(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135716
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】振動増幅回路及び電力伝送システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/12 20160101AFI20230922BHJP
H02M 3/28 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
H02J50/12
H02M3/28 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040941
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000157083
【氏名又は名称】トヨタ自動車東日本株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100218280
【弁理士】
【氏名又は名称】安保 亜衣子
(74)【代理人】
【識別番号】100108914
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 壯兵衞
(74)【代理人】
【識別番号】100173864
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 健治
(72)【発明者】
【氏名】間形 哲也
(72)【発明者】
【氏名】櫻庭 弘
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AS17
5H730BB26
5H730BB61
5H730DD02
5H730DD03
5H730DD04
5H730EE02
5H730FF09
5H730FG01
(57)【要約】
【課題】電源電圧以上にまで振動振幅を電圧拡大できる振動増幅回路、及びこの振動増幅回路を給電側共振回路に用い伝送距離が離れた場合であっても二重共振を用いて有効に電力伝送ができる電力伝送システムを提供する。
【解決手段】振動増幅回路は、直流電源5と、直流電源5の高電位側端子に一方の端子を接続した励起素子Q1と、励起素子Q1の他方の端子に一方の端子が接続され励起素子Q1に対し相補的にスイッチング動作する還流制御素子Q2と、励起素子Q1の他方の端子と還流制御素子Q2の一方の端子の接続ノードに一方の端子を接続した送電側コンデンサC1と、送電側コンデンサC1の他方の端子に一方の端子を接続し他方の端子を還流制御素子Q2他方の端子と直流電源5の低電位側端子の接続ノードに接続された送電側コイルL1を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と、
前記直流電源の高電位側端子に一方の端子を接続した励起素子と、
前記励起素子の他方の端子に一方の端子が接続され、前記励起素子と相補的にスイッチング動作する還流制御素子と、
前記励起素子の他方の端子と前記還流制御素子の一方の端子の接続ノードに一方の端子を接続した送電側コンデンサと、
前記送電側コンデンサの他方の端子に一方の端子を接続し、他方の端子を前記還流制御素子の他方の端子と前記直流電源の低電位側端子の接続ノードに接続された送電側コイルと、
を備えることを特徴とする振動増幅回路。
【請求項2】
直流電源と、
前記直流電源の高電位側端子に一方の端子を接続した励起素子と、
前記励起素子の他方の端子に一方の端子を接続し、前記励起素子と相補的にスイッチング動作する還流制御素子と、
前記励起素子の他方の端子と前記還流制御素子の一方の端子の接続ノードに一方の端子を接続した送電側コンデンサと、
前記送電側コンデンサの他方の端子に一方の端子に接続し、他方の端子を前記還流制御素子の他方の端子と前記直流電源の低電位側端子の接続ノードに接続された送電側コイルと、
前記送電側コイルに離間して対向し、前記送電側コイルから無接触で磁気エネルギを受け取る受電側コイルと、
前記受電側コイルに並列接続され前記受電側コイルに蓄積された磁気エネルギを静電エネルギとして蓄積する受電側コンデンサと、
前記受電側コイルに、前記受電側コイルと共に並列接続された負荷と、
を備えることを特徴とする電力伝送システム。
【請求項3】
前記励起素子が導通状態のときに、前記直流電源、前記励起素子、前記送電側コンデンサ及び前記送電側コイルが構成する閉ループで、過渡的な第1給電側共振回路が構成され、
前記第1給電側共振回路がなすRLC直列共振回路の抵抗成分が、前記直流電源の等価内部抵抗、前記送電側コンデンサの寄生抵抗、前記送電側コイルの寄生抵抗及び前記励起素子のオン抵抗を含むことを特徴とする請求項2に記載の電力伝送システム。
【請求項4】
前記還流制御素子が導通状態のときに、前記還流制御素子、前記送電側コンデンサ及び前記送電側コイルが構成する閉ループで過渡的な第2給電側共振回路が構成され、
前記第2給電側共振回路がなすRLC直列共振回路の抵抗成分が。前記送電側コンデンサの寄生抵抗、前記送電側コイルの寄生抵抗及び前記還流制御素子のオン抵抗を含むことを特徴とする請求項3に記載の電力伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源等の高価な交流電源回路を給電側回路に用いない無接触電力伝送システム(ワイヤレス電力伝送システム)に関し、特に減衰振動を逆に増幅する新規な発想に基づいた振動増幅回路、及びこの振動増幅回路を給電側共振回路として用い、給電側共振回路と受電側共振回路の相互による共振(二重共振)により、給電側共振回路から受電側共振回路へ電気エネルギを伝送する電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは、給電側共振回路と受電側共振回路の相互による二重共振を考慮し、過渡応答に着目した非交流理論により、スイッチング電源等の高価な交流電源回路を給電側回路に用いない無接触伝送装置を提案した(特許文献1参照。)。しかしながら、特許文献1に記載された発明では、給電側共振回路において電源電圧までは振幅できるが、それ以上はできないため、遠距離の受電側共振回路に電力を送ることが難しいという課題があった。例えば、送電側コイルと受電側コイルとの間隔(伝送距離)が40mm以上離れると、有効に電力伝送ができなる傾向が、特許文献1に記載された発明にはあった。又、特許文献1に記載された二重共振を用いた非接触電力伝送においては、共振回路に内在する寄生抵抗により振動振幅が減衰するという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】世界知的所有権機関国際事務局国際公開2020/039594号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記問題点を鑑み、本発明は、電源電圧の整数倍にまで、電源電圧の大きさを超えて振動振幅を電圧拡大できる振動増幅回路、及びこの振動増幅回路を給電側共振回路に用いることにより、送電側コイルと受電側コイルとの間隔が40mm以上離れた場合であっても二重共振を用いて有効に電力伝送ができる電力伝送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様は、(a)直流電源と、(b)直流電源の高電位側端子に一方の端子を接続した励起素子と、(c)励起素子の他方の端子に一方の端子が接続され、励起素子と相補的にスイッチング動作する還流制御素子と、(d)励起素子の他方の端子と還流制御素子の一方の端子の接続ノードに一方の端子を接続した送電側コンデンサと、(e)送電側コンデンサの他方の端子に一方の端子を接続し、他方の端子を還流制御素子の他方の端子と直流電源の低電位側端子の接続ノードに接続された送電側コイルを備える振動増幅回路であることを要旨とする。
【0006】
本発明の第2の態様は、(a)直流電源と、(b)直流電源の高電位側端子に一方の端子を接続した励起素子と、(c)励起素子の他方の端子に一方の端子を接続し、励起素子と相補的にスイッチング動作する還流制御素子と、(d)励起素子の他方の端子と還流制御素子の一方の端子の接続ノードに一方の端子を接続した送電側コンデンサと、(e)送電側コンデンサの他方の端子に一方の端子に接続し、他方の端子を還流制御素子の他方の端子と直流電源の低電位側端子の接続ノードに接続された送電側コイルと、(f)送電側コイルに離間して対向し、送電側コイルから無接触で磁気エネルギを受け取る受電側コイルと、(g)受電側コイルに並列接続され受電側コイルに蓄積された磁気エネルギを静電エネルギとして蓄積する受電側コンデンサと、(h)受電側コイルに受電側コイルと共に並列接続された負荷を備える電力伝送システムであることを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電源電圧の整数倍にまで、電源電圧の大きさを超えて振動振幅を電圧拡大できる振動増幅回路、及びこの振動増幅回路を給電側共振回路に用いることにより、送電側コイルと受電側コイルとの間隔が600mm以上と格段に離れた場合であってさえも有効に電力伝送ができる電力伝送システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】本発明の第1実施形態に係る電力伝送システムの一例の概略構造を示す模式図である。
【
図1B】
図2に示した回路の負荷の例を説明する等価回路である。
【
図2】第1実施形態に係る電力伝送システムの一例を構成する1次側回路と2次側回路の概略を示す回路図である。
【
図3】
図2に示した1次側回路の送電側コンデンサの端子間電圧及び送電側コイルの端子間電圧の変化を示す波形図である。
【
図4A】第1実施形態に係る電力伝送システムの1次側回路が、時刻t=t
0=0のタイミングで、励起素子がオン(導通状態)、還流制御素子がオフ(遮断状態)に遷移した初期状態を説明する模式図である。
【
図4B】
図4Aに続き、時刻t
0 < t < t
1の時間領域において1次側回路の励起素子をオン状態、還流制御素子をオフ状態にした、1回目の励起サイクルに設定された回路状態での電磁エネルギの移動を説明する模式図である。
【
図4C】
図4Bに続き、時刻t
1において、1次側回路の励起素子がオフ、還流制御素子がオンに遷移した相補型動作を説明する模式図である。
【
図4D】
図4Cに続き、時刻t
1 < t < t
2の時間領域において1次側回路の励起素子をオフ状態、還流制御素子をオン状態にした、1回目の還流サイクルに設定された回路状態での電磁エネルギの移動を説明する模式図である。
【
図4E】
図4Dに続き、時刻t
2において、1次側回路の励起素子がオン、還流制御素子がオフに遷移し、2回目の励起サイクルが開始する相補型遷移を説明する模式図である。
【
図5A】
図2に示した1次側回路の送電側コンデンサの端子間電圧及び送電側コイルの端子間電圧の変化を示す波形を、
図3に示したタイミングから時刻t
3のタイミングまで延長し、2次側回路の受電側コイルの端子間電変化を示す波形まで含めて示す図である。
【
図5B】
図5Aに示した送電側コンデンサの端子間電圧、送電側コイルの端子間電圧及び受電側コイルの端子間電圧のそれぞれの変化を示す波形を、送信モードのタイミングまで延長して示す波形図である。
【
図6】電気自動車(EV)の電池の充電に第1実施形態に係る電力伝送システムを適用した場合において、コイル間の面間隔(伝送間隔)を調整する間隔制御機構の他の例を模式的に説明する鳥瞰図である。
【
図7】本発明の第1実施形態の第1変形例に係る電力伝送システムの一例を構成する1次側回路と2次側回路の概略を示す回路図である。
【
図8】本発明の第1実施形態の第2変形例に係る電力伝送システムの一例を構成する1次側回路と2次側回路の概略を示す回路図である。
【
図9】本発明の第1実施形態の第3変形例に係る電力伝送システムの一例を構成する1次側回路と2次側回路の概略を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照して、本発明の代表的な実施形態を第1実施形態として説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各部材の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0010】
又、以下に示す第1実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。更に、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」に、「右」が「左」になることは勿論である。
図6に示したような、渦巻きの螺旋の向きも同様に説明の便宜上における単なる選択に過ぎず、実際の設計事情に応じて右巻きを左巻きに、左巻きを右巻きに選択することも可能である。
【0011】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る電力伝送システムは、
図1Aに示すように、受電回路27aを有する車輌31aに無接触でウェイブレット状の電磁エネルギを給電装置29aから二重共振で給電する無接触電力伝送システムである。「ウェイブレット状の電磁エネルギ」とは、定常的な正弦波の振動ではなく、時間的に局在した振動特性を示す電磁エネルギのパケットを意味する。受電回路27aは負荷(蓄電池)6を含む。第1実施形態に係る電力伝送システムは、受電回路27aにウェイブレット状の電磁エネルギを無接触で給電する給電装置29aと、給電装置29aに接続され、給電装置29aに命令を送る1次側操作部33を有している。
【0012】
1次側操作部33には種々の構造や機構が採用可能で、例えば1次側操作部33が撮像装置を備えるようにしてもよい。撮像装置を備える態様においては、撮像装置が撮像した車輌31aの画像から、AI機能により車輌31aの車高が自動的に紐付けられるような機構を設けることができる。
図1Aでは、給電装置29a側の送電側コイルL
1と車輌31a側の受電側コイルL
2とが対向し、送電側コイルL
1から受電側コイルL
2へ無接触でウェイブレット状の電磁エネルギが受電側コイルL
2に無接触で伝送されることを示す模式図を例示している。
【0013】
給電装置29aは、
図1Aに示すように送電側コイルL
1を円盤状の誘電体に収納した給電盤11と、給電盤11を搭載し、送電側コイルL
1と受電側コイルL
2の間隔を制御する間隔制御機構32と、送電側コイルL
1に流れる給電電流及び間隔制御機構32を制御する駆動制御回路34aと、この駆動制御回路34aに接続された伝送データ記憶装置342a及びプログラム記憶装置342b、駆動制御回路34aによって伝送電流が制御される給電盤11から主に構成されている。駆動制御回路34aと受電回路27aとは、送電側コイルL
1と受電側コイルL
2を介して、ウェイブレット状の電磁エネルギを、互いに送受し、二重共振させる。
図1Aに示す態様では、間隔制御機構32は上下移動機構であり、例えば油圧の上下機構、電磁石による上下機構、ボール螺旋をステップモータで回転させるような移動機構等、周知の種々の機構を採用することが可能である。一方、
図6に示す態様では、間隔制御機構32は水平移動機構になるが、同様に油圧の水平移動機構、電磁石による水平移動機構、ボール螺旋水平移動機構等種々の機構を採用することが可能である。
【0014】
図1Aは例示であり、送電側コイルL
1を収納する給電盤11を省略して、送電側コイルL
1を裸の状態で使用することも可能である。
図1Aでは受電側コイルL
2も、円盤状の誘電体からなる受電盤12に収納された態様として例示されているが、受電側コイルL
2を収納する受電盤12を省略して、受電側コイルL
2を裸の状態で使用してもよい。給電側共振回路と受電側共振回路の二重共振によって送電側コイルL
1から受電側コイルL
2に給電される。
【0015】
給電盤11の上面は受電盤12の下面に平行に配置されるように、給電盤11は地面上に設置もしくは埋設される。給電作業前の状態においては、給電盤11の上面が地上の平坦面30に平行に配置されているので、車輌31aが一様な平坦面上を走行して侵入可能である。給電装置29aは、例えば駐車スペースに設けられ、車輌31aの駐車中に、受電盤12に対向することにより車輌31aに搭載された受電盤12に対してウェイブレット状の電磁エネルギを二重共振によって給電する。
【0016】
負荷6は、
図1Bに示すような等価回路で表現される蓄電池であり、給電装置29aから受電盤12を介して二重共振によって供給されるウェイブレット状の電磁エネルギを蓄える。車輌31aは、例えば、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグイン電気自動車(PEV)または電気自動車(EV)等であり、負荷6としての蓄電池に蓄えられた電磁エネルギで走行する。1次側操作部33は、車輌31aの外部からの操作により、給電の開始を示す給電開始信号または給電の停止を示す給電停止信号を給電装置29aに出力する。1次側操作部33がAI機能により車輌31aの車高を決定した場合は、車輌31aの車高のデータも給電装置29aの駆動制御回路34aに送信する。
【0017】
駆動制御回路34aは、給電盤11を制御して、給電側共振回路と受電側共振回路のそれぞれの電磁エネルギの二重共振による移動に関する様々な駆動制御を行う。例えば、駆動制御回路34aは、1次側操作部33から給電開始信号が入力された際に、設定された周期で振動するウェイブレット状の電磁エネルギを給電するように給電盤11の電流を制御する。また、駆動制御回路34aは、受電回路27aから還流した電磁エネルギの振動特性を取得して、給電盤11と受電盤12との間の二重共振による伝送効率が最大となる条件を算出する処理を行う算術論理回路(ALU)を備える。
図1Aに示した伝送データ記憶装置342a及びプログラム記憶装置342bはALUに接続されている。
【0018】
駆動制御回路34aは、
図2に示す励起素子Q1及び還流制御素子Q2の相補的スイッチングをさせる駆動タイミングを選択し、選択した駆動タイミングで、
図2に示した1次側スイッチング素子駆動回路340aを動作させる命令を出力する。1次側スイッチング素子駆動回路340aは、
図2に示した励起素子Q1及び還流制御素子Q2の制御端子に制御信号を送り、励起素子Q1及び還流制御素子Q2を相補的にオン・オフ駆動する。励起素子Q1が、電界効果トランジスタ(FET)、静電誘導トランジスタ(SIT)、ゲートターンオフサイリスタ(GTO)、静電誘導サイリスタ(SIサイリスタ)等のサイリスタであれば、これらの電力用半導体素子のゲート電極が、励起素子Q1の「制御端子」に対応する。励起素子Q1がバイポーラトランジスタ(BJT)であれば、BJTのベース電極が励起素子Q1の制御端子になる。同様に、還流制御素子Q2が、FET、SIT、GTOサイリスタ、SIサイリスタ等であれば、これらの電力用半導体素子のゲート電極が、還流制御素子Q2の「制御端子」に対応する。還流制御素子Q2がBJTであれば、BJTのベース電極が還流制御素子Q2の制御端子になる。
【0019】
ALUには、マイクロチップとして実装されたマイクロプロセッサ(MPU)等を使用してコンピュータシステムを構成することが可能である。又、コンピュータシステムを構成するALUとして、算術演算機能を強化し信号処理に特化したデジタルシグナルプロセッサ(DSP)や、メモリや周辺回路を搭載し組込み機器制御を目的としたマイクロコントローラ(マイコン)等を用いてもよい。或いは、現在の汎用コンピュータのメインCPUをALUに用いてもよい。更に、ALUの一部の構成又はすべての構成をフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)のようなプログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)で構成してもよい。
【0020】
図2に示す駆動制御回路34aに含まれるALUを含んでコンピュータシステムが構成される。駆動制御回路34a等を含むコンピュータシステムにおいて、伝送データ記憶装置342aは、複数のレジスタ、複数のキャッシュメモリ、主記憶装置、補助記憶装置を含む一群の内から適宜選択された任意の組み合わせとすることも可能である。又、キャッシュメモリは1次キャッシュメモリと2次キャッシュメモリの組み合わせとしてもよく、更に3次キャッシュメモリを備えるヒエラルキーを有しても構わない。PLDによって、ALUの一部又はすべてを構成した場合は、伝送データ記憶装置342aは、PLDを構成する論理ブロックの一部に含まれるメモリブロック等のメモリ要素として構成することができる。更に、ALUは、CPUコア風のアレイとPLD風のプログラム可能なコアを同じチップに搭載した構造でもよい。このCPUコア風のアレイは、あらかじめPLD内部に搭載されたハードマクロCPUと、PLDの論理ブロックを用いて構成したソフトマクロCPUを含む。つまりPLDの内部においてソフトウェア処理とハードウェア処理を混在させた構成でもよい。
【0021】
図1Aに示した第1実施形態に係る電力伝送システムの特徴は、
図2に示すように給電側共振回路(34a,2a)と受電側共振回路(27a,3a)で表現できる。給電側共振回路(34a,2a)は、
図1Aに示した給電装置29aの一部をなす回路トポロジであり、駆動制御回路34aと第2給電側共振回路2aを備える。受電側共振回路(27a,3a)は、
図1Aにおいては受電回路27aと受電盤12を含む構造に対応するが、
図2では受電回路27aと2次側回路3aを備える回路トポロジとして示されている。後述するが、
図2に示す給電側共振回路(34a,2a)においては、「第1給電側共振回路」と「第2給電側共振回路2a」が相補的に時分割で過渡的に形成される。このため、
図2の給電側共振回路(34a,2a)は、時分割で過渡的に形成される第2給電側共振回路2aと駆動制御回路34aの組み合わせとして表現されている。給電側共振回路(34a,2a)は、一定電圧(電源電圧)E
0の直流電圧を供給する直流電源5と、直流電源5の高電位側端子(プラス端子)に一方の端子を接続した励起素子Q1と、励起素子Q1の他方の端子に一方の端子を接続され、励起素子Q1に対し相補的にスイッチング動作する還流制御素子Q2と、励起素子Q1の他方の端子に一方の端子を接続した送電側コンデンサC
1を含む。送電側コンデンサC
1の一方の端子は、還流制御素子Q2の一方の端子にも接続されているので、励起素子Q1の他方の端子と還流制御素子Q2の一方の端子の接続ノードに、送電側コンデンサC
1の一方の端子が接続されている。送電側コンデンサC
1の他方の端子は、送電側コイルL
1の一方の端子に接続されている。送電側コイルL
1の他方の端子は、還流制御素子Q2の他方の端子と直流電源5の低電位側端子(マイナス端子)の接続ノードに接続されている。
【0022】
受電側共振回路(27a,3a)の2次側回路3aは、送電側コイルL
1に離間して対向し、送電側コイルL
1から無接触で磁気エネルギを受け取る受電側コイルL
2、受電側コイルL
2に並列接続され受電側コイルL
2に蓄積された磁気エネルギを静電エネルギとして蓄積する受電側コンデンサC
2を有する。
図2から分かるように、給電側共振回路(34a,2a)は、駆動制御回路34aに送電側コイルL
1を加えた構成なので、集合論的に重複部分を排除して表記すると、給電側共振回路(34a,2a)は、給電側共振回路(34a,L
1)と表現できる。同様に、受電側共振回路(27a,3a)は、受電回路27aに受電側コイルL
2を加えた構成なので、重複部分を排除して表記すると、受電側共振回路(27a,3a)は、受電側共振回路(27a,L
2)と表現できる。受電側共振回路(27a,3a)の受電回路27aは、
図2に示すように、負荷側ダイオードD2と負荷6との直列接続回路が、受電側コンデンサC
2及び受電側コイルL
2に対し、それぞれ並列接続された構成になっている。
【0023】
図2において、直流電源5の等価内部抵抗をr
1で示し、送電側コンデンサC
1には寄生抵抗r
p1が存在するものとしている。送電側コイルL
1の他方の端子には、励起素子Q1の他方の端子及び直流電源5の低電位側端子が接続されている。送電側コイルL
1の一方の端子と送電側コイルL
1の他方の端子の間には、電圧計としての検出器28が接続され、送電側コイルL
1の端子間電圧である送電側コイル電圧V
L1が測定可能になっている。検出器28は、給電側共振回路(34a,2a)の振動増幅回路としての電圧拡大効果の測定の他、受電側共振回路(27a,3a)から給電側共振回路(34a,2a)に二重共振で還流した電磁エネルギによる還流電圧の測定も可能である。検出器28の出力は、1次側スイッチング素子駆動回路340aに帰還される。ただし検出器28は必須の回路素子ではなく、設計仕様よっては検出器28を省略してもよい。
【0024】
図2に示す実装回路においては、送電側コイルL
1からの還流電流を考慮し第1の還流ダイオードFWD
1が励起素子Q1としてのMOSFETのソース・ドレイン間に、第2の還流ダイオードFWD
2が還流制御素子Q2としてのMOSFETのソース・ドレイン間に、それぞれ保護素子として並列接続されている。同様に、送電側コイルL
1からの還流電流が直流電源5に還流するのを防ぐため、電源側ダイオードD1が直流電源5と励起素子Q1の間に直列接続されている。
【0025】
図2に示すように、第1実施形態に係る電力伝送システムの給電側共振回路(34a,2a)は、直流電源5、還流制御素子Q2及び送電側コイルL
1が、梯子のように3段の踏桟が縦に並列配置された梯子型回路である。横に倒された梯子の両側枠の一方(
図2の配置において上側枠)を構成するように励起素子Q1と送電側コンデンサC
1の直列回路が構成されている。励起素子Q1と送電側コンデンサC
1の接続ノードに、梯子の3本の踏桟のうちの中央の踏桟に相当する位置する還流制御素子Q2の一方の端子が接続され、励起素子Q1、送電側コンデンサC
1及び還流制御素子Q2でT型回路を構成している。励起素子Q1と還流制御素子Q2が相補型のオン・オフ動作をすることにより、送電側コイルL
1からの還流電流が直流電源5に及ばないように設計されている。
【0026】
送電側コンデンサC1は直流電源5から供給された静電エネルギ及び送電側コイルL1から還流電流として供給された磁気エネルギを蓄積して、送電側コンデンサC1の両端の電圧である1次側充放電電圧VC1を昇圧する。送電側コイルL1は、送電側コンデンサC1から送られた静電エネルギを磁気エネルギとして蓄積し、この磁気エネルギを送電側コンデンサC1に還流すると同時に、2次側回路3aの受電側コイルL2 に磁気的に結合し、2次側回路3aに対し、磁気エネルギを送受する。
【0027】
励起素子Q1と還流制御素子Q2が相補型のオン・オフ動作をしているので、励起素子Q1が導通状態のときは、還流制御素子Q2は遮断状態である。励起素子Q1が導通状態のときは、直流電源5、励起素子Q1、送電側コンデンサC1及び送電側コイルL1が構成する閉ループが、RLC直列共振回路からなる、過渡的な「第1給電側共振回路」を構成している。第1給電側共振回路を構成する直流電源5の等価内部抵抗r1、送電側コンデンサC1の寄生抵抗と送電側コイルL1の寄生抵抗を合成した寄生抵抗rp1、励起素子Q1のオン抵抗ron1による等価浮遊抵抗
R1=rstray1=r1+ron1+rp1 ……(1)
がRLC直列共振回路の抵抗成分である。
【0028】
第1給電側共振回路を過渡的に流れる電流をi
1とすると、励起素子Q1が導通状態のときの第1給電側共振回路の過渡現象は、
【数1】
で表現できる。直流電源5は、励起素子Q1が導通状態において式(2)を満足するように、第1給電側共振回路の送電側コンデンサC
1に電源電圧E
0を供給する。式(2)の左辺第1項は送電側コイルL
1の両端の電圧である送電側コイル電圧をV
L1、左辺第2項は式(1)に示した等価浮遊抵抗による電圧損失、左辺第3項は送電側コンデンサC
1の両端の電圧である1次側充放電電圧V
C1である。
【0029】
式(1)に示した第1給電側共振回路の等価浮遊抵抗R
1が十分小さいとき、即ち、減衰定数α=R
1/(2L
1)、固有角周波数ω
0=(L
1C
1)
-1/2としたとき、
α
2<ω
0
2 ……(3)
が成立するとき、式(2)の解は、過渡現象理論でよく知られているように、
【数2】
となる。式(3)及び(4)の固有角周波数ω
0は、RLC直列共振回路の共振周波数である。第1給電側共振回路と第2給電側共振回路2aは、送電側コンデンサC
1と送電側コイルL
1を共通にしているので、第1給電側共振回路と第2給電側共振回路2aの共振周波数は、どちらもω
0=(L
1C
1)
-1/2である。第1給電側共振回路を過渡的に流れる電流i
1は、式(4)に示すように、周波数(ω
0
2-α
2)
1/2の正弦波で振動しながら、振動ピーク(振幅)の包絡線がe
―αtで指数関数的に減衰する不足制動(減衰振動)の波形を示す。
【0030】
一方、還流制御素子Q2が導通状態のときは、還流制御素子Q2、送電側コンデンサC1及び送電側コイルL1が構成する閉ループが、RLC直列共振回路からなる過渡的な「第2給電側共振回路2a」を構成している。よって、上述したとおり、第1実施形態に係る電力伝送システムにおいては、励起素子Q1と還流制御素子Q2に相補型の切り替え動作をさせることにより、第1給電側共振回路と第2給電側共振回路2aとを時分割で切り替えている。送電側コンデンサC1の寄生抵抗と送電側コイルL1の寄生抵抗を合成した寄生抵抗rp1、還流制御素子Q2のオン抵抗ron2とすると、
R2=rstray2=ron2+rp1 ……(5)
が、第2給電側共振回路2aを構成するRLC直列共振回路の抵抗成分R2である。
【0031】
第2給電側共振回路2aを過渡的に流れる電流をi
2とすると、還流制御素子Q2が導通状態のときの第2給電側共振回路2aの過渡現象は、
【数3】
で表現できる。式(6)の左辺第1項は送電側コイルL
1の両端の電圧である送電側コイル電圧をV
L1、左辺第2項は式(5)に示した等価浮遊抵抗による電圧損失、左辺第3項は送電側コンデンサC
1の両端の電圧である1次側充放電電圧V
C1である。
【0032】
式(2)の両辺をtで微分した結果を式(7a)で示し、式(6)の両辺をtで微分した結果を式(7b)で示すと、いずれも同じ形式の微分方程式になることが分かる。
【数4】
即ち、式(7a)及び式(7b)の一般解として、式(3)の等価浮遊抵抗R
1が十分小さいという条件が成り立つときには、A
1,A
2を係数として、第1給電側共振回路及び第2給電側共振回路2aを流れる電流i
j(j=1,2)は、いずれも、
【数5】
の形式で変化することが分かる。
【0033】
式(2)と式(6)の違いは境界条件であり、係数A1,A2は境界条件で決められる。したがって、時分割された給電側共振回路(34a,2a)において第1給電側共振回路を流れる電流i1も、時分割された第2給電側共振回路2aを流れる電流i2も、いずれも周波数(ω0
2-α2)1/2の正弦波で振動しながら、指数関数的に減衰する不足制動(減衰振動)の波形を示す。第1実施形態に係る電力伝送システムの給電側共振回路(34a,2a)においては、励起素子Q1と還流制御素子Q2が相補型のオン・オフ動作をすることにより、時分割された第1給電側共振回路の減衰振動の初期振動と、時分割された第2給電側共振回路2aの減衰振動の初期振動を交互に組み合わせた「複合振動」で、給電側共振回路(34a,2a)における振動ピーク値を増幅させており、給電側共振回路(34a,2a)は「振動増幅回路」として機能している。減衰振動の初期振動のみを切り取って交互に組み合わせているので、実際には複合振動は減衰振動にはならず電圧が拡大する「増幅振動」になる。
【0034】
式(4)で例示されるような減衰振動の初期振動を切り取って、第1給電側共振回路及び第2給電側共振回路2aで交互に繋ぎ合わせて複合振動を生成する処理を、励起素子Q1及び還流制御素子Q2が制御している。即ち、励起素子Q1及び還流制御素子Q2は、第1給電側共振回路における励起サイクルの動作、第2給電側共振回路2aにおける還流サイクルの動作を交互に繰り返し、給電側共振回路(34a,2a)の複合振動を電圧拡大するように生成し、複合振動の振動ピーク値が所望の値になったとき、
図5Bに示すように、送信モードに切り替え、給電側共振回路(34a,2a)で生成された高電圧の複合振動の電気的エネルギを受電側共振回路(27a,3a)に送信する。「送信モード」においては、励起素子Q1が常時遮断状態、還流制御素子Q2が常時を導通状態の相補的動作になっている。
【0035】
このように、「増幅モード」において励起素子Q1及び還流制御素子Q2の相補的繰り返し動作を特定の回数実施し、所望の振幅値まで増幅させ、「送信モード」において、増幅モードの動作で所望の振幅値まで増幅した給電側共振回路(34a,2a)の電気的エネルギを、二重共振をもちいて、受電側共振回路(27a,3a)に送信する動作を、1次側スイッチング素子駆動回路340aが駆動制御する。即ち、1次側スイッチング素子駆動回路340aは、給電側共振回路(34a,2a)を「振動増幅回路」として用いてウェイブレット状の高電圧の電磁エネルギを発生させ、更に給電側共振回路(34a,2a)における共振と受電側共振回路(27a,3a)における共振を、二重共振をさせる動作を駆動制御する。増幅モードにおいては、励起素子Q1が導通状態のとき「励起サイクル」となり、還流制御素子Q2が導通状態のとき「還流サイクル」になる。増幅モードにおいては、励起サイクルと還流サイクルが交互に周期的に繰り返される。増幅モードにおける励起サイクルと還流サイクルの繰り返し動作により、電源電圧E0が電源電圧E0よりも大きな電圧にまで拡大されて、大きな振幅の振動になり、給電側共振回路(34a,2a)の大きな振幅の電気振動のエネルギが、送信モードで2次側回路3aに送信される。
【0036】
ただし、増幅モード中にも、給電側共振回路(34a,2a)から2次側回路3aへの電気エネルギの漏洩による送信がある。ここで「電源電圧E
0」は、
図2に示す直流電源5の端子間電圧E
0である。増幅モードで励起サイクルと還流サイクルの繰り返し動作により、RLC直列共振回路の減衰振動が、逆に振動ピークが次第に拡大される増幅振動になるように電圧拡大がされる。即ち、駆動制御回路34aを構成するALUは、1次側スイッチング素子駆動回路340aが、所望のタイミングで励起サイクルと還流サイクルの繰り返し動作するための、固有角周波数ω
0=(L
1C
1)
-1/2を決定するための論理演算を、予備実験等の結果を必要なデータとして用いて行うことが可能である。ALUは更に、増幅モードにおける励起サイクルと還流サイクルの繰り返し回数を決定するための論理演算を、予備実験等の結果をデータに用いて行うことが可能である。ALUは更に、増幅モードの停止と同時に送信モードに切り替えるためのタイミングと、送信モードの期間、及び送信モードから増幅モードに戻るタイミングを決定するための論理演算を、予備実験等の結果をデータに用いて行うことが可能である。そして、ALUは論理演算の結果を、命令として1次側スイッチング素子駆動回路340aに送信する。更に、駆動制御回路34aを構成するALUは、給電側共振回路(34a,2a)と受電側共振回路(27a,3a)とが、送電側コイルL
1と受電側コイルL
2を介して二重共振をすることができるように、必要な命令を駆動制御回路34aに送信して、駆動制御回路34aを制御する。
【0037】
第1実施形態に係る電力伝送システムの給電側共振回路(34a,2a)は、励起素子Q1と還流制御素子Q2の相補的スイッチング動作によって、RLC直列共振回路に固有な過渡的な減衰振動を、減衰する前に初期振動で切り取っている。給電側共振回路(34a,2a)において、減衰振動を逆に電源電圧E
0よりも大きな特定振幅値まで次第に増幅する増幅振動に変換することができ、大振幅のウェイブレット状の電磁エネルギの振動が実現できる。したがって、第1実施形態に係る電力伝送システムによれば、
図6に例示するように、送電側コイルと受電側コイルとの間隔(伝送距離)dが600mm以上離れた場合であっても、有効に電力伝送が可能になる。電源電圧E
0を供給する直流電源5は、擬似的な定電圧源でよく、単に整流したのみの簡単な構造で、大きなリップル成分を含む波形の電源でもよい。即ち、直流電源5にはリップル成分を極力減らすための複雑な平滑回路等を含む精密且つ複雑な回路は不要であり、直流電源5の制御回路や周辺回路は単純で壊れにくくなり、安価になる。又、給電側共振回路(34a,2a)や二重共振現象は、交流理論に依拠していないので、精度の高い交流成分を生成する高周波インバータやスイッチング電源も不要である。このように、高価な定電圧源、高周波インバータ、スイッチング電源等の複雑かつ高価な回路を用いていないので、給電側共振回路(34a,2a)の制御回路や周辺回路も単純で壊れにくくなる。よって、安価な直流電源5が採用できる給電側共振回路(34a,2a)は、回路設計が容易でしかも安価になる。
【0038】
受電側共振回路(27a,3a)の受電回路27aを構成する負荷6は、例えば
図1Aに例示した車輌31aの車載用のリチウム(Li)イオン電池等の充電式電池が採用可能である。
図1Bでは、例示的にリチウムイオン電池の等価回路を抵抗とコンデンサの直並列回路で模式的に示している。リチウムイオン電池には集電体や電界液の抵抗、電池内の界面にできる電気的2重層のコンデンサや抵抗が含まれる。
図2に示すように、負荷側ダイオードD2は、アノードが2次側回路3a側、カソードが負荷6側を向くように接続され、充電電流I
Cの流れる方向を一方向に限定している。
図2では、負荷6のオン抵抗を含む浮遊抵抗をr
2で示し、受電側コンデンサC
2には寄生抵抗r
p2が存在するものとしている。したがって、受電側共振回路(27a,3a)は、受電側コイルL
2、受電側コンデンサC
2、浮遊抵抗をr
2及び寄生抵抗r
p2を備えたRLC共振回路である。
【0039】
[A:増幅モード]
以下において、第1給電側共振回路と第2給電側共振回路2aの共振周波数で決まるスイッチング周期(2π/ω
0)の1/2の周期(2π/ω
0)に区切って、電源電圧E
0の整数倍にまで振動振幅を電圧拡大する増幅モードの動作を、時系列順に説明する。
- (a-1) 第1励起サイクル:t
0 ≦ t < t
1 -
励起素子Q1と還流制御素子Q2を相補的にオン・オフ駆動した場合の実測によって得られた1次側充放電電圧V
C1及び送電側コイル電圧V
L1の過渡応答波形を
図3に示す。
図3に示す過渡応答波形は、
図6の模式図で定義したような伝送距離d=600mmの過渡現象を説明している。伝送距離dが長くなるに従い等価結合係数Kが小さくなり、
図3に示す過渡応答波形は、等価結合係数K=0.05の場合に対応する。等価結合係数Kが小さくなると、給電側共振回路(34a,2a)と受電側共振回路(27a,3a)間の二重共振の作用が弱くなる。
【0040】
なお、第1実施形態に係る電力伝送システムは、非交流理論に依拠する過渡現象論であり、交流理論とは区別する必要がある。しかしながら、定常状態を規定する交流理論から導かれる結合係数K
ACと等価な、過渡応答時に定義される非定常状態における擬結合係数を「等価結合係数k」と定義して交流理論と対応させている。交流理論とは異なり等価結合係数kは、厳密には動的相互インダクタンスM=M(t)と同様に、時間に依存するパラメータk=k(t)である。過渡現象を考慮する非交流理論においても、給電側共振回路(34a,2a)の回路特性に内在する時定数と受電側共振回路(27a,3a)の回路特性に内在する時定数との間の相互作用としての過渡現象(過渡応答相互誘導)に対し、交流理論の結合係数K
ACと同様な「磁気的結合度」である等価結合係数kで評価することができる。
図3に示す過渡応答波形における等価結合係数K=0.05は、定常状態を規定する交流理論における結合係数K
ACとほぼ等価な値として近似できる。
【0041】
第1実施形態では、負荷6の充電電圧VC
Sの初期状態における値は、充電完了電圧に近い(満充電に近い)、高い値であると仮定する。還流制御素子Q2をオフ状態(遮断状態)に保って、
図4Aに示すように、t=t
0=0で励起素子Q1をオン状態(導通状態)にすると、第1給電側共振回路に直流電源5による電源電圧E
0がステップ入力されるが、式(2)の関係を満足する必要がある。式(2)の左辺第2項の等価内部抵抗r
stray1=R
1による電圧損失が十分に小さく無視できる場合は、式(2)の左辺には第1項の送電側コイル電圧をV
L1と第3項の1次側充放電電圧V
C1が残り、
V
C1+V
L1=E
0 ……(9)
のように、近似的な簡略表現が可能である。
【0042】
直流電源5は、励起素子Q1が導通状態において式(9)を満足するように、第1給電側共振回路の送電側コンデンサC
1に電源電圧E
0を供給する。時刻t=t
0=0の時点で、送電側コンデンサC
1は充電されておらず1次側充放電電圧V
C1=0であるので式(9)から、
E
0=V
L1(t=t
0=0)=ΔV
L10 ……(10)
となる必要があり、
図3に実線で示すように、送電側コイル電圧V
L1は、瞬時にΔV
L10=E
0のインパルス上昇をする。
【0043】
式(2)の左辺第3項から、1次側充放電電圧V
C1は式(11)のように表現される。式(11)のt=t
0=0では、V
C1=0Vである。t=t
0のステップ入力後の第1半周期のt
0 ≦ t < t
1では、
図3に示すように1次側充放電電圧V
C1が上昇を開始する。送電側コンデンサC
1への充電電流は式(11)に従って上昇を開始するが、第1半周期のt
0 < t < t
1の時間領域では、式(11)が示す振動波形は、最大振幅を有する初期振動のみが切られた半周期の振動波形として残る:
【数6】
【0044】
一方、式(2)の左辺第1項及び式(9)から、送電側コイル電圧V
L1は式(12)のように表現される。
【数7】
式(11)のt=t
0=0では、V
C1=0Vであり、式(12)のt=t
0=0では、V
L=E
0Vである。時刻t=t
0=0における式(10)で示したΔV
L10=E
0は、送電側コイルL
1に流入する電流を阻止するよう逆起電力となる。t=t
0のステップ入力後のt
0 < t < t
1では、
図4Bに示すように、送電側コンデンサC
1への充電電流が流れ、式(11)に従って、1次側充放電電圧V
C1が上昇を開始する。一方、
図3から分かるように、送電側コイルL
1に蓄積された磁気エネルギが送電側コンデンサC
1への充電電流として流れ、式(12)に従って、送電側コイル電圧V
L1は下降を開始する。送電側コイル電圧V
L1は式(12)に従って下降を開始するが、第1半周期のt
0 < t < t
1の時間領域では、式(12)が示す振動波形は、最大振幅を有する初期振動のみが切られた半周期の振動波形として残る。
【0045】
式(11)において、ω
0
2 ≫ α
2と見なせれば、式(11)は、
V
C1≒E
0(1-e
-αtcosω
0t) ……(13)
と表現できる。同様に式(12)において、ω
0
2 ≫ α
2と見なせれば、式(12)は、
V
L1≒E
0e
-αtcosω
0t ……(14)
と表現できる。時刻t=t
1=π/ω
0において、送電側コンデンサC
1への充電が完了しcosω
0t
1=-1となれば、式(12)から1次側充放電電圧V
C1は
図3に破線で示すような最大値
【数8】
となる。即ちRLC直列共振回路においてよく知られた現象である「電圧拡大作用」が時刻t=t
1において発生している。電圧拡大作用とは、過渡現象に依拠した効果である。
【0046】
t=t
0のステップ入力後のt
0 < t < t
1では、送電側コイルL
1は、送電側コンデンサC
1へ充電電流を還流電流として放出する。このため、送電側コイルL
1の端子間電圧である送電側コイル電圧V
L1は、式(9)及び(13)を満足するように、1次側充放電電圧V
C1の増大と共に、
図3に実線で示すように減少する。(t
1 -t
0)/2=t
1 /2=π/(2ω
0)のタイミングにおいて、cosω
0t=0となる。その後、送電側コイル電圧V
L1は、π/2<ω
0t<πの領域において、更に式(9)及び(13)を満足するように、1次側充放電電圧V
C1の増大と逆位相で、負の値を維持しながら更に減少する。
図3に破線で示すように、時刻t=t
1=π/ω
0の直前において1次側充放電電圧V
C1≒2E
0に近づいたとき、式(9)を満足するためには、送電側コイル電圧V
L1≒-E
0になる必要がある。
【0047】
- (a-2) 第1還流サイクル:t
1≦ t < t
2 -
1次側充放電電圧V
C1が最大値になった時刻t=t
1=π/ω
0で
図4Cに示すように、励起素子Q1をオフ(遮断状態)にし、還流制御素子Q2をオン(導通状態)にする相補型スイッチング遷移を行う。t=t
1で励起素子Q1をオフにし、還流制御素子Q2をオンにすると、還流制御素子Q2、送電側コンデンサC
1及び送電側コイルL
1が構成するRLC直列共振回路からなる第2給電側共振回路2aによる還流サイクルの動作が開始される。このため、時刻t=t
1において、送電側コイル電圧V
L1の変化を示す式(13)及び送電側コイル電圧V
L1の変化を示す式(14)は、最初の振動で切られて減衰振動にならない。第2給電側共振回路2aによる還流サイクルの動作においては、式(6)の関係を満足する必要がある。式(6)の左辺第2項の等価内部抵抗r
stray2=R
2による電圧損失が十分に小さく無視できる場合は、式(6)の左辺には第1項の送電側コイル電圧をV
L1と第3項の1次側充放電電圧V
C1が残り、
V
C1+V
L1=0
……(16)
のように、近似的な簡略表現が可能である。
【0048】
図3から分かるように、t=t
1の直前のタイミングでは、1次側充放電電圧V
C1(t→t
1)≒2E
0で、送電側コイル電圧V
L1(t→t
1)≒-E
0である。しかし、V
C1(t=t
1)≒2E
0であれば式(16)から、
V
L1(t=t
1)=V
L1(t→t
1)+ΔV
L11≒-2E
0……(17)
となる必要がある。このため、
図3に実線で示すように、時刻t=t
1において、送電側コイル電圧V
L1は、瞬時にΔV
L11=-E
0のインパルス的な急下降の電圧遷移をする。式(17)と式(14)を比較すると、第2半周期のt
1 ≦ t < t
2では、送電側コイル電圧V
L1は、t
1相当分時間軸方向にシフトして、
V
L1≒2E
0e
-α(t-t1)cosω
0(t-t
1) ……(18)
で表現される必要があることが分かる。時刻t=t
1において、送電側コイル電圧V
L1の変化を示す式(13)は、式(18)が示す振動に切り替えられる。
【0049】
式(18)の右辺指数表示部に記載されたt1の表現の数字1は下付の添え字である。式(16)から1次側充放電電圧VC1も、
VC1≒-2E0e-α(t-t1)cosω0(t-t1) ……(19)
と、表現される必要があることが分かる。時刻t=t1において、送電側コイル電圧VL1の変化を示す式(14)は、式(19)に切り替えられる。式(18)と同様に、式(19)の右辺指数表示部に記載されたt1の表現の数字1は下付の添え字である。t1 ≦ t < t2のタイミングにおいて、e-α(t-t1) はe-α(t-t1)≒1と近似できる。即ち、LCR直列共振回路の減衰振動は、t1 ≦ t < t2のタイミングでは、式(13)及び(14)の減衰振動とは異なる、新たな初期振動として、2E0の大きな振幅の振動の過渡応答波形を示す。式(13)と式(19)を比較すると、t1相当分時間軸方向にシフトした時刻t=t1における境界条件において、直流電源5から直流電圧2E0が送電側コンデンサC1に供給された状態に、初期状態が変更されたことに等価である。このように、励起素子Q1と還流制御素子Q2を相補的にオン・オフ制御し、第1給電側共振回路における励起サイクルから第2給電側共振回路2aにおける還流サイクルに遷移することにより、直流電源5が供給する電源電圧E0を2倍に昇圧することができる。
【0050】
即ち、
図4Cに示すように、t=t
1で励起素子Q1をオフ状態に、還流制御素子Q2をオン状態にする相補型遷移をすると、第2給電側共振回路2aに直流電源5による仮想的な等価電源電圧2E
0が初期条件変更された状態と等価な回路状態に初期値が変更されたことになる。しかし、この場合も、式(16)の電圧の関係を満足する必要がある。t
1 ≦ t < t
2の時間領域では、1次側充放電電圧V
C1は式(19)のように電源電圧の等価的拡大がされる。式(19)のt=t
1では、初期条件V
C1=2E
0である。t=t
1の初期条件変更後のt
1 ≦ t < t
2では、
図4Dに示すように、送電側コンデンサC
1からの放電電流が還流制御素子Q2を介して送電側コイルL
1に流れ、送電側コンデンサC
1に蓄積された静電エネルギが減少するので、式(19)に従って、1次側充放電電圧V
C1が下降を開始する。
【0051】
一方、送電側コイル電圧V
L1は式(18)のように電源電圧の等価的拡大がされる。式(19)のt=t
1では、V
C1=2E
0であるので、式(16)の要請から式(18)のt=t
1での値は、V
L=-2E
0である。t=t
1の初期条件変更後のt
1 ≦ t < t
2では、
図3から分かるように、送電側コイルL
1には送電側コンデンサC
1からの放電電流が磁気エネルギとして流れ込み、式(18)に従って、送電側コイル電圧V
L1は上昇を開始する。
【0052】
即ち、時刻t=t
2=2π/ω
0において、送電側コンデンサC
1からの放電が完了しcosω
0t
2=1となれば、式(19)が示すように、1次側充放電電圧V
C1は
図3に破線で示すような最小値-2E
0となる。一方、t=t
1の初期条件変更後のt
1 ≦ t < t
2では、送電側コイルL
1は、送電側コンデンサC
1からの放電電流を磁気エネルギとして蓄積する。このため、送電側コイルL
2の端子間電圧である送電側コイル電圧V
L1は、式(16)及び(18)を満足するように、1次側充放電電圧V
C1の減少と共に、
図3に実線で示すように増大する。t=3π/(2ω
0)のタイミングにおいて、cosω
0t=0となるので、送電側コイル電圧V
L1=0となる。1次側充放電電圧V
C1も、
図3に破線で示すようにt=3π/(2ω
0)のタイミングにおいて、cosω
0t=0となるので、1次側充放電電圧V
C1=0となる。
【0053】
送電側コイル電圧V
L1は、3π/2<ω
0t<2πの領域において、更に式(16)及び(18)を満足するように、1次側充放電電圧V
C1の減少と逆位相で、正の値の領域で更に増大する。1次側充放電電圧V
C1は、3π/2<ω
0t<2πの領域において、更に式(16)及び(19)を満足するように、送電側コイル電圧V
L1の増大と逆位相で、負値の領域で更に減少する。しかしながら、時刻t=t
2において、送電側コイル電圧V
L1の変化を示す式(18)及び1次側充放電電圧V
C1の変化を示す式(19)は、最初の振動で切られて、振動が連続したRLC直列共振回路の減衰振動にならない。
図3に破線で示すように時刻t=t
2=2π/ω
0の直前において1次側充放電電圧V
C1≒-2E
0に近づいたとき、式(16)を満足するためには、送電側コイル電圧V
L1≒2E
0になる必要がある。
【0054】
- (a-3) 第2励起サイクル:t
2≦ t < t
3 -
1次側充放電電圧V
C1が最小値になった時刻t=t
2=2π/ω
0で
図4Eに示すように、還流制御素子Q2をオフにし、励起素子Q1をオンにする相補型スイッチング遷移を行う。t=t
2で還流制御素子Q2をオフにし、励起素子Q1をオンにすると、直流電源5、励起素子Q1、送電側コンデンサC
1及び送電側コイルL
1が構成するRLC直列共振回路からなる第1給電側共振回路による励起サイクルの動作が開始される。第1給電側共振回路による励起サイクルの動作においては、式(9)の関係を満足する必要がある。
【0055】
図3から分かるように、t=t
2の直前のタイミングでは、1次側充放電電圧V
C1(t→t
2)≒-2E
0で、送電側コイル電圧V
L1(t→t
2)≒2E
0である。しかし、V
C1(t=t
2)≒2E
0であれば式(9)から、
V
L1(t=t
2)=V
L1(t→t
2)+ΔV
L12≒3E
0 ……(20)
となる必要がある。このため、
図3に実線で示すように、時刻t=t
2において、送電側コイル電圧V
L1は、瞬時にΔV
L12=E
0のインパルス的な急上昇の電圧遷移をする。
【0056】
式(20)と式(14),(18)を比較すると、第3半周期のt2 ≦ t < t3では、送電側コイル電圧VL1は、t2相当分時間軸方向にシフトして、
VL1≒3E0e-α(t-t2)cosω0(t-t2) ……(21)
で表現される必要があることが分かる。式(21)の右辺指数表示部に記載されたt2の表現の数字2は下付の添え字である。式(9)を考慮すると、式(21)から1次側充放電電圧VC1も、
VC1≒E0{1-3e-α(t-t2)cosω0(t-t2)} ……(22)
と、表現される必要があることが分かる。式(21)と同様に、式(22)の右辺指数表示部に記載されたt2の表現の数字2は下付の添え字である。t2 ≦ t < t3のタイミングにおいて、e-α(t-t2) はe-α(t-t2)≒1と近似できる。
【0057】
即ち、時刻t=t2において、送電側コイル電圧VL1の変化を示す式(18)は式(21)に切り替えられ、1次側充放電電圧VC1の変化を示す式(19)は、式(22)に切り替えられる。この結果、式(18)及び式(19)の変化は、第2半周期のt1 ≦ t < t2の時間領域に、最大振幅をなす初期振動の半周期相当の波形として残る。LCR直列共振回路の減衰振動の波形は、第3半周期のt2 ≦ t < t3のタイミングでは、式(21)及び式(22)が示す新たな初期振動として、3E0の大きな振幅の振動の過渡応答波形を示す。式(13),(19)と比較すると、式(22)はt2相当分時間軸方向にシフトしたt=t2における境界条件において、直流電源5から直流電圧3E0が供給された状態に、初期状態が変更されたことと等価な技術的効果を意味している。このように、励起素子Q1と還流制御素子Q2を相補的にオン・オフ制御し、第1給電側共振回路における励起サイクルと第2給電側共振回路2aにおける還流サイクルの切り替えを繰り返すことにより、直流電源5が供給する電源電圧E0を、等価的に3倍に昇圧することができる。
【0058】
即ち、
図4Eに示すように、t=t
2で励起素子Q1をオン状態に、還流制御素子Q2をオフ状態にすると、式(21)及び式(22)が示す新たな振動波形に切り替わり、直流電源5から仮想的な等価電源電圧3E
0が供給された新たな回路状態に初期値が変更されたことになる。第1給電側共振回路に直流電源5から等価電源電圧3E
0が供給され、式(21)及び式(22)が示す新たな振動波形に切り替わった場合も、式(9)の電圧の関係を満足する必要がある。t
2 ≦ t < t
3の時間領域では、1次側充放電電圧V
C1は式(22)のように電源電圧の等価的拡大がされる。式(22)のt=t
2=2π/ω
0では、初期条件V
C1=-2E
0である。t=t
2の初期条件変更後のt
2 ≦ t < t
3では、
図4Bに示したのと同様に、送電側コンデンサC
1への充電電流が直流電源5から励起素子Q1を介して流れ込み、送電側コンデンサC
1に静電エネルギが蓄積されるので、式(22)に従って、
図5Aに破線で示すように1次側充放電電圧V
C1が上昇を開始する。
【0059】
一方、送電側コイル電圧V
L1は式(21)のように見かけ上、電源電圧の等価的拡大がされて表現される。式(22)のt=t
2では、V
C1=-2E
0であるので、式(9)の要請から式(21)のt=t
2での値は、V
L=3E
0である。t=t
2の初期条件変更後のt
2 ≦ t < t
3では、
図5Aから分かるように、送電側コイルL
1に蓄積された磁気エネルギが送電側コンデンサC
1への充電電流として流れ込み、式(21)に従って、送電側コイル電圧V
L1は下降を開始する。
図5Aは
図3を延長した波形図であるので、
図3と同様に、伝送距離d=600mmにおいて、等価結合係数K=0.05の場合の過渡応答波形を意味している。
【0060】
時刻t=t
3=3π/ω
0において、送電側コンデンサC
1からの充電が完了しcosω
0t
3=-1となれば、式(22)が示すように、1次側充放電電圧V
C1は
図5Aに破線で示すような最大値4E
0となる。t=t
2の初期条件変更後のt
2 ≦ t < t
3では、送電側コイルL
1は、送電側コンデンサC
1への充電電流として磁気エネルギとして放出する。このため、送電側コイルL
2の端子間電圧である送電側コイル電圧V
L1は、式(9)及び(21)を満足するように、1次側充放電電圧V
C1の増大と共に、
図5Aに実線で示すように減少する。t=5π/(2ω
0)のタイミングにおいて、cosω
0t=0となるので、送電側コイル電圧V
L1=0となる。1次側充放電電圧V
C1も、
図5Aに破線で示すようにt=5π/(2ω
0)のタイミングにおいて、cosω
0t=0となるので、1次側充放電電圧V
C1=0となる。
【0061】
送電側コイル電圧V
L1は、5π/2<ω
0t<3πの領域において、更に式(9)及び(21)を満足するように、1次側充放電電圧V
C1の増大と逆位相で、負の値の領域で更に減少する。1次側充放電電圧V
C1は、5π/2<ω
0t<2πの領域において、更に式(9)及び(22)を満足するように、送電側コイル電圧V
L1の減少と逆位相で、正値の領域で更に増大する。
図5Aに破線で示すように、時刻t=t
3=3π/ω
0において1次側充放電電圧V
C1≒4E
0に近づいたとき、式(9)を満足するためには、送電側コイル電圧V
L1≒-3E
0になる必要がある。
【0062】
- (a-4) 第2還流サイクル:t3 ≦ t < t4 -
1次側充放電電圧VC1が最大値になった時刻t=t3=3π/ω0で 励起素子Q1をオフにし、還流制御素子Q2をオンにする相補型スイッチング遷移を行う。t=t3で励起素子Q1をオフにし、還流制御素子Q2をオンにすると、還流制御素子Q2、送電側コンデンサC1及び送電側コイルL1が構成するRLC直列共振回路からなる第2給電側共振回路2aによる還流サイクルの動作が開始される。第2給電側共振回路2aによる還流サイクルの動作においては、式(16)の関係を満足する必要がある。
【0063】
図5Aから分かるように、t=t
3の直前のタイミングでは、1次側充放電電圧V
C1(t→t
3)≒4E
0で、送電側コイル電圧V
L1(t→t
3)≒-3E
0である。しかし、V
C1(t=t
3)≒4E
0であれば式(16)から、
V
L1(t=t
3)=V
L1(t→t
3)+ΔV
L13≒-4E
0……(23)
となる必要がある。このため、
図5Aに実線で示すように、時刻t=t
3において、送電側コイル電圧V
L1は、瞬時にΔV
L13=-E
0のインパルス的な急下降の電圧遷移をする。
【0064】
式(23)と式(14),(18),(21)を比較すると、第4半周期のt3 ≦ t < t4では、送電側コイル電圧VL1は、t3相当分時間軸方向にシフトして、
VL1≒4E0e-α(t-t3)cosω0(t-t3) ……(24)
で表現される必要があることが分かる。式(24)の右辺指数表示部に記載されたt3の表現の数字3は下付の添え字である。式(16)を考慮すると、式(24)から1次側充放電電圧VC1も、
VC1≒-4E0e-α(t-t3)cosω0(t-t3) ……(25)
と、表現される必要があることが分かる。式(24)と同様に、式(25)の右辺指数表示部に記載されたt3の表現の数字3は下付の添え字である。t 3≦ t < t4のタイミングにおいて、e-α(t-t3) はe-α(t-t3)≒1と近似できる。
【0065】
即ち、時刻t=t3において、送電側コイル電圧VL1の変化を示す式(21)は式(25)に切り替えられ、1次側充放電電圧VC1の変化を示す式(22)は式(24)に切り替えられる。この結果、時刻t=t2において、式(18)と滑らかに連続した式(21)が示す波形の変化は、第3半周期のt2≦ t < t3の時間領域に、最大振幅をなす初期振動の半周期相当の波形として残る。又、時刻t=t2において、式(19)に歪み波形として連続した式(22)が示す波形の変化は、第3半周期のt2≦ t < t3の時間領域に、最大振幅をなす初期振動の半周期相当の波形として残る。LCR直列共振回路の減衰振動は、第4半周期のt 3≦ t < t4のタイミングでは初期振動として、4E0の大きな振幅の振動の過渡応答波形を示す。式(13),(19),(22)と比較すると、式(25)はt3相当分時間軸方向にシフトしたt=t3における境界条件において、直流電源5から定電圧である直流電圧4E0が送電側コンデンサC1に供給された状態に、初期状態が変更されたことと等価な技術的効果を意味している。このように、励起素子Q1と還流制御素子Q2を相補的にオン・オフ制御し、第1給電側共振回路における励起サイクルと第2給電側共振回路2aにおける還流サイクルを時分割で交互に繰り返すことにより、直流電源5が供給する電源電圧E0を、等価的に4倍に昇圧することができる。
【0066】
即ち、
図4Cに示したのと同様に、t=t
3で励起素子Q1をオフ状態に、還流制御素子Q2をオン状態にする相補型遷移をすると、直流電源5の仮想的な等価電源電圧4E
0が第2給電側共振回路2aに、初期条件として変更して印加された状態と等価な回路状態が変更されたことになる。しかし、この場合も、式(16)の電圧の関係を満足する必要がある。t
3 ≦ t < t
4の時間領域では、1次側充放電電圧V
C1は式(25)のように電源電圧の等価的拡大がされる。式(25)のt=t
3では、
図5Bに破線で示すように、初期条件V
C1=4E
0である。なお、
図5Bは
図5Aを延長した波形図であり、
図3及び
図5Aと同様に、伝送距離d=600mmにおいて、等価結合係数K=0.05の場合の過渡応答波形である。t=t
3の初期条件変更後のt
3 ≦ t < t
4では、
図4Dに示したのと同様に、送電側コンデンサC
1からの放電電流が還流制御素子Q2を介して送電側コイルL
1に流れ、送電側コンデンサC
1に蓄積された静電エネルギが減少するので、式(25)に従って、1次側充放電電圧V
C1が下降を開始する。
【0067】
一方、送電側コイル電圧V
L1は式(24)のように電源電圧の等価的拡大がされる。式(25)のt=t
3では、V
C1=4E
0であるので、式(16)の要請から式(24)のt=t
3での値は、V
L=-4E
0である。t=t
3の初期条件変更後のt
3 ≦ t < t
4では、
図5Bから分かるように、送電側コイルL
1には送電側コンデンサC
1からの放電電流が磁気エネルギとして流れ込み、式(24)に従って、送電側コイル電圧V
L1は上昇を開始する。
【0068】
時刻t=t
4=4π/ω
0において、送電側コンデンサC
1からの放電が完了しcosω
0t
4=1となれば、式(25)が示すように、1次側充放電電圧V
C1は
図5Bに破線で示すような最小値-4E
0となる。t=t
3の初期条件変更後のt
3 ≦ t < t
4では、送電側コイルL
1は、送電側コンデンサC
1からの放電電流を磁気エネルギとして蓄積する。このため、送電側コイルL
2の端子間電圧である送電側コイル電圧V
L1は、式(16)及び(24)を満足するように、1次側充放電電圧V
C1の減少と共に、
図5Bに実線で示すように増大する。t=7π/(2ω
0)のタイミングにおいて、cosω
0t=0となるので、送電側コイル電圧V
L1=0となる。1次側充放電電圧V
C1も、
図5Bに破線で示すようにt=7π/(2ω
0)のタイミングにおいて、cosω
0t=0となるので、1次側充放電電圧V
C1=0となる。
【0069】
送電側コイル電圧V
L1は、7π/2<ω
0t<4πの領域において、更に式(16)及び(24)を満足するように、1次側充放電電圧V
C1の減少と逆位相で、正の値の領域で更に増大する。1次側充放電電圧V
C1は、7π/2<ω
0t<4πの領域において、更に式(16)及び(25)を満足するように、送電側コイル電圧V
L1の増大と逆位相で、負値の領域で更に減少する。
図5Bに破線で示すように時刻t=t
4=4π/ω
0において1次側充放電電圧V
C1≒-4E
0に近づいたとき、式(16)を満足するためには、送電側コイル電圧V
L1≒4E
0になる必要がある。
【0070】
- (a-5) 第3励起サイクル:t
4 ≦ t < t
5 -
1次側充放電電圧V
C1が最小値になった時刻t=t
4=4π/ω
0で
図4Eに示した状態と同様に、還流制御素子Q2をオフにし、励起素子Q1をオンにする相補型スイッチング遷移を行う。t=t
4で還流制御素子Q2をオフにし、励起素子Q1をオンにすると、直流電源5、励起素子Q1、送電側コンデンサC
1及び送電側コイルL
1が構成するRLC直列共振回路からなる第1給電側共振回路による励起サイクルの動作が開始される。第1給電側共振回路による励起サイクルの動作においては、式(9)の関係を満足する必要がある。
【0071】
図5Bから分かるように、t=t
4の直前のタイミングでは、1次側充放電電圧V
C1(t→t
4)≒-4E
0で、送電側コイル電圧V
L1(t→t
4)≒4E
0である。しかし、V
C1(t=t
4)≒4E
0であれば式(9)から、
V
L1(t=t
4)=V
L1(t→t
4)+ΔV
L14≒5E
0 ……(26)
となる必要がある。このため、
図5Bに実線で示すように、時刻t=t
4において、送電側コイル電圧V
L1は、瞬時にΔV
L14=E
0のインパルス的な急上昇の電圧遷移をする。
【0072】
式(20)と式(14),(24),(26)を比較すると、第5半周期のt4 ≦ t < t5では、送電側コイル電圧VL1は、t4相当分時間軸方向にシフトして、
VL1≒5E0e-α(t-t4)cosω0(t-t4) ……(27)
で表現される必要があることが分かる。式(27)の右辺指数表示部に記載されたt4の表現の数字4は下付の添え字である。式(9)を考慮すると、式(27)から1次側充放電電圧VC1も、
VC1≒E0{1-5e-α(t-t4)cosω0(t-t4)} ……(28)
と、表現される必要があることが分かる。式(27)と同様に、式(28)の右辺指数表示部に記載されたt4の表現の数字4は下付の添え字である。t4 ≦ t < t5のタイミングにおいて、e-α(t-t4) はe-α(t-t4)≒1と近似できる。
【0073】
即ち、時刻t=t4において、送電側コイル電圧VL1の変化を示す式(24)は式(27)に切り替えられ、1次側充放電電圧VC1の変化を示す式(25)は式(28)に切り替えられる。そして、時刻t=t3において、式(22)に歪み波形として連続した式(24)が示す波形の変化は、第4半周期のt3 ≦ t < t4の時間領域に、最大振幅をなす初期振動の半周期相当の波形として残る。一方、時刻t=t3において、式(21)と滑らかに連続した式(25)が示す波形の変化は、第4半周期のt3 ≦ t < t4の時間領域に、最大振幅をなす初期振動の半周期相当の波形として残る。LCR直列共振回路の減衰振動は第5半周期のt4 ≦ t < t5のタイミングでは初期振動として、5E0の大きな振幅の振動の過渡応答波形を示す。式(13)及び(25)と式(28)を比較すると、式(28)はt4相当分時間軸方向にシフトしたt=t4における境界条件において、直流電源5から定電圧である直流電圧5E0が送電側コンデンサC1に供給された状態に、初期状態が変更されたことと等価な技術的効果を意味している。このように、励起素子Q1と還流制御素子Q2を相補的にオン・オフ制御し、第1給電側共振回路における励起サイクルと第2給電側共振回路2aにおける還流サイクルを時分割で交互に繰り返すことにより、直流電源5が供給する電源電圧E0を、等価的に5倍に昇圧することができる。
【0074】
即ち、
図4Eに示した状態と同様に、t=t
4で励起素子Q1をオン状態に、還流制御素子Q2をオフ状態にすると、第1給電側共振回路に直流電源5の仮想的な等価電源電圧5E
0が初期条件変更された状態と等価な回路状態が変更されたことになる。しかし、この場合も、式(9)の電圧の関係を満足する必要がある。t
4 ≦ t < t
5の時間領域では、1次側充放電電圧V
C1は式(28)のように電源電圧の等価的拡大がされる。式(28)のt=t
4=4π/ω
0では、初期条件V
C1=-4E
0である。t=t
4の初期条件変更後のt
4 ≦ t < t
5では、
図4Bに示したのと同様に、送電側コンデンサC
1への充電電流が直流電源5から励起素子Q1を介して流れ込み、送電側コンデンサC
1に静電エネルギが蓄積されるので、式(28)に従って、
図5Aに破線で示すように1次側充放電電圧V
C1が上昇を開始する。
【0075】
一方、送電側コイル電圧V
L1は式(27)のように、見かけ上、電源電圧の等価的拡大がされて表現される。式(28)のt=t
4では、V
C1=-4E
0であるので、式(9)の要請から式(27)のt=t
4での値は、V
L=5E
0である。t=t
4の初期条件変更後のt
4 ≦ t < t
5では、
図5Aから分かるように、送電側コイルL
1に蓄積された磁気エネルギが送電側コンデンサC
1への充電電流として流れ込み、式(27)に従って、送電側コイル電圧V
L1は下降を開始する。
【0076】
時刻t=t
5=9π/ω
0において、送電側コンデンサC
1からの充電が完了しcosω
0t
5=-1となれば、式(28)が示すように、1次側充放電電圧V
C1は
図5Aに破線で示すような最大値6E
0となる。t=t
4の初期条件変更後のt
4 ≦ t < t
5では、送電側コイルL
1は、送電側コンデンサC
1への充電電流として磁気エネルギとして放出する。このため、送電側コイルL
4の端子間電圧である送電側コイル電圧V
L1は、式(9)及び(27)を満足するように、1次側充放電電圧V
C1の増大と共に、
図5Bに実線で示すように減少する。t=9π/(2ω
0)のタイミングにおいて、cosω
0t=0となるので、送電側コイル電圧V
L1=0となる。1次側充放電電圧V
C1も、
図5Bに破線で示すようにt=9π/(2ω
0)のタイミングにおいて、cosω
0t=0となるので、1次側充放電電圧V
C1=0となる。
【0077】
送電側コイル電圧V
L1は、9π/2<ω
0t<5πの領域において、更に式(9)及び(27)を満足するように、1次側充放電電圧V
C1の増大と逆位相で、負の値の領域で更に減少する。1次側充放電電圧V
C1は、9π/2<ω
0t<5πの領域において、更に式(9)及び(28)を満足するように、送電側コイル電圧V
L1の減少と逆位相で、正値の領域で更に増大する。
図5Bに破線で示すように時刻t=t
5=5π/ω
0において1次側充放電電圧V
C1≒6E
0に近づいたとき、式(9)を満足するためには、
図5Bに実線で示す送電側コイル電圧V
L1≒-5E
0になる必要がある。
【0078】
1次側充放電電圧VC1が最大値になった時刻t=t5=5π/ω0で 励起素子Q1をオフにし、還流制御素子Q2をオンにする相補型スイッチング遷移を行う。t=t5で励起素子Q1をオフにし、還流制御素子Q2をオンにすると、還流制御素子Q2、送電側コンデンサC1及び送電側コイルL1が構成するRLC直列共振回路からなる第2給電側共振回路2aによる還流サイクルの動作が開始される。第2給電側共振回路2aによる還流サイクルの動作においては、式(16)の関係を満足する必要がある。
【0079】
図5Bから分かるように、t=t
5の直前のタイミングでは、1次側充放電電圧V
C1(t→t
5)≒6E
0で、送電側コイル電圧V
L1(t→t
5)≒-5E
0である。しかし、V
C1(t=t
5)≒6E
0であれば式(16)から、
V
L1(t=t
5)=V
L1(t→t
5)+ΔV
L15≒-6E
0……(29)
となる必要がある。このため、
図5Bに実線で示すように、時刻t=t
5において、送電側コイル電圧V
L1は、瞬時にΔV
L15=-E
0のインパルス的な急下降の電圧遷移をする。
【0080】
式(23)と式(14),(24),(27),(29)を比較すると、t5 ≦ t < t4では、送電側コイル電圧VL1は、t5相当分時間軸方向にシフトして、
VL1≒6E0e-α(t-t5)cosω0(t-t5) ……(30)
で表現される必要があることが分かる。式(30)の右辺指数表示部に記載されたt5の表現の数字5は下付の添え字である。式(16)を考慮すると、式(30)から1次側充放電電圧VC1も、
VC1≒-6E0e-α(t-t5)cosω0(t-t5) ……(31)
と、表現される必要があることが分かる。式(30)と同様に、式(31)の右辺指数表示部に記載されたt5の表現の数字5は下付の添え字である。t5 ≦ t < t6のタイミングにおいて、e-α(t-t5) はe-α(t-t5)≒1と近似できる。
【0081】
即ち、時刻t=t5において、送電側コイル電圧VL1の変化を示す式(27)は式(30)に切り替えられ、1次側充放電電圧VC1の変化を示す式(28)は式(31)に切り替えられる。そして、式(27)及び式(28)の変化は、第5半周期のt4≦ t < t5の時間領域に、最大振幅の初期振動のみが切られた半周期の振動波形として残る。そして、時刻t=t4において、式(24)に歪み波形として連続した式(27)が示す波形の変化は、第5半周期のt4≦ t < t5の時間領域に、最大振幅の初期振動のみが切られた半周期の振動波形として残る。一方、時刻t=t4において、式(25)と滑らかに連続した式(28)が示す波形の変化は、第5半周期のt4≦ t < t5の時間領域に、最大振幅の初期振動のみが切られた半周期の振動波形として残る。第6半周期のt5 ≦ t < t6のタイミングではLCR直列共振回路の減衰振動は、6E0の大きな初期値を有した振幅の振動の過渡応答波形を示す。式(13),(25),(28)と式(31)を比較すると、式(31)は、t5相当分時間軸方向にシフトしたt=t5における境界条件において、直流電源5から直流電圧6E0が供給された状態に、初期状態が変更されたことと等価な技術的効果を意味している。即ち、励起素子Q1と還流制御素子Q2を相補的にオン・オフ制御し、第1給電側共振回路における励起サイクルと第2給電側共振回路2aにおける還流サイクルを時分割で交互に繰り返すことにより、直流電源5が供給する電源電圧E0を、等価的に6倍に昇圧することができる。
【0082】
[B:送信モード;t≧t5 ]
以上のとおり、t=t5で励起素子Q1をオフ状態に、還流制御素子Q2をオン状態にする相補型遷移をすると、直流電源5の仮想的な等価電源電圧6E0が、第2給電側共振回路2aに初期条件として印加された状態と等価な回路状態になったことになる。第1実施形態に係る電力伝送システムでは、直流電源5が供給する電源電圧E0が、等価的に6倍に昇圧された場合に、給電側共振回路(34a,2a)の目的とする振動振幅が得られたと判断する。この第1実施形態に係る電力伝送システムの判断は一例であり、6倍の振幅値の拡大に限定する必要はない。励起サイクルをp回繰り返し、還流サイクルを(p-1)回繰り返すことにより
n=2p ……(32a)
または、
n=2p-1 ……(32b)
倍に直流電源5が供給する電源電圧E0が増幅できる。pは1以上の正の整数で、nは2以上の正の整数である。第1実施形態に係る電力伝送システムではn=6に選んだ場合を例示的に示しているに過ぎず、nの値は任意に選択可能である。
【0083】
t
0 ≦ t < t
5のタイミングにおいては、励起素子Q1と還流制御素子Q2を半周期πで相補的にオン・オフ制御して、励起サイクルと還流サイクルを半周期πで切り替える増幅モードの動作を説明した。第1実施形態に係る電力伝送システムで例示する条件においては、
図5Bに示すように、半周期πで切り替える増幅モードの動作ではなく、半周期πよりも長い5~10π程度の長周期となる送信モード期間を選択した「送信モード」の動作に移る。送信モード期間においては、励起素子Q1を常にオフ状態に維持し、還流制御素子Q2を常にオン状態に維持することにより、式(30)及び(31)に示した減衰振動の波形を
図5Bに示すように実現する。
【0084】
式(30)は、
図5Bから分かるように送電側コイル電圧V
L1が周波数ω
0の余弦波で振動しながら、振動ピーク(振幅)の包絡線が時刻t
5における最大値からe
―α(t-t5)で指数関数的に減衰する不足制動(減衰振動)の波形を示している。一方、式(31)は、
図5Bから分かるように1次側充放電電圧V
C1が、送電側コイル電圧V
L1の変化を示す波形とは逆位相で、周波数ω
0の余弦波で振動しながら、振動ピーク(振幅)の包絡線が時刻t
5 における最大値からe
―α(t-t5)で指数関数的に減衰する不足制動(減衰振動)の波形を示している。そして、送信モードにおいては式(30)及び(31)に示した給電側共振回路(34a,2a)の減衰振動を、二重共振を用いて、受電側共振回路(27a,3a)へ無接触電力伝送(ワイヤレス電力伝送)を行う。
【0085】
励起素子Q1がオフ状態に維持され、還流制御素子Q2がオン状態に維持され、第2給電側共振回路2aの動作に固定されているので、送信モードでは、式(16)の電圧の関係を満足する必要がある。
図5Bに示した第6半周期のt
5 ≦ t < t
6の時間領域では、1次側充放電電圧V
C1は式(31)のように電源電圧の等価的拡大がされる。式(31)のt=t
5では、
図5Bに破線で示すように、初期条件V
C1=6E
0である。t=t
5の送信モードへの変更後のt
5 ≦ t < t
6では、
図4Dに示したのと同様に、送電側コンデンサC
1からの放電電流が還流制御素子Q2を介して送電側コイルL
1に流れ、送電側コンデンサC
1に蓄積された静電エネルギが減少するので、式(31)に規定されて、1次側充放電電圧V
C1が下降を開始する。
【0086】
一方、送電側コイル電圧V
L1は式(30)のように電源電圧の等価的拡大がされる。式(31)のt=t
5では、V
C1=6E
0であるので、式(16)の要請から式(30)のt=t
5での値は、V
L=-6E
0である。t=t
5の送信モードへの変更後の第6半周期のt
5 ≦ t < t
6では、
図5Bから分かるように、送電側コイルL
1には送電側コンデンサC
1からの放電電流が磁気エネルギとして流れ込み、式(30)に規定されて、送電側コイル電圧V
L1は上昇を開始する。
【0087】
時刻t=t
6=6π/ω
0において、送電側コンデンサC
1からの放電が完了しcosω
0t
6=1となれば、式(31)が示すように、1次側充放電電圧V
C1は
図5Bに破線で示すような最小値-6E
0となる。t=t
5において、1次側充放電電圧V
C1は最大値6E
0であったので、送信モードになった第6半周期のt
5 ≦ t < t
6の時間領域では1次側充放電電圧V
C1は電圧拡大がされていない。t=t
5の送信モードへの変更後の第6半周期のt
5 ≦ t < t
6では、送電側コイルL
1は、送電側コンデンサC
1からの放電電流を磁気エネルギとして蓄積する。このため、送電側コイルL
2の端子間電圧である送電側コイル電圧V
L1は、式(16)及び(30)を満足するように、1次側充放電電圧V
C1の減少と共に、
図5Bに実線で示すように増大する。t=11π/(2ω
0)のタイミングにおいて、cosω
0t=0となるので、送電側コイル電圧V
L1=0となる。1次側充放電電圧V
C1も、
図5Bに破線で示すようにt=11π/(2ω
0)のタイミングにおいて、cosω
0t=0となるので、1次次側充放電電圧V
C1=0となる。
【0088】
送電側コイル電圧V
L1は、11π/2<ω
0t<6πの領域において、更に式(16)及び(30)を満足するように、1次側充放電電圧V
C1の減少と逆位相で、正の値の領域で更に増大する。1次次側充放電電圧V
C1は、11π/2<ω
0t<6πの領域において、更に式(16)及び(31)を満足するように、送電側コイル電圧V
L1の増大と逆位相で、負値の領域で更に減少する。
図5Bに破線で示すように、時刻t=t
6=6π/ω
0において1次側充放電電圧V
C1≒-6E
0となったとき、
図5Bに実線で示す送電側コイル電圧V
L1≒6E
0であるので、式(16)の要請を充足している。
【0089】
t=t
5において、送電側コイル電圧V
L1は最小値-6E
0であったので、送信モードになった第6半周期のt
5 ≦ t< t
6の時間領域では送電側コイル電圧V
L1は、電圧拡大がされず歪み波形を余弦波に波形整形をしている。1次側充放電電圧V
C1も第6半周期のt
5 ≦ t< t
6の時間領域では電圧拡大がされず波形の維持をしているので、送信モードになった最初の半周期である第6半周期t
5 ≦ t < t
6の時間領域は、「波形整形サイクル」として定義される。波形整形サイクルは増幅モードの定義からは第3還流サイクルに対応する。半周期(=π)の励起サイクルと半周期(=π)の還流サイクルの合計を、スイッチング周期(=2π)の1周期とすれば、第3還流サイクル終了時は3周期終了時に対応する。
図5Bに示した波形は、3周期の相補的スイッチングによって、電圧を6倍に拡大したことを意味している。これは式(32b)で定義した還流サイクルをp回繰り返したことと等価である。式(32a)及び(32b)から、送信モードの最初の半周期である波形整形サイクルを含めると、p周期の相補的スイッチングの繰り返しにより、n=2p倍に電圧値が拡大されることになる。
【0090】
波形整形サイクル終了時に1次側充放電電圧VC1が最小値になった時点t=t6=6π/ω0においても、送信モードでは還流制御素子Q2のオン状態を維持し、励起素子Q1をオフ状態に維持している。t=t6で還流制御素子Q2がオン、励起素子Q1がオフであるので還流制御素子Q2、送電側コンデンサC1及び送電側コイルL1が構成するRLC直列共振回路としての第2給電側共振回路2aの動作が継続される。第2給電側共振回路2aによる送信モードの動作においては、式(16)の制約条件が要請される。
【0091】
図5Bから分かるように、t=t
6の直前のタイミングでは、1次側充放電電圧V
C1(t→t
6)≒-6E
0で振動振幅の最大値を維持し、送電側コイル電圧V
L1(t→t
6)≒6E
0で振動振幅の最大値を維持し、互いに式(16)の関係を満足させている。式(30)を、t
6 ≦ tでは、送電側コイル電圧V
L1は、t
6相当分時間軸方向にシフトして、
V
L1≒6E
0e
-α(t-t6)cosω
0(t-t
6) ……(33)
で表現できる。式(33)の右辺指数表示部に記載されたt6の表現の数字6は下付の添え字である。時刻t=t
5において、式(27)に歪み波形として連続した式(30)が示す波形の変化は、第6半周期のt
5 ≦ t< t
6の時間領域に半周期の振動波形として残るが、
図5Bに示すように、t=t
6において、式(30)と式(33)は滑らかに接続され、余弦波の波形になっている。即ち、第6半周期のt
5 ≦ t< t
6の時間領域に定義される波形整形サイクルでは、電圧拡大はされないが、増幅モードで歪み波形であった送電側コイル電圧V
L1の波形を、正常な余弦波に整える作用がある。t=t
6において、e
-α(t-t6)=1である。即ち、t
6 ≦ tのタイミングで
図5Bから分かるように、送電側コイル電圧V
L1は周波数ω
0の余弦波で振動しながら、振動ピーク(振幅)の包絡線が6E
0の最大値からe
―α(t-t6)で指数関数的に減衰する、LCR直列共振回路に典型的な不足制動(減衰振動)の波形を示している。
【0092】
式(16)の制約を考慮すると、式(33)から1次側充放電電圧V
C1も、
V
C1≒-6E
0e
-α(t-t6)cosω
0(t-t
6) ……(34)
と、表現される。式(33)と同様に、式(34)の右辺指数表示部に記載されたt6の表現の数字6は下付の添え字である。時刻t=t
5において、式(28)と滑らかに連続した式(31)が示す波形の変化は、第6半周期のt
5 ≦ t< t
6の時間領域に、半周期の振動波形として残るが、
図5Bに示すように、t=t
6において、式(31)と式(34)は滑らかに接続される。第6半周期のt
5 ≦ t< t
6の時間領域に定義される波形整形サイクルでは電圧拡大がされないが、送電側コイル電圧V
L1の場合と同様に、1次側充放電電圧V
C1の波形を余弦波に整えている。t=t
6において、e
-α(t-t6)=1である。即ち、t
6 ≦ tのタイミングでは、
図5Bが示すように、送電側コイル電圧V
L1の変化を示す波形とは逆位相で、1次側充放電電圧V
C1が周波数ω
0の余弦波で振動しながら、振動ピーク(振幅)の包絡線が時刻t
6における-6E
0の最小値からe
―α(t-t6)で指数関数的に減衰する、LCR直列共振回路に典型的な不足制動(減衰振動)の波形を示している。
【0093】
t
6 ≦ tでは、
図5Bから分かるように、送電側コイルL
1に蓄積された磁気エネルギが送電側コンデンサC
1への充電電流として流れ込み、式(33)に規定されて、送電側コイル電圧V
L1は下降を開始する。時刻t=t
7=7π/ω
0において、送電側コンデンサC
1からの充電が完了しcosω
0t
7=-1となれば、式(34)が示すように、1次側充放電電圧V
C1の振動のピーク値は、
図5Bに破線で示すようにe
―α(t-t6)で指数関数的に減衰する。t
6 ≦ tでは、送電側コイルL
1に蓄積された磁気エネルギは、送電側コンデンサC
1への充電電流として放出される。このため、送電側コイルL
7の端子間電圧である送電側コイル電圧V
L1は、式(16)及び(33)を満足するように、1次側充放電電圧V
C1の増大と共に、
図5Bに実線で示すように減少する。t=13π/(2ω
0)のタイミングにおいて、cosω
0t=0となるので、送電側コイル電圧V
L1=0となる。1次側充放電電圧V
C1も、
図5Bに破線で示すようにt=13π/(2ω
0)のタイミングにおいて、cosω
0t=0となるので、1次次側充放電電圧V
C1=0となる。
【0094】
送電側コイル電圧V
L1は、13π/2<ω
0t<7πの領域において、更に式(16)及び(33)を満足するように、1次側充放電電圧V
C1の増大と逆位相で、負の値の領域で更に減少する。1次次側充放電電圧V
C1は、13π/2<ω
0t<7πの領域において、更に式(16)及び(34)を満足するように、送電側コイル電圧V
L1の減少と逆位相で、正値の領域で更に増大する。
図5Bに示すように、時刻t=t
7=7π/ω
0において1次側充放電電圧V
C1は振動ピーク(最大値)を示し、式(16)を満足するように、送電側コイル電圧V
L1は振動ピーク(最小値)を示す。即ち、1次側充放電電圧V
C1及び送電側コイル電圧V
L1は、振動ピーク(振幅)の包絡線が時刻t
6における振幅最大値からe
―α(t-t6)で指数関数的に減衰する、LCR直列共振回路に典型的な不足制動(減衰振動)の波形を示している。
【0095】
送信モードにおいては、1次側充放電電圧VC1が最大値になった時点t=t7=7π/ω0でも、励起素子Q1はオフに維持され、還流制御素子Q2はオンに維持されている。t=t7で励起素子Q1がオフに維持され、還流制御素子Q2がオンに維持されていると、還流制御素子Q2、送電側コンデンサC1及び送電側コイルL1が構成するRLC直列共振回路としての第2給電側共振回路2aの過渡現象が継続される。したがって、t7 ≦ tの送信モードの時間領域で、送電側コイル電圧VL1は式(33)に規定されて振動ピーク値がe―α(t-t6)で指数関数的に減衰し、1次側充放電電圧VC1も式(34)に規定されて振動ピーク値がe―α(t-t6)で指数関数的に減衰する。
【0096】
送信モードにおいては、送電側コイルL1に流れる電流によって送電側コイルL1の周囲に発生した磁界により、動的相互インダクタンスM=M(t)で結合した受電側コイルL2に起電力が生じ電流が流れる。この時に給電側共振回路(34a,2a)と受電側共振回路(27a,3a)の特性が調和して二重共振が可能になれば、この二重共振によって受電側コイルL2に流れる電流が効率よく受電側コンデンサC2を充電される。即ち給電側共振回路(34a,2a)から受電側共振回路(27a,3a)へ電力が二重共振によって、効率よく伝送される。
【0097】
第1実施形態に係る電力伝送システムでは、増幅モードにおいて、励起素子Q1と還流制御素子Q2を相補的にオン・オフ制御し、励起サイクルと還流サイクルを繰り返すことにより、
図5Bに示すような複合振動の振動ピークを増幅させた後、送信モードで、励起素子Q1をオフ状態にし、還流制御素子Q2をオン状態にして、給電側共振回路(34a,2a)から受電側共振回路(27a,3a)へ電力が二重共振によって効率よく電力伝送することを趣旨としている。しかしながら、
図5A及び
図5Bの一点鎖線で示したように、第1実施形態に係る電力伝送システムにおいては、実際には増幅モードの時刻t
0 ≦ t <t
5の時間領域においても、受電側コイルL
2に流れる電流による受電側コイル電圧V
L2が発生している。
【0098】
図5A及び
図5Bの一点鎖線に示すように、受電側コイルL
2の端子間電圧である受電側コイル電圧V
L2は、送電側コイルL
1に流れる電流によって送電側コイルL
1の周囲に発生した磁界の効果である動的相互インダクタンスM=M(t)の大きさや特性、及び2次側回路3aの過渡応答特性に依存する。例えば、増幅モードの時刻t
0 ≦ t < t
1の時間領域では、受電側コイル電圧V
L2として、
V
L2≒-(E
0/2)sinω
0t ……(35)
のような、t=t
0=0でゼロクロスする波形を近似的な表現として例示できる。
【0099】
即ち増幅モードでありながら、既に給電側共振回路から受電側共振回路に電力伝送がされている。例示した式(35)に従うとすれば、受電側コイル電圧V
L2は正弦波の波形に沿って減少し、t
1 /2=π/(2ω
0)のタイミングにおいて、sinω
0t=1となるので、受電側コイル電圧V
L2は最小値となる。その後、受電側コイル電圧V
L2は、π/2<ω
0t<πの領域において、式(35)に従うように、負の値を維持しながら最小値から正弦波の波形に沿って増大する。
図5A及び
図5Bに一点鎖線で示すように、時刻t=t
1=π/ω
0においてsinω
0t=0となる。
【0100】
図5A及び
図5Bに一点鎖線で示すように、増幅モードの時刻t
1 ≦ t < t
2の時間領域では、受電側コイル電圧V
L2は、t
1相当分時間軸方向にシフトして、
V
L2≒E
0sinω
0(t-t
1) ……(36)
と、t=t
1でゼロクロスする波形を近似的な表現として例示できる。例示した式(36)の振幅や位相は、送電側コイルL
1と送電側コイルL
1の間の動的相互インダクタンスM=M(t)の大きさや特性、更には2次側回路3aの過渡応答特性等にも依存する。
【0101】
重要なことは、時刻t
1 ≦ t <t
2のタイミングにおいて、送電側コイル電圧V
L1が式(18)に示されるように直流電源5から供給される電源電圧E
0の2倍の電圧2E
0の振幅になったことを反映して、位相が遅れているが、式(36)で示される受電側コイル電圧V
L2が、式(35)で示される送電側コイル電圧V
L1の2倍にまで増幅されて高効率ワイヤレス伝送が実現できていることである。そして、増幅モードの時刻t
1 ≦ t<t
2のタイミングでありながら、既に給電側共振回路から受電側共振回路に高効率電力伝送がされていることにも留意が必要である。受電側コイル電圧V
L2は正弦波の波形に沿って増大し、t=3π/(2ω
0)のタイミングにおいて、sinω
0t=1となるので、受電側コイル電圧V
L2=は最大値となる。受電側コイル電圧V
L2は、3π/2<ω
0t<2πの領域において、式(36)に従うように最大値から正弦波で減少する。
図5A及び
図5Bに一点鎖線で示すように時刻t=t
2=2π/ω
0においてsinω
0t=0となる。
【0102】
増幅モードの時刻t2 ≦ t < t3の時間領域では、受電側コイル電圧VL2は、t2相当分時間軸方向にシフトして、
VL2≒-(3/2)E0sinω0(t-t2) ……(37)
と、t=t2でゼロクロスする波形を近似的な表現として例示できる。例示した式(37)の振幅や位相は送電側コイルL1と送電側コイルL1の間の動的相互インダクタンスM=M(t)の大きさや特性、更には2次側回路3aの過渡応答特性等にも依存する。ここで留意すべきは、時刻t2 ≦ t < 3のタイミングにおいて、送電側コイル電圧VL1が式(21)に示されるように直流電源5から供給される電源電圧E0の3倍の電圧3E0の振幅になったことを反映して、位相が遅れているが、式(37)で示される受電側コイル電圧VL2が、式(35)で示される送電側コイル電圧VL1の3倍にまで増幅されて高効率ワイヤレス伝送が実現できていることである。
【0103】
しかも、式(35)及び式(36)との比較から分かるように、増幅モードの時間経過に伴い送電側コイル電圧V
L1が増大し、位相の遅れはあるが二重共振によりワイヤレス伝送された受電側コイル電圧V
L2も次第に増大していることが、第1実施形態に係る電力伝送システムの特徴である。受電側コイル電圧V
L2は正弦波の波形に沿って減少し、t=5π/(2ω
0)のタイミングにおいて、sinω
0t=1となるので、受電側コイル電圧V
L2は最小値となる。受電側コイル電圧V
L2は、5π/2<ω
0t<3πの領域において、更に式(37)に従うように、負の値の領域で最小値から正弦波の波形に沿って増大する。
図5A及び
図5Bに一点鎖線で示すように、時刻t=t
3=3π/ω
0においてsinω
0t=0となる。
【0104】
増幅モードの時刻t3 ≦ t< 4の時間領域では、受電側コイル電圧VL2は、t3相当分時間軸方向にシフトして、
VL2≒2E0sinω0(t-t3) ……(38)
と、t=t3でゼロクロスする波形を近似的な表現として例示できる。例示した式(38)の振幅や位相は、動的相互インダクタンスM=M(t)の大きさや特性、更には2次側回路3aの過渡応答特性等にも依存する。ここで考慮すべきは、時刻t3 ≦ t< 4のタイミングにおいて、送電側コイル電圧VL1が式(24)に示されるように直流電源5から供給される電源電圧E0の4倍の電圧4E0の振幅になったことを反映して、位相が遅れているが、式(38)で示される受電側コイル電圧VL2が、式(35)で示される送電側コイル電圧VL1の4倍にまで増幅されて高効率ワイヤレス伝送が実現できていることである。
【0105】
しかも、増幅モードの時間経過に伴い送電側コイル電圧V
L1が徐々に増大する結果、二重共振によりワイヤレス伝送された受電側コイル電圧V
L2も、式(35)~(37)との比較から分かるように正弦波の波形に沿って次第に増大する。
図5Bに一点鎖線で示すようにt=7π/(2ω
0)のタイミングにおいて、sinω
0t=1となるので、受電側コイル電圧V
L2は最大値となる。受電側コイル電圧V
L2は、受電側コイル電圧V
L2は正弦波の波形に沿った変化をし、7π/2<ω
0t<4πの領域において、(38)に従うように、正の値の領域で最大値からの減少を開始する。
図5Bに一点鎖線で示すように時刻t=t
4=4π/ω
0においてsinω
0t=0となるので受電側コイル電圧V
L2=0Vとなる。
【0106】
増幅モードの時刻t4 ≦ t < 5の時間領域では、受電側コイル電圧VL2は、t4相当分時間軸方向にシフトして、
VL2≒-(5/2)E0sinω0(t-t4) ……(39)
と、t=t4でゼロクロスする波形を近似的な表現として例示できる。式(39)の振幅や位相は、動的相互インダクタンスM=M(t)の大きさや特性、更には2次側回路3aの過渡応答特性等にも依存する。ここで配慮すべきは、時刻t4 ≦ t < 5のタイミングにおいて、送電側コイル電圧VL1が式(27)に示されるように直流電源5から供給される電源電圧E0の5倍の電圧5E0の振幅になったことを反映して、位相が遅れているが、式(39)で示される受電側コイル電圧VL2が、式(35)で示される送電側コイル電圧VL1の5倍にまで増幅されて高効率ワイヤレス伝送が実現できていることである。
【0107】
しかも、増幅モードの時間経過に伴い送電側コイル電圧V
L1が徐々に増大する結果、二重共振によりワイヤレス伝送された受電側コイル電圧V
L2も、式(35)~(38)との比較から分かるように次第に増大している。
図5Bに一点鎖線で示すように受電側コイル電圧V
L2は正弦波の波形に沿った変化をし、t=9π/(2ω
0)のタイミングにおいて、sinω
0t=1となるので、受電側コイル電圧V
L2は正弦波の波形に沿って最小値となる。受電側コイル電圧V
L2は、9π/2<ω
0t<5πの領域において、負の値の領域で最小値から正弦波の波形に沿った増大を開始する。
図5Bに一点鎖線で示すように時刻t=t
5=5π/ω
0においてsinω
0t=1となるので、受電側コイル電圧V
L2=0Vとなる。
【0108】
送信モードのt5 ≦ t < t6の時間領域では、受電側コイル電圧VL2は、t5相当分時間軸方向にシフトして、
VL2≒3E0sinω0(t-t5) ……(40)
と、t=t5でゼロクロスする波形を近似的な表現として例示できる。式(40)の振幅や位相は、動的相互インダクタンスM=M(t)の大きさや特性、更には2次側回路3aの過渡応答特性等にも依存する。第1実施形態に係る電力伝送システムで重要なことは、時刻t5 ≦ t < t6のタイミングにおいて、送電側コイル電圧VL1が式(30)に示されるように直流電源5から供給される電源電圧E0の6倍の電圧6E0の振幅になったことを反映して、位相が遅れているが、式(40)で示される受電側コイル電圧VL2が、式(35)で示される送電側コイル電圧VL1の6倍にまで増幅されて高効率ワイヤレス伝送が実現できていることである。
【0109】
しかも、増幅モードから送信モードへの遷移に伴い送電側コイル電圧V
L1が徐々に増大する結果、二重共振によりワイヤレス伝送された受電側コイル電圧V
L2も、式(35)~(39)との比較から分かるように増大している。受電側コイル電圧V
L2は正弦波の波形に沿った変化をし、t=11π/(2ω
0)のタイミングにおいて、sinω
0t=1となるので、受電側コイル電圧V
L2は最大値となる。受電側コイル電圧V
L2は、11π/2<ω
0t<6πの領域において、正の値の領域で最大値からの正弦波の波形に沿った減少を開始する。
図5Bに一点鎖線で示すように、時刻t=t
6=6π/ω
0においてsinω
0t=0となるので、受電側コイル電圧V
L2=0Vとなる。
【0110】
送信モードのt6 ≦ tの時間領域では、受電側コイル電圧VL2は、t6相当分時間軸方向にシフトして、
VL2≒-4E0sinω0(t-t6) ……(41)
と、t=t6でゼロクロスする波形を近似的な表現として例示できる。式(41)の振幅や位相は、動的相互インダクタンスM=M(t)の大きさや特性、更には2次側回路3aの過渡応答特性等にも依存する。第1実施形態に係る電力伝送システムで重要なことは、時刻t 6≦ tのタイミングにおいて、送電側コイル電圧VL1が式(33)に示されるように直流電源5から供給される電源電圧E0の6倍の電圧6E0の振幅になったことを反映して、位相が遅れているが、式(41)で示される受電側コイル電圧VL2が、式(35)で示される送電側コイル電圧VL1の8倍にまで増幅されて高効率ワイヤレス伝送が実現できていることである。
【0111】
しかも、送信モードの時間経過に伴い送電側コイル電圧VL1が徐々に増大する結果、二重共振によりワイヤレス伝送された受電側コイル電圧VL2も、式(40)との比較から分かるように増大している。t=13π/(2ω0)のタイミングにおいて、sinω0t=1となるので、受電側コイル電圧VL2は正弦波の波形に沿って最小値となる。受電側コイル電圧VL2は、13π/2<ω0t<7πの領域において、(41)に従うように、負の値の領域で最小値から正弦波の波形に沿った増大を開始する。時刻t=t7=7π/ω0においてsinω0t=0となるので、受電側コイル電圧VL2=0Vとなる。
【0112】
更に送信モードの時間が経過すると、
図5Bに示すように、受電側コイル電圧V
L2は時刻t
7 ≦ t< t
8の時間領域及び時刻t
8 ≦ t< t
9の時間領域では、時刻t
0 ≦ t< t
1の時間領域での受電側コイル電圧V
L2の8倍、時刻t
9 ≦ t< t
10の時間領域では、時刻t
0 ≦ t< t
1の時間領域での受電側コイル電圧V
L2の9.8倍になっている。更に送信モードの時間が経過し、受電側コイル電圧V
L2は
図5Bの時刻t
10 ≦ tの時間領域になると、時刻t
0 ≦ t< t
1の時間領域での受電側コイル電圧V
L2の10倍以上の振幅が実現できている。
【0113】
時間tに依存した増幅定数βを
β=β(t) ……(42)
と定義すると、受電側コイル電圧V
L2は、
V
L2≒-(E
0/2)e
βtsinω
0t ……(43)
の形式で変化する関数となる。
図5Bと比較すると、t
0 ≦ t < t
7の時間領域でβ(t)≒αであり、増幅定数βは減衰定数αと同程度の値を示す。
図5Bはt
7 ≦ tの時間領域ではβ(t)≒0となっていることを示す。
図5Bには示されていないが、更に時間が進むとβ(t)<0となる。
【0114】
一方、二重共振により給電側共振回路(34a,2a)から電気エネルギが受電側共振回路(27a,3a)へワイヤレス伝送され受電側コイル電圧V
L2が増大したことに伴い、送電側コイル電圧V
L1は減衰定数αにより指数関数的に減衰していることを、
図5Bは示している。式(33)が示すように、送電側コイル電圧V
L1は周波数ω
0の余弦波で振動しながら、振動ピーク(振幅)の包絡線がe
―α(t-t6)の形式で、指数関数的に減衰する減衰振動(不足制動)の変化になっている。なお、
図5Bが示すように、時刻t
11 ≦ tの時間領域では送電側コイル電圧V
L1の波形は減衰振動の正弦波から崩れている。時刻t
11 ≦ tの時間領域では、2次側回路3aから給電側共振回路(34a,2a)への電気エネルギの還流による逆送電の影響が大きくなり、送電側コイル電圧V
L1が十分に小さくならないためと思われる。
【0115】
交流理論の結合係数KAC=0.6にほぼ近似できる等価結合係数Kとなる送電側コイルL1と受電側コイルL2の相互関係のときが、給電側共振回路(34a,2a)と受電側共振回路(27a,3a)の間の二重共振を用いた無接触電力伝送には好適である。導体断面積16mm2の配線用ケーブルをそれぞれ9巻した渦巻き状平面コイルの場合、等価結合係数K=0.6を実現するためには、伝送距離dは、0mm~20mm程度が必要になる。一方、交流理論の結合係数KAC=0.1にほぼ近似できる等価結合係数Kとなる条件の送電側コイルL1と受電側コイルL2の相互関係を実現するためには、伝送距離dは100mm程度である。
【0116】
図3,
図5A及び
図5Bには、伝送距離d=600mmにおいて、等価結合係数K=0.05の場合の過渡応答波形を示した。第1実施形態に係る振動増幅回路によれば、単純化された回路構成でありながら、振動振幅を式(32a)及び(32b)に示すように、直流電源5が供給する電源電圧E
0の整数倍に増幅できる。したがって、第1実施形態に係る振動増幅回路を、給電側共振回路(34a,2a)に用いることにより、伝送距離dが大きくなり、等価結合係数Kが小さくなる状況においても、給電側共振回路(34a,2a)と受電側共振回路(27a,3a)の間の有効な二重共振が可能になる。
【0117】
図6には、送電側コイルL
1と受電側コイルL
2を誇張(拡大)して模式的に示した無接触電力伝送システムを例示している。第1実施形態に係る電力伝送システムによれば、第1実施形態に係る振動増幅回路を、給電側共振回路(34a,2a)に用いることにより、送電側コイルL
1と受電側コイルL
2の間の距離として定義される伝送距離d=600mmになっても、
図3,
図5A及び
図5Bに示すように効率の良い無接触電力伝送(ワイヤレス電力伝送)ができる。なお、車輌31bの車載用の充電式電池である負荷6を第1実施形態に係る電力伝送システムを用いて充電するためには、後輪の車止め11を磁気的結合度制御機構として用いて送電側コイルL
1と受電側コイルL
2の伝送距離dを600mm程度に制御し、効率のよい無接触給電をすることができる。
【0118】
以上のとおり、第1実施形態に係る電力伝送システムによれば、寄生抵抗による減衰があり、電源電圧E0までしか増幅できないという従来の無接触電力伝送システムの問題を解決し、伝送距離d≦600mmの長距離になっても、有効な無接触電力伝送(ワイヤレス電力伝送)ができる。しかも第1実施形態に係る振動増幅回路を給電側共振回路(34a,2a)に用いた無接触電力伝送システムは、高周波インバータやスイッチング電源は不要であるので、回路構成が単純化され、回路素子の破壊が防止できる上に安価である。
【0119】
(第1実施形態の第1変形例)
本発明の第1実施形態の第1変形例に係る電力伝送システムは
図7に示すように、給電側共振回路(34b,2b)で電圧拡大による振幅増幅を行い、給電側共振回路(34b,2b)から無接触でウェイブレット状の電磁エネルギを受電側共振回路(27a,3a)に給電して、給電側共振回路(34b,2b)と受電側共振回路(27a,3a)との間で二重共振をさせる伝送システムである。
図7に示すように、給電側共振回路(34b,2b)は、駆動制御回路34bと第2給電側共振回路2bを備え、受電側共振回路(27a,3a)は、受電回路27aと2次側回路3aを備える。第2給電側共振回路2bは、給電側共振回路(34a,2b)の内部に第1給電側共振回路と相補的に、時分割で過渡的に形成される回路である。
【0120】
第1実施形態の第1変形例に係る電力伝送システムは、
図1Aに示した第1実施形態に係る電力伝送システムの回路構成に、調整素子Q3を追加した構成となっている。
図7に示すように、励起素子Q1、還流制御素子Q2及び調整素子Q3の制御電極(ゲート電極等)は、それぞれ1次側スイッチング素子駆動回路340bによって駆動制御される。調整素子Q3は、相補的にスイッチング動作する励起素子Q1及び還流制御素子Q2とは異なり、常時オン(導通状態)として用いる回路素子で、RLC直列共振回路のインピーダンスを調整することを目的とした可変抵抗素子、可変容量素子である。RLC直列共振回路のインピーダンスを調整することにより、給電側共振回路(34a,2a)と受電側共振回路(27a,3a)の間の二重共振による無接触電力伝送を高効率化させる目的で調整素子Q3を追加している。即ち、第1実施形態の第1変形例に係る電力伝送システムにおいて、励起素子Q1と還流制御素子Q2とを相補的に切り替え動作をさせ、第1給電側共振回路と第2給電側共振回路2aとを、時分割で交互に切り替える特徴は、
図2で説明した回路構成の特徴と同様であるが、可変抵抗素子、可変容量素子である調整素子Q3を追加することにより、二重共振による無接触電力伝送を高効率化させている。
【0121】
図7に示した励起素子Q1、送電制御素子Q2及び調整素子Q3として、
図2示した回路構成と同様なFET、SIT、BJTの他、GTOサイリスタ、SIサイリスタ等のサイリスタを含む電力用半導体素子が用いられる。ただし、励起素子Q1及び送電制御素子Q2には、MOSFET、MISFET、MISSIT、IGBT、MOS制御SIサイリスタ等の電圧駆動型のスイッチング素子が好適であるが、調整素子Q3は可変抵抗素子、可変容量素子として用いるので、接合型FET、接合型SIT、BJT、GTOサイリスタ、接合型SIサイリスタ等が好ましい。調整素子Q3がBJTであれば、調整素子Q3の制御電極はベース電極であり、BJTのベース電極が1次側スイッチング素子駆動回路340bから供給されるベース電流によって電流制御される。調整素子Q3としては、特にノーマリオン接合型SITを可変抵抗素子として用いるようにゲート間隔を広げた広チャネル構造や、BJTやサイリスタ等の接合容量の変化を用いた構造が採用可能である。更に効率よく容量変化させる可変容量素子としては超階段型接合が採用可能である。
【0122】
図7に示す実装回路においては、送電側コイルL
1からの還流電流を考慮し第1の還流ダイオードFWD
1が励起素子Q1としてのMOSFETのソース・ドレイン間に、第2の還流ダイオードFWD
1が還流制御素子Q2としてのMOSFETのソース・ドレイン間に、第3の還流ダイオードFWD
3が調整素子Q3としてのMOSFETのソース・ドレイン間に、それぞれ保護素子として並列接続されている。ただし、調整素子Q3はスイッチング素子ではないので、第3の還流ダイオードFWD
3は省略可能である。
図2に示した回路と同様に、送電側コイルL
1からの還流電流が直流電源5に還流するのを防ぐため、電源側ダイオードD1が直流電源5と励起素子Q1の間に直列接続されている。
図7に示す実装回路でも負荷6の等価インピーダンスX
Leqを充電容量C
sで近似して表現している。
【0123】
第1実施形態と同様、充電電圧VC
Sの初期状態における値は満充電に近い十分高い電圧であるとする。先ず、
図4Aに示したのと同様な時刻t
0において、還流制御素子Q2をオフ状態、励起素子Q1及び調整素子Q3をオン状態にして、直流電源5による電源電圧E
0がステップ入力すると、時刻t=t
0=0の時点で、送電側コンデンサC
1は充電されておらず1次側充放電電圧V
C1=0であるので式(9)の要請から、送電側コイル電圧V
L1は、瞬時にΔV
L10=E
0のインパルス上昇をする。
【0124】
t
0 < t < t
1では、送電側コイルL
1は、送電側コンデンサC
1へ充電電流を還流電流として放出する。このため、送電側コイル電圧V
L1は、式(9)及び(13)を満足するように、1次側充放電電圧V
C1の増大と共に、
図3に実線で示したのと同様に送電側コイル電圧V
L1は減少し、1次側充放電電圧V
C1は
図3に破線で示すように増大する。時刻t=t
1=π/ω
0の直前において1次側充放電電圧V
C1≒2E
0に近づいたとき、式(9)の要請から送電側コイル電圧V
L1≒-E
0になる。
【0125】
時刻t=t1=π/ω0で、調整素子Q3のオン状態を維持したまま、励起素子Q1をオフにし、還流制御素子Q2をオンにすると、式(16)の要請から、1次側充放電電圧VC1は式(19)のように電源電圧の等価的拡大がされ、送電側コイル電圧VL1は式(18)のように電源電圧の等価的拡大がされる。時刻t=t2=2π/ω0で 調整素子Q3のオン状態を維持したまま、還流制御素子Q2をオフにし、励起素子Q1をオンにする相補型スイッチング遷移を行う。t=t2で還流制御素子Q2をオフにし、励起素子Q1をオンにすると、式(9)の要請から、1次側充放電電圧VC1は式(20)のように電源電圧の等価的拡大がされ、送電側コイル電圧VL1は式(21)のように電源電圧の等価的拡大がされる。以後同様な電源電圧の等価的拡大の動作が励起素子Q1と送電制御素子Q2との相補的スイッチングによって継続されるが、調整素子Q3はオン状態を維持したままである。調整素子Q3は、スイッチング素子として有効に機能していないが、可変抵抗素子、可変容量素子として、RLC直列共振回路のインピーダンスを調整して、給電側共振回路(34b,2b)と受電側共振回路(27a,3a)の間の二重共振による無接触電力伝送を高効率化させることができる。
【0126】
以上のとおり、第1実施形態の第1変形例に係る電力伝送システムによれば、伝送距離d≦600mmの長距離になっても、給電側共振回路(34b,2b)において電源電圧E0の整数倍にまで振動振幅を増幅することにより、効率のよい無接触電力伝送(ワイヤレス電力伝送)ができるという第1実施形態に係る電力伝送システムと同様な顕著な効果を奏することが可能である。そして、可変抵抗素子及び可変容量素子の機能を備えた調整素子Q3を給電側共振回路(34b,2b)に追加することにより、二重共振による無接触電力伝送を高効率化させ、伝送距離dが長い場合であっても、より有効な無接触電力伝送システムが可能になる。
【0127】
(第1実施形態の第2変形例)
本発明の第1実施形態の第2変形例に係る電力伝送システムは、
図8に示す振動増幅回路としての給電側共振回路(34b,2b)における電圧拡大効果を用いたシステムである。給電側共振回路(34b,2b)から電圧拡大されたウェイブレット状の電磁エネルギを受電側共振回路(27b,3b)に給電して、無接触で給電側共振回路(34b,2b)と受電側共振回路(27b,3b)との間で二重共振による無接触電力伝送をさせることを特徴としている。
図8に示すように、給電側共振回路(34b,2b)は、駆動制御回路34bと第2給電側共振回路2bを備え、受電側共振回路(27b,3b)は、受電回路27bと2次側回路3bを備える。第2給電側共振回路2bは、給電側共振回路(34a,2b)の内部に第1給電側共振回路と相補的に、時分割で過渡的に形成される回路である。
【0128】
第1実施形態の第2変形例に係る電力伝送システムの受電回路27bは、
図7に示した電力伝送システムに受電制御素子Q4を追加した構成となっている。新たに追加した受電制御素子Q4の制御電極(ゲート電極)は、車両側に設けられた2次側スイッチング素子駆動回路270aによって駆動制御される。一方、
図8に示すように、励起素子Q1、還流制御素子Q2及び調整素子Q3の制御電極(ゲート電極またはベース電極)は、1次側スイッチング素子駆動回路340bによって駆動制御される。
図2及び
図7に示した電力伝送システムと同様に、給電側共振回路(34b,2b)においては、励起素子Q1と還流制御素子Q2とを相補的に切り替え動作をさせ、第1給電側共振回路と第2給電側共振回路2aとを、時分割で交互に切り替えている。
図8に示した励起素子Q1、還流制御素子Q2、調整素子Q3及び受電制御素子Q4として、
図2及び
図7に示した電力伝送システムと同様なFET等の電力用半導体素子が用いられる。低い内部抵抗の要求と市場での入手可能性から、MOSFETを、
図8に示す実装回路の励起素子Q1、還流制御素子Q2及び受電制御素子Q4としてそれぞれ採用することが、工業的には優位と考えられる。一方、既に述べたとおり、可変抵抗素子や可変容量素子として用いる調整素子Q3には、接合型SITやBJT等の接合型構造が好ましい。
【0129】
図2等に示した電力伝送システムで説明したとおり、大電力用無接触電力伝送システムにおいてはジュール熱の発生が大きい。第2変形例に係る電力伝送システムでは励起素子Q1、還流制御素子Q2、調整素子Q3及び受電制御素子Q4として用いるとして用いる電力用半導体素子は4個のみで良いので、発熱による素子の破壊を防ぐ冷却構造が簡単に設計でき、しかも浮遊抵抗、浮遊容量、浮遊インダクタンスの発生も最小化できる。ただし第1変形例で説明したとおり、可変抵抗素子や可変容量素子として用いる調整素子Q3は常時オン状態での使用を前提としており、調整素子Q3は省略可能である。したがって、電力用半導体素子の個数を3個に減少させることもできる。結局、励起素子Q1、還流制御素子Q2及び受電制御素子Q4の3個のスイッチング素子をオン・オフ制御する単純な制御だけでよいので、第2給電側共振回路2bの電圧を高めて、ジュール熱の発生を押さえる設計も簡単にできる。
【0130】
図8に示す実装回路においては、第1の還流ダイオードFWD
1が励起素子Q1としてのMOSFETのソース・ドレイン間に、第2の還流ダイオードFWD
1が還流制御素子Q2としてのMOSFETのソース・ドレイン間に、第3の還流ダイオードFWD
3が調整素子Q3としてのMOSFETのソース・ドレイン間に、第4の還流ダイオードFWD
4が受電制御素子Q4としてのMOSFETのソース・ドレイン間に、それぞれ保護素子として並列接続されている。ただし、調整素子Q3はスイッチング素子ではないので、第3の還流ダイオードFWD
3は省略可能である。
図8に示すように、第4の還流ダイオードFWD
4は、受電側コイルL
2からの還流電流を流す方向に設けられるので、第3の還流ダイオードFWD
3とは反対向きに設けられている。
図2等に示した回路と同様に、送電側コイルL
1からの還流電流が直流電源5に還流するのを防ぐため、電源側ダイオードD1が直流電源5と励起素子Q1の間に直列接続されている。
図8に示す実装回路でも負荷6の等価インピーダンスX
Leqを充電容量C
sで近似して表現している。
【0131】
第1実施形態と同様に、充電電圧VC
Sの初期状態における値は満充電に近い十分高い電圧であるとし、且つ可変抵抗素子や可変容量素子として用いる調整素子Q3は常時オン状態であるとして、第1実施形態の第2変形例に係る電力伝送システムを説明する。先ず、
図4Aに示したのと同様な時刻t
0において、還流制御素子Q2及び受電制御素子Q4をオフ状態にし、励起素子Q1をオン状態にする。励起素子Q1をオンにして、直流電源5による電源電圧E
0をステップ入力すると、時刻t=t
0=0の時点で、送電側コンデンサC
1は充電されておらず1次側充放電電圧V
C1=0であるので、式(9)の要請から、送電側コイル電圧V
L1は、瞬時にΔV
L10=E
0のインパルス上昇をする。送電側コンデンサC
1の1次側充放電電圧V
C1は、リンギングをしながら一定電圧に充電される。
【0132】
t
0 < t < t
1では、送電側コイルL
1は、送電側コンデンサC
1へ充電電流を還流電流として放出する。このため、送電側コイル電圧V
L1は、式(9)及び(13)を満足するように、1次側充放電電圧V
C1の増大と共に、
図3に実線で示したのと同様に送電側コイル電圧V
L1は余弦関数に沿って減少し、1次側充放電電圧V
C1は
図3に破線で示すように余弦関数に従って増大する。時刻t=t
1=π/ω
0の直前において1次側充放電電圧V
C1≒2E
0に近づいたとき、式(9)の要請から送電側コイル電圧V
L1≒-E
0になる。
【0133】
図4Cに示したのと同様な時刻t=t
1=π/ω
0において、調整素子Q3のオン状態を維持したまま、励起素子Q1をオフにし、還流制御素子Q2をオンにすると、式(16)の要請から、1次側充放電電圧V
C1は式(19)のように電源電圧の等価的拡大がされ、送電側コイル電圧V
L1は、インパルス的な瞬時の変化の後、式(18)のように電源電圧の等価的拡大がされた波形で変化する。調整素子Q3が常時オン状態なので、送電側コンデンサC
1に蓄えられた電磁エネルギは送電側コイルL
1に蓄積され、更に、給電側共振回路(34b,2b)と受電側共振回路(27b,3b)の間の二重共振が生じる。送電側コンデンサC
1に蓄えられた電磁エネルギが送電側コイルL
1に移動し始めると1次側充放電電圧V
C1は、式(19)が示す余弦関数に従って減少する。
【0134】
時刻t=t1で励起素子Q1をオフ状態にした後、一定時間をおいて、受電制御素子Q4をオン状態にする。給電側共振回路(34b,2b)から受電側共振回路(27b,3b)への二重共振によって、受電側コイルL2に伝送された電磁エネルギは、受電制御素子Q4がオン状態であれば、受電側コンデンサC2を充電する。受電側コンデンサC2の充電が開始されると、受電側コンデンサC2の2次側充放電電圧VC2は、負の極大値から増大し始め、正の値になる。2次側充放電電圧VC2が負の値をとっている間に充電電流ICSは流れないが、2次側充放電電圧VC2が正の値になると、充電電流ICSが立ち上がり始める。
【0135】
充電電流I
CSが立ち上がり始めたタイミングで、受電制御素子Q4をオフ状態にする。受電制御素子Q4のターン・オフは、給電側共振回路(34b,2b)と受電側共振回路(27b,3b)の間の二重共振によって、2次側充放電電圧V
C2が最大になり、1次側充放電電圧V
C1が0Vになる3π/(2ω
0)の時点である。
図7に示した電力伝送システムの場合は、2次側充放電電圧V
C2が最大になった段階で、ごく僅かに受電側コイルL
2に電流が流れるが、第2変形例に係る電力伝送システムでは受電制御素子Q4がオフ状態なので、より有効に充電電流I
CSが負荷6に移動し始める。充電電流I
CSは、受電制御素子Q4がオフ状態になった後も増大しピーク値な到達した後、減少しゼロになる。
【0136】
一定時間を経過すると、2次側充放電電圧VC2の最大値は余弦関数に沿って減少するが、充電電圧VCSが高い場合、充電電流ICによる2次側充放電電圧VC2の最大値の減少量は小さく、給電側共振回路(34b,2b)と受電側共振回路(27b,3b)の間の二重共振に与える影響は少ない。充電電流ICが0Aとなった後に、受電制御素子Q4を再度オン状態にすると、受電側コンデンサC2の充電が開始される。第2給電側共振回路2bと2次側回路3bの電磁結合により送電側コンデンサC1の1次側充放電電圧VC1がOVから負に減少し始める。受電側コンデンサC2の放電が開始され、給電側共振回路(34b,2b)と受電側共振回路(27b,3b)の間の二重共振による還流が生じる。送電側コイルL1を流れる還流電流により、送電側コンデンサC1が充電され、1次側充放電電圧VC1が、負の極大値から正の値となり増大し始める。2次側充放電電圧VC2は余弦関数に沿って減少を開始し、負の極大値をとった後、0Vになる。
【0137】
以上のとおり、第1実施形態の第2変形例に係る電力伝送システムによれば、寄生抵抗による減衰があり、電源電圧E0までしか増幅できないという従来の無接触電力伝送システムの問題を解決し、伝送距離dが長くなる場合であっても、電源電圧E0の整数倍にまで振動振幅を増幅することにより、効率のよい無接触電力伝送(ワイヤレス電力伝送)ができる。
【0138】
(第1実施形態の第3変形例)
本発明の第1実施形態の第3変形例に係る電力伝送システムは、
図9に示すように、振動増幅回路としての給電側共振回路(34b,2b)における電圧拡大効果を用いたシステムである。給電側共振回路(34b,2b)から電圧拡大されたウェイブレット状の電磁エネルギを、受電側共振回路(27c,3b)に給電して、無接触で給電側共振回路(34b,2b)と受電側共振回路(27c,3b)との間で二重共振による無接触電力伝送をさせることを特徴としている。
図9に示すように、給電側共振回路(34b,2b)は、駆動制御回路34bと第2給電側共振回路2bを備え、受電側共振回路(27c,3b)は、受電回路27cと2次側回路3bを備える。第2給電側共振回路2bは、給電側共振回路(34a,2b)の内部に第1給電側共振回路と相補的に、時分割で過渡的に形成される回路である。
【0139】
第3変形例に係る電力伝送システムの受電側共振回路(27c,3b)を構成する受電回路27cは、第1実施形態の第2変形例に係る電力伝送システムの受電回路27bに、負荷転送制御素子Q5を追加した構成となっている。第3変形例に係る電力伝送システムの給電側共振回路(34b,2b)が、励起素子Q1と還流制御素子Q2とを相補的に切り替え動作をさせ、第1給電側共振回路と第2給電側共振回路2aとを、時分割で交互に切り替える特徴は、
図2で説明した回路構成と共通の技術的特徴である。
図9に示した励起素子Q1、還流制御素子Q2、調整素子Q3、受電制御素子Q4及び負荷転送制御素子Q5としては、
図2,7及び8に示した回路と同様に、FET等の電力用半導体素子を用いることが可能である。励起素子Q1、還流制御素子Q2及び調整素子Q3の制御電極(ゲート電極)は1次側スイッチング素子駆動回路340bによって駆動制御され、受電制御素子Q4及び負荷転送制御素子Q5の制御電極(ゲート電極またはべース電極)は、車両側に設けられた2次側スイッチング素子駆動回路270bによって駆動制御される。低い内部抵抗の要求を考慮すると、現状での市場での入手可能性により、MOSFETが
図9に示した実装回路の励起素子Q1、還流制御素子Q2、受電制御素子Q4及び負荷転送制御素子Q5としてそれぞれ採用することが好ましい。調整素子Q3には接合型SITやBJT等の接合型構造が好ましい。
【0140】
第3変形例に係る電力伝送システムでは励起素子Q1、還流制御素子Q2、調整素子Q3、受電制御素子Q4及び負荷転送制御素子Q5として用いるとして用いる電力用半導体素子は5個のみで良いので、ジュール熱の発生を防ぐ冷却構造が簡単に設計でき、しかも浮遊抵抗、浮遊容量、浮遊インダクタンスの発生も最小化できる。ただし第1変形例で説明したとおり、調整素子Q3は常時オン状態での使用を前提としており、調整素子Q3は省略可能である。したがって、電力用半導体素子を4個とすることもできる。結局、励起素子Q1、還流制御素子Q2、受電制御素子Q4及び負荷転送制御素子Q5の4個のスイッチング素子をオン・オフ制御する単純な制御だけでよいので、第2給電側共振回路2bの電圧を高めてジュール熱の発生を押さえる設計も簡単にできる。
【0141】
図9に示す実装回路においては、第1の還流ダイオードFWD
1が励起素子Q1としてのMOSFETのソース・ドレイン間に、第2の還流ダイオードFWD
1が還流制御素子Q2としてのMOSFETのソース・ドレイン間に、第3の還流ダイオードFWD
3が調整素子Q3としてのMOSFETのソース・ドレイン間に、第4の還流ダイオードFWD
4が受電制御素子Q4としてのMOSFETのソース・ドレイン間に、第5の還流ダイオードFWD
5が第4の半導体素子Q4としてのMOSFETのソース・ドレイン間に、それぞれ保護素子として並列接続されている。ただし、調整素子Q3はスイッチング素子ではないので、第3の還流ダイオードFWD
3は省略可能である。
図9に示すように、第4の還流ダイオードFWD
4は、受電側コイルL
2からの還流電流を流す方向に設けられるので、第3の還流ダイオードFWD
3とは反対向きに設けられているのは
図8と同様である。
図2、
図7及び
図8に示した回路と同様に、送電側コイルL
1からの還流電流が直流電源5に還流するのを防ぐため、電源側ダイオードD1が直流電源5と励起素子Q1の間に直列接続されている。
図9に示す実装回路でも負荷6の等価インピーダンスX
Leqを充電容量C
sで近似して表現している。
【0142】
図9に示すように、第2変形例に係る電力伝送システムに、負荷転送制御素子Q5を追加した構成となっても、振動増幅回路として機能している給電側共振回路(34b,2b)の電圧拡大効果の本質は変わらない。振動増幅回路の基本的動作や、給電側共振回路(34b,2b)と受電側共振回路(27c,3c)の間の二重共振における1次側充放電電圧V
C1や2次側充放電電圧V
C2等の時間的変化(過渡応答)を示す波形や二重共振の態様は、
図2、
図7及び
図8に示した回路と殆ど同じである。
【0143】
第3変形例に係る電力伝送システムにおいても、可変抵抗素子や可変容量素子として用いる調整素子Q3は常時オン状態であるとして説明する。先ず、
図4Aに示したのと同様な時刻t
0において、受電制御素子Q4及び負荷転送制御素子Q5をオフ状態にし、励起素子Q1をオン状態にする。励起素子Q1をオンにして、直流電源5による電源電圧E
0をステップ入力すると、時刻t=t
0=0の時点で、送電側コンデンサC
1は充電されておらず1次側充放電電圧V
C1=0であるので、式(9)の要請から、送電側コイル電圧V
L1は、瞬時にΔV
L10=E
0のインパルス上昇をする。送電側コンデンサC
1の1次側充放電電圧V
C1は、リンギングをしながら一定電圧に充電される。
【0144】
t
0 < t < t
1では、送電側コイルL
1は、送電側コンデンサC
1へ充電電流を還流電流として放出する。このため、送電側コイル電圧V
L1は、式(9)及び(13)を満足するように、1次側充放電電圧V
C1の増大と共に、
図3に実線で示したのと同様に送電側コイル電圧V
L1は余弦関数に沿って減少し、1次側充放電電圧V
C1は
図3に破線で示すように余弦関数に従って増大する。時刻t=t
1=π/ω
0の直前において1次側充放電電圧V
C1≒2E
0に近づいたとき、式(9)の要請から送電側コイル電圧V
L1≒-E
0になる。
【0145】
図4Cに示したのと同様な時刻t=t
1=π/ω
0において、調整素子Q3のオン状態を維持したまま、励起素子Q1、受電制御素子Q4及び負荷転送制御素子Q5をオフにし、還流制御素子Q2をオンにすると、式(16)の要請から、1次側充放電電圧V
C1は式(19)のように電源電圧の等価的拡大がされ、送電側コイル電圧V
L1は、インパルス的な瞬時の変化の後、式(18)のように電源電圧の等価的拡大がされた波形で変化する。調整素子Q3が常時オン状態なので、送電側コンデンサC
1に蓄えられた電磁エネルギは送電側コイルL
1に蓄積され、更に、第2給電側共振回路2bと2次側回路3bの間の二重共振が生じる。送電側コンデンサC
1に蓄えられた電磁エネルギが送電側コイルL
1に移動し始めると1次側充放電電圧V
C1は、式(19)が示す余弦関数に従って減少する。
【0146】
時刻t
1後、一定時間をおいて、励起素子Q1及び負荷転送制御素子Q5のオフ状態に維持して、受電制御素子Q4をオン状態にする。調整素子Q3が常時オン状態なので、送電側コンデンサC
1に蓄えられた電磁エネルギは送電側コイルL
1に蓄積され、更に、給電側共振回路(34b,2b)と受電側共振回路(27c,3c)の間の二重共振が生じる。送電側コンデンサC
1に蓄えられた電磁エネルギが送電側コイルL
1に移動し始めると1次側充放電電圧V
C1は、式(19)が示す余弦関数に従って減少し、3π/(2ω
0)の時点で0Vになる。
図5A及び
図5Bに示したように、給電側共振回路(34b,2b)と受電側共振回路(27c,3c)の間の二重共振によって、受電側コイルL
2に伝送された電磁エネルギは、受電制御素子Q4がオン状態なので、受電側コンデンサC
2を充電する。
【0147】
第1実施形態の第2変形例に係る電力伝送システムの場合は、時刻t1において、受電側コンデンサC2を充電すると同時に、ごく僅かに負荷6側に電流が流れていた。しかし、第1実施形態の第3変形例に係る電力伝送システムでは負荷転送制御素子Q5がオフ状態なので、負荷6に側に電流が流れることがなく、より有効に受電側コンデンサC2に電荷が蓄えられる。受電側コンデンサC2の充電が開始されると、受電側コンデンサCの2次側充放電電圧VC2は、負の極大値から増大し始め、正の値になる。2次側充放電電圧VC2が正の値になったとき、負荷転送制御素子Q5をオンにすると、充電電流ICSが負荷6に流れ始まる。
【0148】
負荷転送制御素子Q5をオンにした時刻で、受電制御素子Q4をオフ状態にする。受電制御素子Q4のオフ状態は、給電側共振回路(34b,2b)と受電側共振回路(27c,3c)の間の二重共振によって、2次側充放電電圧VC2が最大になり、1次側充放電電圧VC1が0Vになる時点である。第1実施形態の第2変形例に係る電力伝送システムと同様に、受電制御素子Q4がオフ状態なので、より有効に充電電流ICSが負荷6に移動し始める。充電電流ICSは、受電制御素子Q4がオフ状態になった後も増大しピーク値に到達した後、減少しゼロになる。
【0149】
以上のとおり、第1実施形態の第3変形例に係る電力伝送システムによれば、従来の無接触電力伝送システムの問題を解決し、伝送距離dが長くなる場合であっても、電源電圧E0の整数倍にまで振動振幅を増幅することができるので、効率のよい無接触電力伝送(ワイヤレス電力伝送)が実現できる。
【0150】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は第1実施形態及びその変形例によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。例えば、第1実施形態の説明においては、振動増幅回路を給電側共振回路(34a,2a)に適用することにより大きな振動振幅を得て、無接触電力伝送(ワイヤレス電力伝送)を行う場合を例示的に説明したが、第1実施形態に係る振動増幅回路は、無接触電力伝送システムのみに限定されるものではない。
【0151】
第1実施形態で説明したような、振動振幅を式(32a)及び(32b)に示すように、直流電源5が供給する電源電圧E0の整数倍に増幅できる振動増幅回路の顕著な効果と、そのための技術的思想は、直流電源5が供給する電源電圧E0の以上の大きな振動振幅を実現したい種々の技術分野に適用し応用することが可能である。以上のとおり、本発明は本明細書及び図面に記載していない様々な実施形態、変形例、運用技術等を含むと共に、本発明の技術的範囲は、上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0152】
2a,2b…第2給電側共振回路、3a,3b…2次側回路、5…直流電源、6…負荷、11…給電盤、12…受電盤、27a,27b,27c…受電回路、28…検出器、29a…給電装置、31a,31b…車輌、32…間隔制御機構、33…1次側操作部、340a…1次側スイッチング素子駆動回路、270a,270b…2次側スイッチング素子駆動回路、342a…伝送データ記憶装置、342b…プログラム記憶装置、34a,34b…駆動制御回路