(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135638
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】効率的で堅牢な線マッチングのアプローチ
(51)【国際特許分類】
B25J 13/08 20060101AFI20230921BHJP
【FI】
B25J13/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023038044
(22)【出願日】2023-03-10
(31)【優先権主張番号】17/654,909
(32)【優先日】2022-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】ワン カイメン
(72)【発明者】
【氏名】ファン ヨンシアン
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS06
3C707KS11
3C707KT01
3C707KT03
3C707KT06
3C707KT11
3C707LT06
3C707LW08
(57)【要約】
【課題】ロボットによる設置及び組み立て操作のビジュアルサーボ制御の線マッチング技術を改善する。
【解決手段】ワークピースの設置を実行するロボットの画像ベースのビジュアルサーボ制御中の線マッチングの方法は、人の実演からの目標画像及びロボットの実行段階の現在の画像を使用する。複数の線が目標画像及び現在の画像で識別され、目標線-現在の線の最初のペアリングは距離及び角度に基づいて定められる。最適化計算は、カメラ画像平面内の2Dデータを使用して目標線と現在の線との間の方向及び距離の両方を含むように定式化されたコスト関数、並びに画像平面内の線を3Dのワークピースの姿勢に関連付ける制約式を最小化する画像変換を決定する。コスト関数を最小化する回転及び並進変換は線ペアマッチングを更新するために使用され、最良の線ペアはビジュアルサーボ中にロボットモーションを制御する差分信号を計算するために使用される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像ベースのビジュアルサーボ(IBVS)のために線の特徴をマッチングさせる方法であって、前記方法は、
角度類似性及び距離に基づいて、ワークピースの目標画像内の線の、前記ワークピースの現在の画像内の線との最初のペアリングを決定することと、
プロセッサ及びメモリを有するコンピュータ上で、3つ以上のランダムに選択された前記線のペアを使用して最適化計算を実行して、2次元(2D)カメラ画像空間内に射影される各ペア内の第1及び第2の線間の方向及び距離について定められるコスト関数を最小化する回転及び並進変換を決定することと、
前記回転及び並進変換を使用して前記最初のペアリングから計算される全ての線ペアについての方向及び距離の誤差が閾値未満になるまで、新しい3つ以上のランダムに選択された前記線のペアを使用して前記最適化計算を繰り返すことと、
前記回転及び並進変換を使用して、前記目標画像内の前記線の、前記現在の画像内の前記線との更新されたペアリングを決定することと、
を含み、
前記更新されたペアリングからの線ペアの最もよくマッチングされたセットは、IBVSロボットモーション制御計算で使用される、方法。
【請求項2】
前記目標画像は、事前の実演からの所望の最終的な位置における前記ワークピースを表し、前記現在の画像は、グリッパーを有するロボットによって操作されている前記ワークピースを表す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所望の最終的な位置における前記ワークピースは、アセンブリ内に設置される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記事前の実演は、人の実演者によって手動で実行されたものである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記目標画像及び前記現在の画像の両方が2次元カメラ又は3次元カメラによって提供される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記目標画像内の前記線及び前記現在の画像内の前記線は、前記コンピュータによって画像分析で識別される前記ワークピースの幾何学的特徴に対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記線の最初のペアリングを決定することは、前記現在の画像内の線の順序付けされたセットが、角度類似性に基づいて前記目標画像内の各線とマッチングされる第1のステップと、前記順序付けされたセットからの単一の線が、距離に基づいて前記目標画像内の各線とマッチングされる第2のステップと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記最適化計算は、前記第1の線の3次元(3D)表示を前記2Dカメラ画像空間内に射影し、且つ、前記回転及び並進変換を適用した後の前記第2の線の3D表示を前記2Dカメラ画像空間内に射影する制約を満たしつつ、前記3つ以上のランダムに選択された線のペアについての前記コスト関数を最小化する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記コスト関数は、全ての選択された線のペアについて、重み付けされた方向差の項及び重み付けされた距離の項の総和を最小化し、前記方向差の項は、2Dカメラ画像空間内の前記第1及び第2の線間の差のノルムであり、前記距離の項は、2Dカメラ画像空間内の前記第1及び第2の線間の距離である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
線ペアの前記最もよくマッチングされたセットは、3つ以上の線のペアを含む前記線の前記更新されたペアリングのサブセットであり、前記回転及び並進変換を適用した後、各ペア内の第2の線は、方向及び距離の既定のレベルの精度内で前記ペア内の第1の線とマッチングする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記IBVSロボットモーション制御計算は、線ペアの前記最もよくマッチングされたセット内の第1及び第2の線を第1及び第2の行列内に配置することと、前記第1及び第2の行列間の差を掛けた擬似ヤコビ行列の関数としてロボット速度ベクトルを計算することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
画像ベースのビジュアルサーボ(IBVS)のために線の特徴をマッチングさせる方法であって、前記方法は、
事前の実演からの所望の最終的な位置におけるワークピースの目標画像、及び、グリッパーを有するロボットによって操作されている前記ワークピースの現在の画像を提供することと、
前記目標画像及び前記現在の画像の各々における前記ワークピースの幾何学的特徴に対応する複数の線を識別することと、
角度類似性及び距離に基づいて、前記目標画像内の前記線の、前記現在の画像内の前記線との最初のペアリングを決定することと、
プロセッサ及びメモリを有するコンピュータ上で、3つ以上のランダムに選択された前記線のペアを使用して最適化計算を実行して、2次元(2D)カメラ画像空間内に射影される各ペア内の第1及び第2の線間の方向及び距離について定められるコスト関数を最小化する回転及び並進変換を決定することと、
前記回転及び並進変換を使用して前記最初のペアリングから全ての線ペアについて方向及び距離の誤差を計算することと、
前記誤差が閾値を超える場合、新しい3つ以上のランダムに選択された前記線のペアを使用して前記最適化計算を再実行することと、
前記誤差が閾値未満である場合、前記回転及び並進変換を使用して、前記目標画像内の前記線の、前記現在の画像内の前記線との更新されたペアリングを決定することと、
前記更新されたペアリングから線ペアの最もよくマッチングされたセットを使用して、IBVS誤差信号を計算することと、
前記誤差信号を使用して、ロボットモーション命令を計算することと、
を含む、方法。
【請求項13】
ワークピースの画像ベースのビジュアルサーボロボット操作を実行するシステムであって、
前記システムは、
3次元(3D)カメラと、
グリッパーを有するロボットと、
プロセッサ及びメモリを有するロボットコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、前記ロボット及び前記カメラと通信し、前記コントローラは、
事前の実演からの所望の最終的な位置における前記ワークピースの目標画像、及び、前記グリッパーを有する前記ロボットによって操作されている前記ワークピースの現在の画像を前記カメラから受信し、
角度類似性及び距離に基づいて、前記目標画像内の線の、現在の画像内の線との最初のペアリングを決定し、
3つ以上のランダムに選択された前記線のペアを使用して最適化計算を実行して、2次元(2D)カメラ画像空間内に射影される各ペア内の第1及び第2の線間の方向及び距離について定められるコスト関数を最小化する回転及び並進変換を決定し、
前記回転及び並進変換を使用して前記最初のペアリングから計算される全ての線ペアについての方向及び距離の誤差が閾値未満になるまで、新しい3つ以上のランダムに選択された前記線のペアを使用して前記最適化計算を繰り返し、
前記回転及び並進変換を使用して、前記目標画像内の前記線の、前記現在の画像内の前記線との更新されたペアリングを決定し、
IBVSロボットモーション制御計算で前記更新されたペアリングから線ペアの最もよくマッチングされたセットを使用し、且つ、
前記IBVSロボットモーション制御計算に基づいて前記ワークピースを移動させるように前記ロボットを制御するように構成されている、システム。
【請求項14】
前記所望の最終的な位置における前記ワークピースは、アセンブリ内に設置される、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記事前の実演は、人の実演者によって手動で実行されたものである、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記目標画像内の前記線及び前記現在の画像内の前記線は、前記ロボットコントローラによって画像分析で識別される前記ワークピースの幾何学的特徴に対応する、請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
前記線の最初のペアリングを決定することは、前記現在の画像内の線の順序付けされたセットが、角度類似性に基づいて前記目標画像内の各線とマッチングされる第1のステップと、前記順序付けされたセットからの単一の線が、距離に基づいて前記目標画像内の各線とマッチングされる第2のステップと、を含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項18】
前記最適化計算は、前記第1の線の3次元(3D)表示を前記2Dカメラ画像空間内に射影し、且つ、前記回転及び並進変換を適用した後の前記第2の線の3D表示を前記2Dカメラ画像空間内に射影する制約を満たしつつ、前記3つ以上のランダムに選択された線のペアについての前記コスト関数を最小化する、請求項13に記載のシステム。
【請求項19】
前記コスト関数は、全ての選択された線のペアについて、重み付けされた方向差の項及び重み付けされた距離の項の総和を最小化し、前記方向差の項は、2Dカメラ画像空間内の前記第1及び第2の線間の差のノルムであり、前記距離の項は、2Dカメラ画像空間内の前記第1及び第2の線間の距離である、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記IBVSロボットモーション制御計算は、線ペアの前記最もよくマッチングされたセット内の第1及び第2の線を第1及び第2の行列内に配置することと、前記第1及び第2の行列間の差を掛けた擬似ヤコビ行列の関数としてロボット速度ベクトルを計算することと、を含む、請求項13に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、産業用ロボットモーション制御の分野に関し、より具体的には、ワークピースの配置操作を実行するロボットのビジュアルサーボ制御のための線マッチング方法に関する。ビジュアルサーボは、人の実演段階とロボットによる実行段階との間での、ワークピースにおける画像ベースの線マッチングを使用する。線マッチングは、最良の線ペアマッチングを見出すための最適化関数を使用する。線マッチングは、3次元深度データの不正確性を回避するために、カメラ画像平面内の2次元データを使用して実行される。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットを使用して、製造、組み立て及び材料の移動などの様々な操作を繰り返し実行させることはよく知られている。しかしながら、コンベヤー上のランダムな位置及び向きのワークピースをピックアップし、そのワークピースをコンテナ又は第2のコンベヤーに移動させるなどといった、非常に単純な操作であっても実行するようにロボットに教示することは、従来の方法では、直感的でなく、時間及び/又は費用がかかる問題があった。構成部品組み立てなどのより正確な操作を実行するようにロボットに教示することは更に問題であった。
【0003】
ロボットは従来から、ティーチペンダントを使用して人のオペレータによって、又は、人のオペレータの移動を記録するためのモーションキャプチャシステムを使用することによって、上述の種類のピックアンドプレース操作を実行するように教示されてきた。しかしながら、ティーチペンダントの使用は遅く、直感的でなく、モーションキャプチャシステムは高価で、設定するのに時間がかかる。これらの従来のシステムの欠点は、カメラを使用するがティーチペンダント及びモーションキャプチャシステムを使用しない人の実演によるロボット教示方法の開発につながっている。カメラ画像からの人の実演による教示は、多数の用途において従来の方法よりも改善されたものである。
【0004】
カメラ画像からの人の実演による教示は、アセンブリ内への構成部品の設置などの用途に必要とされるようなワークピースの正確な配置に必要とされる位置精度を欠如し得る。この制限を克服するために、ビジュアルサーボ制御が、構成部品の配置の最終的な段階に加えられ得る。ビジュアルサーボに伴う1つの問題は、人の実演画像からのワークピースの幾何学的特徴を、ロボット操作の画像からのワークピースの対応する特徴に確実にマッチングさせることである。画像内の幾何学的特徴が正確にマッチングされない場合、結果として生じる構成部品の組み立て操作は成功しない。
【0005】
上述の状況を鑑みて、ロボットによる設置及び組み立て操作のビジュアルサーボ制御のために線マッチング技術の改善が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本開示の教示に従って、画像ベースのビジュアルサーボ中の線マッチングの方法が提示される。線マッチングは、人の実演段階からの目標画像を、ロボットによる実行段階の現在の画像と比較することによってワークピースの設置を実行するロボットのビジュアルサーボ制御中に採用される。複数の線が、目標画像及び現在の画像で識別され、目標線-現在の線の最初のペアリングは、距離及び角度に基づいて定められる。最適化計算は、カメラ画像平面内の2Dデータを使用して目標線と現在の線との間の方向及び距離の両方を含むように定式化されたコスト関数、並びに、画像平面内の線を3Dのワークピースの姿勢に関連付ける制約式を最小化する画像変換を決定する。コスト関数を最小化する回転及び並進変換は、線ペアマッチングを更新するために使用され、最良の線ペアは、ビジュアルサーボ中にロボットモーションを制御する差分信号を計算するために使用される。
【0007】
本開示装置及び方法の追加的特徴は、添付の図面と併せて、以下の記載及び付属する特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係わる、画像ベースのビジュアルサーボの使用を含み、ワークピースのカメラ画像、及び、人の手の実演によって予め教示された軌跡を使用してピックアンドプレース操作を実行するためのロボットのシステムの図である。
【
図2A】
図2Aは、本開示の一実施形態に係わる、人の実演によってアセンブリ内に設置されているワークピースの図であり、ロボット位置決めの最終的な段階は、画像ベースのビジュアルサーボによって制御される。
【
図2B】
図2Bは、本開示の一実施形態に係わる、ロボットによってアセンブリ内に設置されているワークピースの図であり、ロボット位置決めの最終的な段階は、画像ベースのビジュアルサーボによって制御される。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態に係わる、画像ベースのビジュアルサーボロボット制御方法の一部としての、線マッチング最適化計算用の2D画像空間内の線を定める技術の図である。
【
図4A】
図4Aは、本開示の一実施形態に係わる、人の実演者によってアセンブリ内に設置されるワークピースの目標画像の図であり、ワークピース上の複数の線は、目標画像及び現在の画像の両方で識別されている。
【
図4B】
図4Bは、本開示の一実施形態に係わる、ロボットによってアセンブリ内に設置されているワークピースの現在の画像の図であり、ワークピース上の複数の線は、目標画像及び現在の画像の両方で識別されている。
【
図5A】
図5Aは、本開示の一実施形態に係わる、
図4Aの目標画像の図であり、ワークピース上の4本の線は、目標画像及び現在の画像の両方で識別されており、各画像内の4本の線は、線マッチング最適化計算で使用される最初の線ペアリングを表す。
【
図5B】
図5Bは、本開示の一実施形態に係わる、
図4Bの現在の画像の図であり、ワークピース上の4本の線は、目標画像及び現在の画像の両方で識別されており、各画像内の4本の線は、線マッチング最適化計算で使用される最初の線ペアリングを表す。
【
図6】
図6は、本開示の一実施形態に係わる、画像ベースのビジュアルサーボロボット制御中の線マッチングの方法のフロー図であり、最適化計算は、線ペアをマッチングし、現在の画像内のワークピースと目標画像内のワークピースとの間の回転及び並進変換を決定するために使用される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
画像ベースのビジュアルサーボロボット制御用の線マッチング技術に関する本開示の実施形態に関する以下の議論は、本質的に単なる例示であり、開示される装置及び技術、又は、これら装置及び技術の用途若しくは使用を制限することを全く意図しない。
【0010】
産業用ロボットを様々な製造、組み立て及び材料移動操作に使用することはよく知られている。既知の1種のロボット操作は、「ピック、ムーブ、アンド、プレース」として知られることがある。ロボットは、第1の位置で部品又はワークピースをピックアップし、部品を移動させて第2の位置に配置する。第1の位置は、金型から取り出したばかりの部品など、ランダムな向きの部品が流れるコンベヤーベルトであり得る。第2の位置は、異なる操作に導く別のコンベヤー又は輸送コンテナであってもよいが、いずれの場合も、部品は第2の位置で特定の位置に配置され、特定の姿勢に向けられる必要がある。
【0011】
より特化した種類のロボットによる部品の移動は、ロボットに構成部品をピックアップさせ、構成部品をアセンブリ内に設置させることに関する。アセンブリ内の構成部品の設置は通常、例えば、ワークピースがコンベヤー上に単に配置される他の用途よりもはるかに正確な構成部品(ワークピース)の配置を必要とする。このように正確な配置が必要であるため、特に、ワークピースのロボットの把持の変化がワークピースの配置の変化をもたらすことを考慮すると、ロボットの構成部品の組み立て操作を教示することは困難であった。
【0012】
人の実演によるロボット教示も知られており、ここで、カメラは、開始(ピック)位置から目的(プレース)位置までワークピースを移動させる人の手の画像を撮影する。カメラ画像からの人の実演による教示は、アセンブリ内への構成部品の設置などの用途に必要とされるようなワークピースの正確な配置に必要とされる位置精度を欠如し得る。この制限を克服するために、ビジュアルサーボ制御が、構成部品の配置の最終的な段階に加えられ得る。ビジュアルサーボ制御を用いた人の実演によるロボット教示の技術は、2021年12月6日に出願され、その内容全体を参照により本明細書に援用される、本出願の同一出願人による「ROBOT TEACHING BY DEMONSTRATION WITH VISUAL SERVOING」と題された米国特許出願第17/457,688号で開示されている。前述の出願は以下で、「688号出願」と称される。
【0013】
図1は、688号出願に開示され、本開示の一実施形態で使用されるように、画像ベースのビジュアルサーボ(IBVS)の使用を含み、ワークピースのカメラ画像、及び、人の手の実演によって予め教示された軌跡を使用してピックアンドプレース操作を実行するためのロボットのシステム100の図である。システム100は、コントローラ140と通信するカメラ130を含むワークセル102内に配置されている。ワークセル102、カメラ130、及び、コントローラ140は、更に後述するように、構成部品の移動及び設置の人の実演のために予め使用される。カメラ130及びコントローラ140に加えて、ワークセル102は、通常、物理ケーブル142を介してコントローラ140と通信するロボット110を含む。ロボット110は、グリッパー120を操作する。
【0014】
システム100は、人のオペレータによって教示されたピック、ムーブ、アンド、プレース操作を「再現」するように設計されている。ピック、ムーブ、アンド、プレースステップで記録された手及びワークピースの位置データは、以下のようなロボットプログラミング命令を生成するために使用される。ロボット110は、グリッパー120を経路1に沿って位置120Aまで移動させて、位置150Aでワークピース150をピックアップする。次いで、(120Bとして示される)グリッパー120は、ワークピース150を経路2に沿って、最終的な(設置)位置である位置150Cまで移動させる。次いで、ロボット110は、グリッパー120を経路3に沿って移動させてホーム位置まで戻す。
【0015】
上述のシステム100では、ワークピース150Cの最終的な設置位置は、人の実演段階からの最終的なワークピースの位置によって定められる。更に、画像ベースのビジュアルサーボ(IBVS)は、人の実演からの最終的なワークピースの位置とマッチングするように、ロボットによる設置中にワークピース150を正確に位置合わせするために、経路2の最終的な部分の間に使用され得る。IBVSロボット制御の使用は、人の実演(設置)の後のワークピースの画像を、ロボットによる設置の間のワークピースの画像と直接的に比較することによって、ロボット把持精度の不確実性を排除する。
【0016】
画像ベースのビジュアルサーボに伴う1つの問題は、人の実演画像からのワークピースの幾何学的特徴を、ロボットによる設置操作の画像からのワークピースの対応する特徴に確実にマッチングさせることである。画像内の幾何学的特徴が正確にマッチングされない場合、結果として生じる構成部品の配置が不正確になり、構成部品の設置は成功しない。
【0017】
対象物(ワークピース)上の多数の様々な種類の幾何学的特徴は、IBVSで追跡され得る。当該特徴は、点、線、円、他の楕円、円柱、更には不規則な形状を含み、位置誤差は、2重積分画像モーメント計算を介して計算され得る。概して、点の特徴の使用は、実際のロボット環境の変化に対して堅牢(ロバスト)ではない。例えば、画像空間内の点の明白な位置は、照明条件により変化する場合があり、多数の点の特徴がほとんどの対象物上で非常に近くに配置され得るため、様々な特徴の点を分離又は区別することが困難な場合がある。一方、複雑な2D及び3D形状に関連付けられたIBVS計算は、冗長になる場合があり、多数の対象物は、使用され得る円及び円柱などの幾何学的特徴を有していない。結局、特徴の種類の選択は、特定の対象物(ワークピース)及び設置用途に最もよく適合するように行われ得る。多数の種類のワークピースに対して、線の特徴は、堅牢性及び計算単純性の最良の組み合わせを提供する。
【0018】
図2A及び
図2Bはそれぞれ、本開示の一実施形態に係わる、人の実演及びロボットによってアセンブリ内に設置されているワークピースの図であり、ロボット位置決めの最終的な段階は、画像ベースのビジュアルサーボによって制御される。
図2A/
図2B及び残りの本開示全体を通して使用される例は、コンピュータシャーシなどの電子デバイスアセンブリ内に設置されている冷却ファンである。コンピュータファンの設置は、(ホール内へのピンなどの)複数の機械的特徴及び(スロット内へのブレードなどの)電気接点の正確な位置合わせを必要とし得る。配置精度を必要とするため、アセンブリとのファンユニットの任意の位置又は回転の不整合は、設置ステップの失敗をもたらす。
【0019】
図2Aでは、人の実演者(手200だけが認識できる)は、ワークピース210Aをアセンブリ220A内に設置する。実演者は、まず、卓上又はトレイなどの近くの位置からワークピース210Aをピックアップし、ボックス240によって示されるワークピース210Aの設置位置にワークピース210Aを移動させることによって、このタスクを実行する。人の実演者は、自らの視覚及び触覚を用いて、機械的特徴及び電気接点が位置合わせされるようにアセンブリ220Aに対してワークピース210Aを適切に位置決めする。次いで、人の実演者は、摩擦及び/又は機械的スナップロックがアセンブリ220A内のワークピース210Aを保持するように、下向きに押すことなどによってワークピース210Aを設置する。
【0020】
1つ以上のカメラは、前述のように人の実演者の画像を撮影する。カメラ画像は、688号出願に記載され
図1に示されるように、アセンブリ220Aの外側の位置からボックス240までのワークピースの全体的な軌跡を定めるために使用され得る。加えて、ワークピース210Aの最終的な設置位置におけるワークピース210Aの画像は、688号出願にも記載されるように、ロボットによる設置プロセスのIBVS制御に使用される。
【0021】
IBVS制御は、目標又は所望の画像(人によって設置されるワークピース)からの幾何学的特徴を、ロボットによる設置の現在の画像からの同様の特徴にマッチングさせることを必要とする。
図2Aでは、(斜めのハッチング線フォントで示される)線250、252、及び、254は、カメラ画像内で検出されるワークピース210Aの直線の特徴を表す。線250、252、及び、254は後に、
図2Bのカメラ画像内で識別されるワークピースの線の特徴と比較される。
【0022】
図2Bでは、アセンブリ220B内の設置のためにワークピース210Bを操作するロボットアーム202及びグリッパー204が見える。
図2Bの画像が分析され、カメラ画像内で検出されるワークピース210Bの直線の特徴を表す線260、262、及び、264が識別されている。ロボットのIBVS制御の間、ワークピース210Bは、ロボット/グリッパーによって操作されて、線260を線250と位置合わせし、線262を線252と位置合わせし、線264を線254と位置合わせする。このようなワークピース210Bの操作は、アセンブリ内への構成部品の設置の成功をもたらす。
【0023】
上述したように、IBVSのロボットによる構成部品の設置の成功は、目標画像(予めの実演)からのワークピースの線の特徴を、ロボットによる設置の現在の画像からの対応するワークピースの線の特徴に正確にマッチングさせることにかかっている。IBVS制御では、目標画像は、好ましくは、ロボットによる設置が行われるときと同じワークセル内の同じカメラによって撮影される。2つの画像間の線マッチングの技術は、当該技術分野で知られているが、当該既存の線マッチング技術は、何らかの点で欠如している。ラインバンド記述子(LBD)として知られている既存の技術は、線分を記述するために勾配計算で周囲のピクセル値を使用する。しかしながら、このLBD技術は、様々な視点からの同一のシーンの2つの画像をマッチングさせるのにより適しており、したがって、IBVSに適していない傾向がある。別の既知の線マッチング技術は、3次元(3D)データを使用して2本の候補線間の回転及び並進変換を計算する。しかしながら、通常、3Dピクセル深度データに不正確性が存在することが知られているため、この技術は、対応する不正確性の欠点を有し得る。
【0024】
本開示は、2次元(2D)画像空間データに基づいて候補線ペア間の変換を計算し、それによって3Dピクセル深度データの内在する不正確性を回避する、2つの画像間の線マッチングの技術を記載する。開示される技術は更に、2部の最初の線ペアリング計算、及び、ランダムの線ペアを使用した反復最適化計算を使用して、線ペアマッチング精度を最大化する。開示される技術の詳細を
図3~
図6と関連して後述する。
【0025】
図3は、本開示の一実施形態に係わる、画像ベースのビジュアルサーボロボット制御方法の一部としての、線マッチング最適化計算用の2D画像空間内の線を定める技術の図である。ワークピース310は、3D空間内で姿勢310A及び姿勢310Bで示されており、姿勢310Aは、目標画像(人の実演段階からの最終的な姿勢)を表し、姿勢310Bは、ロボットによる設置からの現在の画像を表す。画像ベースのビジュアルサーボの究極の目的は、現在の画像内の線の特徴を、目標画像内の対応する線の特徴に向けて移動させるロボットモーションを計算することである。ロボットモーションを計算するために、目標画像と現在の画像との間で線ペアを正確にマッチングさせることが必要である。次いで、この線マッチングは、まず、ワークピースの姿勢310Bとワークピースの姿勢310Aとの間の線マッチング誤差を最小化する回転変換R及び並進変換tを決定することによって最も正確に行われ得る。
【0026】
線l
1(320)は、ワークピースの姿勢310Aで識別され、対応する線l
2(322)は、ワークピースの姿勢310Bで識別される。暫定的に(後述するように)、線l
1(320)及び線l
2(322)はそれぞれ、目標画像及び現在の画像内のワークピース310上で同じ線の特徴を表すと考えられる。同様に、他の線ペア330/332及び340/342が識別されるが、当該線ペア330/332及び340/342については、更に
図3を参照して説明しない。
【0027】
3Dカメラ350は、(ワークピース310Aを伴う)目標画像及び(ワークピース310Bを伴う)現在の画像の両方を撮影するために使用される。カメラ2D画像空間(平面)360が示されており、2D画像空間360は、平面(x-y)座標系空間内のピクセルとしての対象物を表す。2D画像空間360内のベクトルv1(370)は、3D空間からの線l1(320)の射影に対応する。同様に、2D画像空間360内のベクトルv2(372)は、3D空間からの線l2(322)の射影に対応する。ベクトルv1(370)とv2(372)との間の距離dは、ベクトルv1(370)及びv2(372)の中点間の距離などのように任意の好適な方法で定められる。
【0028】
図3に示される上述の関係を使用して、選択されたセットのn個の線ペアに基づいて、2D画像空間内の変換された線における誤差を最小化するコスト関数が定められ得る。コスト関数及び対応する制約式は、以下の通りである。
【数1】
【数2】
【数3】
ここで、R及びtは、上述の回転変換値及び並進変換値であり、Pは、3D空間内の位置を2D画像空間内のピクセル位置に関連付ける既知のカメラ射影行列であり、l
1
2dは、2D画像空間内の線l
1の射影であり、v
1と等しく、l
2
2dは、2D画像空間内の線l
2の射影であり、v
2と等しく、l
1
3d及びl
2
3dはそれぞれ、3Dのl
1及びl
2である。そして、w
1及びw
2は、式(1)のコスト関数総和における、ベクトル方向項の重み係数(w
1)及びベクトル距離項の重み係数(w
2)である。
【0029】
本開示の技術は、2D画像空間内で式(1)のコスト関数を定めることによって、ピクセル深度データに伴う不正確性を回避する。
【0030】
図3は、目標画像と現在の画像との間の、可能性のある3つの線ペアリングを示す。これらは、線l
2(322)とペアの線l
1(320)、線ペア(330/332)、及び、線ペア(340/342)である。当該3つの線ペアがそのように定められ、式(1)~(3)の最適化が、全ての3つの線ペアについて計算される(n=3)。現実世界の例では、通常、より多数の線が、目標画像及び現在の画像で定められ、その課題は、現在の画像内の各線を、当該各線と適切に対応する目標画像内の線に適切にマッチングさせることにある。これは、後の図に示され、更に後述される。
【0031】
図4Aは、本開示の一実施形態に係わる、人の実演者によってアセンブリ412内に設置されるワークピース410Aの目標画像400Aの図であり、
図4Bは、本開示の一実施形態に係わる、ロボットによってアセンブリ412内に設置されているワークピース410Bの現在の画像400Bの図であり、ワークピース上の複数の線は、目標画像400A及び現在の画像400Bの両方で識別されている。
【0032】
実質的にワークピースのみを含む作業領域に目標画像(人の実演画像)をトリミングする技術は、688号出願に開示されている。当該技術は、移動が生じているピクセル領域を識別することと、人の手に属することが分かっている特徴を減算することと、を含む。直線の特徴がワークピース自体にのみ検出されるように当該技術が適用されても、特に、多数の短い直線の幾何学的特徴を有する冷却ファンワークピースの場合、依然、多数の線が通常、目標画像400A内で定められている。
図4Aでは、12本を超える線が、目標画像400A内のワークピース410A上で識別される。図面の図において不必要に乱雑になるのを回避するために、当該線の全てには、参照番号を付していない。線420~430が識別され、更に線マッチング手順を参照して説明される。
【0033】
現在の画像400Bは、ビジュアルサーボによって制御されるロボットによる設置の間に撮影された連続的な一連の画像のうちの1つだけを表す。現在の画像がリアルタイムで迅速に連続して提供されるため、不要な線を取り除くために現在の画像を前処理するのに利用可能な時間がほとんどないか又は全くない場合がある。したがって、多数の線が、現在の画像内で識別され得、ワークピース410Bとの関連付けさえもされていない。多数の当該線は、414として指定される領域内で認識できる。ワークピース410B自体の上に、再び、12本を超える線が、現在の画像400B内で識別される。図面の図において不必要に乱雑になるのを回避するために、当該線の全てには、参照番号を付していない。線440~450は、現在の画像400B内のワークピース410B上で識別され、更に線マッチング手順を参照して説明される。
【0034】
図4A内の線420~430及び
図4B内の線440~450は、開示される線マッチング手順の次の説明のために示されている。線420~450は、人の実演、及び、ビジュアルサーボによって制御されるロボットによる設置の実際のカメラ画像に基づいた図面の図における具体的な特徴と正確にマッチングすることを意味するものではない。
【0035】
ワークピース410Bは依然、ロボットによって、ワークピース410Bの最終的な位置に向けて操作されているため、画像ベースのビジュアルサーボの間、現在の画像400B内のワークピース410Bは定義により、現在の画像400A内のワークピース410Aとは異なる位置及び/又は向きにある。このため、特に、多数の線が各画像内に存在する場合、目標画像と現在の画像との間で線を正確にマッチングさせることが困難な場合がある。この問題を克服するために、本開示の技術は、後述の3ステップの線マッチング手順を使用する。
【0036】
開示される線マッチング手順の第1のステップは、目標画像内の線と現在の画像内の線との間で最初の線ペアリングを生成することである。この第1のステップ自体は、2つのサブステップ、すなわち、角度類似性比較及び距離比較を含む。以下の説明について、線A、線B、線C、線D、線E、及び、線Fとして指定される(目標画像400A内の)ワークピース410A上の線420~430を検討する。同様に、線P、線Q、線R、線S、線T、及び、線Uとして指定される(現在の画像400B内の)ワークピース410B上の線440~450を検討する。
【0037】
ステップ1.1(角度類似性比較)では、(目標画像400A内の)ワークピース410A上の各線は、2D画像空間内の線の明白な角度の比較に基づいて、(目標の現在400Bの)ワークピース410B上のいくつかの線とマッチングされる。例えば、目標画像400Aからの線Aの角度が現在の画像400B内の線の全ての角度と比較され、角度差が小さい順に線を挙げるランク順序付けが生成される、換言すれば、まず、線Aの角度に最も近い角度を有する現在の画像400Bからの線が挙げられ、2番目に、次に近い角度を有する線が挙げられ、以降同様である。
【0038】
上述の計算に基づいて、ステップ1.1(角度類似性比較)は、目標画像400A内の全ての線に対する現在の画像400Bからの同様の角度の線のランク順序付けリストをもたらす。角度類似性リストは、以下の表に示される。
【表1】
【0039】
ステップ1.2(距離比較)では、(目標画像400A内の)ワークピース410A上の各線から、角度類似性からの各線のランク順序付けリスト内の各線までの距離が計算される。例えば、表1から、線Aから線Tまでの距離が計算され、線Aから線Rまでの距離、線Aから線Pまでの距離などが一緒に計算される。
【0040】
各線ペアについての距離は、以下のように計算される。2本の線が2D画像空間内で「重複する」場合(すなわち、ペア内の第1の線が、垂直ベクトルに沿って射影され、ペア内の第2の線の部分と交差し得る場合)、重複する各端における距離が計算され、これらの2つの距離の最大値が使用される。ペア内の2本の線が2D画像空間内で重複しない場合、距離として、ペア内の一方の線の中心から、ペア内の他方の線の中心までの距離が使用される。
【0041】
(目標画像400A内の)ワークピース410A上の各線について、角度類似性からのトップランクの線が、距離計算においても最も近い線である場合、その線が最初の線ペアとして識別される。距離比較が角度比較とマッチングしない場合、最初のペアリングについて最もよくマッチングする線を識別するために、角度差及び距離の重み付け比較が使用され得る。
【0042】
上述の計算に基づいて、ステップ1.2(距離及び角度比較)は、目標画像400A内の各線と最もよくマッチングする現在の画像400Bからの線の1:1のペアリングをもたらす。角度類似性及び距離の両方に基づく最初のペアリングは、以下の表に示される。
【表2】
【0043】
表2に示される角度及び距離比較からの線ペアリングは単に、最初のペアリングであることを強調する。この最初のペアリングにおける線ペアリングの一部は、目標画像及び現在の画像内の実際の幾何学的特徴の正確なペアリングでない場合もあるが、開示される線マッチング手順は、この種の不確実性に対処するのに充分堅牢である。これについて、以下の説明で更に説明する。通常、目標画像及び現在の画像の各々において6本をはるかに超える数の線が存在することにも留意されたい。このことは、後述の計算でも重要である。
【0044】
線マッチング手順の第2のステップは、最初のペアリング(第1のステップ)から複数の線のペアをランダムに選択し、変換R及びtの最良の値を見出して前述のコスト関数を最小化するために最適化計算を実行することである。
図5A及び
図5Bに示される例の以下の説明では、ランダムに選択された4つの線のペアが使用されるが、より少ない数(3つ)の線ペア又はより多い数(5つ以上)の線ペアが選択されてもよい。
【0045】
図5Aは、本開示の一実施形態に係わる、
図4Aの目標画像400Aの図であり、
図5Bは、本開示の一実施形態に係わる、
図4Bの現在の画像400Bの図であり、ワークピース上の4本の線は、目標画像及び現在の画像の両方で識別されており、各画像内の4本の線は、線マッチング最適化計算で使用される最初の線ペアリングを表す。
【0046】
図5A及び
図5Bは、ワークピース上で識別される線においてのみ
図4A及び
図4Bと異なる。
図5Aでは、4本の線のみ(502~508)がワークピース410A上に示されており、
図5Bでは、対応する4本の線(512~518)がワークピース410B上に示されている。ワークピース410A上の4本の線502~508及びワークピース401B上の4本の線512~518は、線マッチング最適化計算の最初の反復について選択された4つの線ペアを表す。上述の最初のペアリング計算から、線502は、線512とペアリングされ、他の線ペアリングは、(504、514)、(506、516)、及び、(508、518)であった。再度強調するが、
図4A及び
図4Bに示されるように、より多数の線及び線ペアリングが目標画像及び現在の画像内で利用可能である。
【0047】
線マッチング手順の第2のステップは、選択された4つの線ペアを使用して最適化計算を実行することである。
図3の前述の説明で、コスト関数を最小化する変換値R及びtを見出すためにどのように最適化計算が採用され得るかを記載した。コスト関数及び関連付けられる制約は、式(1)~(3)として上記で定めた。式(1)~(3)は、線l
1及びl
2のペアについて定められ、l
1は、目標画像内の幾何学的特徴を表す線であり、l
2は、現在の画像内の同じ幾何学的特徴であると考えられるものを表す線である。ここで、最初の線ペアリングを使用して、式(1)~(3)の最適化計算が
図5A及び
図5Bの4つの線ペアで実行され得る。換言すれば、n=4であり、式(1)~(3)が、4つの線ペア、すなわち、(502、512)、(504、514)、(506、516)、及び、(508、518)の各々について計算され、最適化は、これらの4つの線ペアについて目的関数を最小化するR及びtの値に収束する。
【0048】
線マッチング手順の第2のステップ(最適化計算)は、R及びtの値の所望のレベルの精度を達成するために、各回で、最初のペアリングとは異なる、ランダムに選択された4つの線のペアを使用して、必要に応じて何度も繰り返され得る。
【0049】
線マッチング手順の第3のステップは、最新の最適化計算で計算されたばかりのR及びtの値に基づいて、ペアリングされた全ての線の全誤差を評価することである。全誤差eは、以下のように計算される。
【数4】
ここで、v
1は、2D画像空間内の目標画像の線であり、v
2は、上述の回転変換R及び並進変換tの後の2D画像空間内のペアマッチングされた現在の画像の線であり、dは、前述のようにv
1とv
2との間の距離であり、w
1及びw
2は、前述のように重み係数である。線ペアの総数は、mである。例えば、表2には、6つの線ペア(線A~F、m=6)が存在していた。実際の実装では、
図4Aに示されるように、(10~20本などの)より多くの数の線が目標画像上で識別され得、これらの多数の線の各々について線ペアマッチングが定められている。したがって、実際の実装では、mの値は、10~20の範囲内であり得、全誤差は、線の全てを含む総和で計算される。
【0050】
全誤差eは、式(4)を使用して計算された後、既定の閾値δと比較される。全誤差が閾値以上(e≧δ)である場合、プロセスは、最初のペアリングとは異なるランダムに選択された4つの線のペアを使用して最適化計算が繰り返されるステップ2に戻る。これは、R及びtの異なる値をもたらし、ステップ3で全誤差が再度計算される。ステップ2及びステップ3のこのループは、全誤差が閾値未満(e<δ)になるまで続き、そのポイントで、変換値R及びtは、正確であると考えられる。
【0051】
前述したように、ステップ1での最初のペアリングからの線ペアの一部が正確でない場合であっても、ステップ2及び3での繰り返しの最適化計算及び誤差チェックは、正当な線ペアが最終的に使用され、且つ、変換R及びtの正確な値が計算されることを保証する。
【0052】
上述の線マッチング最適化計算は、目標画像(人の実演からの最終的な画像)とマッチングするように(IBVSのロボット制御中の)現在の画像を変換することが必要とされるR及びtの正確な値を提供する。次いで、R及びtの当該値は、現在の画像及び目標画像からの線を再ペアリングするために使用される。
【0053】
R及びtの最適化された値を使用して現在の画像を変換し、次いで、現在の画像の線の新しい位置を使用し、上述の線マッチング手順のステップ1における最初のペアリングに使用された角度及び距離計算を再適用することによって、現在の画像及び目標画像からの線の再ペアリングが実行される。角度及び距離計算を再適用した後、角度及び距離の特定の許容差内でマッチングする線ペアのみが、ロボットの次のIBVS制御に使用される。すなわち、目標画像内のワークピース上の特定の線が、R及びtを使用して変換した後の現在の画像内のワークピース上の線と厳密にマッチングしない場合、その特定の線は、IBVS制御計算で使用されない。同様に、現在の画像内のワークピース上の一部の線は、目標画像内のワークピース上の線との最良のマッチングではない場合があり、現在の画像からの当該線は、IBVS制御計算で使用されない。以下のIBVS制御計算について少なくとも3つの充分にマッチングされた線ペアを有することが好ましく、大抵、このことは、目標画像及び現在の画像内のワークピース上に通常、多数の線が存在するため問題ではない。
【0054】
新しい線ペアリングを用いて、ロボットの画像ベースのビジュアルサーボ制御は、現在の画像から目標画像への幾何学的特徴(線)の正確なマッチングにより実行され得る。ロボットのIBVS制御の既知の技術は、現在の画像内の幾何学的特徴と、目標画像内の対応する幾何学的特徴との間の差として「誤差」を計算し、次いで、当該誤差を使用してロボットグリッパーモーションを計算する。この技術は、以下の式で具現化される。
【数5】
【数6】
ここで、
【数7】
は、ロボットコントローラによって適用されるロボットモーション(速度)ベクトルであり、e(t)は、「誤差」であり、J
†は、既知のヤコビ行列の擬似逆であり(ヤコビの真の逆を直接的に計算することができない場合があるため、擬似逆が使用され)、λは、定数である。式(5)において、X
dは、目標画像からの線の行列であり(下付きのdは、「所望の」位置に対するものであり)、X(t)は、X
d内の線と1:1でマッチングされた現在の画像からの線の行列である。新しい現在の画像が、新しいロボット制御サイクルごとに提供されるため、行列X(t)は、時間の関数として変化する。現在の画像を変換し、線を再ペアリングした後、高品質にマッチングされた3つの線ペアが存在する例を検討する。(図面に示されていない新しい例示的な線の番号を使用した)3つの線ペアは、(線20、線44)、(線23、線47)、及び、(線25、線51)であり、各ペアで挙げられる第1の線は、目標画像からのものであり、第2の線は、現在の画像からのものである。したがって、この例では、X
d=[線20、線23、線25]であり、X(t)=[線44、線47、線51]である。
【0055】
目標画像(X
d)及び現在の画像(X(t))からの高品質にマッチングされた線のペアを使用して、ロボットのデカルト速度ベクトル(robot Cartesian velocity)
【数8】
が、式(5)及び(6)を使用して計算され、ロボットモーションの増分を制御するために使用され、次いで、新しい現在の画像が提供され、線マッチング手順を再び使用して、マッチングされた線ペアのセットを提供し式(5)及び(6)で使用して、ロボットモーションの次の増分を制御する。IBVS制御のロボットが、人の実演からの目標画像とマッチングする設置位置にワークピースを移動させるまで、このプロセスはリアルタイムで続く。
【0056】
また、前述され、688号出願で詳細に記載されるように、ロボットは、ワークピースをピックアップし、且つ、既定の軌跡の大部分(軌跡も人の実演によって教示される)に沿ってワークピースを移動させるようにプログラミングされ得、そして、IBVS制御は、優れた精度の配置が必要とされる設置の最終的な段階にのみ使用される。
【0057】
図6は、本開示の一実施形態に係わる、画像ベースのビジュアルサーボロボット制御中の線マッチングの方法のフロー
図600であり、最適化計算は、線ペアをマッチングし、現在の画像内のワークピースと目標画像内のワークピースとの間の回転及び並進変換を決定するために使用される。ボックス602で、目標画像及び現在の画像が提供される。
図1及び
図2に示され前述したように、目標画像は、人の実演からの、設置されるワークピースの最終的な画像であり、現在の画像は、IBVS制御を使用して実行されているロボットによる設置の最新の画像である。好ましい実施形態では、画像は、カメラ130によってコントローラ140に提供される。
【0058】
ボックス604で、ワークピース上の線が、目標画像及び現在の画像内で識別される。同じ目標画像が、IBVSのロボットによる設置全体を通して使用されるため、ボックス602での目標画像の提供、及び、ボックス604での目標画像内のワークピース上の線の識別は、一度だけ行われる必要がある。新しい現在の画像がロボット制御サイクルごとに使用されるため、ボックス604での現在の画像内のワークピース上の線の識別は、新しい現在の画像ごとに実行される必要がある。
【0059】
ボックス606で、最初の線ペアリングが、目標画像内のワークピース上の線と、現在の画像内のワークピース上の線との間で計算される。これは、上述したような線マッチング手順のステップ1であり、ステップ1.1は、角度類似性を計算して、目標画像からの各線について、現在の画像からの線の順序付けリストを提供し、ステップ1.2は、距離を計算し、目標画像と現在の画像との間の1:1の最初の線のペアリングをもたらす。
【0060】
ボックス608で、最適化計算が、最初のペアリングから4つのランダムの線のペアを使用して実行される。最適化計算は、前述の式(1)~(3)で定められたものであり、コスト関数式(1)を最小化する変換値R及びtを見出すことを含み、コスト関数は、2D画像空間内への線ペアのベクトル射影間での方向差の項及び距離の項を含む。決定ダイヤモンド610で、計算されたばかりのR及びtの値についての線マッチング全誤差eが式(4)を使用して計算され、誤差eは、既定の閾値δと比較される。誤差eが閾値δ以上である場合、プロセスは、ボックス608にループバックして、4つの線ペアの新しいランダムのセットを使用して最適化計算を再び実行する。
【0061】
誤差eが閾値δ未満である場合、ボックス612で、R及びtの最適化された値を使用して、線ペアマッチングを更新する。前述したように、これは、R及びtを使用して現在の画像を変換し、次いで、最初のペアリングに関する角度及び距離計算を使用して現在の画像からの線を目標画像からの線に再ペアリングすることによって行われる。ボックス612の結果は、3つ以上の充分にマッチングされた線のペアであり、各ペアは、目標画像内のワークピース上の線を、現在の画像内のワークピース上の線にマッチングさせる。
【0062】
前述したように、最適化計算は、好ましい実施形態で使用されるペアの数である4つのランダムに選択された線のペアを使用して上記に記載されている。しかしながら、より少ない数(3つ)の線ペア又はより多い数(5つ以上)の線ペアが選択されてもよい。
【0063】
ボックス614で、ボックス612からの充分にマッチングされた線ペアを使用して、IBVS制御のロボットモーションを計算する。これは、上述の式(5)及び(6)を使用して行われ、式(5)は、現在の画像からの線の行列X(t)と、目標画像からの線の行列X
dとの間の誤差信号e(t)を計算し、式(6)は、誤差信号e(t)及びヤコビの擬似逆からロボットのデカルト速度ベクトル
【数9】
を計算する。ロボットのデカルト速度ベクトル
【数10】
は、当該技術分野で既知のように、ロボットを制御するために使用されるロボット関節ベクトルを計算するために、逆運動学計算で使用され得る。ワークピースが、ワークピースの最終的な位置に設置されるまで、ロボットがワークピースを移動させるにつれて定期的に新しい現在の画像が提供されて、
図6の方法は、連続的にリアルタイムで繰り返される。
【0064】
前述の説明の全体を通して、様々なコンピュータ及びコントローラが記載及び示唆される。このようなコンピュータ及びコントローラのソフトウェアアプリケーション及びモジュールは、プロセッサ及びメモリモジュールを有する1つ以上のコンピューティングデバイス上で実行されることを理解されたい。特に、これは、上述のロボットコントローラ140内のプロセッサを含む。具体的には、コントローラ140内のプロセッサは、上述の方法でIBVSロボット制御用の最適化ベースの線マッチングを実行するように構成されている。代替的な実施形態では、本開示の線マッチング計算を実行するために、ロボットコントローラ140とは別々のコンピュータが使用されてもよく、コンピュータは、マッチングされた線ペア又はIBVS制御信号をコントローラ140に提供する。
【0065】
先に概説したように、画像ベースのビジュアルサーボロボット制御用の開示される線マッチング技術は、人の実演からの目標画像内の特徴と、ロボットによる実行からの現在の画像内の対応する特徴との間の高速且つ正確な線マッチングを提供する。線マッチング技術は、3D深度データの不正確性を回避するために2D画像平面データを使用するコスト関数を含み、目標画像及び現在の画像からの適切にマッチングされた幾何学的特徴のみが画像ベースのビジュアルサーボ中にロボットを制御するために使用されることを保証する更新された線ペアを最終的に提供する。
【0066】
ここまで、画像ベースのビジュアルサーボロボット制御用の線マッチング技術のいくつかの好ましい態様及び実施形態を述べてきたが、当業者によって、それらの修正、並び替え、追加、及び、副次的組み合わせが認識されるであろう。したがって、以下の添付の特許請求の範囲及び以下に導入される特許請求の範囲は、これらの真の精神及び範囲内にあるよう、そのような修正、並び替え、追加、及び、副次的組み合わせを全て含むと解釈されることが意図される。
【外国語明細書】