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特開2023-135650セパレータおよびそれを用いた電気化学素子
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  • 特開-セパレータおよびそれを用いた電気化学素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135650
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】セパレータおよびそれを用いた電気化学素子
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/451 20210101AFI20230921BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20230921BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20230921BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20230921BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20230921BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20230921BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20230921BHJP
   H01G 9/02 20060101ALI20230921BHJP
   H01G 11/52 20130101ALI20230921BHJP
【FI】
H01M50/451
H01M50/443 M
H01M50/434
H01M50/489
H01M50/446
H01M50/414
H01M50/403 D
H01G9/02
H01G11/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039965
(22)【出願日】2023-03-14
(31)【優先権主張番号】10-2022-0031988
(32)【優先日】2022-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】519214271
【氏名又は名称】エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK IE TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 03188 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】チェ ジェ スク
(72)【発明者】
【氏名】リム ソン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】ジ サン ユン
(72)【発明者】
【氏名】パク ヒェ ジン
(72)【発明者】
【氏名】イ スン ウ
(72)【発明者】
【氏名】イ チャン ク
(72)【発明者】
【氏名】チョン ヨン ウン
【テーマコード(参考)】
5E078
5H021
【Fターム(参考)】
5E078CA07
5E078CA09
5E078CA12
5E078CA20
5H021BB12
5H021CC03
5H021CC04
5H021EE02
5H021EE21
5H021HH00
5H021HH01
5H021HH03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】発火や破裂を防止することができるセパレータ、該セパレータを含む化学的に安定し、優れた電気的特性を有する電気化学素子、および該セパレータの製造方法を提供する。
【解決手段】多孔性基材、および前記多孔性基材の一面または両面に形成された無機粒子層を含み、前記無機粒子層は、第1無機粒子および第2無機粒子を含み、前記第1無機粒子は、式1による蛍光保持率が85%以上である、セパレータ。
[式1]蛍光保持率(%)=I100/I×100
(式中、Iは、第1無機粒子を5wt%含むスラリー溶液の上部10vol%のアリコートを500倍に希釈した溶液に300nm~350nmの範囲の波長を有する入射光を照射する際に検出される600nm~750nmにおける最大蛍光強度であり、I100は、前記スラリー溶液を100時間静置した後、上記と同様の測定による最大蛍光強度である。)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性基材、および前記多孔性基材の一面または両面に形成された無機粒子層を含み、
前記無機粒子層は、第1無機粒子および第2無機粒子を含み、
前記第1無機粒子は、下記式1による蛍光保持率が85%以上である、セパレータ。
[式1]
蛍光保持率(%)=I100/I×100
(前記式1中、前記Iは、前記第1無機粒子を5wt%含むスラリー溶液の上部10vol%のアリコート(aliquot)を希釈倍率(dilution factor)500で希釈した溶液に300nm~350nmの範囲の波長を有する入射光を照射する際に検出される600nm~750nmにおける最大蛍光強度であり、
前記I100は、前記スラリー溶液を100時間静置した後、上部10vol%のアリコート(aliquot)を希釈倍率(dilution factor)500で希釈した溶液に300nm~350nmの範囲の波長を有する入射光を照射する際に検出される600nm~750nmにおける最大蛍光強度である。)
【請求項2】
前記第1無機粒子は、溶液中で300nm~350nmの範囲の波長を有する入射光に対して600nm~750nmの波長領域で蛍光を有する、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項3】
前記第1無機粒子は、板状無機粒子および棒状無機粒子から選択される1つまたは2つ以上である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項4】
前記板状無機粒子は、長径および短径がそれぞれ0.1nm~200nmであり、厚さが0.1nm~50nmである、請求項3に記載のセパレータ。
【請求項5】
前記棒状無機粒子は、長さが0.1nm~450nmであり、直径が0.1nm~100nmである、請求項3に記載のセパレータ。
【請求項6】
前記第1無機粒子は、金属、炭素、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属カーボネート、金属水和物、および金属炭窒化物から選択されるいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含む、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項7】
前記第1無機粒子は、ベーマイト(Boehmite)、擬ベーマイト(Pseudo-boehmite)、Ga、SiC、SiC、石英(Quartz)、NiSi、Ag、Au、Cu、Ag-Ni、ZnS、Al、TiO、CeO、MgO、NiO、Y、CaO、SrTiO、SnO、ZnO、およびZrOから選択される1つまたは2つ以上の組み合わせを含む、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項8】
前記第2無機粒子は、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属カーボネート、金属水和物、および金属炭窒化物から選択されるいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含む、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項9】
前記第2無機粒子は、ベーマイト(Boehmite)、擬ベーマイト(Pseudo-boehmite)、Al、TiO、CeO、MgO、NiO、Y、CaO、SrTiO、SnO、ZnO、およびZrOから選択される1つまたは2つ以上の組み合わせを含む、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項10】
前記第2無機粒子の大きさは0.001μm~20μmである、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項11】
前記第1無機粒子は、前記第2無機粒子100重量部に対して0.1重量部~30重量部で含まれる、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項12】
前記セパレータは、170℃における熱収縮率(%)が10%以下である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項13】
前記セパレータは、ボール紙付着力テストによる無機粒子層の重量変化率(%)が10%以下である、請求項1に記載のセパレータ。
(前記ボール紙付着力テストは、5cm×10cmサイズのセパレータ上に2cm×10cmサイズの黒色ボール紙を載せた後、10Nの力で押した状態でボール紙を0.1m/sの速度で水平に引っ張る際にボール紙に付着する粒子の量を評価するものである。)
【請求項14】
前記多孔性基材と前記無機粒子層との剥離強度が25gf/15mm以上である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項15】
前記無機粒子層は、有機バインダーをさらに含む、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項16】
前記有機バインダーは、前記第1無機粒子、第2無機粒子、および有機バインダーの総100重量部に対して5重量部以下で含まれる、請求項15に記載のセパレータ。
【請求項17】
正極、負極、請求項1~16のいずれか一項に記載のセパレータ、および電解質を含む、電気化学素子。
【請求項18】
前記電気化学素子は、リチウム二次電池である、請求項17に記載の電気化学素子。
【請求項19】
多孔性基材の一面または両面に第1無機粒子および第2無機粒子を含む分散液をコーティングするステップと、
前記コーティングされた多孔性基材を乾燥して無機粒子層を形成するステップと、
を含み、
前記第1無機粒子は、下記式1による蛍光保持率が85%以上である、セパレータの製造方法。
[式1]
蛍光保持率(%)=I100/I×100
(前記式1中、前記Iは、前記第1無機粒子を5wt%含むスラリー溶液の上部10vol%のアリコート(aliquot)を希釈倍率(dilution factor)500で希釈した溶液に300nm~350nmの範囲の波長を有する入射光を照射する際に検出される600nm~750nmにおける最大蛍光強度であり、
前記I100は、前記スラリー溶液を100時間静置した後、上部10vol%のアリコート(aliquot)を希釈倍率(dilution factor)500で希釈した溶液に300nm~350nmの範囲の波長を有する入射光を照射する際に検出される600nm~750nmにおける最大蛍光強度である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セパレータおよびそれを用いた電気化学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池は電気自動車などに適用するために高容量および大型化しており、このような条件では電池の異常挙動時に発生する発火および爆発の可能性が既存の電池と比べて数倍~数十倍である。したがって、電池の安全性の確保は非常に重要な要素となっている。
【0003】
このような安全性を確保するために、ポリオレフィンなどから製造された多孔性基材の全面積に、無機粒子および高分子系有機バインダーを含み、無機粒子が前記有機バインダーにより互いに連結され、かつ、前記有機バインダーにより多孔性基材と接着している形態の多孔性の無機粒子層を形成した複合セパレータが開発されている。
【0004】
このような有機バインダーを用いる場合、十分な接着力を持たせるために、一定含量以上の相対的に多量の有機バインダーを用いることになる。このため、電池の電解液と有機バインダー成分との化学反応が起こってバインダー成分の変形を招くかまたはその反応によりガスが発生し、また、このようなガスが熱により漏れて(leak)電池の寿命が低下するなどの問題がある。
【0005】
また、過量の有機バインダーが電解質内に溶解して溶出することで電解質の性能低下が発生するか、電解液により前記有機バインダーが膨潤して気孔層が閉塞するか、または電池の容積を増加させるなどといった電池の性能を低下させる種々の問題がある。
したがって、上述した問題を解決するための新しい形態のセパレータに関する開発が必要な状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2019-0067397号公報(2019.06.17)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一目的は、セパレータの無機粒子層に特定の蛍光特性を有する無機粒子を含む場合、耐熱性が向上することで、急激な温度上昇などの異常現象による発火や破裂を防止することができるセパレータを提供することにある。
【0008】
本発明の他の一目的は、セパレータの無機粒子層に特定の蛍光特性を有する無機粒子を含むことで、多孔性基材と無機粒子層との間および無機粒子層の無機粒子間の接着力が向上したセパレータを提供することにある。
【0009】
本発明のまた他の一目的は、前記セパレータを含むことで化学的に安定し、優れた電気的特性を有する電気化学素子を提供することにある。
本発明のさらに他の一目的は、無機粒子を用い、有機バインダーを用いないかまたは著しく少ない含量を用いることで、電池の電解液との化学反応を減少させ、電解質内に溶解する有機バインダーを排除または減少させることができ、電解液により膨潤して気孔層が閉塞するかまたは電池の容積を増加させるなどといった問題のない電気化学素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、上述したような課題を解決するために、多孔性基材、および前記多孔性基材の一面または両面に形成された無機粒子層を含み、前記無機粒子層は、第1無機粒子および第2無機粒子を含み、前記第1無機粒子は、下記式1による蛍光保持率が85%以上である、セパレータを提供する。
【0011】
[式1]
蛍光保持率(%)=I100/I×100
【0012】
前記式1中、前記Iは、前記第1無機粒子を5wt%含むスラリー溶液の上部10vol%のアリコート(aliquot)を希釈倍率(dilution factor)500で希釈した溶液に300nm~350nmの範囲の波長を有する入射光を照射する際に検出される600nm~750nmにおける最大蛍光強度であり、
前記I100は、前記スラリー溶液を100時間静置した後、上部10vol%のアリコート(aliquot)を希釈倍率(dilution factor)500で希釈した溶液に300nm~350nmの範囲の波長を有する入射光を照射する際に検出される600nm~750nmにおける最大蛍光強度である。
【0013】
一実施形態において、前記第1無機粒子は、溶液中で300nm~350nmの範囲の波長を有する入射光に対して600nm~750nmの波長領域で蛍光を有してもよい。
一実施形態において、前記第1無機粒子は、板状無機粒子および棒状無機粒子から選択される1つまたは2つ以上であってもよい。
【0014】
一実施形態において、前記板状無機粒子は、長径および短径がそれぞれ0.1nm~200nmであり、厚さが0.1nm~50nmであってもよい。
一実施形態において、前記棒状無機粒子は、長さが0.1nm~450nmであり、直径が0.1nm~100nmであってもよい。
【0015】
一実施形態において、前記第1無機粒子は、金属、炭素、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属カーボネート、金属水和物、および金属炭窒化物から選択されるいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含んでもよい。
【0016】
一実施形態において、前記第1無機粒子は、ベーマイト(Boehmite)、擬ベーマイト(Pseudo-boehmite)、Ga、SiC、SiC、石英(Quartz)、NiSi、Ag、Au、Cu、Ag-Ni、ZnS、Al、TiO、CeO、MgO、NiO、Y、CaO、SrTiO、SnO、ZnO、およびZrOから選択される1つまたは2つ以上の組み合わせを含んでもよい。
【0017】
一実施形態において、前記第2無機粒子は、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属カーボネート、金属水和物、および金属炭窒化物から選択されるいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含んでもよい。
【0018】
一実施形態において、前記第2無機粒子は、ベーマイト(Boehmite)、擬ベーマイト(Pseudo-boehmite)、Al、TiO、CeO、MgO、NiO、Y、CaO、SrTiO、SnO、ZnO、およびZrOから選択される1つまたは2つ以上の組み合わせを含んでもよい。
【0019】
一実施形態において、前記第2無機粒子の大きさは0.001μm~20μmであってもよい。
一実施形態において、前記第1無機粒子は、前記第2無機粒子100重量部に対して0.1重量部~30重量部で含まれてもよい。
一実施形態において、前記セパレータは、170℃における熱収縮率(%)が10%以下であってもよい。
【0020】
一実施形態において、前記セパレータは、ボール紙付着力テストによる無機粒子層の重量変化率(%)が10%以下であってもよい。
前記ボール紙付着力テストは、5cm×10cmサイズのセパレータ上に2cm×10cmサイズの黒色ボール紙を載せた後、10Nの力で押した状態でボール紙を0.1m/sの速度で水平に引っ張る際にボール紙に付着する粒子の量を評価するものである。
【0021】
一実施形態において、前記多孔性基材と前記無機粒子層との剥離強度が25gf/15mm以上であってもよい。
一実施形態において、前記無機粒子層は、有機バインダーをさらに含んでもよい。
【0022】
一実施形態において、前記有機バインダーは、前記第1無機粒子、第2無機粒子、および有機バインダーの総100重量部に対して5重量部以下で含まれてもよい。
【0023】
また、本開示は、正極、負極、上述したセパレータ、および電解質を含む、電気化学素子を提供する。
一実施形態において、前記電気化学素子は、リチウム二次電池であってもよい。
【0024】
また、本開示は、多孔性基材の一面または両面に第1無機粒子および第2無機粒子を含む分散液をコーティングするステップと、前記コーティングされた多孔性基材を乾燥して無機粒子層を形成するステップと、を含み、前記第1無機粒子は、前記式1による蛍光保持率が85%以上である、セパレータの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一実施形態に係るセパレータは、多孔性基材の一面または両面に形成され、特定の蛍光特性を有する無機粒子を含む無機粒子層を採択することにより、耐熱性が向上することで、急激な温度上昇などの異常現象による発火や破裂を防止することができる。
【0026】
また、本発明の一実施形態に係るセパレータは、セパレータの無機粒子層に特定の蛍光特性を有する無機粒子を含むことで、多孔性基材と無機粒子層との間および無機粒子層の無機粒子間の接着力に優れるという効果がある。
【0027】
また、前記無機粒子が特定の蛍光特性を有するということを利用して、耐熱性および接着性を著しく改善可能なセパレータ用無機粒子を容易に採択することができる。
また、本発明の一実施形態に係る電気化学素子は、前記セパレータを含むことで化学的に安定し、優れた電気的特性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】製造例1で製造された第1無機粒子の吸収スペクトル(Absorption spectrum)および放出スペクトル(Emission spectrum)である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本明細書に記載された実施の形態は種々の異なる形態に変形されてもよく、一実施形態に係る技術が以下に説明する実施の形態に限定されるものではない。また、一実施形態の実施の形態は、当該技術分野における平均的な知識を有する者に本開示をより完全に説明するために提供されるものである。
【0030】
また、明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる単数の形態は、文脈上、特に指示しない限り、複数の形態も含むことを意図し得る。さらに、明細書の全体にわたって、ある構成要素を「含む」とは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0031】
本明細書で用いられる数値範囲は、下限値と上限値、その範囲内での全ての値、定義される範囲の形態と幅から論理的に誘導される増分、そのうち限定された全ての値および互いに異なる形態に限定された数値範囲の上限および下限の全ての可能な組み合わせを含む。本発明の明細書において、特に定義しない限り、実験誤差または値の四捨五入により発生し得る数値範囲外の値も定義された数値範囲に含まれる。
【0032】
本明細書において、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上部に」または「上に」存在するとする際、これは、他の部分の「真上に」存在する場合だけでなく、その間にまた他の部分が存在する場合も含む。
【0033】
本明細書で用いられる第1、第2などの用語は多様な構成要素を説明する際に用いられてもよいが、構成要素が用語により限定されてはならない。用語は、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられる。
【0034】
また、一実施形態に係るセパレータに含まれる無機粒子は、第1無機粒子および第2無機粒子を含む意味として用いられる。
本開示において、「板状」とは、粒子形状において、厚さが長径または短径よりも小さいものをいい、プレート状、薄状などを意味し得る。
【0035】
本開示において、板状無機粒子の長径は、粒子の最長の長さを意味し、板状無機粒子の短径は、前記長径の軸と直交する方向の最長の長さを意味し、長径、短径、および厚さで大きさが表現可能な無機粒子に対して同様に適用することができる。
【0036】
本開示において、「棒状」とは、粒子形状において、いずれか一方向に延びたものを意味するが、ワイヤ状または繊維状と比べて延びた長さが短いものを意味するものであって、ロッド状、柱状などを意味し得る。
【0037】
本開示において、棒状無機粒子の長さは、粒子が延びた方向の長さを意味し、直径は、前記長さを測定する方向と直交する方向の長さを意味し、長さおよび直径で大きさが表現可能な無機粒子に対して同様に適用することができる。
【0038】
本開示において、長径、短径、厚さ、長さ、および直径は、透過型電子顕微鏡(TEM、JEOL Ltd、JEM-2100F)により測定された5個のイメージにおいて、それぞれ20個の粒子を任意に選択して測定した値の平均から求めたものである。
【0039】
本開示において、第1無機粒子を除いた第2無機粒子、有機粒子などの粒子の大きさは、レーザ散乱法による粒度分布測定において小さい粒径から累積体積が50%になるときの粒子直径であるD50を意味する。
【0040】
本開示において、「ベーマイト(Boehmite)」は、化学式AlO(OH)で表され、Al-(O,OH)八面体が結合してシート構造を有するものを意味する。
【0041】
本開示において、「擬ベーマイト(Pseudo-Boehmite)」は、化学式AlO(OH)で表され、水分含量が高く、微細結晶のベーマイト類似構造を有するものを意味する。
【0042】
本発明者らは、上述した従来の無機粒子層を有するセパレータの問題を解決するために研究を続けた。その結果、特定の蛍光特性を示す無機粒子を含み、多孔性基材層の一面または両面に無機物粒子が互いに連結されて気孔を形成する無機粒子層を形成したセパレータの場合、高分子系有機バインダーを用いないかまたは少量用いるにも関わらず、耐熱性および接着性に優れたセパレータを提供可能であることを初めて認識し、本発明を完成するに至った。前記特定の蛍光特性を示す無機粒子は、その蛍光特性を示す無機粒子であってもよく、また、その蛍光特性を示す特定の大きさの無機粒子を意味してもよい。
【0043】
以下、上述した特定の蛍光特性を示す無機粒子を「第1無機粒子」といい、そうでない無機粒子層を形成する主成分として用いる無機粒子を「第2無機粒子」という。具体的に、前記第1無機粒子は、溶液中で300nm~350nmの範囲の波長を有する入射光を照射する際に600nm~750nmの波長領域で蛍光を有するのに対し、前記第2無機粒子は、このような蛍光を有していなくてもよい。また、前記第2無機粒子は、本明細書で定義された蛍光保持率が85%未満であってもよく、より具体的に、前記蛍光保持率が0であってもよい。
【0044】
本開示は、多孔性基材、および前記多孔性基材の一面または両面に形成された無機粒子層を含み、前記無機粒子層は、第1無機粒子および第2無機粒子を含み、前記第1無機粒子は、下記式1による蛍光保持率が85%以上である、セパレータを提供する。
【0045】
[式1]
蛍光保持率(%)=I100/I×100
【0046】
前記式1中、前記Iは、前記第1無機粒子を5wt%含むスラリー溶液の上部10vol%のアリコート(aliquot)を希釈倍率(dilution factor)500で希釈した溶液に300nm~350nmの範囲の波長を有する入射光を照射する際に検出される600nm~750nmにおける最大蛍光強度であり、
前記I100は、前記スラリー溶液を100時間静置した後、上部10vol%のアリコート(aliquot)を希釈倍率(dilution factor)500で希釈した溶液に300nm~350nmの範囲の波長を有する入射光を照射する際に検出される600nm~750nmにおける最大蛍光強度である。
【0047】
この際、前記蛍光強度(IおよびI100)は、セパレータにコーティングされる前の第1無機粒子を含むスラリー溶液から検出可能であるだけでなく、第1無機粒子がコーティングされたセパレータから多孔性基材を分離して得られた無機粒子層を含むスラリー溶液、およびセパレータから多孔性基材を分離して得られた無機粒子層に含まれた第1無機粒子を含むスラリー溶液からも検出可能である。
【0048】
また、一実施形態において、前記第1無機粒子は、溶液中で300nm~350nmの範囲の波長を有する入射光に対して600nm~750nmの波長領域で蛍光を有してもよい。詳細には、前記蛍光は、分光蛍光光度計(Hitachi社製のF-7000)を用いて測定することができる。
【0049】
従来は、多孔性基材に無機粒子層を積層する際に、過量の高分子系有機バインダーを用いないと、無機粒子がよく分散しないため、無機粒子が互いに連結されて気孔が形成される無機粒子層を製造することができず、過度なエネルギーを投入して無機粒子を分散させる場合にも、無機粒子間または無機粒子層と多孔性基材との十分な接着力を確保することができなかった。
【0050】
しかしながら、一実施形態に係るセパレータは、有機バインダーを用いなくても、第1無機粒子により、第2無機粒子を含む無機粒子が互いに連結されて気孔が形成されることができる。一実施形態において、前記セパレータは、前記第1無機粒子により、前記無機粒子間および/または前記無機粒子層と多孔性基材との間が連結されるかまたはアンカリング(anchoring)され、高い接着性を示すことができると考えられる。
【0051】
一実施形態において、前記無機粒子層は、多孔性基材の一面または両面に対して、各面の全面積中の90%以上に形成されてもよく、具体的には95%以上、より具体的には、微細欠陥が発生する場合を除き、多孔性基材の各面の全面積中の100%に形成されてもよく、前記無機粒子層は、無機粒子が互いに隣接して無機粒子間に気孔が形成されたものである。
【0052】
一実施形態に係るセパレータは、有機バインダーを用いていないにも関わらず、従来のセパレータに比べて、無機粒子層に含まれた粒子間の結合力および多孔性基材と無機粒子層との接着力にさらに優れることができる。
【0053】
一実施形態は、従来の過量の高分子系有機バインダーを含む有/無機複合セパレータに比べて、上述した特定の蛍光特性を有する無機粒子を含む場合、有機バインダーを用いなくても、無機粒子間および無機粒子と多孔性基材との間が強力に結合した多孔性の無機粒子層を提供することができ、これにより、セパレータの耐熱性がさらに向上し、急激な温度上昇などの異常現象による発火や破裂を防止可能な新しいセパレータを提供することができる。
【0054】
一実施形態に係るセパレータは、従来の高分子系有機バインダーにより発生する気孔の閉塞および膨張などの問題が発生せず、イオン移動に非常に優れるため、リチウムイオンなどのイオン移動に障害がなく、電池の充放電容量や効率などの電気的特性が著しく向上することができる。
【0055】
また、耐熱性および耐薬品性が著しく上昇し、無機物のみからなる無機粒子層を得ることができ、蛍光特性を有する第1無機粒子により、無機粒子層に含まれる無機粒子間または前記多孔性基材と無機粒子層との接着力を十分に確保することができる。
【0056】
したがって、本発明の一実施形態に係るセパレータは、優れた熱的安全性、優れた電気化学的安全性、優れたリチウムイオン伝導度、電解液の汚染に対する優れた防止特性、および優れた電解液含浸率効果を同時に有することができる。前記無機粒子層は、多孔性基材、例えば、ポリオレフィン系の多孔性基材の一面または両面に第1無機粒子を含んで形成されてもよく、この際、前記第1無機粒子は、下記式1による蛍光保持率が85%以上であってもよい。
【0057】
[式1]
蛍光保持率(%)=I100/I×100
【0058】
前記式1中、前記Iは、前記第1無機粒子を5wt%含むスラリー溶液の上部10vol%のアリコート(aliquot)を希釈倍率(dilution factor)500で希釈した溶液に300nm~350nmの範囲の波長を有する入射光を照射する際に検出される600nm~750nmにおける最大蛍光強度であり、
前記I100は、前記スラリー溶液を100時間静置した後、上部10vol%のアリコート(aliquot)を希釈倍率(dilution factor)500で希釈した溶液に300nm~350nmの範囲の波長を有する入射光を照射する際に検出される600nm~750nmにおける最大蛍光強度である。
【0059】
一実施形態として、前記蛍光保持率を満たす第1無機粒子を用いる場合、無機粒子層に含まれた無機粒子間の固定効果および無機粒子層と多孔性基材との結合力などに非常に優れ、本発明が目的とする物性がさらに高度に実現されることができる。具体的には、前記第1無機粒子は、前記式1による蛍光保持率が88%以上、90%以上、または94%以上であってもよい。
【0060】
一実施形態において、前記セパレータの無機粒子層は、前記多孔性基材の一面または両面に形成されるものであり、第1無機粒子により、第2無機粒子を含む無機粒子が互いに連結されて気孔が形成される多孔性構造を有することができる。前記無機粒子層は、高分子系有機バインダーを用いなくても、従来の過量の有機バインダーを含む有/無機複合セパレータが有する問題を解決することができる。
【0061】
一実施形態として、前記セパレータは、従来の有/無機複合セパレータに比べて、前記セパレータを用いた電気化学素子を製造する場合、高温、過充電、外部衝撃などの内部または外部要因による過度な条件により電池の内部でセパレータが容易に破裂せず、電池の安全性がさらに向上することができる。
【0062】
一実施形態として、前記第1無機粒子は、溶液中で300nm~350nmの範囲の波長を有する入射光に対して600nm~750nm、600nm~700nm、650nm~750nm、または650nm~700nmの波長領域で蛍光特性を有してもよい。前記入射光の一例として、これに制限されるものではないが、332nmの波長を有する光であってもよい。
【0063】
一実施形態において、前記第1無機粒子は、制限されるものではないが、板状無機粒子および棒状無機粒子から選択される1つまたは2つ以上であってもよい。
【0064】
前記第1無機粒子が前記特定の蛍光特性を発現し、かつ、高い表面積を有する板状または棒状などの形状を有する場合、第1無機粒子と第2無機粒子との高い表面接触により接着力がさらに増大することができる。その理由が明らかではないが、例えば、ファンデルワールス結合のような化学的結合がさらに円滑に行われることができ、第1無機粒子により第2無機粒子間の絡み合い(tangle)現象がさらに円滑に発生し、第2無機粒子が互いに接してさらに強く固定され、層中に気孔がさらに円滑に形成されることができると考えられる。
【0065】
すなわち、前記無機粒子層は、ファンデルワールスのような化学的二次結合や絡み合い現象により第2無機粒子が互いに固定されて容易に脱離せず、第2無機粒子間の接着力が著しく向上することができると考えられる。
【0066】
一実施形態において、前記第1無機粒子は、可能な限り表面積が大きいほど好ましく、例えば、比表面積が50m/g以上、100m/g以上、500m/g以上、1000m/g以上、2000m/g以上、3000m/g以上、4000m/g以下、またはこれらの各数値間の範囲であってもよく、具体的には300m/g~4000m/g、より具体的には1000m/g~4000m/g以上であってもよい。上述した範囲の比表面積である場合、表面積に応じたファンデルワールス結合のような化学的結合が増大して第1無機粒子間の絡み合い、第1無機粒子と多孔性基材面との絡み合い、第1無機粒子と第2無機粒子との絡み合い乃至物理的結合がさらに増大することができ、接着力がさらに上昇することができる。ただし、用途によっては、弱い結合も可能であるため、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0067】
一実施形態において、前記第1無機粒子は、例えば、長さ(または、長径)が0.1nm~450nm、直径(または、短径)が0.1nm~200nmであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0068】
一実施形態において、前記第1無機粒子が板状無機粒子である場合、長径および短径がそれぞれ0.1nm~200nmであってもよく、具体的に、0.1nm~150nm、0.1nm~100nm、0.1nm~80nm、0.1nm~50nm、1nm~30nm、5nm~25nm、または10nm~20nmであってもよい。ただし、前記蛍光特性を示す限りは制限されない。
【0069】
一実施形態において、前記第1無機粒子が板状無機粒子である場合、厚さが50nm以下、具体的には20nm以下、15nm以下、または10nm以下、より具体的には8nm以下、または5nm以下であってもよく、下限は、一例として0.1nm、または1nmであってもよいが、前記蛍光特性を示す限りは制限されない。
【0070】
一実施形態において、前記第1無機粒子が棒状無機粒子である場合、長さが0.1nm~450nmであり、直径が0.1nm~100nmであってもよく、より具体的には、長さが400nm以下、350nm以下、300nm以下、250nm以下、200nm以下、150nm以下、100nm以下、80nm以下、または60nm以下であってもよく、直径が80nm以下、70nm以下、50nm以下、30nm以下、または10nm以下であってもよく、長さおよび直径の下限は、これに制限されないが、0.1nm、0.5nm、または1nmであってもよい。また、長さと直径の比は制限されないが、例えば5~500であってもよく、前記蛍光特性を示すものであれば制限されない。
【0071】
前記第1無機粒子が上記範囲の長径、短径、および厚さ、または長さおよび直径を有する場合、第1無機粒子と第2無機粒子との高い表面接触により、ファンデルワールス力、分散力だけでなく、水素結合のような化学的結合がさらに円滑に行われることができる。また、第1無機粒子により第2無機粒子間の絡み合い(tangle)現象がさらに円滑に発生し、第2無機粒子が互いに接してさらに強く固定され、層中に気孔がさらに円滑に形成されることができる。これにより、セパレータの熱収縮率、剥離力、ガーレー透気度などの物性が向上することができる。
【0072】
本発明において、前記第1無機粒子は、前記蛍光特性を示し、また、それ自体が電池の作動条件で化学的に安定するものであれば、その種類は特に限定されず、例えば、金属、炭素、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属カーボネート、金属水和物、および金属炭窒化物などから選択されるいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含んでもよく、より具体的には、ベーマイト(Boehmite)、擬ベーマイト(Pseudo-boehmite)、Ga、SiC、SiC、石英(Quartz)、NiSi、Ag、Au、Cu、Ag-Ni、ZnS、Al、TiO、CeO、MgO、NiO、Y、CaO、SrTiO、SnO、ZnO、およびZrOなどから選択される1つまたは2つ以上の組み合わせを含んでもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0073】
また、前記無機粒子層は、多孔性基材の表面との接着力にも非常に優れる。これは、前記第1無機粒子が互いに絡み合い現象および/またはファンデルワールス力、分散力だけでなく、水素結合のような化学的二次結合により第2無機粒子を固定したりもするが、多孔性基材に形成された気孔(micropores)の内部にも第1無機粒子が侵入してアンカリングされることで、多孔性基材と堅固に固着する効果を有するためであると考えられる。
【0074】
したがって、本発明の一実施形態に係るセパレータは、多孔性基材の一面または両面に形成された無機粒子層が無機物のみからなっているにも関わらず、割れや無機粒子の離脱などのような問題が発生せず、さらに優れた接着力を示すことができる。
【0075】
本発明の一実施形態において、前記第2無機粒子は、例えば、球形、角形、楕円形、無定形、またはこれらの混合形態の粒子であって、前記蛍光特性を示さないものであり、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属カーボネート、金属水和物、および金属炭窒化物から選択されるいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含んでもよく、具体的には、ベーマイト(Boehmite)、擬ベーマイト(Pseudo-boehmite)、Al、TiO、CeO、MgO、NiO、Y、CaO、SrTiO、SnO、ZnO、およびZrOなどから選択されるいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含んでもよいが、電気化学的に安定して電池の性能に大きい影響を与えないものであれば、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0076】
前記第2無機粒子の大きさは、本発明の目的を達成する限りは制限されず、例えば0.001μm~20μmであってもよく、具体的には0.001μm~10μmであってもよいが、第1無機粒子のような蛍光特性は示さない。
【0077】
本発明の一実施形態において、前記第2無機粒子の大きさは、平均粒径(D50)を意味し、すなわち、第2無機粒子の平均粒径(D50)は、0.001μm~20μm、または0.001μm~10μmであってもよく、上記範囲の平均粒径(D50)を有する限り、前記第2無機粒子は、大きさが互いに異なる粒子を含んでもよい。例えば、前記第2無機粒子は、平均粒径(D50)が0.001μm~1μmの粒子、および平均粒径(D50)が0.5μm~10μmの粒子を含んでもよいが、これに制限されない。
【0078】
前記第1無機粒子は、前記第2無機粒子100重量部に対して0.1重量部~30重量部で含まれてもよく、必ずしもこれに制限されるものではないが、上記含量範囲を満たす場合、第1無機粒子および第2無機粒子を含む無機粒子間および無機粒子層と多孔性基材との結合力に非常に優れるため、本発明の目的を達成することができる。前記含量に関し、より具体的には、前記第1無機粒子は、前記第2無機粒子100重量部に対して1重量部~30重量部、1重量部~25重量部、または1重量部~20重量部で含まれてもよい。
【0079】
本発明の一実施形態において、前記無機粒子層は、粒子として無機粒子を単独で含むものがより好ましいが、必要に応じて、有機粒子をさらに含ませて気孔を形成した無機粒子層であってもよい。この際、前記有機粒子は、ポリエチレン粒子など、電気化学的に安定しさえすれば、その種類は特に制限されない。
【0080】
また、無機粒子層が有機粒子を含む場合、その含量は、前記第2無機粒子100重量部に対して0.1重量部~40重量部であってもよいが、本発明の目的を達成する限りは制限されない。
【0081】
また、前記有機粒子の大きさは、前記第2無機粒子の大きさと同一の範囲で用いてもよい。
本発明の無機粒子層は、前述した第1無機粒子および第2無機粒子の他に、通常知られたその他の添加剤をさらに含んでもよい。
【0082】
本発明の一実施形態において、本発明の無機粒子層は、有機バインダーを含まず、無機物のみからなってもよいが、本発明の目的を達成する範囲内で有機バインダーをさらに含んでもよい。
【0083】
具体的には、前記有機バインダーは、前記第1無機粒子、第2無機粒子、および有機バインダーの総100重量部に対して5重量部以下で含まれてもよい。より具体的には、前記有機バインダーは、前記第1無機粒子、第2無機粒子、および有機バインダーの総100重量部に対して3重量部以下または1重量部以下で含まれてもよく、その下限は0.1重量部であってもよいが、これに限定されるものではない。有機バインダーの含量が上記範囲を満たすことで、セパレータの耐熱性および接着力がさらに向上することができ、有機バインダーにより気孔が閉塞し、抵抗増加率が高くなる問題、および化学的反応などにより電気的特性が低下する問題などをさらに防止することができる。
【0084】
特に、有機バインダーの含量が上記範囲を満たす場合、前記第1無機粒子、第2無機粒子、および有機バインダーを含むスラリー(slurry)の物性と関連し、前記スラリー中の粒子の粒径(D50)増加率およびスラリーの粘度増加率が低く測定され、さらに優れたスラリーの物性が長時間維持されることができ、前記スラリーを多孔性基材上にコーティングして形成された無機粒子層の厚さの標準偏差増加率もさらに低く測定されるところ、さらに優れたコーティング均一性が維持されることができる。このような均一性は、セパレータの耐熱性および接着力の均一性をさらに向上させることができ、ガス透過率の均一性により電池の電気的特性をさらに向上させることができる。この際、前記粒径は、それぞれ無機粒子の粒径を測定して小さい粒子から体積を累積する場合に総体積が50%に該当する粒径であるD50を意味する。
【0085】
より具体的に、有機バインダーの含量が上記範囲を満たす場合、前記スラリーを常温で24時間放置した際に、前記スラリー中の粒子の粒径(D50)増加率は1.5%以内、具体的には1%以内であってもよく、前記スラリーの粘度増加率は1%以内、具体的には0.5%以内であってもよい。また、前記スラリーをコーティングして形成された無機粒子層を含むセパレータを常温で24時間放置した際に、前記無機粒子層厚さの標準偏差増加率は2%以内、具体的には1%以内であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0086】
また、前記有機バインダーは、前記第2無機粒子100重量部に対して0.1重量部~10重量部で含まれてもよい。また、前記有機バインダーは、前記第2無機粒子100重量部に対して0.1重量部~10重量部で含まれ、かつ、前記第1無機粒子、第2無機粒子、および有機バインダーの総100重量部に対して5重量部、3重量部、または1重量部以下で含まれてもよい。
【0087】
より具体的に、前記有機バインダーの含量は、前記第2無機粒子100重量部に対して0.1重量部~5重量部、具体的には0.1重量部~3重量部で含まれてもよい。同様に、前記有機バインダーの含量は、第2無機粒子100重量部に対して0.1重量部~5重量部、具体的には0.1重量部~3重量部で含まれ、かつ、前記第1無機粒子、第2無機粒子、および有機バインダーの総100重量部に対して5重量部、3重量部、または1重量部以下で含まれることが、本発明の目的を最もよく達成することができるためさらに好ましいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0088】
本発明の一実施形態において、前記有機バインダーは、当業界で周知のバインダーを意味し、エステル系重合体、アミド系重合体、イミド系重合体、アクリル系重合体、スチレン系重合体、ビニルアルコール系重合体、ビニルピロリドン系重合体、セルロース系重合体、およびフッ素系重合体などのように当業界で周知の高分子系有機バインダーを意味するか、または反応基を有するシラン化合物などのように架橋可能であって架橋されてバインダーの役割をする化合物、金属アルコキシド、または極性基を有する金属アルカノエートを意味し得るが、これに限定されない。
【0089】
具体的には、前記エステル系重合体は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート[polyethylene naphthalate(PEN)]などから選択されてもよく、前記アミド系重合体は、ポリアミド-6、ポリアミド-66などから選択されてもよく、前記イミド系重合体は、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミドなどから選択されてもよく、前記アクリル系重合体は、ポリアクリルアミド、ポリメタクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリアクリル酸ナトリウム、およびアクリル酸-メタクリル酸共重合体などから選択されてもよい。前記スチレン系重合体は、ポリスチレン、ポリ-α-メチルスチレン、およびポリブロモスチレンなどから選択されてもよい。前記ビニルアルコール系重合体は、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、およびポリビニルアセテート-ポリビニルアルコール共重合体などから選択されてもよい。前記ビニルピロリドン系重合体は、ポリビニルピロリドンおよびビニルピロリドンを含む共重合体などから選択されてもよい。また、セルロース系重合体としては、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレートなどが挙げられ、前記フッ素系重合体は、具体的に、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレン、ポリフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン、およびポリクロロトリフルオロエチレンなどから選択されるいずれか1つまたは2つ以上の混合物などから選択されてもよいが、これに制限されない。
【0090】
具体的に、上述した高分子系有機バインダーは、高分子の重量平均分子量範囲が5,000~3,000,000g/molであってもよいが、これに限定されず、ガラス転移温度が100℃~200℃であってもよいが、これに限定されない。
【0091】
また、前記反応基を有するシラン化合物などのように架橋可能であって架橋されてバインダーの役割をする化合物は、例示としてγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、およびテトラエトキシシラン(TEOS)の中から選択されてもよいが、これに限定されない。
【0092】
また、極性基を有する金属アルカノエートは、極性基がヒドロキシ基、カルボニル基、アミン基、およびチオール基の中から選択されるいずれか1つまたは2つ以上であってもよいが、これに限定されず、一例示としてアルミニウムL-ラクテート(Aluminum L-lactate)であってもよいが、これに限定されない。この他に、当該分野で用いられる多様な有機バインダーを用いてもよいため、その種類は必ずしもこれに限定されるものではない。
【0093】
本発明の一実施形態において、前記多孔性基材としては、セパレータとして用いられる高分子から製造された多孔性高分子フィルム、シート、不織布、織布などを多様に用いてもよく、前記各層を2層以上に積層した積層構造の多孔性基材を含んでもよい。
【0094】
前記多孔性基材の材質としては、二次電池分野で用いられる高分子材料であれば特に限定されず、例えば、多孔性ポリオレフィン系基材が挙げられる。具体的には、低密度ポリエチレン、直鎖状の低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、上記の共重合体またはこれらの誘導体から製造される多孔性フィルム、シート、または不織布状などが挙げられるが、これに限定されない。
【0095】
前記多孔性基材の厚さは、本発明の目的を達成する限りは特に制限されないが、1μm~100μm、具体的には5μm~60μm、より具体的には5μm~30μmの範囲であってもよい。また、前記多孔性基材の気孔の大きさおよび気孔率は、例えば、気孔の大きさ(直径)は0.01μm~20μm、具体的には0.05μm~2μmであってもよく、気孔率は5%~95%、具体的には30%~60%であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0096】
本発明の一実施形態において、前記無機粒子層は、第1無機粒子および第2無機粒子を含む無機粒子が互いに隣接して形成される気孔を有するものであれば、その厚さは特に制限されないが、0.01μm~50μmであってもよい。
【0097】
本発明の一実施形態において、前記セパレータの気孔の大きさおよび気孔率(porosity)は、第1無機粒子の直径および第2無機粒子の大きさにより定められるものであり、特に限定されないが、例えば、それぞれ0.001μm~10μmおよび5%~95%であってもよい。
【0098】
本発明の一実施形態において、前記セパレータの厚さは特に制限されず、例えば5μm~100μm、具体的には10μm~50μmであってもよい。
【0099】
一実施形態に係るセパレータは、多孔性基材の一面または両面に形成され、蛍光特性を有する第1無機粒子を含む無機粒子層を採択することで、高温における熱収縮率が著しく低く、耐熱性が向上することができる。
【0100】
例えば、前記セパレータは、170℃における熱収縮率(%)が10%以下であってもよい。具体的に、前記セパレータは、170℃における熱収縮率が8%以下、5%以下、または3%以下であってもよく、下限は、これに制限されないが、例えば0.01%、または0.1%であってもよい。また、前記セパレータは、130℃における熱収縮率が5%以下、3%以下、1%以下、または0.5%以下であってもよく、下限は、一例として0.001%、または0.01%であってもよい。また、前記セパレータは、150℃における熱収縮率が10%以下、5%以下、3%以下、または1.5%以下であってもよく、下限は、一例として0.001%、または0.01%であってもよい。
【0101】
前記熱収縮率は、TD方向が表示された10cm×10cmのセパレータを150℃、160℃、170℃でそれぞれ1時間放置後の面積減少率を測定し、下記式2により計算することができる。
【0102】
[式2]
TD方向の熱収縮率(%)=((加熱前の長さ-加熱後の長さ)/加熱前の長さ)×100
【0103】
また、前記セパレータは、ガーレー透気度変化量が下記式3を満たしてもよい。ガーレー透気度変化量が下記式3を満たすことで、本発明のセパレータが目的とする物性を実現することができる。
【0104】
[式3]
-G≦70
【0105】
前記式3中、前記Gは、前記セパレータのガーレー透気度であり、前記Gは、多孔性基材自体のガーレー透気度であり、単位は、sec/100ccである。前記ガーレー透気度は、ASTM D726規格に準じて、100ccの空気がセパレータの1平方インチ(1 square inch)の面積を通過する際にかかる時間を秒単位で測定した時間であってもよい。
【0106】
また、前記セパレータは、多孔性基材と無機粒子層との間および無機粒子層の無機粒子間の接着力が向上した特性を有することができる。
例えば、前記セパレータは、ボール紙付着力テストによる無機粒子層の重量変化率(%)が10%以下であってもよい。具体的に、ボール紙付着力テストによる無機粒子層の重量変化率(%)が8%または5%以下であってもよい。前記セパレータは、上記範囲のボール紙付着力テストによる無機粒子層の重量変化率(%)を満たすことで、接着力に優れて安定性が向上することができる。
【0107】
前記ボール紙付着力テストは、5cm×10cmサイズのセパレータ上に2cm×10cmサイズの黒色ボール紙を載せた後、10Nの力で押した状態でボール紙を0.1m/sの速度で水平に引っ張る際にボール紙に付着する粒子の量を評価するものである。
【0108】
前記無機粒子層の重量変化率(%)は、下記式4により計算することができる。
【0109】
[式4]
無機粒子層の重量変化率(%)=((ボール紙付着力テスト前の無機粒子層の重量-ボール紙付着力テスト後の無機粒子層の重量)/ボール紙付着力テスト前の無機粒子層の重量)×100
【0110】
また、前記セパレータは、ASTM D903に準じて測定された前記多孔性基材と前記無機粒子層との剥離強度が25gf/15mm以上であってもよい。具体的に、前記剥離強度は30gf/15mm以上、40gf/15mm以上、50gf/15mm以上、70gf/15mm以上、または80gf/15mm以上であってもよく、上限は制限されないが、300gf/15mm以下、または200gf/15mm以下であってもよい。前記剥離強度が上記範囲を満たす場合、前記多孔性基材と前記無機粒子層との接着力に優れ、安定性が向上したセパレータを提供することができる。
【0111】
以下、本発明の一実施形態に係る電気化学素子について説明する。
前記セパレータは、電気化学素子、例えば、リチウム二次電池のセパレータとして用いることができる。前記電気化学素子としては、特に限定されないが、例えば、一次電池、二次電池、燃料電池、キャパシタなどが挙げられる。
【0112】
一実施形態に係る電気化学素子は、正極、負極、上述したセパレータ、および電解質を含んでもよく、前記セパレータは、電池に通常用いられる場合、負極、セパレータ、および正極を配置して組み立てることで、電解液を注入して完成する一般的な製造方法に従うため、ここではこれ以上具体的に説明しない。
【0113】
本発明の正極としては、二次電池の正極として用いられる通常の物質であれば制限されず、例えば、リチウムマンガン酸化物(lithiated magnesium oxide)、リチウムコバルト酸化物(lithiated cobalt oxide)、リチウムニッケル酸化物(lithiated nickel oxide)、またはこれらの組み合わせにより形成される複合酸化物などが挙げられる。
【0114】
負極活物質としては、二次電池の負極として用いられる通常の負極活物質であれば制限されず、例えば、リチウム金属、活性化炭素、グラファイトなどの炭素系などが挙げられる。
【0115】
前記正極活物質および負極活物質は、それぞれ正極集電体または負極集電体に結着して用いる。正極集電体としては、アルミニウム箔、ニッケル箔などを用いてもよく、負極集電体としては、銅、ニッケルなどから選択されるが、通常用いられるものであれば制限なく全て用いてもよいため、これを制限しない。
また、本発明で用いられる電解液は、当該分野で用いられるものであれば制限されないため、本発明ではこれ以上説明しない。
【0116】
以下、本発明の一実施形態に係るセパレータの製造方法について説明する。
本発明の一実施形態に係るセパレータは、第1無機粒子および第2無機粒子を混合して溶媒に分散した無機粒子分散液を製造し、それを多孔性基材にコーティングし乾燥して製造することができる。この際、前記第2無機粒子は、前記第1無機粒子により、有機バインダーが存在しないかまたは少量含まれていても円滑に分散することができる。
【0117】
すなわち、従来の有/無機複合セパレータにおいて無機粒子分散液を製造する際に、過量の有機バインダーを用いない場合には、無機粒子の分散が不可能であり、また、過度な力を加えて分散液を製造したとしても、それを多孔性基材にコーティングする場合、無機粒子間または無機粒子と多孔性基材との接着力に非常に劣り、セパレータとしての機能をすることができなかった。
【0118】
しかしながら、本発明の一実施形態に係るセパレータの製造方法は、第2無機粒子または第2無機粒子を含む粒子と第1無機粒子を混合して分散させるものであり、従来の過量の有機バインダーを用いる場合のように前記粒子が非常によく分散することができるとともに、従来の過量の有機バインダーを用いることに伴う問題を解決することができる。
【0119】
したがって、前記分散液を用いて多孔性基材の一面または両面にコーティングして無機粒子層を積層する場合、多孔性基材との接着力および粒子間の接着力に非常に優れる。
【0120】
本発明の一実施形態に係るセパレータの製造方法は、多孔性基材の一面または両面に第1無機粒子および第2無機粒子を含む分散液をコーティングするステップと、前記コーティングされた多孔性基材を乾燥して無機粒子層を形成するステップと、を含んでもよい。
【0121】
具体的に、本発明の一実施形態に係るセパレータの製造方法は、第1無機粒子を溶液に分散して分散液を製造する第1ステップと、第2無機粒子または第2無機粒子を含む粒子を前記第1ステップの分散液に分散して分散液を製造する第2ステップと、多孔性基材フィルムの表面の全体および一部の表面に前記第2ステップで製造された分散液をコーティングおよび乾燥して無機粒子層を形成する第3ステップと、を含んでもよい。
【0122】
また、本発明の一実施形態に係るセパレータの製造方法は、第1無機粒子と第2無機粒子を同時に溶液に投入および分散して分散液を製造するステップと、多孔性基材フィルムの表面の全体および一部の表面に前記分散液をコーティングおよび乾燥するステップと、を含んでもよい。
【0123】
無機粒子層を形成する分散液の分散媒体(溶媒)としては、主に水を用いてもよく、その他の分散媒体(溶媒)としては、エタノール、メタノール、プロパノールなどの低級アルコール、ジメチルホルムアミド、アセトン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、塩化メチレン、DMF、N-メチル-2-ピロリドン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの溶媒、またはこれらの混合物を用いてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0124】
前記分散媒体(溶媒)に第2無機粒子または第2無機粒子を含む粒子と第1無機粒子を混合して製造された分散液は、ボールミル(ball mill)、ビーズミル(beads mill)、プラネタリミキサー(planetary mixer)(自転/公転回転による粉砕および混合方式)などを用いて、第2無機粒子の凝集体の破砕を行うことが好ましい。この際、破砕時間は、十分に凝集体を破砕する程度であれば制限されず、例えば0.01時間~20時間であってもよく、破砕された第2無機粒子の粒度は0.001μm~10μmであることが好ましいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0125】
前記分散液を多孔性基材上にコーティングし乾燥することで、多孔性基材の一面または両面に無機粒子層を有する多孔性セパレータを得ることができる。具体的には、ポリオレフィン系多孔性基材フィルム上にコーティングし乾燥することで、本発明のセパレータを得ることができる。
【0126】
前記コーティング方法は、特に限定されるものではないが、例えば、ナイフコーティング、ロールコーティング、ダイコーティング、ディップコーティングなどの多様な方式でコーティングすることができる。
【0127】
本発明の一実施形態において、有機バインダーをさらに含んでもよく、この場合、セパレータは、有機バインダーが溶解された溶媒を用いることで製造することができる。
【0128】
前記第1無機粒子、第2無機粒子、および有機バインダーに関する説明は、前記セパレータに関する説明における上述したものと同様であるため、その具体的な説明は省略する。
例えば、前記第1無機粒子は、下記式1による蛍光保持率が85%以上であってもよい。
【0129】
[式1]
蛍光保持率(%)=I100/I×100
【0130】
前記式1中、前記Iは、前記第1無機粒子を5wt%含むスラリー溶液の上部10vol%のアリコート(aliquot)を希釈倍率(dilution factor)500で希釈した溶液に300nm~350nmの範囲の波長を有する入射光を照射する際に検出される600nm~750nmにおける最大蛍光強度であり、
前記I100は、前記スラリー溶液を100時間静置した後、上部10vol%のアリコート(aliquot)を希釈倍率(dilution factor)500で希釈した溶液に300nm~350nmの範囲の波長を有する入射光を照射する際に検出される600nm~750nmにおける最大蛍光強度である。
【0131】
以下、他の一実施形態に係るセパレータ用無機粒子の選択方法について説明する。
一実施形態は、無機粒子の前記式1による蛍光保持率を測定するステップと、
前記蛍光保持率が85%以上の無機粒子をセパレータ用無機粒子として選択するステップと、を含む、セパレータ用無機粒子の選択方法を提供することができる。
【0132】
上述したように、一実施形態に係るセパレータは、多孔性基材の一面または両面に形成され、特定の蛍光特性を有する無機粒子を含む無機粒子層を採択することにより、耐熱性が向上することで、急激な温度上昇などの異常現象による発火や破裂を防止できるだけでなく、多孔性基材と無機粒子層との間および無機粒子層の無機粒子間の接着力に優れるという効果がある。前記無機粒子が特定の蛍光特性を有するということを利用して、耐熱性および接着性を著しく改善可能なセパレータ用無機粒子を容易に採択することができる。
【0133】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するものにすぎず、本発明の範囲が下記実施例に限定されるものではない。
【0134】
[物性の評価方法]
1.熱収縮率の評価
TD方向が表示された10cm×10cmのセパレータを150℃、160℃、170℃でそれぞれ1時間放置後の面積減少率を測定し、下記式2によりTD方向の熱収縮率を計算した。
【0135】
[式2]
TD方向の熱収縮率(%)=((加熱前の長さ-加熱後の長さ)/加熱前の長さ)×100
【0136】
2.ガーレー透気度変化量の評価
ガーレー(Gurley)透気度は、Toyoseiki社製のデンソメータ(Densometer)を用いて、ASTM D726規格に準じて、100ccの空気がセパレータの1平方インチ(1 square inch)の面積を通過する際にかかる時間を秒単位で測定した時間であり、ガーレー透気度変化量(Δガーレー透気度)は、下記式5により計算した。
【0137】
[式5]
ガーレー透気度変化量(sec/100cc)=セパレータのガーレー透気度(G)-多孔性基材のガーレー透気度(G
【0138】
3.ボール紙付着力テスト
ボール紙付着力テストは、5cm×10cmサイズのセパレータ上に2cm×10cmサイズの黒色ボール紙(DOOSUNG PAPER社製、重量:180g/m、黒色)を載せた後、10Nの力で押した状態でボール紙を0.1m/sの速度で水平に引っ張る際にボール紙に付着する粒子の量を評価するものである。
具体的に、ボール紙付着力テストによる無機粒子層の重量変化率(%)を下記式4により計算した。
【0139】
[式4]
無機粒子層の重量変化率(%)=((ボール紙付着力テスト前の無機粒子層の重量-ボール紙付着力テスト後の無機粒子層の重量)/ボール紙付着力テスト前の無機粒子層の重量)×100
【0140】
4.剥離力の評価
INSTRON社製の引張測定装置(3343)を用いて、180゜剥離試験方法(ASTM D903)で多孔性基材と無機粒子層との剥離強度を測定した。
【0141】
5.蛍光特性の分析
蛍光スペクトルは、分光蛍光光度計(Hitachi社製のF-7000)を用いて、332nmの光を照射して発生する650nm~700nmの光を検出した。
【0142】
また、下記製造例で製造された粒子および比較例で用いられた平均粒径80nmの無機粒子をそれぞれ5wt%水分散液に製造した後、前記水分散液の10vol%のアリコート(aliquot)をサンプリングして希釈倍率(dilution factor)500で希釈した水溶液に332nmの光を照射し、前記波長における最大蛍光強度を測定した。この際に測定された蛍光強度を前記水分散液の初期蛍光強度(I)とする。
【0143】
上記で製造された5wt%水分散液を100時間静置した後、10vol%のアリコート(aliquot)をサンプリングして希釈倍率(dilution factor)500で希釈した溶液に332nmの光を照射し、前記波長における最大蛍光強度(I100)を測定した。この際に測定された蛍光強度を前記水分散液の100時間静置後の蛍光強度(I100)とする。その後、下記式1により蛍光保持率を求めた。
【0144】
[式1]
蛍光保持率(%)=I100/I×100
【0145】
<製造例1>
アルミニウムイソプロポキシド(Aluminium isopropoxide、sigma aldrich社製)306gを水1600gに溶かしてアルミニウム前駆体溶液を製造する。前記アルミニウム前駆体溶液を95℃に加熱し、500mBarに減圧しつつ、溶液中の凝縮反応の副産物であるイソプロピルアルコール(Isopropyl alcohol)を除去する。イソプロピルアルコールが除去されたアルミニウム前駆体溶液に酢酸(Acetic acid)28gを入れ、pHを3.3に合わせる。pH3.3のアルミニウム前駆体溶液を加圧反応器にて分当たり5℃で昇温させて反応温度を150℃に設定した後、6時間撹拌しつつ反応する。反応が終わった溶液を自然冷却させて擬ベーマイト粒子を製造した。
【0146】
上記で製造された擬ベーマイト粒子は、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscopy、TEM)を用いて5個の透過型電子顕微鏡イメージを任意に選択し、それぞれのイメージにおいて20個の粒子を任意に選択して測定した値の平均から長さおよび直径を求めた。長さおよび直径がそれぞれ55nmおよび6nmであり、棒(rod)状であることを確認した。上記で製造された粒子に対する蛍光特性を図1および表1に示した。
【0147】
<製造例2>
前記製造例1と同様の方法で擬ベーマイト粒子を製造するが、この際、前記イソプロピルアルコールが除去されたアルミニウム前駆体溶液に乳酸(Lactic acid)10gを入れてpHを4.5に合わせたこと、およびpH4.5のアルミニウム前駆体溶液を分当たり5℃で昇温させて反応温度を180℃に設定した後、6時間撹拌しつつ反応させたことを除いては、製造例1と同様に製造した。
【0148】
製造例1と同様の方式で測定した結果、長径および短径がそれぞれ20nmおよび10nmであり、厚さが5nmである、長方形の板(Sheet)状であることを確認し、上記で製造された粒子に対する蛍光特性を表1に示した。
【0149】
【表1】
【0150】
<実施例1>
表1に示された特性を有する平均粒径170nmのベーマイト(D50:170nm)92重量部および製造例1の粒子8重量部を水に投入して固形分15wt%の分散液を製造した。
【0151】
上記で製造された分散液を厚さ9μmのポリエチレンフィルム(気孔率41%)の両面にバーコーティング(bar coating)し乾燥して無機粒子層を形成した。各面の無機粒子層の厚さは2μmであった。製造されたセパレータの平均気孔および気孔率はそれぞれ0.04μmおよび45%であり、無機粒子層の気孔率は56%であった。
製造されたセパレータの無機粒子層の総厚さ、熱収縮率、ガーレー透気度変化量、および剥離力を測定した結果を表2に示した。
【0152】
<実施例2>
表1に示された特性を有する平均粒径170nmのベーマイト(D50:170nm)と製造例1の粒子を85:15の重量比で投入したことを除いては、実施例1と同様に行った。製造された無機粒子層の平均厚さは2μmであり、製造されたセパレータの物性を表2に示した。
【0153】
<実施例3>
製造例1の粒子の代わりに製造例2の粒子を用いたことを除いては、実施例1と同様に行った。製造された無機粒子層の平均厚さは2μmであり、製造されたセパレータの物性を表2に示した。
【0154】
<実施例4>
表1に示された特性を有する平均粒径170nmのベーマイト(D50:170nm)と製造例2の粒子を85:15の重量比で投入したことを除いては、実施例1と同様に行った。製造された無機粒子層の平均厚さは2μmであり、製造されたセパレータの物性を表2に示した。
【0155】
<比較例1>
製造例1の粒子の代わりに表1に示された特性(式1による蛍光保持率:84%)を有する平均粒径80nmのベーマイト(D50:80nm)を用いたことを除いては、実施例1と同様に行った。製造された無機粒子層の平均厚さは2μmであり、製造されたセパレータの物性を表2に示した。
【0156】
<比較例2>
比較例1において、前記表1に示された特性を有する平均粒径170nm(D50:170nm)のベーマイトと表1に示された特性を有する平均粒径80nmのベーマイト(D50:80nm)を85:15重量比で投入したことを除いては、比較例1と同様に行った。製造された無機粒子層の平均厚さは2μmであり、製造されたセパレータの物性を表2に示した。
【0157】
【表2】
【0158】
前記表2を参照すると、前記式1による蛍光保持率が85%以上の第1無機粒子を含む実施例1~4のセパレータは、熱収縮率が著しく低いため、耐熱性に優れ、ガーレー透気度増加率が著しく低く、ボール紙付着力テストによる無機粒子層の重量変化率が著しく低く、剥離力が非常に高いため、接着性が著しく向上することを確認することができる。
【0159】
これに対し、第1無機粒子の代わりに前記式1による蛍光保持率が85%未満の無機粒子を含む比較例1および比較例2のセパレータは、熱収縮率が非常に高いため、耐熱性が著しく低下し、ボール紙付着力テストによる無機粒子層の重量変化率が非常に高く、剥離力が著しく低く測定され、接着性が大幅に低下することを確認した。
【0160】
したがって、本発明の一実施形態に係るセパレータは、多孔性基材上に第1無機粒子および第2無機粒子を含み、前記第1無機粒子が前記式1による蛍光保持率が85%以上であることを満たすことで、十分な接着性、ガーレー透気度、および著しく優れた熱収縮性を示すことができる。
【0161】
以上、本明細書においては特定の事項と限定された実施例により本開示を説明したが、これは本開示のより全般的な理解のために提供されたものにすぎず、本開示は上記の実施例に限定されない。本開示が属する分野における通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正および変形が可能である。
【0162】
したがって、本明細書に記載された思想は、説明された実施例に限定されて決まってはならず、後述の特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的変形を有するものは、いずれも本明細書に記載された思想の範囲に属するといえる。
図1