法により、均一な膜厚のシートを効率よく成型することができ、施工後の膜厚の管理もやりやすくなる。
【0053】
他にも、上記成分を塗料化したものを流動性のある状態で、シート状にすることもできる。
この調湿性塗膜のシートは、可撓性があるものが好ましく、可撓性がないと、それを貼り付ける際に作業性が悪く、曲面に貼り付けると割れてしまうことがある。
【0054】
また、このシート状にした調湿性塗膜の裏面に粘着加工を施すことも可能であり、この粘着層が吸水緩和層となるものであっても良い。この場合、基材にプライマー処理を行うこともある。この場合、吸水緩和層は、プライマー層と粘着層により構成されたものとなる
この粘着加工には粘着剤を用いることができ、特に制限されるものではないが、合成ゴム系,酢酸ビニル系,ポリマーセメント系,アクリルゴム系,変性シリコーン系など各種の粘着剤が使用できる。
【0055】
これらの形態としては、溶媒に有機溶剤を用いた溶剤型のものや、水を用いた水系型の合成樹脂エマルションを使用したもの、それらを用いない無溶剤型のものがあるが、水系型や無溶剤型のものが好ましく使用される。
より好ましくは合成樹脂エマルションを主成分としたもので、扱いが容易であり、十分な接着力を得ることができ、粘着層の粘着力も十分なものとなる。
【0056】
さらに、合成樹脂エマルションを主成分としたものは、粘着剤が乾燥硬化した後のタックの調整が、合成樹脂エマルションの樹脂の柔らかさや可塑剤などの高沸点溶剤を添加することで容易にでき、タックの持続性についても、高沸点溶剤の沸点などにより調整することが可能である。
他にも、この粘着加工には、両面テープが用いられることもあり、この両面テープは、上記記載の粘着剤と不織布などにより構成され、粘着層を離型紙により保護されているものがある。
【0057】
この両面テープは、一方の粘着層をシートに貼付け、もう片側の離型紙により保護された粘着層を、離型紙を剥がして、基材に貼付けることになる。
この離型紙は、シートを基材に貼付けるまでの間、粘着層を保護するためのもので、特に制限されるものではなく、一般的に市販されているものが使われる。
【0058】
これらには、シリコン、ワックス、弗素樹脂等の離型剤を紙やフィルムに加工したものやポリプロピレン,ポリエチレンなどの合成樹脂フィルムがある。
この両面テープを用いた場合では、被覆物に対して、粘着層と不織布と粘着層と調湿塗膜シートが積層されたものとなる。この場合では、吸水緩和層が粘着層と不織布と粘着層の複数により構成されたものとなり、基材にプライマー処理を行った場合では、そのプライマー層も加えられた吸水緩和層となる。
【0059】
これら塗料及び塗材は、硬化乾燥させ積層構造体を得ることができる。この乾燥には、新築,リフォームなど建築現場などで使用される多くの場合は、自然に乾燥させることが多い。
壁板材などを工場内で塗装する場合では、自然に乾燥させることもあるが、遠赤炉,ガス炉,電気炉など使用して、強制的に乾燥させることも可能である。
【0060】
これら塗料及び塗材は、コンクリート面,モルタル面などの被塗布面を基材とし、その他に、建築物の壁面として建て込まれている壁板材を基材として塗布される。
この壁板材には、窯業系サイディングボード,フレキシブルボード,ケイ酸カルシウム板,押し出し成型板,石膏スラグパーライト板,木片セメント板,プレキャストコンクリート板,軽量気泡コンクリート板及び石膏ボード等の壁板材がある。
【0061】
また、アルミニウム,鉄及びステンレス等の金属材料で形成されたものやベニヤ板や合板等の木質系のもの,合成樹脂を発泡させた断熱材フォーム材なども挙げることができる。
これら基材の中でも透水量が5ml以上のものの場合に本開示の効果を発揮することができる。
【0062】
透水量が5ml以上の基材では、水分を吸収し易いものであり、吸水緩和層がない場合では、調湿性塗膜に蓄えられた水分を吸収してしまうことになる。基材に吸収された水分は、基材中心へと移動するため、表面へ放出される距離が長くなり、放出され難く、蓄え量が多くなる。
基材がケイ酸カルシウム板など種類によっては、水分を含むことにより、その強度が低下することや膨張するものもある。
【0063】
定寸に裁断された壁板材などの基材により室内壁面を構成している場合では、基材が膨張し、調湿性塗膜に割れが生じることもある。特に基材と基材との継ぎ目の部分では、その傾向が多くなる。
この吸水緩和層の透水量が5ml以下であることが好ましく、調湿性塗膜に吸収された水分が基材に移動し難くなる。そのため、基材が錆を発生させるような金属であっても、調湿性塗膜に蓄えられた水分の影響で、基材である金属表面の錆の発生を少なくすることができる。
【0064】
この透水量は、JIS A 6909の透水試験B法により求めることができる。これは、測定対象に透水試験器具であるロートとメスピペットを連結したものをシリコーン系シーリング材で固定し、養生を行う。
その後水を測定対象面から250mmの高さまで入れ、24時間後の水頭を測定し、減った量を透水量とする。
【0065】
基材の透水量は、基材表面に透水試験器具を固定し、透水量を測定することができ、吸水緩和層の透水量は、基材又は試験体となるスレートやモルタルに塗布し、吸水緩和層を形成したもので測定することになる。
この吸水緩和層の厚みは、50~200μmの範囲が好ましく、この範囲内で、その透水量が5ml以下であることが好ましい。
【0066】
50μmより薄い場合では、透水量が多くなることがあり、調湿性塗膜に蓄えられた水が基材へ移動することがある。又、調湿性塗膜を形成する塗材を塗布するまでの間や塗布中に傷がついた場合に欠損部となることがある。
200μm以上では、塗布後の乾燥に時間が掛かり、乾燥が不十分な状態で、調湿性塗膜を形成する場合も生じるため、調湿性塗膜の性能を発揮するまでに時間を要することがある。
【0067】
合成樹脂と無機質の多孔物質の吸水性充填材を含む塗材により形成された調湿性塗膜は、0.5~3.0mmの範囲の厚みであることが好ましい。0.5mmより薄い場合では、その調湿性の効果が低く、十分でない場合がある。
3.0mmより厚い場合では、吸水された水分の量が増え、塗膜にかかる重量が増し負荷が掛かることや塗膜の割れの原因にもなることがある。
【0068】
好ましくは、1.0~2.5mmの範囲で、この範囲内であれば、十分な調湿性が得られるものである。
このように基材の表面に、合成樹脂を主成分とした吸水緩和層と、合成樹脂と無機質の多孔物質の吸水性充填剤を含む調湿性塗膜が積層することで、調湿性塗膜に吸水され、蓄えられた水分により、その基材の強度などの性能を低下させることが少ないものとなる。
【0069】
このような積層構造体により、調湿性塗膜近傍の水蒸気を吸水し、蓄え、塗膜近傍の湿度,温度により放出される。このような湿度と温度とが塗膜の近くから徐々に変化し、その塗膜が形成されている室内全体を一定の湿度に保とうとすることで、調湿性のある快適な室内空間を得ることができる。
前もってこのような積層構造体を形成した壁板材により構成された室内空間であっても同様な効果を得ることができる。
【0070】
また、壁面,天井の一部がこの積層構造体である場合でも、その効果を得ることができる。特に、外気の温度変化を受け易い壁面などに有効となる。
この積層構造体が形成された室内であり、その室内の相対湿度が40%以上である場合には、その調湿塗膜の耐火性能を発揮するのに十分な水分が含まれることになり、その積層構造体が燃え難い難燃性のものとなるため、防火性能が向上した室内となる。
【0071】
また、相対湿度が60%以下の場合、調湿塗膜に含まれる水分が比較的少ない状態であるため、その積層構造体の断熱性能がより向上した室内となる。
以下、上記記載の実施形態をより具体的に説明する。下記に具体的な合成樹脂と無機質の多孔物質の吸水性充填材を含む塗材と合成樹脂を主成分とした塗料とを例示する。
【0072】
この塗材は、建築物の室内に塗布することが多く、その形成される塗膜により、その室内空間をより快適にすることを目的とするものである。
そのため、塗材の主成分である合成樹脂エマルションには、塗膜の耐候性を重視することなく、耐水性が良く、塗料適性,塗膜の物性や入手の容易性などから固形分が50重量%のアクリル系合成樹脂エマルションを用いた。この合成樹脂のTgは、-5℃であった。
【0073】
この合成樹脂のTgについては、形成された塗膜の柔らかさと汚れの付き難さとのバランスを考慮し、より好ましい範囲である-15~30℃の範囲の中から選択し用いた。
吸水性充填材には、合成樹脂エマルションとの混和性などから無機質の多孔質物の平均粒子径が15μmの珪藻土を用いた。なお、粒子径は、レーザー回折法で測定した体積基準の粒度分布から算出した。
【0074】
(塗材の配合例)
合成樹脂エマルション 20.0 重量%
配合水 25.5 重量%
吸水性充填材 25.0 重量%
白色顔料 7.0 重量%
高沸点溶剤 0.5 重量%
体質顔料など 18.0 重量%
その他添加剤 4.0 重量%
合計 100.0 重量%
【0075】
白色顔料には、酸化チタンを使用し、防凍剤としての高沸点溶剤には、エチレングリコールを使用した。体質顔料などには、炭酸カルシウムと繊維を使用した。
その他添加剤は、消泡剤,分散剤,湿潤剤,増粘剤,防腐剤,防藻剤,防黴剤,pH調整剤,抗菌剤である。又、着色顔料の黄色を加えた。その添加量も塗料に対して0.5重量%であるため、その他添加剤と合算して示した。
【0076】
この配合例の塗材の調湿性をJIS A 6909の7.29吸放湿性試験により測定を行ったところ、その調湿性が85.0g/m2であり、良好な調湿性能を確認することができた。
塗料の主成分である合成樹脂エマルションには、透水性が少なく、耐水性が良好な固形分が50重量%のアクリルスチレン系合成樹脂エマルションを用いた。この合成樹脂のTgは、10℃であった。高沸点溶剤には、防凍剤としてのエチレングリコールと造膜助剤としてのテキサノールを使用した。
【0077】
(塗料の配合例)
合成樹脂エマルション 50.0 重量%
配合水 40.5 重量%
高沸点溶剤 5.5 重量%
その他添加剤 4.0 重量%
合計 100.0 重量%
【0078】
その他添加剤は、消泡剤,分散剤,湿潤剤,増粘剤,防腐剤,防藻剤,防黴剤,pH調整剤,抗菌剤である。
この配合例の塗料の透水量をJIS A 6909の7.13透水試験B法により求めたところ、3mlであった。
【0079】
この配合例にある塗料及び塗材をスレート板に塗布し、自然に乾燥させ、壁面に塗膜を形成させ試験体を作製した。この塗布には、塗装用ウールローラー中毛を用いて塗料を塗布し、平均膜厚が80μmになるように調整した。
その後に、塗材をリシンガンによるスプレー塗布を行い、平均膜厚が2mmになるように調整を行った。
【0080】
このスレート板に合成樹脂を主成分とした塗料により吸水緩和層を形成させた後に、合成樹脂と無機質の多孔物質の吸水性充填材を含む塗材により調湿性塗膜を形成させた試験体1と調湿性塗膜のみ形成させた試験体2及び試験体3としてスレート板のみで、透水性及び調湿性の比較検討を行った。
透水試験は、上記同様にJIS A 6909の透水試験B法により行い、調湿試験は、JIS A 6909の吸放湿性試験を行った。
【0081】
透水性試験B法の結果、どの試験体でも水が残らず、試験体に吸い込まれてしまった。しかし、試験体1は、試験体の裏面が濡れていないことを確認した。これは、透水試験の水が調湿性塗膜に吸い込まれ、吸い込まれた水は、試験体のスレート板には、ほとんど吸い込まれていないことがわかる。
このことから吸水緩和層が調湿性塗膜に吸い込まれた水が基材であるスレート板に吸い込まれないようにしたことが分かった。
【0082】
試験体2では、試験体の裏面がかなり濡れていることを確認した。これは、調湿性塗膜に吸い込まれた水が、そのまま基材であるスレート板にまで吸い込まれてしまったことを示している。
また、試験体3では、試験体の裏面がかなり濡れていることを確認した。これは、試験に用いられたスレート板が吸水性のある基材であることを示している。
【0083】
吸放出性試験の結果、試験体1では、83g/m2であり、十分な調湿性能があることを確認した。
試験体2では、試験体1より少し多い88g/m2であった。これは、基材のスレート板に吸い込まれている分多くなったと推定できる。
【0084】
試験体3では、6g/m2であり、基材であるスレート板が調湿性のないものであることを確認した。
これらの試験結果より、基材の表面に吸水緩和層を形成させた後に、吸水性充填材を含む塗材により調湿性塗膜を形成させることで、調湿性塗膜に吸水され、蓄えられた水分により、その基材に影響を与えることが少ないものであることが確認できた。
【0085】
上記実施形態によれば、更に以下の効果を得ることができる。
アルミニウム,鉄等の金属材料を基材とし、その表面に、合成樹脂を主成分とした錆止め効果のある塗料により吸水緩和層を形成させた後に、合成樹脂と無機質の多孔物質の吸水性充填材を含む塗材により調湿性塗膜を形成させることである。
これにより、調湿性塗膜に吸水され、蓄えられた水分により、その基材に発生する錆をより少なくすることができる。
【0086】
基材の表面に、合成樹脂を主成分とし、防藻剤、防黴剤を添加した塗料により吸水緩和層を形成させた後に、合成樹脂と無機質の多孔物質の吸水性充填材を含む塗材により調湿性塗膜を形成させたものである。
これにより、調湿性塗膜に吸水され、蓄えられた水分により、その基材の強度などの性能を低下させることが少なく、調湿性塗膜及び基材が調湿性塗膜に吸水された水分の影響での黴,藻の発生を抑制することができる。