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特開2023-135628エラストグラフィデバイスおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135628
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】エラストグラフィデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20230921BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023035346
(22)【出願日】2023-03-08
(31)【優先権主張番号】22305298
(32)【優先日】2022-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】17/695,053
(32)【優先日】2022-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520180611
【氏名又は名称】エコセンス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ステファーヌ・オーディエール
(72)【発明者】
【氏名】セシール・バスタール
(72)【発明者】
【氏名】ユゴー・ロレ
(72)【発明者】
【氏名】ベロニク・ミエット
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・サンドラン
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601DD19
4C601DD23
4C601EE11
4C601HH13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】エラストグラフィデバイスおよび方法を提供する。
【解決手段】被験者の身体に対し適用される突出部と、突出部を動かすように配置された低周波数振動子と、少なくとも1つの超音波エミッタと、1つの超音波受信機とを備えるプローブと;電子ユニットとを備える。電子ユニットは、a)プローブが、プローブされる身体の領域の機械的特性の測定を遂行するために、プローブされる領域の正面に正しく位置決めされているか否かを決定するためのガイダンスモードS1において、およびb)測定モードS2において、エラストグラフィデバイスを交互に制御するように構成される。ガイダンスモードにおいて、振動子は、各々がトランジェントで、低周波数の機械的パルスである複数の連続プロービングパルスPRBを送達し、電子ユニットは、プロービングパルスを送信するための、プローブされる領域の適性を表す伝播品質インディケータQを決定する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 被験者の身体(8)に対し適用される突出部(4)と、プローブの突出部(4)を動かすように配置された低周波数振動子(5)と、少なくとも1つの超音波エミッタ(6)と、1つの超音波受信機(6)とを備える、プローブ(2)と、
- a)プローブ(2)が、プローブされる身体の領域(80)の機械的特性の測定を遂行するために、プローブされる領域の正面に正しく位置決めされているか否かを決定するためのガイダンスモード(S1)において、および、b)前記測定を遂行するための測定モード(S2)において、エラストグラフィデバイス(1)が動作するよう、エラストグラフィデバイス(1)を交互に制御するように構成された電子回路を備える電子ユニット(10)とを備え、電子回路は、以下の手順:
〇 ガイダンスモード(S1)中、
・ 電子ユニット(10)が、複数のプロービングパルス(PRB)を連続的におよび繰り返し、被験者の身体に送達するように低周波数振動子(5)を制御し、各プロービングパルスが、トランジェントで、低周波数の機械的パルスであり、
・ プロービングパルスごとに、
電子ユニット(10)が、超音波パルスのシーケンス(Seq_1)を放射するように超音波エミッタ(6)を制御し、超音波受信機(6)によって、応答において受信されたエコー信号を取得して、プロービングパルス(PRB)が、プローブの突出部(4)の正面に位置する被験者の身体(8)のプローブされる領域(80)を通ってどのように伝播するかを追跡し、
電子ユニット(10)が、前記エコー信号のうちの少なくともいくつかから、プロービングパルス(PRB)を送信するための、プローブされる領域(80)の適性を表し、プロービングパルスの伝播に関するプローブされる領域の均一性を表す伝播品質インディケータ(Q、101)を決定し、
・ 電子ユニット(10)が、ガイダンス情報(Q、Ql、101)を送信するようにエラストグラフィデバイス(1)を制御し、ガイダンス情報が、伝播品質インディケータ(Q)に基づいており、
〇 測定モード中、
・ 電子ユニット(10)が、プローブされる領域に測定パルス(MSR)を送達するように低周波数振動子(5)を制御し、測定パルスが、複数のプロービングパルス(PRB)の各々の振幅(A)よりも高い振幅(A)を有するトランジェントで低周波数の機械的パルスであり、
・ 電子ユニット(10)が、超音波パルスのシーケンス(Seq_2)を放射するように超音波エミッタ(6)を制御し、超音波受信機(6)によって、応答において受信されたエコー信号を取得して、測定パルス(MSR)が、プローブされる領域(80)を通ってどのように伝播するかを追跡し、
・ 電子ユニット(10)は、前記エコー信号のうちの少なくともいくつかから、前記機械的特性(E)を決定し、前記機械的特性が、低周波数の弾性波伝播に関する、
を実行するように構成される、
エラストグラフィデバイス(1)。
【請求項2】
電子ユニット(10)が、前記ガイダンスモード(S1)において、複数のプロービングパルス(PRB)のうちの少なくともいくつかについて、プロービングパルスの中心周波数が、前記測定モード(S2)において送達される測定パルスの中心周波数よりも低くなるように振動子(5)を制御するように構成される、請求項1に記載のエラストグラフィデバイス(1)。
【請求項3】
肝臓を特徴付けるように構成され、電子ユニット(10)が、前記ガイダンスモード(S1)において、複数のプロービングパルス(PRB)のうちの少なくともいくつかについて、プロービングパルスの中心周波数が20Hz~45Hzであるのに対し、前記測定モード(S2)において、測定パルス(MSR)の中心周波数が50Hz~200Hzであるように振動子(5)を制御するように構成される、請求項1または2に記載のエラストグラフィデバイス(1)。
【請求項4】
脾臓を特徴付けるように構成され、電子ユニットが、前記ガイダンスモードにおいて、複数のプロービングパルスのうちの少なくともいくつかについて、プロービングパルスの中心周波数が20Hz~90Hzであるのに対し、前記測定モードにおいて、測定パルスの中心周波数が100Hz~200Hzであるように振動子(5)を制御するように構成される、請求項1または2に記載のエラストグラフィデバイス(1)。
【請求項5】
電子ユニット(10)が、前記ガイダンスモード(S1)において、複数のプロービングパルス(PRB)のうちの少なくともいくつかについて、プローブの突出部(4)の変位の振幅(A)が、前記測定モード(S2)において測定パルス(MSR)が送達される間の突出部の変位の振幅(A)よりも少なくとも20%低くなるように振動子(5)を制御するように構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載のエラストグラフィデバイス(1)。
【請求項6】
電子ユニット(10)が、前記ガイダンスモード(S1)において、複数のプロービングパルス(PRB)のうちの少なくともいくつかについて、プロービングパルスがどのように伝播するかを追跡するために超音波パルス(USP)が放射される繰り返し率が、測定パルス(MSR)がどのように伝播するかを追跡するために測定モード(S2)中に放射される超音波パルス(USP)の繰り返し率よりも低くなるように超音波エミッタ(6)を制御するように構成される、請求項1から5のいずれか一項に記載のエラストグラフィデバイス(1)。
【請求項7】
電子ユニット(10)が、前記ガイダンスモード(S2)において、プロービングパルス(PRB)が毎秒数パルスのレートで送達されるように振動子を制御するように構成される、請求項1から6のいずれか一項に記載のエラストグラフィデバイス(1)。
【請求項8】
電子ユニット(10)が、前記ガイダンスモードにおいて、複数のプロービングパルスのうちの少なくともいくつかについて、被験者の身体へのプロービングパルスの送信と、対応するガイダンス情報の送信との間のタイムラグが、0.5秒未満および/またはプロービングパルス(PRB)が繰り返される繰り返し周期(T)未満であるように構成される、請求項1から7のいずれか一項に記載のエラストグラフィデバイス(1)。
【請求項9】
電子ユニット(10)が、前記ガイダンスモードにおいて、複数のプロービングパルスの各々について、電子ユニットが、時間(t)に応じて、およびプローブされる領域(80)内の深さ(z)に応じて、プローブされる領域(80)内の組織歪みを表す組織歪みデータを決定するように構成され、組織歪みデータは、プロービングパルス(PRB)がプローブされた領域を通ってどのように伝播するかを追跡するために取得されたエコー信号のうちの少なくともいくつかから決定される、請求項1から8のいずれか一項に記載のエラストグラフィデバイス(1)。
【請求項10】
前記ガイダンスモードにおいて、電子ユニット(10)は、組織歪みデータに基づいて伝播品質インディケータ(Q)を決定する、請求項9に記載のエラストグラフィデバイス(1)。
【請求項11】
前記ガイダンスモードにおいて、複数のプロービングパルスの各々について、
- 電子ユニット(10)が、プローブされる領域(80)内の深さ(z)に応じて、プロービングパルス飛行時間を決定し、プロービングパルス飛行時間が、組織歪みデータから決定され、
- 電子ユニット(10)が、プロービングパルス飛行時間が線形および平滑に、深さ(z)と共に変動するか否かを指定するように伝播品質インディケータ(Q)を決定する、請求項10に記載のエラストグラフィデバイス(1)。
【請求項12】
前記ガイダンスモードにおいて、電子ユニット(10)は、複数のプロービングパルス(PRB)のうちのいくつかにそれぞれ対応する組織歪みデータを平均することによって、平均された組織歪みデータを計算するように構成される、請求項9から11のいずれか一項に記載のエラストグラフィデバイス(1)。
【請求項13】
前記ガイダンスモードにおいて、電子ユニット(10)が、平均された組織歪みデータを時間(t)および深さ(z)に応じて表す、平均されたエラストグラム(101)を表示するように表示デバイスを制御するように構成される、請求項12に記載のエラストグラフィデバイス(1)。
【請求項14】
電子ユニット(10)が、前記測定モードにおいて:
- 電子ユニット(10)が、前記測定パルス(MSR)に加えて、1つ以上の後続の追加の測定パルスを被験者の身体に送達するように振動子(5)を制御し、各測定パルスが、トランジェントで低周波数の機械的パルスであり、
- 測定パルスごとに、電子ユニットが、各測定パルスがプローブされる領域を通ってどのように伝播するかを追跡するために取得されたエコー信号から、プローブされる領域(80)内の組織歪みデータを決定し、
- 電子ユニットが、被験者の身体に送達された異なる測定パルスにそれぞれ関連付けられた組織歪みデータを考慮に入れて、平均することによって、低周波数の弾性波伝播に関する前記機械的特性(E)を決定する
ように構成される、請求項1から13のいずれか一項に記載のエラストグラフィデバイス(1)。
【請求項15】
電子ユニット(10)が、複数のプロービングパルス(PRB)のうちの少なくとも1つによってプローブされる、被験者の身体のプローブされる領域(80)の特性に基づいて、被験者の身体に送達されるべき測定パルス(MSR)の中心周波数を調整するように構成される、請求項1から14のいずれか一項に記載のエラストグラフィデバイス(1)。
【請求項16】
前記特性が、プロービングパルス(PRB)が前記プローブされる領域(80)内の伝播中に受ける減衰を表し、電子ユニット(10)が、領域内の減衰が高くなるほど高くなるように測定パルス(MSR)の中心周波数を調整するように構成される、請求項15に記載のエラストグラフィデバイス(1)。
【請求項17】
電子ユニット(10)が:
- ガイダンスモード中に、複数のプロービングパルス(PRB)のうちの少なくともいくつかのそれぞれの後に:
プローブ(2)の突出部(4)の変位が実質的にない経過時間(T’)と、
次に、経時的に連続して数回繰り返される同じ振動パターンを含む周期的機械振動(PMV)とが続き、周期的機械振動中に振動子のダウンタイムが実質的に伴わない、
ように振動子(5)を制御し、
- 超音波パルスのシーケンスを放射し、応答において受信されたエコー信号を取得して、周期的機械振動(PMV)が、プローブの突出部の正面に位置する被験者の身体(8)のプローブされる領域(80)を通ってどのように伝播するかを追跡し、これらのエコー信号の少なくともいくつかから、周期的振動伝播品質レベルを決定し、
- 周期的振動伝播品質レベルの伝播品質インディケータ(Q)との比較に基づいて、縁部近接度インディケータを決定し、縁部近接度インディケータを送信する
ように構成される、請求項1から16のいずれか一項に記載のエラストグラフィデバイス(1)。
【請求項18】
エラストグラフィ方法であって、
被験者の身体に対し適用される突出部と、プローブの突出部を動かすように配置された低周波数振動子(5)と、少なくとも1つの超音波エミッタと、1つの超音波受信機とを含むプローブ(2)と、a)プローブが、プローブされる身体の領域の機械的特性の測定を遂行するために、プローブされる領域の正面に正しく位置決めされているか否かを決定するためのガイダンスモードにおいて、および、b)前記測定を遂行するための測定モードにおいて、エラストグラフィデバイスが動作するよう、エラストグラフィデバイスを交互に制御するように構成された電子回路を備える電子ユニット(10)とを備える、エラストグラフィデバイス(1)によって実施され、
- 方法は:
〇 ガイダンスモードを遂行することであって、ガイダンスモードは:
・ 電子ユニットによって、複数のプロービングパルスを連続的におよび繰り返し、被験者の身体に送達するように振動子を制御することであって、各プロービングパルスが、トランジェントで、低周波数の機械的パルスである、ことと、
・ プロービングパルスごとに、
電子ユニットによって、超音波パルスのシーケンスを放射するように超音波エミッタを制御し、超音波受信機によって、エコー信号を取得して、プロービングパルスが、プローブの突出部の正面に位置する被験者の身体のプローブされる領域を通ってどのように伝播するかを追跡すること、
電子ユニットによって、前記エコー信号のうちの少なくともいくつかから、プロービングパルスを送信するための、プローブされる領域の適性を表し、プロービングパルスの伝播に関するプローブされる領域の均一性を表す伝播品質インディケータを決定すること、
・ ガイダンス情報を送信することであって、ガイダンス情報が、伝播品質インディケータに基づいている、こと
を含む、ことと、次に、
〇 測定モードを遂行することであって、測定モードは:
・ 電子ユニットによって、被験者の身体に測定パルスを送達するように振動子を制御することであって、測定パルスが、複数のプロービングパルスの各々の振幅よりも高い振幅を有するトランジェントで低周波数の機械的パルスである、ことと、
・ 電子ユニットによって、超音波パルスのシーケンスを放射するように超音波エミッタを制御し、超音波受信機によって、エコー信号を取得して、測定パルスが、プローブの突出部の正面に位置する被験者の身体のプローブされる領域を通ってどのように伝播するかを追跡することと、
・ 電子ユニットによって、前記エコー信号のうちの少なくともいくつかから、低周波数の弾性波伝播に関する被験者の身体の前記領域の機械的特性を決定することと
を含む、ことと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示される技術は、エラストグラフィデバイスおよび方法に関する。開示される技術は、より詳細には、被験者の身体に低周波数の機械的パルスを送達するための低周波数振動子と、超音波パルスを放射し、対応するエコーを受信して、低周波数の機械的パルスが被験者の身体内をどのように進行したかを追跡し、それによってこのように検査された被験者の身体の領域における組織の硬さを特徴付けるように準備された少なくとも1つの超音波エミッタおよび1つの超音波受信機とを備えるプローブを備えるエラストグラフィデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、振動制御されたトランジェントエラストグラフィ(以下、VCTE:Vibration-Controllerd Transient Elastography)によって測定される肝臓の硬さは、医療従事者が、肝臓の疾患または損傷を検出または特徴付け、より一般的には、被験者の肝臓の状態を監視するのに役立つ非常に有用なツールであることが示されている。
【0003】
よく知られているトランジェントエラストグラフィシステムは、FIBROSCAN(R)システム(組織および臓器の硬さ(または弾性)と超音波減衰とを測定するための超音波ベースのエラストグラフィ装置)であり、フランスのパリのEchosensSAによって製造および販売されており、オペレータが、肝臓または他の臓器の硬さを非侵襲的に測定し、臓器の健康を評価することを可能にする。
【0004】
FIBROSCAN(R)システムでは、オペレータは、直径がかなり小さい(通常、5~10mmに含まれる)プローブの先端部を、被験者の肝臓の予想されるエリアの正面に、被験者の身体に接触させて設置する。次に、オペレータはボタンを押して、プローブのヘッドに、トランジェントで、低周波数の機械的パルス(このパルスのスペクトルは、通常10~500ヘルツに含まれる周波数を中心とする)を、被験者に送達させる。このパルスは、被験者の身体内を進行する弾性波を生成する。被験者の身体に接触してプローブの先端部に取り付けられた超音波トランスデューサが、次に、いくつかの超音波ショットを、例えば6キロヘルツの高い繰り返し率で組織に放射する。放射された様々な超音波ショットの後方散乱に対応するエコー信号が、通過する弾性波によって引き起こされる組織の僅かな動きを追跡するためにプローブによって取得される。この追跡は、連続的なエコー信号に適用される相関技法を用いて行われる。検出された動きにより、深さzに応じておよびtに応じての双方で組織変形を示す弾性波伝播画像を合成することが可能になり、この画像は、「エラストグラム」と呼ばれることもある(図1)。
【0005】
FIBROSCAN(R)プローブの先端部によって送達される機械的パルスは、せん断波と圧縮波との両方を生成する。換言すれば、上述した弾性波は、せん断波と圧縮波とを組み合わせる。しかし、これらの2つの波は伝播速度が大きく異なり、機械的励起のトランジェントな性質により、簡単に、時間的に分離され、弾性波伝播画像において識別され得る。例えば、図1を参照すると、この図は、弾性波伝播画像105を示している。図1では、圧縮波は参照符号105Cによって識別されるのに対し、はるかに遅いせん断波は参照符号105Sによって識別される。また、図1には、25mmおよび65mmにおける2本の破線で囲まれた関心領域(ROI)も示され、これは、肝臓が通常位置する患者の皮膚の下の深さに対応している。したがって、この弾性波伝播画像は、特徴付けられる組織におけるせん断波の伝播速度を正確に決定するために用いることができ、そこからこの組織の硬さを導出することができる。次に、これらの硬さの結果がオペレータに提供される。
【0006】
FIBROSCAN(R)技術は良好に機能するが、オペレータは、彼がプローブを均一な肝臓組織のエリアの正面に正しく位置決めしたか否か、または彼がプローブの照準を肝臓に定めているか否かさえ、知ることが難しい場合がある。肝臓の前にある肋骨、血管、液体ポケット(腹水)、または肝臓組織の嚢胞もしくは腫瘍等の不均一な組織の他のアーチファクトにより、組織の硬さと超音波減衰との両方の誤った測定値が発生する可能性がある。加えて、オペレータは、実際にはプローブが肺または他の内臓に過度に近いときに、彼/彼女がプローブの照準を肝臓に定めていると確信する場合がある。その結果、システムは精確な測定値を得られない場合がある。
【0007】
本出願人に譲渡された特許出願である文書、米国特許出願第2021/022709号は、そのようなトランジェントエラストグラフィデバイスのオペレータが適切なプローブ位置を見つけるのに役立つための方法を説明している。この方法によれば、プローブの振動子は、まず、連続した周期的機械振動、例えば正弦波振動を、プローブが方向付けられた被験者の身体の領域をプローブするために送達する。この正弦波振動がプローブされる領域を通ってどのように進行するかを追跡ために、超音波パルスが放射され、対応するエコー信号が取得される。次に、時間tおよび深さzに応じてこの振動によって生じる組織の周期的変形を表す「ハーモニックエラストグラム」が、計算され、表示される。これは、この正弦波振動が当該領域においてどのように進行するかを示す。米国特許出願第2021/022709号の図16のもの等の、かなり明確に定義された対角ストライプ(複数可)を見分けることができるハーモニックエラストグラムは、プローブの正面の媒体が(弾性波の伝播に関して)均一であり、このため、プローブがおそらく良好に位置決めされていることを示す。反対に、(米国特許出願第2021/022709号の図17のもの等の、)対角ストライプを見分けることができない無秩序な伝播を示すハーモニックエラストグラムは、プローブが適切に位置決めされていないことを示す。このため、被験者の身体にこのハーモニック振動を加え、(超音波エコー相関を用いて)対応する組織歪みを視覚化することは、オペレータがプローブの適切な位置および方向を見つけるのに役立つ。そのような位置が見つかると、オペレータは、上記で説明したように、トランジェントな振動制御されたトランジェントエラストグラフィ測定をトリガする。
【0008】
米国特許出願第2021/022709号に説明される周期的振動ガイダンス方法は、(AモードおよびMモード超音波撮像に基づく従来のガイダンスと比較して、)FIBROSCAN(R)のようなVCTEシステムの動作可能性を実質的に改善し、満足の行くガイダンスを提供する。特に、振動の連続的な性質に起因して、検査下の被験者の不快感がなく、ガイダンスを継続することができる。
【0009】
それでもなお、本発明者らは、いくつかの状況において、ハーモニック振動プロービングによってこのように取得したガイダンス情報により、良好な品質のトランジェント振動エラストグラフィ測定が実際に遂行され得る間、プローブが適切に位置決めされないという結論が導かれることを観測した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2021/022709号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2020/390421号明細書
【特許文献3】米国特許第9636085号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】「The role of the coupling term in transient elastography.」Sandrin,L.,D.Cassereau and M.Fink、(2004)、J Acoust Soc Am 115(1):73-83
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
この文脈において、開示される技術は、エラストグラフィデバイスであって:
- 被験者の身体に対し適用される突出部と、プローブの突出部を動かすように配置された低周波数振動子と、少なくとも1つの超音波エミッタと、1つの超音波受信機とを備えるプローブと、
- a)プローブが、プローブされる身体の領域の機械的特性の測定を遂行するために、プローブされる領域の正面に正しく位置決めされているか否かを決定するためのガイダンスモードにおいて、および、b)前記測定を遂行するための測定モードにおいて、エラストグラフィデバイスが動作するよう、エラストグラフィデバイスを交互に制御するように構成された電子回路を備える電子ユニットとを備え、電子回路は、以下の手順:
- ガイダンスモード中、
- 電子ユニットが、複数のプロービングパルスを連続的におよび繰り返し、被験者の身体に送達するように低周波数振動子(5)を制御し、各プロービングパルスが、トランジェントで、低周波数の機械的パルスであり、
- プロービングパルスごとに、
- 電子ユニットが、超音波パルスのシーケンスを放射するように超音波エミッタを制御し、超音波受信機によって、応答において受信されたエコー信号を取得して、プロービングパルスが、プローブの突出部の正面に位置する被験者の身体のプローブされる領域を通ってどのように伝播するかを追跡し、
- 電子ユニットが、前記エコー信号のうちの少なくともいくつかから、プロービングパルスを送信するための、プローブされる領域の適性を表し、プロービングパルスの伝播に関するプローブされる領域の均一性を表す伝播品質インディケータを決定し、
- 電子ユニットが、ガイダンス情報を送信するようにエラストグラフィデバイスを制御し、ガイダンス情報が、伝播品質インディケータに基づいており、
- 測定モード中、
- 電子ユニットが、プローブされる領域に測定パルスを送達するように低周波数振動子を制御し、測定パルスが、複数のプロービングパルスの各々の振幅よりも高い振幅を有するトランジェントで低周波数の機械的パルスであり、
- 電子ユニットが、超音波パルスのシーケンスを放射するように超音波エミッタを制御し、超音波受信機によって、応答において受信されたエコー信号を取得して、測定パルスが、プローブされる領域を通ってどのように伝播するかを追跡し、
- 電子ユニットが、前記エコー信号のうちの少なくともいくつかから、前記機械的特性を決定し、前記機械的特性は、低周波数の弾性波伝播に関する、エラストグラフィデバイスを対象とする
を実行するように構成される。
【0013】
このデバイスを用いると、ガイダンスモードにおいて動作しているとき、プローブの正面に位置する領域は、(ハーモニック振動の代わりに、)数回繰り返される、振幅が低減されたトランジェントで機械的パルスによってプローブされる。このため、ガイダンスモードにあるとき、被験者の身体は、最終トランジェント測定自体が遂行される条件に近い条件でプローブされる。このため、このデバイスにより得られるガイダンス情報は、検討されるプローブの位置について、取得することができる測定値の品質を正確に予め示し、このため、非常に有用なガイダンス情報を構成する。
【0014】
特に、このトランジェントパルスベースのガイダンスは、ハーモニック振動ベースのガイダンスよりも測定自体に類似し、このため、より良好なガイダンスを可能にする。
【0015】
ハーモニック振動ベースのガイダンスは、いくつかの利点を有する(特に、トランジェントパルスベースのガイダンスよりも容易に実施し得る)が、このように取得されたガイダンス「ハーモニックエラストグラム」は、組織内の弾性波反射によって歪む可能性があり、これにより、図2に示すもののような定常波パターンが作り出される場合がある。
【0016】
いくつかの状況において、反射に対するこの感度は(例えば、プローブ軸上の血管の存在を検出するのに)有用である。しかし、他の状況では、反射に対するこの高い感度(ダウンタイムなしの振動の連続した繰り返される性質により強化される)は、「ハーモニックエラストグラム」の劣化につながるのに対し、プローブの位置決めは、実際に、良好な品質のトランジェント測定を可能にする。これは、例えば、プローブ軸が被験者の肝臓の縁部の近くを通るときに生じる(図4および図5を参照)。そのような場合、肝臓境界の近接性により、「ハーモニックエラストグラム」を劣化させる定常波パターンが作り出される一方で、良好なトランジェントエラストグラムを取得することができる。
【0017】
これは図2および図3によって示される。図2は、プローブ先端部がファントム(機械的特性が肝臓のものに近い合成弾性媒体)の側壁の近くに位置決めされた状態で、ファントムに25Hzハーモニック振動を適用することによって得られるハーモニックエラストグラムを示す。図3は、図2と同一のプローブの位置決めで同じファントムに25Hz正弦波の単一の周期を含むトランジェント振動を適用することによって得られるエラストグラムを示す。超音波パルス繰り返し率は、双方の取得について、2kHzである。図2および図3の比較は、トランジェントパルスガイダンスが、ハーモニック振動ベースのガイダンスを用いるよりも感度の高い、適切な位置決め検出をもたらすことを明確に示す。
【0018】
デバイスがガイダンスモードで動作するときに送達されるプロービングパルスは、関心対象の機械的特性の、通常、(例えば、プロービングパルスごとの)組織の硬さの、一種の事前測定を遂行するためにも用いられてもよい。組織の硬さのこの仮推定は、オペレータがプローブを位置決めするのに役立つことができる(例えば、所与の間隔に属する仮硬さ値は、プローブがおそらく肝臓の正面に位置決めされていることを確かにする)。トランジェントで機械的パルスを用いて行われる組織の硬さの事前測定は、一般的に、(「ハーモニックエラストグラム」が高品質の場合であっても)休止周期なしで周期的機械振動を用いて遂行されるものよりも正確である。実際に、周期的機械振動を用いると、(振動の繰り返しの休止なしの性質に起因して)特徴付けられる媒体におけるせん断波と圧縮波と間の混合が生じ、ハーモニックエラストグラムにおいて観測される弾性波は、伝播速度が非常に異なるせん断波および圧縮波を混合し、これにより、組織の硬さのバイアスのかかった推定につながる。このため、トランジェントパルスベースのガイダンスにより、ハーモニック振動ベースのガイダンスよりも組織の硬さの正確な事前推定が可能になる。
【0019】
開示されるデバイスを用いて、各プロービングパルスのトランジェントな性質により、所与のプロービングパルスについて決定された伝播品質インディケータの値は、時間的観点から、このプロービングパルスに厳密に対応する(周期的振動の連続する周期の間の混合を伴わない)。伝播品質インディケータは、プロービングパルスを送信するための領域の適性、およびこの伝播に対するこの領域の均一性を表す。このため、このトランジェントパルスガイダンス方法を用いると、伝播品質の(および場合によっては組織の硬さの事前推定の)時間監視が、連続ハーモニック振動の場合よりも正確である。
【0020】
さらに、プロービングパルスはトランジェントであり、互いの間にダウンタイムを有するため、プロービングパルスがどのように進行するかを追跡するために放射される超音波パルスは、総持続時間のうち、ガイダンスモードが用いられている一部分の間にのみ放射することができ、これにより、放射される超音波の全体品質が低減し、したがって、患者に送達される平均音響パワー全体が低減する。
【0021】
さらに、プロービングパルスはトランジェントであり、互いの間にダウンタイムを有するため、低周波数振動子が必要とするパワーがより低く、駆動する増幅器が受ける加熱がより少なく、したがって、必要とする散逸手段がより少ない。
【0022】
トランジェントパルスとは、一時的な機械的振動を意味する。(振動子により引き起こされる)実質的な運動突出部が存在するアクティブ時間であるパルスの持続時間の後に、突出部の運動がないかまたは実質的にないダウンタイムが続く。運動が実質的にないとは、例えば、このダウンタイム中、振動子によって引き起こされ得る突出部の変位が、突出部のピーク変位の1/10未満、または更には1/20未満に留まることを意味する。上述したトランジェントパルス(プロービングパルスまたは測定パルスのいずれか)について、パルスのアクティブ時間を、このアクティブ時間と後続のダウンタイムとの和によって除算したものに等しい作動比率は、通常50%未満、または更には20%未満である。当該のダウンタイムは、存在する場合、アクティブ時間の終了と、突出部の後続の大きな運動(例えば、後続のトランジェントプロービングパルスに対応する)との間の持続時間である。
【0023】
低周波数のパルスとは、パルスの中心周波数が500Hz未満または更には250Hz未満であることを意味する。パルスの中心周波数は、例えば、そのパルスに対応する変位のスペクトルのもしくは変位の速度のスペクトルの平均もしくは中央周波数であるか、またはこのスペクトルの主要ピークのピーク周波数であるか、またはスペクトルの-3dBもしくは-6dBカットオフ周波数の平均である。
【0024】
本技術によるエラストグラフィデバイスにおいて、電子ユニットは、ガイダンスモードにおいて、複数のプロービングパルスのうちの少なくともいくつかについて、プロービングパルスの中心周波数が、測定モードにおいて送達される測定パルスの中心周波数未満であるように振動子を制御するように構成することができる。例えば、これらのプロービングパルスの中心周波数は、測定パルスの中心周波数よりも少なくとも5%低くすることができるか、または更には10もしくは20%低く(または場合によっては、少なくとも50%低く)することができる。
【0025】
デバイスは、特に、肝臓を特徴付けるように構成することができ、電子ユニットは、ガイダンスモードにおいて、複数のプロービングパルスのうちの少なくともいくつかについて、プロービングパルスの中心周波数が20Hz~45Hzであるのに対し、測定モードにおいて、測定パルスの中心周波数が例えば50Hz~200Hzであるように振動子を制御するように構成される。例として、各プロービングパルスの中心周波数は、40または45Hzとすることができるのに対し、測定パルスの中心周波数は50Hzである。
【0026】
デバイスは、脾臓を特徴付けるように構成することもでき、電子ユニットは、ガイダンスモードにおいて、複数のプロービングパルスのうちの少なくともいくつかについて、プロービングパルスの中心周波数が20Hz~90Hzであるのに対し、測定モードでは、測定パルスの中心周波数が100Hz~200Hzであるように振動子を制御するように構成される。例として、各プロービングパルスの中心周波数は、80Hzとすることができるのに対し、測定パルスの中心周波数は100Hzである。
【0027】
プロービングパルスの中心周波数を低減させることにより、これらのパルスがプローブされる媒体内により深く伝播することが可能になる。実際、プロービングパルスの伝播深さは、肝臓または類似の媒体のような粘弾性媒体において、周波数が減少するとともに増大する。プロービングパルスの伝播深さを増大させることは、頻繁に繰り返されるこれらのプロービングパルスが検査下の被験者にとって不快にならないように意図的に制限された、それらの小さい振幅を補償することを可能にするため有利である。
【0028】
さらに、プロービングパルスの中心周波数を低減させることは、プロービングパルスの不快でない性質に寄与する。実際に、被験者が受けるパルスの強度は、パルス振幅およびパルス中心周波数の双方に依存する(変位の速度、および更には被験者が受ける加速が、パルス振幅およびその周波数の双方に依存するため)。
【0029】
反対に、非常に低い周波数は、測定パルスにとって望ましくないことに留意されたい。実際に、周波数が減少するとき、波長が増大し、回折効果も増大する。そして、回折効果の存在により、見かけのせん断波速度値が増大し、ひいては硬さの過剰推定を引き起こし、これは、以下の論文:「The role of the coupling term in transient elastography.」Sandrin,L.,D.Cassereau and M.Fink、(2004)、J Acoust Soc Am 115(1):73-83において説明されるように、診断目的に対して望ましくない。このため、測定自体に関して、低周波数または超低周波数を用いることは望ましくない。プロービングパルスの場合、超低周波数プロービングパルスを用いているとき、(事前)測定精度も低減するが、プロービングパルスは通例、組織の機械的特性の最終値(組織の状態を特徴付けるために用いることができる組織の硬さ等の値)を得るために用いられないため、この精度の低減はあまり問題とならない。そしてこのため、最終的に、プロービングパルスが、測定パルスの中心周波数よりも低い中心周波数を用いて、そのような低いプロービング周波数の(上の段落で述べた)利点を利用することが望ましい。
【0030】
プロービングパルスの振幅に関して、ガイダンスモードにおいて、複数のプロービングパルスのうちの少なくともいくつかについて、プローブの突出部の変位の振幅は、前記測定モードにおいて送達される測定パルス中の突出部の変位の振幅よりも、少なくとも10もしくは20%、または更には50%低いかまたは下回り得る。プローブの突出部4の変位のピーク・ツー・ピーク振幅は、例えば、測定パルスについて、1~4mmとすることができる。そして、プロービングパルスのうちの少なくともいくつかについて、0.1~2mmとすることができる。
【0031】
本技術によるエラストグラフィデバイスにおいて、電子ユニットは、ガイダンスモードにおいて、複数のプロービングパルスのうちのいくつかについて、プロービングパルスがどのように伝播するかを追跡するために超音波パルスが放射される繰り返し率が、測定パルスがどのように伝播するかを追跡するために測定モード中に放射される超音波パルスの繰り返し率よりも低く(例えば、少なくとも20%低く、場合によっては少なくとも2分の1または3分の1に)なるように超音波エミッタを制御するように構成することもできる。
【0032】
例えば、測定パルスは、2~10kHzの超音波パルス繰り返し率で追跡することができる。プロービングパルスはそれぞれ、0.5~2kHz、または更には0.5~3kHzの超音波パルス繰り返し率で追跡される。例えば、肝臓を特徴付けるときに、6kHzの超音波(以下、U/S)パルス繰り返し率(または代替的に、脾臓の場合、8kHzのパルス繰り返し率)を用いて測定パルスを追跡することができるのに対し、1、2または3kHzのU/Sパルス繰り返し率を用いて各プロービングパルスを追跡することができる。
【0033】
プロービングパルス(プロービングパルス自体は、多くの場合、通常毎秒数回繰り返される)に対し超音波パルスを低減することにより、エラストグラフィデバイスによって放射される全体音響出力パワーを低減し、計算時間を低減することが可能になる。これは、超音波パルスの総数が、同じ持続時間をカバーするように低下し、これにより、ガイダンスモードにあるとき、処理される必要があるライン数は最終的に低減するため、有利である。またこれは、患者が検査中に曝される音響出力パワーの量を低減し、電子デバイスによる超音波ラディエーションに関する規制(診断超音波デバイスにおけるIEC60601-2-37規格によって指定されるもの等)を満たすのに役立つため、有利である。音響出力パワーを低減することは、特殊な超音波撮像認証を有しないオペレータによってデバイスが用いられるために重要である。これに関して、高い超音波パルス繰り返し率は、プロービングパルスの追跡に重要ではないことに留意されたく、なぜなら、測定パルス自体と比較して、これらのパルスには、より小さい時間および空間分解能が必要とされないためである。さらに、プロービングパルスの中心周波数は、通常、測定パルスの中心周波数よりも低く、このため、より低い超音波パルス繰り返し率を用いて、(必ずしも追跡分解能を低減することなく)これらを追跡することができる。実際のところ、プロービングパルスの振幅がより低いと仮定すると、相関技法を用いて連続超音波パルス間で測定されるのに十分な変位を組織が受けるようにするために、連続超音波パルス間のより大きな時間差を有することが望ましい。エラストグラフィデバイスによって放射される全体音響出力パワーを低減するために、ガイダンスモードにあるときに放射されるU/Sパルスは、測定モードを用いているときに放射される形状と異なる形状を有することができる(発せられる音響パワーに関してより望ましい)。
【0034】
本技術によるエラストグラフィデバイスにおいて、電子ユニットは、ガイダンスモードにおいて、プロービングパルスが毎秒数パルス、例えば、毎秒5つを上回るプロービングパルスのレート(実際は、通常、毎秒10パルスのレートがそのようなガイダンスに十分適している)で送達されるように振動子を制御するように構成することができる。
【0035】
これにより、オペレータに対する、ほぼ継続的なガイダンスが可能になる。
【0036】
電子ユニットはまた、ガイダンスモードにおいて、複数のプロービングパルスのうちの少なくともいくつかについて、被験者の身体へのプロービングパルスの送信と、対応するガイダンス情報の送信との間のタイムラグが、0.5秒未満もしくは更には0.3もしくは0.2秒未満、および/またはプロービングパルスが繰り返される繰り返し周期未満であるように構成することができる。
【0037】
このため、オペレータは、ガイダンスモードにあるとき、ほぼ継続的に、リアルタイムでガイドされる。
【0038】
上記で提示された様々な特徴により、トランジェントパルスガイダンスは、一見予期され得る不快なまたは不連続なガイダンスの欠点を被らず、従来技術と比較して多数の改善を提供する。
【0039】
さらに、トランジェントプロービングパルスに基づくそのようなリアルタイムガイダンスは、エコーの各シリーズのオンザフライ処理を必要とし、換言すれば、プロービングパルスごとに毎秒数回のエラストグラムのオンザフライの決定を必要とするため、計算の観点から非常に困難であることに留意されたい。
【0040】
これを達成するために、電子ユニットは、例えば、2つのプロセッサ:
- 相関技法を用いて取得されたエコー信号を処理して、組織歪み、より一般的には組織のモーションパラメータを(時間および深さに応じて)決定するための、FPGA(「フィールドプログラマブルゲートアレイ」)のような第1の専用プロセッサと、
- 第2の汎用プロセッサと
を含むことができる。
【0041】
このアーキテクチャは、特に、第1のプロセッサによって達成される(前)処理により、汎用プロセッサに送信されるデータ量が、実質的に(通常、10分の1または更に小さく)低減し、これにより、対応する伝送時間が低減するため、エコー信号の処理を顕著に加速する。そして、実際に、この伝送時間は、多くの場合、エコー信号の全体処理の最も時間を制限するステップである。
【0042】
さらに、そのような専用プロセッサにおいて当該の相関技法を実施することは、それ自体困難である。実際に、プローブの先端部またはヘッドの変位は、望ましくは、エコー信号を互いに相関付ける前に補償され、この変位を補償するための通例の技法(強力なエコー検出およびフーリエ領域補償に基づく)は容易でないか、または更にはそのような専用プロセッサにおいて実施するのが不可能である。そのような変位補償を達成するために、本出願人に譲受された未公開の米国特許出願第17/371,790号に説明されているように、プローブの先端部またはヘッドの変位に応じて、超音波パルス放射および/または受信時間を、例えば事前に補償することができる(放射および/または受信時)。
【0043】
このため、本出願人は、上記で提示したトランジェントパルスベースのガイダンス方法をリアルタイムで実施することが、特殊な開発労力を必要とする場合があり、作業パラメータの単なる調節に対応しないことを強調する。
【0044】
上述した超音波信号の処理の加速により、エラストグラムの信号対雑音比(SNR)を改善するためにいくつかの連続プロービング(または測定)パルスについて組織歪みを平均することが可能になる(この加速が毎秒いくつかのエラストグラムの決定を可能にするため)。これを、例えば、ガイダンスモードにあるとき、表示目的で用いることができる。例えば、プロービングパルスは、毎秒10パルス(またはそれより多く)のレートで繰り返すことができ、3、4または5つの連続エラストグラム(それぞれ、3、4または5つの連続プロービングパルスに対応する)を平均することによって計算されるローリング平均に対応する平均されたエラストグラムを表示することができる。
【0045】
これは、測定目的で用いることもできる。実際に、測定パルスを数回、非常に高速に行うとき、媒体はパルス間で(プローブに対し、または被験者の他の臓器に対し)大きく動くことができず、これにより平均化が可能になり、したがって、この測定の信号対雑音比が改善する。例えば、毎秒10パルスのレートで4つの測定パルスを行うことができる。したがって、測定パルスは、400ms未満で行われる。各測定パルスは、エラストグラムをリトリーブするために処理される。せん断速度推定のアルゴリズムは、4つのエラストグラムの和または平均に適用される。別の可能性は、例えば、多数の測定を累積するために、数秒にわたって、毎秒4回の測定を行うことである。これにより、測定された値に対し、高等な統計(中央値以外)を行うことが可能になる(例えば、分布に対するガウスの検出)。
【0046】
これに関して、電子ユニットは、デバイスが測定モードにおいて動作しているとき:
- 電子ユニットが、測定パルスに加えて、1つ以上の後続の追加の測定パルスを被験者の身体に送達するように振動子を制御し、各測定パルスが、トランジェントで低周波数の機械的パルスであり、
- 測定パルスごとに、電子ユニットが、各測定パルスがプローブされる領域を通ってどのように伝播するかを追跡するために取得されたエコー信号から、プローブされる領域内の組織歪みデータを決定し、
- 電子ユニットが、被験者の身体に送達された異なる測定パルスにそれぞれ関連付けられた組織歪みデータを考慮に入れて、平均することによって、低周波数の弾性波伝播に関する機械特性を決定する
ように構成することができる。
【0047】
電子ユニットは、ガイダンスモードにおいて、複数のプロービングパルスの各々について:
電子ユニットが、時間に応じて、およびプローブされる領域内の深さに応じて、プローブされる領域内の組織歪みを表す組織歪みデータを決定し、組織歪みデータが、プロービングパルスがプローブされた領域を通ってどのように伝播するかを追跡するために取得されたエコー信号のうちの少なくともいくつかから決定される、
ように構成することができる。
【0048】
次に、電子ユニットは、組織歪みデータに基づいて伝播品質インディケータを決定することができる。
【0049】
上述した組織歪みデータは、深さおよび時間の異なる値について、組織歪みデータ自体(すなわち、その相対的な延び)または検討される位置における組織の変位、または歪み率、またはこれらの量のうちの1つの微分もしくは積分、または任意の他の等価な量を収集することができ;より一般的には、これは、検討される時間および深さにおける組織の動きを表す組織のモーションパラメータである。さらに、この文書において、「エラストグラム」とは、深さおよび時間に応じてのそのようなモーションパラメータの任意の表現を意味する。
【0050】
いくつかの実施形態では、伝播品質インディケータは、組織歪みのグラフィック表現とすることができることに留意されたい。
【0051】
ガイダンス情報は、伝播品質インディケータ自体に直接対応することができる。これは、伝播品質インディケータから導出されたインディケータに対応することもでき;例えば、ガイダンス情報は、バイナリ(例えば、赤/緑)インディケータの形態をとることができ、その値は、伝播品質インディケータが所与の品質閾値を上回っているかまたは下回っているかを指定する。
【0052】
ガイダンス情報は、伝播品質インディケータに加えて、1つ以上の他のパラメータを考慮に入れるかまたは表すことができる。例えば、ガイダンス情報は、伝播品質インディケータおよび超音波ベースのガイディング情報を組み合わせることができる。超音波ベースのガイディング情報は、U/S伝播に関する、プローブの正面に位置する領域の多かれ少なかれ均一な性質を表すように、および/またはこの領域におけるU/S減衰が、特徴付けられる組織について予測される減衰領域内にあることを表すように、超音波エコー信号から決定することができる。超音波ベースのガイディング情報は、例えば、U/Sエコー信号のエンベロープに適用される線形回帰の決定の係数(R)に基づいて決定することができる(この決定基準は、決定の係数が1に近づくほど高くなる)。米国特許出願第2020/390421号として公開された米国特許出願または米国特許第9636085号において説明されているように、これは、U/S減衰値が予測範囲内、例えば、100~400dB/mの範囲内(特徴付けられる臓器が肝臓であるとき)にあるか否かを指定するように決定することもできる。
【0053】
ガイダンス情報は、ディスプレイ、LED(例えば、カラーLED)、またはLEDのセット、プローブ上に配置された視覚送信デバイス等の視覚送信デバイスによって送信することができる。これは、オペレータが、彼が保持し、被験者の身体上に位置決めしているプローブに集中しながら、ガイダンス情報にアクセスすることを可能にする。特に、電子ユニットは、上述したように、伝播品質決定基準に応じて単数または複数のLEDをオンにしてオペレータに通知し、オペレータがプローブに集中したままにすることを可能にするように構成することができる。
【0054】
上記で提示したエラストグラフィデバイスはまた、個々に検討された、または全ての技術的に可能な組み合わせに従う、以下の補足的な非限定的な特徴のうちの1つ以上を含むことができる:
- ガイダンスモードにおいて、複数のプロービングパルスの各々について:
- 電子ユニットが、プローブされる領域内の深さに応じて、プロービングパルス飛行時間を決定し、プロービングパルス飛行時間は、組織歪みデータから決定され、
- 電子ユニットが、プロービングパルス飛行時間が線形および平滑に、深さと共に変動するか否かを指定するように伝播品質インディケータ(Q)を決定する;
- 前記ガイダンスモードにおいて、電子ユニットは、複数のプロービングパルスのうちのいくつかにそれぞれ対応する組織歪みデータを平均することによって、平均された組織歪みデータを計算するように構成される;
- 前記ガイダンスモードにおいて、電子ユニットが、平均された組織歪みデータを時間および深さに応じて表す、平均されたエラストグラムを表示するように表示デバイスを制御するように構成される;
- 電子ユニットは、前記測定モードにおいて:
- 電子ユニットが、前記測定パルスに加えて、1つ以上の後続の追加の測定パルスを被験者の身体に送達するように振動子を制御し、各測定パルスが、トランジェントで低周波数の機械的パルスであり、
- 測定パルスごとに、電子ユニットが、各測定パルスがプローブされる領域を通ってどのように伝播するかを追跡するために取得されたエコー信号から、プローブされる領域内の組織歪みデータを決定し、
- 電子ユニットが、被験者の身体に送達された異なる測定パルスにそれぞれ関連付けられた組織歪みデータを考慮に入れて、平均することによって、低周波数の弾性波伝播に関する前記機械特性を決定する、
ように構成される;
- 電子ユニットは、複数のプロービングパルスのうちの少なくとも1つによってプローブされる、被験者の身体のプローブされる領域の特性に基づいて、被験者の身体に送達されるべき測定パルスの中心周波数を調整するように構成される;
- 前記特性は、プロービングパルスが前記プローブされる領域内の伝播中に受ける減衰を表し、電子ユニットが、領域内の減衰が高くなるほど高くなるように測定パルスの中心周波数を調整するように構成される;
- 電子ユニットは:
- ガイダンスモード中に、複数のプロービングパルスのうちの少なくともいくつかのそれぞれの後に:
- プローブの突出部の変位が実質的にない経過時間と、
- 次に、経時的に連続して数回繰り返される同じ振動パターンを含む周期的機械振動とが続き、周期的機械振動中に振動子のダウンタイムが実質的に伴わない、
ように振動子を制御し、
- 超音波パルスのシーケンスを放射し、応答において受信されたエコー信号を取得して、周期的機械振動が、プローブの突出部の正面に位置する被験者の身体のプローブされる領域を通ってどのように伝播するかを追跡し、これらのエコー信号の少なくともいくつかから、周期的振動伝播品質レベルを決定し、
- 周期的振動伝播品質レベルの伝播品質インディケータとの比較に基づいて、縁部近接度インディケータを決定し、縁部近接度インディケータを送信する、
ように構成される。
【0055】
本技術はまた、エラストグラフィ方法であって、
- 被験者の身体に対し適用される突出部と、プローブの突出部を動かすように配置された低周波数振動子と、少なくとも1つの超音波エミッタと、1つの超音波受信機とを備えるプローブと;a)プローブが、プローブされる身体の領域の機械的特性の測定を遂行するために、プローブされる領域の正面に正しく位置決めされているか否かを決定するためのガイダンスモードにおいて、および、b)前記測定を遂行するための測定モードにおいて、エラストグラフィデバイスが動作するよう、エラストグラフィデバイス(1)を交互に制御するように構成された電子回路を備える電子ユニットとを備える、エラストグラフィデバイスによって実施され、
- 方法は、
- ガイダンスモードを遂行することであって、ガイダンスモードは:
- 電子ユニットによって、複数のプロービングパルスを連続的におよび繰り返し、被験者の身体に送達するように振動子を制御することであって、各プロービングパルスが、トランジェントで、低周波数の機械的パルスである、こと、
- プロービングパルスごとに、
- 電子ユニットによって、超音波パルスのシーケンスを放射するように超音波エミッタを制御し、超音波受信機によって、エコー信号を取得して、プロービングパルスが、プローブの突出部の正面に位置する被験者の身体のプローブされる領域を通ってどのように伝播するかを追跡すること、
- 電子ユニットによって、前記エコー信号のうちの少なくともいくつかから、プロービングパルスを送信するための、プローブされる領域の適性を表し、プロービングパルスの伝播に関するプローブされる領域の均一性を表す伝播品質インディケータを決定すること、
- ガイダンス情報を送信することであって、ガイダンス情報が、伝播品質インディケータに基づいている、こと
を含む、ことと、次に、
- 測定モードを遂行することであって、測定モードは:
- 電子ユニットによって、被験者の身体に測定パルスを送達するように振動子を制御することであって、測定パルスは、複数のプロービングパルスの各々の振幅よりも高い振幅を有するトランジェントで低周波数の機械的パルスである、ことと、
- 電子ユニットによって、超音波パルスのシーケンスを放射するように超音波エミッタを制御し、超音波受信機によって、エコー信号を取得して、測定パルスが、プローブの突出部の正面に位置する被験者の身体のプローブされる領域を通ってどのように伝播するかを追跡することと、
- 電子ユニットによって、前記エコー信号のうちの少なくともいくつかから、低周波数の弾性波伝播に関する被験者の身体の前記領域の機械的特性を決定することと、
を含む、ことと
を含む、方法に関する。
【0056】
上記で提示されたエラストグラフィデバイスの異なる特徴は、このエラストグラフィ方法にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】例示的なエラストグラムを示す図である。
図2】弾性媒体に対し(いくつかの周期にわたって持続する)正弦波の機械振動を適用するときに得られるエラストグラムを示すグラフである。
図3】機械振動がトランジェントで機械的パルスである点を除いて、図2と同じ条件で得られるエラストグラムを示すグラフである。
図4】トランジェントパルスで臓器をプローブするときの臓器境界の影響を概略的に示す図である。
図5】ハーモニック機械振動で臓器をプローブするときの臓器境界の影響を概略的に示す図である。
図6】本技術によるエラストグラフィデバイスを概略的に表す図である。
図7図6のデバイスの電子ユニットのいくつかの要素を概略的に表す図である。
図8】この電子ユニットの制御および処理モジュール20をより詳細に概略的に表す図である。
図9図6のデバイスによって放射される機械および超音波パルスのシーケンスを概略的に表すグラフである。
図10】ガイダンスモードで動作しているときに、図6のデバイスによって表示される情報を概略的に表す図である。
図11】測定モードで動作しているときに、図6のデバイスによって表示される情報を概略的に表すグラフである。
図12】それぞれ、いくつかの連続したプロービングパルスにわたる平均を用いずに、および用いて得られた異なるエラストグラムを示す図である。
図13】代替的な実施形態による、デバイスがガイダンスモードにあるときのエラストグラフィデバイスの先端部の経時的な変位を概略的に表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0058】
上述したように、本技術は、探査される媒体内を伝播する弾性波を、プローブ先端部(またはより一般的には、デバイスのプローブの突出部)等の、媒体の表面と接触した要素を動かすことによって生成し、媒体内に超音波パルスを送信し、応答して受信されたエコー信号を記録することによって、弾性波が媒体内をどのように進行するか(換言すれば、媒体が加えられた振動によってどのように動かされるか)を追跡するように構成されたエラストグラフィデバイスに関する。本技術は、特に、デバイスのオペレータが、適切なプローブの位置を容易に見つけるのに役立つような特殊なガイダンス機能を有するエラストグラフィデバイスに関する。
【0059】
このガイダンスは、被験者の身体に、連続的におよび繰り返し、複数のプロービングパルスを送達することによって達成され、各プロービングパルスは、トランジェントパルスを送信するための、プローブの正面の領域に位置する領域の適性を試験し、そのようなトランジェントパルスの伝播に関するこの領域の均一性を試験することを可能にする(低振幅の)トランジェントで、低周波数の機械的パルスである。そのようなトランジェントプロービングパルスを用いることは、実際の振動制御されたトランジェントエラストグラフィ測定に対応する条件に近い条件下で被験者の身体をプローブし、これにより、プローブの良好に適合された位置決めをもたらすことを可能にする。
【0060】
図6は、そのようなエラストグラフィデバイス1の例示的な実施形態を表す。このエラストグラフィデバイス1は、手持ちされる、(プローブの本体を形成する)プローブケーシング3を含むプローブ2と、ケーシング3から突出する突出部とを備える。このため、突出部を被験者の身体8に対し適用して、身体に機械的パルスを送達し、U/Sショットを送信および取得することができる。この実施形態において、突出部は、先端部4、例えば、円筒形先端部(端部において円形トランスデューサ6を有する)である。
【0061】
さらに、他の実施形態において、突出部は、アレイ、例えばU/Sトランスデューサの線形アレイを含む(プローブの端部に位置する)超音波ヘッドとすることができる。これに関して、提案される技法を、(図6の場合にように)単一素子超音波トランスデューサと共に、または(U/Sトランスデューサのアレイのように)マルチ素子超音波トランスデューサと共に用いることができることに留意することができる。単一素子超音波トランスデューサは、AモードおよびMモード超音波撮像を表示するように構成されるが、マルチ素子超音波トランスデューサは、Bモード画像も表示し、測定されることになる組織のより容易な位置特定を可能にすることができる。マルチ素子超音波トランスデューサの場合、ビーム形成された超音波ラインのうちの少なくとも1つが、プロービングおよび測定パルスがどのように伝播するかを追跡するのに用いられる。このために、中心のビーム形成された超音波ライン(プローブ軸と位置合わせされている)を用いることが、対称性の検討に有利である。
【0062】
プローブ2はまた、低周波数振動子5と、先端部4の端部に固定されたU/Sトランスデューサ6とを備える。ここで、U/Sトランスデューサ6は、超音波エミッタの役割と、超音波受信機の役割との双方を(交互に)果たす。さらに、他の実施形態において、プローブは、互いに別個のU/SエミッタおよびU/S受信機を含んでもよい。ここで、U/Sトランスデューサ6は、振動子の軸z上に配置される。さらに、他の実施形態において、U/Sトランスデューサは、必ずしも振動子の軸上ではなく、プローブ上の他の場所に位置し得る。
【0063】
先端部4は、低周波数振動子5によって作動される。ここで、振動子5は、プローブケーシング3に対し先端部4を動かすように配置される。振動子5は、シャフト4’を動かすように配置され、シャフトの端部は、プローブの先端部4を形成する。さらに、他の実施形態において、プローブの先端部、より一般的には突出部を、プローブケーシングに対する動きなしでプローブケーシングに結合することができ、このとき、振動子は、ケーシング内部の質量を動かして、プローブ全体を(反動作用によって)組織に向けておよび後方に動かすように配置される。
【0064】
振動子5は、500ヘルツ未満、または更には100ヘルツ未満の中心平均周波数を用いて先端部を動かすという点で低周波数振動子である(中心周波数が、通常、1メガヘルツよりも高く、例えば1~5メガヘルツである超音波ショットまたはエコー信号と対照的である)。振動子は、ラウドスピーカアクチュエータと同様に、例えば1つまたはいくつかのコイルおよび磁石を有する低周波数電磁アクチュエータである。
【0065】
このデバイス1において、振動子5は、プローブ軸zに一致する振動子軸の周りで回転対称である。振動子5は、振動するとき、主に長手方向の、その軸に平行な変位を引き起こす。シャフト4’は、軸zを中心とし、振動子5は、このシャフトを軸zに沿って動かすように配置される。
【0066】
実際には、振動子5によって引き起こされる超音波トランスデューサ6の変位は、0.1mm~10mmのピーク・ツー・ピーク振幅を有する(例えば、トランジェントエラストグラフィ測定自体の場合、1~4または1~5mmであり、オペレータをガイドするために用いられるプロービングパルスの場合、より小さい可能性がある)。
【0067】
プローブ2は、超音波トランスデューサ6の変位を表す測定信号Sdを出力するように配置された変位センサ11を備える。この実施形態において、測定信号Sdは、プローブケーシング3に対する超音波トランスデューサ6の変位を表す。変位センサ11の一部が上述したシャフトに固定されるのに対し、センサの別の部分はプローブに嵌められ、ケーシング3に対する動きを伴わない。変位センサ11は、ホール効果センサ、誘導変位センサ、または任意の他の適切なセンサとすることができる。
【0068】
デバイス1は、振動子5およびU/Sトランスデューサ6に接続された電子ユニット10も含む。電子ユニット10の可能な実施形態のブロック図が図7に表される。図7の電子ユニット10は、制御および処理モジュール20と、超音波フロントエンド40と、振動子5を制御するモーションコントローラ30とを含む。
【0069】
超音波フロントエンド40およびモーションコントローラ30は、いずれも制御および処理モジュール20に接続されている(すなわち、制御および処理モジュール20から命令または制御信号を受信するか、またはデータもしくは測定信号をそこに送信することができる)。電子ユニットはまた、変位センサ11によって出力された測定信号Sdを調整しデジタル化するための、信号調整モジュール32も含む。この信号調整モジュール32は、ここでは、モーションコントローラ30の一部である。
【0070】
モーションコントローラ30は、振動子5を駆動するための、増幅器31も含む。増幅器31は、電気的観点から、制御信号Scを、振動器を駆動するのに適した形態に変換するように構成される。このため、増幅器31は、例えば、電流増幅器または電力増幅器(例えば、texas instrument社のLM3886電力増幅器等)とすることができる。
【0071】
超音波フロントエンド40は、超音波(U/S)パルサ41と、U/S受信機モジュール42と、超音波信号の送信および受信を交互に行うためのスイッチ43とを含む。U/Sパルサ41は、制御および処理モジュール20が出力する送信制御信号STXに基づいて、U/Sトランスデューサ6の駆動に適した電気超音波信号を生成するように構成された電気回路を含む。U/S受信機モジュール42は、U/Sトランスデューサ6によって以前に受信された(そしてスイッチ43を介してU/S受信機モジュール42に送信された)電気超音波信号(エコー信号)を取得し、対応する(デジタル化された)U/S受信信号SR,Xを制御および処理モジュール20に送信するように構成された電気回路を含む。超音波受信機モジュール42の電気回路は、電圧増幅器、1つ以上のフィルタ、およびアナログ-デジタル変換器(ADC)、例えば毎秒10~100メガサンプルのレートを有する8~16ビットADCを含むことができる。
【0072】
制御および処理モジュール20は、機械実行可能な命令を含む不揮発性メモリに結合されたマイクロプロセッサ、および/またはFPGAのようなプログラマブルマイクロ回路、もしくは他のプログラマブル回路等の、データを処理する電気回路を含むデバイスまたはシステムである。制御および処理モジュール20はまた、1つまたはいくつかのRAMメモリまたはレジスタを含むことができる。いずれにせよ、制御および処理モジュール20は、少なくとも1つの、ここでは2つのプロセッサ50、60と、少なくとも1つのメモリとを備える。
【0073】
トランスデューサの変位の事前補償の技法を実施している制御および処理モジュール20のいくつかのサブモジュールは、図8においてより詳細に表される。これらについては後に提示される。
【0074】
この電子ユニット10の要素のうちのいくつか(例えば、信号調整モジュール32等)は、プローブ2内に収容することができるのに対し、(汎用プロセッサ60のような)このユニット10の他の要素はリモートであってもよい。代替的に、電子ユニット全体がプローブ2内に収容され得るか、または反対に、全体がプローブの外側に位置し得る。
【0075】
プローブ2は、コンピュータの構造を有する(ラップトップ、スマートフォン、またはプローブを制御し、プローブとインタフェースし、取得した信号を処理するように配置された専用電子デバイスであり得る)中央ユニット7に動作可能に接続される。中央ユニットは、少なくとも、メモリおよびプロセッサを含む。ここで、中央ユニットは、タッチスクリーン等のユーザインタフェースも含む。プローブは、接続ケーブル9または無線リンクによって中央ユニット7に接続されてもよい。ここで、電子ユニット10(特に、汎用プロセッサ60)のいくつかの要素は、中央ユニット7の一部である。
【0076】
電子ユニット10(より具体的には、ここではその制御および処理モジュール20)は、a)プローブ2が、プローブされる身体8の領域80の機械的特性の測定を遂行するために、プローブされる領域80の正面に正しく位置決めされているか否かを決定するためのガイダンスモードにおいて、および、b)測定を遂行するための測定モードにおいて、電子デバイス1が交互に動作するよう、電子デバイス1を制御するように構成(例えば、メモリに記憶された命令によりプログラム)される。
【0077】
エラストグラフィデバイス1がガイダンスモード(図9におけるフェーズS1)において動作しているとき、電子ユニット10は、複数のプロービングパルスPRBを連続的におよび繰り返し、被験者の身体8に送達するように低周波数振動子5を制御し、各プロービングパルスは、トランジェントで、低周波数の機械的パルスである。上述したように、これらのプロービングパルスの送達(および追跡)は、トランジェントパルスを送信するための、プローブの正面領域に位置する領域80の適性を試験し、そのようなトランジェントパルスの伝播に関してこの領域の均一性を試験することを可能にする。これは特に、プロービングパルスを送信するためのこの領域の適性、およびこの伝播に対するその均一性を表す伝播品質インディケータQを決定することを可能にする。これにより、オペレータは、プローブが十分大きな寸法の均一な臓器の正面に位置し、これに向けて方向付けられているか否か、したがって、振動制御されたトランジェントエラストグラフィによる測定のために適切に位置決めされているか否かを知ることが可能になる。
【0078】
ガイダンスモードにおけるエラストグラフィデバイスの動作が第1に提示される。次に、測定モードが提示される。
【0079】
既に述べたように、ガイダンスモード(図9におけるフェーズS1)において、電子ユニット10は、複数のプロービングパルスPRBを連続的におよび繰り返し、被験者の身体8に送達するように低周波数振動子5を制御し、各プロービングパルスは、トランジェントで、低周波数の機械的パルスである。
【0080】
ガイダンスモードは、例えば、中央ユニット7のタッチスクリーンによって達成される、オペレータによる手動トリガリングに応答してトリガすることができる。
【0081】
ここで説明される実施形態において、ガイダンスモードにおいて、電子ユニット10が、先端部4が被験者の身体8に適用されていることを検出すると、電子ユニット10は、先端部が被験者の身体8と接触を保っている限り、プロービングパルスが、連続的に、自動的に繰り返される(すなわち:手動のトリガリングを再び必要としない)ように振動子を制御する。電子ユニット10は、(図には表されていない、歪みゲージ等の力センサによって測定されるか、または先端部が被験者の身体に対し押圧されるときにケーシング内に押し込まれるシャフト4’の位置から推論される)接触力レベルFlに基づいて、先端部4が被験者の身体8に対し適用されていることを検出することができる。そのような接触検出時にプロービングパルスの生成を調整することは、プロービングが実際に可能でないとき(およびこれがオペレータの手によってのみ支持されているとき)、プローブを振動させることを防ぐため、有利である。
【0082】
プロービングパルスの生成がそのような検出時に調整されても調整されなくてもいずれにせよ、ガイダンスモードにあるとき、プロービングパルスは連続的に、自動的に(すなわち:手動のトリガリングを必要とすることなく)繰り返される。
【0083】
電子ユニット10は、モーションコントローラ30を用いて、プロービングパルスを送達するように振動子5を制御する。より具体的には、シャフト4’の変位dは、所定のコマンド信号に従って制御される。ここで、この変位は、増幅器31、変位センサ11、信号調整モジュール32、およびPID(比例、積分、微分)補正器等の振動制御モジュール24(図8)を含む制御ループによって制御される(さらに、代替的な実施形態では、振動子は、オープンループによって、すなわちセンサフィードバックを伴わずに制御されてもよい)。
【0084】
ガイダンスモードにおいて、プロービングパルスは、毎秒数パルスのレートで、例えば、毎秒5パルスまたは更には10パルス以上のレートで送達される。このため、プロービングパルスPRBは、非常に短い、通常は0.2秒未満、または更には0.1秒未満の繰り返し周期Tで繰り返される。そのようなレートでプロービングパルスを送達することは、オペレータに対しほとんど連続したガイダンスを可能にするため有利である。これにより、いくつかの連続プロービングパルスに対応する結果を平均し、低いラグタイムを有する対応する(平均された)ガイダンス情報を送信することも可能になる。加えて、この極めて高い繰り返し率により、このように平均されたプロービング結果が、被験者の身体内で臓器が動く典型的な時間と比較して短い時間で得られる(呼吸の動きまたは心臓パルスに起因する)。
【0085】
各プロービングパルスPRBは、持続時間T(振動子によって引き起こされる実質的な運動突出部が存在する時間)を有し、突出部の運動がないかまたは実質的にないダウンタイムが続き、その後別のプロービングパルスPRBが生成される。このため、パルスの持続時間Tを、プロービングパルスが繰り返される周期Tで除算したものに等しい作動比(換言すれば、デューティサイクル)は、1未満であるか、例えば50%未満であるか、または更には20%未満である。
【0086】
各プロービングパルスは、測定モードにおいて送達される測定パルスMSRよりも小さな限られた振幅を有する。この低減された振幅は、数ある他の利点の中でも、検査下の被験者にとってガイダンスを快適なものにする。例えば、各プロービングパルスは、先端部4の1mmのピーク・ツー・ピーク変位Aに対応することができ、この変位は、測定パルスMSRの各々の先端部のピーク・ツー・ピーク変位Aの2分の1未満である。
【0087】
「発明の概要」と題するセクションに詳細に説明されているように、各プロービングパルスPRBの中心周波数に関して、これは、プロービングパルスを受信する被験者の快適性を改善し、媒体内の侵入深さを増大させるために、測定パルスMSRの中心周波数と比較して僅かに低減される。ここで、エラストグラフィデバイスは、肝臓を特徴付けるのに適したデバイスである。各プロービングパルスPRBの中心周波数fc,1は、20Hz~45Hzに含まれ、その持続時間Tは、ここで、5/fc,1未満、または更には3/fc,1未満とすることができる。
【0088】
各プロービングパルスは、周波数(上述した中心周波数に等しいかまたは近い)が20Hz~45Hzに含まれる正弦波の1つの周期またはいくつかの周期(通常、2つまたは3つの周期未満)からなることができる。
【0089】
図7の例において、例えば、各プロービングパルスは、40Hzの正弦波の1つの周期にあり、このため、その持続時間Tの値は25msである。この例において、各プロービングパルスには、75msのダウンタイムが続き(このため、T=0.1s);プロービングパルスは、毎秒10パルスのレートで繰り返される(後述するように、伝播品質インディケータQは、3つ~5つの連続プロービングパルスに対応する結果を平均する、ローリング平均によって計算される。代替的に、ダウンタイムは、例えば25ms(ここで、T=0.05s)であってもよく、このとき、プロービングパルスは、毎秒20パルスのレートで繰り返される。
【0090】
各プロービングパルスPRBについて、電子ユニット10は、(数ある中でも、U/Sフロントエンド40のU/Sパルサ41によって)超音波トランスデューサ6を制御し、それによって、U/Sトランスデューサ6は、超音波パルスのシーケンスSeq_1を放射し、超音波トランスデューサ6によって応答において受信したエコー信号を取得して、プロービングパルスPRBがプローブの先端部4の正面に位置する被験者の身体8のプローブされる領域80を通ってどのように伝播するかを追跡する。
【0091】
このシーケンスSeq_1および測定モードにおいて放射される(測定パルスMSRがどのように伝播するかを追跡するための)超音波パルスのシーケンスSeq_2について、各超音波パルスUSPの中心周波数は、例えば0.5メガヘルツ~10メガヘルツに含まれる。シーケンスSeq_1またはSeq_2の超音波パルスは、一度に送信することができ、2つの連続パルスは、パルス繰り返し周期RP、RPによって分離され、このパルス繰り返し周期は、通常、100マイクロ秒~2ミリ秒(0.5キロヘルツ~10キロヘルツのパルス繰り返し率に対応する)である。上述したシーケンスの超音波パルスは、グループ、例えば、2つのパルスのグループによって、(2つの対応するエコー信号間の相関を計算するために)送信することもできる。各グループの2つのパルスは、50~200マイクロ秒の持続時間によって分離することができるのに対し、パルスのグループ自体は、より長い持続時間、例えば、0.2または0.5ms超のより長い持続時間によって分離される。様々な実施形態において、他の送信シーケンスも検討することができることが理解されよう。U/SパルスのシーケンスSeq_1、Seq_2の合計持続時間に関し、これは25ms~200msとすることができる。この持続時間は、低い方の弾性波の伝播速度に応じて、および観測される領域の深さに応じて選択することができる。例えば、80mmの深さおよび1m/sの伝播速度の場合(被験者の肝臓におけるせん断波に典型的)、シーケンスは、80msの持続時間を有してもよい。
【0092】
検討される機械的パルスの伝播を追跡するために取得されたエコー信号に関して、これらの各々が、U/SパルスUSPのうちの1つを放射した後にU/Sトランスデューサ6によって時間tにわたって受信された信号によって形成される。これはより厳密には、この放射後に開始し、所与の持続時間を有する、所与の時間窓内に受信された信号である。
【0093】
ここに説明される実施形態では、ガイダンスモードにおいて、U/Sパルス繰り返し率(すなわち、1/RP)は、測定モードにおけるU/Sパルスの繰り返し率(すなわち、1/RP)よりも、例えば、少なくとも20%、場合によっては少なくとも2分の1低い。例えば、(ガイダンスモードにおける)シーケンスSeq_1において、U/Sパルス繰り返し率は、0.5~3kHz(例えば:2kHz)とすることができるのに対し、(測定モードにおける)シーケンスSeq_2において、U/Sパルス繰り返し率は、2~10kHz(例えば:6kHz)とすることができる。セクション「発明の概要」において詳細に説明したように、ガイダンスモードにおいてより低いU/Sパルス繰り返し率を用いることは、エラストグラフィデバイスによって放射される音響出力パワーの観点で、および計算時間の観点で有利である。そしてこれは、中心周波数および振幅Aが、測定パルスMSRの中心周波数および振幅Aよりも低いプロービングパルスPRBによく適合されている。
【0094】
ガイダンスモードにおいて、プロービングパルスPRBごとに、電子ユニット10は、上述した伝播品質インディケータQを決定する。このインディケータは、このプロービングパルスPRBがプローブされる領域80においてどのように進行するかを追跡するために取得されるエコー信号から決定される。
【0095】
上述したように、伝播品質インディケータQは、プロービングパルスがダンピングする場合であっても、および場合によっては、この伝播中に部分的に歪められる場合であっても、プロービングパルスPRBを送信するための、すなわち、プロービングパルスをプローブされる領域80を通して伝播させ、この領域の深さに(例えば、少なくとも所与の深さにわたって)貫入させるためのプローブされる領域80の適性を表す。伝播品質インディケータQは、プロービングパルスPRBの伝播に関するプローブされる領域80の均一性も表し;換言すれば、プロービングパルスの伝播速度における、リバウンド、不連続性または変化/ステップ等の、実質的な伝播不均一性がないことを表す。
【0096】
伝播品質インディケータQは、被験者の身体に送達されたプロービングパルスによって生じる、組織歪みの時空間特性(すなわち、時間に応じて、および少なくとも1つの空間座標に応じての双方の組織歪みの変動を表す特性)が、均一媒体において低周波数で機械的なトランジェントパルスの伝播に対応するか否かを指定することができる。
【0097】
ここで説明される実施形態において、ガイダンスモードにおいて、プロービングパルスPRBごとに、電子ユニットは、時間tに応じて、およびプローブされた領域80内の深さzに応じて、プローブされる領域80内の組織歪みを表す組織歪みデータを決定する。組織歪みデータは、プロービングパルスPRBがプローブされる領域においてどのように進行するかを追跡するために取得されたエコー信号から決定される。上述したように、(図1図10または図11におけるように)時間および深さに応じてグラフで表現されるとき、そのような組織歪みデータはエラストグラムを形成する。
【0098】
組織歪みデータは、組織の一部分が、組織を通過している弾性波の影響下でどのように動くかを決定するために(弾性波は、システムによって送達される周期的機械振動によって生成される)、相関技法または別のパターニングマッチングアルゴリズムを用いてエコー信号から決定される。例えば、2つの連続して受信されたエコー信号の各組について、2つのエコー信号は、相関モジュール25(図8)によって互いに相関付けられ、これによって、深さに応じて、所与の時点において、組織変位(すなわち、2つのU/Sパルス間で生じる組織変位)を決定することが可能になる。次に、電子ユニットは、このプロービングパルスに対応する組織歪みデータに基づいて伝播品質インディケータQを決定する。
【0099】
伝播品質インディケータQは、組織歪みデータを表すエラストグラムが、(t-z座標平面において)1つまたはいくつかの規則的なストライプを含むか否かを指定するように決定することができる。
【0100】
伝播品質インディケータQは、ここでのように、プロービングパルス飛行時間が線形および平滑に、深さzと共に変動するか否かを指定するように決定することもできる。この目的で、伝播品質インディケータQは、深さに応じてプロービングパルス飛行時間に適用された線形回帰の決定の係数Rから導出され得る。伝播品質インディケータQは、更には、この決定の係数に直接対応することさえもできる。当該のプロービングパルス飛行時間は、プロービングパルスが、被験者の身体8の表面から、プローブされる領域80の所与の深さまで伝播する(換言すれば、検討される深さに到達する)のにかかる時間である。この飛行時間は、検討される深さにおける組織歪み(固定の深さにおける時間に応じての組織歪み)のフーリエ変換を計算し、次に、このフーリエ変換の成分(通常、周波数が、プローブによって送達されたプロービングパルスの中心周波数である成分)の位相から飛行時間を導出することによって決定することができる。これは、他の技法、例えば、ゼロ交差技法またはパターンマッチング技法を用いて決定することもできる。ゼロ交差技法が用いられるとき、飛行時間は、検討される深さについて、組織歪みがゼロに交差する(ゼロに交差し、次に、ノイズにより引き起こされた無関連の交差を回避するために、いくらかの時間にわたってゼロラインの同じ側に留まる)時間として決定することができる。パターンマッチング技法が用いられるとき、飛行時間は、検討される深さにおいて、所与の(基準)パルスプロファイルを、時間に伴う組織歪みの変動と最良に適合させることを可能にする時間オフセットとして決定することができる。
【0101】
ここで説明される実施形態において、伝播品質インディケータQは、数値(例えば、0~1を含む)である。さらに、他の実施形態では、伝播品質インディケータQは、組織歪みデータを表すエラストグラムの形態を直接とり得る。実際に、そのようなエラストグラムは、オペレータが、上述した数値と同様に、組織が均一であるか否か、および弾性波伝播に適しているか否かを容易に決定することを可能にする。
【0102】
ガイダンスモードにおいて、プロービングパルスPRBごとに、電子ユニット10は、ガイダンス情報を送信するようにエラストグラフィデバイス1を制御し、ガイダンス情報は、伝播品質インディケータQに基づく。実際に、ガイダンス情報は送信され、(視覚的におよび/または可聴信号を用いて)デバイス1のオペレータに通信される。
【0103】
ガイダンス情報は、組織歪みデータを表すエラストグラムを含むことができる。ガイダンス情報は、伝播品質インディケータQ自体(すなわち:更なる処理を伴わず、そのままの状態)も含んでもよい。ガイダンス情報は、バイナリ(例えば、赤/緑)インディケータの形態をとることができ、その値は、伝播品質インディケータQが所与の品質閾値を上回っているかまたは下回っているかを指定する。ガイダンス情報は、上述した異なる特徴(および場合によっては他の特徴)を収集する複合要素とすることもでき、これらの特徴は、ガイダンス情報において、互いに区別されたままである(すなわち:融合されない)。ここでの事例では、オペレータに提供されるガイダンス情報は:
- 以下で説明されるように、平均されたエラストグラムであるエラストグラム101(プロービングエラストグラムまたはガイディングエラストグラム)と、
- ポイントインディケータもしくはバースケールインディケータまたは等価物の形態の品質レベルQlのディスプレイ102であって;品質レベルQlは、伝播品質インディケータQ自体とすることができるか、またはここでのように、単一のレベルの形態において、伝播品質インディケータQおよび超音波ベースのガイディング情報を(例えば、これらの2つの量の平均を計算することによって)組み合わせる(マージする)レベルとすることができる、ディスプレイと、
- 品質レベルQlを、プリセットされた閾値と比較することによって決定されるバイナリ(緑/赤)インディケータであって;このバイナリインディケータは、プローブケーシング3上に配置されたLEDをオンに、または反対にオフに切り替えることによって表示される、バイナリインディケータと
を含む。
【0104】
エラストグラム101および品質レベルQlは、中央ユニット7のスクリーン上に表示される。力レベルFlおよび超音波エコーMモードディスプレイ103も、オペレータがプローブを適切に位置決めするのに役立つために有用であるため、このスクリーン上に表示される。超音波エコーMモードディスプレイ103は、2次元画像を表示し、ここで、各列は取得された超音波エコー信号のうちの1つを表し、連続して取得されたU/Sエコー信号は、互いの隣りに表示される。
【0105】
上述したように、品質レベルQlは、上述した伝播品質インディケータQおよび超音波ベースのガイディング情報を組み合わせる。セクション「発明の概要」において説明されたように、超音波ベースのガイディング情報は、U/S伝播に関する、プローブの正面に位置する領域の多かれ少なかれ均一な性質を表すように、および/またはこの領域におけるU/S減衰が、特徴化される臓器について予測される減衰領域内にあることを表すように、超音波エコー信号から決定することができる。超音波信号は、軟組織の機械的特性に対し十分感度が高くないため、超音波ベースのガイディング情報が、良好な精度でせん断波の伝播を予測することができないことに留意することが重要である。
【0106】
上述したように、電子ユニット10は、ガイダンスモードにおけるプロービングパルスPRBごとに伝播品質インディケータQを決定する。被験者の身体に送達された新たなプロービングパルスPRBごとに、対応する伝播結果(例えば:組織歪みデータ)が、伝播品質インディケータQの新たな値を決定するための考慮に入れられる。
【0107】
伝播品質インディケータQのこの新たな値は、この新たなプロービングパルスのみの伝播結果に基づいて決定することができる。
【0108】
この新たな値は、2つ以上のプロービングパルスに関連付けられた伝播結果に基づいて、例えば、これらの異なる伝播結果を平均し、次に、伝播品質インディケータQを計算することによって決定することもできる。この場合、伝播品質インディケータQは、各プロービングパルスの後に(例えば、ローリング平均を用いることによって)更新することができ、これにより、オペレータに対し、リアルタイムの(またはほぼリアルタイムの)監視を可能にする。代替的に、伝播品質インディケータQは、いくつかの新たなプロービングパルスが送達された後にのみ更新されてもよい(この場合、古典的な、非ローリング平均を用いることができる)。
【0109】
ここで説明される実施形態において、伝播品質インディケータQは、いくつかのプロービングパルス、通常3~6個の連続パルス(例えば:5個)にそれぞれ対応する伝播結果に基づいて決定され、これらの異なる伝播結果は、ローリング平均によって平均される。新たなプロービングパルスごとに、対応するエラストグラム(または、換言すれば、対応する組織歪みデータ)が(相関によって)決定され、次に、4つの先行するプロービングパルスにそれぞれ対応するエラストグラムにより平均され、平均されたエラストグラム101が得られ、次にこれが表示される。次に、この平均されたエラストグラム(平均された組織歪みデータ)から伝播品質インディケータQの新たな値が計算される。
【0110】
それぞれいくつかの迅速に繰り返されたプロービングパルスに対応する結果のこの平均は、平均されたプロービングエラストグラムの信号対雑音比を増大させる(図12の挿入図a)およびa’)を参照)一方で、プローブ2の多かれ少なかれ適切な位置決めのほぼ連続した監視を可能にするため、有利である。
【0111】
図12は、(被験者の肝臓に向けているときに)in vivoで測定された、平均化ありおよび平均化なしの異なるエラストグラムを示す。平均されたエラストグラムは、毎秒10個のエラストグラムのレートで取得された5つの連続したエラストグラムを平均することによって得られる。エラストグラムa)は、平均されたエラストグラムa’)を得るために共に平均された5つのエラストグラムのうちの1つである。この例は、この平均技法に起因した信号対雑音比の改善を(特に、破線で囲まれたグラフの部分において)示す。エラストグラムb)およびc)も、平均されたエラストグラムb’)およびc’)に対応する単一の平均されていないエラストグラムである。エラストグラムb)およびb’)は、この平均技法が、また、プロービングパルスを追跡および視覚化することができる深さを増大させることを示す。そして、エラストグラムc)およびc’)は、この平均技法が、また、例えば関心領域における血管の存在または別の不均一性によって生じる、可能性のあるアーチファクトの影響を低減することを示す。
【0112】
測定モードにおけるエラストグラフィデバイス1の動作(図9におけるフェーズS2)がここでより詳細に説明される。
【0113】
エラストグラフィデバイス1は、オペレータによる手動トリガリングに応答して、ガイダンスモードにおける動作から、測定モードにおける動作に切り替わる(図9におけるフェーズS2)ように構成することができる。この手動トリガリングは、例えば、プローブケーシング3上に配置されたプッシュボタンスイッチを作動させることによって、またはフットスイッチを作動させることによって達成することができる。そのような場合、オペレータは、ガイダンス情報に基づいて、プローブ2の位置および方向が適切であると考えるとき、測定モードをトリガし、それによって、低周波数の弾性波伝播に関係するプローブされる領域の少なくとも1つの機械的特性の測定値(例えば、そのヤング率)が測定される。
【0114】
エラストグラフィデバイスは、所与の決定基準が満たされるとき、ガイダンスモードから測定モードに切り替わるように構成することもできる。例えば、この切り替えは、伝播品質インディケータQ(または上述した品質レベル)が所与の品質閾値を超える(例えば、上回る)ときに生じ得る。エラストグラフィデバイスをガイダンスモードから測定モードに自動的に切り替わらせるために、伝播品質インディケータQに加えてまたはその代わりに他のパラメータを考慮に入れる他の決定基準も用いられてもよい。本明細書に説明される自動切り替えは、例えば比較器を含む、1つ以上の電子回路を用いて実施することができる。
【0115】
測定モードに入ると、電子ユニット10は、プローブされる領域に、少なくとも1つの、ここでは複数の連続測定パルスMSRを送達するように低周波数振動子5を制御し、各測定パルスは、トランジェントで低周波数の機械的パルスである。電子ユニット10はまた、超音波パルスUSPのシーケンスSeq_2を放射するようにU/Sトランスデューサ6を制御し、応答において受信されたエコー信号を取得して、各測定パルスMSRが、プローブされる領域80を通ってどのように伝播するかを追跡する。
【0116】
測定パルスごとに、電子ユニット10は、取得されたエコー信号を処理して、上記でプロービングパルスに関して説明したように、深さzおよび時間tに応じて、プローブされる領域内の組織歪みを表す組織歪みデータを決定する。
【0117】
次に、電子ユニット10は、組織歪みデータから、プローブされる領域80の機械的特性を決定する。
【0118】
ここで、電子ユニット10は、被験者の身体に送達された異なる測定パルスにそれぞれ関連付けられた組織歪みデータを考慮に入れて平均することによって、この機械的特性を決定する。実際に、測定モードにおける切り替えに起因して送達される測定パルスMSRの数は、例えば2~10とすることができ、これらは、毎秒3~20パルスのレートで送達することができる。これらの異なる測定パルスにそれぞれ関連付けられた組織歪みデータは、平均された組織歪みデータ、および図11に表すもの等の対応する平均された測定エラストグラムを得るように共に平均される。このとき、プローブされる領域の機械的特性は、この平均された組織歪みデータから決定される。この平均された組織歪みデータの考慮に入れられた連続測定パルスMSRの数は、ガイダンスモードにおいて平均ガイディングエラストグラム101を作るために共に平均された連続プロービングパルスPRBの数と同じであってもよい(対応する繰り返し率も同じであり得る)。
【0119】
低周波数せん断波伝播に関連する組織の機械的特性は、せん断波の伝播速度V、組織のせん断係数または組織のヤング係数E(これらは、エラストグラムにおいて特定されるストライプの傾斜から、または深さに応じての測定パルスの飛行時間の変動から導出することができる)のような組織の硬さに関する量とすることができる。これは、粘性等の組織における低周波数せん断波減衰に関連する量でもあり得る。
【0120】
上述したように、ガイダンスモードにおける動作を説明するとき、各測定パルスMSRは、プロービングパルスPRBの各々の振幅Aよりも大きい振幅Aを有する。プローブの先端部4の変位のピーク・ツー・ピーク振幅Aは、測定パルスの場合、例えば、1~4mmとすることができる。さらに、各測定パルスMSRの中心周波数は、ここでのように、プロービングパルスPRBのうちの任意のものよりも高くてもよい。各測定パルスMSRの中心周波数は、例えば、エラストグラフィデバイスが、ここでのように患者の肝臓を特徴付けるように構成されるとき、50~200Hzとすることができる。ここで、各測定パルスは、周波数が50~200Hzの、ここでは50Hzに等しい正弦波の1つの周期を含む。各測定パルスの後にダウンタイムが続き、その持続時間は、測定パルスの持続時間T2よりも長い(場合によっては、この持続時間の2倍または3倍よりも長い)。既に述べたように、超音波パルス繰り返し率は、シーケンスSeq_2において、プロービングパルスのうちの1つを追跡するために放射されたU/SシーケンスSeq_1におけるよりも高い。シーケンスSeq_2において、U/Sパルス繰り返し率は、例えば2~10kHzとすることができる。ここで、これは例えば6kHzに等しい。
【0121】
任意選択の特徴によれば、電子ユニット10は、プロービングパルスのうちの少なくとも1つを用いてガイダンスモードにおいて以前に決定されたプローブされる領域80の特性(この特性は、プロービングパルスがプローブされる領域を通ってどのように伝播するかに基づいて決定される)に基づいて、測定パルスの中心周波数を調整するように構成することができる。より一般的には、(周波数および振幅の観点における)1つまたは複数の測定パルスの特徴は、プロービングパルスにより達成されるプローブされる領域80の事前の特徴付けに基づいて調整することができる。
【0122】
この特性は、プロービングパルスによって、例えば前記領域内を伝播する間に受ける減衰を表すことができる。この場合、電子ユニットは、単数または複数の測定パルスの中心周波数を、領域における減衰が高いほど高くなるように調整するように構成することができる(これにより、弾性波減衰が、プローブされる領域において高い、例えば、平均して、肝臓の場合に予期されるよりも高い場合であっても、測定パルスについて、所望の侵入深さを得ることが可能になる)。
【0123】
ここで、(図7を参照して)上述した任意選択の事前補償技法が、図8を参照して提示される。
【0124】
組織歪みを決定するために、取得した超音波エコー信号を処理するとき、先端部の変位dを補償することが望ましい。実際に、媒体変位をプローブするために送信される超音波パルスが先端部の末端によって放射される際、極めて大きな先端部の変位が累積し、測定される組織の変位となる。このため、相関計算時間を低減し、信号対雑音比を増大させるために、この変位を補償することが望ましい。既知の補償技法は、エコー信号の事後処理に基づき、ここで、強力なエコーが識別され、これらの信号を時間的に再位置合わせするのに用いられる。しかしそのような技法は時間がかかり、プロセッサ60(例えば、FPGAとすることができる)のような専用プロセッサにおいて実施されるのに十分適していない。このため、ここで、この変位dを補償するために、電子ユニット10(より具体的には、そのプロセッサ60)は、以下の事前補償技法を実施するように構成される。
【0125】
プロービングおよび測定パルスを追跡するために放射される超音波パルスは、
- 超音波パルスの放射がシフトされる放射時の時間オフセットδtTX
- および/またはこの放射された超音波パルスに応答して取得されたエコー信号がシフトされる受信時の時間オフセットδtRX
で放射され、
それによって、超音波トランスデューサ6(または複数の超音波トランスデューサ)の変位dによって生じる、取得した他のエコー信号に対する前記エコー信号の時間的シフトを補償し、
放射時の時間オフセットδtTXおよび/または受信時の時間オフセットδtRXは、その差がΔt-2.d/vusに等しくなるように調整され、Δtは一定の遅延であり、vusは、検査下の組織における超音波の速度である。
【0126】
このため、トランスデューサの変位は、特殊な後処理を必要とすることなく、最初から補償されている。
【0127】
図8の場合、エラストグラフィデバイスは、より具体的には、放射時の時間オフセットが、δtTX,o+d/vusに等しく、δtTX,oが、放射時の一定の遅延である一方、受信時の時間オフセットが、δtRX,o-d/vusに等しく、δtRX,oが受信時の一定の遅延であるように構成される。
【0128】
放射時にこの遅延を導入するために、制御モジュール20は、プロービング(または測定)パルスが追跡されるとき、(例えば、制御モジュールのメモリに記憶された所定の送信シーケンスに基づいて)基準送信制御信号STX,Oを生成することができ、この信号は、次に、制御可能な遅延23を用いて、制御された方法で遅延され、U/Sフロントエンド40に送信される送信制御信号STXが作られる。受信時の時間シフトδtRXは、例えば、増幅器およびADC42によって出力されたデジタル化された信号における適切な一連の値を選択する、制御可能なシーケンサ22を用いて、シフトレジスタまたは別の種類のデジタルバッファを用いて得ることができる。そして、補正モジュール21は、信号調整モジュール32によって出力されたデジタル化された信号(変位センサ11によって出力された信号を表すデジタル化された信号)から、可変の遅延d/vusを決定することができる。図6図8の実施形態において、トランスデューサ6の変位dは、プローブのケーシング3に対するその変位である。
【0129】
プローブに面する領域をプローブするために、ガイダンスモードにおいて被験者の身体に加えられる機械振動に関して、代替的な実施形態において、トランジェントパルス(すなわち、上述したプロービングパルスPRB)および周期的機械振動PMVを送達するために、振動子をハイブリッド方式で制御することができることに留意することができる。先端部4の変位dは、例えば、そのようなハイブリッドプロービングの例について、図13において時間tにわたって表される。
【0130】
そのようなハイブリッドプロービング/ガイダンスについて、各プロービングパルスPRBの後に、先端部4の変位が実質的にない経過時間T’(ダウンタイム)、次に、経時的に連続して数回繰り返される同じ振動を含む周期的機械振動PMVが続き、その周期的機械振動PMV中に実質的に振動子のダウンタイムを伴わない。周期的機械振動PMVは、例えば、正弦波の1つの周期にわたる、振動パターンの少なくとも3つ、または更には少なくとも5つの発生を含むことができる。図13に表されるように、周期的機械振動は、振動パターンの4つの発生を含む(この場合、正弦波の4つの連続する周期)。周期的機械振動PMVの持続時間は、T’’である。周期的機械振動の後、持続時間T’’’のダウンタイムが続き、その後新たなプロービングパルスが送達される。
【0131】
プロービング後パルスダウンタイムの持続時間T’は、1/fc,1よりも長いか、またはTよりも長いか、または更には、Tの2倍よりも長くてもよく、T’’’についても同じである。
【0132】
プローブされる領域80を、トランジェントで機械的パルス(プロービングパルスPRB)および周期的機械振動の双方を用いてプローブすることにより、プロービング軸zが、特徴付けられる臓器の縁部に近い(横からみて近い、すなわち:臓器のこの縁部の近くを通る)ことを検出することが可能になる。
【0133】
実際に、図2および図3を参照してセクション「発明の概要」において説明されるように、周期的(例えば、ハーモニック)振動を用いて媒体をプローブするとき、壁、縁部の近接度または媒体不連続性は、多くの場合、定常波パターンに有利に働く(favorizing)振動の伝播を乱す。反対に、トランジェントで機械的パルスの伝播は、そのような縁部によってより乱されない。このため、トランジェントで機械的パルスがプローブされる領域を通って伝播することができる一方で、周期的振動が伝播しない(または少なくとも、非常に強力な歪みを伴って伝播する)ことは、プロービング軸zが、おそらく、特徴付けられる臓器の縁部の近くを通ることを示す。
【0134】
この代替的な実施形態において、ガイダンスモードにあるとき、電子ユニットは、超音波パルスのシーケンスを放射し、応答において受信されるエコー信号を取得して、プロービングパルスおよび周期的機械振動が被験者の身体のプローブされる領域を通ってどのように伝播するかを追跡するように超音波トランスデューサ6を制御する。
【0135】
次に、電子ユニットは、上記で説明した(トランジェント)伝播品質インディケータQに加えて、これらのエコー信号のうちの少なくともいくつかから、周期的振動伝播品質レベルを決定する。
【0136】
この振動に関連付けられたエラストグラムが十分に定義された対角帯を含むか否かの、周期的振動伝播品質レベルを指定することができる。また、この振動の位相遅延が実質的に線形に、深さと共に平滑に変動するか否かを指定することができる。
【0137】
次に、電子ユニットは、周期的振動伝播品質レベルの伝播品質インディケータQとの比較に基づいて、縁部近接度インディケータを決定し、この縁部近接度インディケータを送信する(これをエラストグラフィデバイスのオペレータに通信する)。縁部近接度インディケータは、例えば、伝播品質インディケータQと周期的振動伝播品質レベルとの間の差が所与の閾値よりも高くなるときに、オフからオンに切り替わるバイナリインディケータとすることができる。
【符号の説明】
【0138】
1 エラストグラフィデバイス
2 プローブ
3 ケーシング、プローブケーシング
4 先端部
4’ シャフト
5 振動子、低周波数振動子
6 トランスデューサ、超音波トランスデューサ、U/Sトランスデューサ
7 中央ユニット
8 身体
9 接続ケーブル
10 電子ユニット
11 変位センサ
20 処理モジュール、制御モジュール、制御および処理モジュール
21 補正モジュール
22 シーケンサ
23 遅延
24 振動制御モジュール
25 相関モジュール
30 モーションコントローラ
31 増幅器
32 信号調整モジュール
40 超音波フロントエンド、U/Sフロントエンド
41 超音波パルサ、U/Sパルサ、超音波(U/S)パルサ
42 超音波受信機モジュール、U/S受信機モジュール、増幅器およびADC
43 スイッチ
50 プロセッサ
60 汎用プロセッサ
80 領域
101 エラストグラム
102 ディスプレイ
103 超音波エコーMモードディスプレイ
105 弾性波伝播画像
105C 圧縮波
105S せん断波
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【外国語明細書】