(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135749
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】ソールおよびそれを備えるシューズ
(51)【国際特許分類】
A43B 11/00 20060101AFI20230922BHJP
A43B 13/14 20060101ALI20230922BHJP
A43B 23/02 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
A43B11/00
A43B13/14 D
A43B23/02 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040992
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】串田 啓介
(72)【発明者】
【氏名】中村 勉
(72)【発明者】
【氏名】梶原 遥
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 まりあ
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050AA01
4F050BA33
4F050BC07
(57)【要約】
【課題】シューズの着脱を容易にする。
【解決手段】前ソール部13を連結リンク部34に対して第1ヒンジ部9bを中心に回動させるとともに、連結リンク部34を後ソール部21に対して第2ヒンジ部9dを中心に回動させることにより、前ソール部13及び後ソール部21を、前ソール部13と後ソール部21との両方によって着用者の足を支持できる着用時の位置関係と、前ソール部13の後端部と後ソール部21の接地面GAとが着用時の位置関係よりも接地面GAに垂直な方向に離間する非着用時の位置関係とにできる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シューズに用いられるソールであって、
着用者の足におけるMP関節を含む前側部分を支持する前ソール部と、
前記着用者の足における踵骨の下端部を含み、かつ前記前側部分よりも後側に位置する後側部分を支持する後ソール部と、
連結リンク部と、
前記前ソール部を前記連結リンク部に対して回動可能に連結する第1ヒンジ部と、
前記連結リンク部を前記後ソール部に対して回動可能に連結する第2ヒンジ部とを備え、
前記前ソール部を前記連結リンク部に対して前記第1ヒンジ部を中心に回動させるとともに、前記連結リンク部を前記後ソール部に対して前記第2ヒンジ部を中心に回動させることにより、前記前ソール部及び前記後ソール部を、前記前ソール部と前記後ソール部との両方によって前記着用者の足を支持できる着用時の位置関係と、前記前ソール部の後端部と前記後ソール部の接地面とが前記着用時の位置関係よりも前記接地面に垂直な方向に離間する非着用時の位置関係とに切り替えられるように構成されていることを特徴とするソール。
【請求項2】
請求項1に記載のソールにおいて、
前記第1ヒンジ部は、前記前ソール部の上面における前記着用者のMP関節に対応する位置よりも後側に位置していることを特徴とするソール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のソールにおいて、
前記第2ヒンジ部は、前記後ソール部の上面における前記着用者の足の踵骨の下端部に対応する位置よりも前側に位置していることを特徴とするソール。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のソールにおいて、
前記前ソール部及び前記後ソール部を前記非着用時の位置関係にした状態で、前記前ソール部の上面における前後方向に離間した所定の2点を接続する直線と前記後ソール部の接地面とのなす角度が、10°以上50°以下となることを特徴とするソール。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のソールにおいて、
前記第1ヒンジ部及び第2ヒンジ部は、前記前ソール部及び前記後ソール部を前記非着用時の位置関係となるように付勢することを特徴とするソール。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のソールと、
後方に解放する解放部を有し、前記着用者の足の足首よりも前側の少なくとも一部を覆うように前記前ソール部に取り付けられた前アッパーと、
前記着用者の足の踵部を後側及び左右両側から覆うように前記後ソール部に取り付けられた後アッパーとを備えるシューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シューズに用いられるソールおよびそれを備えるシューズに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、着用者の足の前側部分を支持する前ソール部と、着用者の足の前記前側部分よりも後側の後側部分を支持する後ソール部と、前記前ソール部と前記後ソール部を連結する連結部材とを備えたソールが開示されている。このソールでは、連結部材を、前記前ソール部に回動可能に連結されたC構造部品と、前記C構造部品に回転可能に連結され、かつ前記後ソール部に回動可能に連結されたD構造部品とで構成することで、足底の動きに対応してソールも動くようにし、高いソールの違和感を軽減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般的なシューズでは、その着脱時にアッパーの後端部が、着用者の踵と干渉するので、着脱しにくいという問題がある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、シューズの着脱を容易にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の第1の形態は、シューズに用いられるソールであって、着用者の足におけるMP関節を含む前側部分を支持する前ソール部と、前記着用者の足における踵骨の下端部を含み、かつ前記前側部分よりも後側に位置する後側部分を支持する後ソール部と、連結リンク部と、前記前ソール部を前記連結リンク部に対して回動可能に連結する第1ヒンジ部と、前記連結リンク部を前記後ソール部に対して回動可能に連結する第2ヒンジ部とを備え、前記前ソール部を前記連結リンク部に対して前記第1ヒンジ部を中心に回動させるとともに、前記連結リンク部を前記後ソール部に対して前記第2ヒンジ部を中心に回動させることにより、前記前ソール部及び前記後ソール部を、前記前ソール部と前記後ソール部との両方によって前記着用者の足を支持できる着用時の位置関係と、前記前ソール部の後端部と前記後ソール部の接地面とが前記着用時の位置関係よりも前記接地面に垂直な方向に離間する非着用時の位置関係とに切り替えられるように構成されていることを特徴とする。
【0007】
この第1の形態では、着用者の足の足首よりも前側の少なくとも一部を覆う前アッパーを後方に解放するように前ソール部に取り付け、着用者の足の踵部を後側及び左右両側から覆う後アッパーを後ソール部に取り付けた場合に、前ソール部及び後ソール部を非着用時の位置関係にした状態で、前ソール部の後端部と後ソール部の接地面とが、着用時の位置関係にしたときよりも接地面に垂直な方向に離間するので、後アッパーを踵に干渉させることなく、前アッパーと前ソール部との間に足を後側から挿入したり、前アッパーと前ソール部との間から足を後側に離脱させやすい。したがって、シューズの着脱が容易になる。
【0008】
第2の形態は、第1の形態において、前記第1ヒンジ部は、前記前ソール部の上面における前記着用者のMP関節に対応する位置よりも後側に位置していることを特徴とする。
【0009】
この第2の形態では、着用者がシューズを着用した状態で、第1ヒンジ部が着用者のMP関節の曲げ動作を妨げるのを防止できる。
【0010】
第3の形態は、第1又は第2の形態において、前記第2ヒンジ部は、前記後ソール部の上面における前記着用者の足の踵骨の下端部に対応する位置よりも前側に位置していることを特徴とする。
【0011】
この第3の形態では、着用者による踵の接地時に、第2ヒンジ部の感触が着用者の踵に伝わるのを防止できる。
【0012】
第4の形態は、第1~第3のいずれか1つの形態において、前記前ソール部及び前記後ソール部を前記非着用時の位置関係にした状態で、前記前ソール部の上面における前後方向に離間した所定の2点を接続する直線と前記後ソール部の接地面とのなす角度が、10°以上50°以下となることを特徴とする。
【0013】
この第4の形態では、着用者の足の足首よりも前側の少なくとも一部を覆う前アッパーを後方に解放するように前ソール部に取り付け、着用者の足の踵部を後側及び左右両側から覆う後アッパーを後ソール部に取り付けた場合に、前ソール部及び後ソール部を非着用時の位置関係にした状態で、前ソール部の上面における前後方向に離間した2点を接続するすべての直線と前記後ソール部の接地面とのなす角度が10°未満となる場合に比べ、前アッパーと前ソール部との間に足を後側から挿入したり、前アッパーと前ソール部との間から足を後側に離脱させるときに、後アッパーが踵に干渉しにくい。したがって、シューズの着脱を容易にできる。
【0014】
また、着用者の足の足首よりも前側の少なくとも一部を覆う前アッパーを後方に解放するように前ソール部に取り付け、着用者の足の踵部を後側及び左右両側から覆う後アッパーを後ソール部に取り付けた場合に、前ソール部及び後ソール部を非着用時の位置関係にした状態で、前ソール部の上面における前後方向に離間した2点を接続するすべての直線と前記後ソール部の接地面とのなす角度が50°を超える場合に比べ、前アッパーと前ソール部との間に足を後側から挿入したり、前アッパーと前ソール部との間から足を後側に離脱させる動作を、着用者が膝や足首に大きな力を入れることなくスムーズに行い易い。
【0015】
第5の形態は、第1~第4のいずれか1つの形態において、前記第1ヒンジ部及び第2ヒンジ部は、前記前ソール部及び前記後ソール部を前記非着用時の位置関係となるように付勢することを特徴とする。
【0016】
この第5の形態では、着用者がシューズを脱ぐときには、着用者が踵を上方に移動させるだけで、第1ヒンジ部及び第2ヒンジ部の付勢力により前ソール部及び後ソール部を非着用時の位置関係にできる。着用者がシューズを履いていないときには、着用者が何等かの操作を行わなくても、第1ヒンジ部及び第2ヒンジ部の付勢力により前ソール部及び後ソール部を非着用時の位置関係に維持できる。また、着用者がシューズを履くときには、着用者が体重を前ソール部の後端部にかけるだけで、その他の操作を行わなくても、前ソール部及び後ソール部を着用時の位置関係にできる。
【0017】
第6の形態は、第1~第5のいずれか1つの形態のソールと、後方に解放する解放部を有し、前記着用者の足の足首よりも前側の少なくとも一部を覆うように前記前ソール部に取り付けられた前アッパーと、前記着用者の足の踵部を後側及び左右両側から覆うように前記後ソール部に取り付けられた後アッパーとを備えるシューズである。
【0018】
この第6の形態では、前記第1の形態と同様の作用効果を奏するシューズを得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、シューズの着脱が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、前ソール部及び後ソール部を着用時の位置関係にした状態で、本発明の実施形態1に係るソールを備えたシューズを外甲側から見て示す側面図である。
【
図2】
図2は、前ソール部及び後ソール部を非着用時の位置関係にした状態における
図1相当図である。
【
図7】
図7は、着用された状態のシューズを外甲側から見て示す概略側面図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施形態4に係るシューズの前ソール部、後ソール部、及び連結部材を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0022】
(実施形態1)
図1及び
図2は、本発明の実施形態1に係るソール3を備えたシューズ1を示す。このシューズは、例えばランニング用や各種競技用のスポーツシューズ、日常使用のスニーカーおよびリハビリ用シューズ等として使用される。
【0023】
以下、左足用シューズについて説明するが、当該左足用シューズと左右対称に右足用シューズを構成することができる。
【0024】
また、以下の説明において、上方(上側)及び下方(下側)とはソール3の上下方向の位置関係を表し、前方(前側)及び後方(後側)とはソール3の前後方向の位置関係を表すものとする。
【0025】
シューズ1は、着用者の足F(
図7及び
図8参照)の前側部分を支持して覆う
図3にも示す前側靴部5と、着用者の足Fの後側部分を支持して覆う後側靴部7と、前側靴部5及び後側靴部7を連結する連結部材9とを備えている。
【0026】
前側靴部5は、着用者の足裏全体に対向した状態で着用者の足裏の一部(土踏まず等を除く部分)に当接するインソール11を有している。
【0027】
上記インソール11の下面における前部分には、着用者の足Fにおける足首よりも前側の前側部分を支持する前ソール部13の上面が接着されている。着用者の足Fにおける前ソール部13によって支持される前側部分は、着用者の足FのMP関節を含み、かつ踵骨の下端部よりも前側に位置している。前ソール部13は、その主体をなす
図4にも示す前ソール部本体18を有している。前ソール部本体18は、前ミッドソール部15を有している。前ミッドソール部15の後端縁の左右方向略中央には、前方に凹む凹部15aが形成されている。当該凹部15aの前端縁は、前記インソール11との間に間隔を有している。前ミッドソール部15の下面には、前アウトソール部17が接着されている。前ミッドソール部15及び前アウトソール部17は、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等の熱可塑性樹脂やその発泡体、ポリウレタン(PU)等の熱硬化性樹脂やその発泡体、ブタジエンラバーやクロロプレンラバー等のラバー素材やその発泡体などで構成される。前ミッドソール部15と前アウトソール部17とで、前ソール部本体18が構成されている。なお、本実施形態1では、前ソール部本体18を、前ミッドソール部15に前アウトソール部17を接着して構成したが、前ソール部本体18を一体成形品で構成してもよい。
【0028】
前ミッドソール部15の外周縁部と、インソール11の後端部を除く部分の外周縁部とには、後方に解放する解放部19aを有する前アッパー19が、着用者の足Fの踵骨の下端部よりも前側の部分を略全体に亘って上方及び左右両側から覆うように取り付けられている。前アッパー19は、着用者の足Fの足首よりも前側の部分を略全体に亘って覆うように設けられている。前アッパー19は、例えば、編物、織物、不織布、合成皮革、人工皮革、天然皮革等により構成されている。また、前アッパー19の一部を、通気性を良くするためにメッシュ部としてもよい。
【0029】
前アッパー19の解放部19a側の端縁の左右方向略中央部(上端部)には、後方に突出する突部19bが形成されている。また、前アッパー19の左右方向略中央部には、人工皮革等からなるハトメ飾り20が左右方向に間隔を空けて左右対称に縫製により取り付けられている。ハトメ飾り20は、前アッパー19において着用者の足Fの足甲部に対応する位置に配置されている。ハトメ飾り20の左右端部には、足長方向に間隔をあけて配置されたハトメ孔20a,20a,…が形成されている。突部19bは、両ハトメ飾り20の後端部の左右方向内側に位置しており、一見すると、一般的なスニーカーの足挿入部に連通して前後方向に延びるように設けられる開口部を開閉する舌片部であるかのように見える。
【0030】
前アッパー19には、靴紐22が設けられている。靴紐22は、ハトメ飾り20のハトメ孔20a,20a,…に挿通されている。そして、上端のハトメ孔20a,20aの間で靴紐22の両端部を締結することにより、前アッパー19を着用者の足甲部にフィットさせることが可能となっている。
【0031】
後側靴部7は、着用者の足Fにおける前ソール部13によって支持される前側部分よりも後側に位置する後側部分を支持する後ソール部21を有している。したがって、着用者の足Fにおける後ソール部21によって支持される後側部分は、踵骨の下端部を含み、MP関節よりも後側に位置している。
【0032】
後ソール部21は、その主体をなす
図5にも示す後ソール部本体24を有している。後ソール部本体24は、略平坦な上部後ミッドソール部23を有している。上部後ミッドソール部23の上面における前端部の左右方向中央には、下方に凹む凹所23aが形成されている。当該凹所23aの左右両端縁は前後方向に直線状に延び、当該凹所23aの後端縁は、左右方向に直線状に延びている。また、凹所23aの後端部には、左右方向に延びる長孔部23bが全長に亘って上下方向に貫通形成されている。また、上部後ミッドソール部23の上面における凹所23aを除く領域は、図示しないカバー部材で覆われている。上部後ミッドソール部23の下面の前後方向両端部及び前後方向略中央部には、左右方向から見て波状に湾曲する下部後ミッドソール部25が、上部後ミッドソール部23との間に空間部27を形成するように接着されている。下部後ミッドソール部25の下面には、後アウトソール部29が接着されている。上部後ミッドソール部23、下部後ミッドソール部25、及び後アウトソール部29は、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等の熱可塑性樹脂やその発泡体、ポリウレタン(PU)等の熱硬化性樹脂やその発泡体、ブタジエンラバーやクロロプレンラバー等のラバー素材やその発泡体などで構成される。上部後ミッドソール部23と、下部後ミッドソール部25と、後アウトソール部29とで、後ソール部本体24が構成されている。なお、本実施形態1では、後ソール部本体24を、上部後ミッドソール部23に下部後ミッドソール部25及び後アウトソール部29を接着して構成したが、後ソール部本体24を一体成形品で構成してもよい。
【0033】
上部後ミッドソール部23の外周縁部には、着用者の足Fの踵部を後側及び左右両側から覆うように後アッパー31が取り付けられている。後アッパー31は、上部後ミッドソール部23の上面における凹所23aを除く領域を覆う上記カバー部材に縫製により連結されている。この後アッパー31は、例えば、編物、織物、不織布、合成皮革、人工皮革、天然皮革等により構成されている。上記カバー部材は、後アッパー31の内面と同じ素材で構成されることが望ましいが、例えば、編物、織物、不織布等により構成されている。
【0034】
連結部材9は、長板状の樹脂の一体成形品である。連結部材9の一方の面における長手方向一端寄りには、幅方向(短手方向)全体に亘って断面略C字状の第1凹条部9aが形成されている。そして、連結部材9の第1凹条部9a形成箇所は、薄肉な第1ヒンジ部9bを構成している。一方、連結部材9の他方の面における長手方向他端寄りには、幅方向(短手方向)全体に亘って断面略C字状の第2凹条部9cが第1凹条部9aと平行に形成されている。そして、連結部材9の第2凹条部9c形成箇所は、第1ヒンジ部9bと平行に延びる薄肉な第2ヒンジ部9dを構成している。そして、連結部材9における第1ヒンジ部9bよりも前記長手方向一端側の部分が前側リンク部33を構成し、連結部材9における第1ヒンジ部9b及び第2ヒンジ部9dに挟まれた部分が連結リンク部34を構成し、連結部材9における第2ヒンジ部9dよりも前記長手方向他端側の部分が後側リンク部35を構成している。なお、連結リンク部34は、前側リンク部33及び後側リンク部35よりも連結部材9の長手方向に長くなっている。前側リンク部33は、連結リンク部34に対して第1ヒンジ部9bにより回動可能に連結され、連結リンク部34は、後側リンク部35に対して第2ヒンジ部9dにより回動可能に連結されている。連結部材9は、前側リンク部33及び連結リンク部34が略への字形状をなすように第1ヒンジ部9bで屈曲し、かつ連結リンク部34及び後側リンク部35が略への字形状をなすように第2ヒンジ部9dで屈曲することで、前側リンク部33及び第1ヒンジ部9bが後側リンク部35に対して後側リンク部35の板厚方向に離間した
図2及び
図6に示す第1形状に成形されている。したがって、連結部材9は、外力を付与していない状態で第1形状をなす。また、連結部材9は、
図1に示すような略平坦な第2形状に弾性変形可能になっている。連結部材9は、前側リンク部33を連結リンク部34に対して第1ヒンジ部9bを中心に回動させるとともに、連結リンク部34を前記後側リンク部35に対して前記第2ヒンジ部9dを中心に回動させることにより、第1形状と第2形状とに切り替えられる。連結部材9は、例えば、樹脂、又は金属で構成される。
【0035】
前側リンク部33は、前ミッドソール部15の凹部15aの前端縁から、前ミッドソール部15と前記インソール11との間に挿入され、かつその板面を前ミッドソール部15の上面にほぼ沿わせた状態で、前ミッドソール部15の後端部に固定されている。この前側リンク部33と上記前ソール部本体18とで、前ソール部13が構成されている。第1ヒンジ部9bは、前ソール部13を連結リンク部34に対して回動可能に連結している。第1ヒンジ部9bは、全体に亘って、前ソール部13の上面における着用者のMP関節に対応する位置よりも後側に位置している。ここで、前ソール部13の上面における着用者のMP関節に対応する位置とは、シューズ1が地面に載置され、着用者がシューズ1を着用し、かつ前ソール部13及び後ソール部21が後述する着用時の位置関係となった状態で、着用者の足FのMP関節と対向する位置である。後側リンク部35は、上部後ミッドソール部23の上面における凹所23aよりも後側の領域に、その板面を後ソール部21の接地面GAにほぼ沿わせた状態で固定されている。この後側リンク部35と上記後ソール部本体24とで、後ソール部21が構成されている。第2ヒンジ部9dは、連結リンク部34を後ソール部21に対して回動可能に連結している。凹所23aの後端部、すなわち長孔部23bに、第2ヒンジ部9dが対向している。第2ヒンジ部9dは、後ソール部21の上面における着用者の足Fの踵骨の下端部に対応する位置よりも前側に位置している。ここで、後ソール部21の上面における着用者の足Fの踵骨の下端部に対応する位置とは、シューズ1が地面に載置され、着用者がシューズ1を着用し、かつ前ソール部13及び後ソール部21が後述する着用時の位置関係となった状態で、着用者の足Fの踵骨の下端部と対向する位置である。連結部材9は、第2形状のときに前ソール部13及び後ソール部21を、前ソール部13の上面と後ソール部21の上面が略面一をなし、前ソール部13と前記後ソール部21との両方によって着用者の足Fを支持できる着用時の位置関係とするように配設されている。さらに、連結部材9は、第1形状のときに、前ソール部13及び後ソール部21を、前ソール部13の後端部と後ソール部21の接地面GAとが前記着用時の位置関係よりも離間し、前ミッドソール部15の上面における前後方向に離間した所定の2点A,Bを接続する直線と後ソール部21の接地面GAとのなす角度αが10°以上50°以下となる非着用時の位置関係とするように配置されている。したがって、前ソール部13を連結リンク部34に対して第1ヒンジ部9bを中心に回動させるとともに、連結リンク部34を後ソール部21に対して第2ヒンジ部9dを中心に回動させることにより、前ソール部13及び後ソール部21を、前記着用時の位置関係と、前記非着用時の位置関係とに切り替えることができる。連結部材9は、前ソール部13及び後ソール部21を前記非着用時の位置関係となるように付勢する。
【0036】
図7は、着用された状態のシューズ1、
図8は、着脱時のシューズ1を示す。上述のように構成されたシューズ1が地面に載置され、かつ着用者により着用された状態で、
図1に示すように、着用者の荷重により連結部材9は第2形状に弾性変形している。この状態で、
図7に示すように、前ソール部13及び後ソール部21は、前ソール部13の上面と後ソール部21の上面が略面一をなし、かつ前ソール部13と後ソール部21との両方によって着用者の足Fを支持できる着用時の位置関係となっている。また、連結リンク部34は、上部後ミッドソール部23の凹所23aに嵌合し、ソール3における着用者の足Fの土踏まずに対向する領域を補強している。
【0037】
この状態から
図8に示すように、着用者が踵を上方に移動させると、連結部材9が着用者の荷重から解放され、前ソール部13が連結リンク部34に対して第1ヒンジ部9bを中心に回動するとともに連結リンク部34が後ソール部21に対して第2ヒンジ部9dを中心に回動し、
図2に示すように、連結部材9が第1形状に復帰する。これにより、後ソール部21の底面は接地したままで、連結部材9の付勢力により前ソール部13が地面から離れる方向(上方)に移動し、前ソール部13及び後ソール部21が、前ソール部13の後端部と後ソール部21の接地面GAとが前記着用時の位置関係よりも離間する前記非着用時の位置関係となる。したがって、前ソール部13及び後ソール部21が着用時の位置関係であるときに比べ、後アッパー31を踵に干渉させることなく、前アッパー19と前ソール部13との間に足Fを後側から挿入しやすい。さらに、この状態で、前ミッドソール部15の上面における前後方向に離間した所定の2点A,Bを接続する直線と後ソール部21の接地面GAとのなす角度αが10°以上50°以下となっている。例えば、A点は、前ミッドソール部15の上面における第1ヒンジ部9bよりも前方に設定され、B点は、前ミッドソール部15の上面における第1ヒンジ部9bに対応する位置に設定される。したがって、前ミッドソール部15の上面における前後方向に離間した2点を結ぶ直線と接地面GAとのなす角度が10°未満となる場合に比べ、前アッパー19と前ソール部13との間から足Fを後側に離脱させるときに、後アッパー31が踵に干渉しにくい。また、前ミッドソール部15の上面における前後方向に離間した2点を結ぶ直線と接地面GAとのなす角度が50°を超える場合に比べ、前アッパー19と前ソール部13との間から足Fを後側に離脱させる動作を、着用者が膝や足首に大きな力を入れることなくスムーズに行い易い。なお、前ミッドソール部15の爪先周辺が平坦でない場合があるため、所定の2点A,Bは、前ミッドソール部15の上面における平坦な部分に設定されることが好ましく、特に第1ヒンジ部9bの近傍に設けられることが好ましい。
【0038】
着用者がシューズ1を履いていないときには、着用者が何等かの操作を行わなくても、連結部材9の付勢力により前ソール部13及び後ソール部21が非着用時の位置関係に維持される。
【0039】
その後、この状態から再び着用者がシューズ1を履くときには、前ソール部13の後端部と後ソール部21の接地面GAとが着用時よりも離間するので、後アッパー31を踵に干渉させることなく、前アッパー19と前ソール部13との間に足Fを後側から挿入しやすい。また、このとき、後ソール部21の底面(接地面GA)を地面に安定して配置できるので、後ソール部21の底面の一部を地面から浮き上がらせる場合に比べ、着用動作が容易になる。さらに、この状態で、前ミッドソール部15の上面における前後方向に離間した所定の2点A,Bを接続する直線と後ソール部21の接地面GAとのなす角度αが10°以上50°以下となっている。したがって、前ミッドソール部15の上面における前後方向に離間した全ての直線と接地面GAとのなす角度が10°未満となる場合に比べ、前アッパー19と前ソール部13との間から足Fを後側から挿入するときに、後アッパー31が踵に干渉しにくい。また、前ミッドソール部15の上面における前後方向に離間した全ての直線と接地面GAとのなす角度が50°を超える場合に比べ、前アッパー19と前ソール部13との間から足Fを後側から挿入する動作を、着用者が膝や足首に大きな力を入れることなくスムーズに行い易い。また、着用者が前アッパー19と前ソール部13との間から足Fを後側から挿入した後、体重を前ソール部13の後端部にかけるだけで、その他の操作を行わなくても、前ソール部13及び後ソール部21を着用時の位置関係にできる。
【0040】
したがって、本実施形態1によると、第1ヒンジ部9bが、全体に亘って、前ソール部13の上面における着用者のMP関節に対応する位置よりも後側に固定されているので、着用者がシューズ1を着用した状態で、第1ヒンジ部9bが着用者のMP関節の曲げ動作を妨げるのを防止できる。
【0041】
また、第2ヒンジ部9dが、全体に亘って、後ソール部21の上面における着用者の足Fの踵骨の下端部に対応する位置よりも前側に固定されているので、着用者による踵の接地時に、第2ヒンジ部9dの感触が着用者の踵に伝わるのを防止できる。
【0042】
(実施形態2)
図9は、本発明の実施形態2の
図6相当図である。本実施形態2では、前側リンク部33及び後側リンク部35がゴム製の別個の板状部材で構成されている。これら前側リンク部33及び後側リンク部35が、金属製の1本の線材39によって接続されている。この線材39は、1対の直線部39aと、各直線部39aの両側に形成された第1及び第2の捩りコイルばね部39b,39cと、第1の捩りコイルばね部39bから反直線部39a側に延出する第1延出部39dと、第2の捩りコイルばね部39cから反直線部39a側に延出する第2延出部39eとを有している。第1延出部39dは、前側リンク部33に固定され、第2延出部39eは、後側リンク部35に固定されている。そして、上記1対の直線部39aが、連結リンク部34を構成し、1対の第1の捩りコイルばね部39bが、第1ヒンジ部9bを構成し、1対の第2の捩りコイルばね部39cが、第2ヒンジ部9dを構成している。第1及び第2の捩りコイルばね部39b,39cは、外力を付与していない状態で連結部材9が第1形状をなし、かつ外力によって連結部材9が第2形状に弾性変形可能となるように構成されている。
【0043】
その他の構成及び効果は、実施形態1と同じであるので同一の構成箇所には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0044】
(実施形態3)
図10は、本発明の実施形態3の
図6相当図である。本実施形態3では、前側リンク部33、連結リンク部34、後側リンク部35が、金属製の別個の長方形状の板状部材で構成されている。前側リンク部33の長手方向一端部の中央には、軸挿入孔が形成されるように湾曲する第1湾曲部33aが形成されている。連結リンク部34の長手方向両端部の両端部には、軸挿入孔が形成されるように湾曲する第2湾曲部34aが形成されている。後側リンク部35の長手方向一端部の中央には、軸挿入孔が形成されるように湾曲する第3湾曲部35aが形成されている。そして、前側リンク部33の第1湾曲部33aを、連結リンク部34の長手方向一端部の第2湾曲部34aで挟んだ状態で、これら第1湾曲部33a及び第2湾曲部34aの内側の軸挿入孔に、共通の第1軸部材41が挿通されている。この第1軸部材41には、金属製の2本の第1捩りコイルばね43が取り付けられている。各第1捩りコイルばね43は、第1ばね本体部43aと、第1ばね本体部43aの一端に延設された第1延設部43bと、第1ばね本体部43aの他端に延設された第2延設部43cとを有している。第1ばね本体部43aは、第1軸部材41に巻回され、第1延設部43bは、前側リンク部33に固定され、第2延設部43cは、連結リンク部34に固定されている。第1軸部材41及び第1ばね本体部43aが第1ヒンジ部9bを構成する。また、後側リンク部35の第3湾曲部35aを、連結リンク部34の長手方向他端部の第2湾曲部34aで挟んだ状態で、これら第3湾曲部35a及び第2湾曲部34aの内側の軸挿入孔に、共通の第2軸部材45が挿通されている。第2軸部材45には、金属製の2本の第2捩りコイルばね47が取り付けられている。各第2捩りコイルばね47は、第2ばね本体部47aと、第2ばね本体部47aの一端に延設された第3延設部47bと、第2ばね本体部47aの他端に延設された第4延設部47cとを有している。第2ばね本体部47aは、第2軸部材45に巻回され、第3延設部47bは、連結リンク部34に固定され、第4延設部47cは、後側リンク部35に固定されている。第2軸部材45及び第2ばね本体部47aが、第2ヒンジ部9dを構成する。第1捩りコイルばね43及び第2捩りコイルばね47は、外力を付与していない状態で連結部材9が第1形状をなし、かつ外力によって連結部材9が第2形状に弾性変形可能となるように構成されている。
【0045】
その他の構成及び効果は、実施形態1と同じであるので同一の構成箇所には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0046】
(実施形態4)
図11は、本発明の実施形態4に係るシューズ1の前ソール部13、後ソール部21、及び連結部材9を示す。本実施形態4では、連結部材9が、前側リンク部33及び後側リンク部35を有しておらず、前ソール部13が前ソール部本体18だけで構成され、後ソール部21が後ソール部本体24だけで構成されている点で実施形態3と異なっている。また、前ミッドソール部15の凹部15aの左右両端面に、第1軸受孔15bが形成され、これら第1軸受孔15bに第1軸部材41の両端部が回動可能な状態で挿入されている。第1捩りコイルばね43の第1延設部43bは、前ソール部13に固定されている。また、後ソール部21の上部後ミッドソール部23の凹所23aの後端部の左右両端面に、第2軸受孔23cが形成され、これら第2軸受孔23cに第2軸部材45の両端部が挿入されている。第2捩りコイルばね47の第4延設部47cは、後ソール部21に固定されている。
【0047】
その他の構成及び効果は、実施形態3と同じであるので同一の構成箇所には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0048】
なお、上記実施形態1~4では、前アッパー19を、着用者の足Fの足首よりも前側の部分を略全体に亘って覆うように設けたが、着用者の足Fの足首よりも前側の一部だけを覆うように設けてもよく、例えば、着用者の指を露出させるように設けてもよい。
【0049】
また、上記実施形態1~4では、ソール3に連結部材9を1つだけ設けたが、ソール3の幅方向に互いに間隔を空けて複数設けてもよい。
【0050】
また、上記実施形態1~4では、第1ヒンジ部9bと第2ヒンジ部9dを互いに平行としたが、必ずしも互いに平行としなくてもよい。
【0051】
また、上記実施形態1~4では、第1ヒンジ部9bと第2ヒンジ部9dとに、前ソール部13及び後ソール部21を前記非着用時の位置関係となるように付勢する機能を設け、外力を付与していない状態で前ソール部13及び後ソール部21を前記非着用時の位置関係となるようにした。しかし、上述のような付勢機能を設けず、前ソール部13及び後ソール部21が、着脱時の着用者の動作により外力を付与されて前記非着用時の位置関係となるようにしてもよい。具体的には、実施形態1において、連結部材9が、着脱時の着用者の動作により外力を付与されて第1形状をなすようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、例えばランニング用や各種競技用のスポーツシューズ、日常使用のスニーカーおよびリハビリ用シューズ等に用いられるソールおよびそれを備えるシューズとして産業上の利用が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 シューズ
3 ソール
9 連結部材
9b 第1ヒンジ部
9d 第2ヒンジ部
13 前ソール部
19 前アッパー
19a 解放部
19b 突部
21 後ソール部
31 後アッパー
33 前側リンク部
34 連結リンク部
35 後側リンク部
39b 第1の捩りコイルばね部(第1ヒンジ部)
39c 第2の捩りコイルばね部(第2ヒンジ部)
43a 第1ばね本体部(第1ヒンジ部)
47a 第2ばね本体部(第2ヒンジ部)
GA 接地面
α 角度
A,B 点