(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135610
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】放射線診断装置、放射線検出器、および出力決定方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20230921BHJP
【FI】
A61B6/03 350F
A61B6/03 373
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006867
(22)【出願日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2022039916
(32)【優先日】2022-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 祥大
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093EB13
4C093EB17
4C093EB28
4C093FC18
4C093FC30
4C093FD12
4C093FD20
4C093FE30
(57)【要約】
【課題】放射線検出器への放射線の斜入による影響を低減すること。
【解決手段】本実施形態に係る放射線診断装置は、複数の放射線検出素子と、決定部と、を有する。複数の放射線検出素子は、2次元方向に配列される。決定部は、前記複数の放射線検出素子に含まれる第1の検出素子に関する第1の出力と、前記第1の検出素子の周囲の第2の検出素子に関する第2の出力とに基づいて、前記第1の検出素子の再構成位置に対応する出力を決定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元方向に配列された複数の放射線検出素子と、
前記複数の放射線検出素子に含まれる第1の検出素子に関する第1の出力と、前記第1の検出素子の周囲の第2の検出素子に関する第2の出力とに基づいて、前記第1の検出素子の再構成位置に対応する出力を決定する決定部と、
を備える放射線診断装置。
【請求項2】
前記決定部は、前記2次元方向のうち前記第1の検出素子と前記第2の検出素子とを含む平面内の方向において、基準線から第1の検出素子までの第1の角度に応じた第1の重みと、前記基準線から前記第2の検出素子までの第2の角度に応じた第2の重みとを用いて、前記再構成位置に対応する出力を決定する、
請求項1に記載の放射線診断装置。
【請求項3】
前記決定部は、前記第1の出力に前記第1の重みを乗算した第1の乗算値と、前記第2の出力に前記第2の重みを乗算した第2の乗算値と、を加算することにより、前記再構成位置に対応する出力を決定する、
請求項2に記載の放射線診断装置。
【請求項4】
前記放射線診断装置は、X線コンピュータ断層撮影装置であって、
前記2次元方向は、コーン角方向とファン角方向とであって、
放射線はX線であって、
前記第1の検出素子と、前記第2の検出素子とは、前記コーン角方向に沿って配列され、
前記決定部は、基準線から第1の検出素子までの第1のコーン角に応じた前記第1の重みと、前記基準線から第2の検出素子まで第2のコーン角に応じた前記第2の重みとを用いて、前記再構成位置に対応する出力を決定する、
請求項2または3に記載の放射線診断装置。
【請求項5】
前記第1の出力と前記第2の出力と前記再構成位置に対応する出力とは、前記X線における光子をカウントしたカウント数である、
請求項4に記載の放射線診断装置。
【請求項6】
前記第1の出力は、前記X線における複数のエネルギービンに応じた複数の第1のカウント数であって、
前記第2の出力は、前記複数のエネルギービンに応じた複数の第2のカウント数であって、
前記決定部は、前記複数のエネルギービンごとに、前記第1の重みと、前記第2の重みと、前記第1のカウント数と、前記第2のカウント数とに基づいて、前記複数のエネルギービンごとの前記再構成位置に対応する出力としてのカウント数を決定する、
請求項5に記載の放射線診断装置。
【請求項7】
前記複数のエネルギービン各々における前記第1の重みは、前記複数のエネルギービンを代表する複数の代表エネルギーにおいてエネルギーが高くなるほど減少し、
前記複数のエネルギービン各々における前記第2の重みは、前記複数の代表エネルギーにおいてエネルギーが高くなるほど増加する、
請求項6に記載の放射線診断装置。
【請求項8】
前記第1の重みと前記第2の重みとは、
前記第1の検出素子および前記第2の検出素子において放射線を電子または可視光に変換する材質と、前記材質の厚みと、前記放射線が前記第1の検出素子に入射する第1の角度とに基づいて設定され、
前記第1の角度が大きくなるにしたがって前記第1の重みは減少し、前記第2の重みは増加する、
請求項2に記載の放射線診断装置。
【請求項9】
前記第1の検出素子と前記第2の検出素子との間に隙間がある場合、前記第1の重みは前記隙間がない場合に比べて小さく設定され、前記第2の重みは前記隙間がない場合に比べて大きく設定される、
請求項2に記載の放射線診断装置。
【請求項10】
前記再構成位置に対応する出力に基づく投影データに対して再構成処理を実行し、再構成画像を生成する再構成処理部をさらに備える、
請求項1に記載の放射線診断装置。
【請求項11】
前記再構成位置は、前記出力に基づく再構成の計算で用いられ、かつ前記第1の検出素子の代表点を示す位置である、
請求項1に記載の放射線診断装置。
【請求項12】
2次元方向に配列された複数の放射線検出素子と、
前記複数の放射線検出素子に含まれる第1の検出素子からの出力に基づいて、第1のカウント数を収集し、前記第1の検出素子の周囲の第2の検出素子からの出力に基づいて、第2のカウント数を収集するデータ収集回路と、
前記第1のカウント数と前記第2のカウント数とに基づいて、前記第1の検出素子の再構成位置に対応するカウント数を決定する決定部と、
を備える放射線検出器。
【請求項13】
2次元方向に配列された複数の放射線検出素子に含まれる第1の検出素子に関する第1の出力と、前記第1の検出素子の周囲の第2の検出素子に関する第2の出力とを収集し、
前記第1の出力と前記第2の出力とに基づいて、前記第1の検出素子の再構成位置に対応する出力を決定する、
ことを備える出力決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、放射線診断装置、放射線検出器、および出力決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線コンピュータ断層撮影(Computed Tomography:CT)装置において、面状にX線変換素子が配列された検出モジュールをファン角方向に円弧状に並べることで、円弧面状のX線検出器を構築する技術が知られている。このような円弧面状のX線検出器はコーン角方向に平坦であるため、コーン角が大きくなる箇所ほどX線変換素子に対するX線の入射角が大きくなる。
【0003】
一般に、検出されたX線の再構成理論としては、X線は入射したX線変換素子表面の位置で入射したものと見なされる。しかしながら、X線変換素子表面に対してX線が斜入した場合には、X線変換素子の深部方向においてどこで当該X線が吸収されるかは確率事象でるため、当該X線は入射したX線変換素子に限らず、隣接する他のX線変換素子で吸収される可能性がある。これによってX線検出器のコーン角方向の空間分解能が低下し、例えば、被検体の体軸方向に沿って画像が伸びるなど、X線画像データの画質の低下の要因となる場合がある。
【0004】
このため、複数のX線変換素子により構成される検出器モジュールを小モジュール化して、各小モジュール単位でX線変換素子表面を、X線入射方向に向ける技術がある。しかしながら、このような構造では、小モジュールの構造体に起因する散乱線の発生などにより、画質が悪化することがある。
【0005】
また、半導体または希ガスなどを用いてX線を直接的に電荷に変換する直接変換型X線検出器として使用されるX線変換素子は、X線の吸収断面積が間接変換型検出器に比べて小さい。また、直接変換型X線検出器の厚みは、光電変換素子として作用する半導体結晶により、間接変換型X線検出器で使用されるX線変換素子よりも一般的に厚くなる。これらのことから、直接変換型X線検出器のX線変換素子内において斜入したX線の通過距離が長くなり、直接変換型X線検出器では、X線の斜入による影響をより受けやすくなる。
【0006】
また、一般X線撮影に用いられるX線平面検出器(フラットパネルディテクター:Flat Panel Detector(FPD))においては、全てのX線変換素子が大面積の面上に配位される。このため、列方向(コーン角方向)だけでなく、チャンネル方向(ファン角方向)についてもX線の斜入による影響を受け、X線画像データの画質が悪化することがある。また、X線光子の透過力は、当該X線光子のエネルギーに応じて異なるため、例えば、光子計数型検出器(Photon Counting Detector)においては、X線の斜入の影響の程度がX線のエネルギー域によって異なる。これにより、エネルギービンによって投影されるX線変換素子の位置がずれるため、X線画像データの画質が悪化することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、放射線検出器への放射線の斜入による影響を低減することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態に係る放射線診断装置は、複数の放射線検出素子と、決定部と、を有する。複数の放射線検出素子は、2次元方向に配列される。決定部は、前記複数の放射線検出素子に含まれる第1の検出素子に関する第1の出力と、前記第1の検出素子の周囲の第2の検出素子に関する第2の出力とに基づいて、前記第1の検出素子の再構成位置に対応する出力を決定する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るPCCT装置1の構成の一例を示す図。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係り、ミッドプレーンより開口の端部側のX線検出器の一部を、X線検出器に斜入するX線とともに示す図。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る出力決定処理の手順の一例を示すフローチャート。
【
図4】
図4は、第1の実施形態の変形例に係り、ミッドプレーンより開口の端部側のX線検出器の一部を、X線検出器に斜入するX線とともに示す図。
【
図5】
図5は、第2の実施形態に係る放射線検出器に対応するX線検出器の構成の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、放射線診断装置、放射線検出器、および出力決定方法の実施形態について説明する。以下の実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作をおこなうものとして、重複する説明を適宜省略する。なお、本願に係る放射線診断装置および放射線検出器は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。また、説明を具体的にするために、実施形態に係る放射線は、X線であるものとする。なお、実施形態に係る放射線はX線に限定されず、他の放射線(荷電粒子や各種波長に応じた電磁波)などであってもよい。
【0012】
実施形態に係る放射線検出器は、2次元方向に配列された複数の放射線検出素子を有する。2次元方向は、例えば、コーン角方向およびファン角方向である。コーン角方向およびファン角方向については後ほど説明する。以下、説明を具体的にするために、フォトンカウンティング方式のX線検出器(以下、光子計数型X線検出器と呼ぶ)であるものとする。光子計数型X線検出器は、例えば、入射したX線を直接的に電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型のX線検出器を有する。なお、光子計数型X線検出器は、直接変換型のX線検出器の代わりに、間接変換型のX線検出器を有していてもよい。
【0013】
なお、実施形態に係る放射線検出器は、光子計数型X線検出器に限定されず、積分型(電流モード計測方式またはエネルギー積分型ともいう)のX線検出器であってもよい。このとき、積分型のX線検出器は、直接変換型または間接変換型のX線検出器を有する。例えば、放射線検出器は、積分型のX線検出器として、一般X線撮影に用いられるX線平面検出器(フラットパネルディテクター:Flat Panel Detector(FPD))を有していてもよい。
【0014】
また、実施形態に係る放射線診断装置は、説明を具体的にするために、X線コンピュータ断層撮影(Computed Tomography:CT)装置であるものとする。より詳細には、実施形態に係る放射線診断装置は、フォトンカウンティングCTを実行可能な光子計数(Photon Counting)型のX線CT装置(以下、PCCT装置と呼ぶ)として説明する。PCCT装置は、例えば、直接変換型のX線検出器を用いて被検体を透過したX線を計数することで、SN比の高いX線CT画像データを再構成可能な装置である。なお、実施形態に係る放射線診断装置は、光子計数型X線検出器に代わりに、積分型のX線検出器を有するX線CT装置であってもよい。また、放射線診断装置は、FPDを有するX線診断装置(例えば、一般撮影用X線診断装置、循環器用X線診断装置(血管撮影装置(アンギオグラフィ:Angiography))など)であってもよい。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るPCCT装置1の構成の一例を示す図である。なお、PCCT装置1は放射線画像診断装置と称されてもよい。
図1に示すように、PCCT装置1は、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とを有する。なお、本実施形態では、非チルト状態での回転フレーム13の回転軸又は寝台装置30の天板33の長手方向をZ軸方向、Z軸方向に直交し、床面に対し水平である軸方向をX軸方向、Z軸方向に直交し、床面に対し垂直である軸方向をY軸方向とそれぞれ定義するものとする。
図1では、説明の都合上、架台装置10を複数描画しているが、実際のPCCT装置1の構成としては、架台装置10は、一つである。
【0016】
架台装置10及び寝台装置30は、コンソール装置40を介したユーザからの操作、或いは架台装置10、または寝台装置30に設けられた操作部を介したユーザからの操作に基づいて動作する。架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とは互いに通信可能に有線または無線で接続されている。
【0017】
架台装置10は、被検体PにX線100を照射し、被検体Pを透過したX線100の検出データを収集する撮影系を有する装置である。より具体的には、架台装置10は、X線管11(X線発生部)と、ウェッジ16と、コリメータ17と、X線検出器12と、X線高電圧装置14と、DAS(Data Acquisition System)18と、回転フレーム13と、制御装置15とを有する。
【0018】
X線管11は、X線高電圧装置14からの高電圧の印加及びフィラメント電流の供給により、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子を照射することでX線100を発生する真空管である。熱電子がターゲットに衝突することによりX線100が発生される。X線管11における管球焦点で発生したX線100は、例えばコリメータ17を介してコーンビーム形に成形され、被検体Pに照射される。例えば、X線管11には回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管がある。
【0019】
図1に示すように、コーンビーム形に照射されたX線100は、X軸方向に扇(ファン)型に広がる形状となる。このため、コーンビーム形に照射されたX線100のX軸方向の広がりを示す角度をファン角という。また、コーンビーム形に照射されたX線100のZ軸方向の奥行きを示す角度をコーン角という。このため、X軸方向をファン角方向、Z軸方向をコーン角方向ともいう。
【0020】
X線検出器12は、X線管11により発生したX線の光子を検出する。具体的には、X線検出器12は、X線管11から照射され、被検体Pを通過したX線を光子単位で検出し、当該X線量に対応した電気信号をDAS18へと出力する。X線検出器12は、例えば、X線管11の焦点を中心として1つの円弧に沿ってファン角方向(チャネル方向ともいう)に複数の検出素子(X線検出素子ともいう)が配列された複数の検出素子列を有する。X線検出器12において、複数の検出素子列は、Z軸方向に沿って平坦に配列される。すなわち、X線検出器12は、例えば、当該検出素子列がコーン角方向(列方向、row方向、スライス方向ともいう)に沿って平坦に複数配列された構造を有する。X線検出器12における複数の検出素子は、放射線検出器における複数の放射線検出素子に対応する。
【0021】
なお、PCCT装置1には、X線管11とX線検出器12とが一体として被検体Pの周囲を回転するRotate/Rotate-Type(第3世代CT)、リング状にアレイされた多数の検出素子が固定され、X線管11のみが被検体Pの周囲を回転するStationary/Rotate-Type(第4世代CT)等様々なタイプがあり、いずれのタイプでも本実施形態へ適用可能である。
【0022】
X線検出器12は、入射したX線を電荷に変換する半導体素子を有する直接変換型のX線検出器である。本実施形態のX線検出器12は、例えば、少なくとも1つの高電圧電極と、少なくとも1つの半導体結晶と、複数の読出電極とを備える。半導体素子は、X線変換素子ともいう。半導体結晶は、例えば、CdTe(テルル化カドミウム:cadmium telluride)やCdZnTe(テルル化カドミウム亜鉛:cadmium Zinc telluride:CZT)などにより実現される。X線検出器12において、半導体結晶を挟んで対向し、Y方向に直交する2つの面には、電極が設けられる。すなわち、X線検出器12には、複数のアノード電極(読出電極、または画素電極ともいう)とカソード電極(共通電極ともいう)とが、半導体結晶を挟んで設けられる。以下、カソード電極により形成される面をカソード面と呼ぶ。
【0023】
読出電極と共通電極との間には、バイアス電圧が印加される。X線検出器12では、X線が半導体結晶に吸収されると電子正孔対が生成されて、電子が陽極側(アノード電極(読出電極)側)へと移動し、正孔が陰極側(カソード電極側)に移動することで、X線の検出に関する信号が、X線検出器12からDAS18へ出力される。
【0024】
回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とを回転軸回りに回転可能に支持する。具体的には、回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とを対向して支持する。回転フレーム13は、後述する制御装置15によってX線管11とX線検出器12とを回転させる円環状のフレームである。回転フレーム13は、アルミニウム等の金属により形成された固定フレームに回転可能に支持される。回転フレーム13は、制御装置15の駆動機構からの動力を受けて回転軸回りに一定の角速度で回転する。
【0025】
なお、回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とに加えて、X線高電圧装置14やDAS18を更に支持する。このような回転フレーム13は、撮影空間をなす開口(ボア)が形成された略円筒形状の筐体に収容されている。開口の中心軸は、回転フレーム13の回転軸に一致する。
【0026】
X線高電圧装置14は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管11に印加する高電圧およびX線管11に供給するフィラメント電流を発生する機能を有する高電圧発生装置と、X線管11が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であっても構わない。なお、X線高電圧装置14は、回転フレーム13に設けられてもよいし、架台装置10の固定フレーム(図示しない)側に設けられても構わない。なお、固定フレームは回転フレーム13を回転可能に支持するフレームである。
【0027】
制御装置15は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理回路と、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構とを有する。処理回路は、ハードウェア資源として、CPUやMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサとROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリとを有する。また、制御装置15は、例えば、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等のプロセッサにより実現されてもよい。
【0028】
プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサはメモリに保存されたプログラムを読み出して実行することで機能を実現する。一方、プロセッサがASICである場合、メモリにプログラムを保存する代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0029】
また、制御装置15は、コンソール装置40もしくは架台装置10に取り付けられた入力インターフェース43からの入力信号を受けて、架台装置10及び寝台装置30の動作制御を行う機能を有する。例えば、制御装置15は、入力信号を受けて回転フレーム13を回転させる制御や、架台装置10をチルトさせる制御、及び寝台装置30及び天板33を動作させる制御を行う。なお、架台装置10をチルトさせる制御は、架台装置10に取り付けられた入力インターフェース43によって入力される傾斜角度(チルト角度)情報により、制御装置15がX軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム13を回転させることによって実現されてもよい。また、制御装置15は架台装置10に設けられてもよいし、コンソール装置40に設けられても構わない。
【0030】
ウェッジ16は、X線管11から照射されたX線100のX線量を調節するためのフィルタである。具体的には、ウェッジ16は、X線管11から被検体Pへ照射されるX線100が、予め定められた分布になるように、X線管11から照射されたX線100を透過して減衰するフィルタである。ウェッジ16は、例えばウェッジフィルタ(wedge filter)またはボウタイフィルタ(bow-tie filter)であり、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したフィルタである。
【0031】
コリメータ17は、ウェッジ16を透過したX線100をX線照射範囲に絞り込むための鉛板等であり、複数の鉛板等の組み合わせによってスリットを形成する。
【0032】
DAS(Data Acquisition System)18は、複数の計数回路を有する。複数の計数回路各々は、X線検出器12の各検出素子から出力される電気信号に対して増幅処理を行う増幅器と、増幅された電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器とを有し、X線検出器12の検出信号を用いた計数処理の結果である検出データを生成する。計数処理の結果は、エネルギービン(Energy BIN)ごとのX線の光子数を割り当てたデータである。エネルギービンは、所定の幅のエネルギー域に相当する。例えば、DAS18は、X線管11から照射されて被検体Pを透過したX線に由来する光子(X線光子)を計数し、当該計数した光子のエネルギーを弁別した計数処理の結果を、検出データとして生成する。DAS18はデータ収集部の一例である。
【0033】
DAS18が生成した検出データは、コンソール装置40へと転送される。検出データは、生成元の検出器画素のチャンネル番号、列番号、収集されたビュー(投影角度ともいう)を示すビュー番号、及び検出されたX線の線量を示す値のデータのセットである。なお、ビュー番号としては、ビューが収集された順番(収集時刻)を用いてもよく、X線管11の回転角度を表す番号(例、1~1000)を用いてもよい。DAS18における複数の計数回路各々は、例えば、検出データを生成可能な回路素子を搭載した回路群により実現される。なお、本実施形態において、単に「検出データ」という場合、X線検出器12により検出され、前処理が施される前の純生データと、純生データに対して前処理が施された生データの両方の意味を包括する。なお、前処理前のデータ(検出データ)および前処理後のデータを総称して投影データと称する場合もある。
【0034】
寝台装置30は、スキャン対象の被検体Pを載置、移動させる装置であり、基台31と、寝台駆動装置32と、天板33と、天板支持フレーム34とを備えている。基台31は、天板支持フレーム34を鉛直方向に移動可能に支持する筐体である。寝台駆動装置32は、被検体Pが載置された天板33を天板33の長軸方向に移動させるモータあるいはアクチュエータである。寝台駆動装置32は、コンソール装置40による制御、または制御装置15による制御に従い、天板33を移動する。天板支持フレーム34の上面に設けられた天板33は、被検体Pが載置される板である。なお、寝台駆動装置32は、天板33に加え、天板支持フレーム34を天板33の長軸方向に移動してもよい。
【0035】
コンソール装置40は、架台装置10の制御、および架台装置10によるスキャン結果に基づくCT画像データの生成等を実行する装置である。コンソール装置40は、メモリ41(記憶部)と、ディスプレイ42(表示部)と、入力インターフェース43(入力部)と、処理回路44(処理部)とを有する。メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、処理回路44との間のデータ通信は、バス(BUS)を介して行われる。
【0036】
メモリ41は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、HDD(Hard disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、光ディスク等により実現される。また、メモリ41は、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体や、RAM(Random Access Memory)等の半導体メモリ素子等との間で種々の情報を読み書きする駆動装置であってもよい。メモリ41は、例えば、投影データや再構成画像データを記憶する。また、メモリ41の保存領域は、PCCT装置1内にあってもよいし、ネットワークで接続された外部記憶装置内にあってもよい。また、メモリ41は、本実施形態に係る制御プログラムを記憶する。また、メモリ41は、記憶部の一例である。
【0037】
ディスプレイ42は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路44によって生成された医用画像(CT画像)や、操作者からの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を出力する。例えば、ディスプレイ42としては、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro Luminescence Display)、プラズマディスプレイまたは他の任意のディスプレイが、適宜、使用可能となっている。また、ディスプレイ42は、架台装置10に設けられてもよい。また、ディスプレイ42は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0038】
入力インターフェース43は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路44に出力する。例えば、入力インターフェース43は、投影データを収集する際の収集条件や、CT画像を再構成する際の再構成条件、CT画像から後処理画像を生成する際の画像処理条件等を操作者から受け付ける。入力インターフェース43としては、例えば、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド及びタッチパネルディスプレイ等が適宜、使用可能となっている。
【0039】
なお、本実施形態において、入力インターフェース43は、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド及びタッチパネルディスプレイ等の物理的な操作部品を備えるものに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路44へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース43の例に含まれる。また、入力インターフェース43は、入力部の一例である。また、入力インターフェース43は、架台装置10に設けられてもよい。また、入力インターフェース43は、コンソール装置40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0040】
処理回路44は、入力インターフェース43から出力される入力操作の電気信号に応じて、PCCT装置1全体の動作を制御する。例えば、処理回路44は、システム制御機能441、前処理機能442、再構成処理機能443、スキャン制御機能444、画像処理機能445、表示制御機能446、および決定機能447を備える。ここで、例えば、
図1に示す処理回路44の構成要素であるシステム制御機能441、前処理機能442、再構成処理機能443、スキャン制御機能444、画像処理機能445、表示制御機能446、および決定機能447が実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ41内に記録されている。
【0041】
処理回路44は、例えば、プロセッサであり、メモリ41から各プログラムを読み出し、実行することで読み出した各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路44は、
図1の処理回路44内に示された各機能を有することとなる。システム制御機能441を実現する処理回路44は、制御部の一例である。前処理機能442を実現する処理回路44は、前処理部の一例である。再構成処理機能443を実現する処理回路44は、再構成処理部の一例である。スキャン制御機能444を実現する処理回路44は、スキャン制御部の一例である。画像処理機能445を実現する処理回路44は、画像処理部の一例である。表示制御機能446を実現する処理回路44は、表示制御部の一例である。決定機能447を実現する処理回路44は、決定部の一例である。また、処理回路44を制御部の一例としてもよい。
【0042】
なお、
図1においてはシステム制御機能441、前処理機能442、再構成処理機能443、スキャン制御機能444、および表示制御機能446が単一の処理回路44によって実現される場合を示したが、本実施形態はこれに限られるものではない。例えば、処理回路44は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路44が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0043】
処理回路44は、システム制御機能441により、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、処理回路44の各種機能を制御する。
【0044】
処理回路44は、前処理機能442により、決定機能447により決定された理想的な検出データに対して、対数変換処理やオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を施したデータを生成する。理想的な検出データについては、後ほど説明する。
【0045】
処理回路44は、再構成処理機能443により、前処理機能442にて生成された投影データに対して、フィルタ補正逆投影法または逐次近似再構成法等を用いた再構成処理を行ってCT画像データを生成する。
【0046】
処理回路44は、スキャン制御機能444により、スキャン範囲、撮影条件等を決定するための被検体Pの2次元の位置決め画像データを取得する。なお、位置決め画像データは、スキャノ画像データまたはスカウト画像データと呼ばれる場合もある。
【0047】
処理回路44は、画像処理機能445により、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、再構成処理機能443によって生成されたCT画像データを公知の方法により、任意断面の断層像データや3次元画像データに変換する。なお、3次元画像データの生成は再構成処理機能443が直接行なっても構わない。
【0048】
処理回路44は、表示制御機能446により、画像処理機能445によって処理された断層像データおよび3次元画像データをディスプレイ42に表示させる。また、表示制御機能446は、各種のGUI(Graphical User Interface)を、ディスプレイ42に表示させる。
【0049】
処理回路44は、決定機能337により、複数の放射線検出素子(X線検出器12における複数の検出素子)に含まれる第1の検出素子に関する第1の出力と、第1の検出素子の周囲の第2の検出素子に関する第2の出力とに基づいて、当該第1の検出素子の再構成位置に対応する出力を決定する。当該再構成位置は、例えば、決定された出力に基づく再構成の計算で用いられ、かつ第1の検出素子の代表点を示す位置である。再構成位置は、例えば、当該第1の検出素子においてX線が到達する表面(カソード面)である。なお、再構成位置は、当該第1の検出素子におけるカソード面に限定されない。例えば、第1の検出素子におけるアノード電極上の半導体結晶内部の任意の位置であってもよい。以下、説明を具体的にするために、再構成位置は、第1の検出素子にX線がカソード面に入射する入射位置であるものとする。
【0050】
処理回路44は、決定機能337より、X線検出器12における複数の検出素子に含まれる第1の検出素子に関する第1の出力と、当該第1の検出素子の周囲の第2の検出素子に関する第2の出力とに基づいて、当該第1の検出素子においてX線が到達する表面(カソード面)をX線の入射位置とした場合の当該第1の検出素子に関する理想的な出力を決定する。X線の入射位置は、例えば、当該第1の検出素子へのX線パス(レイともいう)が最初にぶつかるX線検出器12の表面である。換言すれば、X線の入射位置は、例えば、X線の散乱線ではなく、被検体Pを透過したX線パスまたは被検体Pを透過しない直接線パスが、カソード面にぶつかる位置に相当する。
【0051】
第2の検出素子は、例えば、第1の検出素子に隣接する少なくとも一つの検出素子に限定されず、第1の検出素子を取り囲む複数の検出素子である。第1の出力は第1の検出素子に関する検出データ(純生データまたはカウント数)に相当し、第2の出力は第2の検出素子に関する検出データ(純生データまたはカウント数)に相当する。なお、放射線診断装置が、X線診断装置および積分型のX線CT装置である場合、例えば、第1の出力は、第1の検出素子から出力された純生データに相当し、第2の出力は、第2の検出素子から出力された純生データに相当する。
【0052】
理想的な出力とは、例えば、第1の検出素子の読出電極(以下、第1の電極と呼ぶ)に対向するカソード面(以下、対向面と呼ぶ)にX線が斜入した場合、当該X線により生成された電子が第1の電極で読み出されたときの、第1電極に関する出力(例えば、カウント数または電流値)に相当する。例えば、対向面は、Y軸方向に沿った、第1の電極の直上の面に相当する。また、第2の検出素子は、対向面に斜入するX線のレイの入射角度に応じて、予め設定される。PCCT装置1では、第1の出力と第2の出力と第1の検出素子の再構成位置に対応する出力(例えば、理想的な出力と称されてもよい)とは、X線における光子をカウントしたカウント数である。このとき、理想的な出力は、第1の検出素子へのX線パスが最初にぶつかるX線検出器12の表面をX線の入射位置としてカウントした場合の出力カウントに相当する。
【0053】
具体的には、処理回路44は、決定機能447により、複数の検出素子が配列される2次元方向(チャネル方向および列方向)のうち第1の検出素子と第2の検出素子とを含む平面内の方向(例えば、列方向)において、基準線から第1の検出素子までの第1の角度に応じた第1の重みと、当該基準線から第2の検出素子までの第2の角度に応じた第2の重みとを用いて、第1の検出素子の再構成位置に対応する出力(第1の検出素子に関する理想的な出力)を決定する。すなわち、決定機能447は、X線検出器12における複数の検出素子各々において、当該検出素子各々の周囲の検出素子の出力を用いて加重計算を行うことで、統計的に当該検出素子各々で本来出力されると期待される出力、すなわち尤もらしい理想的な出力を演算する。
【0054】
基準線とは、例えば、X線検出器12におけるコーン角方向の中央(ミッドプレーン)と、管球焦点とを結ぶ線である。第1の重みと第2の重みとは、第1の検出素子および第2検出素子においてX線(放射線)を電子または可視光に変換する材質と、当該材質の厚みと、X線が第1の検出素子に入射する角度とに基づいて設定される。例えば、直接変換型のX線検出器である場合、当該材質は半導体結晶である。また、間接変換型のX線検出器である場合、当該材質は、例えば、シンチレータである。X線が第1の検出素子に入射する角度は、上記第1の角度に対応する。第1の重みと第2の重みとは、例えば、第1の角度と半導体結晶の厚みと材質などとを用いた各種シミュレーション(例えば、モンテカルロシミュレーション)、または事前の校正試験(実験)などにより、予め設定される。
【0055】
第1の検出素子と第2の検出素子とを含む平面内の方向が、例えばコーン角方向(列方向)である場合、すなわち第1の検出素子と第2の検出素子とがコーン角方向に沿って配列されている場合、基準線から第1の検出素子までの角度は、第1の検出素子と管球焦点とを結ぶ直線と基準線との間の角度(以下、第1コーン角と呼ぶ)に相当する。また、第1の検出素子と第2の検出素子とを含む平面内の方向が、例えばコーン角方向(列方向)である場合、基準線から第2の検出素子までの角度(以下、第2のコーン角と呼ぶ)は、第2の検出素子と管球焦点とを結ぶ直線と基準線との間の角度に相当する。
【0056】
すなわち、第1の検出素子と、第2の検出素子とは、コーン角方向に沿って配列された場合、処理回路44は、決定機能447により、上記基準線から第1の検出素子までの第1のコーン角に応じた第1の重みと、前記基準線から第2の検出素子まで第2のコーン角に応じた第2の重みとを用いて、例えば、第1の出力に第1の重みを乗算した第1の乗算値と第2の出力に第2の重みを乗算した第2の乗算値とを加算して、第1の検出素子の再構成位置に対応する出力(第1の検出素子に関する理想的な出力)を決定する。
【0057】
図2は、ミッドプレーンより開口の端部側のX線検出器12の一部を、X線検出器12に斜入するX線とともに示す図である。より詳細には、
図2は、Z軸方向の+側における開口の端部、すなわち
図1に示す天板131のZ軸方向の+側の端部(被検体Pの足部)から近い開口の端部に近いX線検出器12の一部を、X線検出器12に斜入するX線とともに示している。
【0058】
図2において、第1の検出素子は、読出電極C
Nであるものとする。また、
図2において、X線管11において発生されたX線の一部分N
segは、第1の検出素子に対応する読出電極C
Nに対向するカソード面(対向面)を斜入するX線(以下、斜入X線と呼ぶ)を示している。
図2では、斜入X線に起因する複数の読出電極(読出電極C
N、読出電極C
N+1、読出電極C
N+2)からの全出力に対する読出電極C
Nから出力される第1の出力の割合は、70%で示されている。換言すれば、上記70%は、読出電極C
Nの直上の領域の点線で囲まれた半導体結晶において、X線の一部分N
segが電荷に変換される割合を示している。
【0059】
また、
図2では、斜入X線に起因する複数の読出電極(読出電極C
N、読出電極C
N+1、読出電極C
N+2)からの全出力に対する読出電極C
N+1から出力される第2の出力の割合は、29%で示されている。換言すれば、上記29%は、読出電極C
N+1の直上の領域の点線で囲まれた半導体結晶において、X線の一部分N
segが電荷に変換される割合を示している。
【0060】
また、
図2では、斜入X線に起因する複数の読出電極(読出電極C
N、読出電極C
N+1、読出電極C
N+2)からの全出力に対する読出電極C
N+2から出力される第2の出力の割合は、1%で示されている。換言すれば、上記1%は、読出電極C
N+2の直上の領域の点線で囲まれた半導体結晶において、X線の一部分N
segが電荷に変換される割合を示している。
図2に示す例では、第2の検出素子は、読出電極C
N+1と、読出電極C
N+2との2つに対応する。
【0061】
すなわち、
図2に示すような検出素子のジオメトリとX線の斜入とを想定した場合、X線の一部分N
segに関して、読出電極C
Nからの出力の70%と、読出電極C
N+1からの出力の29%と、読出電極C
N+2からの出力の1%とが、第1の出力の理想的な出力C
iNに寄与する。具体的には、
図2に示す例では、第1の検出素子(読出電極C
N)に関する理想的な出力C
iNは、以下の式(1)で算出される。
【0062】
【0063】
式(1)の右辺において、C
Nは、第1の検出素子、すなわち読出電極C
Nに関する出力(第1の出力)を示している。また、式(1)の右辺において、C
N+1およびC
N+2は、第2の検出素子(読出電極C
N+1および読出電極C
N+2)に関する第2の出力を示している。また、式(1)の右辺において、k
N,Nは第1の重みを示し、k
N,N+1およびk
N,N+2は、第2の重み示している。
図2に示すように、第1の重みk
N,Nは0.7であって、第2の重みk
N,N+1、k
N,N+2は、それぞれ0.29、0.01である。このため、処理回路44は、決定機能447により、第1の検出素子(読出電極C
N)に関する理想的な出力C
iNを、以下の計算式(2)で決定する。
【0064】
【0065】
図2および式(2)における第1の重みと第2の重みとにおける数値(0.7、0.29.0.01)は、一例であって、第1の検出素子へのX線の入射角、すなわち列番号に依存して変化する。一般的には、列方向に沿った検出素子の総数がnであって、コーン角方向(Z軸方向)に沿って1からnまで付番されている場合、式(1)は、以下の式(3)で一般化して表される。
【0066】
【0067】
上式(3)における左辺のベクトル
【数4】
は、複数の検出素子にそれぞれ対応する複数の理想的な出力を成分として有する理想出力ベクトルを示している。また、上式(3)における右辺のベクトル
【数5】
は、複数の検出素子にそれぞれ対応する複数の出力(実測値)をベクトルの成分として有する実測出力ベクトルを示している。
【0068】
また、上式(3)における右辺の行列(以下、重み行列と呼ぶ)
【数6】
は、複数の検出素子に関する複数の重みを行列として表している。換言すれば、重み行列は、X線検出器12に関する出力の実測値を示す実測出力ベクトル
【数7】
と、X線検出器12に関する理想的な出力を示す理想出力ベクトル
【数8】
とにおける各成分(複数の検出素子各々に関する出力)の相関係数を重みとして示す係数行列(例えば、相関行列)に相当する。列方向に沿った検出素子の総数nが奇数の場合、素子番号n/2+1は、ミッドプレーンに対応する。このとき、重みk
n/2+1,i(1≦i≦n:n/2+1を除く)は、すべてゼロとなり、重みk
n/2+1,n/2+1は1となる。また、理想的には、係数行列は、1行N列とN行1列とを結ぶ対角線に対して対称な成分を有する行列となる。
【0069】
重み行列において、定性的にはコーン角が大きな検出素子ほど、当該検出素子よりコーン角の大きい方向の隣接素子(および当該隣接素子を含み、当該大きい方向に沿った複数の検出素子)の重みは大きくなり、当該検出素子そのものの出力に関する重みは小さくなる。例えば、重み行列の対角成分において、ミッドプレーンに対応する重みkn/2,n/2から、行数および列数が増減するにつれて、第1の重みは小さくなる。また、例えば、重み行列の非対角成分において、ミッドプレーンに対応する重みkn/2,n/2から、行数および列数が増減するにつれて、コーン角の大きい方向に沿った第2の検出素子に関する第2の重みは増大する。換言すれば、重み行列において、複数の検出素子各々において、第1の角度が大きくなるにしたがって第1の重みは減少し、第2の重みは増加する。各種シミュレーション(例えば、モンテカルロシミュレーション)、または事前の校正試験(実験)により生成された重み行列は、メモリ41に記憶される。
【0070】
図2および上記数式で示す例では、コーン角方向にのみ着目をしたが、コーン角方向の代わりにファン角方向に着目してもよい。また、例えば、X線検出器12としてFPDが用いられる場合、すなわちファン角が大きなチャンネルにおいてX線の入射角が大きくなる場合には、上記数式による行列演算の次元は、拡張されてもよい。このとき、実測出力ベクトルおよび理想出力ベクトルは、例えば、コーン角方向およびファン角方向に関する複数の検出素子に関する出力を示す行列となり、重み行列は、コーン角方向およびファン角方向を引数(添え字)として有する4回のテンソルとなる。
【0071】
なお、決定機能447により実現される上記処理は、前処理機能442により実現されてもよい。このとき、前処理機能442は、前処理の実行前において、前処理前のデータ(例えば、カウント数)に対して、決定機能447による処理内容を実行する。また、決定機能447により実現される上記処理は、DAS18により実現されてもよい。このとき、DAS18は、検出データ(例えば、純生データまたは生データ(カウント数))に対して、決定機能447による処理内容を実行する。
【0072】
処理回路44は、決定機能447により、複数の検出素子各々に関して決定された理想的な出力を、前処理機能442に出力する。決定機能447により理想的な出力の決定は、X線検出器12に対するX線の斜入の影響を補正することに対応する。すなわち、理想的な出力は、X線検出器12に対するX線の斜入の影響が補正された補正データに相当する。前処理機能442は、補正データに対して前処理を実行して、投影データ(以下、補正投影データと呼ぶ)を生成する。当該補正投影データでは、X線検出器12に対するX線の斜入の影響が低減された投影データに対応する。再構成処理機能443は、補正投影データに対する再構成処理により、再構成画像(以下、補正再構成画像と呼ぶ)を生成する。すなわち、処理回路44は、再構成処理機能443により、再構成位置に対応する出力に基づく投影データに対して再構成処理を実行し、再構成画像(補正再構成画像)を生成する。補正再構成画像は、例えば、メモリ41に記憶されるとともに、表示制御機能446により、ディスプレイ42に表示される。補正再構成画像は、X線検出器12に対するX線の斜入の影響が補正された再構成画像に相当する。
【0073】
以上、放射線診断装置の一例としてのPCCT装置1の全体構成について説明した。以下、出力決定処理の手順について、
図3を用いて説明する。出力決定処理は、収集された第1の出力と第2の出力とに基づいて、第1の検出素子の再構成位置に対応する出力を決定することにある。
図3は、出力決定処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0074】
(出力決定処理)
(ステップS301)
データ収集回路18は、被検体Pに対するスキャンにより、2次元方向に配列された複数の放射線検出素子に含まれる第1の検出素子に関する第1の出力と、第1の検出素子の周囲の第2の検出素子に関する第2の出力とを収集する。これにより、第1の出力と第2の出力とが取得される。
【0075】
(ステッS302)
処理回路44は、決定機能447により、第1の出力と第2の出力とに基づいて、第1の検出素子の再構成位置に対応する出力を決定する。当該再構成位置に対応する出力の決定は、上記説明に準拠するため、説明は、省略する。
【0076】
以上に述べた第1の実施形態に係る放射線診断装置は、2次元方向に配列された複数の放射線検出素子に含まれる第1の検出素子に関する第1の出力と、第1の検出素子の周囲の第2の検出素子に関する第2の出力とに基づいて、第1の検出素子の再構成位置に対応する出力(例えば、第1の検出素子に関する理想的な出力)を決定する。例えば、本実施形態に係る放射線診断装置は、2次元方向のうち第1の検出素子と第2の検出素子とを含む平面内の方向において、基準線から第1の検出素子までの第1の角度に応じた第1の重みと、基準線から第2の検出素子までの第2の角度に応じた第2の重みとを用いて、再構成位置に対応する出力(例えば、理想的な出力)を決定する。具体的には、本実施形態に係る放射線診断装置は、第1の出力に第1の重みを乗算した第1の乗算値と、第2の出力に第2の重みを乗算した第2の乗算値と、を加算することにより、再構成位置に対応する出力(例えば、理想的な出力)を決定する。
【0077】
例えば、第1の実施形態に係る放射線診断装置は、X線CT装置であって、2次元方向は、コーン角方向とファン角方向とであって、放射線はX線であって、第1の検出素子と第2の検出素子とはコーン角方向に沿って配列され、基準線から第1の検出素子までの第1のコーン角に応じた前記第1重みと、基準線から第2の検出素子まで第2のコーン角に応じた第2重みとを用いて、再構成位置に対応する出力(例えば、理想的な出力)を決定する。このとき、本実施形態に係る放射線診断装置において、第1の出力と第2の出力と再構成位置に対応する出力(例えば、理想的な出力)とは、X線における光子をカウントしたカウント数であってもよい。本実施形態に係る放射線診断装置は、再構成位置に対応する出力(例えば、理想的な出力)に基づく投影データに対して再構成処理を実行し、再構成画像を生成する。また、第1の実施形態に係る放射線診断装置において、第1の重みと第2の重みとは、第1の検出素子および第2検出素子において放射線を電子または可視光に変換する材質と、当該材質の厚みと、当該放射線が前記第1の検出素子に入射する角度(すなわち対向面に斜入するX線の入射角)とに基づいて設定され、第1の角度が大きくなるにしたがって第1の重みは減少し、第2の重みは増加する。
【0078】
これらのことから、第1の実施形態に係る放射線診断装置によれば、コーン角とファン角とのうち少なくとも一つに起因する対向面へのX線の斜入による純生データまたは生データへの影響を補正することができる。これにより、本放射線診断装置によれば、X線の斜入に起因する放射線の検出位置の位置ずれを補正し、本来のX線の検出位置に対応する位置での投影データを得ることができる。以上のことから、本放射線診断装置によれば、被検体Pの体軸方向および/または左右方向における画像の伸びなどの画質の悪化が低減され、空間分解能を向上させた医用画像(投影データに基づくX線画像または補正再構成画像)を生成することができる。このため、本放射線診断装置によれば、被検体Pに対する放射線検査の質を向上させることができる。
【0079】
(応用例)
PCCT装置1は、エネルギー域(エネルギービン)ごとにデータ(カウント数)を収集する。また、PCCT装置1におけるX線検出器12の半導体結晶は、通常の積分型のX線検出器に比べてX線の吸収断面積が小さい。このため、PCCT装置1におけるX線検出器12の厚みは、通常の積分型のX線検出器に比べて厚くなる。これらのことから、X線のエネルギーが高くなるほど、再構成画像に対するX線の斜入により影響は大きくなる。すなわち、従来のPCCT装置1では、エネルギービンごとに再構成された再構成画像は、エネルギービンを代表するエネルギーが高くなるほど、すなわち高エネルギーの再構成画像ほど被検体Pの体軸方向に沿って画像が伸びることとなる。
【0080】
このため、本応用例は、複数のエネルギービンに対応する複数の重み行列を用いて、複数のエネルギービンごとに、理想的な出力を決定することにある。複数の重み行列において、第1の重みに対応する自身の検出素子への寄与率kN,Nは低下し、Z軸方向の+側の端部に近いX線検出器12において隣接素子を含む第2の検出素子から第1の検出素子への第2の重みに対応する寄与率kN,N’>Nは増加する。また、複数の重み行列において、Z軸方向の-側の端部に近いX線検出器12において隣接素子を含む第2の検出素子から第1の検出素子への第2の重みに対応する寄与率kN,N’<Nは増加する。換言すれば、複数のエネルギービン各々における第1の重みは、複数のエネルギービンを代表する複数の代表エネルギーにおいてエネルギーが高くなるほど減少し、複数のエネルギービン各々における第2の重みは、複数の代表エネルギーにおいてエネルギーが高くなるほど増加する。
【0081】
本応用例における第1の出力は、例えば、X線における複数のエネルギービンに応じた複数の第1のカウント数である。また、本応用例における第2の出力は、例えば、X線における複数のエネルギービンに応じた複数の第2のカウント数である。このとき、処理回路44は、決定機能447により、複数のエネルギービンごとに、第1の重みと第2の重みと第1のカウント数と第2のカウント数とに基づいて、複数のエネルギービンごとの再構成位置に対応する出力(例えば、理想的な出力)としてのカウント数を決定する。
【0082】
具体的には、処理回路44は、決定機能447により、以下の式(4)を用いて、複数のエネルギービンごとの再構成位置に対応する出力(例えば、理想的な出力)を決定する。
【数9】
【0083】
上式(4)における左辺のベクトル
【数10】
は、複数の検出素子にそれぞれ対応する複数の再構成位置に対応する出力(例えば、理想的な出力)を成分として有する、エネルギービンごとの理想出力ベクトルを示している。また、上式(4)における右辺のベクトル
【数11】
は、複数の検出素子にそれぞれ対応する複数の出力(実測値)をベクトルの成分として有する、エネルギービンごとの実測出力ベクトルを示している。
【0084】
また、上式(4)における右辺のエネルギービンごとの重み行列
【数12】
は、複数の検出素子に関する複数の重みをエネルギービンごとの行列として表している。式(4)の両辺におけるエネルギービンは、すべて同一のエネルギービンを表している。エネルギービンごとの重み行列は、エネルギービンごとの実測出力ベクトル
【数13】
と、エネルギービンごとの理想出力ベクトル
【数14】
とにおける各成分(複数の検出素子各々に関する出力)の相関係数を重みとして示す係数行列(例えば、相関行列)に相当する。エネルギービンごとの重み行列における他の特徴は、第1の実施形態と同様なため、説明は省略する。また、決定機能447における処理も、エネルギービンごとに第1の実施形態と同様な処理が繰り返されるため、説明は省略する。
【0085】
以上に述べた第1の実施形態の応用例に係る放射線診断装置では、第1の出力は、X線における複数のエネルギービンに応じた複数の第1のカウント数であって、第2の出力は、複数のエネルギービンに応じた複数の第2のカウント数であって、複数のエネルギービンごとに、第1の重みと第2の重みと第1のカウント数と第2のカウント数とに基づいて、複数のエネルギービンごとの再構成位置に対応する出力(例えば、理想的な出力)としてのカウント数を決定する。また、本応用例に係る放射線診断装置では、複数のエネルギービン各々における第1の重みは、複数のエネルギービンを代表する複数の代表エネルギーにおいてエネルギーが高くなるほど減少し、複数のエネルギービン各々における第2の重みは、複数の代表エネルギーにおいてエネルギーが高くなるほど増加する。
【0086】
以上のことから第1の実施形態の応用例に係る放射線診断装置によれば、X線のエネルギーによって寄与率が異なるため、エネルギービンごとの重み行列(係数行列)を用いて、エネルギービンごとに独立して計測されたカウント数を補正することができる。本応用例に係る放射線診断装置によれば、X線の斜入に関してより正確な補正が可能となり、カウント数の補正の精度をさらに向上させることができる。また、X線検出器12として用いられる半導体検出器ではX線断面積が小さく、X線の斜入の影響が大きくなる傾向にあるため、本応用例に係る放射線診断装置によれば、より補正の効果を増大させることができる。
【0087】
加えて、本応用例に係る放射線診断装置によれば、決定機能447における演算によってスペクトラルイメージング(Spectral imaging)を行うときのエネルギービン間での斜入の影響の差を緩和でき、さらにスペクトラルイメージングの積算であるカウントイメージング(counting imaging)においてもX線の斜入の影響を精度よく補正できることができる。すなわち、本応用例に係る放射線診断装置によれば、エネルギービンによって程度が異なる位置ずれの程度をエネルギービン毎に補正することができるため、エネルギービン間での位置ずれが補正され、正確なスペクトラルイメージングが可能になる。これらのことから、本応用例に係る放射線診断装置によれば、再構成画像の体軸方向の空間分解能を向上させることができる。他の効果については、第1の実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0088】
(変形例)
本変形例は、複数の検出素子を有する複数の小モジュールによりX線検出器12が構成されていることにある。すなわち、本変形例におけるX線検出器12では、複数の検出素子を2次元的に配列させた一体的な構成ではなく、小モジュール単位の検出器を配列することにより、大面積の面検出器が構築される。このとき、小モジュールを設計位置に並べるとき、隣接する2つの小モジュールの間には、必ず隙間が発生する。
【0089】
図4は、本変形例に係り、ミッドプレーンより開口の端部側のX線検出器12の一部を、X線検出器12に斜入するX線とともに示す図である。
図2と
図4との相違は、N番目の読出電極C
Nと、(N+1)番目の読出電極C
N+1との間に隙間があることにある。
図4に示すように、隙間に斜入したX線は、隣接素子を含む読出電極C
Nの周囲の検出素子へ斜入する。本変形例における重み行列における各成分は、
図4に示すように、隙間を考慮して設定される。すなわち、
図4に示すように、読出電極C
Nに対応する第1の検出素子と第2の検出素子との間に隙間がある場合、第1の重みは隙間がない場合に比べて小さく設定され、第2の重みは隙間がない場合に比べて大きく設定される。
【0090】
これらにより、本変形例によれば、第1の実施形態および第1の実施形態の応用例における重み行列における成分(各補正項)は、当該隙間によるX線の斜入の増加を加味して設定することができ、X線検出器12における小モジュール間の隙間による実測の出力の不連続性の補完を、実行することができる。すなわち、本変形例によれば、小モジュール化された複数の検出器モジュールをタイリングし、干渉防止のために検出器モジュール間の隙間が等間隔でないような領域や、検出器モジュール間の隙間により隣接素子へのX線の斜入の影響が大きくなる領域においても、重みの設定によって理想的な出力を算出することができる。本変形例における他の効果については、第1の実施形態および第1の実施形態の応用例と同様なため、説明は省略する。
【0091】
(第2の実施形態)
第1の実施形態のとの相違は、放射線検出器が決定機能447を実行する処理回路を有することにある。以下、説明を具体的にするために、放射線検出器は、PCCT装置に搭載されたX線検出器であるものとする。このとき、
図1に示すPCCT装置1では、処理回路44における決定機能447は不要となる。
【0092】
図5は、本実施形態における放射線検出器に対応するX線検出器20の構成の一例を示す図である。
図5に示すように、X線検出器20は、複数のX線検出素子21と、データ収集回路(DAS)18と、処理回路23とを有する。複数のX線検出素子21は、2次元方向に配列される複数のX線検出素子21は、第1の実施形態と同様なため、説明は省略する。なお、複数のX線検出素子21は、例えば、複数の放射線検出素子に対応する。
【0093】
DAS18は、例えば、複数のX線検出出素子に含まれる第1の検出素子からの出力に基づいて、第1のカウント数を収集し、第1の検出素子の周囲の第2の検出素子からの出力に基づいて、第2のカウント数を収集する。DAS18における構成および機能については、第1の実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0094】
処理回路23は、例えば、プロセッサであり、メモリ41から各プログラムを読み出し、実行することで読み出した各プログラムに対応する機能を実現する。処理回路23のハードウェア構成は、第1の実施形態と同様なため、説明は省略する。処理回路23は、決定機能447により、第1のカウント数と第2のカウント数とに基づいて、第1の検出素子において放射線が最初に到達する表面を放射線の入射位置とした場合の第1の検出素子に関する理想的なカウント数を決定する。決定機能447による具体的な処理内容は、第1の実施形態と同様なため、説明は省略する。また、本実施形態における出力決定処理の処理手順は、第1の実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0095】
第2の実施形態の応用例および変形例としては、第1の実施形態の応用例および変形例を適宜利用可能であるため、説明は省略する。また、第2の実施形態における効果についても、第1の実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0096】
本実施形態における技術的思想を出力決定方法で実現する場合、出力決定方法は、2次元方向に配列された複数の放射線検出素子に含まれる第1の検出素子に関する第1の出力と、第1の検出素子の周囲の第2の検出素子に関する第2の出力とを収集し、第1の出力と第2の出力とに基づいて、第1の検出素子の再構成位置に対応する出力を決定する。本出力決定方法における処理手順および効果は、第1実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0097】
本実施形態における技術的思想を出力決定プログラムで実現する場合、当該出力決定プログラムは、コンピュータに、2次元方向に配列された複数の放射線検出素子に含まれる第1の検出素子に関する第1の出力と、前記第1の検出素子の周囲の第2の検出素子に関する第2の出力とを収集させ、第1の出力と第2の出力とに基づいて、第1の検出素子の再構成位置に対応する出力を決定すること、を実現させる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(ハードディスクなど)、光ディスク(CD-ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記憶媒体に格納して頒布することも可能である。出力決定プログラムにおける処理手順および効果は、第1の実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0098】
以上説明した少なくとも一つの実施形態などによれば、放射線検出器への放射線の斜入による影響を低減することができる。
【0099】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0100】
以上の実施形態等に関し、発明の一側面および選択的な特徴として以下の付記を開示する。
(付記1)
2次元方向に配列された複数の放射線検出素子と、
前記複数の放射線検出素子に含まれる第1の検出素子に関する第1の出力と、第2の検出素子に関する第2の出力とに基づいて、前記第1の検出素子の再構成位置に対応する出力を決定する決定部と、
を備える放射線検出器。
(付記2)
前記決定部は、前記2次元方向のうち前記第1の検出素子と前記第2の検出素子とを含む平面内の方向において、基準線から第1の検出素子までの第1の角度に応じた第1の重みと、前記基準線から前記第2の検出素子までの第2の角度に応じた第2の重みとを用いて、前記再構成位置に対応する出力を決定し、前記第2の重みは、前記複数の第2の検出素子の各々に提供されてもよい。
(付記3)
前記決定部は、前記第1の出力に前記第1の重みを乗算した第1の乗算値と、前記第2の出力に前記第2の重みを乗算した第2の乗算値と、を加算することにより、前記再構成位置に対応する出力を決定してもよい。
(付記4)
前記放射線検出器は、X線コンピュータ断層撮影装置に搭載され、
前記2次元方向は、コーン角方向とファン角方向とであって、
前記放射線はX線であって、
前記第1の検出素子と、前記第2の検出素子とは、前記コーン角方向に沿って配列され、
前記決定部は、基準線から第1の検出素子までの第1のコーン角に応じた前記第1の重みと、前記基準線から第2の検出素子まで第2のコーン角に応じた前記第2の重みとを用いて、前記再構成位置に対応する出力を決定してもよい。
(付記5)
前記第1の出力と前記第2の出力と前記再構成位置に対応する出力とは、前記X線における光子をカウントしたカウント数であってもよい。
(付記6)
前記第1の出力は、前記X線における複数のエネルギービンに応じた複数の第1のカウント数であって、
前記第2の出力は、前記複数のエネルギービンに応じた複数の第2のカウント数であって、
前記決定部は、前記複数のエネルギービンごとに、前記第1の重みと、前記第2の重みと、前記第1のカウント数と、前記第2のカウント数とに基づいて、前記複数のエネルギービンごとの前記再構成位置に対応する出力としてのカウント数を決定してもよい。
(付記7)
前記複数のエネルギービン各々における前記第1の重みは、前記複数のエネルギービンを代表する複数の代表エネルギーにおいてエネルギーが高くなるほど減少し、
前記複数のエネルギービン各々における前記第2の重みは、前記複数の代表エネルギーにおいてエネルギーが高くなるほど増加してもよい。
(付記8)
前記第1の重みと前記第2の重みとは、
前記第1の検出素子および前記第2の検出素子において前記放射線を電子または可視光に変換する材質と、前記材質の厚みと、前記放射線が前記第1の検出素子に入射する第1の角度とに基づいて設定され、
前記第1の角度が大きくなるにしたがって前記第1の重みは減少し、前記第2の重みは増加してもよい。
(付記9)
前記第1の検出素子と前記第2の検出素子との間に隙間がある場合、前記第1の重みは前記隙間がない場合に比べて小さく設定され、前記第2の重みは前記隙間がない場合に比べて大きく設定されてもよい。
(付記10)
付記1乃至10のいずれかに記載の前記放射線検出器を搭載するX線コンピュータ断層撮影装置であって、
前記再構成位置に対応する出力に基づく投影データに対して再構成処理を実行し、再構成画像を生成する再構成処理部を備える、
X線コンピュータ断層撮影装置。
(付記11)
前記再構成位置は、前記出力に基づく再構成の計算で用いられ、かつ前記第1の検出素子の代表点を示す位置であってもよい。
(付記12)
前記複数の放射線検出素子に含まれる第1の検出素子からの出力に基づいて、第1のカウント数を収集し、前記第1の検出素子の周囲の第2の検出素子からの出力に基づいて、第2のカウント数を収集するデータ収集回路をさらに備え、
前記決定部は、前記第1のカウント数と前記第2のカウント数とに基づいて、前記第1の検出素子の再構成の位置に対応するカウント数を決定してもよい。
(付記13)
付記1乃至12のいずれかに記載の前記放射線検出器を備えるX線コンピュータ断層撮影装置。
(付記14)
2次元方向に配列された複数の放射線検出素子に含まれる第1の検出素子に関する第1の出力と、第2の検出素子に関する第2の出力とを収集し、
前記第1の出力と前記第2の出力とに基づいて、前記第1の検出素子の再構成位置に対応する出力を決定する、
ことを備える出力決定方法。
(付記15)
コンピュータに、
2次元方向に配列された複数の放射線検出素子に含まれる第1の検出素子に関する第1の出力と、第2の検出素子に関する第2の出力とを収集し、
前記第1の出力と前記第2の出力とに基づいて、前記第1の検出素子の再構成位置に対応する出力を決定すること、
を実現させる出力決定プログラムを記憶するコンピュータが読取可能な不揮発性記憶媒体。
【符号の説明】
【0101】
1 PCCT装置
11 X線管
12 X線検出器
18 DAS
20 X線検出器
21 複数のX線検出素子
23 処理回路
40 コンソール装置
41 メモリ
42 ディスプレイ
43 入力インターフェース
44 処理回路
100 X線
441 システム制御機能
442 前処理機能
443 再構成処理機能
444 スキャン制御機能
445 画像処理機能
446 表示制御機能
447 決定機能
P 被検体