(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135737
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】無線通信システム
(51)【国際特許分類】
G08B 25/10 20060101AFI20230922BHJP
H04M 1/00 20060101ALI20230922BHJP
H04M 1/72412 20210101ALI20230922BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20230922BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
G08B25/10 D
H04M1/00 U
H04M1/72412
G08B21/02
G08B25/04 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040971
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】溝井 俊明
(72)【発明者】
【氏名】松井 章
(72)【発明者】
【氏名】堀田 昇
【テーマコード(参考)】
5C086
5C087
5K127
【Fターム(参考)】
5C086AA22
5C086AA32
5C086AA49
5C086BA13
5C086CA06
5C086CA21
5C086CB21
5C086DA15
5C086EA08
5C086EA13
5C086FA02
5C086FA06
5C086FA17
5C087AA02
5C087AA10
5C087AA19
5C087AA32
5C087AA37
5C087BB18
5C087BB64
5C087BB73
5C087DD03
5C087DD27
5C087DD35
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF03
5C087FF05
5C087FF13
5C087FF16
5C087FF23
5C087GG06
5C087GG29
5C087GG31
5C087GG36
5C087GG40
5C087GG57
5C087GG67
5C087GG70
5C087GG83
5C087GG85
5K127AA26
5K127BA03
5K127BB22
5K127BB33
5K127CA04
5K127DA15
5K127GA12
5K127GB07
5K127GD03
5K127HA11
5K127JA25
(57)【要約】
【課題】作業者による操作が容易な、作業者の安全管理のために用いられる無線通信システムを得る。
【解決手段】移動端末10は、外部との通話、作業者同士で通話を行う機能の他に、作業者の安全等に関わる信号を発信する機能等を有する。基地局20は、無線LANによって移動端末10と接続され、全ての移動端末10と通信可能な箇所に設置される。作業者や移動端末10に関しての異常が認められた場合には、この旨は、基地局20、EPC30、SIPサーバ40からネットワークを介して警備用端末50に伝わる。作業者は、移動端末10の他に、より小型であり限定された機能のみを有するリモコン装置70も保持する。リモコン装置70が通信をする相手は、このリモコン装置70を保持する作業者が同時に保持する移動端末10のみである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者に携帯される移動端末と、当該移動端末と無線通信により接続された基地局と、を具備し、前記移動端末による前記基地局を介した通信が可能とされた無線通信システムであって、
前記移動端末とは別体とされ、複数の操作ボタンが設けられた操作部を具備し、前記操作ボタンの各々には、前記移動端末を用いた通話に関わる操作に対応した機能が対応付けられ、前記操作ボタンのうちの一つが操作されると、当該操作ボタンに対応した前記移動端末における前記操作を行わせる旨の信号を無線通信によって前記移動端末に向けて発信するリモコン装置を具備することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記リモコン装置と前記移動端末との間の無線通信は、BLE(BlueTooth Low Energy:登録商標)によって行われることを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記リモコン装置は、自身における一定の方向に沿って印加される加速度を検知する加速度センサを具備し、検知された前記加速度に応じて前記移動端末に対して通報信号を発信し、
前記移動端末は、受信した前記通報信号に応じた動作を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記リモコン装置は前記作業者に携帯され、
前記通報信号は、前記作業者に異常が発生した旨を伝える信号であり、前記移動端末は、当該通報信号を受信した旨を、前記基地局を介して前記作業者の管理を行う管理装置に通報することを特徴とする請求項3に記載の無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スマートフォン等の、通話が可能な携帯式の移動端末が用いられる無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムは様々な用途に用いられるが、例えば特許文献1に記載されるように、広い工場等の構内で、作業者の安全管理を目的として用いられる場合もある。
【0003】
図8は特許文献1に記載された無線通信システム9の構成の概略を示す。ここで、移動端末110は作業現場Wにおける個々の作業者が携帯し、基地局120は、作業現場W毎に設けられ、この作業者の作業現場Wにおける全ての移動端末110と無線通信が可能な状態とされて設置される。基地局120にはLANによって制御装置130が接続されている。
図8においては作業現場W、作業現場Wあたりの移動端末110の数は2つとされているが、これらの数は任意であり、特に作業現場Wあたりの移動端末110の数は、より多くてもよい。制御装置130は、移動端末110と外部、あるいは移動端末110同士の通話を行わせる機能や、個々の移動端末110から入手した情報に基づき警報を発する機能を有する。更に、例えば作業者が作業中に転倒した場合において、移動端末110がこれを物理的に認識した場合には、その旨を外部の制御装置130に伝達することができ、外部の制御装置130は、これを認識すると、警報を発することもできる。
【0004】
この場合、システムを安価とするためには、移動端末110として、専用設計された機器ではなく、市販されている携帯端末を用いることが好ましい。このため、従来は、例えば、自営システムを構築する際に比較的容易なシステムとしてPHS(Personal Handy-Phone System)方式を利用し、移動端末110として、機構的な押しボタン式の操作部を備えたPHS端末が、システムを安価とした上で高い信頼性が得られるために、特に好ましく用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年の無線通信技術の進歩により、通信方式がPHS方式から第4世代無線通信システム、第5世代無線通信システムへと移行し、より多くのデータを無線通信することが可能となり、更にそれに対応した移動端末もより高機能なスマートフォンに置換されつつある。また、PHSシステムのサービスは終了することが予想され、PHS端末の入手が困難となることも予想される。このため、上記の無線通信システムが変わった場合においても、従来の機構的な押しボタン式の操作部を備えたPHS端末等の移動端末の代わりにスマートフォンを用いることが望まれた。
【0007】
一方、スマートフォンは高機能である反面、上記のように作業者が作業中に取り扱う際には、例えば従来のPHS端末等の機構的な押しボタン式の操作部を備えた移動端末よりも不便である場合もあった。例えば、従来の移動端末では、一般的には電話機能のための複数の機構的な押しボタン式の操作ボタンが表面に配列されており、その操作は、作業者がこの操作ボタンを選択して押下することによって行われる。これに対して、一般的には、スマートフォンの操作は、より多くの機能を実現するために、スマートフォンの表面の大部分を占めるタッチパネル(タッチパネルディスプレイ)に作業者が触れることによって行われる。
【0008】
作業中には、作業者は安全のために手袋を装着している場合も多く、手袋を装着した指で従来の移動端末における操作ボタンを押下することは容易であるのに対し、スマートフォンにおけるタッチパネルディスプレイの操作をすることは困難である場合が多い。このため、スマートフォンを操作するに際しては、作業者が手袋を外す必要があった。この場合、上記の無線通信システムにおいて単純に従来の移動端末をスマートフォンに置き換えた場合、特に緊急時の操作を行うことが容易ではない場合があった。このため、作業者による操作が容易な、作業者の安全管理のために用いられる無線通信システムが望まれた。
【0009】
本発明は、このような状況に鑑みなされたもので、上記課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の無線通信システムは、作業者に携帯される移動端末と、当該移動端末と無線通信により接続された基地局と、を具備し、前記移動端末による前記基地局を介した通信が可能とされた無線通信システムであって、前記移動端末とは別体とされ、複数の操作ボタンが設けられた操作部を具備し、前記操作ボタンの各々には、前記移動端末を用いた通話に関わる操作に対応した機能が対応付けられ、前記操作ボタンのうちの一つが操作されると、当該操作ボタンに対応した前記移動端末における前記操作を行わせる旨の信号を無線通信によって前記移動端末に向けて発信するリモコン装置を具備する。
本発明の無線通信システムにおいて、前記リモコン装置と前記移動端末との間の無線通信は、BLE(BlueTooth Low Energy:登録商標)によって行われてもよい。
本発明の無線通信システムにおいて、前記リモコン装置は、自身における一定の方向に沿って印加される加速度を検知する加速度センサを具備し、検知された前記加速度に応じて前記移動端末に対して通報信号を発信し、前記移動端末は、受信した前記通報信号に応じた動作を行ってもよい。
本発明の無線通信システムにおいて、前記リモコン装置は前記作業者に携帯され、前記通報信号は、前記作業者に異常が発生した旨を伝える信号であり、前記移動端末は、当該通報信号を受信した旨を、前記基地局を介して前記作業者の管理を行う管理装置に通報してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、作業者による操作が容易な、作業者の安全管理のために用いられる無線通信システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態に係る無線通信システムの全体の構成を示す図である。
【
図2】実施の形態に係る無線通信システムにおけるリモコン装置の外観図(a)、ブロック図(b)である。
【
図3】実施の形態に係る無線通信システムが用いられる際の作業者の形態を示す図である。
【
図4】実施の形態に係る無線通信システムにおいて用いられるリモコン装置の操作ボタンの各々に対応した機能の例である。
【
図5】実施の形態に係る無線通信システムにおいて、リモコン装置から非常発報が行われた際の動作を示すシーケンス図である。
【
図6】実施の形態に係る無線通信システムにおいて、作業者が転倒した状態であることを検知した場合の動作を示すフローチャートである。
【
図7】実施の形態に係る無線通信システムにおいて、作業者が不動の状態であることを検知した場合の動作を示すフローチャートである。
【
図8】作業者の安全管理のために用いられる従来の無線通信システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態を図面を参照して具体的に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る無線通信システム1の構成全体を示す図である。
【0014】
この無線通信システム1は、特許文献1、
図8の無線通信システム9と同様に、広い工場等の内部の作業現場Wで、作業者の安全管理を目的として用いられる。このため、個々の作業者は移動端末10を保持する。この移動端末10は、外部との通話、作業者(移動端末10)同士で通話を行う機能の他に、作業者の安全等に関わる信号を発信する機能等を有する点においても、前記の移動端末110と同様である。ただし、この移動端末10は、前記の移動端末110が例えば従来の機構的な押しボタン式の操作ボタンを有する移動端末であったのに対し、より高機能なスマートフォンである。このため、移動端末10の表面には操作キー(操作ボタン)は設けられず、その表面の大部分を占めるタッチパネルディスプレイが設けられる。
図1においては移動端末10は2台のみ設けられているが、実際には移動端末10は作業者が個々に保持するため、作業者の数に応じて多数設けられる。
【0015】
基地局20は、無線LAN(Wi-Fi(登録商標)等)によって移動端末10と接続され、全ての移動端末10と通信可能な箇所に設置される。基地局20は、移動端末10が上記の動作を行う際に中継をする機能を有し、この点については特許文献1に記載された無線通信システムと同様である。
図1においては作業現場Wと基地局20とが対応して一つずつ設けられているが、
図8における場合と同様に、複数の作業現場Wが設けられ、各々に基地局20が設けられていてもよい。
【0016】
基地局20は、通話用のコアネットワークシステムであるEPC(Evolved Packet Core)30とLANによって接続され、EPC30は、更にSIPサーバ40とLANによって接続される。SIPサーバ40は、例えば特開2019-134377号公報に記載されたものと同様の通話管理用のサーバである。なお、移動端末10の位置は作業者と共に時々刻々変動することがあるのに対して、基地局20、SIPサーバ40の位置が固定されていれば、これらの間を接続するネットワークは、この状況に対応したものを適宜用いることができ、移動端末10と基地局20の間において用いられる方式(無線LAN)と同一の方式が用いられる必要はない。
【0017】
特に作業者や移動端末10に関しての異常が認められた場合には、この旨は、基地局20、EPC30、SIPサーバ40からネットワークを介して警備用端末(管理装置)50に伝わる。警備用端末50は、接続された全ての移動端末10から情報、各種の信号を入手し、これに応じて警報やその他のメッセージを発することができる。この警報は、例えば作業現場W内の一斉放送等を用いて発することができる。
【0018】
上記の構成においては、移動端末10としてスマートフォンが用いられたこと以外については、特許文献1に記載の技術と大差はない。ただし、ここでは、作業者は、移動端末10(スマートフォン)の他に、より小型であり限定された機能のみを有するリモコン装置70も保持する。
図2(a)は、このリモコン装置70の外観図であり、
図2(b)は、その構成を示すブロック図である。このリモコン装置70も移動端末10と同様に通信機能を有するが、リモコン装置70が通信をする相手は、このリモコン装置70を保持する作業者が同時に保持する移動端末10のみである。このため、リモコン装置70の通信可能距離は短く設定され、その代わりに低消費電力であることが好ましい。このようにリモコン装置70と移動端末10との間で用いられる通信方式としては、無線LANとして、例えばBLE(BlueTooth Low Energy(登録商標))が好ましく用いられる。
【0019】
図2(b)において、前記のようなBLEによる通信(送受信)を行うためのBLE通信部71、各種のソフトウェアやデータを記憶する不揮発性メモリである記憶部72が設けられる。また、7つの操作ボタンを具備する操作部73、各種の情報を表示するが移動端末10(スマートフォン)と比べて小さな表示部74、リモコン装置70全体を制御する制御部75、リモコン装置70の電源となる電池76が設けられる。また、後述するように作業者の転倒等の異常を検知するための加速度センサ77も設けられる。このリモコン装置70のもつ機能は移動端末10(スマートフォン)や従来用いられた例えば機構的な押しボタン式の操作ボタンを有する移動端末(PHS端末等)と比べると少ないため、操作部73は前記のように7つの操作ボタンのみで構成される。また、表示部74で表示される情報も移動端末10と比べると少なく、例えば現在行われた操作を単純明快に示す文字情報等を表示させるだけでもよい。このため、
図2(a)に示されるように、リモコン装置70の表面の大部分が、操作部73と表示部74で占められるようにすれば、リモコン装置70を移動端末10と比べて小型とすることができる。
【0020】
BLE接続時には、リモコン装置70はペリフェラル(子機)、移動端末10はセントラル(親機)とされる。このため、BLE通信部71は、定期的にアドバタイズパケットを送信し、移動端末10は、これをサーチして認識した場合に、このリモコン装置70に対して接続要求を送信することで、これらの間でBLE接続が確立される。なお、
図1では、同一の作業者が移動端末10とリモコン装置70を同時に保持し、移動端末10とリモコン装置70とは1対1に対応しているものとしたが、後述するように、一人の作業者のみが移動端末10を保持し、複数の作業者が個々でリモコン装置70を保持し、1台の移動端末10に対して複数のリモコン装置70が対応する場合もある。この場合においても、同様の動作によって移動端末10と個々のリモコン装置70との間のBLE接続を確立し、移動端末10が個々のリモコン装置70の認識をすることができる。
【0021】
制御部75は、後述するように、操作部73による操作や、加速度センサ77の出力に応じて、各種の信号をBLE通信部71によって移動端末10に送信する。また、制御部75は、電池76の出力電圧や電流を検知し、周知の手法によって電池の残量を認識することができ、これに応じた信号も移動端末10に送信する。
【0022】
リモコン装置70は移動端末10よりも十分に小型軽量であるため、作業者が移動端末10とリモコン装置70を同時に保持することが容易である。
図3は、作業者Hがこの移動端末10とリモコン装置70を同時に保持する形態を模式的に示す図である。比較的大きな移動端末10を、作業者Hが着用する作業着Sにおける大きなポケットP1に収容し、小さなリモコン装置70は、小さなポケットP2に収容することができる。通常の作業時には作業者Hは移動端末10、リモコン装置70に触れる必要はないため、
図3の状態は維持される。この際、リモコン装置70を
図1に示されたような細長い形状とし、ポケットP2をこれに対応した縦長の形状とすれば、作業者Hに対するリモコン装置70の姿勢(
図1における上下方向が実際の上下方向と一致する姿勢)は一定に維持される。
【0023】
このリモコン装置70によって実現される機能について説明する。この機能は、(1)作業者Hによる通話のための機能と、(2)作業者H、リモコン装置70自身の管理のための機能と、に大別される。
【0024】
まず、(1)作業者Hによる通話のための機能について説明する。前記のように、操作部73には7つの操作ボタン(#1~#7)が設けられる。従来移動端末として用いられた機構的な押しボタン式の操作ボタンを有する移動端末(PHS端末等)においては、電話番号(0~9の数字)等に対応した10個以上の操作ボタンが用いられていたのに対して、この操作部73における7つの操作ボタンの各々には移動端末10における特有の機能が対応する。
図4は、7つの操作ボタンに対応付けられた機能の例を示す。制御部75は、各操作ボタンが押下された場合には、当該操作ボタンが操作された旨の信号をBLE通信部71によって移動端末10側に発する。
【0025】
図4において、操作ボタン#1が押下された場合には、移動端末10はこれを認識し、非常発報(非常事態が発生した旨の連絡)を警備用端末50側に発する。
【0026】
図4における他の操作ボタンは、作業者Hの移動端末10(スマートフォン)を用いた通話に関する操作に対応する。まず、操作ボタン#5が押下された場合には、移動端末10は、緊急連絡としての通話を開始させる。これにより、
図3の形態において、作業者Hは、ポケットP1から移動端末10を取り出すことなしに、この状態で通話を開始することができる。操作ボタン#3は、同様に、移動端末10に電話がかかってきた場合の応答に対応し、操作ボタン#2はオンフック(通話の終了)、操作ボタン#4はミュート(音声入力の停止)、操作ボタン#6は保留、のそれぞれに対応し、これらの操作ボタンが押下された場合には、移動端末10は、これらの操作を行わせる。また、操作ボタン#7は、緊急連絡ではないが特定の発信先(例えば警備用端末50側等)への通話を開始させるためのボタンである。
【0027】
特に操作ボタン#2~#7は、移動端末10を用いた通話に関わる操作であるが、この際の通話は、
図3の状態から移動端末10をポケット1から取り出して行う必要はない。このため、このような通話の対応は、作業者Hは、移動端末10に一切触れずに、リモコン装置70をポケットP2から取り出して操作を行うことのみによって行うことができる。
【0028】
図4の構成は一例であるが、このように操作部73の操作ボタンの機能を限定することによって、操作ボタンの数を従来の移動端末(PHS端末等)よりも少なくすることができる。このため、リモコン装置70の操作は、従来の移動端末の操作よりも容易となる。また、作業者は同様の操作を移動端末10を用いて直接行うこともできるが、この場合には、移動端末10におけるタッチパネルディスプレイを操作することが必要となるため、この操作を行うに際しては、手袋を着用している場合にはこれを取り外す必要がある。これに対して、上記の構成においては、リモコン装置70の操作部73における少ない数の操作ボタンの操作を行うことのみで上記のように通話に関わる操作を実現することができ、移動端末10には一切触れる必要はない。
【0029】
図5は、操作ボタン#1、#2が押下された場合における、上記の無線通信システム1における動作のシーケンス図である。リモコン装置70において操作ボタン#1が押下された場合(S101)、これに対応した信号(操作ボタン#1が操作された旨の信号)がリモコン装置70からBLE通信部71によって発せられ、移動端末10はこれを受信する(S102)。移動端末10は、これを認識すると、非常発報信号を
図1における基地局20、EPC30を介してSIPサーバ40に送信し(S103)、SIPサーバ40は、この非常発報信号を中継して警備用端末50に送信し(S104)、警備用端末50あるいはその管理者は、非常発報信号と、これを発した移動端末10の識別番号を認識する。警備用端末50は、これらを認識すると、この移動端末10と警備用端末50あるいはこれと接続された電話システムとの間の接続(通話)状態を確立して維持する(接続シーケンス:S105)。これによって、この移動端末10を保持する作業者Hは、警備用端末10側との間の通話等を行うことができ、例えば発生した非常事態についての詳細を警備用端末50側に通報することができる。この際、非常事態発生の第1報は、操作ボタン1を押下することのみによって素早く行われるため、上記の動作を迅速に行わせることができる。警備用端末50側で非常発報信号を受信した後の処置は、構内放送でこの通知を行う、全ての移動端末10に対して連絡を行う等、適宜設定される。
【0030】
作業者Hは、通話を終了する場合には、操作ボタン#2を押下する(S106)ことによって、操作ボタン#2が操作された旨の信号がリモコン装置70からBLEによって発せられ、移動端末10がこれを受信する(S107)。移動端末10は、これを認識すると、通話を終了させると共に、オンフックに対応した信号をEPC30を介してSIPサーバ40に送信し(S108)、SIPサーバ40は、この非常発報信号を中継して警備用端末50に送信し(S109)、警備用端末50は、これを認識し、接続シーケンス(S105)を解除する。これによって、非常時における通話が終了する。
【0031】
上記の動作において、非常事態発生の第1報は、操作ボタン#1を押下することのみによって素早く行われるため、警備用端末50側で非常事態を素早く認識することができ、上記の動作を迅速に行わせることができる。この際、作業者は移動端末10に一切触れる必要がなく、例えば手袋を装着したままで上記の動作を行うこともできる。
【0032】
次に、上記のリモコン装置70による(2)作業者の安全管理やリモコン装置70自身の管理のための動作について説明する。前記の(1)の動作は、作業者Hによる操作部73(操作ボタン)の操作によって開始したのに対し、この動作は、制御部75によって自動的に行われる。
【0033】
まず、作業者の安全管理に関わる動作について説明する。この動作は、主に加速度センサ77によって検出された加速度の値に基づいて行われる。このために認識すべき作業者の状態としては、作業者が作業中に転倒した状態、急病等によって動けなくなった状態(不動の状態)がある。
【0034】
ここで、加速度センサ77は、
図1~3におけるリモコン装置70の長手方向(図中上下方向)に沿って自身に印加される加速度を検知する。このため、
図3の状態では1Gの加速度が検知され、この状態から作業者Hが横になると、検知される加速度の値は小さくなり、零に近づく。このため、一定時間だけ加速度が小さく認識された場合には、作業者Hが転倒していると推定することができる。同様に、作業者が何らかの作業を行うに際しては、少なくとも体の一部の動きを伴うため、加速度センサ77で検知された加速度の値に時間的変化が生ずる。このため、加速度の変化が認められない状態が一定時間だけ継続した場合には、作業者が不動の状態であると推定することができる。ただし、実際には、これらの条件に加えて各種の制限も付加した上で、転倒した状態、不動の状態についての判断をすることができる。
【0035】
図6は、この無線通信システムにおいて、作業者が転倒したことを検知する動作を示すフローチャートである。ここで、各動作を行う主体は各工程において括弧書きで記載してあり、これがない工程は、リモコン装置70(制御部75)によるものとする。
【0036】
まず、制御部75は、加速度センサ77によって現在の加速度の値を認識する(S1)。この動作は、一定間隔で行わせることができる。次に、制御部75は、認識された加速度がある閾値α1以下であるか否かを認識する(S2)。ここではリモコン装置70が横になった状態が転倒した状態と認識するため、この閾値α1は例えば1Gよりも小さな値として、例えば0.7Gとすることができる。加速度がα1を超えている場合(S2:No)には、異常がないと認識されるため、次回の加速度検知(S1)まで待機する。加速度がα1以下であった場合(S2:Yes)においても、転倒ではないが作業中に一時的にリモコン装置70が横になる場合もありうることを考慮し、これ以前の測定結果(S1)と比較し、この時点で継続的に加速度がα1以下であった状態が一定の時間T1に満たなかった場合(S3:No)においても、同様に、次回の加速度検知(S1)まで待機する。T1は例えば30secと設定することができる。
【0037】
継続的に加速度がα1以下であった状態が一定時間T1を超えた場合(S3:Yes)には、作業者が転倒している可能性が高い。このため、制御部75は、移動端末10側に転倒した旨を伝える信号(転倒信号:通報信号)をBLE通信部71によって発し(S4)、移動端末10はこれを認識する。
【0038】
これを受けて、移動端末10側では、作業者に対してアラーム(例えば警報音)を発すると共に、これに対する作業者の対応を認識する。この動作は、作業者から通話による応答があると共に、認識された加速度が大きくなるまで、予め設定されたリトライ回数N1を上限として複数回行われる。このため、移動端末10側では、まず、この動作を行った回数がリセットされる(S5)。次に、移動端末10では、アラーム音を発する等の警報(転倒警報)を発する(S6)。この場合、警報は後述するT2よりも短い時間だけ継続させてもよいが、連続的に警報を発してもよい。また、移動端末10におけるタッチパネルディスプレイでその旨を表示させてもよい。作業者Hは、これによって、自身が転倒していると認識されていることを知ることができる。
【0039】
その後、移動端末10は、
図5のS105と同様に、警備用端末50と移動端末10間での通話接続を確立する(S7)。これにより、作業者は、移動端末10を用いて警備用端末50側との間で通話をすることができる。この際、前記の場合と同様に、作業者Hは、リモコン装置70、移動端末10に触れる必要はない。その後、移動端末10は、作業者が応答するのに要する時間として時間T2の間、この通話を待つために待機する(S8)。T2は、例えば30secと設定することができる。
【0040】
移動端末10は、この間に通話が確認できた場合(S9:Yes)には、この時点でリモコン装置70側で認識された加速度を認識し、再び閾値α1との比較を行う(S10)。作業者からの応答がない場合(S9:No)、応答があっても(S9:Yes)その後の加速度がα1を超えない場合(S10:No)には、作業者に何らかの異常事態が発生している可能性が高いため、移動端末10は、警備用端末50に対して、このリモコン装置70(移動端末10)を保持する作業者が転倒した旨の警報(転倒発報)を発し(S11)、リトライ回数をインクリメントし(S12)、このリトライ回数がN1を超えない(S14:No)限り、移動端末10におけるアラーム発報(S6)~加速度と閾値α1の比較(S10)までが繰り返される。リトライ回数の上限であるN1は例えば10回とすることができる。
【0041】
作業者からの応答があり(S9:Yes)、かつ加速度が閾値α1を超えていた場合(S10:Yes)には、作業者は無事であり、転倒した状況から復帰したと考えられる。このため、リモコン装置70は、転倒信号を解除して初期状態とし(S14)、移動端末10は、警備用端末50に対して、作業者が転倒した状態から復帰した旨を送信する(S15)。
【0042】
リトライ回数がN1を超えた場合(S13:Yes)には、作業者が転倒して応答不能になったと推測されるため、移動端末10はその旨を警備用端末50に連絡し、例えば警備用端末50が構内放送を行う等の緊急措置を行う(S16)。
【0043】
一方、
図7は、この無線通信システムにおいて、作業者が不動の状態であることを検知する動作を示すフローチャートである。まず、
図6の場合と同様に、制御部75は、加速度センサ77によって現在の加速度の値を認識する(S21)。この動作は、例えば一定周期で行わせることができる。次に、制御部75は、ここで認識された加速度と直前に検知された加速度の値の差(絶対値)を認識し(S22)、この差がある閾値α2以下であるか否かを認識する(S22)。ここで、この閾値α2は例えば十分零に近い値として、例えば0.05Gとすることができる。この差がα2を超えている場合(S22:No)には、作業者の何らかの動作があったと認識されるため、次回の加速度検知(S21)まで待機する。この差が閾値以下であった場合(S22:Yes)において、この時点で継続的にこの差が閾値α2以下であった状態が一定の時間T3に満たなかった場合(S23:No)においても、同様に、次回の加速度検知(S21)まで待機する。時間T3は、前記のT1の場合と同様に、例えば30secと設定することができる。
【0044】
加速度の差がα2以下であった状態が一定時間T3を超えた場合(S23:Yes)には、作業者が不動の状態である可能性が高い。このため、制御部75は、移動端末10側に作業者が不動である旨を伝える信号(不動信号:通報信号)をBLE通信部71によって発し(S24)、移動端末10はこれを認識する。
【0045】
これを受けて、
図6の動作と同様に、移動端末10側では、作業者に対してアラーム(例えば警報音)を発し、これに対する作業者の対応を認識すると共に、その後に加速度の差を確認する動作が、リトライ回数N2を上限として複数回行われる。N2は前記のN1と同様に、例えば10回とすることができる。このため、移動端末10側では、まず、この動作のリトライ回数がリセットされる(S25)。移動端末10における警報(不動警報)を発する動作(S26)、警備用端末50と移動端末10間での通話接続の確立(S27)、時間T4の間における作業者からの通話を認識するための時間T4における待機(S28)、通話の確認(S29)、再度の加速度の差の確認(S30)、が
図6におけるS6~S10と同様に行われる。待機のための時間T4は、前記のT2の場合と同様に、例えば30secに設定することができる。
【0046】
作業者からの応答がない場合(S29:No)、応答があっても(S29:Yes)その後の加速度の差がα2を超えない場合(S30:No)には、作業者に何らかの異常事態が発生している可能性が高く、その後には、
図6の場合と同様に、警備用端末50側へ作業者が不動の状態である旨の警報を発する動作(不動発報)(S31)、リトライ回数のインクリメント(S32)、このリトライ回数がN2を超えたか否かの判定(S33)が行われる。これにより、移動端末10におけるアラーム発報(S26)~加速度の差と閾値α2の比較(S30)までの動作が、リトライ回数N2を上限として繰り返される。
【0047】
作業者からの応答があり(S29:Yes)、かつ加速度の差が閾値α2を超えていた場合(S30:Yes)には、作業者は無事であると考えられる。このため、リモコン装置70は不動信号を停止し(S34)、移動端末10は、警備用端末50に対して、作業者が不動の状態から復帰した旨を送信する(S35)。
【0048】
リトライ回数がN2を超えた場合(S33:Yes)には、作業者が不動の状態であり応答不能になったと推測されるため、移動端末10はその旨を警備用端末50に連絡し、例えば警備用端末50が構内放送を行う等の緊急措置を行う(S36)。
【0049】
上記の例では、認識された加速度が小さくなった場合(S2:Yes)に作業者Hの転倒を推定し、認識された加速度の時間変化がなかった場合(S22:Yes)に作業者Hが不動の状態であると推定したが、これら以外でも、作業者Hに発生した異常を、加速度センサ77を用いて推定することができる。例えば、加速度センサ77によって検出された加速度が1Gを大きく超える大きな値となった場合には、作業者Hあるいはリモコン装置70に対して大きな衝撃が加わったと推定することができる。こうした場合において、上記と同様に警報を発するような構成としてもよい。また、リモコン装置70において、上記の動作におけるパラメータであるα1、T1、T2、N1、α2、T3、T4、N2は、記憶部72に記憶される。
【0050】
次に、リモコン装置70自身の管理のための動作について説明する。この動作としては、電池76を残量管理を行う動作がある。前記のように、リモコン装置70の機能は限定され、かつその通信方式も低消費電力のBLEが用いられるために、リモコン装置70における消費電力は小さいものの、電池76の残量管理は重要である。
【0051】
前記のように、制御部75は、電池76の出力電圧や電流を検知して電池の残量を推定することができる。このため、制御部75は、推定された電池の残量(%)を、BLE通信によって移動端末10側に送信することができる。この動作は、前記の加速度の検知(S1、S21)と同様に、一定間隔で行わせることができるが、その時間間隔はこれよりも長く、例えば1時間に1回程度としてもよい。
【0052】
電池残量を受信した移動端末10においては、この残量が一定値(例えば30%)以下となった場合において、前記の場合(S6、S26)と同様に、アラームを発することができる。これにより、作業者は、リモコン装置70の電池を交換する、あるいは充電する必要があることを認識することができる。
【0053】
このように、限定された機能のみを有し、小型であるリモコン装置70を移動端末10と共に用いることによって、様々な動作を行わせることができる。なお、上記の例においては、移動端末10はスマートフォンであるものとしたが、移動端末10として比較的大型かつ高機能なものを用いた場合においては、上記と同様に限定された機能のみを有し小型であるリモコン装置70を併用することは有効である。
【0054】
上記の例では、一人の作業者が移動端末10とリモコン装置70を同時に保持するものとしたが、作業がグループ単位で行われる場合には、このグループのリーダー一人のみが移動端末10(スマートフォン)を保持し、リーダーを含む全員がリモコン装置70を保持する設定としてもよい。こうした場合においても、前記の通り、これらをBLE接続することができ、移動端末10は、各リモコン装置70(作業者)を識別することができる。
【0055】
この場合、上記の例における作業者の通話を、このリーダーの通話に置き換えれば、同様の動作が可能である。この場合には、高価な移動端末10(スマートフォン)をリーダーのみに保持させることによって、無線通信システムをより安価とすることができる。
【0056】
また、前記の例では、移動端末10とリモコン装置70とがBLE通信をするものとしたが、BLEと同様に、通信距離が短いが消費電力が小さく、無線PAN(Personal Area Network)で用いられる他の規格、例えばWi-Fi(登録商標)を用いることもできる。ただし、この通信距離は移動端末10と基地局20の間の通信距離よりも短くて十分であるため、BLEが特に好ましい。
【0057】
また、前記の例では、リモコン装置70に加速度センサ77が設けられ、これによって作業者Wに発生した異常(転倒、不動状態)が認識されるものとしたが、加速度センサ77を移動端末10に設ければ、逆に、リモコン装置70を用いない場合でも、上記と同様に、移動端末10のみを用いて同様の動作が可能である。
【0058】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0059】
1、9 無線通信システム
10、110 移動端末
20、120 基地局
30 EPC(Evolved Packet Core)
40 SIPサーバ
50 警備用端末(管理装置)
70 リモコン装置
71 BLE通信部
72 記憶部
73 操作部
74 表示部
75 制御部
76 電池
77 加速度センサ
H 作業者
P1、P2 ポケット
S 作業着
W 作業現場