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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135783
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】アイソレータ
(51)【国際特許分類】
   H01F 38/14 20060101AFI20230922BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20230922BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20230922BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
H01F38/14
H01L27/04 L
H01F17/00 B
H01F27/32 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041048
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】石黒 陽
【テーマコード(参考)】
5E044
5E070
5F038
【Fターム(参考)】
5E044CA08
5E044CC04
5E070AA11
5E070AB08
5E070CB12
5F038AZ04
5F038AZ05
(57)【要約】
【課題】1次側と2次側との間の絶縁破壊耐圧を向上させたアイソレータを提供する。
【解決手段】アイソレータは、1次側の第1コイルと、2次側の第2コイルと、第1絶縁膜と、前記1次側に電気的に接続される1次側導体と、を備える。前記第2コイルは、前記第1コイルの上方に設けられ、前記第1コイルに磁気結合される。前記第1絶縁膜は、前記第1コイル上に設けられ、前記第2コイルは、前記第1絶縁膜の前記第1コイルとは反対側の表面に埋め込まれる。前記1次側導体は、前記第1絶縁膜の前記表面側において、前記第2コイルから離間した任意の位置に埋め込まれる。前記第1絶縁膜は、前記表面側において、前記第2コイルと前記1次側導体との間に設けられた複数の島状凸部を有する。前記複数の島状凸部は、前記第1絶縁膜の表面に沿った沿面距離であって、前記第2コイルから前記1次側導体に至る任意の方向の沿面距離が、その間の前記方向における直線距離よりも長くなるように配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次側の第1コイルと、
前記第1コイルの上方に設けられ、前記第1コイルに磁気結合された2次側の第2コイルと、
前記第1コイル上に設けられる第1絶縁膜であって、前記第2コイルは、前記第1コイルとは反対側の表面に埋め込まれる第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜の前記表面側において、前記第2コイルから離間した位置に埋め込まれ、前記1次側に電気的に接続される1次側導体と、
を備え、
前記第1絶縁膜は、前記表面側において、前記第2コイルと前記1次側導体との間に設けられる複数の島状凸部を有し、
前記複数の島状凸部は、前記第1絶縁膜の表面に沿った沿面距離であって、前記第2コイルから前記1次側導体に至る任意の方向の沿面距離が前記第2コイルから前記1次側導体に至る前記方向の直線距離よりも長くなるように配置される、アイソレータ。
【請求項2】
前記第1コイルと前記第2コイルの複数の対を備え、
前記1次側導体は、複数の前記第2コイルを囲むように設けられる請求項1記載のアイソレータ。
【請求項3】
前記島状凸部は、前記第1絶縁膜の前記表面に沿った平面内において、異なるサイズの多角形を含む請求項1または2に記載のアイソレータ。
【請求項4】
前記島状凸部は、前記第1絶縁膜の前記表面に沿った平面内において、それぞれ六角形であり、相互に最近接して配置される請求項1または2に記載のアイソレータ。
【請求項5】
前記第2コイルの少なくとも一部と前記1次側導体とを覆う第2絶縁膜をさらに備える請求項1乃至4のいずれか1つに記載のアイソレータ。
【請求項6】
前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜との間に設けられ、前記第1絶縁膜および前記第2絶縁膜とは異なる組成を有する第3絶縁膜をさらに備え、
前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜とは同じ組成を有する請求項5記載のアイソレータ。
【請求項7】
前記1次側の基準電位が前記1次側導体に供給される請求項1乃至6のいずれか1つに記載のアイソレータ。
【請求項8】
前記第1コイルから前記第2コイルに向かう方向において、前記島状凸部の高さは、前記第2コイルの厚さよりも小さい請求項1乃至7のいずれか1つに記載のアイソレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、アイソレータに関する。
【背景技術】
【0002】
2つのコイル間の磁気結合を介して信号伝送を行うアイソレータでは、1次側と2次側との間において、高い絶縁破壊耐圧を保持することが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-182223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、1次側と2次側との間の絶縁破壊耐圧を向上させたアイソレータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係るアイソレータは、1次側の第1コイルと、2次側の第2コイルと、第1絶縁膜と、前記1次側に電気的に接続される1次側導体と、を備える。前記第2コイルは、前記第1コイルの上方に設けられ、前記第1コイルに磁気結合される。前記第1絶縁膜は、前記第1コイル上に設けられ、前記第2コイルは、前記第1絶縁膜の前記第1コイルとは反対側の表面に埋め込まれる。前記1次側導体は、前記第1絶縁膜の前記表面側において、前記第2コイルから離間した位置に埋め込まれる。前記第1絶縁膜は、前記表面側において、前記第2コイルと前記1次側導体との間に設けられた複数の島状凸部を有する。前記複数の島状凸部は、前記第1絶縁膜の表面に沿った沿面距離であって、前記第2コイルから前記1次側導体に至る任意の方向の沿面距離が前記第2コイルから前記1次側導体に至る前記方向の直線距離よりも長くなるように配置される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態に係るアイソレータを示す模式断面図である。
図2】実施形態に係るアイソレータの構造を示す模式図である。
図3】実施形態に係るアイソレータを示す模式平面図である。
図4】実施形態に係るアイソレータの製造過程を示す模式断面図である。
図5】実施形態の変形例に係るアイソレータの構造を示す模式平面図である。
図6】実施形態の別の変形例に係るアイソレータを示す模式平面図である。
図7】実施形態の別の変形例に係るアイソレータを示す模式断面図である。
図8】比較例に係るアイソレータを示す模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。図面中の同一部分には、同一番号を付してその詳しい説明は適宜省略し、異なる部分について説明する。なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
【0008】
さらに、各図中に示すX軸、Y軸およびZ軸を用いて各部分の配置および構成を説明する。X軸、Y軸、Z軸は、相互に直交し、それぞれX方向、Y方向、Z方向を表す。また、Z方向を上方、その反対方向を下方として説明する場合がある。
【0009】
図1は、実施形態に係るアイソレータ1を示す模式断面図である。アイソレータ1は、1次側の第1コイル10と、2次側の第2コイル20と、第1コイル10を含む1次側回路に電気的に接続される1次側導体30と、を備える。アイソレータ1は、第1コイル10と第2コイル20との間の磁気結合を介して、1次側から2次側へ信号を伝達する。第1コイル10および第2コイル20は、渦巻状の平面コイル(図3参照)である。
【0010】
1次側導体30は、第1コイル10から第2コイル20に向かう方向、例えば、Z方向において、第2コイル20と同レベルに配置される。1次側導体30は、例えば、1次側回路に基準電位を供給するための外部端子として設けられる。
【0011】
図1に示すように、アイソレータ1は、別の1次側導体40と、第1絶縁膜50と、第2絶縁膜60と、第3絶縁膜70と、半導体基板SSと、をさらに備える。半導体基板SSは、例えば、シリコンである。第1絶縁膜50、第2絶縁膜60および第3絶縁膜70は、半導体基板SS上に積層される。
【0012】
1次側導体40は、Z方向において、第1コイル10と同じレベルに設けられる。1次側導体40は、例えば、図示しない配線もしくは回路(図7参照)を介して、第1コイル10に電気的に接続される。1次側導体40は、接続導体35を介して、表面側の1次側導体30に電気的に接続される。
【0013】
第1絶縁膜50は、第1コイル10上に設けられる。第1絶縁膜50は、例えば、シリコン酸化膜である。第1絶縁膜50は、第1コイル10と第2コイル20との間に設けられる。第1絶縁膜50は、第2コイル20を第1コイル10から電気的に絶縁し、第1コイル10と第2コイル20との間に所望の絶縁破壊耐圧を与える膜厚を有する。第1絶縁膜50は、1次側導体30と1次側導体40との間に延在する。接続導体35は、例えば、第1絶縁膜50中に延在するコンタクトプラグである。接続導体35は、例えば、銅などの金属を含む導体である。
【0014】
第2コイル20は、第1絶縁膜50の第1コイルとは反対側の表面上に設けられる。第2コイル20は、例えば、第1絶縁膜50中に埋め込まれる。第2コイルは、例えば、銅などの金属を含む導体である。
【0015】
第2絶縁膜60は、第1絶縁膜50上に設けられる。第2絶縁膜60は、第2コイル20および1次側導体30を覆う。第2絶縁膜60は、例えば、シリコン酸化膜である。また、第2絶縁膜60は、第1絶縁膜50とは異なる組成を有してもよい。
【0016】
第3絶縁膜70は、半導体基板SSと第1絶縁膜50との間に設けられる。第3絶縁膜70は、例えば、シリコン酸化膜である。第1コイル10および1次側導体40は、第1絶縁膜50と第3絶縁膜70との間において、それぞれ、第3絶縁膜70中に埋め込まれる。第1コイル10および1次側導体40は、例えば、銅などの金属を含む導体である。
【0017】
図1に示すように、第1コイル10および1次側回路(図示しない)は、第1絶縁膜50により、2次側の第2コイル20から電気的に絶縁される。1次側と2次側との間の絶縁破壊耐圧は、第1コイル10から第2コイル20に至る距離VD、および、1次側導体30から第2コイル20に至る直線距離HDを広くすることにより確保される。
【0018】
しかしながら、第1絶縁膜50と第2絶縁膜60との間に電気抵抗の低い界面が存在する場合、1次側と2次側との間の絶縁破壊耐圧が低下する。例えば、製造過程に起因する異物もしくは可動イオンが第1絶縁膜50と第2絶縁膜60との間に存在するとか、第2絶縁膜60の形成過程における初期堆積物による絶縁破壊耐圧の低下などの不具合があると、1次側と2次側との間の絶縁破壊耐圧が低下する。
【0019】
例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)を用いて堆積される絶縁膜では、数十nm程度の厚さの初期堆積物が異なる組成および結晶性を有し、絶縁破壊耐圧の低下を招く場合がある。このような初期堆積層は、例えば、絶縁膜断面のTEM像(Transmission Electron Microscope image)のコントラストにより確認される。
【0020】
これに対し、実施形態に係るアイソレータ1では、第2コイル20と1次側導体30との間に、複数の島状凸部IPが設けられる。島状凸部IPは、例えば、第1絶縁膜50の表面に設けられる。これにより、第2コイル20から第1絶縁膜50の表面に沿って1次側導体30に至る沿面距離が直線距離HDよりも長くなり、第1絶縁膜50と第2絶縁膜60との間の界面における電気抵抗を高くすることができる。
【0021】
図2は、実施形態に係るアイソレータ1の構造を示す模式図である。図2は、第1絶縁膜50と第2絶縁膜60との境界に平行な平面内における島状凸部IPの形状および配置を示す模式平面図である。
【0022】
図2に示すように、島状凸部IPの平面形状は、例えば、正六角形である。隣り合う島状凸部IPを最近接させて配置することにより、複数の島状凸部が設けられる領域において平面充填を実現できる。また、実施形態に係る島状凸部の平面形状は、この例に限定される訳ではなく、例えば、正六角形以外の多角形または円形でもよい。
【0023】
図3は、実施形態に係るアイソレータ1を示す模式平面図である。図3は、第1絶縁膜50の表面を表す模式図である。
【0024】
図3に示すように、第2コイル20は、渦巻状の平面コイルである。第2コイル20は、その両端に接続パッド23および接続パッド25を有する。第2コイル20は、例えば、接続パッド23および接続パッド25にボンディングされる金属ワイヤを介して外部回路もしくは他の2次側コイルに電気的に接続される。また、第1コイル10も平面コイルであり、第2コイル20の下方において、第2コイル20と同様の形状を有する。なお、第2コイル20の平面形状は円形に限らず、例えば、多角形であってもよい。
【0025】
複数の島状凸部IPは、例えば、第2コイル20を囲む領域に配置される。1次側導体30は、島状凸部IPが設けられた領域の外側の任意の位置P1~P3に設けることができる。島状凸部IPは、第2コイル20から1次側導体30が配置される任意の位置P1~P3に至る沿面距離を、その間の直線距離HDよりも長くすることができる。すなわち、図3中に矢印で示すように、第1絶縁膜50の表面に沿った任意の方向において、第2コイル20から配置位置P1~P3のそれぞれに至る沿面距離を直線距離HDよりも長くすることができる。
【0026】
図4(a)~(c)は、実施形態に係るアイソレータの製造過程を示す模式断面図である。図4(a)~(c)は、島状凸部の形成過程を例示する模式図である。
【0027】
図4(a)に示すように、第1絶縁膜50中に第2コイル20を形成した後、第1絶縁膜50の表面上にエッチングマスクEMを形成する。なお、1次側導体30は、図示しない部分に形成されている。
【0028】
エッチングマスクEMは、例えば、フォトレジストである。エッチングマスクEMは、例えば、フォトリソグラフィを用いてパターニングされる。島状凸部IPが形成される領域において、エッチングマスクEMは、例えば、正六角形にパターニングされている。
【0029】
図4(b)に示すように、第1絶縁膜50を選択的にエッチングし、島状凸部IPを形成する。第1絶縁膜50は、例えば、ドライエッチングにより選択的に除去される。この間、エッチングマスクEMもエッチングされ、島状凸部IPは、例えば、傾斜した側面を有する形状に設けられる。
【0030】
図4(c)に示すように、エッチングマスクEMを除去する。エッチングマスクEMは、例えば、アッシングにより除去される。島状凸部IPの高さは、例えば、第2コイル20のZ方向の厚さTCよりも低い。また、隣り合う島状凸部IP間の底面を含む平面に対する島状凸部IPの側面の傾斜角θは、例えば、45°よりも大きい。これにより、第1絶縁膜50の表面に沿った沿面距離SDを長くすることができる。
【0031】
なお、島状凸部IPの製造方法は、上記の例に限定される訳ではない。例えば、第1絶縁膜50の表面を粗面化することにより、微細な島状凸部を形成してもよい。例えば、液相エッチングなどにより、絶縁膜の表面に非定型でランダムな形状の凹凸を形成できる。そのような凹凸構造は、例えば、数百nmの段差を有し、凸部の面積比が概ね50%であることが好ましい。また、数十nmの段差を有する凹凸構造も有効であり、後述する密着性の改善と相まって良好な絶縁破壊耐圧が得られる。
【0032】
図5(a)~(c)は、実施形態の変形例に係るアイソレータの構造を示す模式平面図である。図5(a)および(b)は、比較例に係る島状凸部IPの配置例を示す模式図である。図5(c)は、実施形態に係る島状凸部IPの配置例を表す模式図である。
【0033】
図5(a)に示す例では、四角形の平面形状を有する島状凸部IPを配置している。複数の島状凸部IPは、例えば、X方向およびY方向に等間隔に並ぶ。このため、隣り合う島状凸部IPの間に、直線状の短絡経路SPXおよびSPYがX方向およびY方向にそれぞれ存在する。短絡経路SPXおよびSPYは、いずれの島状凸部IPにも交差しない。したがって、短絡経路SPXおよびSPYに沿った沿面距離は、直線距離HDと同じになる。
【0034】
図5(b)に示す例は、X方向に周期的に並ぶ島状凸部IPの位相をずらした配置を示している。すなわち、島状凸部IPのX方向における並びの周期が、Y方向において、交互にずれるように配置される。これにより、Y方向の短絡経路SPYを消すことができるが、X方向の短絡経路SPXは残る。
【0035】
図5(c)に示すように、サイズの異なる多角形の島状凸部IPを配置してもよい。すなわち、図5(b)に示す配置に、Y方向のサイズが大きい島状凸部IPを加えている。これによりX方向の短絡経路SPXも消すことができる。
【0036】
このように、サイズの異なる多角形の平面形状を有する複数の島状凸部IPを配置することにより、任意の方向において、沿面距離が直線距離HDよりも長くなる配置を実現することができる。
【0037】
図6は、実施形態の別の変形例に係るアイソレータ2を示す模式平面図である。図6は、第1絶縁膜50の表面を示す模式図である。この例では、複数の第2コイル20が2次側に設けられる。複数の第2コイル20は、例えば、金属ワイヤ(図示しない)を介して直列接続される。また、複数の第2コイル20は、下方に配置された複数の第1コイル10にそれぞれ磁気結合される。さらに、第2コイル20は、その最外周で各々のコイルと連結し、巻き方向が同一ないし逆巻き方向になる構成でも良い。
【0038】
図6中には、4つの第2コイル20が記載されているが、これに限定される訳ではない。2次側に配置される第2コイル20の数は任意であり、少なくとも2つの第2コイル20が設けられる。
【0039】
図6に示すように、1次側導体30は、複数の第2コイル20を囲むように配置される。1次側導体30と、それぞれの第2コイル20との間には、図示しない複数の島状凸部IPが設けられる(図3参照)。島状凸部IPは、第2コイル20のそれぞれから1次側導体30に至る沿面距離が、任意の方向において、その間の直線距離よりも長くなるように配置される。
【0040】
例えば、図8は、比較例に係るアイソレータ3を示す模式平面図である。アイソレータ3では、複数の溝50Gが第1絶縁膜50の表面側に設けられる。複数の溝50Gは、複数の第2コイル20のそれぞれと1次側導体30との間において、複数の第2コイル20を囲むように設けられる。このような構成でも、第2コイル20のそれぞれから1次側導体30に至る沿面距離を直線距離HDよりも長くすることができる。しかしながら、第2コイル20のそれぞれと1次側導体30との間に複数の溝50Gを設けるために、その間に広い面積が必要となる。
【0041】
実施形態に係るアイソレータ2において、第2コイル20のそれぞれと1次側導体30との間のスペースを広げることなく、複数の島状凸部IPを設けることができる。また、島状凸部IPの配置は、第2コイル20および1次側導体30のそれぞれの形態および配置に依存しない。すなわち、実施形態に係る島状凸部IPは、アイソレータ2の小型化に適し、配置の自由度も大きい。
【0042】
図7は、実施形態の別の変形例に係るアイソレータ2を示す模式断面図である。図7は、図6中に示すA-A線に沿った断面図である。
【0043】
図7に示すように、第1絶縁膜50は、第1膜51、第2膜53、第3膜55および第4膜57を含む積層構造を有する。第2絶縁膜60は、第1膜61と第2膜63と第3膜65とを含む。第3絶縁膜70は、第1膜73と第2膜75とを含む。
【0044】
第1絶縁膜50の第1膜51は、例えば、PCVD(Plasma enhanced Chemical Vapor Deposition)を用いて形成されるシリコン炭窒化膜(SiCN膜)である。第1膜51は、第3絶縁膜70上に設けられる。第1膜51は、第1コイル10および1次側導体40から第1絶縁膜50中への金属原子の拡散を抑制する。
【0045】
第2膜53は、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)を用いて形成されるシリコン酸化膜である。第2膜53は、第1膜51上に設けられる。第2膜53は、第1コイル10と第2コイル20との間に位置し、その間の絶縁破壊耐圧を確保できる膜厚を有する。第2膜53は、Z方向において、例えば、5マイクロメートル以上の膜厚を有する。
【0046】
第3膜55は、例えば、PCVDを用いて形成されるシリコン窒化膜である。第3膜55は、第2膜53上に設けられる。さらに、第4膜57は、第3膜55上に設けられる。第4膜57は、例えば、PCVDを用いて形成されるシリコン酸化膜である。
【0047】
第2コイル20は、第4膜57中に埋め込まれる。第2コイル20の形成過程において、第3膜55は、エッチング停止膜として機能する。すなわち、第2コイル20および1次側導体30を埋め込むための溝を第4膜57に形成する際、第3膜55は、第2膜53に至る過剰エッチングを防ぐ。
【0048】
第2絶縁膜60の第1膜61は、第1絶縁膜50上に設けられる。第1膜61は、例えば、SiCN膜である。第1膜61は、第2コイル20および1次側導体30の金属原子の拡散を抑制する。
【0049】
第2膜63は、第1膜61上に設けられる。第2膜63は、例えば、CVDを用いて形成されるシリコン酸化膜である。第2膜63は、第2コイル20を覆うように形成される。
【0050】
第3膜65は、第2膜63および第1膜61上に設けられる。第3膜65は、第2コイル20と1次側導体30との間において、第1膜61に接するように設けられる。第3膜65は、例えば、PCVDを用いて形成されるシリコン酸化膜である。
【0051】
第3絶縁膜70の第1膜73は、半導体基板SS上に設けられる。第1膜73は、例えば、CVDを用いて形成されるシリコン酸化膜である。第1膜73は、層間絶縁膜として形成される。
【0052】
第2膜75は、第1膜73上に設けられる。第2膜75は、例えば、PCVDを用いて形成されるシリコン酸化膜である。第1コイル10および1次側導体40は、第2膜75中に埋め込まれる。
【0053】
図7に示すように、アイソレータ2は、駆動回路DCをさらに備える。駆動回路DCは、第1コイル10を動作させる。駆動回路DCは、半導体基板SSの表面側に設けられる。第3絶縁膜70の第1膜73は、駆動回路DCの多層配線を含む。1次側導体40は、例えば、駆動回路DCを介して第1コイル10に電気的に接続される。
【0054】
アイソレータ2では、第1絶縁膜50の第4膜57の表面に島状凸部IPが設けられる。これにより、第1絶縁膜50の第4膜57と第2絶縁膜60の第1膜61との界面、および、第2絶縁膜60の第1膜61と第2絶縁膜60の第3膜65との界面のそれぞれにおける沿面距離を直線距離HDよりも長くすることができる。これにより、第2コイル20と1次側導体30との間の絶縁破壊電圧を高くすることができる。
【0055】
さらに、第1絶縁50の第4膜57と第2絶縁膜60の第1膜61との界面における密着性が向上し、TCTなどの繰り返し温度試験において、例えば、封止樹脂による応力を分散させることが可能となる。すなわち、複数の凸部により沿面距離を長くするとともに、密着性の向上による界面の安定性を確保できる。また、第2絶縁膜60の第1膜61の線膨張係数が第2絶縁膜の第3膜65および第1絶縁膜50の第4膜57の線膨張係数よりも小さくなるように構成し、且つ、第2絶縁膜60の第1膜61の膜厚が第3膜65および第1絶縁膜50の第4膜57の膜厚よりも薄くなるように構成することにより、第1絶縁膜50の第4膜57と第2絶縁膜60の第1膜61との界面、および、第2絶縁膜60の第1膜61と第2絶縁膜60の第3膜65との界面における応力緩和の効果を向上させることができる。つまり、薄い膜(第2絶縁膜60の第1膜61)を、薄い膜とは線膨張係数が異なる厚い膜(第1絶縁膜50の第4膜57および第2絶縁膜の第3膜65)の間に挟む構造にすることにより、島状構造による沿面距離の拡大と密着性の向上が相まって、より高い絶縁破壊電圧を得ることができる。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
1、2、3…アイソレータ、 10…第1コイル、 20…第2コイル、 23、25…接続パッド、 30、40…1次側導体、 35…接続導体、 50…第1絶縁膜、 50G…溝、 51、61、73…第1膜、 53、63、75…第2膜、 55、65…第3膜、 57…第4膜、 60…第2絶縁膜、 70…第3絶縁膜、 DC…駆動回路、 EM…エッチングマスク、 IP…島状凸部、 SPX、SPY…短絡経路
図1
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図8