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特開2023-135597プラズマ機能液製造装置及び方法並びに植物栽培プラント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135597
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】プラズマ機能液製造装置及び方法並びに植物栽培プラント
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/08 20060101AFI20230921BHJP
   A01P 21/00 20060101ALI20230921BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20230921BHJP
   C02F 1/68 20230101ALI20230921BHJP
   B01F 23/2375 20220101ALI20230921BHJP
   B01F 25/21 20220101ALI20230921BHJP
【FI】
B01J19/08 E
A01P21/00
A01N25/02
C02F1/68 520B
C02F1/68 510A
C02F1/68 530A
B01F23/2375
B01F25/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192657
(22)【出願日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2022040834
(32)【優先日】2022-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000116079
【氏名又は名称】ローレルバンクマシン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(71)【出願人】
【識別番号】520514827
【氏名又は名称】学校法人青葉学園
(71)【出願人】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】山縣 芳和
(72)【発明者】
【氏名】中西 秀行
(72)【発明者】
【氏名】小澤 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】沖野 晃俊
(72)【発明者】
【氏名】末永 祐磨
(72)【発明者】
【氏名】劉 智志
(72)【発明者】
【氏名】大澤 泰樹
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 篤郎
(72)【発明者】
【氏名】天野 有里子
(72)【発明者】
【氏名】宇野 雄一
【テーマコード(参考)】
4G035
4G075
4H011
【Fターム(参考)】
4G035AB06
4G035AC15
4G035AE13
4G075AA13
4G075BA05
4G075BD27
4G075CA47
4G075DA02
4G075DA18
4G075EB01
4G075EB44
4G075EC02
4G075FA14
4G075FB02
4H011AB03
4H011BC18
4H011DA13
4H011DC12
4H011DD03
(57)【要約】
【課題】プラズマガスをバブリングで液体に導入する場合であっても、良好な洗浄効果、除菌効果を奏するプラズマ機能液製造装置及び方法並びに植物栽培プラントを提供する。
【解決手段】プラズマ機能液製造装置10は、プラズマ生成ガスから活性種を含むプラズマガスを生成するプラズマヘッド20と、プラズマガスを気泡状態で放出するプラズマガス放出部30と、溶媒Sを貯留するプラズマ機能液生成槽41を備え、気泡状態のプラズマガスを溶媒Sに導入させてプラズマ機能液Lを生成するプラズマ機能液生成部40と、を備え、プラズマ生成ガスの酸素濃度は、90%以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ生成ガスから活性種を含むプラズマガスを生成するプラズマガス発生部と、
前記プラズマガスを気泡状態で放出するプラズマガス放出部と、
溶媒を貯留するプラズマ機能液生成槽を備え、気泡状態の前記プラズマガスを前記溶媒に導入させてプラズマ機能液を生成するプラズマ機能液生成部と、
を備え、
前記プラズマ生成ガスの酸素濃度は、90%以上であることを特徴とするプラズマ機能液製造装置。
【請求項2】
前記プラズマ生成ガスの酸素濃度は、90%以上95%以下であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ機能液製造装置。
【請求項3】
前記プラズマ生成ガスの窒素濃度は、0.5%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプラズマ機能液製造装置。
【請求項4】
前記プラズマガス発生部は、前記プラズマ機能液生成槽の外部に配置され、
前記プラズマガス放出部は、前記プラズマ機能液生成槽に貯留された溶媒中に浸漬され、前記プラズマガスを気泡状態で放出する多孔質部材であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のプラズマ機能液製造装置。
【請求項5】
前記多孔質材部材は、銅、銀又はそれらの合金から成ることを特徴とする請求項4に記載のプラズマ機能液製造装置。
【請求項6】
前記プラズマガスの気泡は、マイクロバブル又はウルトラファインバブルであることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のプラズマ機能液製造装置。
【請求項7】
前記プラズマ機能液生成部は、前記プラズマ機能液を前記プラズマ機能液生成槽の外部に放出可能な放出部を備えていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のプラズマ機能液製造装置。
【請求項8】
請求項7記載のプラズマ機能液製造装置と、
植物を栽培する栽培容器と、
を備え、
前記放出部は、前記プラズマ機能液を前記植物に滴下又は噴霧することを特徴とする植物栽培プラント。
【請求項9】
請求項7記載のプラズマ機能液製造装置と、
植物を水耕栽培する栽培槽と、
を備え、
前記放出部は、前記プラズマ機能液を前記栽培槽に供給することを特徴とする植物栽培プラント。
【請求項10】
前記溶媒は、液体肥料であり、
前記プラズマ生成ガスは、少なくとも窒素を含み、
前記プラズマ機能液生成部は、前記栽培槽に供給されたプラズマ機能液を前記栽培槽から前記プラズマ機能液生成槽に還流する還流路を備えていることを特徴とする請求項9に記載の植物栽培プラント。
【請求項11】
プラズマ生成ガスから活性種を含むプラズマガスを生成するプラズマガス発生部と、
前記プラズマガスを気泡状態で放出するプラズマガス放出部と、
溶媒を貯留するプラズマ機能液生成槽を備え、気泡状態の前記プラズマガスを前記溶媒に導入させてプラズマ機能液を生成するプラズマ機能液生成部と、
を備えているプラズマ機能液製造装置を用いたプラズマ機能液製造方法であって、
前記プラズマ生成ガスの酸素濃度は、90%以上であることを特徴とするプラズマ機能液製造方法。
【請求項12】
前記プラズマ生成ガスの酸素濃度は、90%以上95%以下であることを特徴とする請求項11に記載のプラズマ機能液製造方法。
【請求項13】
前記プラズマ生成ガスの窒素濃度は、0.5%以上であることを特徴とする請求項11又は12に記載のプラズマ機能液製造方法。
【請求項14】
前記プラズマガス発生部は、前記プラズマ機能液生成槽の外部に配置され、
前記プラズマガス放出部の多孔質部材は、前記プラズマ機能液生成槽に貯留された溶媒中に浸漬され、前記プラズマガスが通過する際に前記プラズマガスを気泡状態で放出することを特徴とする請求項11乃至13の何れか1項に記載のプラズマ機能液製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ機能液製造装置及び方法並びに植物栽培プラントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマを利用した様々な洗浄や除菌(殺菌)等に関する技術が研究されている。特に、プラズマ処理されたガス(プラズマガス)を液体(溶媒)に導入して、プラズマ処理で発生したオゾン、イオン又はラジカル等の活性種を利用して、液体を洗浄又は除菌することが検討されている。
【0003】
特許文献1には、プラズマにより発生したオゾンやラジカル等をバブリングにより処理すべき液体中に導入させて、液体中に存在する有機物等を分解させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-178870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、プラズマガスをバブリングさせる方式としては、液体の流路を一時的に絞り、圧力変化で微細な泡を発生させるベンチュリ―方式や、微細な泡から液流中にガスを分散させ、微細孔で生じた気泡を液流のせん断力で切り離す微細孔方式等が知られている。
【0006】
しかしながら、プラズマにより発生したオゾンやラジカル等は圧力変化やせん断熱によって活性が失われがちで、さらにプラズマガスの種類によっては十分な洗浄効果や除菌効果が得られない虞があるという問題があった。
【0007】
そこで、プラズマガスをバブリングで液体に導入する場合であっても、良好な洗浄効果、除菌効果を奏するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上述した状況を鑑みて鋭意研究した結果、所定濃度の酸素ガスに由来するプラズマガスをバブリングで溶媒に導入することにより良好な洗浄効果、除菌効果が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係るプラズマ機能液製造装置は、プラズマ生成ガスから活性種を含むプラズマガスを生成するプラズマガス発生部と、前記プラズマガスを気泡状態で放出するプラズマガス放出部と、溶媒を貯留するプラズマ機能液生成槽を備え、気泡状態の前記プラズマガスを前記溶媒に導入させてプラズマ機能液を生成するプラズマ機能液生成部と、を備え、前記プラズマ生成ガスの酸素濃度は、90%以上である構成とした。
【0010】
また、本発明に係るプラズマ機能液製造方法は、プラズマ生成ガスから活性種を含むプラズマガスを生成するプラズマガス発生部と、前記プラズマガスを気泡状態で放出するプラズマガス放出部と、溶媒を貯留するプラズマ機能液生成槽を備え、気泡状態の前記プラズマガスを前記溶媒に導入させてプラズマ機能液を生成するプラズマ機能液生成部と、を備えているプラズマ機能液製造装置を用いたプラズマ機能液製造方法であって、前記プラズマ生成ガスの酸素濃度は、90%以上である構成とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、酸素濃度90%以上のプラズマ生成ガスから洗浄効果や除菌効果に優れた活性種を保持するプラズマガスが生成され、このプラズマガスが、プラズマガス放出部を通過して過度な発熱や圧力変動を伴わずに気泡状態でプラズマ機能液生成槽内の溶媒に導入されることにより、長寿命の活性種を含む洗浄効果や除菌効果に優れたプラズマ機能液を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施形態に係るプラズマ機能液製造装置の構成を示す模式図である。
図2】本発明の第2の実施形態に係る植物栽培プラントの構成を示す模式図である。
図3】第2の実施形態の第1変形例に係る植物栽培プラントの構成を示す模式図である。
図4】第2の実施形態の第2変形例に係る植物栽培プラントの構成を示す模式図である。
図5】第2の実施形態の第3変形例に係る植物栽培プラントの構成を示す模式図である。
図6】実験例に関する実験手順を示す模式図である。
図7】実験例1の実験結果を示すグラフである。
図8】実験例2に関する実験手順を示す模式図である。
図9】実験例2の実験結果を示すグラフである。
図10】実験例3の実験結果を示すグラフである。
図11】実験例4の実験結果を示すグラフである。
図12】実験例5の実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の各種実施形態について図面に基づいてそれぞれ説明する。なお、以下では、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0014】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0015】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0016】
<第1の実施形態>
まず、本発明の第1の実施形態に係るプラズマ機能液製造装置10について図面に基づいて説明する。図1は、プラズマ機能液製造装置10の構成を示す模式図である。プラズマ機能液製造装置10は、洗浄効果や除菌効果に優れたプラズマ機能液Lを製造する。
【0017】
プラズマ機能液製造装置10は、プラズマガス発生部であるプラズマヘッド20を備えている。プラズマヘッド20は、プラズマを生成するものであれば如何なる構成であっても構わないが、大気圧付近の圧力でプラズマを発生させる大気圧プラズマ装置が好ましい。大気圧プラズマ装置は、真空プラズマ装置等の低圧プラズマ装置に比べて、装置サイズが小型で、操作性に優れ、且つ安全性が高い。さらに、大気圧プラズマ装置は、低圧プラズマ装置に比べて、高濃度の活性種を生成可能である。
【0018】
プラズマヘッド20の内部には、互いに隙間を空けて対向して配置された板状の第1の電極21及び第2の電極22が設けられている。第1の電極21は、電源23により高周波電圧が印加される。また、第2の電極22は、アース24に接続されている。
【0019】
第1の電極21、第2の電極22の間の空間には、コンプレッサー25を介してプラズマ生成ガスが送られる。プラズマ生成ガスは、プラズマを発生させるガスであり、少なくとも酸素ガスが含まれている。プラズマ生成ガスの酸素濃度は、優れた洗浄効果や除菌効果を奏する90%以上、好ましくは90%以上95%以下が好ましい。プラズマ生成ガスは、必要に応じて図示しない酸素濃縮器により、予め酸素濃度を調整しても構わない。なお、プラズマ生成ガスの酸素濃度が100%未満の場合、プラズマ生成ガスには窒素成分等が含まれる。特に、空気中の窒素をゼオライトに吸着させて高濃度の酸素を生成するPSA方式を用いた酸素濃縮機を使用して酸素濃度95%のプラズマ生成ガスを生成した場合、理論上0.5%程度の窒素が含まれる。プラズマ生成ガスの窒素成分は、5%以下が好ましい。
【0020】
プラズマヘッド20は、ガス搬送路31を介してプラズマガス放出部30に接続されている。プラズマヘッド20とプラズマガス放出部30とが離間していることにより、プラズマヘッド20内で生じた熱が、プラズマガス放出部30に伝わることが抑制されている。
【0021】
ガス搬送路31は、一方端がプラズマヘッド20に接続され、他方端がプラズマガス放出部30に接続されており、プラズマヘッド20で生成されたプラズマガスを、プラズマガス放出部30に送る。なお、プラズマガスは、プラズマガス放出部30からプラズマヘッド20への逆流を抑制する程度に加圧されている。
【0022】
プラズマガス放出部30は、後述するプラズマ機能液生成槽41にて液体に浸漬されている。プラズマガス放出部30は、例えば、中空の略円筒状に形成されており、外周面に多数の孔32が形成された多孔質部材である。プラズマガス放出部30は、内部に供給されたプラズマガスを孔32に通過させることにより、プラズマガスの気泡Bをプラズマ機能液生成槽41内の溶媒Sに導入させる。
【0023】
孔32の孔径は、プラズマ機能液生成槽41内の溶媒Sに導入させる気泡Bの気泡径に応じた任意の大きさに設定可能である。例えば、孔32の孔径に応じて、気泡径が1μm~100μm程度のマイクロバブルや、気泡径が数十nm~1μm程度のウルトラファインバブルを生成可能である。
【0024】
気泡Bには、プラズマ生成ガスの種類に応じて、オゾン、過酸化水素、水酸化ラジカル、窒素酸化物、一重項酸素等の活性種が含有されている。本明細書において「活性種」とは、プラズマ生成ガスがプラズマにより活性化されて生成されたラジカル等である。プラズマガスに含まれるラジカルは、プラズマガスを生成するためのプラズマ生成ガスの種類によって異なり、例えば、プラズマ生成ガスに酸素成分が含まれる場合には、酸素ラジカル類が生じ、プラズマ生成ガスに窒素成分が含まれる場合には、窒素酸化物ラジカル類が生じる。また、硝酸態窒素(硝酸ラジカル)は植物の生育に有用である。
【0025】
プラズマガス放出部30は、例えば、金属、セラミックス又はプラスチック製、好ましくは銅、銀又はそれらの合金を使用する。これにより、銅イオン又は銀イオンを溶媒Sに導入させることができる。
【0026】
プラズマ機能液製造装置10は、プラズマ機能液Lを生成するプラズマ機能液生成部40を備えている。本明細書において「プラズマ機能液L」とは、プラズマガスに保持された活性種が溶媒S中で気泡Bに保持された後に徐々に溶媒Sに溶解した溶液をいう。すなわち、プラズマ機能液Lには、気泡Bに保持されている活性種又は溶媒Sに溶解した活性種が含まれる。溶媒Sに活性種が溶解することにより、溶媒S自体が洗浄、除菌され、また、プラズマ機能液Lは、他の物体を洗浄、除菌する。
【0027】
プラズマ機能液生成部40は、溶媒Sを貯留してプラズマガス放出部30を溶媒S中に浸漬するプラズマ機能液生成槽41を備えている。プラズマ機能液生成槽41には溶媒Sを撹拌する撹拌翼等が設けられておらず、溶媒S中では気流の発生が抑制されている。溶媒Sは、超純水、イオン交換水、精製水又は蒸留水等の水又は無機栄養素を含む溶液、若しくは液体肥料等であるが、これらに限定されるものではない。なお、溶媒Sに液体肥料を用いる場合、プラズマ機能液Lが液体肥料に含まれる菌類を殺菌できるとともに、植物の生育に好適な活性種を液体肥料に含有させることができる。
【0028】
気泡Bは、溶媒S中に保持される時間が長いマイクロバブル又はウルトラファインバブルが好ましい。特に、気泡Bがウルトラファインバブルである場合、気泡Bに浮力がほとんど作用しないため、気泡状態が長時間に亘って保持される。
【0029】
このようにして、本実施形態に係るプラズマ機能液製造装置10は、プラズマ生成ガスから活性種を含むプラズマガスを生成するプラズマヘッド20と、プラズマガスを気泡状態で放出するプラズマガス放出部30と、溶媒Sを貯留するプラズマ機能液生成槽41を備え、気泡状態のプラズマガスを溶媒Sに導入させてプラズマ機能液Lを生成するプラズマ機能液生成部40と、を備え、プラズマ生成ガスの酸素濃度は、90%以上である構成とした。
【0030】
この構成によれば、酸素濃度90%以上のプラズマ生成ガスから洗浄効果や除菌効果に優れた活性種を保持するプラズマガスが生成され、このプラズマガスが、プラズマガス放出部30の孔32を通過して発熱や圧力変動を伴わずに気泡状態でプラズマ機能液生成槽41内の溶媒Sに導入されることにより、長寿命の活性種を含む洗浄効果や除菌効果に優れたプラズマ機能液Lを得ることができる。
【0031】
また、本実施形態に係るプラズマ機能液製造装置10は、プラズマ生成ガスの酸素濃度が、90%以上95%以下である構成とした。
【0032】
この構成によれば、小型の酸素濃縮器を使用して簡便にプラズマ生成ガスを得られるとともに、酸素濃度が過度に高い場合に生成されるオゾンの発生が抑制されるため、作業性や経済性に優れたプラズマ機能液Lを得ることができる。
【0033】
また、本実施形態に係るプラズマ機能液製造装置10は、プラズマ生成ガスの窒素濃度が、0.5%以上である構成とした。
【0034】
この構成によれば、プラズマ機能液Lに、プラズマ生成ガスに含まれる窒素ガスに由来する硝酸イオンが溶解するため、植物の生育に好適なプラズマ機能液Lを得ることができる。
【0035】
また、本実施形態に係るプラズマ機能液製造装置10は、プラズマヘッド20が、プラズマ機能液生成槽41の外部に配置され、プラズマガス放出部30が、プラズマ機能液生成槽41に貯留された溶媒S中に浸漬され、プラズマガスが通過する際にプラズマガスを気泡状態で放出する多孔質部材である構成とした。
【0036】
この構成によれば、プラズマヘッド20が、プラズマ機能液生成槽41外に配置され、プラズマガスが、溶媒Sに浸漬されたプラズマガス放出部30から溶媒Sに導入されることにより、プラズマガスを生成する際の発熱でプラズマ機能液Lに含まれる活性種の活性が失われることを抑制でき、活性種の寿命を長期化することができる。
【0037】
また、本実施形態に係るプラズマ機能液製造装置10は、プラズマガス放出部30が、銅、銀又はそれらの合金から成る構成とした。
【0038】
この構成によれば、プラズマガス放出部30から溶出した銅イオン又は銀イオンが溶媒Sに導入されるため、プラズマ機能液Lの洗浄効果や除菌効果を増進することができる。
【0039】
また、本実施形態に係るプラズマ機能液製造装置10は、プラズマガスの気泡が、マイクロバブル又はウルトラファインバブルである構成とした。
【0040】
この構成によれば、気泡Bが長時間に亘って保持されるため、プラズマ機能液Lに含まれる活性種を長時間に亘って維持することができる。
【0041】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態に係る植物プラント1Aについて図面に基づいて説明する。図2は、第2の実施形態に係る植物プラント1Aの構成を示す模式図である。植物プラント1Aは、植物Pを水耕栽培する栽培槽2と、プラズマ機能液製造装置10と、を備えている。
【0042】
栽培槽2は、液体肥料を含む溶液Aを貯める容器2aと、植物Pの地中部が容器2aの溶液Aに達するように植物Pを支持する支持部2bと、を備えている。
【0043】
プラズマ機能液生成部40は、プラズマ機能液Lを容器2aに送る放出部としての液供給路42を備えている。液供給路42は、上流端がプラズマ機能液生成槽41に接続され、下流端が容器2aに接続されている。液供給路42で送られるプラズマ機能液Lは、図示しないポンプ等を用いて圧送されて、溶液Aに混合される。なお、溶液Aは、必ずしも液体肥料を含むものでなくても構わない。
【0044】
このようにして、プラズマ機能液製造装置10で生成されたプラズマ機能液Lが液供給路42を介して栽培槽2に送られ、栽培槽2の溶液Aがプラズマ機能液Lによって除菌又は殺菌されるため、植物Pが良好に生育される。
【0045】
<変形例1>
次に、第2の実施形態に係る植物プラント1Aの変形例について図面に基づいて説明する。図3は、本変形例に係る植物プラント1Bの構成を示す模式図である。なお、本変形例に係る植物プラント1Bは、上述した第2の実施形態に係る植物プラント1Aと以下の点で相違し、その他の構成は共通する。したがって、共通する構成は、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0046】
容器2a内の溶液A及びプラズマ機能液生成槽41内の溶媒Sは、いずれも液体肥料を含むものである。また、プラズマ生成ガスには、窒素成分が含まれているおり、プラズマ機能液には、植物の栄養素となる硝酸態窒素(硝酸ラジカル)が含まれる。
【0047】
プラズマ機能液生成部40は、容器2aとプラズマ機能液生成槽41とを接続する液循環路43を備えている。液循環路43は、上流端が容器2aに接続され、下流端がプラズマ機能液生成槽41に接続されている。容器2a内の溶液及びプラズマ機能液Lは、図示しないポンプ等により液循環路43を介して容器2aからプラズマ機能液生成槽41に還流される。すなわち、溶液Aは、液供給路42及び液循環路43を介して容器2a及びプラズマ機能液生成槽41を循環するようになっている。
【0048】
容器2aから還流された溶液がプラズマ機能液生成槽41に貯められた溶媒Sに混入され、プラズマガス放出部30から放出されたプラズマガスの気泡Bが、プラズマ機能液生成槽41に貯められた溶媒Sに導入される。このようにして、活性種が溶解したプラズマ機能液Lが、プラズマ機能液生成部40と栽培槽2との間を循環する。
【0049】
また、溶媒S及び溶液Aに含まれる液体肥料の肥料としての寿命は、活性種の寿命よりも長いため、上述したように活性種を供給し続けることにより、液体肥料を繰り返し使用することができる。
【0050】
<変形例2>
次に、第2の実施形態に係る植物プラント1Aの他の変形例について図面に基づいて説明する。図4は、本変形例に係る植物プラント1Cの構成を示す模式図である。なお、本変形例に係る植物プラント1Cは、上述した第2の実施形態に係る植物プラント1Aと以下の点で相違し、その他の構成は共通する。したがって、共通する構成は、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0051】
植物プラント1Cは、培養土等に植えられた植物Pを栽培するための栽培容器3と、プラズマ機能液製造装置10と、を備えている。
【0052】
プラズマ機能液生成部40は、放出部としての液供給管44及び噴霧ヘッド45を備えている、液供給管44は、基端がプラズマ機能液生成槽41に接続され、先端が噴霧ヘッド45に接続されている。液供給管44で送られるプラズマ機能液Lは、図示しないポンプ等を用いて圧送される。液供給管44は、好ましくは可撓性を有している。
【0053】
噴霧ヘッド45は、プラズマ機能液Lを外部に噴霧する。プラズマ機能液Lが噴霧された植物Pの花、葉、茎又は実等は、プラズマ機能液Lに含まれる活性種により除菌又は殺菌される。
【0054】
プラズマヘッド20に大気圧プラズマ装置を用いることにより、プラズマ機能液製造装置10を軽量且つ安全に構成でき、プラズマ機能液製造装置10を持ち運び可能な程度に小型化できる。したがって、ユーザは、プラズマ機能液製造装置10を栽培容器3の近傍まで持ち運び、任意の植物Pに向けてプラズマ機能液Lを噴霧することができる。なお、プラズマ機能液製造装置10は、植物Pにプラズマ機能液Lを噴霧するものに限定されず、プラズマ機能液Lを植物Pに滴下するもの等であっても構わない。
【0055】
<変形例3>
次に、第2の実施形態に係る植物プラント1Aの他の変形例について図面に基づいて説明する。図5は、本変形例に係る植物プラント1Dの構成を示す模式図である。なお、本変形例に係る植物プラント1Dは、上述した第2の実施形態に係る植物プラント1Aと以下の点で相違し、その他の構成は共通する。したがって、共通する構成は、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0056】
植物プラント1Dは、培養土等に植えられた植物Pを栽培するための3つの栽培容器4と、プラズマ機能液製造装置10と、を備えている。
【0057】
プラズマ機能液生成部40は、放出部としての液供給管46及び3つの噴霧ヘッド47を備えている。
【0058】
液供給管46は、基端がプラズマ機能液生成槽41に接続され、途中で3つに分岐し、先端が各噴霧ヘッド47にそれぞれ接続されている。液供給管46で送られるプラズマ機能液Lは、図示しないポンプ等を用いて圧送される。
【0059】
噴霧ヘッド47は、各栽培容器4の上方に位置決めされており、プラズマ機能液Lを栽培容器4に向けてそれぞれ噴霧する。プラズマ機能液Lが噴霧された植物Pの花、葉、茎又は実等は、プラズマ機能液Lに含まれる活性種により除菌又は殺菌される。なお、噴霧ヘッド47の数は、植物Pや栽培容器4の数や噴霧ヘッド47がプラズマ機能液Lを噴霧する範囲に応じて増減可能である。
【0060】
噴霧ヘッド47は、コントローラ48によって動作制御される。コントローラ48は、図示しないセンサ等により取得した温度や植物Pの生育状況に応じて、噴霧ヘッド47がプラズマ機能液Lを噴霧するタイミングや量を制御する。なお、プラズマ機能液製造装置10は、植物Pにプラズマ機能液Lを噴霧するものに限定されず、プラズマ機能液Lを植物Pに滴下するもの等であっても構わない。
【実施例0061】
(実験例1)
プラズマ生成ガスとして酸素、二酸化炭素、空気(Air)、窒素を用いた場合に生成される各プラズマガスの殺菌効果について比較実験を行った。
【0062】
まず、精製水248ml、胞子液2mlを混合して胞子懸濁液250mlを作成した。胞子液の胞子には、Fusarium oxysporum f.sp. fragariae: NBRC 31982を使用した。この胞子は、主にイチゴ萎黄病の原因となる胞子であり、除菌もしくは殺菌することで、イチゴの疾病を防除して生育阻害や枯死を抑制できる。
【0063】
次に、図6に示すように、胞子懸濁液50mlをビーカー101に入れ、プラズマバブリング装置100でプラズマガスによるプラズマ処理を行った。プラズマ生成部であるマルチガスプラズマジェット102で生成されたプラズマガスは、筒状配管103を経由して胞子懸濁液に浸漬されているプラズマガス放出部である多孔質フィルタ104に送られ、多孔質フィルタ104を介して胞子懸濁液に気泡状態で導入される。筒状配管103の長さを約90mm、多孔質フィルタ104の長さを約20mm、導入されるプラズマガスの流量を3SLPMにそれぞれ設定した。
【0064】
プラズマガスを生成するために用いられるプラズマ生成ガスとして、酸素、二酸化炭素、空気(Air)、窒素の4種類を用意し、それぞれから生成されたプラズマガスを気泡状態で胞子懸濁液に導入する時間(処理時間)を0秒、120秒、300秒、600秒とした。
【0065】
そして、気泡状態のプラズマガスが導入された胞子懸濁液1mlを、段階希釈した後にシャーレ105に入れられた寒天培地に滴下し、常温で2日間培養した後に胞子の発芽量をカウントした。その結果を図7に示す。
【0066】
図7によれば、プラズマ生成ガスに酸素ガスを用いた場合のプラズマガスでは120秒、プラズマ生成ガスに二酸化炭素ガスを用いた場合のプラズマガスでは300秒以上、プラズマ生成ガスに空気を用いた場合のプラズマガスでは600秒以上をバブリングで導入することにより、優れた殺菌効果が得られることが分かる。一方、プラズマ生成ガスに窒素ガスを用いた場合のプラズマガスの殺菌効果は、酸素、二酸化炭素又は空気から生成されたプラズマガスに比べると小さいことが分かる。これらの結果から、プラズマ生成ガスとして酸素ガスを使用する場合が最も有効であることが分かる。
【0067】
(実験例2)
次に、プラズマ生成ガスに含まれる酸素ガスの酸素濃度とプラズマガスの殺菌効果との関係を検証する実験を行った。
【0068】
図8に示すように、精製水50mlをビーカー101に入れ、プラズマバブリング装置100を用いてプラズマガスを精製水に導入した。具体的には、プラズマ生成部であるマルチガスプラズマジェット102で生成されたプラズマガスが、筒状配管103を経由して精製水に浸漬されているプラズマガス放出部である多孔質フィルタ104に送られ、多孔質フィルタ104を介して精製水に気泡状態で導入される。筒状配管103の長さを約90mm、多孔質フィルタ104の長さを約20mm、導入されるプラズマガスの流量を3SLPMにそれぞれ設定した。
【0069】
プラズマ生成ガスとして以下の5種類を用意し、それぞれから生成されたプラズマガスを気泡状態で精製水に導入する時間(処理時間)を60秒、300秒とした。
・プラズマ生成ガス1:空気(Air)100%(酸素21%、窒素78%、アルゴン1%)
・プラズマ生成ガス2:酸素40%、窒素58%、アルゴン2%
・プラズマ生成ガス3:酸素70%、窒素27%、アルゴン3%
・プラズマ生成ガス4:酸素90%、窒素6%、アルゴン4%
・プラズマ生成ガス5:酸素100%
【0070】
そして、気泡状態のプラズマガスが導入された精製水990μlに胞子液10μlを混合して10分間静置して胞子懸濁液を作成した。胞子液の胞子には、Fusarium oxysporum f.sp. fragariae: NBRC 31982 を使用した。そして、胞子懸濁液1mlを段階希釈した後にシャーレ105に入れられた寒天培地に滴下し、常温で2日間培養した後に生存菌数をカウントした。その結果を図9に示す。
【0071】
図9によれば、プラズマ生成ガスの酸素濃度を90%、100%に設定した場合、バブリング時間(処理時間)が60秒、300秒で生存菌数が著しく減少して顕著な殺菌効果が見られた。一方、プラズマ生成ガスの酸素濃度を酸素21%、酸素40%、酸素70%に設定した場合、酸素濃度90%、100%に比べると生存菌数の減少すなわち殺菌効果が小さい。
【0072】
(実験例3)
次に、プラズマ生成ガスに含まれる酸素ガスの酸素濃度とプラズマガスの殺菌効果との関係をさらに詳しく検証する実験を行った。
【0073】
実験例2と同様にして、気泡状態のプラズマガスが導入された精製水990μlを胞子液10μlに混合して胞子懸濁液を作成した。胞子液の胞子には、実験例2と同様に、Fusarium oxysporum f.sp. fragariae: NBRC 31982を使用した。
【0074】
プラズマ生成ガスとして以下の3種類を用意し、それぞれから生成されたプラズマガスを気泡状態で精製水に導入する時間(処理時間)を10秒、20秒、30秒、60秒とした。そして、実施例2と同様に、胞子懸濁液1mlを段階希釈した後にシャーレ105に入れられた寒天培地に滴下し、常温で2日間培養した後に生存菌数をカウントした。その結果を図10に示す。
・プラズマ生成ガス6:酸素80%、窒素17%、アルゴン3%
・プラズマ生成ガス7:酸素90%、窒素6%、アルゴン4%
・プラズマ生成ガス8:酸素100%
【0075】
図10によれば、プラズマ生成ガスの酸素濃度を90%、100%に設定した場合、バブリング時間(処理時間)10秒以上で生存菌数が著しく減少して顕著な殺菌効果が得られることが分かる。一方、プラズマ生成ガスの酸素濃度を80%に設定した場合には、生存菌数の減少すなわち殺菌効果は、酸素濃度90%、100%に比べると小さい。
【0076】
なお、実験例2のプラズマ生成ガス4と実験例3のプラズマ生成ガス7とは、それぞれ同じ成分で実験を行ったものの、実験に使用した胞子液の単位容積当たりの胞子数は実験の度に異なり、シャーレで培養する前の生存菌数が異なっているため、図9及び図10の生存菌数の絶対値は異なっている。実験例2のプラズマ生成ガス5と実験例3のプラズマ生成ガス8についても同様である。
【0077】
(実験例4)
次に、処理時間を60秒に設定した場合に、プラズマ生成ガスに含まれる酸素ガスの酸素濃度とプラズマガスの殺菌効果との関係をさらに詳しく検証する実験を行った。
【0078】
実験例3と同様にして、気泡状態のプラズマガスが導入された精製水990μlを胞子液10μlに混合して胞子懸濁液を作成した。胞子液の胞子には、実験例3と同様に、Fusarium oxysporum f.sp. fragariae: NBRC 31982を使用した。
【0079】
プラズマ生成ガスとして以下の7種類を用意し、それぞれから生成された気泡状態のプラズマガスを精製水に60秒間導入した。そして、実施例2と同様に、胞子懸濁液1mlを段階希釈した後にシャーレ105に入れられた寒天培地に滴下し、常温で2日間培養した後に生存菌数をカウントした。その結果を図11に示す。図11において、横軸は以下のプラズマ生成ガス9~15であり、縦軸は生存菌数である。なお、図11中の破線は、本実験開始時における菌数(初期菌数)を示す。
・プラズマ生成ガス9:酸素80%、窒素17%、アルゴン3%
・プラズマ生成ガス10:酸素85%、窒素11%、アルゴン4%
・プラズマ生成ガス11:酸素90%、窒素6%、アルゴン4%
・プラズマ生成ガス12:酸素94%、窒素1%、アルゴン5%
・プラズマ生成ガス13:酸素95%、窒素0%、アルゴン5%
・プラズマ生成ガス14:酸素99%、窒素1%、アルゴン0%
・プラズマ生成ガス15:酸素100%、窒素0%、アルゴン0%
【0080】
図11によれば、プラズマ生成ガス9~10を用いた場合、初期菌数と生存菌数との差である減少菌数は、対数表示で1以下、すなわち線形表示で1/10よりも少ない事が分かる。一方、プラズマ生成ガス11~15を用いた場合、減少菌数は、何れも対数表示で1以上、すなわち線形表示で1/10以上であることが分かる。
【0081】
(実験例5)
実施例1乃至4では、胞子液の胞子にFusarium oxysporum f.sp. fragariae: NBRC 31982を使用したが、本実施例では、Fusarium oxysporum f.sp. fragariae: NBRC 31982以外の細菌等に対する殺菌効果を検証した。本実施例では、以下の3種類の細菌を含む菌液及び1種類の胞子液を使用し、実験例3と同様にして、気泡状態のプラズマガスが導入された精製水990μlを菌液又は胞子液10μlに混合して、菌懸濁液又は胞子懸濁液を作成した。
・菌液1:S.aureus(黄色ブドウ球菌)
・菌液2:E.coli(大腸菌)
・菌液3:P.aeruginosa(緑膿菌)
・胞子液1:灰色カビ病菌
【0082】
プラズマ生成ガスとしてPSA方式の酸素濃縮器で生成した酸素濃度の異なる以下の2種類を用意した。なお、プラズマ生成ガス16~17における窒素濃度及びアルゴン濃度は推定値である。
・プラズマ生成ガス16:酸素90%、窒素5.7%、アルゴン4.3%
・プラズマ生成ガス17:酸素95%、窒素0.5%、アルゴン4.5%
【0083】
そして、プラズマ生成ガスから生成されたプラズマガスを気泡状態で精製水に60秒間導入した。そして、実施例2と同様に、胞子懸濁液1mlを段階希釈した後にシャーレ105に入れられた寒天培地に滴下し、常温で2日間培養した後に生存菌数をカウントした。その結果を図12に示す。図12において、横軸は上述した菌液1~3及び胞子液1であり、縦軸は上述した菌液1~3及び胞子液1において、初期菌数及びプラズマ生成ガス16~17を使用した場合の生存菌数である。
【0084】
図12によれば、菌液1~3及び胞子液1の何れであっても酸素濃度90%、95%のプラズマ生成ガスを使用することで、初期菌数と生存菌数との差である減少菌数は、対数表示で1以上、すなわち線形表示で1/10以上であることが分かる。
【0085】
このように、実施例1によれば、プラズマ生成ガスとしては酸素ガスが非常に有効であり、特に、その酸素濃度が少なくとも90%以上の場合には顕著な殺菌効果が得られることが実施例2~4から分かる。また、実験例5によれば、プラズマ生成ガスとして酸素ガスを使用することで、主にイチゴ萎黄病の原因となる胞子であるFusarium oxysporum f.sp. fragariae: NBRC 31982に加え、S.aureus(黄色ブドウ球菌)、E.coli(大腸菌)、P.aeruginosa(緑膿菌)又は灰色カビ病菌に対しても有効な殺菌効果を示すことが分かる。
【0086】
しかしながら、酸素濃度が95%より高くした場合、非常に高価な高濃度酸素発生機が必要であり実用的でないのに対して、酸素濃度を95%以下に設定した場合には、小型の酸素濃縮器を使用することが可能である。また、酸素濃度が過度に高い場合、生成されるオゾンの量が増えるため、人体や植物等への影響が懸念される。特に、酸素濃度が95%より高くなると、液中に導入したオゾンが液中に溶け込まず空気中に放出されるため、別途オゾン対策が必要となる。従って、作業性やコスト面を考慮すると、酸素濃度は90%以上95%以下が好適である。
【0087】
酸素濃度が95%以下の場合、プラズマ生成ガスには窒素ガスも含有される。そのため、プラズマ機能液L中の活性種には、植物の生育に係る栄養素として機能する硝酸イオンが発生する。
【0088】
また、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り、上記以外にも種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【符号の説明】
【0089】
1A、1B、1C、1D:植物プラント
2 :栽培槽
2a:容器
2b:支持部
3 :栽培容器
4 :栽培容器
10:プラズマ機能液製造装置
20:プラズマヘッド
21:第1の電極
22:第2の電極
23:電源
24:アース
25:コンプレッサー
30:プラズマガス放出部
31:ガス搬送路
32:孔
40:プラズマ機能液生成部
41:プラズマ機能液生成槽
42:液供給路
43:液循環路
44、46:液供給管
45、47:噴霧ヘッド
48:コントローラ
A :溶液
B :気泡
L :プラズマ機能液
P :植物
S :溶媒
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12