(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135729
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】冷却部材
(51)【国際特許分類】
F28F 1/32 20060101AFI20230922BHJP
H01L 23/473 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
F28F1/32 F
H01L23/46 Z
F28F1/32 N
F28F1/32 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040957
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 恒▲隆▼
(72)【発明者】
【氏名】村上 浩二
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼田 裕毅
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BA02
5F136BA14
5F136BA22
5F136CB07
5F136CB08
5F136FA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低コスト化が図られた構成により、効果的な冷却性能を確保することが可能な技術を提供する。
【解決手段】冷却部材は、冷媒が流れる方向に沿う第1方向、且つ第1方向に直交する第2方向に広がり、第1方向及び第2方向に直交する第3方向に厚みを有する板形状のベース部と、ベース部から第3方向一方側に突出して第1方向に延び、第2方向に並べて配置される複数のフィンと、を有する。複数のフィンのそれぞれは、第2方向一方側に突出する凸部と、第2方向他方側から一方側に凹む凹部とが第1方向の同位置に配置されて湾曲する湾曲部を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒が流れる方向に沿う第1方向、且つ前記第1方向に直交する第2方向に広がり、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向に厚みを有する板形状のベース部と、
前記ベース部から前記第3方向一方側に突出して第1方向に延び、前記第2方向に並べて配置される複数のフィンと、
を有し、
前記複数のフィンのそれぞれは、前記第2方向一方側に突出する凸部と、前記第2方向他方側から一方側に凹む凹部とが第1方向の同位置に配置されて湾曲する湾曲部を有する、冷却部材。
【請求項2】
前記複数のフィンのそれぞれは、前記第1方向に並べて配置される複数の前記湾曲部を有する、請求項1に記載の冷却部材。
【請求項3】
前記複数の湾曲部は、前記第2方向の同方向に湾曲する、請求項2に記載の冷却部材。
【請求項4】
前記複数の湾曲部は、前記第2方向一方側に湾曲する前記湾曲部と、前記第2方向他方側に湾曲する前記湾曲部とが前記第1方向に交互に配置される、請求項2に記載の冷却部材。
【請求項5】
前記第2方向に隣り合う前記フィン同士の間隔をL0、前記第1方向に隣り合う前記湾曲部同士の距離をL1、前記第2方向への前記湾曲部の突出量L2、とするとき、以下の式(1)、式(2)を満足する、請求項2から請求項4のいずれかに記載の冷却部材。
L1/L0≧3 ・・・(1)
L2/L0≦0.54 ・・・(2)
【請求項6】
前記湾曲部は、前記複数のフィンそれぞれにおいて、前記第1方向の同位置に配置される、請求項1から請求項5のいずれかに記載の冷却部材。
【請求項7】
前記湾曲部は、前記第2方向に1つおきに並べて配置される前記複数のフィンそれぞれにおいて、前記第1方向の同位置に配置される、請求項1から請求項5のいずれかに記載の冷却部材。
【請求項8】
前記湾曲部は、前記第3方向から見て半円状であり、前記第2方向から見て矩形状である、請求項1から請求項7のいずれかに記載の冷却部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷却部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発熱体の冷却に冷却部材が用いられる。冷却部材は、ベース部と、複数の柱状フィンと、複数の板状フィンと、を有する。複数の柱状フィンは、ベース部から冷媒の流路に向かって突出する。複数の板状フィンは、冷媒の流通方向に延び、隣り合う柱状フィンを連結する。板状フィンによって冷媒の流速低下を抑制することができ、柱状フィンのみの構成と比較して冷却性能を向上させることができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の冷却部材は、柱状フィンと板状フィンとをロウ付け等の接合方法によって連結する必要がある。したがって、複数の板状フィンそれぞれを柱状フィンに連結すると、製造コストが高くなることに課題があった。
【0005】
上記の点に鑑み、本開示は、低コスト化が図られた構成により、効果的な冷却性能を確保することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の例示的な冷却部材は、冷媒が流れる方向に沿う第1方向、且つ第1方向に直交する第2方向に広がり、第1方向及び第2方向に直交する第3方向に厚みを有する板形状のベース部と、前記ベース部から第3方向一方側に突出して第1方向に延び、第2方向に並べて配置される複数のフィンと、を有する。前記複数のフィンのそれぞれは、第2方向一方側に突出する凸部と、第2方向他方側から一方側に凹む凹部とが第1方向の同位置に配置されて湾曲する湾曲部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、低コスト化が図られた構成で、効果的な冷却性能を確保することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態の冷却部材の斜視図である。
【
図6】
図6は、フィンの第2方向一方側から見た斜視図である。
【
図7】
図7は、フィンの第2方向一方側から見た部分拡大斜視図である。
【
図8】
図8は、フィンの第2方向他方側から見た斜視図である。
【
図9】
図9は、フィンの第2方向他方側から見た部分拡大斜視図である。
【
図10】
図10は、変形例1の冷却部材の部分拡大断面図である。
【
図11】
図11は、変形例2の冷却部材の部分拡大断面図である。
【
図12】
図12は、比較例1の冷却部材の部分拡大断面図である。
【
図13】
図13は、比較例2の冷却部材の部分拡大断面図である。
【
図14】
図14は、比較例3の冷却部材の部分拡大断面図である。
【
図15】
図15は、実施形態及び変形例と比較例との冷却部材の発熱体の最大温度を示すグラフである。
【
図16】
図16は、実施形態及び変形例と比較例との冷却部材の冷媒の圧力損失を示すグラフである。
【
図17】
図17は、実施形態の冷却部材のフィン形状を変更した場合の発熱体の最大温度を示すグラフである。
【
図18】
図18は、実施形態の冷却部材のフィン形状を変更した場合の冷媒の圧力損失を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本開示の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0010】
本書では、第1方向をX方向として、第1方向一方側を指す矢印X1と、第1方向他方側を指す矢印X2と、を図中に示した。第1方向Xは、冷媒が流れる方向に沿う。また、第1方向Xに直交する第2方向をY方向として、第2方向一方側を指す矢印Y1と、第2方向他方側を指す矢印Y2と、を図中に示した。また、第1方向X及び第2方向Yに直交する第3方向をZ方向として、第3方向一方側を指す矢印Z1と、第3方向他方側を指す矢印Z2と、を図中に示した。なお、これらの方向の定義は、冷却部材の使用時の向き及び位置関係を限定するものではない。また、本書で用いる「平行」、「直交」は、厳密な意味で平行、直交を表すものではなく、略平行、略直交を含む。
【0011】
<1.冷却部材の概略構成>
図1は、実施形態の冷却部材1の斜視図である。
図2は、冷却部材1の側面図である。
図3及び
図4は、冷却部材1の平面図及び底面図である。
【0012】
冷却部材1は、本実施形態において、図示しない液冷ジャケットに設置され、第1方向Xに並べて配置される複数の発熱体Hを冷却する部材である。発熱体Hは、例えば車両の車輪を駆動するためのトラクションモータに備えられるインバータのパワートランジスタである。当該パワートランジスタは、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。この場合、冷却部材1は、トラクションモータに搭載される。なお、発熱体Hの個数は、
図2に示す6個以外の複数個であっても良いし、1個であっても良い。
【0013】
冷却部材1は、ベース部2と、複数のフィン3と、を有する。
【0014】
ベース部2は、第1方向X、且つ第2方向Yに広がり、第3方向Zに厚みを有する板形状である。ベース部2は、熱伝導性の高い金属で構成され、例えば銅で構成される。
【0015】
複数のフィン3は、ベース部2の第3方向一方側Z1の一面に配置される。複数のフィン3は、ベース部2から第3方向一方側Z1に突出し、第1方向Xに延びる。フィン3は、第1方向X及び第3方向Zに延びる板形状であり、例えば金属で構成される。複数のフィン3は、第2方向Yに並べて配置される。
【0016】
発熱体Hは、ベース部2の第3方向他方側Z2の一面に、直接的または間接的に接触する。発熱体Hは、第3方向Zから見て複数のフィン3と重なる。冷媒は、第2方向Yに隣り合う複数のフィン3間を第1方向Xに沿って流れる。これにより、冷媒は、ベース部2及び複数のフィン3を介して、発熱体Hから吸熱する。冷媒は、例えば水やエチレングリコール水溶液である。このようにして、冷却部材1は、発熱体Hを冷却する。
【0017】
<2.フィンの詳細構成>
<2-1.実施形態の基本構成>
図5は、冷却部材1の部分拡大断面図である。
図6及び
図7は、フィン3の第2方向一方側Y1から見た斜視図及び部分拡大斜視図である。
図8及び
図9は、フィン3の第2方向他方側Y2から見た斜視図及び部分拡大斜視図である。
【0018】
フィン3は、前述のように、第1方向X及び第3方向Zに延びる。フィン3は、第3方向Zに対し、冷媒が流れる第1方向Xに長く延びる。フィン3は、壁部3aと、底板部3bと、天板部3cと、を有する。
【0019】
壁部3aは、第1方向X及び第3方向Zに延び、第2方向Yに厚みを有する板形状である。底板部3bは、壁部3aの第3方向他方側Z2の端部から第2方向一方側Y1へ折り曲げられて形成される。天板部3cは、壁部3aの第3方向一方側Z1の端部から第2方向一方側Y1へ折り曲げられて形成される。底板部3bと、天板部3cとは、第3方向Zに対向する。これにより、フィン3は、第1方向Xから見て、コ字状の断面を有する。
【0020】
なお、底板部3b及び天板部3cそれぞれの第2方向Yの先端部は、第2方向Yに隣り合う別のフィン3の壁部3aに接触する。これにより、第2方向Yに隣り合うフィン3同士の2つの壁部3aと、一方のフィン3の底板部3b及び天板部3cとによって囲まれる閉空間が形成される。冷媒は、この閉空間内を第1方向Xに沿って流通する。複数のフィン3の第2方向一方側Y1の端部には、壁部3aに相当する部分のみによって構成されるカバー部材4が配置される(
図3参照)。
【0021】
複数のフィン3のそれぞれは、湾曲部31を有する。湾曲部31は、フィン3の壁部3aに配置される。湾曲部31は、第1方向Xに対向する凸部31a及び凹部31bによって構成される。
【0022】
湾曲部31は、凸部31aと、凹部31bとが第1方向Xの同位置に配置されて湾曲する。凸部31aは、第2方向一方側Y1に突出する。凹部31bは、第2方向他方側Y2から第2方向一方側Y1に凹む。湾曲部31は、フィン3の壁部3aに対し、例えばプレス加工を行うことによって形成することができる。
【0023】
上記の構成によれば、冷媒が流れる第1方向Xに延びるフィン3に対し、一体の湾曲部31を、プレス加工等によって容易に形成することができる。そして、冷媒が湾曲部31に衝突すると、第1方向Xに延びる壁部3aの側面で発達した温度境界層が破壊され、熱伝達特性が向上する。したがって、低コスト化が図られた構成により、効果的な冷却性能を確保することが可能である。
【0024】
また、
図5に示すように、複数のフィン3のそれぞれは、第1方向Xに並べて配置される複数の湾曲部31を有する。本実施形態において、複数の湾曲部31は、例えば第1方向Xに距離L1ごとに等間隔で並べて配置される。この構成によれば、壁部3aの側面で発達した温度境界層を破壊して乱流の生成を促進することができる。これにより、熱伝達特性をより向上させることができ、冷却性能を高めることが可能になる。
【0025】
また、
図5に示すように、複数の湾曲部31は、第2方向一方側Y1に向かって湾曲する。すなわち、複数の湾曲部31は、第2方向Yの同方向に湾曲する。この構成によれば、フィン3に対し、複数の湾曲部31を容易に形成することができる。
【0026】
また、
図5に示すように、複数のフィン3のそれぞれは、同形状の部材によって構成される。これにより、湾曲部31は、複数のフィン3それぞれにおいて、第1方向Xの同位置に配置される。言い換えれば、湾曲部31は、複数のフィン3間において、第2方向Yに沿って並ぶ。この構成によれば、同形状のフィン3を並べて冷却性能の向上が図られた流路を形成することができ、コストアップを抑制することができる。
【0027】
また、
図5から
図9に示すように、湾曲部31は、第3方向Zから見て半円状である。さらに、湾曲部31は、第2方向Yから見て矩形状である。すなわち、湾曲部31は、第3方向Zに延びる円筒を、第1方向X及び第3方向Zに沿って分割した半円筒状である。この構成によれば、フィン3の壁部3aの側面において、第3方向Zの全域にわたって乱流の生成を促進させることができ、熱伝達特性を向上させることが可能である。
【0028】
<2-2.変形例1>
図10は、変形例1の冷却部材1の部分拡大断面図である。変形例1の冷却部材1は、複数のフィン3を有する。複数のフィン3のそれぞれは、複数の湾曲部31を有する。湾曲部31は、第2方向Yに1つおきに並べて配置される複数のフィン3それぞれにおいて、第1方向Xの同位置に配置される。
【0029】
<2-3.変形例2>
図11は、変形例2の冷却部材1の部分拡大断面図である。変形例2の冷却部材1は、複数のフィン3を有する。複数のフィン3のそれぞれは、複数の湾曲部31を有する。複数の湾曲部31は、第2方向一方側Y1に湾曲する湾曲部31Mと、第2方向他方側Y2に湾曲する湾曲部31Nとが第1方向Xに交互に配置される。
【0030】
<3.冷却部材の冷却性能>
次に、本開示の冷却部材の冷却性能について、冷却部材の構成が、発熱体の最大温度及び冷媒の圧力損失に与える影響を評価した。その結果について、
図12から
図18を用いて説明する。なお、本開示の実施形態(Ex)、変形例1(Ev1)、及び変形例2(Ev2)の冷却部材1は、
図1から
図11を用いて先に説明した構成を有する。
【0031】
<3-1.比較例に対する効果>
図12、
図13、及び
図14は、比較例1(C1)、比較例2(C2)、及び比較例3(C3)の冷却部材の部分拡大断面図である。
【0032】
比較例1(C1)の冷却部材は、
図12に示すように、ベース部102に対し、複数のフィン103を有する。フィン103は、第1方向X及び第3方向Zに延びる板形状である。フィン103は、第3方向Zに対し、冷媒が流れる第1方向Xに長く延びる。複数のフィン103は、第2方向Yに所定の間隔を空けて、並べて配置される。冷媒は、第2方向Yに隣り合う複数のフィン103の間を通り、第1方向Xに沿って流通する。
【0033】
比較例2(C2)の冷却部材は、
図13に示すように、ベース部202に対し、複数のフィン203を有する。フィン203は、第3方向Zに延びる円柱形状の、いわゆるピンフィンである。複数のフィン203は、第1方向X及び第2方向Yに互いに間隔を空けて、並べて配置される。冷媒は、第1方向X及び第2方向Yに隣り合う複数のフィン203の間を通り、第1方向Xに沿って流通する。
【0034】
比較例3(C3)の冷却部材は、
図14に示すように、ベース部302に対し、複数のフィン303と、複数の仕切り304と、を有する。フィン303は、第3方向Zに延びる円柱形状の、いわゆるピンフィンである。複数のフィン303は、第1方向X及び第2方向Yに互いに間隔を空けて、並べて配置される。仕切り304は、第1方向X及び第3方向Zに延びる板形状である。仕切り304は、第1方向Xに隣り合う2つのフィン303を連結する。冷媒は、複数のフィン303及び複数の仕切り304によって区分され、第1方向Xに沿って延びる間隙内を通り、第1方向Xに沿って流通する。
【0035】
図15は、実施形態及び変形例と比較例との冷却部材の発熱体の最大温度を示すグラフである。
図15は、シミュレーションによる発熱体の最大温度の結果を示している。
図15の横軸は、比較例1(C1)、比較例2(C2)、及び比較例3(C3)の冷却部材と、本開示の実施形態(Ex)、変形例1(Ev1)、及び変形例2(Ev2)の冷却部材1との結果であることを示す。
図15の縦軸「MT」は、発熱体の最大温度であって、上に行くほど温度が高いことを示す。
【0036】
図15によれば、板形状のフィン103のみで構成された比較例1(C1)の冷却部材に対し、ピンフィンを有する比較例2(C2)及び比較例3(C3)の冷却部材は、発熱体の最大温度が低く、冷却性能が高いことが分かる。比較例2(C2)及び比較例3(C3)の冷却部材は、ピンフィンを設けることで、発熱体に対する冷却性能が向上することを表している。
【0037】
これに対して、実施形態(Ex)、変形例1(Ev1)、及び変形例2(Ev2)の冷却部材1は、比較例2(C2)及び比較例3(C3)の冷却部材と同様に、発熱体の最大温度が低く、冷却性能が高いことが分かる。実施形態(Ex)、変形例1(Ev1)、及び変形例2(Ev2)の冷却部材1は、フィン3に湾曲部31を設けることで、ピンフィンを有する比較例の冷却部材と同様に、発熱体に対する冷却性能が向上することを表している。したがって、低コスト化が図られた構成により、効果的な冷却性能を確保することが可能である。
【0038】
図16は、実施形態及び変形例と比較例との冷却部材の冷媒の圧力損失を示すグラフである。
図16は、シミュレーションによる冷媒の圧力損失の結果を示している。
図16の横軸は、比較例1(C1)、比較例2(C2)、及び比較例3(C3)の冷却部材と、本開示の実施形態(Ex)、変形例1(Ev1)、及び変形例2(Ev2)の冷却部材1との結果であることを示す。
図16の縦軸「PL」は、冷媒の圧力損失であって、上に行くほど損失が大きいことを示す。
【0039】
図16によれば、板形状のフィン103のみで構成された比較例1(C1)の冷却部材は、冷媒の圧力損失が最も低いことを示している。比較例2(C2)及び比較例3(C3)の冷却部材は、ピンフィンを有することで、比較例1(C1)の冷却部材と比べて冷媒の圧力損失が高いことが分かる。しかしながら、発熱体に対する冷却性能(
図15参照)を考慮すれば、当該圧力損失は許容できる範囲内である。
【0040】
実施形態(Ex)、変形例1(Ev1)、及び変形例2(Ev2)の冷却部材1における冷媒の圧力損失は、比較例2(C2)及び比較例3(C3)の冷却部材と同程度である。すなわち、実施形態(Ex)、変形例1(Ev1)、及び変形例2(Ev2)の冷却部材1は、許容範囲内の冷媒の圧力損失であり、比較例の冷却部材よりも低コスト化が図られた構成で、効果的な冷却性能を確保することが可能である。
【0041】
なお、変形例1(Ev1)の冷却部材1の湾曲部31は、
図10に示すように、第2方向Yに1つおきに並べて配置される複数のフィン3それぞれにおいて、第1方向Xの同位置に配置される。また、変形例2(Ev2)の冷却部材1の複数の湾曲部31は、
図11に示すように、第2方向一方側Y1に湾曲する湾曲部31Mと、第2方向他方側Y2に湾曲する湾曲部31Nとが第1方向Xに交互に配置される。これらの変形例においても、低コスト化が図られた構成により、効果的な冷却性能を確保することが可能である。
【0042】
<3-2.フィン形状を変更した場合の効果>
本開示の冷却部材1は、例えば
図5に示すフィン3の形状を有する。第2方向Yに隣り合うフィン3同士は、間隔L0を有する。第1方向Xに隣り合う湾曲部31同士は、距離L1を有する。湾曲部31は、壁部3aに対し、突出量L2で第2方向Yへ突出する。そして、
図5に示す実施形態(Ex)の冷却部材1のフィン3を代表とし、フィン形状を変更した場合の効果を評価した。
【0043】
図17は、実施形態の冷却部材1のフィン形状を変更した場合の発熱体Hの最大温度を示すグラフである。
図17は、シミュレーションによる発熱体の最大温度の結果を示している。詳細に言えば、本開示の実施形態(Ex)の冷却部材1のフィン3(
図5参照)において、第2方向Yに隣り合うフィン3同士の間隔L0に対する第2方向Yへの湾曲部31の突出量L2の割合「L2/L0」を変更した。
図17の横軸は、フィン3の「L2/L0」であって、5種類で評価した。本開示の実施形態(Ex)は、L2/L0=0.533である。
図17の縦軸「MT」は、発熱体の最大温度であって、
図15に示す温度T1からT2までの範囲に対応する。
【0044】
図17によれば、実施形態(Ex、L2/L0=0.533)の冷却部材1が、最も発熱体の最大温度が低く、冷却性能が高いことが分かる。そして、L2/L0=0.600以上になると、発熱体の最大温度が徐々に上昇していくことが分かる。これにより、発熱体の最大温度に関して、フィン3の「L2/L0」は、0.54以下であることが好ましい。
【0045】
図18は、実施形態の冷却部材1のフィン形状を変更した場合の冷媒の圧力損失を示すグラフである。
図18は、シミュレーションによる冷媒の圧力損失の結果を示している。
図18の横軸は、
図17と同様に、フィン3の「L2/L0」であって、5種類で評価した。
図18の縦軸「PL」は、冷媒の圧力損失であって、上に行くほど損失が大きいことを示す。
【0046】
図18によれば、フィン3の「L2/L0」が大きくなるにつれて、冷媒の圧力損失が上昇していくことが分かる。すなわち、フィン3の壁部3aに対する湾曲部31の突出量L2が大きくなるにつれて、冷媒の圧力損失が上昇することが分かる。これにより、冷媒の圧力損失に関して、フィン3の「L2/L0」は、できるだけ小さくすることが好ましい。
【0047】
図17及び
図18に基づく評価から、冷却部材1は、第2方向Yに隣り合うフィン3同士の間隔をL0、第1方向Xに隣り合う湾曲部31同士の距離をL1、第2方向Yへの湾曲部31の突出量をL2、とするとき、以下の式(1)、式(2)を満足する。
L1/L0≧3 ・・・(1)
L2/L0≦0.54 ・・・(2)
【0048】
実施形態(Ex)、変形例1(Ev1)、及び変形例2(Ev2)の冷却部材1は、全てこれら2つの式に係る条件に基づいて構成されている。この構成によれば、第2方向Yに隣り合うフィン3間において冷媒の流れを妨げることなく、冷却性能の向上を図ることができる。
【0049】
<4.その他>
以上、本開示の実施形態を説明した。なお、本開示の範囲は、上記に限定されるものではない。本開示は、その趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換及び他の種々の変更を加えて実施することができる。また、上記の実施形態及び変形例は、矛盾が生じない範囲で適宜任意に組み合わせることができる。
【0050】
例えば、発熱体と冷却部材との間に、ベイパーチャンバーまたはヒートパイプを設ける構成としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本開示は、各種発熱体の冷却に利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1・・・冷却部材、2・・・ベース部、3・・・フィン、3a・・・壁部、3b・・・底板部、3c・・・天板部、4・・・カバー部材、31・・・湾曲部、31a・・・凸部、31b・・・凹部、31M・・・湾曲部、31N・・・湾曲部、102・・・ベース部、103・・・フィン、202・・・ベース部、203・・・フィン、302・・・ベース部、303・・・フィン、304・・・仕切り、H・・・発熱体、X・・・第1方向、Y・・・第2方向、Z・・・第3方向