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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135678
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】減衰バルブおよび緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/348 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
F16F9/348
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040865
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】安井 剛
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA53
3J069CC13
3J069EE25
(57)【要約】
【課題】緩衝器が微低速で伸縮する際にも十分な減衰力を発揮して当該伸縮を抑制するのに良好な減衰力特性が得られる減衰バルブおよび緩衝器を提供する。
【解決手段】本発明における減衰バルブV1は、環状であって筒体1内に挿入されて筒体のみにより径方向に位置決めされるとともに、軸方向の一端2bから軸方向へ突出する環状の外周弁座2cと外周弁座2cの内周側に設けられたポート2dとを有する隔壁体2と、隔壁体2の一端2bに対向するとともに外周弁座2cより外径が小径な環状の内周弁座3cを有するバルブストッパ3と、外周弁座2cと内周弁座3cとの間に介装されてポート2dを開閉する内外両開きに設定される環状のリーフバルブ4とを備え、隔壁体2は、リーフバルブ4を外周弁座2cに対して調心する調心部2eを備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状であって、筒体内に挿入されて前記筒体のみにより径方向に位置決めされるとともに、軸方向の一端から軸方向へ突出する環状の外周弁座と、前記外周弁座の内周側に設けられたポートとを有する隔壁体と、
前記隔壁体の前記一端に対向するとともに前記外周弁座より外径が小径な環状の内周弁座を有するバルブストッパと、
前記外周弁座と前記内周弁座との間に介装されて前記ポートを開閉する内外両開きに設定される環状のリーフバルブとを備え、
前記隔壁体は、前記リーフバルブを前記外周弁座に対して調心する調心部を有する
ことを特徴とする減衰バルブ。
【請求項2】
前記調心部は、前記隔壁体の前記一端の前記外周弁座の外周側から軸方向へ突出し、前記リーフバルブの外周に当接する突起である
ことを特徴とする請求項1に記載の減衰バルブ。
【請求項3】
前記調心部は、前記隔壁体の前記ポートよりも内周側から軸方向へ突出し、前記リーフバルブの内周に当接する突起である
ことを特徴とする請求項1に記載の減衰バルブ。
【請求項4】
前記隔壁体と軸方向で対向して前記筒体内に挿入されるとともにメインポートを有するメイン隔壁体と、
前記メインポートを開閉するとともに前記リーフバルブの開弁圧より高い開弁圧に設定されるメインバルブとを備えた
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の減衰バルブ。
【請求項5】
シリンダと、
前記シリンダ内に挿入されるピストンロッドと、
請求項1から4のいずれか一項に記載の減衰バルブとを備え、
前記シリンダを前記筒体とした
ことを特徴とする緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減衰バルブおよび緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝器は、たとえば、シリンダと、シリンダ内に移動可能に挿入されるピストンと、同じくシリンダ内に移動可能に挿入されて前記ピストンに連結されるピストンロッドとを備え、車両の車体と車輪との間に介装されて減衰力を発揮して車体と車輪の振動を抑制する。緩衝器が発揮する減衰力は、減衰バルブによって発揮され、車両における乗心地を左右するが、近年、車両のサスペンションに利用される緩衝器では、乗心地の向上のため極低速で伸縮する際にも振動の抑制に十分な減衰力を発揮することが要望される。
【0003】
このような要望に応えるために、減衰バルブは、環状であってピストンロッドの外周に遊嵌されて軸方向へ移動可能に装着されるとともにポートとポートの外周を取り囲む外周弁座とを有するバルブディスクと、ピストンロッドに固定されてバルブディスクと軸方向で対向するとともに環状であって外径が外周弁座の内径よりも小径な内周弁座を有するバルブストッパと、外周弁座と内周弁座との間に介装されて内外両開きに設定されるリーフバルブとを備える場合がある(たとえば、特許文献1参照)。そして、減衰バルブは、緩衝器が微低速で伸縮する際にポートを通過する作動油の流れにリーフバルブで抵抗を与えて減衰力を発揮する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2021/084956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように構成された減衰バルブでは、バルブディスクは、ピストンロッドに遊嵌されていて、シリンダの内周に摺接しているため、ピストンロッドに対して径方向に軸ずれが生じる場合がある。他方、リーフバルブは、ピストンロッドに対して調心されているため、バルブディスクがピストンロッドに対して軸ずれを起こすと、バルブディスクに設けられた外周弁座に偏心して着座するようになる。
【0006】
リーフバルブがバルブディスクの外周弁座に対して偏心して着座すると、リーフバルブの撓みが周方向で均一にならずに、リーフバルブが外周弁座に着座しているにも拘わらず、リーフバルブと外周弁座との間に隙間が生じてしまう場合がある。
【0007】
このような事態となると、緩衝器が微低速で伸縮する際に、リーフバルブと外周弁座との間に生じた隙間を作動油が通過してしまって減衰力が小さくなり、要望される大きさの減衰力の発揮が難しくなり、微低速で伸縮する際の振動の抑制に良好となる減衰力特性(緩衝器の伸縮速度に対して緩衝器が発生する減衰力の特性)が得られない。
【0008】
そこで、本発明は、緩衝器が微低速で伸縮する際にも十分な減衰力を発揮して当該伸縮を抑制するのに良好な減衰力特性が得られる減衰バルブおよび緩衝器の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した課題を解決するために、本発明の減衰バルブは、環状であって筒体内に挿入されて筒体のみにより径方向に位置決めされるとともに、軸方向の一端から軸方向へ突出する環状の外周弁座と外周弁座の内周側に設けられたポートとを有する隔壁体と、隔壁体の一端に対向するとともに外周弁座より外径が小径な環状の内周弁座を有するバルブストッパと、外周弁座と内周弁座との間に介装されてポートを開閉する内外両開きに設定される環状のリーフバルブとを備え、隔壁体は、リーフバルブを外周弁座に対して調心する調心部を備えている。
【0010】
このように構成された減衰バルブでは、リーフバルブが筒体のみにより径方向に位置決めされた隔壁体に設けた調心部によって外周弁座に対して調心されるから、リーフバルブが外周弁座と内周弁座とに着座した状態において、リーフバルブの外周と外周弁座との間に隙間が生じず、かつ、リーフバルブの内周と内周弁座との間にも減衰力に影響を与えるような隙間が生じなくなる。よって、減衰バルブによれば、隙間から液体の漏洩を防止でき、ポートを通過する液体の流量が少ない場合であっても緩衝器に十分な大きさの減衰力を発生させられる。
【0011】
また、減衰バルブにおける隔壁体に設けられる調心部は、隔壁体の一端の外周弁座の外周側から軸方向へ突出しリーフバルブの外周に当接する突起とされてもよい。このように構成された減衰バルブによれば、外周弁座の至近に設けられる突起を調心部とすると、リーフバルブの外周弁座に対する調心精度が向上する。
【0012】
さらに、減衰バルブにおける隔壁体に設けられる調心部は、隔壁体の一端のポートよりも内周側から軸方向へ突出しリーフバルブの内周に当接する突起とされてもよい。このように構成された減衰バルブによれば、リーフバルブの外径を外周弁座の外径よりも小さくすることができ、リーフバルブの設計自由度が向上する。
【0013】
また、減衰バルブは、隔壁体と軸方向で対向して筒体内に挿入されるとともにメインポートを備えたメイン隔壁体と、メインポートを開閉するとともにリーフバルブよりも高い開弁圧に設定されるメインバルブとを備えて構成されてもよい。このように構成された減衰バルブによれば、緩衝器が微低速で伸縮する際に適した減衰力をリーフバルブで発揮できるとともに、緩衝器の伸縮速度が高速になるとメインバルブで大きな減衰力を発揮できる。よって、本実施の形態の減衰バルブによれば、緩衝器の伸縮速度に応じ緩衝器の伸縮を抑制するのに適した減衰力を緩衝器に発生させ得る。
【0014】
また、緩衝器は、シリンダと、シリンダ内に挿入されるピストンロッドと、減衰バルブとを備え、シリンダを筒体としている。このように構成された緩衝器によれば、減衰バルブを備えているので、微低速で伸縮する際にも十分な減衰力を発揮でき、伸縮を抑制するのに良好な減衰力特性を得られる。
【発明の効果】
【0015】
以上より、本発明の減衰バルブによれば、緩衝器が微低速で伸縮する際にも十分な減衰力を発揮して当該伸縮を抑制するのに良好な減衰力特性が得られ、本発明の緩衝器によれば、微低速で伸縮する際にも十分な減衰力を発揮でき、伸縮を抑制するのに良好な減衰力特性を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施の形態における減衰バルブを備えた緩衝器の縦断面図である。
図2】一実施の形態における減衰バルブを備えた緩衝器のピストン部分の拡大断面図である。
図3】一実施の形態における減衰バルブを備えた緩衝器の減衰力特性を示した図である。
図4】一実施の形態の一変形例における減衰バルブを備えた緩衝器のピストン部分の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1および図2に示すように、一実施の形態における減衰バルブV1は、環状であって筒体としてのシリンダ1内に挿入されてシリンダ1のみにより径方向に位置決めされて環状の外周弁座2cとポート2dとを有する隔壁体としてのサブピストン2と、サブピストン2の一端2bに対向する環状の内周弁座3cを有するバルブストッパ3と、外周弁座2cと内周弁座3cとの間に介装されてポート2dを開閉する内外両開きに設定される環状のリーフバルブ4とを備えて構成されて、緩衝器Dに適用されている。
【0018】
他方、減衰バルブV1が適用された緩衝器Dは、シリンダ1と、シリンダ1内に軸方向に移動可能に挿入されるピストンロッド5と、ピストンロッド5に取り付けられてシリンダ1内に軸方向へ可能に挿入されるメイン隔壁体としてのピストン6と、ピストン6に設けられたメインポート6a,6bを開閉するメインバルブ7,8と、減衰バルブV1とを備えている。そして、この緩衝器Dの場合、たとえば、図示しない車両における車体と車軸との間に介装されて使用され、車体および車輪の振動を抑制する。
【0019】
以下、減衰バルブV1および緩衝器Dの各部について詳細に説明する。図1に示すように、シリンダ1の上端には、環状のロッドガイド20が装着されており、シリンダ1の下端はキャップ14で閉塞されている。そして、シリンダ1内には、先端にピストン6とサブピストン2とが装着されたピストンロッド5が移動自在に挿入されている。
【0020】
ピストンロッド5は、ロッドガイド20内に摺動自在に挿通されてシリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入されており、ロッドガイド20によって軸方向への移動が案内される。また、シリンダ1内は、ピストン6およびサブピストン2によって、液体が充填される伸側室R1と圧側室R2とに区画されている。なお、液体は、本実施の形態では、作動油とされているが、作動油以外にも、たとえば、水、水溶液といった液体の使用も可能である。
【0021】
なお、シリンダ1内であって圧側室R2よりも下方には、シリンダ1内に摺動自在に挿入されるフリーピストン9によって気室Gが区画されている。そして、気室Gは、シリンダ1に対してピストンロッド5が軸方向に変位すると、シリンダ1内のピストンロッド5の体積変化に応じてフリーピストン9がシリンダ1に対して軸方向へ変位して拡縮され、この気室Gの容積変化によりシリンダ1内に出入りするピストンロッド5の体積補償がなされる。このように緩衝器Dは、所謂単筒型の緩衝器とされているが、シリンダ1外にリザーバを備える複筒型の緩衝器として構成されてもよい。
【0022】
戻って、ピストンロッド5は、その図1中下端となる先端に設けた小径部5aと、小径部5aの先端の外周に設けた螺子部5bと、小径部5aを設けたことにより形成される段部5cとを備えており、小径部5aの外周に環状のピストン6とサブピストン2とが装着されている。
【0023】
ピストン6は、環状であって、小径部5aの外周に固定されており、外周がシリンダ1の内周に摺接している。また、ピストン6は、メインポートとしての圧側メインポート6aおよび伸側メインポート6bを備えている。サブピストン2は、外周がシリンダ1の内周に摺接しており、ポート2dを備えている。そして、ピストン6とサブピストン2は、軸方向で離間して対向するとともに、協働してシリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2とに区画しており、ピストン6とサブピストン2との間には中間室R3が形成されている。この中間室R3は、ピストン6に設けられた圧側メインポート6aおよび伸側メインポート6bによって圧側室R2に連通され、サブピストン2に設けられたポート2dによって伸側室R1に連通される。よって、圧側メインポート6a、伸側メインポート6b、中間室R3およびポート2dは、伸側室R1と圧側室R2とを連通する通路を形成している。
【0024】
そして、ピストンロッド5における小径部5aの外周には、図1および図2に示すように、バルブストッパ3、リーフバルブ4、スペーサ10、筒状のカラー11、サブピストン2、メインバルブストッパ12、メインリーフバルブとしての圧側メインリーフバルブ7、ピストン6およびメインリーフバルブとしての伸側メインリーフバルブ8が装着されている。そして、バルブストッパ3、スペーサ10、カラー11、メインバルブストッパ12、圧側メインリーフバルブ7、ピストン6および伸側メインリーフバルブ8は、ピストンロッド5の段部5cと螺子部5bに螺着されるピストンナット13とによって挟持されて固定される。
【0025】
バルブストッパ3は、図2に示すように、環状であって図2中下端側の内径が縮径された嵌合部3aと、嵌合部3aの図2中上端外周から外周側へ向けて突出するフランジ部3bと、フランジ部3bのサブピストン2と対向する図2中下端の外周で形成された環状の内周弁座3cとを備えている。嵌合部3aにおける図2中下端側の内径は、ピストンロッド5の小径部5aの外周に嵌合な径に設定されるとともに、嵌合部3aにおける図2中上端側の内径は、ピストンロッド5の小径部5aよりも図2中上方側の外径よりも大径となっている。よって、バルブストッパ3をピストンロッド5の小径部5aに嵌合させると、嵌合部3aの下端側の内周がピストンロッド5の小径部5aに嵌合されてバルブストッパ3がピストンロッド5に対して径方向に位置決められるとともに、嵌合部3aの下端と上端との境の段部がピストンロッド5の段部5cに当接してバルブストッパ3がピストンロッド5に対して軸方向に位置決められる。
【0026】
スペーサ10は、本実施の形態では、外径がカラー11の外径よりも大径で内径がピストンロッド5の小径部5aに嵌合可能な径に設定された複数枚の環状板で構成されており、ピストンロッド5の小径部5aの外周に嵌合されている。そして、スペーサ10を構成する環状板の積層枚数の調整によってピストンロッド5に対するカラー11の軸方向の位置およびサブピストン2の図2中上方側への移動限界の位置の調整が可能となっている。よって、カラー11の位置の調整が不要であり、サブピストン2の移動限界をバルブストッパ3の嵌合部3aで規制するのであれば、スペーサ10を省略可能であり、また、カラー11の位置によっては単数の環状板で構成されてもよい。
【0027】
カラー11は、外径がスペーサ10およびバルブストッパ3の嵌合部3aの外径よりも小径であって、内径がピストンロッド5の小径部5aに嵌合可能な径に設定された筒状の部品であり、ピストンロッド5の小径部5aの外周に嵌合されている。
【0028】
サブピストン2は、環状であって、外径がシリンダ1の内周に摺接可能な径に設定されており、内径がカラー11の外径よりも大きな径に設定されて、カラー11の外周に遊嵌されている。
【0029】
具体的には、サブピストン2は、環状の本体2aと、本体2aの軸方向で図2中上端となる一端2bから軸方向へ突出する環状の外周弁座2cと、本体2aにおける外周弁座2cの内周側であって同一円周上に並べて設けられた複数のポート2dと、本体2aの一端2bの外周弁座2cの外周側から軸方向へ突出する環状の突起2eと、本体2aの外周に装着されてシリンダ1の内周に摺接するピストンリング2fとを備えて構成されている。
【0030】
本体2aの一端2bの軸方向高さは、内周から外周へ向かうほど高くなっており、また、本体2aの内周側の軸方向の長さはカラー11の軸方向の長さよりも若干短くなっている。
【0031】
各ポート2dは、前述した通り、本体2aに対して同心となる同一円周上に等間隔に並べて設けられており、本体2aを貫いてサブピストン2とピストン6との間の中間室R3と伸側室R1とを連通する。
【0032】
外周弁座2cは、ポート2dの外周を取り囲むように本体2aから軸方向で図2中上方側へ向けて突出しており、バルブストッパ3のフランジ部3bに設けられた内周弁座3cよりも図2中上方側に配置される。また、外周弁座2cの内径は、バルブストッパ3の内周弁座3cの外径よりも大きい。
【0033】
突起2eは、環状であって外周弁座2cの外周から軸方向で図2中上方側へ向けて突出しており、外周弁座2cを取り囲んでいる。なお、突起2eは、環状でなくてもよく、外周弁座2cを取り囲む同一円周上に複数設置されていてもよい。
【0034】
サブピストン2は、カラー11に遊嵌されると、サブピストン2の内周とカラー11との間に隙間が生じて、カラー11に対して径方向へ移動可能である。また、サブピストン2は、内周の軸方向長さがカラー11の軸方向長さよりも短いので、スペーサ10とメインバルブストッパ12との間で僅かに軸方向となる図2中上下方向へ変位できる。また、サブピストン2がシリンダ1内に挿入されると、ピストンリング2fの外周がシリンダ1の内周に摺接するとともに、サブピストン2がカラー11に遊嵌されるため、サブピストン2は、シリンダ1のみによって径方向に位置決められる。また、サブピストン2がカラー11の外周に遊嵌されると、バルブストッパ3の内周弁座3cは、サブピストン2の本体2aの内周側に対向する。
【0035】
リーフバルブ4は、環状であって、内径が内周弁座3cの外径よりも小径であってバルブストッパ3の嵌合部3aの外径よりも大径であり、外周が外周弁座2cの外周側に配置された突起2eに当接するように外径が設定されている。リーフバルブ4の外周は、サブピストン2の環状の突起2eに当接するので、リーフバルブ4は、突起2eによってサブピストン2の外周弁座2cに対して調心されて外周弁座2cと同心となるように径方向に位置決められる。このように突起2eは、外周弁座2cに対してリーフバルブ4を調心する調心部として機能する。また、リーフバルブ4の内径は、突起2eによって調心されてもリーフバルブ4の内周面が対向するバルブストッパ3の嵌合部3aと接触しない程度に、嵌合部3aの外径よりも大きい。よって、突起2eによるリーフバルブ4の調心がバルブストッパ3によって邪魔されないよう配慮されている。
【0036】
なお、前述したが突起2eは、リーフバルブ4を外周弁座2cに対して同心となるように調心できる限りにおいて、環状でなくてもよく、外周弁座2cを取り囲む同一円周上に離間して複数設けられてもよい。また、突起2eの形状についても、リーフバルブ4を外周弁座2cに対して同心となるように調心できる限りにおいて、任意に設計変更可能である。
【0037】
そして、リーフバルブ4は、内周の図2中上端を内周弁座3cに着座させるととともに外周の図2中下端を外周弁座2cに着座させる状態で、内周弁座3cと外周弁座2cとの間に介装されている。リーフバルブ4は、伸側室R1側からの圧力を受けて外周弁座2cにより支持された外周を支点として内周側が図2中下方へ撓んでバルブストッパ3の内周弁座3cから離間してポート2dを圧側室R2に連通させる。他方、リーフバルブ4は、中間室R3側からの圧力を受けて内周弁座3cによって支持された内周を支点として外周側が図2中上方へ撓んでサブピストン2の外周弁座2cから離間してポート2dを伸側室R1に連通させる。
【0038】
このように、リーフバルブ4は、伸側室R1の圧力が中間室R3の圧力よりも高くなって両者の差圧が開弁圧に達すると内周弁座3cから離座して開弁し、中間室R3の圧力が伸側室R1の圧力よりも高くなって両者の差圧が開弁圧に達すると外周弁座2cから離座して開弁する、内外両開きのドカルボンバルブとして機能する。なお、サブピストン2における本体2aの軸方向高さが内周へ向かうほど低くなっているので、内周弁座3cとサブピストン2の本体2aとの間にリーフバルブ4の内周が図2中下方へ撓むことができる十分なスペースが確保されている。
【0039】
また、バルブストッパ3の内周弁座3cよりサブピストン2の外周弁座2cの方が図2中で高い位置に配置される関係から、リーフバルブ4は、内周弁座3cと外周弁座2cとの間に介装されると初期撓みが与えられて自己が発する弾発力で内周弁座3cと外周弁座2cとを押圧している。このようにリーフバルブ4が初期撓みを与えられることにより、リーフバルブ4が内周弁座3cおよび外周弁座2cから離間する際の開弁圧が設定されており、前記初期撓み量の調整によって前記開弁圧を調整できる。なお、リーフバルブ4に与える初期撓み量は、内周弁座3cと外周弁座2cとの軸方向の距離の差によって調整できるから、スペーサ10の環状板の板厚や積層枚数の調整によって前記開弁圧の調整が可能である。
【0040】
メインバルブストッパ12は、円環状であって、内径がピストンロッド5の小径部5aに嵌合可能な径に設定されており、ピストンロッド5の小径部5aに嵌合される。メインバルブストッパ12は、サブピストン2に対向する端部の外周に環状の凹部でなる逃げ部12aを備えており、メインバルブストッパ12がサブピストン2のポート2dに対向しても逃げ部12aの設置によってポート2dを閉塞しない。
【0041】
つづいて、圧側メインリーフバルブ7は、内径がピストンロッド5の小径部5aに嵌合可能形に設定された複数の環状板を積層して構成された積層リーフバルブとされており、ピストン6の図2中上端に重ねられて圧側メインポート6aの出口端を開閉する。圧側メインリーフバルブ7のピストン6に対面する環状板の外周には切欠で形成されるオリフィス7aが設けられている。圧側メインリーフバルブ7は、内周側がピストンナット13と段部5cとで挟持され外周側の撓みのみが許容されている。
【0042】
そして、圧側メインリーフバルブ7は、ピストン6に全体が当接した状態では、圧側室R2と中間室R3とをオリフィス7aのみで連通させる一方、圧側メインポート6aを通じて受ける圧側室R2の圧力が中間室R3の圧力よりも高くなり、両者の差圧が開弁圧に達すると撓んで圧側メインポート6aを開放する。圧側メインリーフバルブ7の開弁圧は、リーフバルブ4の開弁圧よりも高く設定されている。なお、圧側メインリーフバルブ7を構成する環状板の外径は、圧側メインリーフバルブ7が圧側メインポート6aを通過する作動油の流れに与える抵抗の設定に応じて任意に設計変更できる。
【0043】
伸側メインリーフバルブ8は、内径がピストンロッド5の小径部5aに嵌合可能形に設定された複数の環状板を積層して構成された積層リーフバルブとされており、ピストン6の図2中下端に重ねられて伸側メインポート6bの出口端を開閉する。伸側メインリーフバルブ8のピストン6に対面する環状板の外周には切欠で形成されるオリフィス8aが設けられている。伸側メインリーフバルブ8は、内周側がピストンナット13と段部5cとで挟持され外周側の撓みのみが許容されている。
【0044】
そして、伸側メインリーフバルブ8は、そして、伸側メインリーフバルブ8は、ピストン6に全体が当接した状態では、中間室R3と圧側室R2をオリフィス8aのみで連通させる一方、伸側メインポート6bを通じて中間室R3の圧力が圧側室R2の圧力よりも高くなり、両者の差圧が開弁圧に達すると撓んで伸側メインポート6bを開放する。伸側メインリーフバルブ8の開弁圧は、リーフバルブ4の開弁圧よりも高く設定されている。なお、伸側メインリーフバルブ8を構成する環状板の外径は、伸側メインリーフバルブ8が伸側メインポート6bを通過する作動油の流れに与える抵抗の設定に応じて任意に設計変更できる。
【0045】
以上のように、減衰バルブV1は、環状であって筒体としてのシリンダ1内に挿入されてシリンダ1のみにより径方向に位置決めされるとともに軸方向の一端2bから軸方向へ突出する環状の外周弁座2cと外周弁座2cの内周側に設けられたポート2dとを有する隔壁体としてのサブピストン2と、サブピストン2の一端2bに対向するとともに外周弁座2cより外径が小径な環状の内周弁座3cを有するバルブストッパ3と、外周弁座2cと内周弁座3cとの間に介装されてポート2dを開閉する内外両開きに設定される環状のリーフバルブ4とを備えて構成されている。また、減衰バルブV1におけるサブピストン2は、リーフバルブ4を外周弁座2cに対して調心する調心部としての突起2eを備えている。
【0046】
以下に、減衰バルブV1および緩衝器Dの作動について説明する。まず、シリンダ1に対してピストンロッド5が図1中上方へ移動して緩衝器Dが伸長作動する場合の作動について説明する。緩衝器Dが伸長作動すると、ピストン6およびサブピストン2がシリンダ1に対して図1中上方へ移動するので、伸側室R1が圧縮され圧側室R2が拡大される。
【0047】
すると、伸側室R1内の圧力が上昇して、伸側室R1の圧力と中間室R3の圧力との差がリーフバルブ4の開弁圧に達すると、リーフバルブ4が内周側を図2中下方へ撓ませて内周弁座3cから離間してサブピストン2のポート2dを開放する。
【0048】
緩衝器Dの伸長速度が微低速であって、伸側メインリーフバルブ8が開弁しない状態では、伸側室R1の作動油は、リーフバルブ4の内周を撓ませてポート2dを通過し中間室R3を経て、圧側および伸側のメインポート6a,6bおよびオリフィス7a,8aを通過して圧側室R2へ移動する。
【0049】
このように、伸長作動時であって緩衝器Dの伸長速度が微低速域にある場合、オリフィス7a,8aを通過する作動油の流量がごく少量であるので、作動油がオリフィス7a,8aを通過する際に生じる圧力損失よりもリーフバルブ4を通過する際に生じる圧力損失の方が大きい。よって、緩衝器Dは、微低速域で伸長する場合、主としてリーフバルブ4によって減衰力を発揮する。
【0050】
また、緩衝器Dの伸長速度が低速域になると、伸側メインリーフバルブ8は開弁しないが、オリフィス7a,8aにおける圧力損失が大きくなるので、緩衝器Dは、リーフバルブ4およびオリフィス7a,8aによって減衰力を発揮する。
【0051】
さらに、この伸長作動時において緩衝器Dの伸長速度が高速になると、伸側メインリーフバルブ8が撓んで開弁して伸側メインポート6bが大きく開放され、緩衝器Dは、主としてリーフバルブ4および伸側メインリーフバルブ8によって減衰力を発揮する。
【0052】
つづいて、シリンダ1に対してピストンロッド5が図1中下方へ移動して緩衝器Dが収縮作動する場合の作動について説明する。緩衝器Dが収縮作動すると、ピストン6およびサブピストン2がシリンダ1に対して図1中下方へ移動するので、圧側室R2が圧縮され伸側室R1が拡大される。
【0053】
すると、圧側室R2内の圧力が上昇して、圧側室R2の作動油が圧側メインリーフバルブ7の閉弁時には圧側および伸側のメインポート6a,6bおよびオリフィス7a,8aを介して、圧側メインリーフバルブ7の開弁時には主として圧側メインポート6aを介して中間室R3に移動する。中間室R3の圧力と伸側室R1の圧力との差がリーフバルブ4の開弁圧に達すると、リーフバルブ4が外周側を図2中上方へ撓ませて外周弁座2cから離間してサブピストン2のポート2dを開放する。
【0054】
緩衝器Dの伸長速度が微低速であって、圧側メインリーフバルブ7が開弁しない状態では、圧側室R2の作動油は、圧側および伸側のメインポート6a,6bおよびオリフィス7a,8aを通過し中間室R3を経て、リーフバルブ4の外周を撓ませてポート2dを通過して伸側室R1へ移動する。
【0055】
このように、収縮作動時であって緩衝器Dの収縮速度が微低速域にある場合、オリフィス7a,8aを通過する作動油の流量がごく少量であるので、作動油がオリフィス7a,8aを通過する際に生じる圧力損失よりもリーフバルブ4を通過する際に生じる圧力損失の方が大きい。よって、緩衝器Dは、微低速域で収縮する場合、主としてリーフバルブ4によって減衰力を発揮する。なお、突起2eの内周面は、軸方向の上端となる先端側が先細りとなるように傾斜するテーパ面となっていて、リーフバルブ4の外周側が撓んで外周弁座2cから離座すると、外周弁座2cとリーフバルブ4の間に生じる環状隙間でなる流路面積が突起2eの存在によって制限されないので、リーフバルブ4の開弁後の減衰力が過剰になることない。なお、リーフバルブ4の開弁後の流路面積が突起2eによって制限されてしまう恐れがある場合、突起2eを環状とするのではなく、複数の突起2eを外周弁座2cの外周側に間隔を開けて設けるようにして流路面積を突起2eで制限しないようにすればよい。
【0056】
また、緩衝器Dの収縮速度が低速域になると、圧側メインリーフバルブ7は開弁しないが、オリフィス7a,8aにおける圧力損失が大きくなるので、緩衝器Dは、リーフバルブ4およびオリフィス7a,8aによって減衰力を発揮する。
【0057】
さらに、この伸長作動時において緩衝器Dの伸長速度が高速になると、圧側メインリーフバルブ7が撓んで開弁して圧側メインポート6aが大きく開放され、緩衝器Dは、主としてリーフバルブ4および圧側メインリーフバルブ7によって減衰力を発揮する。
【0058】
なお、このように本実施の形態の緩衝器Dでは、主としてリーフバルブ4で減衰力を発生する速度域を微低速とし、主としてオリフィス7a,8aで減衰力を発生する速度域を低速とし、主として圧側メインリーフバルブ7或いは伸側メインリーフバルブ8で減衰力を発生する速度域を高速としている。なお、微低速、低速および高速の区分する速度については設計者が任意に設定できる。また、オリフィス7a,8aのいずれか一方は省略でき、さらに、オリフィス7a,8aは、圧側メインリーフバルブ7および伸側メインリーフバルブ8にではなく、ピストン6に設けられてもよい。
【0059】
ここで、リーフバルブ4は、サブピストン2の調心部として機能する突起2eによって、シリンダ1により径方向に位置決めされるサブピストン2の外周弁座2cと同心となるように調心されている。このようにリーフバルブ4が外周弁座2cと同心となるように調心されるから、外周弁座2cと内周弁座3cの高低差によって初期撓みが与えられたリーフバルブ4の外周と外周弁座2cとの間に隙間が形成されてしまうのを阻止できる。他方、内周弁座3cを持つバルブストッパ3は、ピストンロッド5に嵌合されていてピストンロッド5を基準として径方向に位置決めされている。よって、シリンダ1を基準としてサブピストン2を介して径方向に位置決められるリーフバルブ4と、ピストンロッド5を基準として径方向に位置決められる内周弁座3cとが偏心する場合がある。このように、環状のリーフバルブ4が内周弁座3cに対して偏心してもリーフバルブ4の内周と内周弁座3cとの間には減衰力に大きな影響を与えるほどの隙間が生じないことが発明者らの研究により知見された。
【0060】
よって、リーフバルブ4が外周弁座2cおよび内周弁座3cに着座した状態において、リーフバルブ4の外周と外周弁座2cとの間に隙間が形成されず、環状のリーフバルブ4が内周弁座3cに対して偏心してもリーフバルブ4の内周と内周弁座3cとの間には減衰力に大きな影響を与えるほどの隙間が生じない。以上から、減衰バルブV1を備えた緩衝器Dが微低速で伸縮作動する場合の減衰力特性は、図3に示すように、緩衝器Dの動き始めから緩衝器Dの伸縮を抑制するのに十分な高さの減衰力が発揮される特性となる。なお、リーフバルブが外周弁座に着座した状態でリーフバルブと外周弁座との間に隙間が生じる従来の減衰バルブを備えた緩衝器が微低速で伸縮する際の減衰力特性は、図3中の破線で示すように、緩衝器の伸縮の抑制するのには減衰力が不足する特性となるのに対して、本実施の形態の緩衝器Dは、微低速で伸縮する際に当該伸縮を抑制し得る高い減衰力を発揮できる。
【0061】
以上より、緩衝器Dは、微低速で伸縮する際にも十分な減衰力を発揮でき、緩衝器Dが微低速で伸縮する際に当該伸縮を抑制するのに良好な減衰力特性が得られる。
【0062】
なお、緩衝器Dが微低速で伸縮を繰り返す場合、圧側メインリーフバルブ7および伸側メインリーフバルブ8は開弁せず、リーフバルブ4がポート2dを開閉する。このように、緩衝器Dが微低速で伸縮を繰り返して、緩衝器Dが伸長作動から収縮作動へ切換わる場合、伸長作動時において、サブピストン2は、伸側室R1の圧力の作用でスペーサ10から離間し、リーフバルブ4の内周は、撓んで内周弁座3cから離座した状態となる。この状態から緩衝器Dの伸縮方向が収縮に転じると、リーフバルブ4が圧側室R2の作用を受けるとともに自己の復元力で内周弁座3cに当接する位置まで戻るが、サブピストン2がスペーサ10から離間しているので、リーフバルブ4が内周弁座3cに衝突した衝撃はピストンロッド5には伝達されない。緩衝器Dが微低速で伸縮を繰り返して、緩衝器Dが収縮作動から伸長作動へ切換わる場合、収縮作動時において、サブピストン2は、中間室R3の圧力の作用でメインバルブストッパ12から離間し、リーフバルブ4の外周は、撓んで外周弁座2cから離座した状態となる。この状態から緩衝器Dの伸縮方向が伸長に転じると、リーフバルブ4が伸側室R1の作用を受けるとともに自己の復元力で外周弁座2cに当接する位置まで戻るが、サブピストン2がメインバルブストッパ12から離間しているので、リーフバルブ4が外周弁座2cに衝突した衝撃はピストンロッド5には伝達されない。
【0063】
このように本実施の形態の緩衝器Dでは、外周弁座2cと内周弁座3cの一方から離間したリーフバルブ4が外周弁座2cと内周弁座3cの一方に着座する際に生じる衝撃がピストンロッド5に伝達されないので、その分、車体へ振動を与えずに済む。
【0064】
また、本実施の形態の緩衝器Dでは、リーフバルブ4が外周弁座2cおよび内周弁座3eに着座する状態でサブピストン2を軸方向へ付勢しており、サブピストン2がリーフバルブ4の付勢方向とは逆方向へ移動しても元の位置(サブピストン2がメインバルブストッパ12に当接する位置)へ戻すことができるとともに、サブピストン2がどの位置にいてもポート2dを遮断できなくなって開きっぱなしになる問題も生じない。よって、このように構成された緩衝器Dによれば、微低速で伸縮しても設定通りの減衰力を発揮でき、減衰力不足を生じて乗心地を悪化させる恐れが無くなる。
【0065】
以上、本実施の形態の減衰バルブV1は、環状であってシリンダ(筒体)1内に挿入されてシリンダ(筒体)1のみにより径方向に位置決めされるとともに、軸方向の一端2bから軸方向へ突出する環状の外周弁座2cと外周弁座2cの内周側に設けられたポート2dとを有するサブピストン(隔壁体)2と、サブピストン(隔壁体)2の一端2bに対向するとともに外周弁座2cより外径が小径な環状の内周弁座3cを有するバルブストッパ3と、外周弁座2cと内周弁座3cとの間に介装されてポート2dを開閉する内外両開きに設定される環状のリーフバルブ4とを備え、サブピストン(隔壁体)2は、リーフバルブ4を外周弁座2cに対して調心する突起(調心部)2eを備えている。
【0066】
このように構成された減衰バルブV1では、リーフバルブ4がシリンダ(筒体)1のみによって径方向に位置決めされたサブピストン(隔壁体)2に設けた突起(調心部)2eによって外周弁座2cに対して調心されるから、リーフバルブ4が外周弁座2cと内周弁座3cとに着座した状態において、リーフバルブ4の外周と外周弁座2cとの間に隙間が生じず、かつ、リーフバルブ4の内周と内周弁座3cとの間にも減衰力に影響を与えるような隙間が生じなくなる。本実施の形態の減衰バルブV1によれば、前記隙間から作動油の漏洩を防止でき、ポート2dを通過する作動油の流量が少ない場合であっても緩衝器Dに十分な大きさの減衰力を発生させられる。よって、本実施の形態の減衰バルブV1によれば、緩衝器Dが微低速で伸縮する際にも十分な減衰力を発揮して当該伸縮を抑制するのに良好な減衰力特性を得られる。
【0067】
また、本実施の形態の減衰バルブV1では、サブピストン(隔壁体)2に設けられる調心部は、サブピストン(隔壁体)2の一端2bの外周弁座2cの外周側から軸方向へ突出してリーフバルブ4の外周に当接する突起2eとされている。このように、外周弁座2cの至近に設けられる突起2eを調心部とすると、リーフバルブ4の外周弁座2cに対する調心精度が向上する。
【0068】
さらに、本実施の形態の減衰バルブV1は、サブピストン(隔壁体)2と軸方向で対向してシリンダ(筒体)1内に挿入されるとともに圧側メインポート(メインポート)6aおよび伸側メインポート(メインポート)6bとを備えたピストン(メイン隔壁体)6と、圧側メインポート(メインポート)6aを開閉するとともにリーフバルブ4の開弁圧より高い開弁圧に設定される圧側メインリーフバルブ7および伸側メインポート(メインポート)6bを開閉するとともにリーフバルブ4の開弁圧より高い開弁圧に設定される伸側メインリーフバルブ8でなるメインバルブとを備えて構成されている。このように構成された減衰バルブV1によれば、緩衝器Dが微低速で伸縮する際に適した減衰力をリーフバルブ4で発揮できるとともに、緩衝器Dの伸縮速度が高速になるとメインバルブで大きな減衰力を発揮できる。よって、本実施の形態の減衰バルブV1によれば、緩衝器Dの伸縮速度に応じ緩衝器Dの伸縮を抑制するのに適した減衰力を緩衝器Dに発生させ得る。また、ピストン(メイン隔壁体)6がピストンロッド5に固定されてシリンダ(筒体)1内に挿入される本実施の形態の減衰バルブV1では、サブピストン2がピストンロッド5に対して径方向へ移動できるので、ピストン6、ピストンロッド5或いはサブピストン2に寸法誤差があっても、サブピストン2とシリンダ1との間に摺動抵抗が大きくならずに済む。よって、このように構成された緩衝器Dによれば、シリンダ1に対してピストン(メイン隔壁体)6とサブピストン2が摺接する構造を採用しても摺動抵抗が大きくならず円滑に伸縮でき、高度な寸法管理も不要となるからコストも低減される。なお、メインポートが一方通行ではなく双方向流れを許容する場合、メインバルブが1つのバルブで構成されてもよく、この場合、たとえば、メインバルブはドカルボンバルブとされればよい。
【0069】
また、本実施の形態の緩衝器Dは、シリンダ1と、シリンダ1内に挿入されるピストンロッド5と、減衰バルブV1とを備え、シリンダ1を筒体としている。このように構成された緩衝器Dによれば、減衰バルブV1を備えているので、微低速で伸縮する際にも十分な減衰力を発揮でき、伸縮を抑制するのに良好な減衰力特性を得られる。
【0070】
なお、前述した実施の形態の減衰バルブV1は、サブピストン2の外周弁座2cの外周側にリーフバルブ4の外周に当接する突起2eを設けて、当該突起2eを調心部としていたが、図4に示した一実施の形態の一変形例における減衰バルブV2のように、サブピストン21のポート21dよりも内周側から軸方向へ突出してリーフバルブ4の内周に当接する突起21eを設けて、当該突起21eを調心部としてもよい。なお、一変形例の減衰バルブV2の説明に当たり、説明の重複を避けるため、一実施の形態の減衰バルブV1と同様の部品については同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0071】
一変形例における減衰バルブV2における隔壁体としてのサブピストン21は、環状の本体21aと、本体21aの軸方向で図3中上端となる一端21bから軸方向へ突出する環状の外周弁座21cと、本体21aにおける外周弁座21cの内周側であって同一円周上に並べて設けられた複数のポート21dと、本体21aの外周に装着されてシリンダ1の内周に摺接するピストンリング21fを備えている点で、一実施の形態の減衰バルブV1におけるサブピストン2と一致し、外周弁座21cの外周側に突起を備えていない代わり本体21aの一端21bのポート21dよりも内周であって同一円周上に等間隔に複数の突起21eを備えている点でサブピストン2と構成を異にしている。
【0072】
突起21eを無視すれば、本体21aの一端21bの軸方向高さは、内周から外周へ向かうほど高くなっており、また、本体21aの内周側の軸方向の長さはカラー11の軸方向の長さよりも若干短くなっている。
【0073】
各ポート21dは、前述した通り、本体21aに対して同心となる同一円周上に等間隔に並べて設けられており、本体21aを貫いてサブピストン2とピストン6との間の中間室R3と伸側室R1とを連通する。
【0074】
外周弁座21cは、ポート21dの外周を取り囲むように本体21aから軸方向で図2中上方側へ向けて突出している。また、突起21eは、サブピストン21を図4中上方から見ると、断面が円弧形状となっており、外周面が湾曲面とされていて、各突起21eの外周面はともに同じ曲率で同一の円に接する関係にある。
【0075】
さらに、突起21eは、周方向に間隔を開けて、径方向でポート21dと重ならないように設けられており、突起21eを設けることによりポート21dの流路面積が減少しないように配慮されている。つまり、サブピストン21の周方向で突起21e,21e間にもポート21dの一部が形成されているが、特に、ポート21dの流路面積の確保に当たり問題がない場合には突起21e,21e間にポート21dの一部を設けずともよい。
【0076】
サブピストン21は、カラー11に遊嵌されると、サブピストン21の内周とカラー11との間に隙間が生じて、僅かに軸方向となる図4中上下方向へ変位できる。また、サブピストン21がシリンダ1内に挿入されると、ピストンリング21fの外周がシリンダ1の内周に摺接するとともに、サブピストン21がカラー11に遊嵌されるため、サブピストン21は、シリンダ1のみによって径方向に位置決められる。
【0077】
一変形例におけるバルブストッパ31は、図4に示すように、環状であって図4中下端側の内径が縮径された嵌合部31aと、嵌合部31aのサブピストン21の突起21eよりも図4中上方に突出する端部から外周側へ向けて突出して突起21eの図4中上端に隙間を空けて対向するフランジ部31bと、フランジ部31bの外周からサブピストン21側に向けて延びて突起21eの外周に配置されてサブピストン21と対向する環状の内周弁座31cとを備えている。嵌合部31aにおける図2中下端側の内径は、ピストンロッド5の小径部5aの外周に嵌合可能な径に設定されるとともに、嵌合部31aにおける図4中上端側の内径は、ピストンロッド5の小径部5aよりも図2中上方側の外径よりも大径となっている。よって、バルブストッパ31をピストンロッド5の小径部5aに嵌合させると、嵌合部31aの下端側の内周がピストンロッド5の小径部5aに嵌合されてバルブストッパ31がピストンロッド5に対して径方向に位置決められるとともに、嵌合部31aの下端と上端との境の段部がピストンロッド5の段部5cに当接してバルブストッパ3がピストンロッド5に対して軸方向に位置決められる。
【0078】
また、バルブストッパ31をスペーサ10およびカラー11とともにピストンロッド5に組付けた後、サブピストン21をカラー11の外周に遊嵌すると、嵌合部31aと内周弁座31cとの間に形成された環状隙間内にサブピストン21の突起21eが収容されるとともに、内周弁座31cがサブピストン21の本体21aの内周側に対向する。バルブストッパ31における内周弁座31cの外径は、外周弁座21cの内径よりも小径とされており、内周弁座31cより外周弁座21cの方が図4中で高い位置に配置されている。
【0079】
リーフバルブ4は、内径が内周弁座31cの外径よりも小径であってサブピストン21の各突起21eの外周面に接する径に設定されており、外径が外周弁座2cの内径よりも大きな径に設定されている。よって、リーフバルブ4をサブピストン21に重ねると、リーフバルブ4の内周がサブピストン21の各突起21eに当接するので、リーフバルブ4は、突起21eによってサブピストン2の外周弁座21cに対して調心されて外周弁座21cと同心となるように径方向に位置決められる。このように突起21eは、外周弁座21cに対してリーフバルブ4を調心する調心部として機能する。
【0080】
なお、リーフバルブ4を外周弁座21cに対して同心となるように調心できる限りにおいて、円弧形状でなくてもよいが、円弧形状とされることで、リーフバルブ4の内周が突起21eの外周面を滑りやすくなってリーフバルブ4の内周の円滑な撓みを保証できる。
【0081】
そして、リーフバルブ4は、内周の図4中上端を内周弁座31cに着座させるととともに外周の図4中下端を外周弁座2cに着座させる状態で、内周弁座31cと外周弁座21cとの間に介装されている。よって、一変形例における減衰バルブV2におけるリーフバルブ4は、減衰バルブV1と同様に、内外両開きのドカルボンバルブとして機能する。なお、サブピストン21における本体21aの軸方向高さが内周へ向かうほど低くなっているので、内周弁座31cとサブピストン21の本体21aとの間にリーフバルブ4の内周が図4中下方へ撓むことができる十分なスペースが確保されている。また、突起21eは、周方向に間隔を開けて設けられているのでリーフバルブ4の内周が内周弁座31cから離間すると、突起21e,21e間の隙間を介して伸側室R1とポート21dとが連通される。
【0082】
また、バルブストッパ31の内周弁座31cよりサブピストン21の外周弁座21cの方が図4中で高い位置に配置される関係から、リーフバルブ4は、内周弁座31cと外周弁座21cとの間に介装されると内周弁座31cと外周弁座21cの高さの差に応じて初期撓みが与えられる。このようにリーフバルブ4が初期撓みを与えられることにより、リーフバルブ4が内周弁座31cおよび外周弁座21cから離間する際の開弁圧が設定されており、前記初期撓み量の調整によって前記開弁圧を調整できる。なお、リーフバルブ4に与える初期撓み量は、内周弁座31cと外周弁座21cとの軸方向の距離の差によって調整できるから、スペーサ10の環状板の板厚や積層枚数の調整によって前記開弁圧の調整が可能である。
【0083】
一変形例における減衰バルブV2では、サブピストン21の図4中下方には、減衰バルブV1と同様にメインバルブストッパ12、圧側メインリーフバルブ7、ピストン6および伸側メインリーフバルブ8が設けられている。よって、減衰バルブV2は、緩衝器Dが微低速で伸縮する場合にはリーフバルブ4により、緩衝器Dが低速で伸縮する場合にはオリフィス7a,8aにより、緩衝器Dが高速で伸縮する場合には圧側メインリーフバルブ7或いは伸側メインリーフバルブ8によって緩衝器Dに減衰力を発生させる。
【0084】
そして、一変形例における減衰バルブV2においても、リーフバルブ4は、サブピストン21の調心部として機能する突起21eによって、シリンダ1により径方向に位置決めされるサブピストン21の外周弁座21cと同心となるように調心される。このようにリーフバルブ4が外周弁座21cと同心となるように調心されるから、リーフバルブ4が外周弁座2cおよび内周弁座3cに着座した状態において、リーフバルブ4の外周と外周弁座2cとの間に隙間が形成されず、環状のリーフバルブ4が内周弁座3cに対して偏心してもリーフバルブ4の内周と内周弁座3cとの間には減衰力に大きな影響を与えるほどの隙間が生じない。以上から、減衰バルブV2を備えた緩衝器Dが微低速で伸縮作動する場合の減衰力特性は、図3に示すように、緩衝器Dの動き始めから緩衝器Dの伸縮を抑制するのに十分な高さの減衰力が発揮される特性となる。以上より、緩衝器Dは、微低速で伸縮する際にも十分な減衰力を発揮でき、緩衝器Dが微低速で伸縮する際に当該伸縮を抑制するのに良好な減衰力特性が得られる。
【0085】
以上、本実施の形態の一変形例における減衰バルブV2は、環状であってシリンダ(筒体)1内に挿入されてシリンダ(筒体)1のみにより径方向に位置決めされるとともに、軸方向の一端21bから軸方向へ突出する環状の外周弁座21cと外周弁座21cの内周側に設けられたポート21dとを有するサブピストン(隔壁体)21と、サブピストン(隔壁体)21の一端21bに対向するとともに外周弁座21cより外径が小径な環状の内周弁座31cを有するバルブストッパ31と、外周弁座21cと内周弁座31cとの間に介装されてポート21dを開閉する内外両開きに設定される環状のリーフバルブ4とを備え、サブピストン(隔壁体)21は、リーフバルブ4を外周弁座21cに対して調心する突起(調心部)21eを備えている。
【0086】
このように構成された減衰バルブV2では、リーフバルブ4がシリンダ(筒体)1のみに位置決めされたサブピストン21に設けた突起(調心部)21eによって外周弁座21cに対して調心されるから、リーフバルブ4が外周弁座21cと内周弁座31cとに着座した状態において、リーフバルブ4の外周と外周弁座2cとの間に隙間が生じず、かつ、リーフバルブ4の内周と内周弁座31cとの間にも減衰力に影響を与えるような隙間が生じなくなる。本実施の形態の減衰バルブV2によれば、前記隙間から作動油の漏洩を防止でき、ポート21dを通過する作動油の流量が少ない場合であっても緩衝器Dに十分な大きさの減衰力を発生させられる。よって、本実施の形態の減衰バルブV2によれば、緩衝器Dが微低速で伸縮する際にも十分な減衰力を発揮して当該伸縮を抑制するのに良好な減衰力特性を得られる。
【0087】
また、本実施の形態の減衰バルブV2では、サブピストン(隔壁体)2に設けられる調心部は、サブピストン(隔壁体)2の一端21bのポート21dよりも内周側から周方向に間隔を開けて軸方向へ突出してリーフバルブ4の内周に当接する複数の突起21eとされている。このように、ポート21dよりも内周側に設けた突起21eを調心部とすると、リーフバルブ4の外径を外周弁座21cの外径よりも小さくすることができ、リーフバルブ4の設計自由度が向上する。
【0088】
なお、本実施の形態では、減衰バルブV1,V2をピストンロッド5に装着して、緩衝器Dのピストン部に減衰バルブV1,V2を設置しているが、緩衝器Dがシリンダ1の外周側に液体を貯留するリザーバ室を持つ緩衝器の場合、シリンダ1の端部に圧側室R2とリザーバとを区画する隔壁体或いは隔壁体およびメイン隔壁体を設けて、圧側室R2とリザーバ室との間に減衰バルブV1,V2を設置してもよい。つまり、緩衝器Dのベースバルブ部に減衰バルブV1,V2を設置してもよい。さらに、減衰バルブV1,V2は、緩衝器Dの伸縮時に減衰力を発生させることができる箇所に設置されればよいので、緩衝器Dの構成によって減衰バルブV1,V2の設置箇所は変化するが、減衰バルブV1,V2は緩衝器Dの構成に応じて最適な箇所に設置されればよい。
また、減衰バルブV1,V2は、メインポートとを備えたメイン隔壁体と、メインポートを開閉するメインバルブとを備えずとも、リーフバルブ4のみで減衰力の発生が可能であるから、メイン隔壁体およびメインバルブを備えずに隔壁体2(21)、バルブストッパ3(31)およびリーフバルブ4で構成された減衰バルブV1,V2を緩衝器Dに利用できるのは当然である。
【0089】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0090】
1・・・シリンダ(筒体)、2,21・・・サブピストン(隔壁体)、2b,21b・・・サブピストンの一端、2c,21c・・・外周弁座、2d,21d・・・ポート、2e,21e・・・突起(調心部)、3,31・・・バルブストッパ、3c,31c・・・内周弁座、4・・・リーフバルブ、5・・・ピストンロッド、6・・・ピストン(メイン隔壁体)、6a・・・圧側メインポート(メインポート)、6b・・・伸側メインポート(メインポート)、7・・・圧側メインリーフバルブ(メインバルブ)、8・・・伸側メインリーフバルブ(メインバルブ)、D・・・緩衝器、V1,V2・・・減衰バルブ
図1
図2
図3
図4