(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135640
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】コンベヤベルト、特に抄紙機用の移送ベルト
(51)【国際特許分類】
D21F 7/08 20060101AFI20230921BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20230921BHJP
D03D 15/283 20210101ALI20230921BHJP
D06M 17/00 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
D21F7/08 A
D21F7/08 Z
D03D1/00 D
D03D15/283
D03D1/00 A
D06M17/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038934
(22)【出願日】2023-03-13
(31)【優先権主張番号】20 2022 101 383.7
(32)【優先日】2022-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】507085276
【氏名又は名称】ハイムバッハ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100135839
【弁理士】
【氏名又は名称】大南 匡史
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン モルス
(72)【発明者】
【氏名】ディルク プラスチャク
(72)【発明者】
【氏名】ディーター テルグマン
【テーマコード(参考)】
4L032
4L048
4L055
【Fターム(参考)】
4L032AA06
4L032AA07
4L032AB02
4L032AB07
4L032AC01
4L032DA00
4L032EA06
4L048AA20
4L048AA21
4L048AA24
4L048AB01
4L048AB06
4L048AB10
4L048AB12
4L048BA01
4L048CA15
4L048DA44
4L048EB00
4L055AG82
4L055AG85
4L055AG86
4L055AJ07
4L055CE36
4L055CF26
4L055CF28
4L055CH20
4L055EA12
4L055EA15
4L055EA19
4L055EA27
4L055FA22
4L055FA30
(57)【要約】
【課題】比較的少ない労力で製造することができ、同時に比較的長い耐用年数及び最適な動作特性を特徴とする、抄紙機用の移送ベルトを提供する。
【解決手段】紙ウェブを支持するように意図された紙側と、前記紙側とは反対側を向いた機械側とを有する、抄紙機用のコンベヤベルト、特に移送ベルトであって、キャリア(1)と水不透過性構造材料(4)とを備え、前記キャリア(1)は、部分的又は完全に前記水不透過性構造材料(4)に埋め込まれており、前記水不透過性構造材料(4)は、前記紙側の紙接触面(5)と、前記機械側の前記コンベヤベルトの機械接触面(6)とを形成しており、前記キャリア(1)は、多軸キャリアとして設計されていることを特徴とするコンベヤベルト。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙ウェブを支持するように意図された紙側と、前記紙側とは反対側を向いた機械側とを有する、抄紙機用のコンベヤベルト、特に移送ベルトであって、
キャリア(1)と水不透過性構造材料(4)とを備え、
前記キャリア(1)は、部分的又は完全に前記水不透過性構造材料(4)に埋め込まれており、
前記水不透過性構造材料(4)は、前記紙側の紙接触面(5)と、前記機械側の前記コンベヤベルトの機械接触面(6)とを形成しており、
前記キャリア(1)は、多軸キャリアとして設計されている、コンベヤベルト。
【請求項2】
前記キャリア(1)は、前記キャリアの長手方向又は機械方向(MD)と、それを横切る横方向(CD)とに延びる、少なくとも2つの重ね合わされた多軸層(2、3)を有し、
前記横方向(CD)に見た前記多軸層は、互いに隣接して並べられた複数の部分ウェブ(8)で、少なくとも部分的に、好ましくは完全に構成され、
前記部分ウェブ(8)は、部分ウェブ長手方向(TL)に延びる縦糸と、それを横切って部分ウェブ横方向(TQ)に延びる横糸とを含み、
前記部分ウェブ(8)の前記部分ウェブ長手方向(TL)は、それぞれの前記多軸層(2、3)の前記長手方向(MD)に対して傾斜し、それと角度(α、α’)を成し、
前記部分ウェブ(8)の前記部分ウェブ横方向(TQ)は、それぞれの前記多軸層(2、3)の前記横方向(CD)に対して傾斜し、前記横方向(CD)と角度(β、β’)を成す、請求項1に記載のコンベヤベルト。
【請求項3】
多軸層(2)の前記部分ウェブ長手方向(TL)がこの多軸層(2)の前記長手方向(MD)と成す前記角度(α)と、前記又は別の多軸層(3)の前記部分ウェブ長手方向(TL)がこの別の多軸層(3)の前記長手方向(MD)と成す角度(α’)とが、量に関して一致し、及び/又は反対の向きである、請求項2に記載のコンベヤベルト。
【請求項4】
少なくとも1つの多軸層(2、3)に関して、前記多軸層(2、3)の前記部分ウェブ長手方向(TL)が前記多軸層の前記長手方向(MD)と成す角度(α、α’)が、少なくとも0.6°、特に少なくとも1.5°、好ましくは少なくとも2°及び/又は最大10°、特に最大7°、好ましくは最大5°であることが当てはまる、請求項2又は3に記載のコンベヤベルト。
【請求項5】
少なくとも1つの多軸層(2、3)に関して、前記多軸層(2、3)の前記部分ウェブ(8)の前記縦糸(9)は互いに平行又は本質的に平行に延びること、及び/又は、前記多軸層(2、3)の前記部分ウェブ(8)の前記横糸(10)は互いに平行又は本質的に平行に延びること、が当てはまる、請求項2乃至4のいずれか一項に記載のコンベヤベルト。
【請求項6】
少なくとも1つの多軸層(2、3)に関して、前記多軸層(2、3)を形成する前記部分ウェブ(8)は、それぞれ同じ方法で、布帛、特に単層の平坦な布帛として、編地として、レイドスレッドスクリムとして、編組として、又は押出ネットとして形成されることが当てはまる、請求項2乃至5のいずれか一項に記載のコンベヤベルト。
【請求項7】
前記縦糸(9)の少なくとも一部、好ましくは前記縦糸(9)のすべてが、モノフィラメント及び/又は特にモノフィラメントからなるステープルファイバー糸及び/又は撚糸によって形成され、及び/又は、
前記横糸(10)の一部、好ましくは前記横糸(10)のすべてが、モノフィラメント及び/又は特にモノフィラメントからなるステープルファイバー糸及び/又は撚糸によって形成されている、請求項2乃至6のいずれか一項に記載のコンベヤベルト。
【請求項8】
前記縦糸(9)の少なくとも一部分、好ましくはすべての縦糸(9)がモノフィラメント及び/又はモノフィラメント撚糸からなり、
前記横糸(10)の一部分、好ましくはすべての前記横糸(10)がモノフィラメント及び/又はモノフィラメント撚糸からなり、
前記モノフィラメント撚糸は、好ましくは0.15mm~0.25mmの範囲の直径を有する4本、6本、若しくは9本のモノフィラメントから形成され、及び/又は前記モノフィラメントは、好ましくは0.30mm~0.50mmの範囲の直径を有することを特徴とする請求項7に記載のコンベヤベルト。
【請求項9】
前記縦糸(9)の一部分、好ましくはすべての縦糸(9)、及び/又は前記横糸(10)の一部分、好ましくはすべての前記横糸(10)が、円形及び/又は丸みを帯びた及び/又は矩形の断面を有する、及び/又は平糸として設計されている、請求項2乃至8のいずれか一項に記載のコンベヤベルト。
【請求項10】
前記縦糸(9)及び/又は前記横糸(10)はポリマー材料からなる、請求項2乃至9のいずれか一項に記載のコンベヤベルト。
【請求項11】
前記縦糸(9)及び/又は前記横糸(10)は、ポリアミド(PA)及び/又はポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート(PET)及び/又はポリエチレンフラノエート(PEF)からなり、
前記縦糸(9)は、好ましくはポリアミド6(PA6)及び/又はPET及び/又はPEFからなり、前記横糸(10)は、PA6及び/又はPA6.10及び/又はPA4.10及び/又はPA11及び/又はPET及び/又はPEFからなる、請求項10に記載のコンベヤベルト。
【請求項12】
前記キャリア(1)の前記多軸層(2、3)は互いに直接接続され、前記多軸層(2、3)は好ましくは互いに溶着、接着、又はニードル加工されている、請求項2乃至11のいずれか一項に記載のコンベヤベルト。
【請求項13】
前記キャリア(1)の前記多軸層(2、3)は、前記構造材料(4)によってのみ互いに対して固定されている、請求項2乃至11のいずれか一項に記載のコンベヤベルト。
【請求項14】
前記キャリア(1)は、無端ループとして設計された2つの多軸層(2、3)を有する、請求項2乃至13のいずれかに記載のコンベヤベルト。
【請求項15】
前記部分ウェブ(8)は、直線状又は歯状又は蛇行状又は波状の長手方向縁部(11)を有する、請求項2乃至14のいずれか一項に記載のコンベヤベルト。
【請求項16】
前記部分ウェブ(8)は、少なくとも0.5m、特に1m±0.2mの前記部分ウェブ横方向(TQ)の幅を有する、請求項2乃至15のいずれか一項に記載のコンベヤベルト。
【請求項17】
隣接する部分ウェブ(8)はそれらの長手方向縁部(11)で互いに接続され、特に互いに縫い付けられ、及び/又は互いに接着され、及び/又は互いに融着され、及び/又は互いに溶着され、
部分ウェブ(8)に隣接する前記長手方向縁部(11)は、互いに当接又は重なり合って配置されている、請求項2乃至16のいずれか一項に記載のコンベヤベルト。
【請求項18】
前記構造材料(4)は天然ゴムを有するか、又は天然ゴムからなる、請求項1乃至17のいずれか一項に記載のコンベヤベルト。
【請求項19】
前記構造材料(4)は、少なくとも1種のエラストマー、特にポリウレタンエラストマー及び/又はポリウレアエラストマー及び/又はシリコーンエラストマー及び/又はポリエステルエラストマーを含むか、又はそれらからなる、請求項1乃至18のいずれか一項に記載のコンベヤベルト。
【請求項20】
前記構造材料(4)は、多成分ポリウレタンキャスティング樹脂系からなり、これは特に、メチレン-ジフェニル-ジイソシアネート(MDI)系又はトルエン-ジイソシアネート(TDI)系のポリエーテル-ポリウレタンプレポリマー及び/又はポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)ポリオール及び/又はアミン架橋剤及び/又は複数のアミン架橋剤及び/又は他の多価架橋剤である、請求項19に記載のコンベヤベルト。
【請求項21】
前記構造材料(4)は、80~99ショアAの範囲の硬度を有し、及び/又は前記構造材料(4)の前記紙接触面(5)は、約1.0μm~5.0μmの範囲の粗さRaを有する、請求項1乃至20のいずれか一項に記載のコンベヤベルト。
【請求項22】
前記紙接触面(5)の領域の前記構造材料(4)は、滑らかであるか、又は紙平滑化及び/又は紙エンボス加工のためのテクスチャを有する、及び/又は、
前記機械接触面(6)の領域の前記構造材料は、水抜きを促進するための窪み(7)、特に溝及び/又は止まり穴を有する、請求項1乃至21のいずれか一項に記載のコンベヤベルト。
【請求項23】
補強材が、前記構造材料(4)に、特に前記移送ベルトの機械側に埋め込まれている、請求項1乃至22のいずれか一項に記載のコンベヤベルト。
【請求項24】
前記追加の補強材は、織布及び/又は編地及び/又はメッシュ及び/又はレイドスレッドスクリム及び/又は押出ネット及び/又はフリースの形態である、請求項23に記載のコンベヤベルト。
【請求項25】
抄紙機における請求項1乃至24のいずれか一項に記載のコンベヤベルトの使用であって、前記抄紙機を通って供給される紙ウェブが、特に抄紙機のプレスセクションにおいて、前記コンベヤベルトの前記紙側と接触するようになっている、コンベヤベルトの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙ウェブを支持するように意図された紙側と、前記紙側とは反対側を向いた機械側とを有する、抄紙機用のコンベヤベルト、特に移送ベルトであって、キャリアと、前記キャリアが部分的又は完全に埋め込まれ、前記紙側の紙接触面及び前記機械側のコンベヤベルトの機械接触面を形成する水不透過性構造材料とを備える、コンベヤベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
現代の高速抄紙機は、今日、約1,800~2,000m/分の速度に設計されている。現在、生産性の向上は、単に機械速度を上げることによって達成されることが多いため、抄紙機速度が上がり続けることも想定され得る。
【0003】
速度の増加は、必然的に、抄紙機を通って搬送されるときのウェブ張力の対応する増加をもたらす。したがって、紙ウェブが抄紙機を通過するときに紙ウェブを支持する必要がある。
【0004】
プレスセクションでは、抄紙機は、プレスセクションを循環するプレスフェルトによって完全に支持される。しかしながら、プレスフェルトからの支持がない領域では問題が生じる。これは、特に、プレスセクションから乾燥機セクションへの経路で当てはまる。ここでは、紙ウェブの湿潤強度は、高い張力に耐えるのに十分ではない。
【0005】
プレスフェルトからの支持がないこれらの領域で紙ウェブを案内するために、特にプレスセクションから乾燥機セクションへの移行領域では、いわゆる移送ベルトが使用され、これは脱水機能のない純粋な搬送ベルトとして機能する。これらの移送ベルトは、通常、紙ウェブが直接接触する滑らかで均一な表面を有し、それらの特別なトポグラフィ特性により、完全なウェブ取り出し、優れたウェブ支持及び紙ウェブの問題のない排出を確実にする。
【0006】
抄紙機のプレスセクションにおける移送ベルトのルーティングの例は、例えばEP 0 576 115 A1の
図1から
図3に見出すことができる。
【0007】
冒頭で述べたタイプの移送ベルトは、例えば、本出願人に由来するDE 20 2017 101 585 U1に記載されている。
【0008】
これは、縦糸及び横糸を有する円形布帛として設計されたキャリアと、キャリアの機械側に配置された繊維フリースとを有する。キャリア及び繊維フリースは、エラストマー材料、特にポリウレタンからなる構造材料の層に埋め込まれる。したがって、構造材料は、移送ベルトの紙側と、機械側の抄紙機のローラのための接触面との両方で、紙ウェブのための接触面を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0576115号明細書
【特許文献2】独国実用新案第202017101585号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来知られている移送ベルトは、原則的に能力を発揮している。
しかしながら、より高い機械速度及びより多くの充填剤、より多くのリサイクル繊維などの使用の要求、並びにより低い坪量への傾向は、ウェブの実行を絶えず改善し、特にプレスセクションから乾燥機セクションへの紙ウェブの移送をさらに最適化する必要性を伴う。
【0011】
したがって、本発明は、比較的少ない労力で製造することができ、同時に比較的長い耐用年数及び最適な動作特性を特徴とする、冒頭で述べたタイプのコンベヤベルトを特定するという目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、この目的は、冒頭で述べたタイプのコンベヤベルトのうち、キャリアが多軸キャリアとして設計されるものにおいて達成される。
【0013】
したがって、本発明は、コンベヤベルトの構造強度を保証するキャリアを多軸キャリアとして設計するという考えに基づいている。
【0014】
特に安定したキャリアを多軸層から得ることができ、本発明によるコンベヤベルトの特に長い耐用年数及び作動時間をもたらすことが示されている。さらに、キャリアは、比較的少ない労力で製造することができる。
【0015】
本発明による多軸層の使用は、従来製造された繊維ウェブ、特に平坦及び/又は円形布帛として設計されたフェルト用のキャリアの寸法制限を容易に克服することができるというさらなる利点を提供する。
【0016】
多軸層は、例えば、1つ以上の部分ウェブストリップをコンベヤベルトの長手方向に巻き付け、長手方向を横切る横方向に螺旋状に漸進させることによって得ることができる。
【0017】
言い換えれば、繊維ウェブは、螺旋状の巻回によって所定の幅を有する部分ウェブストリップから得ることができ、その幅は、部分ウェブストリップの幅を何倍も超える。コンベヤベルトの最終的な幅は、特に部分ウェブストリップの幅及び巻回の数を調整することによって、非常に柔軟に達成することができる。
【0018】
従来の無端キャリアと比較した多軸キャリアの別の利点は、特に円形布帛と比較して、異なるCD材料を様々に導入することによって、例えば適切な緯糸を取り入れることによって、比較的大きな技術的努力なしに製品特性を制御する可能性であり、これは円形布帛用の経糸ビームの対応する準備とは対照的である。規定された糸材料、糸構造、糸径又は糸強度及び糸密度[数/cm]を有する緯糸を、目標通りに個別に適合するように使用することにより、キャリアは寸法安定性(特にCD)並びにポリマーマトリックスへの完全含浸を目標とした透過性という両面で、最適化することができる。
【0019】
本発明の好ましい実施形態によれば、キャリアは、キャリアの長手方向又は機械方向に、及び長手方向を横切る横方向に延びる少なくとも2つの重ね合わされた多軸層を有し、横方向に見た多軸層は、互いに隣接して並べられた複数の隣接する部分ウェブから少なくとも部分的に、好ましくは完全になり、部分ウェブは、部分ウェブ長手方向に延びる縦糸と、部分ウェブ長手方向を横切る部分ウェブ横方向に延びる横糸とを含み、部分ウェブの部分ウェブ長手方向は、それぞれの多軸層の長手方向に対して傾斜し、それと角度α、α’を成し、部分ウェブの部分ウェブ横方向は、それぞれの多軸層の横方向に対して傾斜し、横方向と角度β、β’を成す。
【0020】
本発明の一実施形態では、多軸層の部分ウェブ長手方向がこの多軸層の長手方向と成す角度αと、前記又は別の多軸層の部分ウェブ長手方向がこの別の多軸層の長手方向と成す角度α’とが、量に関して一致し、及び/又は反対の向きであることが提供され得る。
【0021】
同様に、多軸層の部分ウェブ横方向がこの多軸層の横方向と成す角度βと、前記又は別の多軸層の部分ウェブ横方向がこの別の多軸層の横方向と成す角度β’’とが、量に関して一致することができ、及び/又は反対の向きであり得る。
【0022】
2つの多軸層の部分ウェブが部分ウェブの横方向に同じ幅を有する場合、角度が量に関して一致し、反対の向きであれば理にかなっている。これにより、特に均一な力の分配が可能になる。多軸層の部分ウェブが異なる幅を有する場合、角度α、α’及びβ、β’は互いにずれているが、反対の向きであることは依然として理にかなっている。
【0023】
本発明の一実施形態では、少なくとも1つの多軸層に関して、多軸層の部分ウェブ長手方向が多軸層の長手方向と成す角度α、α’は、少なくとも0.6°、特に少なくとも1.5°、好ましくは少なくとも2°及び/又は最大10°、特に最大7°、好ましくは最大5°である。
【0024】
角度サイズの設定は、部分ウェブの幅が規定されている場合、コンベヤベルトの長さに反比例する。言い換えれば、多軸層の部分ウェブ長手方向がこの多軸層の長手方向と成す角度は、コンベヤベルトの長さが増加するにつれて小さくなる。
【0025】
さらに、少なくとも1つの多軸層にとって、多軸層の部分ウェブの縦糸が互いに平行又は本質的に平行に延び、及び/又は多軸層の部分ウェブの横糸が互いに平行又は本質的に平行に延びることが好都合である。
ここでの基本的な要件は、縦糸が部分ウェブの長手方向に延びるべきであるということである。
【0026】
少なくとも1つの多軸層には、多軸層を形成する部分ウェブがそれぞれ、布帛、特に単層の平坦な布帛、編地、レイドスレッドスクリム、編組、又は押出ネットとして同じ方法で構成されることも適用することができる。この種の繊維布帛は、比較的開いた構造を有する。布帛の多軸層が特に好適であることが判明している。
【0027】
本発明によるコンベヤベルトのさらなる実施形態は、縦糸の少なくとも一部、好ましくは縦糸のすべてが、モノフィラメント及び/又は特にモノフィラメントからなるステープルファイバー糸及び/又は撚糸によって形成され、及び/又は、横糸の一部、好ましくは横糸のすべてが、モノフィラメント及び/又は特にモノフィラメントからなるステープルファイバー糸及び/又は撚糸によって形成されていることを特徴とする。
【0028】
縦糸の少なくとも一部、好ましくは縦糸のすべてが、モノフィラメント及び/又はモノフィラメント撚糸からなり、横糸の一部、好ましくは横糸のすべてが、モノフィラメント及び/又はモノフィラメント撚糸からなり、モノフィラメント撚糸は、好ましくは、それぞれ0.15mm~0.25mmの範囲の直径を有する4本又は6本又は9本のモノフィラメントから形成され、及び/又はモノフィラメントは、好ましくは0.3mm~0.50mmの範囲の直径を有することが提供され得る。
【0029】
本発明のさらなる実施形態によれば、縦糸の一部、好ましくは縦糸のすべてが、円形及び/又は丸みを帯びた及び/又は長方形の断面を有し、及び/又は平坦な糸として設計されていることが提供される。同様に、横糸の一部、好ましくは横糸のすべてが、円形及び/又は丸みを帯びた及び/又は長方形の断面を有する、及び/又は平坦な糸として設計されることが提供され得る。
【0030】
縦糸及び/又は横糸は、好ましくはポリマー材料からなる。
【0031】
縦糸及び/又は横糸がポリアミド(PA)及び/又はポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート(PET)及び/又はポリエチレンフラノエート(PEF)から作製される場合、縦糸は好ましくはポリアミド6(PA6)から作製され、及び/又はPET及び/又はPEFからなり、横糸はPA6及び/又はPA6.10及び/又はPA4.10及び/又はPA11及び/又はPET及び/又はPEFからなることが好ましい。
【0032】
キャリアの多軸層を互いに直接接続することが可能であり、次いで、多軸層は、好ましくは互いに溶着、接着、又はニードル加工されている。
【0033】
しかしながら、好ましい実施形態は、多軸層が互いに直接接続されておらず、構造材料によってのみ、すなわち間接的に互いに対して固定されていることである。
【0034】
キャリアは、無端ループとして設計された2つの多軸層を有することができる。
【0035】
この場合、多軸層は、好ましくは、少なくとも1つの部分ウェブストリップを螺旋状に巻き付けることによって得られ、その幅はコンベヤベルトの幅よりも小さく、その長さはコンベヤベルトの長さを超える。
【0036】
部分ウェブは、好ましくは直線縁部を有する。しかしながら、部分ウェブは、歯付き又は蛇行又は波状の長手方向縁部を有することが可能である。直線状及び非直線状の長手方向縁部の両方の場合において、部分ウェブは、互いに当接するように接触させることができ、又は互いに重なるように配置することができる。
【0037】
さらなる例示的な実施形態によれば、隣接する部分ウェブは、それらの長手方向縁部で互いに接続されている。例えば、それらは互いに縫い付けられ、及び/又は互いに接着され、及び/又は互いに融着され、及び/又は互いに溶着され得る。
【0038】
構造材料は、天然ゴムを含むか、又は天然ゴムからなり得る。
代替的に、構造材料は、少なくとも1種の合成エラストマー、特にポリウレタンエラストマー及び/又はポリウレアエラストマー及び/又はシリコーンエラストマー及び/又はポリエステルエラストマーを含むか、又はそれらからなることが可能である。
【0039】
構造材料が多成分ポリウレタンキャスティング樹脂系からなる場合、これは特にメチレン-ジフェニル-ジイソシアネート(MDI)系又はトルエン-ジイソシアネート(TDI)系のポリエーテル-ポリウレタンプレポリマー及び/又はポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)ポリオール及び/又はアミン架橋剤及び/又は複数のアミン架橋剤及び/又は他の多価架橋剤であることが特に好ましいことが判明している。
【0040】
紙ウェブに必要な支持を提供するために、構造材料は、好ましくは80~99ショアAの範囲の硬度を有し、及び/又は構造材料(4)の紙接触面(5)は、約1.0μm~5.0μmの範囲の粗さRaを有する。
【0041】
さらに、コンベヤベルトの安定性を高めるために、特に移送ベルトの機械側で、構造材料に補強材が埋め込まれることが提供され得る。補強材は、織布及び/又は編地及び/又は編組及び/又はスレッドスクリム及び/又は押出ネット及び/又はフリースの形態であり得る。
【0042】
本発明によれば、紙接触面の領域の構造材料は、滑らかであるか、又は紙を平滑化する及び/又は紙エンボス加工のためのテクスチャを有すること、及び/又は機械接触面の領域の構造材料は、窪み、特に溝を有する及び/又は止まり穴を有する構成が提供される。したがって、紙接触面は、紙ウェブと直接接触し、滑らかな表面又は所望のテクスチャ加工/エンボス加工を提供するように調整される。一方、機械側には、機械接触面と、抄紙機の部品、特にロール、との間の最適な静摩擦接触が確保されるような構造、特に液体を受け取って排出するために使用される構造、が設けられている。
【0043】
最後に、本発明は、抄紙機を通って案内される紙ウェブが、特に抄紙機のプレスセクションにおいてコンベヤベルトの紙側と接触するような、機械における本発明によるコンベヤベルトの使用に関する。
【0044】
本発明のさらなる特徴及び利点は、添付の図面を参照して、本発明によるコンベヤベルトの実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本発明によるコンベヤベルトの例示的な実施形態の概略断面図である。
【
図3】本発明によるコンベヤベルトのキャリア用の布帛の形態の多軸層の概略部分図であり、部分ウェブはレーザ溶着装置によって接続されている。
【
図4】布帛の形態の多軸層の概略部分図であり、部分ウェブは縫い目によって接続されている。
【
図5】織布の形態である多軸層のさらなる例示的な実施形態の部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1は、本発明による抄紙機のコンベヤベルトであって、移送ベルトの一部の概略図を断面で示し、上側が移送ベルトの紙側を形成し、下側が移送ベルトの機械側を形成している。
【0047】
移送ベルトは、キャリア1を備える。これは、一方の上に他方が配置された2つの多軸層2、3を有する多軸キャリアとして設計されている。多軸層2、3は、無端ループとして設計され、機械側多軸層3のループは、紙側多軸層2のループ内に配置され、好ましくはそれに対応して、その長さはより短い。
【0048】
キャリア1は、上側に紙側の紙接触面5と、下側に機械側の移送ベルトの機械接触面6とを形成する構造材料4に完全に埋め込まれている。2つの多軸層2、3は、構造材料4によってのみ互いに接続され、他の方法では互いに取り付けられておらず、例えば、互いに直接ニードル加工されたり及び/又は接着されたりはしていない。
【0049】
構造材料4は、エラストマー、ここではメチレン-ジフェニル-ジイソシアネート(MDI)系ポリエーテル-ポリウレタンプレポリマー、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)ポリオール及びアミン架橋剤を有する多成分ポリウレタンキャスティング樹脂系からなる。
構造材料4は、硬度が80~99ショアAの範囲内である。
【0050】
構造材料4によって形成された紙接触面5の粗さRaは、約1.0μm~5.0μmである。
これは滑らかであるが、紙ウェブを滑らかにするために、又は紙ウェブにテクスチャ加工/エンボス加工を施すためにテクスチャ加工が施されていてもよい。
【0051】
一方、機械接触面6には、図の平面に対して直角に、すなわち移送ベルトの長手方向に延びる複数の窪み7、この場合は溝が設けられている。窪み7は、液体及び/又は不純物を吸収するのに役立ち、その結果、機械接触面6と構成要素、特に抄紙機のロールとの間の最適な静摩擦接触が保証される。
【0052】
キャリア1は、長手方向、すなわち機械方向MDと長手方向を横切って延びる横方向CDとに延びる。キャリア1の多軸層2、3は、各々それぞれの向きを有する。
【0053】
特に
図2から分かるように、キャリア1の2つの多軸層2、3の各々は、横方向CDから見て、一方を他方の上に重ねて並べた複数の部分ウェブ8から構成される。
図2では、この図の最上部の製品側多軸層2の部分ウェブ8を実線で示し、その直下の機械側多軸層3の部分ウェブ8を破線で示している。
【0054】
各部分ウェブ8は、部分ウェブ長手方向TLに延びる縦糸9と、部分ウェブ長手方向TLと直交して部分ウェブ横方向TQに延びる横糸10とを備える。縦糸9及び横糸10は、
図2には示されていないが、
図4~
図5の例示的な実施形態で見ることができる。
【0055】
図2は、部分ウェブ8の部分ウェブ長手方向TLが、キャリア1、したがって多軸層2、3の長手方向MDに対して傾斜しており、長手方向MDと角度α、α’を成していることを明確に示している。
これに対応して、部分ウェブ8の部分ウェブ横方向TQは、多軸層2、3の横方向CDに対して傾斜しており、横方向CDと角度β、β’を成している。紙側多軸層2の部分ウェブ長手方向TLと長手方向MDとのなす角度αと、機械側多軸層3の部分ウェブ長手方向TLと長手方向MDとのなす角度α’とは、量的には同じであるが、角度αとα’とは反対方向である。図示の例示的な実施形態では、角度α及びα’はそれぞれ約4°であるが、説明のために誇張して描かれている。対応する方法で、角度β及びβ’もまた、約4°で大きさが等しいが、反対方向を向いている。
【0056】
2つの多軸層2、3は、少なくとも1つの部分ウェブストリップBを螺旋状に巻き付けることによって得られ、部分ウェブストリップBの幅は移送ベルトの幅の数分の1であり、部分ウェブストリップBの長さは移送ベルトの長さの数倍である。
【0057】
図3及び
図5は、供給ロールVから引き出されることによって、部分ウェブストリップBから互いに隣接して敷設された隣接する部分ウェブ8の部分を示しており、部分ウェブ8は異なって構成されている。
【0058】
図3に示す例示的な実施形態では、部分ウェブストリップBから形成された部分ウェブ8は、部分ウェブ長手方向TLに延びる縦糸9と、部分ウェブ長手方向TLと直交して部分ウェブ横方向TQに延びる横糸10とを有するレイドスレッドスクリム(laid thread scrim)として形成される。それらが互いに対向する長手方向縁部11の領域において、横糸10は、部分ウェブの長手方向TLにオフセットして重なり合うように、互いに係合するフリンジ状の突出した横糸部分12を有する。接続糸13が、これらの糸部分12の上に置かれ、横糸部分12に溶着される。接続糸13は、ここでは縦糸9によって形成される。
図3は、接続糸13に沿って重なり合う横糸部分上を移動し、接続糸13と横糸部分12との間の接続を生成するレーザ溶着装置14を示す。
【0059】
図4に示す例示的な実施形態では、部分ウェブ8、したがって部分ウェブ8から製造された多軸層2、3は、平坦な布帛として設計されている。
縦糸9及び横糸10は、ポリアミド、ポリエステルなどのプラスチックから作製される。縦糸9及び横糸10は、モノフィラメント、撚糸、特にモノフィラメント撚糸、ステープルファイバー糸などから形成することができる。
【0060】
好ましくは、縦糸9又は経糸は、各々が0.15mm~0.25mmの範囲の直径を有する4本、6本又は9本のモノフィラメントから形成されるモノフィラメント糸からなり、横糸10又は緯糸は、0.30mm~0.50mmの範囲の直径を有するモノフィラメントからなる。縦糸9又は経糸はPA6、PET又はPEFから作製され、横糸10又は緯糸はPA6、PA6.10、PA4.10、PA11、PET又はPEFから作製される。
図5に示す例示的な実施形態では、ピッチ番号1の緯糸綾織2-1織りがある。
【0061】
長手方向縁部11の領域において、部分ウェブ8は、互いに当接する突出した横糸部分12を有する。横糸部分12の長さは、部分ウェブ8の長手方向縁部11に隣接する縦糸9間の自由距離が、縦糸9同士の間の自由距離の2倍であるように寸法決めされる。充填糸15は、上部及び下部において横糸部分12によって境界付けられるように、2つの部分ウェブ8の互いに対向する2つの縦糸9の間に挿入される。充填糸15の挿入は、
図3による装置において行うことができる。充填糸15は、縦糸9と同じ寸法を有し、同じ材料からなる。隣接する縦糸9間の前述の距離に起因して、充填糸は、縦糸密度が長手方向縁部11の領域においても変化しないままであるように間隙を満たす。充填糸15が送り込まれるとき又はその直後に、長手方向縁部11は、2本の縫製糸16によって互いに接続される。
【0062】
図5に示す例示的な実施形態では、多軸層2、3はまた、特に緯糸リピートを分割することによって分割された緯糸クロス綾織型2-2の織りを有する平坦な布帛として設計されている。
【0063】
図4の例によれば、すべての縦糸9は、直径0.2mmの4本のモノフィラメントから構成されるモノフィラメント糸で構築されている。
【0064】
横糸10は、モノフィラメントとして設計され、2つの異なる断面形状及び2つの異なる厚さで存在する。
具体的には、横糸10は、2つの異なる構成10a、10bから成る。
丸みを帯びた横糸10aは、より大きな直径を有する丸い断面を有し、平糸10bは、長方形の断面を有する平糸として設計され、その厚さは、丸みを帯びた横糸10aの直径よりも小さい。
【0065】
丸みを帯びた横糸10a及び平糸10bは、部分ウェブの長手方向TLに交互に配置されている。
図5に示す実施形態では、縦糸9又は経糸はPA6、PET又はPEFから作製され、横糸10又は緯糸はPA6、PA6.10、PA4.10、PA11、PET又はPEFから作製される。
【0066】
純粋に概略的な
図5では、単一の部分ウェブ8の一部分のみが示されており、したがって、隣接する部分ウェブ8間の接続の種類は見ることができない。ここでは、
図3又は
図4に示すのと同じ方法で接続を行うことができる。したがって、部分ウェブ8は、重ねて溶着されても良いし、又は互いに突き合わせて縫われてもよい。代替的又は追加的に、隣接する部分ウェブ8はまた、接着及び/又は融着されてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 キャリア
2 多軸層
3 多軸層
4 構造材料
5 紙接触面
6 機械接触面
7 窪み
8 部分ウェブ
9 縦糸
10 横糸
10a 丸みを帯びた横糸
10b 平糸
11 長手方向縁部
12 糸部分
13 接続糸
14 レーザ溶着装置
15 充填糸
16 縫製糸
MD ビームの長手方向又は機械方向
CD ビームの横方向
TL 部分ウェブ長手方向
TQ 部分ウェブ横方向
W ローラ
V 供給ロール
B 部分ウェブストリップ