(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135713
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
F02B 23/06 20060101AFI20230922BHJP
F02F 3/26 20060101ALI20230922BHJP
F16J 1/09 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
F02B23/06 R
F02B23/06 T
F02B23/06 L
F02F3/26 B
F16J1/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040936
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】口田 征人
(72)【発明者】
【氏名】岡田 公二郎
(72)【発明者】
【氏名】信ヶ原 恵
(72)【発明者】
【氏名】川島 一仁
(72)【発明者】
【氏名】畠 道博
(72)【発明者】
【氏名】中本 圭太
(72)【発明者】
【氏名】外間 章悟
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 諒太
(72)【発明者】
【氏名】菊池 開
(72)【発明者】
【氏名】久峩 隼人
(72)【発明者】
【氏名】木村 洋之
【テーマコード(参考)】
3G023
3J044
【Fターム(参考)】
3G023AA07
3G023AB05
3G023AC05
3G023AD02
3G023AD06
3J044AA20
3J044CA03
3J044DA09
(57)【要約】
【課題】噴霧が均質に拡散しやすい内燃機関を提供する。
【解決手段】内燃機関は、シリンダヘッドと、ピストンの頂面に形成され、前記シリンダヘッドとの間に燃焼室を形成するキャビティと、を備える。前記キャビティは、前記ピストンの中央部に配置される第1面と、前記第1面の周囲に配置され、前記第1面よりも前記シリンダヘッド側に配置される第2面と、前記第2面に設けられ前記第1面側に向けて凹んだ溝部と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッドと、
ピストンの頂面に形成され、前記シリンダヘッドとの間に燃焼室を形成するキャビティと、
を備え、
前記キャビティは、前記ピストンの頂面中央部に配置される第1面と、前記第1面の周囲に配置され、前記第1面よりも前記シリンダヘッド側に配置される第2面と、前記第2面に設けられ前記第1面側に向けて凹んだ溝部と、を有する、
内燃機関。
【請求項2】
前記燃焼室に向けて燃料を噴射する燃料噴射弁をさらに備え、
前記キャビティは、前記第1面から前記シリンダヘッド側に向かって延び、前記溝部または前記第2面に接続される縦面を有し、
前記燃料噴射弁は、前記縦面に向けて燃料を噴射する、
請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記燃焼室に向けて燃料を噴射する燃料噴射弁をさらに備え、
前記燃料噴射弁は、前記溝部に向けて燃料を噴射する、
請求項1または2に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記燃焼室に向けて燃料を噴射する燃料噴射弁をさらに備え、
前記燃料噴射弁は、前記燃料を噴射することによって、第1方向と、前記第1方向と異なる方向の第2方向と、に噴霧を形成し、
前記第1方向の噴霧が前記溝部に向けて形成され、
前記第2方向の噴霧が前記第2面に向けて形成され、
前記第1方向の噴霧と、前記第2方向の噴霧と、が隣接して形成される、
請求項1から3のいずれか1項に記載の内燃機関。
【請求項5】
前記ピストンの摺動方向と直交する面に沿って旋回するスワール流を、前記燃焼室に発生させるスワール流発生手段をさらに備え、
前記第2面は、前記スワール流の旋回方向下流側よりも前記スワール流の旋回方向上流側が前記シリンダヘッドに向けて高く形成される、
請求項1から4のいずれか1項に記載の内燃機関。
【請求項6】
前記溝部の幅が、前記頂面の外周に向けて拡大する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ピストンの頂面にキャビティを有する内燃機関が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の内燃機関は、2段構造のキャビティを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、上段と下段の間の壁に噴霧を当て、ピストン頂面の中央部分と外周部分に拡散するキャビティを開示している。このようなキャビティの場合、頂面の中央部分の噴霧が多すぎる場合もある。
【0005】
本開示の課題は、噴霧が均質に拡散しやすい内燃機関を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る内燃機関は、シリンダヘッドと、ピストンの頂面に形成され、前記シリンダヘッドとの間に燃焼室を形成するキャビティと、を備える。前記キャビティは、前記ピストンの中央部に配置される第1面と、前記第1面の周囲に配置され、前記第1面よりも前記シリンダヘッド側に配置される第2面と、前記第2面に設けられ前記第1面側に向けて凹んだ溝部と、を有する。
【0007】
この内燃機関によれば、第2面に配置された溝を介して噴霧がピストンの頂面周囲に広がる。これによって、第1面と、第2面の両方に噴霧が拡散する。この結果、噴霧が均質に拡散する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、噴霧が均質に拡散しやすい内燃機関を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図5】本開示の第2実施形態によるピストンの上面図。
【
図6】本開示の第3実施形態によるピストンの上面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
以下、本開示の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1に示すように、内燃機関1は、シリンダブロック2と、シリンダヘッド4と、ピストン6と、複数の吸気バルブ8と、複数の排気バルブ10と、燃料噴射弁12と、を備える。本実施形態の内燃機関1は、燃料噴射弁12がシリンダブロック2のシリンダ21に燃料を直接噴射する直噴型のディーゼルエンジンである。また、本実施形態では1つのシリンダ21に2つの吸気バルブ8と、2つの排気バルブ10が配置される。本実施形態の内燃機関1は、シリンダ21が上下方向に配置される例を用いて説明する。
【0012】
また、内燃機関1は、スワール流発生手段を備える。本実施形態のスワール流発生手段は、2つの吸気バルブ8である。本実施形態では、2つの吸気バルブ8のリフト高さが異なることによって、ピストン6の摺動方向(本実施形態では上下方向)と直交する面に沿って吸気が旋回するスワール流を発生させる。本実施形態の内燃機関1は、スワール流が反時計回りに旋回する例を用いて説明する(
図3のS参照)。なお、スワール流発生手段は、このほかシリンダヘッド4の吸気ポートなどの形状をスワール流が発生するように形成したものでもよい。また、スワール流を発生させるバルブなどを設けてもよい。
【0013】
ピストン6は、頂面にキャビティ61を有する。キャビティ61は、ピストン6が上死点の位置にあるときに、シリンダヘッド4との間に燃焼室を形成する。したがって、キャビティ61に供給される混合気は、極力均質であることが好ましい。本実施形態の直噴型ディーゼルエンジンの場合、キャビティ61内に噴射する燃料の噴霧を拡散させて、均質な混合気を形成することが好ましい。
【0014】
図2に示すように、キャビティ61は、第1面62と、第2面63と、溝部64と、縦面65と、外周壁66と、を有する。第1面62は、ピストン6の頂面中央部に配置される。第2面63は、第1面62の周囲に配置される。第2面63は、第1面62よりもシリンダヘッド4側に配置される。本実施形態では、第2面63は、第1面62よりも上方に配置される。第2面63の周囲には、シリンダヘッド4に向かって延びる外周壁66が配置される。外周壁66には、吸気バルブ8および排気バルブ10との干渉を回避するために、第2面に向けて凹んだ複数のバルブリセス66aが周方向に間隔を隔てて配置される。
【0015】
溝部64は、第2面63に複数設けられる。複数の溝部64は、第2面63から第1面62側に向けて凹んだ部分である。複数の溝部64の深さは、第1面62と第2面63との高さよりも浅く、溝部64の底面64aと、第1面62の間に縦面65が延びる。
【0016】
複数の溝部64は、第2面63に放射状に形成される。
図3に示すように、本実施形態では、複数の溝部64が放射状に4つ形成される。したがって、4つの溝部64は、90度ごとに配置される。本実施形態では、溝部64の幅がピストン6の頂面周囲に向かうほど広くなる。言い換えると、溝部64は、第1面62側の入口が狭く頂面周囲に向かうほど広い。これによって、第1面62に残す噴霧と頂面周囲まで飛ばす噴霧の量を調整しやすい。
【0017】
図4に示すように、第2面63は、スワール流の旋回方向下流側よりもスワール流の旋回方向の上流側がシリンダヘッド4に向けて高く形成される。これによって、スワール流が溝部64の側壁64bに押し当てられ乱れる。この結果、溝部64に供給された噴霧がスワール流によって拡散しやすくなり、吸気との混合が促進され、燃焼が良くなる。さらにスワール流が乱れることで、溝部64に供給された噴霧を含む混合気の流速が下がり、熱伝達率が低減する。このため、冷却損失が低減できる。また、溝部64に供給された噴霧がスワール流によって拡散しやすくなり、吸気との混合が促進される。このため、この内燃機関1は、ピストン6の頂面に付着する燃料を減らすことができる。
【0018】
さらに、本実施形態の溝部64の深さは、ピストン6の外周側の方が、第1面62側よりも浅い。これによって、溝部64を通過した噴霧が溝部64との外周側と外周壁66との間に形成されたスワール流によって拡散されやすい。
【0019】
縦面65は、第1面62からシリンダヘッド4に向かって延び、上記の溝部64の底面64a、または第2面63に接続される。
【0020】
図1に示すように、燃料噴射弁12は、燃焼室に向けて燃料を噴射する。本実施形態では、燃料噴射弁12は、キャビティ61の内部に燃料を噴射する。また、本実施形態の燃料噴射弁12は、例えば高圧ポンプ、コモンレールなどの燃料噴射装置に接続され、高圧の燃料を噴射しキャビティ61内に噴霧を形成する。
【0021】
燃料噴射弁12は、縦面65に向けて燃料を噴射する。
図3に示すように、本実施形態では、燃料噴射弁12は、8つの方向に燃料を噴射する。燃料噴射弁12は、8つのうち4つは、溝部64がある方向(第1方向の一例)に向けて燃料を噴射する。燃料噴射弁12は、8つのうち4つは、第2面63がある方向(第2方向の一例)に向けて燃料を噴射する。言い換えると、燃料噴射弁12は、溝部64がある方向と、溝部64がある方向と異なる第2面63がある方向と、に噴霧(
図3のF参照)を形成する。溝部64がある方向の噴霧と、第2面63がある方向の噴霧とは、互いに隣接する。すなわち、本実施形態の燃料噴射弁12は、8つの噴射口を有し、8つの噴射口を、溝部64を狙う噴射口と、第2面63を狙う噴射口と、が交互に配置される。なお、燃料噴射弁12の噴射口に合わせて、第2面63および溝部64を形成してもよい。
【0022】
このように形成された内燃機関1は、燃料噴射弁12から燃料が噴射されると、8つのうち4つの噴霧が溝部64に入り、外周壁66まで噴霧が供給される。外周壁66まで供給された噴霧は、スワール流によって拡散される。一方、8つのうち4つは、第2面63と第1面62を結ぶ縦面65にあたり、噴霧が縦面65によって分割され、分割された一方が第1面62の方に押し戻され、もう一方のみが第2面63に沿って外周壁66まで供給される。これによって、ピストン6の頂面中央部に噴霧が拡散される。このように、この内燃機関1のキャビティ61の形状であれば、燃料を頂面中央部と頂面周囲の両方に均質に拡散させることができる。この結果、混合気も均質となり、燃焼がよくなる。
【0023】
<第2実施形態>
次に本開示の第2実施形態について、
図5を用いて説明する。なお、第2実施形態においても、第1実施形態と異なる点のみ説明する。
【0024】
図5に示すように、第2実施形態におけるキャビティ261は、第1面262と、第2面263と、溝部264と、縦面265と、外周壁266と、を有する。第2実施形態ではキャビティ261の溝部264の数が第1実施形態と異なる。その他の構成は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0025】
第2実施形態では、溝部264が8つ形成される。8つの噴霧は8つの溝部264のすべてに供給される。これによって、第1面262がある頂面中央部付近は燃料噴射弁12から噴射された噴霧の流動が残る。一方、溝部264が増加することによって、頂面外周の凹凸が増え頂面外周の混合気の流動が乱れる。噴霧混合気の流動が乱れると、混合気の流速が下がり、熱伝達率が低減する。この結果、この内燃機関1では、冷却損失が低減できる。
【0026】
<第3実施形態>
次に本開示の第3実施形態について、
図6を用いて説明する。なお、第3実施形態においても、第1実施形態と異なる点のみ説明する。
【0027】
図6に示すように、第3実施形態におけるキャビティ361は、第1面362と、第2面363と、溝部364と、縦面365と、外周壁366と、を有する。第3実施形態ではキャビティ361の溝部364の幅がピストン6の頂面周囲に向かうほど狭くなる点で、第1実施形態と異なる。その他の構成は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0028】
このように、溝部364の幅がピストン6の頂面周囲に向かうほど狭くなることによって、外周壁366に向かうほど、噴霧の流速が高くなる。流速の上がった噴霧は、外周壁366を伝って上向きに強い流れを形成し上下方向に渦巻く。これによって、吸気と噴霧の混合が促進される。さらに、噴霧が上向きに強い流れを形成するため、壁温の低いシリンダ21に向かう火炎を抑制できる。これによって、内燃機関1の冷却損失を低減できる。また、頂面外周へ向かう程、噴霧が溝部364の側壁364bに当たり上下に分割され、第2面363への噴霧の拡散を促進できる。これによって、溝部364の周辺部の広い空間を活用し、噴霧と吸気の混合を促進できる。
【0029】
以上説明した通り、本開示によれば、噴霧が均質に拡散しやすい内燃機関1を提供できる。
【0030】
<他の実施形態>
以上、本実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の変形例は、必要に応じて任意に組み合わせ可能である。
【0031】
(a)例えば、上記第1実施形態では、溝部64の深さがピストン6の外周側の方が、第1面62側よりも浅いキャビティ61の例を用いて説明したが、本開示はこれに限定されない。溝部64の深さは、ピストン6の外周側から第1面62側の噴霧の入り口まで均一であってもよい。ピストン6の頂面外周に向かうほど、第2面63とシリンダヘッド4との間の燃焼室空間は広い。したがって、溝部64の深さをピストン6の外周側から第1面62側の噴霧の入り口まで均一にすることによって、空間が広がる外周ほど、スワール流が側壁64bに当たり乱れやすい。このため、頂面周囲に向かうほど、スワール流による乱流を強く形成できる。この結果、頂面周囲に向かうほど噴霧を拡散することができる。なお、この場合、第1実施形態の溝部64の幅よりも狭い溝を採用してもよい。このように、溝部64の幅を調整することによって、スワール流による乱流の影響を調整してもよい。また、溝部64の深さは、ピストン6の外周側の方を第1面62側よりも深くしてもよい。このように、溝部64の深さを、ピストン6の外周側の方を第1面62側よりも高くすることによって、スワール流による乱流の影響を調整してもよい。
【0032】
(b)上記第1実施形態では、第2面63は、スワール流の旋回方向下流側よりもスワール流の旋回方向の上流側がシリンダヘッド4に向けて高く形成される例を用いて説明したが、本開示はこれに限定されない。第2面63の高さは、スワール流の旋回方向下流側とスワール流の旋回方向上流側とで同じであってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 :内燃機関
2 :シリンダブロック
4 :シリンダヘッド
6 :ピストン
8 :吸気バルブ
10 :排気バルブ
12 :燃料噴射弁
21 :シリンダ
61,261,361:キャビティ
62,262,362:第1面
63,263,363:第2面
64,264,364:溝部
65,265,365:縦面