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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135676
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】糸状食品製造装置
(51)【国際特許分類】
   B26D 3/16 20060101AFI20230922BHJP
   B26D 1/06 20060101ALI20230922BHJP
   A23P 30/20 20160101ALI20230922BHJP
   A21C 11/16 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
B26D3/16 Z
B26D1/06 Z
A23P30/20
A21C11/16 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040863
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】522105311
【氏名又は名称】株式会社F-グレイス
(74)【代理人】
【識別番号】100145953
【弁理士】
【氏名又は名称】真柴 俊一郎
(72)【発明者】
【氏名】原田 知親
(72)【発明者】
【氏名】三浦 健司
(72)【発明者】
【氏名】寺井 富美雄
【テーマコード(参考)】
3C027
4B031
4B048
【Fターム(参考)】
3C027HH01
4B031CA01
4B031CG22
4B031CG29
4B031CH01
4B031CH03
4B031CH18
4B048PE05
4B048PK03
4B048PK04
4B048PM15
(57)【要約】
【課題】高い効率で所定の長さに切断された糸状食品を製造すること。
【解決手段】入口21と出口22とを備え所定の流路長が確保された反応管2を含む糸状食品製造装置1であって、
前記反応管2の出口22側に前記反応管2を流れてきた糸状食品を切断する手段3を備えたことを特徴とする糸状食品製造装置1。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口と出口とを備え所定の流路長が確保された反応管を含む糸状食品製造装置であって、
前記反応管の出口側に前記反応管を流れてきた糸状食品を切断する手段を備えたことを特徴とする糸状食品製造装置。
【請求項2】
前記糸状食品を切断する手段が、出口における反応管の軸方向と交わる方向に往復する刃である、請求項1に記載の糸状食品製造装置。
【請求項3】
前記刃が、その往復する方向における幅を有する刃物である、請求項2に記載の糸状食品製造装置。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸状食品製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
海藻類を主成分とする糸状食品の製造方法が従来から知られている。海藻類を主成分とする糸状食品は、低カロリーでありつつ歯ごたえのある食感が好まれており、刺身の付け合わせやサラダ等にして食されている。
【0003】
このような糸状食品を製造する方法について検討が重ねられている。例えば、特許文献1は、入口と出口とを備えた管を垂直軸まわりに巻回させながら積層することによって所定の流路長が確保され流体をその管内に通すように構成された巻管を含んだ糸状食品製造装置を開示している。特許文献1の製造装置を用いて海藻麺を製造する際には、凝固前の糸状海藻麺を供給して、前記巻管内を循環する凝固液で凝固させて製造される。巻管の出口から排出された糸状食品は、ベルトコンベアにより流し槽に移され、流し槽の出口に設けられたネットコンベアに移された後、当該ネットコンベアの終端において設けられたカット機により所定の長さにカットされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-304381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の装置を用いた場合、正確に所望の長さにカットすることが困難である。すなわち、糸状食品が流し槽からネットコンベアに移された際に、ネットコンベア上の糸状食品が絡み合っている場合には、そのまま切断すると糸状食品の長さが不均一となるため、切断する前に糸状食品の絡み合いを解消してまっすぐにしてから切断しなければならない。また、特許文献1の装置では、巻管から排出された糸状食品を、ベルトコンベア→流し槽→ネットコンベアという複数の段階を経てカットしなければならず、糸状食品の製造効率を低下させる問題があった。
したがって、上記のような問題を解消し得る技術が強く望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、特定の切断手段により上記問題が解決できることを見いだし、本発明に至った。
すなわち本発明は、
[1]入口と出口とを備え所定の流路長が確保された反応管を含む糸状食品製造装置であって、
前記反応管の出口側に前記反応管を流れてきた糸状食品を切断する手段を備えたことを特徴とする糸状食品製造装置、
[2]前記糸状食品を切断する手段が、出口における反応管の軸方向と交わる方向に往復する刃である、[1]に記載の糸状食品製造装置、並びに
[3]前記刃が、その往復する方向における幅を有する刃物である、[2]に記載の糸状食品製造装置、
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の糸状食品製造装置により、より均一な長さでカットされた糸状食品を、より効率よく製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(A)糸状食品製造装置の正面模式図及び(B)平面模式図である。
図2】(A)切断手段3を備えた反応管の斜視図、(B)底面図、(C)(A)におけるA-B断面図(刃31が上げられた状態)及び(D)(A)におけるA-B断面図(刃31が下げられた状態)である。
図3】(A)プロペラを備えた切断手段の平面図、(B)正面図及び(C)(A)の切断手段と反応管の位置関係を説明する図面である。
図4】(A)図3とは別の形態の切断手段の平面図、(B)正面図及び(C)斜視図である。
図5図4の切断手段の動作を説明するための図面である。
図6図4の切断手段と反応管との位置関係を説明するための図面である。
図7】ストッパーを含む図4の切断手段の平面図である。
図8】(A)アタッチメントの平面図、(B)正面図及び(C)(A)におけるC-D断面図である。
図9図4の切断手段と反応管とを図8のアタッチメントを用いて接続する際の一形態を説明するための図面である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面等を参照しながら、具体的な実施形態に基づいて本発明を説明する。なお、図面及び以下の説明はあくまでも本発明の一形態を説明するものであり、本発明の範囲に何ら制限を加えるものではない。また、文中における「上下」、「前後」及び「左右」は、各図面に記載の方向を意味する。
【0010】
1.糸状食品の製造装置1
本発明の糸状食品製造装置1は、入口21と出口22とを備え所定の流路長が確保された反応管2を含み、前記反応管の出口22側に前記反応管2を流れてきた糸状食品を切断する手段3を備えたことを特徴とする。以下に、具体例に基づいて糸状食品製造装置1を詳細に説明する。
【0011】
図1に糸状食品製造装置1の形状の具体例が示されている。糸状食品製造装置1は、入口21と出口22とを備え所定の流路長が確保された反応管2を含んでいる。図1の例においては、前記入口21は上方向に開口しており、前記出口22は下方向に開口している。反応管2は、上側に備えられた入口21を起点とし、上下方向を軸方向として巻回しながら下側に備えられた出口22まで続いている。このように、反応管2が巻回していることにより、糸状食品製造装置1における反応管2が占める面積をできるだけ小さくしながら所定の流路長を確保できる。反応管2の断面形状は、所定の流路長が確保でき内部に液体を流すことができる形状であることを条件として、特に限定されない。反応管2の断面形状の具体例として、楕円を含む円及び三角形、四角形、五角形又は六角形等の多角形が挙げられる。
【0012】
ここで、本発明における「所定の流路長」とは、糸状食品製造装置1において製造する食品の種類、言い換えれば、後述する供給システム4により供給される原料と、反応管2を流れる原料とが反応して糸状食品を形成する事ができる程度の長さを意味する。また、前記「糸状食品を形成することができる」とは、反応管2の出口22から回収された糸状食品の内部まで反応が進行している状態を含むことはもちろんのこと、糸状食品の内部までは反応が進行していないが、回収等反応後に糸状食品に対して行う操作が行える程度にまでその外側が反応している状態を意味する。反応管2の具体的な流路長(長さ)については、反応管2内で反応させる原料の組み合わせ、原料の濃度及び温度等に基づいて適宜調整可能である。
【0013】
前記上方向に開口した入口21の上側に、供給システム4が備えられている。供給システム4は、液状原料Aを吐出するための吐出ヘッド41、吐出ヘッド41に液状原料Aを供給するための供給管42、液状原料Aを貯蔵するための原料タンクA43及び前記供給管42の途中に設けられ駆動させることにより原料タンクA43から吐出ヘッド41に液状原料Aを供給するポンプA44を含んでいる。前記吐出ヘッド41は、中空を有しており前記中空と外部とを連通させる1~複数の孔の空いた円板である。前記ポンプA44を駆動させることにより、原料タンクA43内の液状原料Aが供給管42を通じて吐出ヘッド41の前記中空内に供給される。吐出ヘッド41の中空内に供給された液状原料Aは、吐出ヘッド41に開けられた前記孔から流れ出る。図1において備えられている吐出ヘッド41の数は1つであるが、勿論2以上備えることも可能である。
【0014】
糸状食品製造装置1は、前記液状原料Aと反応する液状原料Bを貯蔵する原料タンクB51、前記原料タンクB51と前記反応管2とを接続する循環管52及び前記循環管52の途中に設けられたポンプB53を含む循環システム5を含んでいる。前記下方向に開口した出口22の下側に、原料タンクB51が備えられている。原料タンクB51と入口21側の反応管2とは、循環管52により接続されている。前記循環管52の途中には、ポンプB53が備えられている。ポンプB53を駆動させることにより、原料タンクB51内の液状原料Bが、循環管52を介して入口21側から反応管2に供給される。反応管2に供給された液状原料Bは、反応管2を流れることにより出口22から原料タンクB51に排出される。すなわち、原料タンクB51内の液状原料Bは、原料タンクB51→循環管52→反応管2→原料タンクB51の順に循環する。
【0015】
反応管2の出口22側(図1の形態においては、出口22の下側)に糸状食品の切断手段3が備えられている。反応管2の出口22側に切断手段3を設ける事により、製造された糸状食品を回収する事無く、流れ出る糸状食品をより効率よく、より均一な長さでカットすることができる。
【0016】
前記効果について、以下により詳細に説明する。ポンプB53を連続的に駆動させることにより、原料タンクB51内の液状原料Bは、原料タンクB51→循環管52→反応管2→原料タンクB51の順に循環する。言い換えれば、反応管2内には、液状原料Bによる流れが発生する。ここで、ポンプA44を連続的に駆動させることにより、原料タンクA43内の液状原料Aが、入口21を介して反応管2内に連続的に供給される。前記の通り、反応管2内には液状原料Bによる流れが生じているため、吐出ヘッド41の孔を介して細長く連続的に供給された液状原料Aは、反応管2内を流れる液状原料Bと反応しながら、前記液状原料Bの流れに沿って流れていく。すなわち、反応管2内を流れる間に液状原料Aと液状原料Bとが反応して、細く長い糸状食品を形成する。形成された糸状食品は、反応管2内における液状原料Bの流れに沿って流れていくため、糸状食品同士が複雑に絡まる可能性を抑えることができる。
【0017】
前記のように絡まることなく反応管2内で形成された糸状食品は、絡み合うことなく液状原料Bと共に反応管2の出口22から原料タンクB51へと排出される。ここで、出口22側に切断手段3を備えることにより、出口22から液状原料Bと共に流れ出る糸状食品を、絡まりが少ないよりまっすぐな状態で切断することが可能となる。また、出口22側に切断手段3を設ける事により、糸状食品が液状原料Bの存在下で切断される。仮に、切断手段3により切断される際に液状原料Aと液状原料Bとの反応が不十分で、糸状食品の内部に未反応の液状原料Aが残っている場合であっても、切断直後に切断面の液状原料Aと、糸状食品と共に流れる液状原料Bとが反応して切断面が塞がれるため、未反応の液状原料Aが切断面から流出する恐れを抑えることができる。
【0018】
切断手段3を設ける箇所は、出口22側であることを条件として特に限定されない。本発明において、「出口22側」とは、反応管2の出口付近の領域であって、出口22から排出される又は出口22に向かう糸状食品を液状原料Bの存在下で切断できる領域を意味し、反応管2の内外を問わない。例えば、反応管2の断面形状を四角形とし、出口22付近の反応管2内を上下方向に往復するギロチン状の切断手段3を設ける事もできる。具体的には、図2に示すように、反応管2の出口22の付近に、切断手段3として上下方向に往復するギロチン状の刃31を設ける。切断手段3の刃31は、反応管2を形成する上側の壁に刃31を通せる程度の切り込み及び反応管2を形成する左右の壁にこれらを貫通しない程度の溝(図示せず)が開けられる。前記切り込み及び溝に前記切断手段3がはめ込まれている。前記切断手段3の刃31の先端は、反応管2の底まで到達する。モーター等の動力(図示せず)を用いて刃31を上下に往復させることで、流れてきた糸状食品を切断できる。
【0019】
反応管2の外側であって出口22の付近に、切断手段3を設ける事もできる。例えば、図3に示すように、プロペラ状の刃を有する切断手段3を具体例に挙げて説明する。図3(A)及び(B)に示すように、切断手段3は、フレーム32により固定された刃31及びモーター33を備えている。刃31は、プロペラフレーム311、軸方向に回転可能な状態でプロペラフレーム311に保持された2以上のプロペラ312及び前記プロペラ312を回転させる回転軸313を含む。プロペラフレーム311の形状は円形である。プロペラフレーム311の内径(図3(A)におけるL1)は、出口22から排出された糸状食品を通過させ、切断できる程度の大きさであれば特に制限されない。例えば、後述するように、反応管2を円筒形のパイプにした場合、プロペラフレーム311の内径を、出口22における反応管2の外径と略同一とすることにより、出口22から排出された糸状食品の切り漏らしを抑制できる。
【0020】
前記プロペラ312の回転軸313と、フレーム32に固定されたモーター33のシャフトとは、自在継手34で接続されている。モーター33を駆動させた際に生じる回転力が、自在継手34を介して回転軸313に伝えられ、プロペラ312が回転する。
【0021】
前記切断手段3を用いて糸状食品を切断する方法を説明する。図3(C)に示すように、切断手段3が円筒形のパイプからなる反応管2の出口22下方に備えられている。切断手段3は、例えば、糸状食品製造装置1の筐体(図示せず)や、反応管2を支えるフレーム(図示せず)等に固定できる。なお、作図の便宜上、切断手段3が出口22から離れて図示されているが、プロペラフレーム311と出口22を接触させた状態で固定しても良い。このような場合には、前述のように、プロペラフレーム311の内径と出口22の外径とを略同一とすることにより、糸状食品の切り漏らしを抑制できる。糸状食品製造装置1のポンプA44及びポンプB53を駆動させることにより、糸状食品の製造が開始される。また、モーター33を駆動させることによりプロペラ312が回転する。反応管2を通過して製造された糸状食品が、切断手段3を通過する際に、回転するプロペラ312により任意の長さに切断される。糸状食品を切断する長さは、ポンプB53の速度、及びモーター33の速度を調整することにより適宜調整できる。
【0022】
また、切断手段3の別の形態として、図4の形態が挙げられる。図4の形態は、刃31と、フレーム32と、フレーム32の上に備えられたガイドレール35と、刃31を固定する駆動部材36と、前記ガイドレール35に沿って前後動可能なように前記駆動部材36を固定する接続部材37とを含んでいる。
【0023】
フレーム32を平面方向から見た形状は、前記のようにその内側において駆動部材36が前後動できる形状であることを条件として、特に制限されない。例えば、図4の形態において、フレーム32は、その一部が開口したコの字型であり、後述する駆動部材36がフレーム32の内側において前後動できるようになっている。
【0024】
フレーム32の上側には、ガイドレール35が備えられている。ガイドレール35は、後述する接続部材37により駆動部材36と接続され、接続部材37が移動する方向を制御するためのレールである。ガイドレール35の形状は、接続部材37を前後方向に沿って移動させることを可能とする事を条件として、特に制限されない。例えば、その断面形状が楕円を含む円形及び三角形、四角形、五角形又は六角形等の多角形である棒状の部材である。
【0025】
駆動部材36は、刃31を固定しかつ刃31を前後動させるための部材である。駆動部材36の形状は、前記機能を発揮できることを条件として、特に制限されない。例えば、その断面形状が楕円を含む円形及び三角形、四角形、五角形又は六角形等の多角形である棒状の部材である。
【0026】
刃31は、前記駆動部材36の前方向先端付近に固定される。刃31は、糸状食品製造装置1により製造された糸状食品を切断できる部材であれば、特に制限無く使用できる。例えば、片刃の刃、両刃の刃、刃を有しない薄い板又はワイヤーカッター等が特に制限無く使用できる。図4の形態において、刃31として両刃の刃が使用される。刃31としては、その往復する方向における幅を有する刃物であることがより好ましい。刃31として前記のような刃を使用することにより、製造された糸状食品を切断する際に、切断対象である糸状食品からの応力により対抗できるため、糸状食品を切断する効率をより向上できる。刃31の幅の具体的な長さ(図4(A)におけるW)は、例えば、製造する糸状食品の直径に対して5~30倍であることが好ましい。刃31の素材は、糸状食品が切断できることを条件として特に制限されない。刃31の素材として、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属素材、セラミック素材、ガラス素材、プラスチック素材等が挙げられる。
【0027】
駆動部材36に刃31を固定する際の角度(図4(A)におけるθ1)は、刃31により糸状食品を切断できる角度であることを条件として、特に制限されない。例えば、θ1を45~90°にする事ができる。
【0028】
図4の切断手段3の作動原理について、図5を用いて説明する。前記の通り、駆動部材36は接続部材37に固定され、接続部材37はフレーム32上に設けられたガイドレール35に沿って前後動できるようにガイドレール35を保持している。駆動部材36の後端は、ギアボックス等を介してモーター等の動力に接続されている(図示せず)。動力を駆動させることにより、駆動部材36がガイドレール35の方向に沿って前後動する。駆動部材36の前後動に合わせて、駆動部材36に固定された刃31も前後動する。
【0029】
次に、図4の切断手段3を用いて糸状食品製造装置1で製造された糸状食品を切断する方法について説明する。切断手段3を、反応管2の出口22側に設置する。切断手段3は、例えば、糸状食品製造装置1の筐体(図示せず)や、反応管2を支えるフレーム(図示せず)に固定できる。具体的には、図6に示すように、切断手段3の刃31が、出口22における反応管2の軸方向と交わる方向に往復するように設置することが好ましい。ここで、「出口22における反応管2の軸方向」とは、図6(A)に示すように、出口22付近における管の軸方向(図6(A)における点線CLの方向)を意味する。また、「軸方向と交わる方向に往復する」とは、切断手段3の刃31の往復する方向(図6(A)における両矢印線の方向)と、出口22近傍における反応管2の軸方向(図6(A)における点線CLの方向)との角度(図6(A)におけるθ2)が、0°又は180°ではない事を意味する。切断効率をより高めるため、θ2が90°である事がより好ましい。
【0030】
このような位置に切断手段3を設置することにより、反応管2の出口22から液状原料Bと共に排出された糸状食品を、液状原料Bの存在下で切断できる。
【0031】
必要に応じて、図7(A)に示すように、刃31の進行を制御するストッパー38を設けても良い。このようなストッパー38を設ける事により、刃31のオーバーランを防ぐことができる。また、刃31がぶつかるような位置にストッパー38を設ける事により、出口22から排出された糸状食品が刃31とストッパー38とが衝突する際に切断されるため、糸状食品をより確実に切断できる。
【0032】
また、切断手段3を出口22近傍に設置する際に、アタッチメント39を使用しても良い。アタッチメント39は、切断手段3に対する出口22の位置を固定すると共に、前記刃31がその下部近傍で前後動することにより、出口22から排出された糸状食品の切断をより効率よく行う事ができる部材である。図8にアタッチメント39の具体的な形態が示されている。図8におけるアタッチメント39は、上下方向に開けられた孔を有する本体部391と、前記本体部391の下端に備えられた土台部392と、前記土台部392の下端から突出した突起部393とを含む。本体部391の孔は、図8(C)に示すように、土台部392及び突起部393を貫通している。本体部391及び土台部392に開けられた孔は、上下方向を通じて均一なサイズでも良いし、図8(C)に示すように、下方向に向けて孔の幅が狭くなるように傾斜を有していても良い。突起部393の孔の内径は、土台部392の孔の内径と略同一で良い。土台部392には、アタッチメント39を後述する固定板395に固定する際に使用するネジ孔394を開けて良い。
【0033】
アタッチメント39を平面方向から見た際の形状は、後述するように切断手段3と反応管2とを接続できる形状であることを条件として特に制限されない。本体部391の孔の形状が、少なくとも出口22における反応管2の断面形状と同じ形状であることが好ましい。本体部391の上端付近の孔の幅(図8(C)におけるW1)は、出口22における反応管2の外径と同一又はわずかに大きいことが好ましい。アタッチメント39の素材は、鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属素材、セラミック素材、ガラス素材、プラスチック素材等から特に制限無く選択可能である。
【0034】
アタッチメント39を用いて切断手段3と反応管2とを接続する方法について説明する。図9(A)に示すように、アタッチメント39を固定するための固定板395を、切断手段3のフレーム32の上側にビス等を用いて固定する。固定板395は、後述するように、固定板315に固定されたアタッチメント39の突起部393の下端と、刃31との間に隙間ができるように固定される。固定板395には、アタッチメント39の突起部393の外径よりわずかに大きい孔が開けられている。当該孔にアタッチメント39の突起部393を収容してネジ穴393を介してネジ止めすることで、アタッチメント39を固定板395に固定する。本体部391の孔に出口22側の反応管2を差し込む事により、アタッチメント39を介して反応管2を切断手段3に固定できる。
【0035】
前記アタッチメント39を使用した際における、糸状食品の切断機構が図9に示されている。図9(A)及び(B)に示すように、アタッチメント39の本体部391に開けられた孔に、出口22側の反応管2が差し込まれる。切断手段3の駆動部材36は、ギアボックス等を介してモーター等の動力に接続される(図示せず)。切断手段3は、刃31とアタッチメント39の突起部393の下端との間にわずかに隙間ができるような位置に固定される。具体的な前記隙間の長さは、例えば0.4~0.8mmである。前記動力を駆動させることにより、駆動部材36が前後動する。糸状食品製造装置1により製造された糸状食品が、反応管2を流れて出口22から排出される。出口22から排出された糸状食品は、アタッチメント39の本体部391、土台部392及び突起部393を貫通する孔を通過する。糸状食品は、前記孔を通過する際に前後動する刃31により切断される。前記の通り、刃31と突起部393の下端との間の隙間がわずかなものであるため、刃31の前後動が過度に妨げられることはない。また、アタッチメント39を使用することにより、出口22から排出される糸状食品(図9(C)におけるFF)が、突起部393の孔を構成する壁の端部と刃31とに挟まれることにより切断される(図9(C)参照)。また、前記のようなアタッチメント39を使用することにより、出口22から排出される糸状食品の流れの方向を制御して、糸状食品が切断手段3によってより確実に切断されるように誘導できる。アタッチメント39を使用することにより、反応管2と切断手段3とを容易に接続でき、かつ出口22から排出される糸状食品を、より確実に切断できるようになる。
【0036】
2.糸状食品の製造
図9に記載の切断手段3を備えた前記糸状食品製造装置1を用いて、カラギーナンとアルギン酸ナトリウムとを反応させて得られる糸状食品を具体例として、その製造方法を説明する。勿論、本発明の糸状食品製造装置1は、前記以外の原料であって2つの原料が反応することにより得られる食品を製造するいかなる原料に対しても適用可能である。
【0037】
カラギーナン水溶液を原料タンクA43に注ぎ入れる。前記カラギーナン水溶液は、海藻から抽出したカラギーナンを水道水等の水に溶解させて得られる。カラギーナン水溶液中におけるカラギーナン濃度は、最終的に求められる糸状食品の品質に応じて適宜変更可能である。一方、アルギン酸ナトリウム水溶液を、原料タンクB51に注ぎ入れる。前記水溶液中におけるアルギン酸ナトリウムの濃度は、最終的に求められる糸状食品の品質等に応じて適宜変更可能である。
【0038】
ポンプB53を駆動することにより、原料タンクB51に貯蔵されたアルギン酸ナトリウム水溶液が循環管52を介して反応管2に供給される。反応管2に供給されたアルギン酸ナトリウム水溶液は、巻回する反応管2の上側から下側に流れていき、反応管2の出口22から原料タンクB51に排出される。すなわち、アルギン酸ナトリウム水溶液は、原料タンクB51→循環管52→反応管2→原料タンクB51の順に循環する。アルギン酸ナトリウム水溶液が反応管2を流れる速度、言い換えればアルギン酸ナトリウム水溶液の循環速度は、反応させる2つの原料の種類及び濃度等に基づいて適宜調整可能である。アルギン酸ナトリウム水溶液の循環速度は、ポンプB53の排出速度や反応管2の傾斜角度等を調整する事により、適宜調整可能である。
【0039】
ポンプB53を駆動させアルギン酸ナトリウム水溶液の循環を開始させた後、ポンプA44を駆動させる。ポンプA44を駆動させることにより、原料タンクA43に貯蔵されたカラギーナン水溶液が、吐出ヘッド41から、上方向に開口した入口21を介して反応管2に供給される。吐出ヘッド41から供給されたカラギーナン水溶液は、糸状に細長い状態で反応管2に供給される。反応管2に供給されたカラギーナン水溶液は、反応管2を循環するアルギン酸ナトリウム水溶液と反応を開始する。供給されたカラギーナン水溶液は、反応管2を循環するアルギン酸ナトリウムの流れと共に反応管2を入口21側から出口22側へと移動する。
【0040】
前記反応管2は所定の流路長を有しているため、反応管2を流れる間にカラギーナンとアルギン酸ナトリウムとが反応して糸状食品が形成される。形成した糸状食品は、循環するアルギン酸ナトリウム水溶液と共に出口22を介して原料タンクB51に排出される。糸状食品は、出口22から排出される際に、切断手段3により所定の長さに切断される。原料タンクB51に排出された糸状食品を回収して、必要に応じて、洗浄及びパッキング等を行える。糸状食品の製造を進めるに従って、循環するアルギン酸ナトリウム水溶液中におけるアルギン酸ナトリウムの濃度が低下していくため、濃度の確認を行いながら、適宜アルギン酸ナトリウムを原料タンクB51に添加することにより、循環するアルギン酸ナトリウム水溶液の濃度を調整できる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の糸状食品の製造装置により、より容易にかつ高い効率で糸状食品を製造することが可能となる。
【符号の説明】
【0042】
1:糸状食品製造装置
2:反応管、21 :入口、22:出口
3:切断手段、31:刃、311:プロペラフレーム、312:プロペラ、313:回転軸、32:フレーム、33:モーター、34:自在継手、35:ガイドレール、36:駆動部材、37:接続部材、38:ストッパー、39:アタッチメント 、391:本体部、392:土台部、393:突起部、394:ネジ孔、395:固定板
4:供給システム、41:吐出ヘッド、42 :供給管、43:原料タンクA、44:ポンプA
5:循環システム、51:原料タンクB、52:循環管、53 :ポンプB
図1
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図9