(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135799
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】ポリオレフィン微多孔膜および濾過フィルター
(51)【国際特許分類】
C08J 9/00 20060101AFI20230922BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
C08J9/00 A CES
B32B27/32 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041072
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三浦 由起子
【テーマコード(参考)】
4F074
4F100
【Fターム(参考)】
4F074AA16
4F074CA03
4F074CC02Y
4F074DA02
4F074DA03
4F074DA10
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4F074DA49
4F100AK03A
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4F100JK14A
4F100JK14B
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】高い空孔率を維持しながら微多孔膜の比表面積当たりの孔径を小さく、液面に接するフィブリル構造を均一に微細化し、異物除去性能に優れるポリオレフィン微多孔膜及び濾過フィルターを提供する。
【解決手段】空孔率が45%以上80%以下のポリオレフィン微多孔膜であって、純水圧入ポロシメータ測定により求められる前記ポリオレフィン微多孔膜の孔径分布において、表面積に基づく孔径の中央値が1nm以上15nm以下であるポリオレフィン微多孔膜。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空孔率が45%以上80%以下のポリオレフィン微多孔膜であって、純水圧入ポロシメータ測定により求められる前記ポリオレフィン微多孔膜の孔径分布において、表面積に基づく孔径の中央値が1nm以上15nm以下であるポリオレフィン微多孔膜。
【請求項2】
前記ポリオレフィン微多孔膜の比表面積が200m2/g以上1000m2/g以下である請求項1に記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項3】
前記ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも一方の面の表面粗さRzが120nm以下である請求項1又は2のいずれかに記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項4】
純水圧入ポロシメータ測定により求められる前記ポリオレフィン微多孔膜の曲路率が1.32以上2.00以下である請求項1~3のいずれかに記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項5】
気・液置換によるハーフドライ測定法により求められるバブルポイント細孔径が1nm以上25nm以下である請求項1~4のいずれかに記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項6】
前記ポリオレフィン微多孔膜の透気抵抗度が10sec/100cm3以上200sec/100cm3以下である請求項1~5のいずれかに記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項7】
前記ポリオレフィン微多孔膜が、少なくとも、ポリエチレンを含む第1層と、第1層と異なるポリオレフィンを含む第2層を有するポリオレフィン多層微多孔膜であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のポリオレフィン微多孔膜を有する、濾過フィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン微多孔膜および濾過フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン微多孔膜は、電池セパレータ、電解コンデンサー用隔膜、水処理膜、限外濾過膜、精密濾過膜、逆浸透濾過膜、透湿防水衣料などの各種の用途に広く用いられている。これらの中でも、耐溶剤性、耐薬品性等が要求される用途においては、十分な耐性を維持したまま、高精度の分離能を維持できるように、ポリオレフィン微多孔膜の性能をより向上させるべく要請が高まっている。
【0003】
例えば、高集積度半導体製造プロセス液体用濾過フィルターとしては、半導体の配線ピッチの微細化に伴い、より細かなプロセス液体中の異物除去性能の要請が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07-228718号公報
【特許文献2】特開平11-322988号公報
【特許文献3】特開2010-053245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~3に開示されているポリオレフィン微多孔膜は、三次元網目構造の形成について開示されているが、フィルターを目的としていないため、フィルター濾材の捕集機構である慣性衝突効果、さえぎり効果を得るには孔径が大きく、比表面積は十分とは言えない。本発明は、高い空孔率を維持しながら微多孔膜の比表面積当たりの孔径を小さく、液面に接するフィブリル構造を均一に微細化し、異物除去性能に優れるポリオレフィン微多孔膜及び濾過フィルターを提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、高度な製膜技術によってポリオレフィン微多孔膜のフィブリル構造を制御し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明のポリオレフィン微多孔膜は、空孔率が45%以上80%以下のポリオレフィン微多孔膜であって、純水圧入ポロシメータ測定により求められる前記ポリオレフィン微多孔膜の孔径分布において、表面積に基づく孔径の中央値が1nm以上15nm以下である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高い空孔率でありながら液面に接する表面のフィブリル構造を微細化し凹凸が均一で比表面積当たりの孔径が小さい孔構造を有し、高い比表面積と長い曲路を持つことで濾過プロセスにおいて良好な透水性と粒子捕集性を両立したポリオレフィン微多孔膜及び濾過フィルターを提供する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施例のポリオレフィン微多孔膜の表面の孔構造を示す一例である。
【
図2】
図2は、本発明の比較例のポリオレフィン微多孔膜の表面の孔構造を示す一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、空孔率が45%以上80%以下のポリオレフィン微多孔膜であって、純水圧入ポロシメータ測定により求められる前記ポリオレフィン微多孔膜の孔径分布において、表面積に基づく孔径の中央値が1nm以上15nm以下であるポリオレフィン微多孔膜に関する。かかるポリオレフィン微多孔膜は、少なくとも、ポリエチレン樹脂からなる第1層と、第1層と異なるポリオレフィン樹脂からなる第2層を有することが好ましい。以下、本発明のポリオレフィン微多孔膜について説明する。なお、本発明においては、ポリオレフィン微多孔膜の製膜する方向に平行な方向を製膜方向、長手方向あるいはMD方向と称し、ポリオレフィン微多孔膜面内で製膜方向に直交する方向を幅方向あるいはTD方向と称する。
【0011】
(第1層の樹脂)
本発明の微多孔膜を構成する第1層の樹脂には、ポリエチレン樹脂を用いることが好ましい。
【0012】
前記ポリエチレン樹脂には、高密度ポリエチレン(密度:0.942g/m3以上、分子量:分子量:1.0×104万以上6.0×105万未満)、超高分子量ポリエチレン(分子量:1.0×106万以上3.0×106万未満)からなる群から選ばれた少なくとも1種類を用いる事ができる。これらの中でも高密度ポリエチレンを含むことが好ましい。第1層の高密度ポリエチレン含有量は、第1層のポリオレフィン樹脂全体100質量%に対して、好ましくは10質量%以上100質量%以下、より好ましくは20質量%以上90質量%以下である。第1層の超高分子量ポリエチレン含有量は、第1層のポリオレフィン樹脂全体100質量%に対して、好ましくは0質量%以上90質量%以下、より好ましくは10質量%以上80質量%以下である。ポリエチレンを上記範囲で含有させることにより、表層のフィブリル構造を均一に微細化する事ができる。高密度ポリエチレンおよび、超高分子量ポリエチレンの重量平均分子量(Mw)は、後述するゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により単分散ポリスチレン標準試料を用いたユニバーサル検量線にて求めた。なおポリエチレン樹脂は1種を単独で、または2種以上をポリエチレン混合物として併用してもよい。ポリエチレン混合物としては、前記主成分のポリエチレン樹脂以外に、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、分岐状低密度ポリエチレン及び線状低密度ポリエチレンを含んでも良い。特に超高分子量ポリエチレンを含むと本実施形態のポリオレフィン微多孔膜の強度が高くなり高い耐衝撃性を得られる。
【0013】
(第2層の樹脂)
本発明の微多孔膜を構成する第2層の樹脂は、ポリプロピレン及びポリエチレンからなることが好ましい。前記ポリプロピレンはメソペンタット分率90%以上のアイソタクチックポリプロピレンを用いる事ができる。また、前記ポリエチレンは高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンからなる群から選ばれた少なくとも1種類を用いる事ができる。
第2層のポリプロピレンの含有量は、第2層のポリオレフィン樹脂全体100質量%に対して、好ましくは40質量%以上95質量%以下、より好ましくは45質量%以上90質量%以下である。第2層のポリエチレンの含有量は、第2層のポリオレフィン樹脂全体100質量%に対して、好ましくは5質量%以上60質量%以下、より好ましくは10質量%以上55質量%以下である。高密度ポリエチレンを上記範囲で含有させることにより、第1層との界面の密着性が良好となる。
【0014】
(成膜用溶剤)
成膜用溶剤としては、ポリオレフィン樹脂に混合できる物質またはポリオレフィン樹脂を溶解できる物質であれば特に限定されない。成膜用溶剤としては液体溶剤及び固体溶剤のいずれも使用できる。液体溶剤としてはノナン、デカン、デカリン、パラキシレン、ウンデカン、ドデカン、流動パラフィン等の脂肪族又は環式の炭化水素、及び沸点がこれらに対応する鉱油留分が挙げられる。溶剤含有量が安定したゲル状シートを得るためには、流動パラフィンのような不揮発性の液体溶剤を用いることが好ましい。固体溶剤は融点が80℃以下のものが好ましく、このような固体溶剤としてパラフィンワックス、セリルアルコール、ステアリルアルコール、ジシクロヘキシルフタレート等が挙げられる。なお、液体溶剤と固体溶剤を併用してもよい。
【0015】
ポリオレフィン樹脂と成膜用溶剤との配合割合は、ポリオレフィン樹脂と成膜用溶剤との合計を100質量%として、押出物の成形性を良好にする観点から、ポリオレフィン樹脂1~60質量%が好ましい。ポリオレフィン樹脂と希釈剤との混合物に対するポリオレフィン樹脂の割合は、より好ましくは5~50質量%、更に好ましくは10~40質量%である。
【0016】
(特性)
本実施形態のポリオレフィン微多孔膜は、後述の延伸温度や延伸倍率などの条件を満たすことによって、高い空孔率かつ比表面積当たりの孔径が小さい孔構造、高い比表面積、長い曲路を有する。
【0017】
(比表面積)
比表面積はポリオレフィン微多孔膜の単位質量あたりの表面積を純水圧入ポロシメータによって測定した測定値である。比表面積は200m2/g以上1000m2/g以下が好ましい。より好ましくは比表面積は250m2/g以上950m2/g以下である。比表面積が200m2/g以上であると、捕集面積が十分確保されポリオレフィン微多孔膜をフィルターとして用いた場合、良好な捕集性能が得られる。また、比表面積が1000m2/g以下の場合、ポリオレフィン微多孔膜の強度が十分であり、製膜が容易となる。比表面積は、ポリオレフィン樹脂と成膜用溶剤の割合、延伸温度条件、延伸倍率、ゲル状シートの延伸後の熱固定処理温度などを調節することにより、上記範囲とすることができる。特に、熱固定処理温度を後述する範囲に設定することにより、再結晶化を抑制することができ、十分な比表面積が得られる。
【0018】
(表面積に基づく孔径の中央値)
表面積に基づく孔径の中央値は純水圧入ポロシメータによって測定した測定値である。表面積に基づく孔径の中央値が1nm以上15nm以下であることが好ましい。表面積に基づく孔径の中央値は、より好ましくは2nm以上、さらに好ましくは3nm以上であり、特に好ましくは4nm以上である。また、より好ましくは14nm以下、さらに好ましくは13nm以下であり、特に好ましくは12nm以下である。
【0019】
表面積に基づく孔径の中央値を1nm以上とすることにより、良好な液体透過性を得られる。また、15nm以下とすることで、半導体製造で必要とされる極小サイズの異物が捕集しやすくなる。
【0020】
(表面積に基づく孔径の中央値)
表面積に基づく孔径の中央値は純水圧入ポロシメータによって測定した測定値である。本発明のポリオレフィン微多孔膜は、表面積に基づく孔径の中央値が1nm以上15nm以下である。表面積に基づく孔径の中央値は、より好ましくは2nm以上、さらに好ましくは3nm以上であり、特に好ましくは4nm以上である。また、より好ましくは14nm以下、さらに好ましくは13nm以下であり、特に好ましくは12nm以下である。
【0021】
表面積に基づく孔径の中央値を1nm以上とすることにより、良好な液体透過性を得られる、また15nm以下とすることで、半導体製造で必要とされる極小サイズの異物が捕集しやすく、良好な異物捕集性能が得られる。比表面積に基づく孔径は微多孔膜表面のフィブリルを細く、内層側の空孔を密に調整を行う。具体的には結晶性の異なる2種類のポリオレフィン樹脂を一緒の温度範囲で急冷する事で異なる構造のゲル状シートを作製し延伸温度を低くすることで複雑な孔構造が得られ、表層側の空孔率を大きくフィブリルを細くするため、表層側となるポリオレフィン樹脂の成膜溶剤量を内層側より多くする。内層側は表層側より結晶化度の低い樹脂を配置し、表層と同時に延伸する事で緻密化する事が出来る。また、成形された孔構造を安定化させるには、成膜用溶剤を含んだ状態で熱固定させる方が良い。
【0022】
(曲路率)
曲路率は微多孔膜の膜厚と平均実効孔路長との比で、曲路率=平均実効孔路長/微多孔膜の膜厚の式で表される。曲路率は1.32以上2.00以下が好ましい。より好ましくは、1.35以上1.90以下である。曲路率を1.32以上とすることで、異物が微細なフィブリル構造に接触し、良好な異物捕集性能が得られる。また、曲路率を2.00以下とすることで透水性の悪化を抑制し、好適となる。曲路率は異なるポリオレフィン樹脂組成の第1層と第2層を共に冷却、延伸し、表層側と内層側の実行孔路長を調整することで、上記範囲に制御できる。
【0023】
(表面粗さRz)
表面粗さは後述する走査型プローブ顕微鏡のダイナミックフォースモード(DFM)により測定したポリオレフィン微多孔膜表面の凹凸である。表面粗さは120nm以下が好ましい。より好ましくは100nm以下である。表面粗さは120nm以下であると均一に微細化したフィブリルにより慣性衝突効果、さえぎり効果が得られ、濾過液体中の異物捕集性能が良好となる。表面粗さは、未延伸のゲル状シートを形成する際に第1層のポリオレフィン樹脂を100℃/分以上の速度で35℃まで冷却して結晶化を行い、低い温度で延伸することで微細なフィブリル構造を形成する事ができ、表面の凹凸を小さく調整することで、上記範囲に制御できる。
【0024】
(膜厚)
本発明のポリオレフィン微多孔膜の厚みは7μm以上35μm以下が好ましい。より好ましくは9μm以上30μm以下である。膜厚が7μm以上であると異物を捕集する層が確保され十分な捕集性能が得られる。また、膜厚が35μm以下だと、透水性が良好になる。膜厚の調整は、例えば、Tダイからの吐出量、冷却ロールの回転速度、ライン速度及び延伸倍率等を適宜調節することにより上記範囲とすることができる。
【0025】
(透気抵抗度)
本発明のポリオレフィン微多孔膜の透気抵抗度は、10sec/100cm3以上200sec/100cm3以下が好ましい。より好ましくは20sec/100cm3以上190sec/100cm3以下、さらに好ましくは30sec/100cm3以上180sec/100cm3以下である。透気抵抗度が10sec/100cm3以上であると微多孔膜に異物が衝突した際に破膜しにくくなるため、好ましい。また、透気抵抗度が200sec/100cm3以下であると圧力損失が高くなりすぎず、良好な透水性が得られる。透気抵抗度は、ポリプロピレンの含有量、延伸条件、ゲル状シートの延伸後の熱固定処理温度などを調節することにより、上記範囲とすることができる。
【0026】
(空孔率)
本発明のポリオレフィン微多孔膜の空孔率は45%以上80%以下である。空孔率は、より好ましくは48%以上75%以下、更に好ましくは50%以上70%以下である。空孔率が45%以上であると、ポリオレフィン微多孔膜をフィルターとして用いた場合、好適な透水性が得られる。また、空孔率が80%以下であると、空隙が適度であり、従って異物の捕集性に優れる。空孔率は、ポリオレフィン樹脂と成膜用溶剤の割合、延伸温度条件、延伸倍率、ゲル状シートの延伸後の熱固定処理温度などを調節することにより、上記範囲とすることができる。
【0027】
(バブルポイント細孔径)
本発明のバブルポイント細孔径(最大孔径)は、1nm以上25nm以下が好ましい。より好ましくは3nm以上23nm以下である。バブルポイント細孔径を25nm以下とすることで異物のすり抜けを抑制でき、好適となる。また、バブルポイント細孔径を1nm以上とすることで透水性に優れたものとすることができる。バブルポイント細孔径は、ポリオレフィン樹脂と成膜用溶剤の割合、延伸温度条件、延伸倍率、ゲル状シートの延伸後の熱固定処理温度条件を適宜調節することにより、上記範囲とすることができる。
【0028】
(製造方法)
本発明では、少なくとも、第1層及び第2層のポリオレフィン樹脂と成膜用溶剤とを加熱溶融混練し、得られた樹脂溶液をダイより共押出し、冷却することにより未延伸ゲル状シートを形成し、得られた未延伸ゲル状シートをMD方向とTD方向の延伸を同時に行う同時二軸延伸法を行い、前記成形用溶剤を除去し、乾燥することによってポリオレフィン微多孔膜を得る。
本発明の多孔性フィルムに用いる多孔質基材は複数の層を有する積層膜がよい。その積層構成としては、異なる2つのオレフィン組成A(第1層)およびB(第2層)を用いた場合を例にすると、A/Bの2層、A/B/Aの3層や、A/B/A/B、A/B/A/B/A,などの積層構成が挙げられるが、これに限定されない。また、オレフィン組成A、Bの他にさらに異なる組成からなる層を追加した積層構成にすることもできる。特に表面粗さを小さくするためには後述するポリオレフィン組成A(第1層)がどちらか一方の表層側となるように配置するのが好ましい。以下、A/B/Aの構成について製造方法を説明する。
MD方向とTD方向を順次延伸する逐次延伸法では、再結晶化の進行により、異物捕集に必要な孔構造を得る事が難しいことから、本発明の課題を達成するには同時二軸延伸法が好ましい。ポリオレフィン微多孔膜の製造方法について同時延伸法を例に具体的に説明する。
【0029】
(混合、混錬)
(a)第1層のポリオレフィン樹脂
高密度ポリエチレンを2質量%以上98質量%未満、及び超高分子量ポリエチレンを2質量%以上98質量%未満の割合で含むポリオレフィン樹脂と成膜用溶剤とを含む樹脂溶液を溶融混錬し、ポリオレフィン溶液を調製する。ポリオレフィン樹脂と成膜溶剤の比率は、ポリオレフィン樹脂の比率としては5%以上35%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以上30%以下である。成膜溶剤を多くすることで、成膜溶剤により分離されたミクロ相の間隔を広くし空孔率を高くすることができる。ポリオレフィン樹脂と成膜用溶剤の溶融混錬する方法は特に限定されないが、二軸押出機中で行うことが好ましい。二軸押出機内のポリオレフィン溶液の温度の好ましい範囲は樹脂によって異なり、例えば、ポリエチレン組成物は140~250℃、押出機内のポリオレフィン溶液の温度については押出機内部もしくはシリンダ部に温度計を設置することで間接的に把握し、目標温度となるようシリンダ部のヒーター温度や回転数、吐出量を適宜調整する。成膜用溶剤は混練開始前に加えてもよく、混練中に途中から添加する事もできる。溶融混練にあたってはポリオレフィン樹脂の酸化を防ぐために酸化防止剤を加えることが好ましい。
(b)第2層のポリオレフィン樹脂
高密度ポリエチレンを5質量%以上60質量%以下、及びメソペンタット分率90%以上のポリプロピレンを40質量%以上95質量%以下の割合で含むポリオレフィン樹脂と成膜用溶剤とを含む樹脂溶液を溶融混錬し、ポリオレフィン溶液を調製する。ポリオレフィン樹脂と成膜溶剤の比率は、ポリオレフィン樹脂の比率としては5%以上50%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以上40%以下である。成膜溶剤を多くすることで、成膜溶剤により分離されたミクロ相の間隔を広くし空孔率を高くすることができる。ポリオレフィン樹脂と成膜用溶剤の溶融混錬する方法は特に限定されないが、二軸押出機中で行うことが好ましい。二軸押出機内のポリオレフィン溶液の温度の好ましい範囲は樹脂によって異なり、例えば、ポリオレフィン組成物は140~250℃、押出機内のポリオレフィン溶液の温度については押出機内部もしくはシリンダ部に温度計を設置することで間接的に把握し、目標温度となるようシリンダ部のヒーター温度や回転数、吐出量を適宜調整する。成膜用溶剤は混練開始前に加えてもよく、混練中に途中から添加する事もできる。溶融混練にあたってはポリオレフィン樹脂の酸化を防ぐために酸化防止剤を加えることが好ましい。
【0030】
(押出し及びキャスト)
押出機内で溶融、混練された第1層のポリオレフィン樹脂溶液と第2層のポリオレフィン樹脂溶液を共押出し多層Tダイで第1層が表層、第2層が内層となるように3層構成で成形し冷却することにより未延伸ゲル状シートを形成する。未延伸ゲル状シートの形成方法として、例えば日本国特許第2132327号公報および日本国特許第3347835号公報に開示の方法を利用することができる。
【0031】
冷却は少なくともゲル化温度までは100℃/分以上の速度で、35℃以下まで行うのが好ましい。ゲル状シートの内層まで均一に冷却されることが好ましく未延伸ゲル状シートの厚みは2mm以下とすることが好ましい。上記処置により、成膜用溶剤によって分離されたポリオレフィンのミクロ相を固定化することができる。冷却速度と温度が上記範囲内であると結晶化度が適度な範囲に保たれ、表面の孔構造の凹凸が小さく、延伸に適した未延伸ゲル状シートとなる。冷却方法としては冷風、冷却水等の冷媒に接触させる方法、冷却ロールに接触させる方法等を用いることができるが、冷媒で冷却したロールに接触させて冷却させることが好ましい。
【0032】
(延伸)
次に、得られたゲル状シートを少なくともMD方向とTD方向の二軸に延伸を行う。
ゲル状シートは成膜用溶剤を含むので、均一に延伸される。ゲル状シートの延伸は、加熱後、テンター法により所定の倍率で同時二軸延伸を行う事が好ましい。
【0033】
本工程における延伸倍率(面積延伸倍率)は、9倍以上49倍以下が好ましく、12倍以上42倍以下がより好ましく、16倍以上36倍以下が特に好ましい。なお、本工程における延伸倍率とは、本工程直前の微多孔質膜を基準として、次工程に供される直前の微多孔質膜の面積延伸倍率のことをいう。
本工程の延伸温度は、80℃以上115℃未満が好ましく、より好ましくは85℃以上114℃未満である。80℃以上とすることで、テンター法による延伸を好適に行うことができ、115℃未満とすることで、孔径を小さくし、比表面積を大きく制御できる。
【0034】
以上のような延伸によりポリエチレンラメラ間に開裂が起こり、ポリエチレン相が微細化し、多数のフィブリルが形成される。フィブリルは三次元的に不規則に連結した網目構造を形成する。延伸により機械的強度が向上するとともに細孔が拡大するが、適切な条件で延伸を行うと、貫通孔径を制御し、高い空孔率と広い比表面積を有する事が可能となる。
【0035】
次に、得られた延伸フィルムの熱固定を行う。成膜溶剤を抽出する前の熱固定は、延伸後のゲル状フィルムを40℃以上120℃未満の温度とすることが好ましく、成膜用溶剤の抽出後にも熱固定を行う場合には、抽出後の熱固定温度より高い温度で行う事が好ましい。成膜用溶剤の抽出前の熱固定を高く、成膜用溶剤を抽出後は低くすることで、形成された網目構造が潰れることなく維持できる。熱固定を行う時間は20秒以下が好ましい。熱固定が20秒以下であれば、ポリオレフィン樹脂の再結晶化による繊維構造の厚化せず、高い比表面積を有する事が可能となる。これは、形成された網目構造の間に成膜溶剤があることで、網目構造を維持する事ができるためと考えられ、高い空孔率が得られる。熱固定温度を120℃未満、20秒以下行うことによって良好な空孔率が得られ、その結果透水性が良好になる。
【0036】
(成膜用溶剤の抽出)
このようにして得られた二軸延伸シートは洗浄溶媒を用いて、成膜用溶剤の抽出が行われる。ポリオレフィン相は成膜用溶剤相と相分離しているので、成膜用溶剤を抽出すると、微細な三次元網目構造を形成するフィブリルからなり、三次元的に不規則に連通する孔を有する多孔質の膜が得られる。洗浄溶媒およびこれを用いた成膜用溶剤の抽出方法は公知の方法を利用することができる。例えば日本国特許2132327号公報や特開2002-256099号公開に開示の方法を利用することができる。
【0037】
(熱固定)
成膜用溶剤を抽出したフィルムには結晶を安定化し、ラメラを均一にさせるため、熱処理が行われる。熱処理方法としては、熱固定処理又は熱緩和処理を用いることができる。熱固定処理とは、膜の寸法が変わらないように保持しながら加熱する熱処理である。熱緩和処理とは、膜を加熱中にMD方向やTD方向に熱収縮させる熱処理である。
熱固定処理は、テンター方式により行うのが好ましい。例えば、熱緩和処理方法としては特開2002-256099号公報に開示の方法が挙げられる。熱固定処理は40℃以上111℃未満で行う事が好ましい。成膜溶剤を抽出した後のフィルムを111℃以下で熱固定を行うとポリオレフィン樹脂の再結晶化が進みにくく、繊維構造の厚膜化が抑えられ、良好な比表面積が得られる。また40℃以上の場合、フィルムが収縮し成形された孔構造をさらに小さく調整する事ができる。
【0038】
(測定方法)
以下、測定方法と評価方法について説明する。
【0039】
(分子量分布)
ポリオレフィン原料の分子量分布は以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた。
・測定装置:Agilent製高温GPC装置PL-GPC220
・カラム:Agilent製PL1110-6200(20μm MIXED-A)×2本
・カラム温度:160℃
・溶媒(移動相):1,2,4-トリクロロベンゼン
・溶媒流速:1.0ml/分
・試料濃度:0.1質量%(溶解条件:160℃/3.5h)
・インジェクション量:500μl
・検出器:Agilent製示差屈折率検出器(RI検出器)
・検量線:単分散ポリスチレン標準試料を用いて得られたユニバーサル検量線から求めた。
【0040】
(比表面積・曲路率・比表面積に基づく孔径の中央値)
作製したポリオレフィン微多孔膜の任意の位置から、長辺がTD方向と平行かつ0.20±0.02gとなる様に長方形に試験片を切り落とし、その試験片の面積、重量を測定した。試験片の面積、後述する方法で測定した膜厚から、ポリオレフィン微多孔膜の体積の算出を行った。
切り落とした試料を精製水中で気泡が入らないようにサンプル用芯に捲回し、POROUS MATERIALS, INC.製の純水圧入ポロシメータ(型式:WIP-3K-A-1)の測定チャンバー内へ設置した。
【0041】
チャンバー内における純水中にガスを導入して種々圧力を加え、それぞれの圧力で浸透した純水の重量を測定する事でポリオレフィン微多孔膜の表面積の測定を行った。表面積とポリオレフィン微多孔膜体積から比表面積、曲路率、比表面積に基づく孔径の中央値を算出した。最大圧力としては13.7MPaGまで測定を行った。
【0042】
(膜厚)
ポリオレフィン微多孔膜の任意の5点の厚みを厚み接触膜厚計により測定し、それら5つの測定結果を平均することにより、当該試験片の膜厚とした。厚み測定機はミツトヨ(Mitsutoyo)製“ライトマチック”(登録商標)VL-50B(測定圧力0.01N、測定子超硬球面測定子φ10.5mm)を用いた。
【0043】
(空孔率)
95mm角の試料を用意し、その試料体積(cm3)と試料質量(g)を測定し得られた結果から次式を用いて空孔率(%)を計算した。密度の値としては0.99g/cm3を用いた。
空孔率=(1-試料質量/(0.99×試料体積))×100
(表面粗さRz)
表面粗さの測定は、セイコーインスツルメンツ(株)製走査型プローブ顕微鏡SPA500を用い、ダイナミックフォースモード(DFM)により得られるポリオレフィン微多孔膜表面の縦4μm、横4μmのエリアの表面の凹凸像から、幅方向に基準長さ4μmとしたときの最高の山頂から高い順に5番目までの山高さの平均と最深の谷底から深い順に5番目までの谷深さの平均との和を用いた。
【0044】
(バブルポイント細孔径)
ポリオレフィン微多孔膜から切り出した試験片をPOROUS MATERIALS, INC.製のパームポロメーター(型式:CFP-1500A)を用いて、Dry-up、Wet-upの順で測定した。Wet-upでは表面張力が既知のGalwick(商品名)で十分に浸したポリオレフィン微多孔膜に圧力をかけ、空気が貫通し始める圧力から換算される孔径をバブルポイント細孔径(最大孔径)とした。平均細孔径については、Dry-up測定で圧力、流量曲線の1/2の傾きを示す曲線と、Wet-up測定の曲線が交わる点の圧力から孔径を換算した。圧力と孔径の換算は下記の数式を用いた。
d=C・γ/P
式中、「d(μm)」はポリオレフィン微多孔膜の孔径、「γ(mN/m)」は液体の表面張力、「P(Pa)」は圧力、「C」は定数である。
【0045】
(透気抵抗度)
旭精工(株)社製のデジタル型王研式透気抵抗度試験機EGO1を使用して、本発明のポリオレフィン微多孔膜を測定部にシワが入らないように固定し、JIS P-8117(2009)に従って透気抵抗度を測定した。試料は5cm角とし、測定点は試料の中央部の1点として、測定値を当該試料の透気抵抗度[sec/100cm3]とした。同様の測定を任意のフィルム位置から採取した10個の試験片について行い、10個の測定値の平均値を当該ポリオレフィン微多孔膜の透気抵抗度とした。
【0046】
(透水量)
直径39mmのステンレス製透液セルにポリオレフィン微多孔膜をセットし、該ポリオレフィン微多孔膜を少量(0.5ml)のエタノールで湿潤させた後、純水100mlを透液セルに入れ、90kPaの差圧で純水を濾過し、10分間経過した際の透水量(cm3)から単位時間(min)・単位面積(cm2)当たりの透水性を算出した。 測定を行った室温は23±2℃、純水温度は23±2℃とした。透水性は0.05ml/min・cm2以上を透水性有とした。
【0047】
(捕集性能)
濃度0.2ppmの粒子径2nmの金コロイド分散液を圧力1.5MPaで濾過を行い、濾過前後の濃度をICP-OESにより定量を行い、除去率(%)=(1-濾過後濃度/濾過前濃度)×100を算出し、除去率80%以上をA、除去率80%未満をBとした。
【実施例0048】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの例のみに限定されるものではない。
【0049】
(実施例1)
第1層の樹脂としてMwが2.2×10
6の超高分子量ポリエチレン30質量%及びMwが4.1×10
5の高密度ポリエチレン70質量%からなるポリオレフィン樹脂100質量部に、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン-3-(3,5-ジターシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]メタン0.2質量部を配合し、混合物を調製した。得られた混合物28.5質量部を強混練タイプの二軸押出機に投入し、二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン[35cSt(40℃)]71.5質量部を供給し、200℃及び300rpmの条件で溶融混練して、ポリオレフィン樹脂溶液を調製した。
第2層の樹脂としてMwが4.1×10
5の高密度ポリチレン50質量%及びペンタット分率95%のポリプロピレン50質量%からなるポリオレフィン樹脂100質量部に、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン-3-(3,5-ジターシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]メタン0.2質量部を配合し、混合物を調製した。
得られた混合物30質量部を強混練タイプの二軸押出機に投入し、二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン[35cSt(40℃)]70質量部を供給し、200℃及び200rpmの条件で溶融混練して、ポリオレフィン樹脂溶液を調製した。
前記第1層のポリオレフィン樹脂溶液と第2層のポリオレフィン樹脂溶液を、表層側が第1層のポリオレフィン樹脂溶液、内層側が第2層のポリオレフィン樹脂溶液となるように3層構成で二軸押出機から多層Tダイに供給し、表層がシート厚みの35%、内層がシート厚みの30%となるように押出し、成形体を30℃に温調した冷却ロールで冷却速度210℃/minで引き取りながら冷却し、未延伸ゲル状シートを形成した。得られた未延伸ゲル状シートを113℃の温度に設定したテンター装置でMD方向に5倍、TD方向に5倍とする同時二軸延伸を行い、成膜用溶剤洗浄する前に119℃で熱固定を行い、二軸延伸シートを得た。得られた二軸延伸シートを塩化メチレンで洗浄して残留する流動パラフィンを抽出除去し、乾燥した。得られた乾燥後の二軸延伸シートをテンター方式延伸機にて、110℃まで加温し、熱処理を行い、膜厚10μmのポリオレフィン微多孔膜を得た。走査電子顕微鏡(SEM)で観察を行った表面の孔構造を
図1に示す。
【0050】
(実施例2)
実施例1と同様の第1層と第2層のポリオレフィン樹脂溶液を第1層のポリオレフィン樹脂溶液、内層側が第2層のポリオレフィン樹脂溶液となるように3層構成で二軸押出機から多層Tダイに供給し、表層がシート厚みの37.5%、内層がシート厚みの25%となるように押出し、成形体を30℃に温調した冷却ロールで冷却速度210℃/minで引き取りながら冷却し、未延伸ゲル状シートを形成した。得られた未延伸ゲル状シートは実施例1と同様の延伸を行い厚さ10μmのポリオレフィン微多孔膜を得た。
【0051】
(実施例3)
実施例1と同様の第1層と第2層のポリオレフィン樹脂溶液を第1層のポリオレフィン樹脂溶液、内層側が第2層のポリオレフィン樹脂溶液となるように3層構成で二軸押出機から多層Tダイに供給し、表層がシート厚みの40%、内層がシート厚みの20%となるように押出し、成形体を30℃に温調した冷却ロールで冷却速度210℃/minで引き取りながら冷却し、未延伸ゲル状シートを形成した。得られた未延伸ゲル状シートは実施例1と同様の延伸を行い厚さ10μmのポリオレフィン微多孔膜を得た。
【0052】
(比較例1)
実施例3の未延伸ゲル状シートを115℃の温度に設定したテンター装置でMD方向に5倍、TD方向に5倍とする同時二軸延伸を行い、成膜用溶剤洗浄する前に119℃で熱固定を行い、二軸延伸シートを得た。得られた二軸延伸シートを塩化メチレンで洗浄して残留する流動パラフィンを抽出除去し、乾燥した。得られた乾燥後の二軸延伸シートをテンター方式延伸機にて、120℃まで加温し、熱処理を行い、膜厚10μmのポリオレフィン微多孔膜を得た。SEMで観察を行った表面の孔構造を
図2に示す。
【0053】
(比較例2)
実施例1の未延伸ゲル状シートを114℃の温度に設定したテンター装置でMD方向に5倍、TD方向に5倍とする同時二軸延伸を行い、成膜用溶剤洗浄する前に119℃で熱固定を行い、二軸延伸シートを得た。得られた二軸延伸シートを塩化メチレンで洗浄して残留する流動パラフィンを抽出除去し、乾燥した。得られた乾燥後の二軸延伸シートをテンター方式延伸機にて、125℃まで加温し、熱処理を行い、膜厚10μmのポリオレフィン微多孔膜を得た。
【0054】
(比較例3)
実施例3の未延伸ゲル状シートを113℃の温度に設定したテンター装置でMD方向に5倍、TD方向に5倍とする同時二軸延伸を行い、成膜用溶剤洗浄する前に100℃で熱固定を行い、二軸延伸シートを得た。得られた二軸延伸シートを塩化メチレンで洗浄して残留する流動パラフィンを抽出除去し、乾燥した。得られた乾燥後の二軸延伸シートをテンター方式延伸機にて、成膜用溶剤洗浄する前の熱固定温度より高い125℃まで加温し、熱処理を行い、膜厚6μmのポリオレフィン微多孔膜を得た。
【0055】
(比較例4)
実施例1と同様の第1層と第2層のポリオレフィン樹脂溶液を第1層のポリオレフィン樹脂溶液、内層側が第2層のポリオレフィン樹脂溶液となるように3層構成で二軸押出機から多層Tダイに供給し、表層がシート厚みの35%、内層がシート厚みの30%となるように押出し、成形体を50℃に温調した冷却ロールで冷却速度100℃/minで引き取りながら冷却し、未延伸ゲル状シートを形成した。得られた未延伸ゲル状シートは実施例1と同様の延伸を行い厚さ10μmのポリオレフィン微多孔膜を得た。
【0056】
(比較例5)
実施例1の第1層のポリオレフィン樹脂溶液のみを実施例1と同様の延伸を行い10μmのポリオレフィン微多孔膜を得た。
得られた各ポリオレフィン微多孔膜の物性測定および評価結果を表1に示す。
【0057】