(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135798
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】簡易消火器具
(51)【国際特許分類】
A62C 13/76 20060101AFI20230922BHJP
A62C 13/18 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
A62C13/76 Z
A62C13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041068
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 亮太
(57)【要約】
【課題】従来のエアゾール式のものよりも消火剤を増量又は小型化することができて、容器の強度や使用方向の制限も緩和できる簡易消火器具を提供する。
【解決手段】本発明に係る簡易消火器具1は、消火剤3を充填した内袋5と、内袋5を収容する外容器7と、内袋5及び外容器7の口部を覆うと共に消火剤3を吐出する吐出口21を有する蓋部材9とを備え、発泡剤11と、発泡剤11を発泡させる反応剤13と、発泡剤11及び/又は反応剤13を封入する封入袋15と、外容器7の底部の内側に設けられて外容器7の内部空間を所定の領域に区画すると共に発泡剤11及び反応剤13を収容する区画部17と、区画部17内に設けられて封入袋15を破裂させる突起部19と、を有し、外容器7に衝撃を与えることで封入袋15を破裂させて発泡剤11と反応剤13を反応させ、発泡剤11の発泡によって内袋5が加圧されて消火剤3を吐出させることを特徴とするものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火剤を充填した内袋と、該内袋を収容する外容器と、前記内袋及び前記外容器の口部を覆うと共に前記消火剤を吐出する吐出口を有する蓋部材とを備え、前記内袋を加圧することで前記消火剤を前記吐出口から吐出させる簡易消火器具であって、
発泡剤と、該発泡剤と反応して前記発泡剤を発泡させる反応剤と、通常状態で前記発泡剤と前記反応剤が反応しないように前記発泡剤及び/又は前記反応剤を封入する封入袋と、前記外容器の底部の内側に設けられて該外容器の内部空間を所定の領域に区画すると共に前記発泡剤及び前記反応剤を収容する区画部と、該区画部内に設けられて前記封入袋を破裂させる突起部と、を有し、前記外容器に衝撃を与えることで前記封入袋を破裂させて前記発泡剤と前記反応剤を反応させ、前記発泡剤の発泡によって前記内袋が加圧されて前記消火剤を吐出させることを特徴とする簡易消火器具。
【請求項2】
前記外容器の底部は、該底部を床面に置いたときに接地しない窪み形状部を有し、前記区画部は前記窪み形状部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の簡易消火器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小規模火災の初期消火に対して容易に使用できる小型の簡易消火器具に関する。
【背景技術】
【0002】
小規模火災を対象とした小型で簡易的な構造の消火器具として、例えば特許文献1に開示される消火装置がある。特許文献1の消火装置は、内部にコンデンサのような発熱源を有する家電等の内部に設けられ、家電等の使用時の発熱による出火時に、自動的に消火剤が噴出するようにしたものである。
【0003】
しかし、特許文献1の消火装置は、消火対象の機器の内部に備え付けられるものであるため、消火対象が限定される。
また、所定の温度に加熱されたときに消火剤が噴出されるようになっているので、使用者が意図したタイミングで消火剤を噴出させることができない。
【0004】
一方、持ち運びが可能で、ごみ箱やコンロなどで発生する小規模な火災に対して手動で使用することができる従来の消火器具として、エアゾール(スプレー)式の簡易消火器具がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エアゾール式の簡易消火器具は、消火剤を噴出させるための高圧ガスを容器内に封入する必要があるので、充填できる消火剤の量が少なくなり、容器も大型化しやすい。また、高温下に置かれると容器の破裂・爆発等の危険があるので、所定の強度を有する容器を用いる必要があった。
さらに、エアゾール式はサイフォン管を使用するので、容器が横向き又は逆さまの状態で使用すると消火剤の噴出が止まる場合があり、使用する向きに制限があった。
【0007】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、従来のエアゾール式のものよりも消火剤を増量でき、また容器を小型化することもでき、さらに容器の強度や使用の向きの制限も緩和できる簡易消火器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る簡易消火器具は、消火剤を充填した内袋と、該内袋を収容する外容器と、前記内袋及び前記外容器の口部を覆うと共に前記消火剤を吐出する吐出口を有する蓋部材とを備え、前記内袋を加圧することで前記消火剤を前記吐出口から吐出させるものであって、発泡剤と、該発泡剤と反応して前記発泡剤を発泡させる反応剤と、通常状態で前記発泡剤と前記反応剤が反応しないように前記発泡剤及び/又は前記反応剤を封入する封入袋と、前記外容器の底部の内側に設けられて該外容器の内部空間を所定の領域に区画すると共に前記発泡剤及び前記反応剤を収容する区画部と、該区画部内に設けられて前記封入袋を破裂させる突起部と、を有し、前記外容器に衝撃を与えることで前記封入袋を破裂させて前記発泡剤と前記反応剤を反応させ、前記発泡剤の発泡によって前記内袋が加圧されて前記消火剤を吐出させることを特徴とするものである。
【0009】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記外容器の底部は、該底部を床面に置いたときに接地しない窪み形状部を有し、前記区画部は前記窪み形状部に設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、消火剤を充填した内袋と、該内袋を収容する外容器と、外容器の底部に設けられた区画部に収容された発泡剤及び反応剤と、発泡剤及び/又は反応剤を封入する封入袋を備え、使用時には、外容器に衝撃を与えることで封入袋を破裂させて発泡剤と反応剤を反応させ、発泡剤の発泡によって内袋が加圧されて消火剤を吐出させるようにしたことにより、従来のエアゾール式のように容器内に高圧ガスを充填する必要がない。これにより、消火剤の増量や容器の小型化が可能で、利便性が向上する。
【0011】
また、高圧ガスを使用しないので、高温・落下(衝撃)等による容器破裂等のリスクが低減され、容器の強度に対する制限を緩和できる。したがって、従来のエアゾール式に用いられる金属製の容器以外にも、樹脂等の素材からなる容器を用いることもでき、薄肉化も可能となる。これにより、容器の耐薬品性、形状の多様性が向上し、軽量化やコストダウンにも寄与する。
さらに、容器が横向き又は逆さまの状態でも消火剤を放出できるので、エアゾール式のように使用する向きが制限されることもない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る簡易消火器具の説明図であり、一部が透過された側面図である。
【
図3】本発明の一実施の形態に係る簡易消火器具の他の態様の説明図であり、一部が透過された側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施の形態に係る簡易消火器具1は、
図1に示すように、消火剤3を充填した内袋5と、内袋5を収容する外容器7と、内袋5及び外容器7の口部を覆う蓋部材9と、発泡剤11と、発泡剤11を発泡させる反応剤13と、反応剤13を封入する封入袋15と、発泡剤11及び反応剤13を収容する区画部17と、区画部17内に設けられた突起部19とを備えている。なお、
図1は、簡易消火器具1の側面図であり、外容器7の内部を透過して図示している。
以下、各構成を詳細に説明する。
【0014】
<内袋>
内袋5は、上方が開口している袋体であり、内部に消火剤3が充填されている。消火剤3の例としては、例えば、強化液や、第3種浸潤剤等入り水、泡消火薬剤などが挙げられる。
【0015】
<外容器>
外容器7は、上述した内袋5や、発泡剤11及び反応剤13を収容するものである。
図1には、上方が開口し、外形が有底円錐台形状の外容器7の例を示したが、例えば有底円筒形状であってもよく、特に形状を限定するものではない。
また、外容器7の素材は、発泡剤11が発泡した際の内圧に耐えられるものであればよく、金属の他、樹脂などを用いることもできる。なお、
図1の例は、樹脂等を素材とした可撓性を有する外容器7を想定したものである。
【0016】
<蓋部材>
蓋部材9は、内袋5が外容器7に収容された状態で、内袋5及び外容器7の口部を覆う部材であり、蓋部材9の上部には、消火剤3を吐出する吐出口21が設けられている。
【0017】
本実施の形態においては、通常時に消火剤3が吐出しないよう、蓋部材9の内部に、
図2に示すような開閉弁23が設けられている。
開閉弁23は、弁体25と、弁体25を閉止方向に付勢するばね27によって構成されており、通常時はばね27に付勢された弁体25によって、蓋部材9と内袋5の接続部分が塞がれている(
図2(a)参照)。
【0018】
使用時には、発泡剤11の発泡によって内袋5と外容器7の間の圧力が高くなり、該圧力によって内袋5が潰され、内袋5内の消火剤3が弁体25を押し上げる(
図2(b)参照)。弁体25が押し上げられると、蓋部材9に消火剤3が流入し、吐出口21から消火剤3が吐出される。
【0019】
<発泡剤>
発泡剤11は、内袋5を加圧するための加圧源となるものである。
図1は、発泡剤11として、炭酸水素ナトリウムとフマル酸からなる錠剤を用いた例を想定したものであるが、その他の錠剤や粉末、液体などを用いてもよく、その形態は特に限定しない。
【0020】
<反応剤>
反応剤13は、発泡剤11と反応して発泡剤11を発泡させるものである。
図1は、反応剤として、水を用いた例を想定したものであるが、その他の液体や、錠剤、粉末などを用いてもよく、その形態は特に限定されない。
【0021】
<封入袋>
封入袋15は、通常状態で上述した発泡剤11と反応剤13が反応しないように、水である反応剤13を封入するものである。
封入袋15の素材は、持ち運び時に破裂しないような一定の強度を有するものであればよく、金属や樹脂の薄膜などを用いることができる。
図1は、反応剤13のみを封入袋15に封入したものであるが、発泡剤11及び反応剤13の形態によって、発泡剤11のみを封入袋15に封入してもよいし、発泡剤11と反応剤13のそれぞれを封入袋15に封入するようにしてもよい。
【0022】
<区画部>
区画部17は、外容器7の底部の内側に設けられて外容器7の内部空間を所定の領域に区画して、発泡剤11及び反応剤13を収容する部分である。本実施の形態では、外容器7の底部の内側に立設する区画壁29によって区画部17が形成されている。
【0023】
<突起部>
突起部19は、区画部17内に設けられた例えば半球状の突起であり、外部から衝撃が加わった際に封入袋15と衝突して封入袋15を破裂させるものである。突起部19の形状は、
図1に例示した半球状に限らず、断面三角状のものや(
図3参照)、針状のものでもよい。もっとも、突起部19の先端が鋭利な形状であると持ち運び時の振動で封入袋15を破裂させる恐れがあるので、丸みを帯びた形状であるのが好ましい。また、突起部19が複数設けられていてもよい。
なお、突起部19は封入袋15を破裂させやすくするためのものであり、例えば使用者が意図的に加えた衝撃だけで封入袋15が割れるようにしてもよい。
【0024】
上記のように、外容器7の底部に設けられた区画部17に発泡剤11と反応剤13を収容するようにしたことで、外容器7の底部に発泡剤11と反応剤13を保持した状態で持ち運ぶことができる。したがって、使用時に底部に衝撃を加えれば、突起部19をほぼ確実に封入袋15に衝突させることができる。また、発泡剤11と反応剤13とが近傍にあるので、封入袋15が破裂して反応剤13が流出すると直ちに発泡剤11と接触して発泡が開始し、速やかに消火剤3を放出することができる。
【0025】
次に、本実施の形態の簡易消火器具1の使用について、具体的に説明する。
使用者は、消火が必要な場面において、外容器7に所定の衝撃を加えて反応剤13を封入する封入袋15を破裂させる。この際、上述したように、反応剤13を封入する封入袋15は外容器7の底部に保持されているので、例えば外容器7の底部を机上に叩きつけるなどして衝撃を加えるとよい。
【0026】
外部からの衝撃が加わることで突起部19が封入袋15に衝突し、封入袋15が破裂すると、封入袋15から流れ出た反応剤13と発泡剤11とが接触して反応し、発泡剤11が発泡する。発泡の進行に伴って外容器7と内袋5の間の内圧が上がり、内袋5が加圧される。
発泡剤11の加圧によって内袋5が潰れると、内袋5に充填された消火剤3が蓋部材9に設けられた開閉弁23の弁体25を押圧し、弁体25を開方向に押し上げる。
開閉弁23が開放すると、内袋5内の消火剤3が蓋部材9の内部に流入し、蓋部材9の先端に設けられた吐出口21から消火剤3が吐出され、消火が行われる。
この際、発泡剤11による加圧で消火剤3が吐出され続けるので、使用者は把持する手で外容器7を押圧する必要はない。
【0027】
また、発泡剤11の加圧に伴って消火剤3が弁体25を開方向に押し上げる力と、ばね27が弁体25を閉方向に付勢する力が釣り合ったところで開閉弁23の開度が安定する。開閉弁23の開度が安定すると、消火剤3が一定の吐出量で吐出されるので、安定して消火を行うことができる。
さらに、発泡剤11の発泡性に合わせてばね27の付勢力を調整すれば、消火剤3の吐出量や吐出を継続できる時間等を任意に設定することも可能である。
【0028】
次に、本実施の形態の簡易消火器具1の他の態様を
図3に示す。なお、
図3において、
図1の簡易消火器具1と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
図3に示す簡易消火器具31は、外容器7の底部に、底部を床面に置いたときに接地しない窪み形状部33を有している。そして、窪み形状部33の内側に区画部17が設けられている。
【0029】
上記のように、接地しない部分に区画部17を設けたことにより、区画部17に収容された発泡剤11及び反応剤13に直接衝撃が加わりにくくなるので、使用時以外の小さな衝撃、例えば、輸送時の振動等による封入袋15の不意な破裂が起こりにくくなる。
また、本実施の形態のように、外容器7が可撓性を有する素材の場合には、
図1のように外容器7の底部が丸みを帯びるように撓む場合があるが、
図3のように窪み形状部33を設ければ底部が撓みにくくなるので、床面等に置いたときに安定感がある。
なお、窪み形状部33を設けずに外容器7の底部を平面状に形成してもよく、その場合にも上記と同様の効果を奏する。
【0030】
また、
図3の例は、区画壁29の上部に区画蓋35を設けた例である。区画蓋35を設けることで、簡易消火器具31を横倒しや逆さまにしても発泡剤11及び反応剤13が区画部17から外に出ない。なお、発泡剤11が発泡した際の障害とならないようにするため、区画壁29及び/又は区画蓋35をメッシュ状等にするのが好ましい。
【0031】
上述したように、本実施の形態においては、発泡剤11の発泡によって内袋5を加圧して消火剤3を吐出させるようにしたことにより、従来のエアゾール式のように容器内に高圧ガスを充填する必要がない。これにより、消火剤3の増量や容器の小型化が可能で、利便性が向上する。
【0032】
また、高圧ガスを使用しないので、高温・落下(衝撃)等による容器破裂等のリスクが低減され、高い耐圧性も必要としないので、容器の素材や形状の自由度が高い。これにより、樹脂等の素材を用いることもでき、薄肉化も可能となって、軽量化やコストダウンにも寄与する。
さらに、容器が横向き又は逆さまの状態でも消火剤3を放出できるので、使用時の向きが制限されることもない。
【符号の説明】
【0033】
1 簡易消火器具
3 消火剤
5 内袋
7 外容器
9 蓋部材
11 発泡剤
13 反応剤
15 封入袋
17 区画部
19 突起部
21 吐出口
23 開閉弁
25 弁体
27 ばね
29 区画壁
31 簡易消火器具(他の態様)
33 窪み形状部
35 区画蓋