(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135753
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
B60K 15/067 20060101AFI20230922BHJP
B60K 15/063 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
B60K15/067
B60K15/063 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040997
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上川 元
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 竜一
【テーマコード(参考)】
3D038
【Fターム(参考)】
3D038CA03
3D038CA14
3D038CB06
(57)【要約】
【課題】燃料タンクが大型化した場合でも、燃料タンクをしっかりと支持する。
【解決手段】作業車両は、エンジンと、ステアリングコラムと、エンジンとステアリングコラムとの間に位置する仕切部材と、仕切部材とステアリングコラムとの間に位置する燃料タンクと、燃料タンクを支持するタンク支持部と、を備える。燃料タンクは、仕切部材と向かい合って位置する前面部と、前面部と繋がる側面部と、を有する。タンク支持部は、仕切部材に連結され、燃料タンクの側面部を支持する側面支持部と、燃料タンクの前面部を仕切部材に向かって押し付ける押付部と、を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
ステアリングコラムと、
前記エンジンと前記ステアリングコラムとの間に位置する仕切部材と、
前記仕切部材と前記ステアリングコラムとの間に位置する燃料タンクと、
前記燃料タンクを支持するタンク支持部と、を備え、
前記燃料タンクは、
前記仕切部材と向かい合って位置する前面部と、
前記前面部と繋がる側面部と、を有し、
前記タンク支持部は、
前記仕切部材に連結され、前記燃料タンクの前記側面部を支持する側面支持部と、
前記燃料タンクの前記前面部を前記仕切部材に向かって押し付ける押付部と、を有する、作業車両。
【請求項2】
前記側面支持部は、前記燃料タンクの前記側面部と接触する複数の接触部を有し、
前記複数の接触部は、上下方向における異なる位置で前記側面部と接触する、請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記燃料タンクと前記ステアリングコラムとの間に位置するペダルフレームをさらに備え、
前記側面支持部は、支持ステーをさらに有し、
前記支持ステーの一端は、前記仕切部材と連結され、
前記支持ステーの他端は、前記ペダルフレームと連結され、
前記複数の接触部は、前記支持ステーに支持される、請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記押付部は、
バンドと、
前記バンドの張力を調整する張力調整具と、を有し、
前記張力調整具は、
前記仕切部材の開口部に取り付けられる取付部材と、
前記バンドの前端が固定され、前記開口部を通って位置する軸部材と、
前記取付部材に対して前記軸部材を進退させる位置調整部材と、を有し、
前記燃料タンクは、
前記前面部および前記側面部と繋がる上面部と、
前記上面部に固定され、前記バンドの挿通路を有する固定部材と、を有し、
前記バンドの後端は、前記燃料タンクの前記上面部よりも低い位置で、前記ペダルフレームに固定される、請求項3に記載の作業車両。
【請求項5】
前記仕切部材に固定される補強フレームをさらに備え、
前記燃料タンクの前記前面部は、凹部を有し、
前記補強フレームは、前記凹部に位置する、請求項1から4のいずれかに記載の作業車両。
【請求項6】
前記ステアリングコラムの下方に位置するミッションケースをさらに備え、
前記燃料タンクは、前記前面部および前記側面部と繋がる底面部を有し、
前記タンク支持部は、前記燃料タンクの前記底面部を支持する底面支持部をさらに有し、
前記底面支持部は、前記ミッションケースに支持される、請求項1から5のいずれかに記載の作業車両。
【請求項7】
前記ステアリングコラムが位置する運転席と、
前記運転席の床面部に固定される、マッドガードフレームおよび手摺りフレームの少なくとも一方と、
前記マッドガードフレームまたは前記手摺りフレームと前記側面支持部とを連結する連結ステーと、をさらに備える、請求項1から6のいずれかに記載の作業車両。
【請求項8】
前記燃料タンクが内部に配置されるダッシュボードをさらに備え、
前記ダッシュボードは、上下方向に並んで位置する上部カバーおよび下部カバーを有し、
前記上部カバーおよび前記下部カバーの少なくとも一方は、切欠部を有し、
前記連結ステーは、前記切欠部を通って位置する、請求項7に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの後方に燃料タンクを配置したトラクタが提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1のトラクタでは、燃料タンクの上面および左右の側面と接する門型の支持体により、燃料タンクが支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1の構成では、燃料タンクが大型化した場合の対策については何ら検討されておらず、燃料タンクの支持構造において改良の余地があった。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、燃料タンクが大型化した場合でも、燃料タンクをしっかりと支持することができる作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る作業車両は、エンジンと、ステアリングコラムと、前記エンジンと前記ステアリングコラムとの間に位置する仕切部材と、前記仕切部材と前記ステアリングコラムとの間に位置する燃料タンクと、前記燃料タンクを支持するタンク支持部と、を備え、前記燃料タンクは、前記仕切部材と向かい合って位置する前面部と、前記前面部と繋がる側面部と、を有し、前記タンク支持部は、前記仕切部材に連結され、前記燃料タンクの前記側面部を支持する側面支持部と、前記燃料タンクの前記前面部を前記仕切部材に向かって押し付ける押付部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
上記の構成によれば、燃料タンクが大型化した場合でも、燃料タンクをしっかりと支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の一形態に係る作業車両の一例であるトラクタの概略の構成を示す側面図である。
【
図2】上記トラクタのダッシュボードを後方から見たときの斜視図である。
【
図3】上記トラクタにおいて、上記ダッシュボードの内部の構成を示す斜視図である。
【
図4】上記トラクタの燃料タンクを後方から見たときの斜視図である。
【
図5】上記燃料タンクを前方から見たときの斜視図である。
【
図6】上記燃料タンクの支持構造を示す斜視図である。
【
図7】上記燃料タンクの支持構造を示す側面図である。
【
図8】上記トラクタのペダルフレームの斜視図である。
【
図9】上記トラクタのタンク支持部の張力調整具を前方から見たときの斜視図である。
【
図10】上記燃料タンクの上面部に固定される固定部材の斜視図である。
【
図11】上記固定部材の挿通路にバンドを挿通した状態を示す斜視図である。
【
図12】上記バンドの後端と上記ペダルフレームとの連結部付近を拡大して示す側面図である。
【
図13】上記トラクタの仕切板を後方から見たときの斜視図である。
【
図14】タンク支持部によって上記燃料タンクが支持された上記仕切板を前方から見たときの斜視図である。
【
図15】上記燃料タンクの支持状態を、上記仕切板を取り除いて示す斜視図である。
【
図16】上記トラクタの運転席の左前部を後方から見たときの斜視図である。
【
図17】上記運転席の左前部を、マッドガードフレームおよび手摺りフレームを取り外した状態で示す斜視図である。
【
図18】上記マッドガードフレームの取り付けに用いる連結ステーの斜視図である。
【
図19】
図17のダッシュボードを後方から見たときの斜視図である。
【
図20】上記ダッシュボードの下部カバーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施形態では、作業車両としてトラクタを例に挙げて説明するが、作業車両としては、トラクタの他、各種の収穫機、田植機、コンバイン、土木・建築作業装置、除雪車等の乗用型作業車両を考えることができる。
【0010】
また、本明細書では、方向を以下のように定義する。まず、作業車両としてのトラクタが作業時に進行する方向を「前」とし、その逆方向を「後」とする。また、トラクタの進行方向に向かって右側を右とし、左側を左とする。そして、トラクタの前後方向および左右方向に垂直な方向を上下方向とする。このとき、重力方向を下とし、その反対側を上とする。図面では、適宜、前方向をFで示し、後方向をBで示し、左方向をLで示し、右方向をRで示し、上方向をUで示し、下方向をDで示す。
【0011】
図1は、本実施形態の作業車両の一例であるトラクタ1の概略の構成を示す側面図である。トラクタ1は車体2を備える。車体2の前部は、左右一対の前輪3で支持される。車体2の後部は、左右一対の後輪4で支持される。
【0012】
車体2の前部には、ボンネット5が配置される。ボンネット5の下方には、駆動源としてのエンジン6が配置される。すなわち、トラクタ1は、エンジン6を備える。エンジン6は、例えばディーゼルエンジンで構成されるが、これに限定されるわけではなく、例えばガソリンエンジンで構成されてもよい。
【0013】
車体2におけるエンジン6の後方には、操縦者(運転者)が搭乗する運転席7が設けられる。運転席7には、運転者が操向操作するための操縦ハンドル8と、運転者の運転座席9と、が設けられる。操縦ハンドル8は、ステアリングコラム10により、旋回可能に支持される。すなわち、トラクタ1は、運転席7に位置するステアリングコラム10を備える。運転席7には、運転者によって操作される操作レバーLV、ペダルP等も設けられる。
【0014】
車体2の後方側には、3点リンク機構が設けられる。3点リンク機構は、左右一対のロアリンク11と、アッパリンク(図示せず)と、を含んで構成される。3点リンク機構には、作業機を装着することが可能である。作業機としては、例えば耕耘装置、プラウ、施肥装置を用いることができるが、これらに限定されるわけではない。また、車体2の後方側には、昇降シリンダ等の油圧装置を有する昇降装置(図示せず)が設けられる。昇降装置が3点リンク機構を昇降させることにより、上記作業機を昇降させることができる。
【0015】
車体2において、運転席7(運転座席9)の後部には、ロプスフレーム12が設けられる。本実施形態のトラクタ1は、運転座席9がキャビンで覆われていないタイプである。そのため、トラクタ1の転倒時に運転者を保護する目的で、ロプスフレーム12が設けられる。
【0016】
車体2において、エンジン6の後方、かつ、運転席7の下方には、ミッションケース13が位置する。より詳しくは、ステアリングコラム10の下方にミッションケース13が位置する。ミッションケース13の内部には、動力伝達装置(図示せず)が配置される。エンジン5の回転動力は、ミッションケース13内の動力伝達装置を介して、前輪3および後輪4の少なくとも一方に伝達される。
【0017】
車体2において、ボンネット5とステアリングコラム10との間には、ダッシュボード14が配置される。
図2は、ダッシュボード14を後方から見たときの斜視図である。ダッシュボード14は、第1カバー141と、第2カバー142と、を有する。第1カバー141は、SUSなどの金属で構成される。
【0018】
第2カバー142は、第1カバー141の後端上部に位置する。第2カバー142は、樹脂で構成される。上記樹脂としては、例えばABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂)、PP(ポリプロピレン樹脂)、PE(ポリエチレン樹脂)、PC(ポリカーボネート樹脂)などが挙げられる。第2カバー142の後端には、速度計、燃料計、水温計などを示すメータパネル142aが設置される。
【0019】
図3は、
図2で示したダッシュボード14の内部の構成を示す斜視図である。トラクタ1は、仕切部材である仕切板20を備える。仕切板20は、ボンネット5の内部とダッシュボード14の内部とを仕切る隔壁である。仕切板20は、厚さが例えば10mm程度の金属製の板で構成される。仕切板20は、ボンネット5とステアリングコラム10との間、より詳しくは、ボンネット5の内部のエンジン6(
図1参照)と、ステアリングコラム10との間に位置する。これにより、エンジン6から後方に放射される熱は、仕切板20によって遮断される。
【0020】
トラクタ1は、燃料タンク30を備える。燃料タンク30は、燃料を収容する容器である。燃料タンク30内の燃料は、燃料ポンプ(図示せず)により、燃料ホースを介してエンジン6に供給される。燃料タンク30は、仕切板20とステアリングコラム10との間に位置する。
【0021】
図4は、燃料タンク30を後方から見たときの斜視図である。
図5は、燃料タンク30を前方から見たときの斜視図である。燃料タンク30は、前面部31(
図5参照)と、側面部32と、上面部33と、底面部34と、後面部35(
図4参照)と、を有する。
【0022】
前面部31は、ダッシュボード14内で仕切板20(
図3参照)と向かい合って位置する。前面部31は、凹部31aを有する。凹部31aは、上下方向に延びる溝で構成される。凹部31aは、前面部31に2か所設けられる。2つの凹部31aは、左右方向に間隔をおいて並んで設けられる。
【0023】
側面部32は、前面部31の左側および右側にそれぞれ位置する。左右の側面部32はそれぞれ、前面部31の左側縁部および右側縁部と連結される。これにより、左右の側面部32は、前面部31と繋がる。上面部33は、前面部31の上部および左右の側面部32の上部と連結される。これにより、上面部33は、前面部31および左右の側面部32と繋がる。
【0024】
底面部34は、前面部31の下部および左右の側面部32の下部と連結される。これにより、底面部34は、前面部31および側面部32と繋がる。底面部34は、
図5に示すように、底面中央部が上面部33側に窪んだ形状を有するが、底面部34は面一であってもよい。後面部35は、上面部33、左右の側面部32および底面部34と連結される。
【0025】
図6および
図7はそれぞれ、燃料タンク30の支持構造を示す斜視図および側面図である。トラクタ1は、タンク支持部40を有する。タンク支持部40は、ダッシュボード14(
図2参照)内で燃料タンク30を支持する。タンク支持部40は、側面支持部50と、押付部60と、を有する。
【0026】
側面支持部50は、左右で一対設けられる。各側面支持部50は、仕切板20に連結され、燃料タンク50の左右の側面部32をそれぞれ支持する。このような側面支持部50は、複数の接触部51と、支持ステー52と、を有する。
【0027】
各接触部51は、燃料タンク30の側面部32と接触する弾性部材(例えばゴム)で構成される。複数の接触部51は、支持ステー52に支持される。詳しくは、各接触部51の一部(凸部)が、支持ステー52に形成された孔に、燃料タンク30側から嵌め込まれる。これにより、各接触部51が支持ステー52に支持される。本実施形態では、1つの支持ステー52に、2つの接触部51が支持される。なお、支持ステー52に支持される接触部51の数は、上記の2つに限定されるわけではなく、3つ以上であってもよい。
【0028】
支持ステー52の一端(前端)は、仕切板20と連結される。支持ステー52の他端(後端)は、ペダルフレーム70と連結される。すなわち、トラクタ1は、ペダルフレーム70を備える。
図8は、ペダルフレーム70の斜視図である。なお、先の
図6および
図7では、便宜的に、ペダルフレーム70の一部(支持ステー52との連結部分)のみを図示している。ペダルフレーム70は、燃料タンク30と、ステアリングコラム10との間に位置する(
図3参照)。ペダルフレーム70は、複数のペダルPを支持するフレームであり、
図1で示した車体2のシャーシ(図示せず)に固定される。
【0029】
図7に示すように、支持ステー52は、第1腕部52aと、第2腕部52bと、を有する。第1腕部52aは、燃料タンク30の側面部32に沿って、前端から後方に延び、上方に屈曲した後、さらに後方に屈曲して延びる。第2腕部52bは、第1腕部52aの上部にボルトによって固定されて前方に延びる。
【0030】
第1腕部52aは、第2腕部52bよりも下方の位置で、1つの接触部51を支持する。第2腕部52bは、1つの接触部51を支持する。これにより、複数の接触部51は、上下方向における異なる位置で支持ステー52に支持される。そして、複数の接触部51は、上下方向における異なる位置で、燃料タンク30の側面部32と接触する。
【0031】
押付部60は、燃料タンク30の前面部31を仕切板20に向かって押し付ける。このような押付部60は、バンド61と、張力調整具62と、を有する。バンド61および張力調整具62は、左右で一対設けられる。
【0032】
図9は、張力調整具62を前方から見たときの斜視図である。張力調整具62は、取付部材62aと、軸部材62bと、位置調整部材62cと、を有する。取付部材62aは、仕切板20の開口部20aにボルトまたは溶接等により取り付けられる。取付部材62aは、例えば側面視でL字形の金具で構成される。取付部材62aには、軸部材62bが通過する孔(図示せず)が設けられる。
【0033】
バンド61の前端は、連結具63(
図7参照)を介して軸部材62bに固定される。バンド61の後端は、ペダルフレーム70に固定される。軸部材62bは、開口部20aを通って位置する。軸部材62bは、取付部材62aに設けられた上記孔を通過する軸部62b
1を有する。軸部62b
1の外周面には、ねじ山が形成されている。
【0034】
位置調整部材62cは、取付部材62aに対して軸部材62bを進退させる。このような位置調整部材62cは、例えばナットで構成される。上記ナットは、ねじ溝を有する。上記ねじ溝は、取付部材62aの上記孔を通過した軸部62b1のねじ山と接触して噛み合う。ナットを回転させることにより、取付部材62aに対して、軸部62b1をその軸方向(軸部62b1が延びる方向)に沿って進退させることができる。つまり、取付部材62aに対する軸部材62bの軸方向の位置を調整することができる。これにより、軸部材62bに固定されたバンド61の張力を調整することができる。
【0035】
燃料タンク30の上面部33(
図6参照)における左右の2か所には、固定部材36が固定されている。
図10は、固定部材36の斜視図である。各固定部材36は、前後方向に長尺状である。固定部材36は、挿通路36aを有する。バンド61は、
図11に示すように、固定部材36の挿通路36aに挿通される。すなわち、燃料タンク30は、上面部33に固定され、バンド61の挿通路36aを有する固定部材36を有する。本実施形態では、
図7に示すように、バンド61の後端は、燃料タンク30の上面部33よりも低い位置で、ペダルフレーム70に固定される。
【0036】
上述のように、バンド61は、固定部材36の挿通路36aに挿通され、固定部材36は燃料タンク30の上面部33に固定されている。このため、張力調整具62により、バンド61の張力を上げると、言い換えれば、バンド61を仕切板20に近づく方向に引っ張ると、
図12に示すように、バンド61は、燃料タンク30の上面部33の後端に当たり、そのまま上面部33の後端を持ち上げるように作用する(
図12の破線部参照)。また、バンド61が燃料タンク30の上面部33の後端に当たらなかったとしても、挿通路36aに挿通されたバンド61を引っ張ることにより、バンド61が固定部材36の後端を押し上げる。これにより、燃料タンク30の前面部31を仕切板20に向かって押し付けることができる。
【0037】
本実施形態では、燃料タンク30の側面部32は、仕切板20と連結される側面支持部50によって支持される。加えて、燃料タンク30の前面部31は、押付部60によって仕切板20に向かって押し付けられる。つまり、本実施形態では、燃料タンク30の側面部32の支持のみならず、厚みのある頑丈な仕切板20への燃料タンク30の押し付けにより、燃料タンク30が支持される。これにより、仕切板20とステアリングコラム10との間に配置される燃料タンク30が大型化する場合でも、ダッシュボード14内で燃料タンク30をしっかりと支持することができる。
【0038】
また、側面支持部50の複数の接触部51は、燃料タンク30の側面部32と、上下方向における異なる位置で接触する(
図7参照)。この構成では、振動等に起因して、燃料タンク30が上下方向に垂直な面内で回転しにくくなる。したがって、燃料タンク30の支持姿勢を安定させることができる。
【0039】
また、複数の接触部51は、支持ステー52に支持される。支持ステー52の両端はそれぞれ、仕切板20およびペダルフレーム70と連結される。このため、複数の接触部51を介して、支持ステー52によって燃料タンク30の側面部32を安定して支持することができる。
【0040】
図13は、仕切板20を後方から見たときの斜視図である。仕切板20の後面、つまり、仕切板20におけるステアリングコラム10側の面には、補強フレーム21が固定される。すなわち、トラクタ1は、仕切板20に固定される補強フレーム21を備える。補強フレーム21は上下方向に延び、仕切板20に対して左右方向の2か所に固定される。補強フレーム21は、例えば平板を折り曲げて形成されるが、断面四角形の筒状(角筒)で形成されてもよい。補強フレーム21が仕切板20に固定されることにより、仕切板20の強度を高めることができる。なお、仕切板20の上部には、ヒンジカバー23が設けられる。ヒンジカバー23は、ボンネット5(
図1参照)とヒンジ(図示せず)を介して連結される回動軸部を覆う。
【0041】
補強フレーム21には、複数の接触部22が取り付けられる。詳しくは、各接触部22の一部(凸部)が、補強フレーム21に形成された孔に、燃料タンク30側から嵌め込まれ、これによって、各接触部22が補強フレーム21に取り付けられる。
【0042】
各接触部22は、弾性部材(例えばゴム)で構成される。本実施形態では、1つの補強フレーム21において、上下方向に2つの接触部22が並んで取り付けられるが、接触部22の数は特に限定されない。
【0043】
図14は、タンク支持部40によって燃料タンク30が支持された仕切板20を前方から見たときの斜視図である。
図15は、
図14の状態を、仕切板20を取り除いて示す斜視図である。各補強フレーム21は、燃料タンク30の前面部31の凹部31aにそれぞれ位置する。このとき、補強フレーム21に取り付けられた接触部22は、前面部31(特に凹部31a内で対向する部分)と接触する。
【0044】
前面部31の凹部31aに補強フレーム21が位置することにより、タンク支持部40の押付部50によって燃料タンク30を仕切板20に押し付けたときに、仕切板20に対して燃料タンク30が適切に位置決めされ、仕切板20に対する燃料タンク30の位置ズレを低減することができる。これにより、燃料タンク30の支持姿勢を安定させることができる。
【0045】
また、
図15に示すように、上記したタンク支持部40は、底面支持部80を有する。底面支持部80は、燃料タンク30の底面部34を支持する。この底面支持部80は、固定板81と、ブラケット82と、スペーサ83と、を有する。固定板81には、仕切板20の底部が固定される(
図13参照)。ブラケット82は、固定板81上に位置して、燃料タンク30の底面部34を支持する。スペーサ83は、ミッションケース13上に位置して、固定板81を支持する。
【0046】
このような固定板81、ブラケット82およびスペーサ83の位置関係により、底面支持部80は、ミッションケース13に支持される。したがって、底面支持部80によって支持される燃料タンク30は、底面支持部80を介してミッションケース13に支持されると言える。このように、燃料タンク30は、底面支持部80を介して、強固なミッションケース13に支持されるため、燃料タンク30の支持をより安定させることができる。
【0047】
図16は、トラクタ1の運転席7の左前部を後方から見たときの斜視図である。ステアリングコラム10が位置する運転席7の床面部7aには、マッドガードフレームMFが固定される。マッドガードフレームMFは、マッドガード(泥よけ)MGを支持する枠状のフレームである。本実施形態では、マッドガードフレームMFの上部に、手摺りフレームHFが連結されている。手摺りフレームHFは、運転手の運転席7への乗降時に、運転手によって把持されるフレームであり、運転手の乗降の補助および安全な乗降の促進を目的として設置される。
【0048】
なお、手摺りフレームHFは、マッドガードフレームMFを介さずに、運転席7の床面部7aに直接固定されてもよい。また、マッドガードフレームMFおよび手摺りフレームHFの両方が床面部7aに別々に固定されてもよい。さらに、マッドガードフレームMFおよび手摺りフレームHFのいずれか一方のみが、トラクタ1に設けられて床面部7aに固定されてもよい。また、マッドガードフレームMFをマッドガードMGよりも大きく形成して、マッドガードMGの外周の一部のみをマッドガードフレームMFで支持し、マッドガードフレームMFにおいて、マッドガードMGを支持しないフレーム部分を、手摺りフレームHFとして用いる構成であってもよい。いずれにしても、本実施形態のトラクタ1では、運転席7の床面部7aに、マッドガードフレームMFおよび手摺りフレームHFの少なくとも一方が固定されている、と言える。
【0049】
本実施形態では、マッドガードフレームMFが、連結ステー90を介して、タンク支持部40の側面支持部50(
図7参照)に連結される。より詳しく説明すると、以下の通りである。
【0050】
図17は、トラクタ1の運転席7の左前部を、マッドガードフレームMFおよび手摺りフレームHFを取り外した状態で示す斜視図である。また、
図18は、連結ステー90の斜視図である。連結ステー90は、3つの平板部、すなわち、第1平板部90a、第2平板部90b、および第3平板部90cを連結して構成され、全体として、1枚の平板を折り曲げた形状で形成される。
【0051】
第1平板部90aおよび第2平板部90bは、上下方向に延びる平板である。第1平板部90aは、第2平板部90bに対して上方にずれて位置する。
図3に示すように、第2平板部90bは、左右方向において、第1平板部90aよりも内側、つまり、燃料タンク30に近い側に位置する。第1平板部90aおよび第2平板部90bは、燃料タンク30の側面部32に沿って位置する。
【0052】
図18に示すように、第3平板部90cは、水平方向(左右方向)に延びる平板であり、第1平板部90aの下端縁と第2平板部90bの上端縁とを連結する。
【0053】
第2平板部90bには、第1貫通孔H1および第2貫通孔H2が形成される。第1貫通孔H1および第2貫通孔H2は、第2平板部90bにおいて、前後方向に並んで位置する。第1貫通孔H1および第2貫通孔H2には、
図3で示したボルトB1およびB2がそれぞれ挿入される。ボルトB1およびB2は、
図18で示した第2平板部90bの第1貫通孔H1および第2貫通孔H2を通り、さらに、
図7で示した支持ステー52の第1腕部52aに設けられたステー孔52h
1および52h
2に挿通され、ナット(図示せず)でそれぞれ締結される。これにより、連結ステー90が支持ステー52に固定される。なお、
図7において、破線で囲まれる領域は、連結ステー90の第2平板部90bが接触する部分である。以下では、上記領域を、被固定部52a
1とも称する。
【0054】
図18で示した第1平板部90aには、第3貫通孔H3および第4貫通孔H4が形成される。第3貫通孔H3および第4貫通孔H4は、第1平板部90aにおいて、上下方向に並んで位置する。第3貫通孔H3および第4貫通孔H4には、
図16に示すボルトB3およびB4がそれぞれ挿入される。ボルトB3およびB4は、マッドガードフレームMFの一部を構成する縦フレームVFに設けられた孔(図示せず)にそれぞれ挿入された後、
図18で示した第1平板部90aの第3貫通孔H3および第4貫通孔H4を通り、ナット(図示せず)でそれぞれ締結される。なお、上記の縦フレームVFは、マッドガードフレームMFにおいて、下端部が床面部7aに固定されて上方に延びた部分を指す。
【0055】
上記のボルトB3およびB4がナットで締結されることにより、マッドガードフレームMFが連結ステー90に固定される。つまり、マッドガードフレームMFが、連結ステー90を介して、支持ステー52を有する側面支持部50(
図7参照)に連結される。なお、マッドガードフレームMFの代わりに、手摺りフレームHFが、連結ステー90を介して側面支持部50に連結されてもよい。
【0056】
このように、本実施形態のトラクタ1は、マッドガードフレームMFまたは手摺りフレームHFと、側面支持部50とを連結する連結ステー90を備える。この構成では、側面支持部50は、連結ステー90およびマッドガードフレームMF(または手摺りフレームHF)を介して運転席7の床面部7aに固定される。これにより、側面支持部50による燃料タンク30の支持をより安定させることができる。
【0057】
図19は、トラクタ1のダッシュボード14を後方から見たときの斜視図である。燃料タンク30が内部に配置されるダッシュボード14は、上部カバー141Uと、下部カバー141Dと、を有する。上部カバー141Uおよび下部カバー141Dは、上下方向に並んで位置する。より詳しくは、上部カバー141Uは、下部カバー141Dの上方に位置する。上部カバー141Uおよび下部カバー141Dは、
図2で示した第1カバー14を構成する。
【0058】
図20は、下部カバー141Dの斜視図である。下部カバー141Dは、上縁部に切欠部Nを有する。上記した連結ステー90は、下部カバー141Dの切欠部Nを通って位置する。つまり、連結ステー90は、下部カバー141Dの切欠部Nを通って、側面支持部50(
図7の被固定部52a
1)に連結される。なお、上部カバー141Uが切欠部を有し、連結ステー90が上部カバー141Uの切欠部を通って位置してもよい。また、上部カバー141Uおよび下部カバー141Dの両方が切欠部を有し、両方の切欠部を合わせて形成される1つの開口部を連結ステー90が通って位置する構成であってもよい。
【0059】
このように、本実施形態では、上部カバー141Uおよび下部カバー141Dの少なくとも一方が切欠部(例えば切欠部N)を有する。そして、連結ステー90は、上記切欠部を通って位置する。これにより、例えば、側面支持部50とマッドガードフレームMF(または手摺りフレームHF)とを連結ステー90で先に連結した状態で、車体2に対する上部カバー141Uの取り付けおよび取り外し、または、車体2に対する下部カバー141Dの取り付けおよび取り外しを行うことができる。したがって、上部カバー141U等の取り付けおよび取り外しの作業性が向上する。また、例えば、車体2に下部カバー141Dを取り付けた後、切欠部Nを通る連結ステー90で側面支持部50とマッドガードフレームMF(または手摺りフレームHF)とを連結し、その後、車体2に上部カバー141Uを取り付ける、という順序で取り付け作業を行うこともでき、また、その逆の順序で取り外しの作業を行うこともできる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で拡張または変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、例えばトラクタなどの作業車両に利用可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 トラクタ(作業車両)
6 エンジン
7 運転席
7a 床面部
10 ステアリングコラム
13 ミッションケース
14 ダッシュボード
141U 上部カバー
141D 下部カバー
20 仕切板(仕切部材)
20a 開口部
21 補強フレーム
30 燃料タンク
31 前面部
31a 凹部
32 側面部
33 上面部
34 底面部
36 固定部材
36a 挿通路
40 タンク支持部
50 側面支持部
51 接触部
52 支持ステー
60 押付部
61 バンド
62 張力調整具
62a 取付部材
62b 軸部材
62c 位置調整部材
70 ペダルフレーム
80 底面支持部
90 連結ステー
MF マッドガードフレーム
HF 手摺りフレーム
N 切欠部