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特開2023-135764電子部品の半田付け構造および半田付け方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135764
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】電子部品の半田付け構造および半田付け方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 33/00 20060101AFI20230922BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20230922BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
B23K33/00 310A
H05K3/34 501C
B23K1/00 330D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041023
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】中島 裕一
【テーマコード(参考)】
5E319
【Fターム(参考)】
5E319AA02
5E319AA07
5E319AB03
5E319AC01
5E319BB05
5E319CC58
5E319CD04
5E319CD35
5E319GG03
5E319GG05
5E319GG15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】製造コストを低く抑えた、スルーホールに対するリードピンの位置を規定して半田付け装置で確実に半田付けを行うことが可能な電子部品の半田付け構造を提供する。
【解決手段】リードピン19が突設された電子部品を支持するボディ(電子部品支持部)と、スルーホール21を有するプリント基板14を電子部品18に対して固定する取付座(プリント基板固定部)とを備える。スルーホール21に通されたリードピン19を、目標半田付け位置においてヒーターで挟んで加熱するとともにヒーターからリードピン19に溶融半田を供給する半田付け装置を用いてリードピン19がスルーホール21に半田付けされた電子部品18の半田付け構造である。リードピン19とスルーホール21は、リードピン19がスルーホール21に挿通されることによりスルーホール21に対するリードピン19の位置が規定されるように、一方が他方に対して偏心している。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リードピンが突設された電子部品を支持する電子部品支持部と、
前記リードピンが挿通されて半田付けされるスルーホールを有するプリント基板を前記電子部品に対して固定するプリント基板固定部とを備え、
前記スルーホールに通されて前記スルーホールから突出した前記リードピンを、前記スルーホールに対して予め定められた目標半田付け位置に位置付けられた一対のヒーターで挟んで加熱するとともに前記ヒーターから前記リードピンに溶融半田を供給する半田付け装置を用いて、前記リードピンが前記スルーホールに半田付けされた電子部品の半田付け構造であって、
前記リードピンと前記スルーホールは、前記リードピンが前記スルーホールに挿通されることにより予め定めた方向に曲がり、前記スルーホールの内壁に接触して前記スルーホールに対する前記リードピンの位置が規定されるように、一方が他方に対して偏心し、
前記半田付け位置は、前記スルーホールに対する位置が規定された前記リードピンの位置であることを特徴とする電子部品の半田付け構造。
【請求項2】
請求項1に記載の電子部品の半田付け構造において、
前記リードピンは、前記電子部品の複数の位置にそれぞれ設けられ、
前記スルーホールは、全ての前記リードピンと対応する位置にそれぞれ設けられ、
前記スルーホールに対して規定される前記リードピンの位置は、隣接する前記リードピンに向かう方向とは異なる方向に偏る位置であることを特徴とする電子部品の半田付け構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電子部品の半田付け構造において、
前記電子部品は、予め定めた第1のピッチ寸法で離間して並ぶ3本の前記リードピンを有し、
前記プリント基板は、前記第1のピッチ寸法より短い第2のピッチ寸法で並ぶ3つの前記スルーホールを有し、
3本の前記リードピンのうちの両端の2本の前記リードピンがそれぞれ前記スルーホールに対して規定される位置は、中央の前記リードピンから離間する方向に偏る位置であり、
3本の前記リードピンのうちの中央の前記リードピンが前記スルーホールに対して規定される位置は、両端の2本の前記リードピンを結ぶ仮想の直線に対して直交する方向に偏る位置であることを特徴とする電子部品の半田付け構造。
【請求項4】
電子部品のリードピンを挟む一対のヒーターを目標半田付け位置に位置付けて前記ヒーターから溶融した半田を供給する半田付け装置を使用し、プリント基板のスルーホールに挿通された前記リードピンを前記スルーホールに半田付けする半田付け方法であって、
前記リードピンに対して偏心した前記スルーホールに前記リードピンを通して曲げることにより、前記スルーホールに対する前記リードピンの位置を規定し、
前記スルーホールに対して規定された前記リードピンの位置を前記目標半田付け位置として前記半田付け装置で半田付けを行うことを特徴とする半田付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品のリードピンとプリント基板のスルーホールとの半田付けを行うにあたり半田付け装置を用いる電子部品の半田付け構造および半田付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気的接合、気密などを目的とした接合技術として半田付けが広く用いられている。近年においては、電子部品のリードピンとプリント基板との半田付けを半田付け装置で行うようになってきている。従来の半田付け装置としては、例えば特許文献1に記載されているものがある。特許文献1に開示された半田付け装置は、リードピンを一対のヒーターで挟んで加熱し、このヒーターで溶融した半田がリードピンに供給される構成が採られている。
【0003】
この半田付け装置を使用することにより、プリント基板のスルーホールに挿通されてスルーホールから突出したリードピンの先端部が一対のヒーターで加熱され、このリードピンに溶融した半田が供給されてリードピンがスルーホールのパッドに半田付けされる。この半田付け装置は、通常はスルーホールの中心を目標半田付け位置として予め設定され、この目標半田付け位置において一連の半田付け動作を実施するように構成されている。
【0004】
従来の半田付け装置のヒーターは、図15に示すように形成されていることが多い。図15において符号1で示すものはプリント基板である。このプリント基板1には複数のスルーホール2が形成されている。これらのスルーホール2には、図示していない電子部品のリードピン3がそれぞれ挿通されている。複数のリードピン3のうちの1本のリードピン3は、一対のヒーター4,4によって挟まれている。
【0005】
ヒーター4には、図16に示すように、リードピン3が挟まれる縦溝5と、この縦溝5に下端が接続された傾斜溝6とが形成されている。傾斜溝6には、溶融した半田がリードピン3に向けて流される。縦溝5は、リードピン3の横を溶融した半田が流れることができるように、リードピン3より溝幅が広くなるように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-183802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されている半田付け装置では、半田付け不良の発生頻度が高いという問題があった。半田付け不良が発生する原因は、スルーホール2内のリードピン3の位置が安定しないからである。リードピン3は、スルーホール2に挿通された状態でスルーホール2の中心(目標半田付け位置)から離れて位置している場合がある。例えば半田付け部を上方から見た図17に示すように、プリント基板1のスルーホール2の中心に対してリードピン3がスルーホール2の径方向の一方に偏って位置し、リードピン3がスルーホール2の内壁に接触するような場合がある。このような場合は、図18に示すように、リードピン3を一対のヒーター4,4で挟むと、リードピン3が縦溝5の端部に挟まれてしまい、ヒーター4,4の熱がリードピン3に伝わり難くなるとともに、溶融した半田を正しく流すことができなくなる。
【0008】
リードピン3の加熱が正しく行われないと、半田の濡れ拡がり不良が発生する。このような場合は、供給半田がリードピン3の先端に乗った状態で凝固したり、半田がヒーター4と接触することなく未溶融の状態で保持されるようなことも発生する。
また、図19に示すように、互いに隣り合う2本のリードピン3の間隔が狭くなるような場合もある。このような場合は、一方のリードピン3を把持しているヒーター4が他方のリードピン3と接触していまい、溶融した半田が他方のリードピン3にも流れてしまうことがある。このように2本のリードピン3に半田が流されると、2本のリードピン3が半田を介して導通する、いわゆるブリッジ不良が発生する。
【0009】
また、他方のリードピン3が既に半田付けされていた場合は、この他方のリードピン3の半田が溶けて一方のリードピン3の半田と繋がってしまい、上述した場合と同様にブリッジ不良が発生してしまうこともある。このため、スルーホール2どうしの間隔を狭くするにも限界があり、プリント基板1の配線パターンを設計する上で制約を受けている。なお、スルーホール2に挿通されたリードピン3を撮像して得た画像データに画像処理を行ってリードピン3の実際の位置を検出し、このリードピン3の実際の位置にヒーター4を移動させて半田付け動作を行うことにより、上述した不具合はある程度は解消することが可能である。しかし、このような構成を採るためには、高い解像度のカメラや、高い速度で画像処理を行う画像処理装置などが必要になるために、設備が高価になって製品の製造コストが高くなってしまう。
【0010】
本発明の目的は、製造コストを低く抑えながら、スルーホールに対するリードピンの位置を規定して半田付け装置で確実に半田付けを行うことが可能な電子部品の半田付け構造および半田付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために本発明に係る電子部品の半田付け構造は、リードピンが突設された電子部品を支持する電子部品支持部と、前記リードピンが挿通されて半田付けされるスルーホールを有するプリント基板を前記電子部品に対して固定するプリント基板固定部とを備え、前記スルーホールに通されて前記スルーホールから突出した前記リードピンを、前記スルーホールに対して予め定められた目標半田付け位置に位置付けられた一対のヒーターで挟んで加熱するとともに前記ヒーターから前記リードピンに溶融半田を供給する半田付け装置を用いて、前記リードピンが前記スルーホールに半田付けされた電子部品の半田付け構造であって、前記リードピンと前記スルーホールは、前記リードピンが前記スルーホールに挿通されることにより予め定めた方向に曲がり、前記スルーホールの内壁に接触して前記スルーホールに対する前記リードピンの位置が規定されるように、一方が他方に対して偏心し、前記半田付け位置を、前記スルーホールに対する位置が規定された前記リードピンの位置としたものである。
【0012】
本発明は、前記電子部品の半田付け構造において、前記リードピンは、前記電子部品の複数の位置にそれぞれ設けられ、前記スルーホールは、全ての前記リードピンと対応する位置にそれぞれ設けられ、前記スルーホールに対して規定される前記リードピンの位置は、隣接する前記リードピンに向かう方向とは異なる方向に偏る位置であってもよい。
【0013】
本発明は、前記電子部品の半田付け構造において、前記電子部品は、予め定めた第1のピッチ寸法で離間して並ぶ3本の前記リードピンを有し、前記プリント基板は、前記第1のピッチ寸法より短い第2のピッチ寸法で並ぶ3つの前記スルーホールを有し、3本の前記リードピンのうちの両端の2本の前記リードピンがそれぞれ前記スルーホールに対して規定される位置は、中央の前記リードピンから離間する方向に偏る位置であり、3本の前記リードピンのうちの中央の前記リードピンが前記スルーホールに対して規定される位置は、両端の2本の前記リードピンを結ぶ仮想の直線に対して直交する方向に偏る位置であってもよい。
【0014】
本発明に係る半田付け方法は、電子部品のリードピンを挟む一対のヒーターを目標半田付け位置に位置付けて前記ヒーターから溶融した半田を供給する半田付け装置を使用し、プリント基板のスルーホールに挿通された前記リードピンを前記スルーホールに半田付けする半田付け方法であって、 前記リードピンに対して偏心した前記スルーホールに前記リードピンを通して曲げることにより、前記スルーホールに対する前記リードピンの位置を規定し、前記スルーホールに対して規定された前記リードピンの位置を前記目標半田付け位置として前記半田付け装置で半田付けを行う方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、スルーホールを使用してリードピンの位置を規定し、この位置で半田付け装置によって半田付けが行われるから、実際のリードピンの位置と、半田付け装置の目標半田付け位置とが一致する。したがって、本発明によれば、製造コストを低く抑えながら、スルーホールに対するリードピンの位置を規定して半田付け装置で確実に半田付けを行うことが可能な電子部品の半田付け構造および半田付け方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明に係る電子部品の半田付け構造を示す斜視図である。
図2図2は、半田付け構造の分解斜視図である。
図3図3は、要部を拡大して示す斜視断面図である。
図4図4は、電子部品のリードピンを示す平面図である。
図5図5は、プリント基板のスルーホールを示す平面図である。
図6図6は、リードピンにスルーホールを重ねた状態を示す平面図である。
図7図7は、リードピンをスルーホールに挿通させた状態を示す平面図である。
図8図8は、リードピンをヒーターで挟んでいる状態を示す断面図である。
図9図9は、リードピンをヒーターで挟んでいる状態を示す斜視断面図である。
図10図10は、リードピンをヒーターで挟んでいる状態を示す平面図である。
図11図11は、半田付け装置の構成を示す斜視図である。
図12図12は、本発明に係る電子部品の半田付け方法を示すフローチャートである。
図13図13は、半田付け構造の断面図である。
図14図14は、スルーホールとリードピンの他の実施の形態を示す平面図である。
図15図15は、従来の半田付け装置でリードピンを挟んでいる状態を示す斜視図である。
図16図16は、リードピンをヒーターではさんでいる状態を示す平面図である。
図17図17は、リードピンをスルーホールに挿通させた状態を示す平面図である。
図18図18は、リードピンをヒーターで挟んでいる状態を示す平面図である。
図19図19は、リードピンをスルーホールに挿通させた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る電子部品の半田付け構造および半田付け方法の一実施の形態を図1図14を参照して詳細に説明する。
図1に示す電子機器11は、この電子機器11の筐体を構成するボディ12と、ボディ12に複数の固定用ボルト13によって固定されたプリント基板14とを備えている。ボディ12は、図2に示すように、角柱状に形成されている。ボディ12の長手方向の一端部にはプリント基板14を取付けるための2つの取付座15が設けられている。プリント基板14は、これらの取付座15に重ねられた状態で固定用ボルト13によってボディ12に固定されている。固定用ボルト13は、プリント基板14を貫通して取付座15に螺着されている。この実施の形態においては、取付座15が本発明でいう「プリント基板固定部」に相当する。
【0018】
ボディ12の長手方向の中央部には溝16が形成され、溝16の中央部には円形凹部17が形成されている。円形凹部17の底には、電子部品18が取付けられている。上述したようにプリント基板14を取付座15に取付けることにより、プリント基板14が電子部品18に対して固定される。
電子部品18には、複数のリードピン19が突設されている。この電子部品18は、リードピン19が円形凹部17から溝16に向けて延びる姿勢でボディ12の円形凹部17内に固定されている。この実施の形態においては、ボディ12が本発明でいう「電子部品支持部」相当する。複数のリードピン19は、ボディ12の溝16からボディ12の外に突出してプリント基板14のスルーホール21(図3参照)に挿通され、このスルーホール21の半田付け用パッド21a(図3参照)に半田22によって半田付けされている。半田付けは、後述する半田付け装置23(図11参照)によってスルーホール21に半田付けされる。
【0019】
(リードピンの説明)
リードピン19は、図4に示すように、平面視において円形を呈する電子部品18の外周部の複数の位置にそれぞれ立設されている。この実施の形態による電子部品18は、図4において左側で列をなして並ぶ3本のリードピン19と、図4において右側で列をなして並ぶ3本のリードピン19とを有している。以下においては、図4において左側で列をなして並ぶ3本のリードピン19からなる列を第1のピン列24といい、図4において右側で列をなして並ぶ3本のリードピン19からなる列を第2のピン列25という。また、以下においては、便宜上、第1のピン列24と第2のピン列25とにおいて3本のリードピン19が並ぶ方向(図4においては上下方向)を第1の方向といい、第1のピン列24と第2のピン列25とが並ぶ方向(図4においては左右方向)を第2の方向という。
【0020】
第1のピン列24の3本のリードピン19と、第2のピン列25の3本のリードピン19は、第1の方向において、予め定めた第1のピッチ寸法D1で離間して並んでいる。また、列をなして並ぶ3本のリードピン19のうち、中央のリードピン19は、両端の2本のリードピン19を結ぶ仮想の直線Lに対して直交する方向に距離dだけ偏る位置に位置付けられている。第1のピン列24の中央のリードピン19は、第2のピン列25とは反対方向に距離dだけ偏る位置に設けられている。第2のピン列25の中央のリードピン19は、第1のピン列24とは反対方向に距離dだけ偏る位置に設けられている。また、第1のピン列24の両端の2本のリードピン19と、第2のピン列25の両端の2本のリードピン19とは、第2の方向において距離Aだけ離間している。
【0021】
(プリント基板の説明)
上述した複数のリードピン19が挿通されるプリント基板14のスルーホール21は、図5に示すように、6本のリードピン19と対応するようにプリント基板14の6箇所に設けられている。詳述すると、プリント基板14は、図5において左側に位置する第1のスルーホール列26を構成する3つのスルーホール21と、図5において右側に位置する第2のスルーホール列27を構成する3つのスルーホール21とを有している。個々のスルーホール21は、プリント基板14の表面に露出する半田付け用パッド21aと、プリント基板14を貫通する貫通孔21b(図3参照)とを有している。半田付け用パッド21aは、詳細には図示してはいないが、プリント基板14の内部または裏面に設けられた導体パターンに電気的に接続されている。
【0022】
図5に示すように、第1のスルーホール列26の3つのスルーホール21と、第2のスルーホール列27の3つのスルーホール21は、上述した第1の方向において、予め定めた第2のピッチ寸法D2で離間して並んでいる。第2のピッチ寸法D2は、上述したリードピン19どうしの間隔である第1のピッチ寸法D1より短い。第1のスルーホール列26の3つのスルーホール21は、第2の方向において同一の位置に形成されている。第2のスルーホール列27の3つのスルーホール21は、第2の方向において同一の位置に形成されている。また、第1のスルーホール列26の3つのスルーホール21と、第2のスルーホール列27の3つのスルーホール21とは、第2の方向において距離Aだけ離間している。
【0023】
これらのスルーホール21をリードピン19の上に位置付けて上方から見ると、図6に示すように、各スルーホール21は、下方の個々のリードピン19に対して偏心して位置するようになる。すなわち、この実施の形態によるスルーホール21とリードピン19は、一方に対して他方が偏心している。スルーホール21にリードピン19を半田付けするためには、スルーホール21にリードピン19を挿通させる必要がある。スルーホール21に対して偏心しているリードピン19をスルーホール21に挿通させるためには、例えば、リードピン19を作業者が指で押してスルーホール21に導くことによって行うことができる。リードピン19の先端部がスルーホール21に挿入された状態でプリント基板14をボディ12に固定することにより、個々のリードピン19がスルーホール21に挿通されて個別の方向に曲がり、図7に示すように、全てのリードピン19がそれぞれスルーホール21の内壁に接触する。すなわち、全てのリードピン19において、スルーホール21に対する位置が規定される。
【0024】
この実施の形態おいては、リードピン19の第1のピッチ寸法D1がスルーホール21の第2のピッチ寸法D2より大きく、第1および第2のピン列25,26において中央に位置するリードピン19が他のリードピン19より第2の方向に偏って位置しているから、スルーホール21に対して規定されるリードピン19の位置は、隣接するリードピン19に向かう方向とは異なる方向に偏る位置となる。詳述すると、第1および第2のピン列25,26において、3本のリードピン19のうちの両端の2本のリードピン19がそれぞれスルーホール21に対して規定される位置は、中央のリードピン19から離間する方向に偏る位置である。また、3本のリードピン19のうちの中央のリードピン19がスルーホール21に対して規定される位置は、両端の2本のリードピン19を結ぶ仮想の直線L(図7参照)に対して直交する方向に偏る位置である。
このようにリードピン19がスルーホール21に挿通されて個々のリードピン19の位置がそれぞれスルーホール21に対して決められた状態で後述する半田付け装置23により半田付けが行われる。
【0025】
(半田付け装置の説明)
スルーホール21にリードピン19を半田付けする際に使用する半田付け装置23は、図8に示すようにリードピン19を挟む開閉式の一対のヒーター31,31と、これらのヒーター31を開閉させるとともに昇降させるヒーター駆動部32と、ヒーター駆動部32を上述した第1の方向に移動させる第1の移動部33と、第1の移動部33を上述した第2の方向に移動させる第2の移動部34などを備えている。第1の移動部33は、第1の方向に延びる第1のレール部材33aに移動自在に支持され、ヒーター駆動部32を支持した状態で第1のレール部材33aに沿って平行移動する。
【0026】
第2の移動部34は、第2の方向に延びる2本の第2のレール部材34aに平行移動自在に支持され、第1のレール部材33aを支持した状態で第2のレール部材34aに沿って平行移動する。2本の第2のレール部材34aは、それぞれ基台35に支持されており、第1のレール部材33aの両端部を支持している。
図11に示す電子機器11は、ボディ12から突出するリードピン19をプリント基板14のスルーホール21に挿通させ、プリント基板14をボディ12に固定した状態のものである。この電子機器11は、固定台36に搭載されて固定されている。固定台36は基台35に固定されている。
【0027】
ヒーター31は、通電されることにより発熱する発熱体(図示せず)を内蔵している。このヒーター31には、図8図10に示すように、上下方向に延びるように形成されてリードピン19が挟まれる縦溝41と、この縦溝41に下端が接続された傾斜溝42とが形成されている。傾斜溝42には、溶融した半田がリードピン19に向けて流される。縦溝41は、リードピン19の横を溶融した半田が流れることができるように、リードピン19より溝幅が広くなるように形成されている。
【0028】
ヒーター駆動部32は、ヒーター31に通電してヒーター31を所定の半田付け用の温度に保持する機能と、図示していない半田片をヒーター31に供給して溶融半田を生成する機能なども有している。ヒーター駆動部32と、第1の移動部33と、第2の移動部34の動作は、図示していない制御装置によって制御される。制御装置は、予め定めた目標半田付け位置で半田付け動作が行われるように上述した各機能部を動作させる。目標半田付け位置については後述する。ここでいう半田付け動作とは、下記の第1~第9の動作である。
【0029】
第1の動作は、ヒーター31を後述する目標半田付け位置の上方に移動させる動作である。
第2の動作は、ヒーター31を開く動作である。
第3の動作は、ヒーター31を目標半田付け位置まで下降させる動作である。
第4の動作は、ヒーター31を閉じる動作である。この動作によりリードピン19が一対のヒーター31,31によって挟まれる。
第5の動作は、半田片をヒーター31に供給して溶融させる動作である。
第6の動作は、リードピン19が所定の温度に達して溶融半田が濡れ拡がる時間だけ待機する動作である。
第7の動作は、一対のヒーター31,31を開く動作である。
第8の動作は、ヒーター31を下降前の位置に上昇させる動作である。
第9の動作は、ヒーター31を閉じる動作である。
【0030】
半田付け装置23が半田付け動作を行う目標半田付け位置とは、スルーホール21にリードピン19が挿通されることによってスルーホール21に対する位置が規定されたリードピン19の位置である。この実施の形態においては、設計上のリードピン19の位置とスルーホール21の位置とに基づいて挿通後のリードピン19の位置を全てのスルーホール21について求め、この位置がスルーホール21毎の目標半田付け位置として制御装置に予め記録されている。
【0031】
(半田付け方法の説明)
次に、半田付け装置23を用いる半田付け方向を図12に示すフローチャートによって説明する。この半田付け方法は、主に2つのステップで実施される。2つのステップとは、リードピン19の位置を規定するステップS1と、半田付け装置23を使用して半田付けを行うステップS2である。
リードピン19の位置を規定するステップS1においては、リードピン19の先端部をスルーホール21に挿入し(ステップS1A)、プリント基板14を固定用ボルト13によってボディ12に取付ける(ステップS1B)。プリント基板14がボディ12に取付けられる過程で個々のリードピン19がスルーホール21に押し込まれて成形され(曲げられ)、それぞれ決められた位置に位置付けられる(リードピン19の位置が規定される)。
【0032】
半田付けを行うステップS2においては、先ず、ヒーター31を目標半田付け位置の上方に移動させ(ステップS2A)、次に、ヒーター31を開いた状態で所定高さまで下降させてヒーター31を閉じる(ステップS2B)。このとき、目標半田付け位置の下方にリードピン19が位置しているため、ヒーター31の縦溝41の中央部にリードピン19の上端部が挟まれる。そして、所定の時間だけ待機してリードピン19を加熱し(ステップS2C)、溶融した半田をリードピン19に供給して半田付けを行う(ステップS2D)。その後、ヒーター31を開いて上昇させる(ステップS2E)。このようにヒーター31が上昇することによって、一つのスルーホール21に対するリードピン19の半田付けが終了する。この半田付け装置23によって全てのスルーホール21にそれぞれリードピン19が半田付けされることによって、図13に示すように、本発明に係る半田付け構造43が実現される。図13に示すリードピン19は、半田22によってスルーホール21の半田付け用パッド21aに半田付けされている。
【0033】
(実施の形態による効果の説明)
この実施の形態においては、スルーホール21を使用してリードピン19の位置を規定し、この位置を目標半田付け位置として半田付け装置23によって半田付けが行われるから、実際のリードピン19の位置と、半田付け装置23の目標半田付け位置とが一致する。リードピン19の位置を規定するにあたってはリードピン19が半田付けされるスルーホール21を用いているから、専らリードピン19の位置を規定するための部材を使用する必要がない。
したがって、この実施の形態によれば、製造コストを低く抑えながら、スルーホールに対するリードピンの位置を規定して半田付け装置で確実に半田付けを行うことが可能な電子部品の半田付け構造および半田付け方法を提供することができる。
【0034】
この実施の形態によるリードピン19は、電子部品18の複数の位置にそれぞれ設けられ、スルーホール21は、全てのリードピン19と対応する位置にそれぞれ設けられている。スルーホール21に対して規定されるリードピン19の位置は、隣接するリードピン19に向かう方向とは異なる方向に偏る位置である。このため、隣接するリードピン19どうしが不必要に接近することがないから、ブリッジ不良が発生し難くなる。
【0035】
この実施の形態による電子部品18は、予め定めた第1のピッチ寸法D1で離間して並ぶ3本のリードピン19を有している。プリント基板14は、第1のピッチ寸法D1より短い第2のピッチ寸法D2で並ぶ3つのスルーホール21を有している。3本のリードピン19のうちの両端の2本のリードピン19がそれぞれスルーホール21に対して規定される位置は、中央のリードピン19から離間する方向に偏る位置である。3本のリードピン19のうちの中央のリードピン19がスルーホール21に対して規定される位置は、両端の2本のリードピン19を結ぶ仮想の直線Lに対して直交する方向に偏る位置である。このため、3本のリードピン19が互いに離れる方向に位置するようになるから、スルーホール21の第2のピッチ寸法D2を短く設定しながら、半田付け装置23のヒーター31が他のリードピン19と接触することを防ぐことができる。この結果、半田の溶融不足やブリッジ不良などの不具合が生じることを防ぎながら、プリント基板14の電子部品18が接続される回路をコンパクトに形成することができる。
【0036】
(リードピンとスルーホールの変形例)
リードピン19とスルーホール21は図14(A)~(C)に示すように構成することができる。図14(A)はスルーホールを有するプリント基板の一部の平面図、図14(B)は電子部品の平面図、図14(C)はスルーホールにリードピンを挿通させた状態を示す平面図である。図14(A)~(C)において、図1図13によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
【0037】
図14(A)に示す3つのスルーホール21のうちの中央のスルーホール21は、両端のスルーホール21に対して側方に偏るように形成されている。これらのスルーホール21は上述した第1の方向において第2のピッチ寸法D2をおいて互いに離間している。図14(B)に示すリードピン19は、一列に並ぶように形成されている。これらのリードピン19どうしの間隔は第1のピッチ寸法D1である。第2のピッチ寸法D2は第1のピッチ寸法D1より小さい。
リードピン19とスルーホール21をこのように構成したとしても、製造コストを低く抑えながら、スルーホールに対するリードピンの位置を規定して半田付け装置で確実に半田付けを行うことが可能な電子部品の半田付け構造および半田付け方法を提供することができる。
【0038】
上述した実施の形態においては同一の第1のピッチ寸法D1で並ぶ3本のリードピン19を第2のピッチ寸法D2で並ぶ3つのスルーホール21に半田付けする例を示した。しかし、リードピン19の本数とスルーホール21の数は、この実施の形態による数に限定されることはない。すなわち、本発明は、1本のリードピン19を1つのスルーホール21に半田付け装置23によって半田付けする場合にも適用できるし、4本以上のリードピン19を4つ以上のスルーホール21に半田付け装置23によって半田付けするような場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
11…電子機器、12…ボディ(電子部品支持部)、14…プリント基板、15…取付座(プリント基板固定部)、18…電子部品、19…リードピン、21…スルーホール、31…ヒーター、23…半田付け装置、43…半田付け構造、D1…第1のピッチ寸法、D2…第2のピッチ寸法、L…仮想の直線、S1…リードピンの位置を規定するステップ、S2…半田付けステップ。
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