(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135700
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】柱部材の建入れ調整装置及び建入れ調整方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/18 20060101AFI20230922BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
E04G21/18 C
G01C15/00 103A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040915
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130362
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 嘉英
(72)【発明者】
【氏名】小宮山 征義
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 陽平
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 友基
(72)【発明者】
【氏名】中川 尚大
(72)【発明者】
【氏名】石川 理人
(72)【発明者】
【氏名】溝渕 宣誠
(72)【発明者】
【氏名】藤田 行孝
(72)【発明者】
【氏名】猪野 真吾
【テーマコード(参考)】
2E174
【Fターム(参考)】
2E174BA03
2E174DA12
2E174DA58
(57)【要約】
【課題】 建方治具の健全性を損なうことなく、上下に連続して設置する柱部材の垂直方向や水平方向の位置を設計通りに調整する。
【解決手段】 柱部材10の外周面の複数箇所に取り付けた建方治具100と、上方に位置する柱部材10(上節柱11)の設置基準位置と実際の設置位置との誤差を計測する誤差計測手段200と、誤差計測手段200により計測した誤差が許容値の範囲内となるように建方治具100(傾き調整ボルト動作手段43)を制御する傾き調整制御手段300(制御PC等)を備える。傾き調整ボルト動作手段43は、傾き調整ボルト42の傾きに追従して傾動する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の柱部材を上下に連続して接続する際に、上方に位置する柱部材の倒れ調整を行うための建入れ調整装置であって、
柱部材の外周面の複数箇所に取り付けた建方治具と、
上方に位置する柱部材の設置基準位置と実際の設置位置との誤差を計測する誤差計測手段と、
前記誤差計測手段により計測した誤差が許容値の範囲内となるように建方治具の動作を制御する傾き調整制御手段と、
を備え、
前記建方治具は、
上下に配設した一対の柱部材を仮固定するために、各柱部材の外周面の複数箇所に取り付けたエレクションピースと、
上下に配設した一対の柱部材において対向するエレクションピースを接続するための接続手段と、
前記接続手段において上下方向の中間部に設けられ、上方に位置する柱部材の鉛直方向の位置を調整する鉛直位置調整手段と、
を備え、
前記鉛直位置調整手段は、
上方に配設した柱部材を鉛直方向に上下動させる上下位置調整カムと、
前記上下位置調整カムを動作させるとともに、上面に連結結合穴を有する傾き調整ボルトと、
前記傾き調整ボルトを動作させる傾き調整ボルト動作手段と、
を備え、
前記傾き調整ボルト動作手段は、
前記傾き調整ボルトの上面に設けた連結結合穴に係合する回転軸部と、
前記回転軸部を回転駆動させる回転駆動手段と、
前記回転駆動手段に電源を供給する電源手段と、
を備え、
前記傾き調整制御手段は、前記誤差計測手段により計測した誤差が許容値の範囲内となるように前記傾き調整ボルト動作手段を制御するものであり、
前記傾き調整ボルト動作手段は、前記傾き調整ボルトの傾きに追従して傾動するものである、
ことを特徴とする柱部材の建入れ調整装置。
【請求項2】
前記建方治具から突出して設けた支持鋼板を左右両側から挟み込む一対の回転防止手段を備え、
前記回転防止手段は、傾き調整ボルトの回転に追従して前記傾き調整ボルト動作手段が回転することを防止するための手段であり、
前記連結結合穴と前記回転軸部には、前記連結結合穴に前記回転軸部を結合させて固定する結合固定手段を設けてある、
ことを特徴とする請求項1に記載の柱部材の建入れ調整装置。
【請求項3】
一対の柱部材を上下に連続して接続する際に、上方に位置する柱部材の倒れ調整を行うための建入れ調整方法であって、
柱部材の外周面の複数箇所に建方治具を取り付ける建方治具取り付け工程と、
上方に位置する柱部材の設置基準位置と実際の設置位置との誤差を計測する誤差計測工程と、
前記建方治具を用いて、設置基準位置と実際の設置位置との誤差が許容値の範囲内となるように調整する傾き調整工程と、
を含み、
前記各工程を実施するために、柱部材の外周面の複数箇所に取り付けた建方治具と、上方に位置する柱部材の設置基準位置と実際の設置位置との誤差を計測する誤差計測手段と、前記誤差計測手段により計測した誤差が許容値の範囲内となるように前記建方治具の動作を制御する傾き調整制御手段とを備え、
前記建方治具は、上下に配設した一対の柱部材を仮固定するために、各柱部材の外周面の複数箇所に取り付けたエレクションピースと、上下に配設した一対の柱部材において対向するエレクションピースを接続するための接続手段と、接続手段において上下方向の中間部に設けられ、上方に位置する柱部材の鉛直方向の位置を調整する鉛直位置調整手段とを備え、
前記鉛直位置調整手段は、上方に配設した柱部材を鉛直方向に上下動させる上下位置調整カムと、上下位置調整カムを動作させるとともに、上面に連結結合穴を有する傾き調整ボルトと、傾き調整ボルトを動作させる傾き調整ボルト動作手段とを備え、
前記傾き調整ボルト動作手段は、傾き調整ボルトの上面に設けた連結結合穴に係合する回転軸部と、回転軸部を回転駆動させる回転駆動手段と、回転駆動手段に電源を供給する電源手段とを備え、
前記傾き調整工程では、前記誤差計測手段により計測した誤差が許容値の範囲内となるように、前記傾き調整制御手段により前記傾き調整ボルト動作手段を制御するとともに、前記傾き調整ボルト動作手段を前記傾き調整ボルトの傾きに追従して傾動させる、
ことを特徴とする柱部材の建入れ調整方法。
【請求項4】
前記建方治具から突出して設けた支持鋼板を左右両側から挟み込む一対の回転防止手段を備え、当該回転防止手段は、傾き調整ボルトの回転に追従して傾き調整ボルト動作手段が回転することを防止するための手段であり、連結結合穴と回転軸部には、連結結合穴に回転軸部を結合させて固定する結合固定手段を設け、
前記建方治具取り付け工程では、前記結合固定手段を用いて連結結合穴に回転軸部を結合させて固定することにより、前記建方治具の傾き調整ボルト動作手段と前記傾き調整ボルトを一体に接続し、
前記傾き調整工程では、前記回転防止手段を用いて、前記傾き調整ボルト動作手段が傾き調整ボルトの回転に追従して回転することを防止する、
ことを特徴とする請求項3に記載の柱部材の建入れ調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は柱部材の建入れ調整装置及び建入れ調整方法に関するものであり、詳しくは、柱部材を組み立てる際(建方)において、上下に連続して設置する柱部材の傾きを設計通りに調整するための装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄骨柱等の柱部材を上下に連続して設置する場合に、軸線が鉛直方向に対して傾いていると、構築した構造物自体が傾く等、種々の不具合が生じてしまう。そこで、柱部材を組み立てる際に、軸線方向の傾きが許容値の範囲に収まるように、作業員(墨出し屋)が測量を行いながら柱部材の傾きを調整していた。この建入れ調整作業は、作業員(墨出し屋)の力量に依存する部分が多く、現場(業者)毎に調整方法が異なるため、建入れ調整の精度に影響を与えることがないように厳重な管理が要求されていた。
【0003】
このような建入れ調整の負担を軽減するために、種々の技術が開示されており、特に、トータルステーションと建方治具とを連動させることにより、鉄骨柱の建方作業の技能労働者を鍛冶工一人とするとともに、建入れ計測における墨だし工を不要として、省力化を図るための技術が開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載された技術は、鉄骨柱の一端部にX軸-Y軸の2軸吊の荷台で常に吊持対象物を鉛直状態に保持するトータルステーション固定治具を取り付ける。そして、トータルステーション固定治具にトータルステーションを取り付けるとともに、揚重装置により鉄骨柱を吊り上げて建物の所定の位置に設置して、計測装置を用いて鉄骨柱が基準内に収まるように建入れ調整を行う。続いて、トータルステーション付きの鉄骨柱を最初の基準位置の柱として、その後に搬入される他の鉄骨柱の位置をトータルステーションで測定して、当該他の鉄骨柱の建入れ調整を順次繰り返して行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に記載された技術は、建入れ調整を行うための建方治具を使用する前提として、下方に設置した下方鉄骨柱と、この鉄骨柱の上方に連続して設置する上方鉄骨柱との接合箇所(各柱の4面に4箇所)にエレクションピースを設置しておく。そして、上下に対向する一対のエレクションピースに、Z軸方向の調整ボルト(傾き調整ボルト)、転倒防止ボルト及び目違い調整用ボルト、微調カム(上下位置調整カム)、調整クサビを有する建方治具を装着する。
【0007】
また、建方治具に、Z軸方向の調整ボルト(傾き調整ボルト)を回転駆動させる駆動装置を取り付ける。この駆動装置は。モーター、減速機、回転軸部、調整ボルトの頭部に嵌合するユニバーサルシャフトを備えている。そして、駆動装置の駆動制御を行いながら、Z軸方向の調整ボルト(傾き調整ボルト)を回転させることにより、鉄骨柱の位置が建入れの基準値範囲内に収まるようにしている。
【0008】
ところで、上述した構成からなる建方治具は、Z軸方向の調整ボルト(傾き調整ボルト)を下方に向かって移動するように回転させると、調整ボルト(傾き調整ボルト)の先端部が微調カム(上下位置調整カム)に押し当たり、微調カム(上下位置調整カム)がテコの原理で動作し、エレクションピースを上方へ押し上げることにより、上方に位置する鉄骨柱を上方へ移動させることができる。一方、Z軸方向の調整ボルト(傾き調整ボルト)を上方へ向かって移動するように回転させると、調整ボルト(傾き調整ボルト)の先端部が押し当たっている微調カム(上下位置調整カム)がテコの原理で動作し、エレクションピースが下方へ押し戻されるので、上方に位置する鉄骨柱を下方へ移動させることができる。
【0009】
この際、調整ボルト(傾き調整ボルト)の先端が微調カム(上下位置調整カム)に押し当たっているため、微調カム(上下位置調整カム)の動作に伴い調整ボルト(傾き調整ボルト)の傾きが変動することになる。
【0010】
しかし、特許文献1に記載された建方治具は、Z軸方向の調整ボルト(傾き調整ボルト)と、これを回転させるための駆動装置が、建方治具に固定して取り付けられているため、調整ボルト(傾き調整ボルト)が傾いたとしても、駆動装置の回転軸部は略鉛直方向のままであり、調整ボルト(傾き調整ボルト)と駆動装置の回転軸部とにおいて、軸方向の傾きが異なってしまう。
【0011】
この建方治具において、駆動装置の回転軸部はユニバーサルシャフトを介して調整ボルト(傾き調整ボルト)に連結されている。特許文献1ではユニバーサルシャフトに関して詳細な説明はないため、ユニバーサルシャフトがどのような構造の部材であるかは定かではない。
【0012】
仮に、ユニバーサルシャフトが軸部の中間にユニバーサルジョイントを有するシャフト、あるいは軸部が可撓性を有する部材からなるフレキシブルシャフトであったとしても、調整ボルト(傾き調整ボルト)が傾くと、駆動装置の回転軸部が調整ボルトの傾きに追従することができずに、駆動装置の回転軸部と調整ボルト(傾き調整ボルト)との連結が外れるおそれがある。また、駆動装置の回転軸部と調整ボルト(傾き調整ボルト)との連結が外れないとしても、駆動装置の回転軸部と調整ボルト(傾き調整ボルト)との連結部において、斜め方向の力が加わるため、連結部が損耗したり、破壊したりするおそれがある。
【0013】
さらに、軸部の中間にユニバーサルジョイントを有するユニバーサルシャフトは、構造が複雑なものとなり、装置が大型化するだけではなく、頻繁なメンテナンスが必要となる等の不都合がある。また、フレキシブルシャフトは、大きな回転トルクに耐えることができずに破断するおそれがある。
【0014】
このような状態では、建方治具の健全性を保つことができず、ひいては建入れ調整の精度に影響を与えることになる。そこで、本発明は、建方治具の健全性を損なうことなく、上下に連続して設置する柱部材の垂直方向や水平方向の位置を設計通りに調整することが可能な柱部材の建入れ調整装置及び調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る柱部材の建入れ調整装置及び調整方法は、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を有している。すなわち、本発明に係る柱部材の建入れ調整装置及び調整方法は、一対の柱部材を上下に連続して接続する際に、上方に位置する柱部材(上節柱)に対して倒れ調整を行うための装置及び方法に関するものである。
【0016】
本発明に係る柱部材の建入れ調整装置は、柱部材の外周面の複数箇所に取り付けた建方治具と、上方に位置する柱部材(上節柱)の設置基準位置と実際の設置位置との誤差を計測する誤差計測手段と、誤差計測手段により計測した誤差が許容値の範囲内となるように建方治具の動作を制御する傾き調整制御手段とを備えている。
【0017】
建方治具は、上下に配設した一対の柱部材を仮固定するために、各柱部材の外周面の複数箇所に取り付けたエレクションピースと、上下に配設した一対の柱部材において対向するエレクションピースを接続するための接続手段(建方治具本体)と、接続手段(建方治具本体)において上下方向の中間部に設けられ、上方に位置する柱部材(上節柱)の鉛直方向の位置を調整する鉛直位置調整手段とを備えている。
【0018】
鉛直位置調整手段は、上方に配設した柱部材(上節柱)を鉛直方向に上下動させる上下位置調整カムと、上下位置調整カムを動作させるとともに、上面に連結結合穴を有する傾き調整ボルトと、傾き調整ボルトを動作させる傾き調整ボルト動作手段とを備えている。
【0019】
傾き調整ボルト動作手段は、傾き調整ボルトの上面に設けた連結係合穴に係合する回転軸部と、回転軸部を回転駆動させる回転駆動手段と、回転駆動手段に電源を供給する電源手段とを備えている。
【0020】
そして、傾き調整制御手段は、誤差計測手段により計測した誤差が許容値の範囲内となるように傾き調整ボルト動作手段を制御する。また、傾き調整ボルト動作手段は、傾き調整ボルトの傾きに追従して傾動する、
【0021】
上述した構成からなる柱部材の建入れ調整装置において、建方治具から突出して設けた支持鋼板を左右両側から挟み込む一対の回転防止手段を備えている。当該回転防止手段は、傾き調整ボルト(回転軸部)の回転に追従して傾き調整ボルト動作手段が回転することを防止するための手段である。また、連結係合穴と回転軸部には、連結係合穴に回転軸部を結合させて固定する結合固定手段を設けてある。
【0022】
本発明に係る柱部材の建入れ調整方法は、上述した構成からなる柱部材の建入れ調整装置を用いて、一対の柱部材を上下に連続して接続する際に、上方に位置する柱部材(上節柱)の倒れ調整を行う方法であって、柱部材の外周面の複数箇所に建方治具を取り付ける建方治具取り付け工程と、上方に位置する柱部材(上節柱)の設置基準位置と実際の設置位置との誤差を計測する誤差計測工程と、建方治具を用いて、設置基準位置と実際の傾き位置との誤差を許容値の範囲内に調整する傾き調整工程とを含んでいる。
【0023】
そして、傾き調整工程では、誤差計測手段により計測した誤差が許容値の範囲内となるように、建方治具の動作を制御するとともに、傾き調整ボルト動作手段を傾き調整ボルトの傾きに追従して傾動させる。建方治具の動作を制御するとは、傾き調整制御手段により傾き調整ボルト動作手段を制御することである。
【0024】
また、上述した工程を含む柱部材の建入れ調整方法において、建方治具取り付け工程では、結合固定手段を用いて連結係合穴に回転軸部を結合させて固定することにより、建方治具の傾き調整ボルト動作手段と傾き調整ボルトを一体に接続する。また、傾き調整工程では、回転防止手段を用いて、傾き調整ボルト動作手段が傾き調整ボルトの回転に追従して回転することを防止する。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る柱部材の建入れ調整装置及び調整方法では、柱部材(上節柱)の建入れ調整を行うために、傾き調整ボルト動作手段を用いて柱部材(上節柱)の傾き調整を行うようになっている。すなわち、傾き調整ボルトを回転駆動手段により回転させることにより、柱部材(上節柱)の傾き調整を行う。この際、回転駆動手段を備えた傾き調整ボルト動作手段は、傾き調整を行うための傾き調整ボルトの傾きに追従して傾動するため、回転駆動手段からの駆動力を傾き調整ボルトに対して確実に伝達することができる。
【0026】
したがって、本発明に係る柱部材の建入れ調整装置及び調整方法によれば、建入れ調整を行うための治具(建方治具)の動作に悪影響を与えることなく、上下に連続して設置する柱部材(上節柱)の傾きを設計通りに調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施形態に係る柱部材の建入れ調整装置の構成を示すブロック図。
【
図2】本発明の実施形態に係る柱部材の建入れ調整装置の側面図。
【
図3】本発明の実施形態に係る柱部材の建入れ調整装置の正面図。
【
図4】本発明の実施形態に係る柱部材の建入れ調整装置を側面から見た状態の概略模式図。
【
図5】本発明の実施形態に係る結合固定手段による結合固定状態を示す側面図。
【
図6】本発明の実施形態に係る結合固定手段を分解した状態を示す側面図。
【
図7】本発明の実施形態に係る柱部材の建入れ調整方法のフローチャート。
【
図8】本発明の実施形態に係る柱部材の建入れ調整方法における傾き調整のフローチャート(メインルーチン)。
【
図9】本発明の実施形態に係る柱部材の建入れ調整方法における傾き調整のフローチャート(Z軸の調整サブルーチン)。
【
図10】本発明の実施形態に係る柱部材の建入れ調整方法における傾き調整のフローチャート(X軸調整のサブルーチン)。
【
図11】本発明の実施形態に係る柱部材の建入れ調整方法における傾き調整のフローチャート(Y軸調整のサブルーチン)。
【
図12】本発明の実施形態に係る柱部材の建入れ調整方法において、柱部材の傾き調整の具体例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る柱部材の建入れ調整装置及び調整方法(以下、建入れ調整装置、建入れ調整方法と略記する)を説明する。
図1~6は本発明の実施形態に係る建入れ調整装置を説明するもので、
図7~12は本発明の実施形態に係る建入れ調整方法を説明するものである。
【0029】
すなわち、
図1は建入れ調整装置のブロック図、
図2は建入れ調整装置の側面図、
図3は建入れ調整装置の正面図、
図4は建入れ調整装置を側面から見た状態の概略模式図、
図5は結合固定手段による結合固定状態を示す側面図、
図6は結合固定手段を分解した状態を示す側面図である。なお、結合固定手段とは、傾き調整ボルトの連結係合穴に対して、傾き調整ボルトを回転させるための回転軸部(回転駆動手段)を結合させて固定するための手段である。また、
図7は建入れ調整方法のフローチャート、
図8は傾き調整のメインルーチンを示すフローチャート、
図9~11は傾き調整のサブルーチンを示すフローチャート、
図12は柱部材の傾き調整工程の具体例を示す模式図である。なお、各図において、部材の位置や形状等が若干異なっている場合があるが、各部材の構成は各図において同様である。
【0030】
<建入れ調整装置の概要>
本発明の実施形態に係る建入れ調整装置は、一対の柱部材10(以下、上側に配設する柱部材10を上節柱11といい、下側に配設する柱部材10を下節柱12という)を上下に連続して接続する際に、上節柱11の倒れ調整を行うための装置であり、例えば、鉄骨柱を組み立てる際に使用する装置である。
【0031】
この建入れ調整装置は、
図1に示すように、主要な構成要素として、建方治具100と、誤差計測手段200と、傾き調整制御手段300とを備えている。建方治具100は、建入れ調整を行うために、柱部材10の外周面の複数箇所に取り付ける治具であり、例えば、テクノス株式会社製の建方エースを用いる。また、誤差計測手段200は、上節柱11の設置基準位置と実際の設置位置との誤差を計測するための手段であり、図示しないが、例えば、トータルステーション及びその付帯機器を用いて構成する。
【0032】
図1に示すように、建方治具100は、エレクションピース20と、接続手段(建方治具本体30)と、鉛直位置調整手段40とを備えている。鉛直位置調整手段40は、上下位置調整カム41と、上面に連結結合穴42aを有する傾き調整ボルト42と、傾き調整ボルト動作手段43とを備えている。傾き調整ボルト動作手段43は、回転軸部43aと、回転駆動手段43bと、電源手段43cとを備えている。また、接続手段(建方治具本体30)には、回転防止手段50を設けてある。そして、連結結合穴42aと回転軸部43aには、連結結合穴42aに回転軸部43aを結合させて固定する結合固定手段60を設けてある。
【0033】
<建方治具>
建方治具100は、コラム柱、丸柱、H鋼柱等の柱部材10の建方に使用する治具であり、上下に接続する柱部材10(上節柱11及び下節柱12)を仮固定して転倒を防止するとともに、目違い調整、倒れ調整、レベル調整等を行うことができる。この建方治具100は、
図2及び
図3に示すように、上節柱11の下部及び下節柱12の上部に、それぞれ対向するようにして取り付けたエレクションピース20と、上下に対向する一対のエレクションピース20に掛け渡すように取り付けることにより接続手段として機能する建方治具本体30と、建方治具本体30(接続手段)において上下方向の中間部に設けられ、上節柱11の鉛直方向の位置を調整する鉛直位置調整手段40(上下位置調整カム41、傾き調整ボルト42、傾き調整ボルト動作手段43)とを備えている。
【0034】
この建方治具100は、
図4において模式的に示すように、制御ユニット70と、電源手段43と、動力ユニット80と、回転防止手段50とを備えている。動力ユニット80は、傾き調整ボルト動作手段43を構成する回転軸部43aと回転駆動手段43bとからなるユニットである。制御ユニット70、動力ユニット80、電源手段43c(バッテリー)、回転防止手段50については、後に詳述する。
【0035】
<建方治具本体>
建方治具本体30は、
図2及び
図3に示すように、上節柱11に取り付けたエレクションピース20を挿入する上部縦溝部31と、下節柱12に取り付けたエレクションピース20を挿入する下部縦溝部32とを備えている。そして、上節柱11に取り付けたエレクションピース20と、下節柱12に取り付けたエレクションピース20の間には、上下位置調整カム41を取り付ける空間を設けてある。また、上節柱11に取り付けたエレクションピース20に接するようにして、柱部材10の外方へ向かって突出する支持鋼板33を設けてある。
【0036】
また、支持鋼板33を貫通するようにして傾き調整ボルト42が取り付けてあり、傾き調整ボルト42の先端部が上下位置調整カム41の一端部に押し当たるようになっている。上下位置調整カム41の下端面と、下節柱12に取り付けたエレクションピース20との間には、矢板34を挿入するようになっている。そして、上下位置調整カム41の下端面が矢板34に当接するとともに、上下位置調整カム41の他端部が上節柱11に取り付けたエレクションピース20の下端部に押し当たるようになっている。すなわち、上下位置調整カム41は、一端部が力点となり、下端面が支点となり、他端部が作用点となっており、傾き調整ボルト42により、上節柱11に取り付けたエレクションピース20の上下位置を調整するようになっている。
【0037】
さらに、建方治具本体30には、
図2及び
図3に示すように、上部縦溝部31内に挿入したエレクションピース20に対して側方から押し当てることにより建方治具本体30を当該エレクションピース20に固定するための固定ボルト35と、下部縦溝部32内に挿入したエレクションピース20に対して左右両側からそれぞれ押し当てることにより上節柱11と下節柱12の目違いを調整するための目違い調整ボルト36と、下部縦溝部32内に挿入したエレクションピース20に対して下側から押し当てることにより上節柱11の転倒を防止するための転倒防止ボルト37を備えている。本実施形態において、これらの部材は、作業者が操作するようになっている。
【0038】
<エレクションピース>
エレクションピース20は、
図2及び
図3に示すように、上節柱11の下部及び下節柱12の上部に取り付ける部材であり、複数の側面を有する柱部材10において、対向する一対の側面を一組として、複数組取り付けてある。例えば、断面四角形の柱部材10の場合には、各側面(4側面)にそれぞれエレクションピース20を取り付ける。このエレクションピース20は、板状の部材であり、各柱部材10の側面において、各柱部材10から外方へ向かって突出するようにして上下方向に取り付ける。
【0039】
また、上節柱11に取り付けたエレクションピース20の下端部と、下節柱12に取り付けたエレクションピース20の上端部との間に上下位置調整カム41等の部材を介在させるための空間を設けてある。エレクションピース20の取り付け箇所及び取り付け数(建方治具100を取り付ける箇所及び数)は、柱部材10の形状、大きさ、重量等に応じて適宜設定する。
【0040】
<鉛直位置調整手段>
上述したように、鉛直位置調整手段40は、建方治具本体30(接続手段)の上下方向の中間部に設けられており、上節柱11に取り付けたエレクションピース20の上下位置を調整することにより、上節柱11の上下位置を調整するようになっている。この鉛直位置調整手段40は、上下位置調整カム41と、傾き調整ボルト42と、傾き調整ボルト動作手段43とが主要な構成要素となっている。
【0041】
本実施形態では、動力ユニット80である傾き調整ボルト動作手段43(回転軸部43a、回転駆動手段43b)と、電源手段43c(バッテリー)と、制御ユニット70は収納ケース44内に収容されている。また、これらのユニット及び装置は、回転防止手段50と一体となっている。すなわち、
図4に示すように、これらの部材は、制御ユニット70、動力ユニット80、電源手段43c(バッテリー)として収納ケース44内に収納されており、収納ケース44と回転防止手段50とは一体となっている。
【0042】
<上下位置調整カム>
上下位置調整カム41は、傾き調整ボルト42の先端部が接触して力点となる板状部41aと、上節柱11に取り付けたエレクションピース20の下端部に押し当たって作用点となるとともに、下節柱12に取り付けたエレクションピース20の上端部に挿入した矢板34に押し当たって支点となる円筒部41b(上面が作用点、下面が支点となる)とを有している。すなわち、上下位置調整カム41は、先端側が円筒状に膨出するとともに、基端側が板状となったテコとなっている。
【0043】
<傾き調整ボルト>
傾き調整ボルト42は、建方治具本体30から外方へ向かって突出した支持鋼板33を上下に貫通するようにネジ付けられている。そして、傾き調整ボルト42の先端部が下方向へ向かって突出するように回動させると、傾き調整ボルト42の先端部が上下位置調整カム41の板状部41a(一端部)の上面に押し当たって、板状部41a(一端部)を押し下げるようになっている。一方、傾き調整ボルト42を上方向へ向かって突出するように回動させると、上節柱11の重量により上下位置調整カム41の板状部41a(一端部)が押し戻される。すなわち、傾き調整ボルト42の回動に応じて、上節柱11を上下動させることができる。
【0044】
そして、傾き調整ボルト42を有する建方治具100は、複数の側面を有する柱部材10において、対向する一対の側面を一組として、複数組取り付けられているため、傾き調整ボルト42を操作することにより上下位置調整カム41が動作して、上節柱11の傾きを調整することができる。
【0045】
<連結結合穴>
傾き調整ボルト42の上面には、傾き調整ボルト動作手段43の回転軸部43aと係合する連結結合穴42aを設けてある。この連結結合穴42aは、傾き調整ボルト42の頭部上面において回転中心となる位置に設けてある。この連結結合穴42aと回転軸部43aには、連結結合穴42aに回転軸部43aを結合させて固定する結合固定手段60を有している。結合固定手段60については、後に詳述する。
【0046】
<傾き調整ボルト動作手段>
傾き調整ボルト動作手段43は、傾き調整ボルト42を回転動作させるための手段であり、回転軸部43aと、回転駆動手段43bと、電源手段43cとにより構成する。
【0047】
<回転軸部>
回転軸部43aは、回転駆動手段43b(電動モーター)の回転力を伝達するための部材であり、傾き調整ボルト42の上面に設けた連結結合穴42aに係合するようになっている。本実施形態では、連結結合穴42aが断面円形の凹部であるため、回転軸部43aは当該凹部に嵌まり込む円柱状となっている。
【0048】
<回転駆動手段>
回転駆動手段43bは、回転軸部43aを回転させるための手段であり、例えば、電動モーターにより構成する。そして、回転駆動手段43b(電動モーター)の回転軸部43aを連結結合穴42aに結合して固定することにより、回転駆動手段43b(電動モーター)の駆動により傾き調整ボルト42を回転させることができる。この回転駆動手段43b(電動モーター)は、電源手段43c(バッテリー)とともに、収納ケース44に収納されている。
【0049】
<電源手段>
電源手段43cは、回転駆動手段43b(電動モーター)に電源を供給するための手段であり、例えば、バッテリーからなる。バッテリーの種類は特に限定するものではないが、回転軸部43bを回転駆動させるために十分な駆動電圧・電流及び容量を有し、耐久性に優れていることが好ましい。なお、本実施形態では、電源手段43cをバッテリーとしているが、直接、電力線から電源を供給してもよい。
【0050】
<回転防止手段>
回転防止手段50は、傾き調整ボルト42の回転に追従して傾き調整ボルト動作手段43及びこれに付帯する装置が回転することを防止するための手段である。この回転防止手段50は、建方治具本体30の支持鋼板33を両側から挟み込むようにして設けた一対の回転防止板51により構成する。この一対の回転防止板51は、柱部材10に対して傾き調整ボルト42の外側に位置するとともに、建方治具本体30から下側へ向かって突出するように、それぞれ設けてある。そして、一対の回転防止板51の間隔は、支持鋼板33の幅よりも若干(例えば、2mm程度)大きく設定してある。上述したように、回転防止手段50は、制御ユニット70と、動力ユニット80である傾き調整ボルト動作手段43(回転軸部43a、回転駆動手段43b)と、電源手段43c(バッテリー)と一体となっている。
【0051】
そして、建方治具100の上方から、収納ケース44を傾き調整ボルト42に臨ませると、傾き調整ボルト42の連結結合穴42aに回転軸部43aが係合するとともに、一対の回転防止板51により支持鋼板33を挟み込むことができる。この状態で、結合固定手段60により、連結結合穴42aに回転軸部43aを結合させて固定すると、傾き調整ボルト42と収納ケース44が一体に連結される。また、回転防止手段50により、回転軸部43aの回転に伴って収納ケース44が回転することを防止できる。このような構成により、収納ケース44を含む建方治具本体30は、傾き調整ボルト42の傾きに追従して傾動する。
【0052】
<傾き調整制御手段>
傾き調整制御手段300は、誤差計測手段200により計測した誤差が許容値の範囲内となるように建方治具100の動作(具体的には、傾き調整ボルト動作手段43)を制御するための手段であり、
図1に示すように、コンピュータ機能を有する制御ユニット70と、この制御ユニット70と無線LANを用いてデータの送受信を行う制御PCにより構成する。
【0053】
制御ユニット70は、動力ユニット80である傾き調整ボルト動作手段43(回転軸部43a、回転駆動手段43b)と、電源手段43cであるバッテリーとともに収納ケース44内に収納されている。また、収納ケース44内には、無線LAN手段(図示せず)が収納されており、制御ユニット70は無線LANを用いて制御PCとデータの送受信を行っている。すなわち、制御ユニット70は、制御PCからの受信信号に基づいて動作することにより、傾き調整ボルト動作手段43を制御する。
【0054】
<制御PC>
制御PCは、例えば、ノートパソコンにより構成することができ、トータルステーションとの間でデータの送受信を行っている。制御PCには、誤差計測手段200であるトータルステーションにより計測した上節柱11の傾き誤差が許容値の範囲内となるように傾き調整ボルト動作手段43を制御するためのプログラムがインストールされている。そして、制御PCは、トータルステーションから受信した誤差データに基づき、無線LANを用いて制御ユニット70に制御信号を送信し、制御ユニット70を介して傾き調整ボルト動作手段43を制御することにより、上節柱11の傾き誤差を許容値の範囲内とする。
【0055】
<結合固定手段>
図5及び
図6を参照して、結合固定手段60を説明する。
図5(a)は結合固定手段60の側面図、
図5(b)は傾き調整ボルト42の上面図、
図6は結合固定手段60を分解した状態の側面図である。
【0056】
結合固定手段60は、連結結合穴42aに回転軸部43aを結合させて固定するための手段である。本実施形態の結合固定手段60は、
図5及び
図6に示すように、連結結合穴42aの内面と回転軸部43aの外周面とに対向してそれぞれ設けたキー溝61a、61bと、対向するキー溝61a、61b内に嵌まり込む平行キー62と、傾き調整ボルト42の頭部の外周面から連結結合穴42aに向かって貫通した複数の固定ネジ挿通孔63と、固定ネジ挿通孔63にねじ込むことにより、その先端部が平行キー62または回転軸部43aの外周面に当接する固定ネジ64とからなる。
【0057】
固定ネジ64は、図示しないが、外周面に雄ネジ部を有すると共に、頭部にレンチ(例えば、六角レンチ)を挿入するためのレンチ挿入穴を設けてある。本実施形態では、隣り合う固定ネジ挿通孔63を、それぞれ120°の角度を隔てて等間隔に3箇所設けてある。
【0058】
そして、連結結合穴42aの内面に設けたキー溝61aと、回転軸部43aの外周面に設けたキー溝61bとを対向させて、両キー溝61a、61b内に平行キー62が嵌まり込むようにして、連結結合穴42a内に回転軸部43aを挿入する。この状態で、固定ネジ挿通孔63に固定ネジ64を挿入して、固定ネジ64の先端部が平行キー62または回転軸部43aの外周面に当接するように固定ネジ64をねじ込むことにより、連結結合穴42aに回転軸部43aを結合させて固定することができる。
【0059】
<誤差計測手段>
本実施形態の誤差計測手段200は、上節柱11の設置基準位置と実際の設置位置との誤差を計測するための手段であり、例えば、トータルステーション(図示せず)を主要な構成要素とする。トータルステーションは、計測目標点に向けて光線を発射して、計測目標点から反射してきた光線を電子的に解析して距離を測定する光波距離計と角度を測定するためのデジタルセオドライトを組み合わせた機器である。トータルステーションは、角度(鉛直角・水平角)と距離を同時に測定することができ、さらに、測定結果データを演算装置(制御PC)に送信することができる。
【0060】
本実施形態の誤差計測手段200としてトータルステーションを用いた場合について説明する。本実施形態では、トータルステーションは制御PC(ノートパソコン)とデータ通信可能に接続されている。したがって、トータルステーションの動作は制御PCにより制御することができ、測距結果データを制御PCに取り込むことができる。制御PCの表示画面(ノートパソコンの液晶表示画面)には、トータルステーションの動作制御を行うための種々の操作アイコンが表示されており、この操作アイコンによりトータルステーションの動作制御を行う。
【0061】
また、制御PCの表示画面(ノートパソコンの液晶表示画面)には、測距結果データが表示される。なお、トータルステーションはコンピュータ機能及び表示装置を有しているため、その制御やデータ表示はトータルステーション自体においても実施することができる。
【0062】
トータルステーションを適宜位置に設置するとともに、位置座標が既知の2箇所を基準点として、それぞれターゲット(プリズム)を設置する。2箇所の基準点に設置したターゲット(プリズム)を測距することにより、トータルステーションの設置位置(自己位置)を計算することができる。なお、ターゲット(プリズム)は1つあればよく、各基準点を測距する毎に、基準点にターゲット(プリズム)を移動して設置する。また、専用のターゲットシール90を上節柱11の適宜位置に設置しておく。
【0063】
上節柱11の傾き誤差を計測するには、トータルステーションにより上節柱11のターゲットシール90を視準して測位を行い、予め記憶しておいた基準位置データとのずれ(誤差)を演算する。そして、演算結果に基づいて、制御PCが、上節柱11に取り付けた鉛直位置調整手段40の動作を制御することにより、上節柱11の傾き誤差が基準値の範囲内となるように、上節柱11の傾きを調整する。例えば、四角柱からなる上節柱11の各側面(4面)にそれぞれ建方治具100が取り付けてある場合には、互いに直交する3軸方向(垂直方向のZ軸、水平方向のX軸及びY軸)において上節柱11の鉛直位置を調整して、上節柱11の傾きを調整する。
【0064】
また、設計値である3DCADモデルデータを記憶しておき、当該3DCADモデルデータをAR表示するとともに、画像認識機能により上節柱11のエッジ検出を行い、画像認識により検出したエッジデータと、AR上で選択した座標データとの誤差を演算して、上節柱11の傾き誤差を計測してもよい。
【0065】
<建入れ調整方法の概要>
本発明に係る建入れ調整方法は、上述した建入れ調整装置を用いて、一対の柱部材10を上下に連続して接続する際に、上方に位置する柱部材10(上節柱11)の倒れ調整を行うための方法であり、
図7に示すように、主要な工程として、建方治具取り付け工程(S100)と、誤差計測工程(S200)と、傾き調整工程(S300)とを含んでいる。
【0066】
<建方治具取り付け工程>
建方治具取り付け工程(S100)は、柱部材10の外周面の複数箇所に建方治具100を取り付けるための工程である。この建方治具取り付け工程(S100)では、結合固定手段60を用いて連結結合穴42aに回転軸部43aを結合させて固定することにより、建方治具100の傾き調整ボルト動作手段43と傾き調整ボルト42を一体に接続する。
【0067】
<誤差計測工程>
誤差計測工程(S200)は、上節柱11の設置基準位置と実際の設置位置との誤差を計測するための工程である。この誤差計測工程(S200)では、トータルステーションを用いて測量及び誤差の計測を行う。なお、トータルステーションでは測量のみを行い、測量結果データを制御PCに送信することにより、制御PCで誤差の演算を行ってもよい。
【0068】
<傾き調整工程>
傾き調整工程(S300)は、傾き調整制御手段300の制御に基づき、建方治具100(傾き調整ボルト動作手段43)を用いて、設置基準位置と実際の設置位置との誤差が許容値の範囲内となるように調整するための工程である。この傾き調整工程(S300)では、結合固定手段60により回転軸部43aと回転駆動手段43bが結合して固定されているため、傾き調整ボルト動作手段43を傾き調整ボルト42の傾きに追従して傾動させることができる。また、傾き調整工程(S300)では、回転防止手段50を用いて、傾き調整ボルト動作手段43が傾き調整ボルト42の回転に追従して回転することを防止する。
【0069】
<制御フロー(メインルーチン)>
上述した誤差計測工程(S200)及び傾き調整工程(S300)について具体的に説明する。上述したように、誤差計測手段200(トータルステーション)と傾き調整制御手段300(制御PC)とは、接続ケーブルを介してデータ送受信可能に接続されており、制御PCと建入れ調整装置(鉛直位置調整手段40)とは、無線LANを介してデータ送受信可能に接続されている。
【0070】
また、以下の説明では、四角柱からなる柱部材10(上節柱11及び下節柱12)の各側面(4面)にそれぞれ建方治具100を取り付けた場合を想定しており、互いに直交する3軸方向(垂直方向をZ軸、水平方向をX軸及びY軸)とするとともに、各建入れ調整装置(鉛直位置調整手段40)をA、B、C、Dとして説明を行う。
図12に示すように、AとC(X軸方向)、BとD(Y軸方向)は、それぞれ対向する側面に設置された建入れ調整装置である。
【0071】
図8に示すように、制御PCの操作画面から「建入れ開始」ボタンを操作して、誤差計測手段200(トータルステーション)及び建入れ調整装置(鉛直位置調整手段40)に対して建入れの開始を指示すると(S1)、トータルステーションに対して測量開始信号が発信され(S2)、トータルステーションではターゲット(上節柱11に設置されたターゲットシール90)を視準して測量を行うとともに(S3、S4)、測量した位置データと設計値である基準位置データとを比較して誤差値を演算する(S5)。
【0072】
制御PCが誤差値を受信すると(S6)、Z軸の調整工程(S7)、X軸の調整工程(S8)、Y軸の調整工程(S9)を行った後に、再度、Z軸の調整工程(S10)を行い、3軸とも誤差が許容値の範囲内か否かを判断する(S11)。そして、3軸ともに誤差が許容値の範囲内であれば、建入れ調整工程を終了する。
【0073】
一方、3軸のいずれかでも誤差が許容値の範囲を超えている場合には、最初のZ軸の調整工程(S7)に戻り、3軸とも誤差が許容値の範囲内となるまで各調整工程(S7~S10)を繰り返して実施する。
【0074】
<サブルーチン(Z軸の調整)>
次に、Z軸の調整サブルーチンについて説明する。
図9に示すように、Z軸の調整サブルーチンでは、建入れ調整装置を動作させて、その動作確認が完了すると(S7a)、メインルーチンで説明したように、トータルステーションに対して測量指示信号が発信され(S7b)、トータルステーションではターゲット(上節柱11に設置されたターゲットシール90)を視準して測量を行うとともに(S7c、S7d)、測量した位置データと設計値である基準位置データとを比較して誤差値を演算する(S7e)。
【0075】
制御PCが誤差値を受信すると(S7f)、Z軸の誤差が許容値の範囲内か否かを判断し(S7g)、Z軸の誤差が許容値の範囲内であれば、Z軸の調整サブルーチンを終了する。
【0076】
一方、Z軸の誤差が許容値の範囲を超えている場合には、当該誤差が正の値か負の値かを判断する(S7h)。そして、誤差が正の値の場合には、建入れ調整装置のすべて(A、B、C、D)に対して、UP指示(上昇指示)の信号を送信する(Si)。また、誤差が負の値の場合には、建入れ調整装置のすべて(A、B、C、D)に対してDOWN指示(下降指示)の信号を送信する(S7j)。建入れ調整装置では、建入れ調整動作を行い(S7k)、Z軸の誤差が解消するように試みる。そして、Z軸の誤差が許容値の範囲内となるまで、Z軸の調整工程を繰り返して行い、Z軸の誤差が許容値の範囲内となったら、Z軸の調整サブルーチンを終了する。
【0077】
<サブルーチン(X軸の調整)>
次に、X軸の調整サブルーチンについて説明する。
図10に示すように、X軸の調整サブルーチンでは、建入れ調整装置を動作させて、その動作確認が完了すると(S8a)、メインルーチンで説明したように、トータルステーションに対して測量指示信号が発信され(S8b)、トータルステーションではターゲット(上節柱11に設置されたターゲットシール90)を視準して測量を行うとともに(S8c、S8d)、測量した位置データと設計値である基準位置データとを比較して誤差値を演算する(S8e)。
【0078】
制御PCが誤差値を受信すると(S8f)、X軸の誤差が許容値の範囲内か否かを判断し(S8g)、X軸の誤差が許容値の範囲内であれば、X軸の調整サブルーチンを終了する。
【0079】
一方、X軸の誤差が許容値の範囲を超えている場合には、当該誤差が正の値か負の値かを判断する(S8h)。そして、誤差が正の値の場合には、建入れ調整装置Aに対してUP指示(上昇指示)の信号を送信するとともに、建入れ調整装置Cに対してDOWN指示(下降指示)の信号を送信する(S8i)。また、誤差が負の値の場合には、建入れ調整装置Cに対してUP指示(上昇指示)の信号を送信するとともに、建入れ調整装置Aに対してDOWN指示(下降指示)の信号を送信する(S8j)。建入れ調整装置では、建入れ調整動作を行い(S8k)、X軸の誤差が解消するように試みる。そして、X軸の誤差が許容値の範囲内となるまで、X軸の調整工程を繰り返して行い、X軸の誤差が許容値の範囲内となったら、X軸の調整サブルーチンを終了する。
【0080】
<サブルーチン(Y軸の調整)>
次に、Y軸の調整サブルーチンについて説明する。
図11に示すように、Y軸の調整サブルーチンでは、建入れ調整装置を動作させて、その動作確認が完了すると(S9a)、メインルーチンで説明したように、トータルステーションに対して測量指示信号が発信され(S9b)、トータルステーションではターゲット(上節柱11に設置されたターゲットシール90)を視準して測量を行うとともに(S9c、S9d)、測量した位置データと設計値である基準位置データとを比較して誤差値を演算する(S9e)。
【0081】
制御PCが誤差値を受信すると(S9f)、Y軸の誤差が許容値の範囲内か否かを判断し(S9g)、Y軸の誤差が許容値の範囲内であれば、Y軸の調整サブルーチンを終了する。
【0082】
一方、Y軸の誤差が許容値の範囲を超えている場合には、当該誤差が正の値か負の値かを判断する(S9h)。そして、誤差が正の値の場合には、建入れ調整装置Bに対してUP指示(上昇指示)の信号を送信するとともに、建入れ調整装置Dに対してDOWN指示(下降指示)の信号を送信する(S9i)。また、誤差が負の値の場合には、建入れ調整装置Dに対してUP指示(上昇指示)の信号を送信するとともに、建入れ調整装置Bに対してDOWN指示(下降指示)の信号を送信する(S9j)。建入れ調整装置では、建入れ調整動作を行い(S9k)、Y軸の誤差が解消するように試みる。そして、Y軸の誤差が許容値の範囲内となるまで、Y軸の調整工程を繰り返して行い、Y軸の誤差が許容値の範囲内となったら、Y軸の調整サブルーチンを終了する。
【0083】
<制御方法の具体例>
上述した傾き調整工程(S300)の具体例について、
図12に示す模式図を用いて説明する。
図12において、(a)は柱部材10の目標姿勢を示す平面図、(b)は調整前の柱部材10の姿勢を示す立面図、(c)は調整後の柱部材10の目標姿勢を示す立面図である。
図12(a)に示すように、上節柱11は断面四角形となっており、X軸方向の対向する側面に取り付けた建入れ調整装置をそれぞれA、Cとし、Y軸方向の対向する側面に取り付けた建入れ調整装置をそれぞれB、Dとする。
【0084】
図12(b)において、上節柱11がX軸方向において右側に傾いていた(X軸方向の誤差Δxが10mm、Y軸方向の誤差Δyが0mm、Z軸方向の誤差Δzが許容範囲内の1mm)とする。この場合には、建入れ調整装置Aにより上節柱11の左側を下降させ、建入れ調整装置Cにより上節柱11の右側を上昇させることにより、
図12(c)に示すように、上節柱11のX軸方向の傾きを解消する。Y軸方向の傾き調整についても同様であるが、Y軸方向の傾き調整では建入れ調整装置B及び建入れ調整装置Dを用いる。また、Z軸方向については、建入れ調整装置のすべて(A、B、C、D)を上昇または下降させて、上節柱11の位置調整を行う。
【0085】
<誤差の許容範囲>
本発明の実施形態において、許容される誤差値は以下のとおりである。この誤差値は、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向に対して、それぞれ設定されている。
建物の倒れ:e≦H/4000+7(mm) かつe≦30(mm)
柱部材の倒れ:e≦H/1000(mm) かつe≦10(mm)
e:誤差値
H:高さ
【符号の説明】
【0086】
100 建方治具
200 誤差計測手段(トータルステーション)
300 傾き調整制御手段(制御PC、制御ユニット)
10 柱部材
11 上節柱
12 下節柱
20 エレクションピース
30 建方治具本体(接続手段)
31 上部縦溝部
32 下部縦溝部
33 支持鋼板
34 矢板
35 固定ボルト
36 目違い調整ボルト
37 転倒防止ボルト
40 鉛直位置調整手段
41 上下位置調整カム
41a 板状部
41b 円筒部
42 傾き調整ボルト
42a 連結結合穴
43 傾き調整ボルト動作手段
43a 回転軸部
43b 回転駆動手段(電動モーター)
43c 電源手段(バッテリー)
44 収納ケース
50 回転防止手段
51 回転防止板
60 結合固定手段
61a、b キー溝
62 平行キー
63 固定ネジ挿通孔
64 固定ネジ
70 制御ユニット
80 動力ユニット
90 ターゲットシール