(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135801
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】撮像装置および移動体
(51)【国際特許分類】
G03B 17/02 20210101AFI20230922BHJP
G03B 19/07 20210101ALI20230922BHJP
B22D 17/00 20060101ALI20230922BHJP
H04N 23/50 20230101ALI20230922BHJP
H04N 23/45 20230101ALI20230922BHJP
G03B 15/00 20210101ALN20230922BHJP
【FI】
G03B17/02
G03B19/07
B22D17/00 B
H04N5/225 100
H04N5/225 800
G03B15/00 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041075
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】514274487
【氏名又は名称】リコーインダストリアルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】安井 麻衣子
(72)【発明者】
【氏名】中島 智宏
【テーマコード(参考)】
2H054
2H100
5C122
【Fターム(参考)】
2H054BB05
2H054BB07
2H100AA41
2H100BB06
2H100BB11
5C122DA14
5C122EA02
5C122FC04
5C122FD07
5C122GE05
5C122GE07
5C122GE11
5C122GE18
5C122GE19
(57)【要約】
【課題】温度変化があっても複数の撮像部でレンズ保持姿勢が変動しないようにして、測距精度を安定的に保つ。
【解決手段】少なくとも1つ以上の光学素子を保持する鏡胴と、前記光学素子により結像された被写体像を取得する撮像素子と、前記撮像素子が実装された基板と、を有する複数の撮像部と、鋳造により成型されるハウジング部材を構成し、前記複数の撮像部における前記鏡胴および前記基板を一体的に保持する保持壁と、前記保持壁に延出して形成され、前記基板を保持する空間の少なくとも一部を覆う延出部とを有し、前記延出部は、その一部に前記ハウジング部材の鋳造時に溶湯が型内に注入または溶湯が型内から排出される湯口を配置し、前記湯口を頂点として、当該湯口から前記複数の撮像部における前記鏡胴が配置される側に向かって、先開き状に延びる部位を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つ以上の光学素子を保持する鏡胴と、前記光学素子により結像された被写体像を取得する撮像素子と、前記撮像素子が実装された基板と、を有する複数の撮像部と、
鋳造により成型されるハウジング部材を構成し、前記複数の撮像部における前記鏡胴および前記基板を一体的に保持する保持壁と、
前記保持壁に延出して形成され、前記基板を保持する空間の少なくとも一部を覆う延出部と
を有し、
前記延出部は、
その一部に前記ハウジング部材の鋳造時に溶湯が型内に注入または溶湯が型内から排出される湯口を配置し、
前記湯口を頂点として、当該湯口から前記複数の撮像部における前記鏡胴が配置される側に向かって、先開き状に延びる部位を有する、
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記複数の撮像部における前記鏡胴は光軸方向を揃えて配置され、
前記光軸方向に沿って、前記湯口から溶湯が型内に注入または溶湯が型内から排出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記複数の撮像部における前記鏡胴は、前記湯口から溶湯が型内に注入または溶湯が型内から排出する方向に対して直交する方向に整列される、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記複数の撮像部における前記鏡胴は、前記湯口を通り前記複数の撮像部における前記鏡胴が並んで配置される方向に直交する軸に対して対称に配置してなる、
ことを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記延出部は、縁に沿ってリブ状に断面積を広げたリブ部を少なくとも一部に設ける、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の撮像装置を備える、
ことを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置および移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステレオカメラの筐体(上カバー)は、高温で溶かしたアルミニウムを金型内に充填して凝固させたアルミダイキャスト等の耐熱部材で成形される。
【0003】
特許文献1には、たとえばアルミニウム合金等の金属材料を用いた筐体を有するステレオカメラが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、鋳造法の一種であるダイキャストによれば、高速で充填する際に金型内部に混入した空気の気泡によって凝固する際に生じた鋳巣が、ステレオカメラの筐体(上カバー)の内部に残存することがある。
【0005】
このような鋳巣が、ステレオカメラの筐体(上カバー)に設けられているレンズユニットを保持する嵌合穴の近傍に残存すると、その充填密度の違いから温度変化時の膨張収縮に異方性を生じる。例えば、充填密度が密になると膨張係数が低く、充填密度が疎になると膨張係数が高くなる。そのため、鋳巣が嵌合穴の近傍に残存すると、温度変化によりステレオカメラの筐体(上カバー)は一様に膨張収縮せずに偏った変形によって反りが発生し、左右のレンズユニットの保持姿勢が変化する。
【0006】
ステレオカメラでは、左右のレンズユニットの光軸が平行でないと視差誤差となるため、温度変化によって光軸の傾きが発生すると測距精度が低下するという問題がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、温度変化があっても複数の撮像部でレンズ保持姿勢が変動しないようにして、測距精度を安定的に保つことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、少なくとも1つ以上の光学素子を保持する鏡胴と、前記光学素子により結像された被写体像を取得する撮像素子と、前記撮像素子が実装された基板と、を有する複数の撮像部と、鋳造により成型されるハウジング部材を構成し、前記複数の撮像部における前記鏡胴および前記基板を一体的に保持する保持壁と、前記保持壁に延出して形成され、前記基板を保持する空間の少なくとも一部を覆う延出部とを有し、前記延出部は、その一部に前記ハウジング部材の鋳造時に溶湯が型内に注入または溶湯が型内から排出される湯口を配置し、前記湯口を頂点として、当該湯口から前記複数の撮像部における前記鏡胴が配置される側に向かって、先開き状に延びる部位を有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、温度変化があっても複数の撮像部でレンズ保持姿勢が変動しないようにして、測距精度を安定的に保つことができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1の実施の形態にかかるステレオカメラ装置の分解斜視図である。
【
図2】
図2は、ステレオカメラ装置の要部を斜め後ろ側から見た状態の分解斜視図である。
【
図3】
図3は、レンズが設けられている位置からステレオカメラ装置を縦切りにした状態の断面図である。
【
図4】
図4は、プリント基板の周辺部分の断面のみを示した断面図である。
【
図5】
図5は、プリント基板側に対する接着剤の付着位置を示す図である。
【
図7】
図7は、上カバーの鋳造例の別の例を示す図である。
【
図8】
図8は、第2の実施の形態にかかる自動車を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、実施の形態となるステレオカメラ装置(撮像装置の一例)を詳細に説明する。一例ではあるが、この実施の形態のステレオカメラ装置は、自動車、船舶、飛行体等の移動体に設けられ、移動体の前方(後方又は左右でもよい)の車両、障害物、歩行者又は作業者等を撮像する。左右の撮像画像は、移動体の前方の車両等の物体の検出に用いられる。物体が検出されると、移動体との間の相対速度又は相対位置から衝突の危険度が判定され、運転者に対する注意喚起、又は、自動ブレーキによる衝突回避等の運転支援が行われる。
【0012】
[第1の実施の形態]
(ステレオカメラ装置の外観及び内部構成)
図1は、第1の実施の形態にかかるステレオカメラ装置100の分解斜視図である。また、
図2は、ステレオカメラ装置100の要部を斜め後ろ側から見た状態の分解斜視図である。また、
図3は、レンズが設けられている位置からステレオカメラ装置100を縦切りにした状態の断面図である。
【0013】
図1ないし
図3に示すように、ステレオカメラ装置100は、左右のカメラ装置C0,C1と、上カバー20と、下カバー78と、プリント基板41と、を備える。上カバー20及び下カバー78で、カメラハウジングを構成している。
【0014】
複数の撮像部である左右のカメラ装置C0,C1は、それぞれ同じ光学特性のレンズユニット21,22、イメージセンサ23,24(撮像素子の一例)を実装するプリント基板25,26を備えている。イメージセンサ23,24としては、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ又はCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ等を用いることができる。この左右のカメラ装置C0,C1は、カメラハウジングを構成するアルミダイキャスト等の耐熱部材により形成された上カバー20に一体的に支持されている。
【0015】
上カバー20の内面側は、イメージセンサ23,24が設けられたプリント基板25、26及び画像処理部12が設けられたプリント基板41の収納部48となっている。下カバー78は、プレス材等により、L字状に成形されている。下カバー78は、上カバー20の下側の収納部48に蓋をし、また、上カバー20の後ろ側の後面部49に蓋をするかたちで上カバー20と係合し、ねじ52で上カバー20に固定される。この際、イメージセンサ23、24を実装するプリント基板25、26及び画像処理部12を備えるプリント基板41は、上カバー20と下カバー78との間に挟まれてねじ52により共締めされる。これにより、プリント基板41の外縁部を介してプリント基板41が電気的に接地される。
【0016】
また、ステレオカメラ装置100は、プリント基板41に設けられるコネクタ端子42により、CAN(Controller Area Network)に対してケーブル接続される。これにより、ステレオカメラ装置100が、CANを介して、車両などの移動体のECUの一部に組込まれたデジタル画像処理モジュールに接続される。
【0017】
コネクタ端子42は、インターフェイス部に相当する。コネクタ端子42は、上カバー20に形成された箱状の仕切壁43により、前面部(被写体側の面部)、上面部及び両側面部が被覆されるように、プリント基板41上に設けられている。換言すると、仕切壁43は、コネクタ端子42の露出している面部のうち、ケーブル17が接続される端子が設けられた後面部以外の面部を被覆する。これにより、コネクタ端子42が設けられている物理的領域と上カバー20の収容部48とが、仕切壁43で仕切られるため、コネクタ端子42の周囲の隙間から収納部48に対して塵又は湿気が侵入する不都合を防止でき、電気回路のショート等を回避することができる。
【0018】
なお、
図3に示すように、プリント基板25,26及びプリント基板41は、車両などの移動体のフロントウインドシールド70の角度に沿って、運転者の視界の邪魔にならないように、各基板面が直交するように配置されている。また、プリント基板25,26及びプリント基板41を接続するケーブル(FPC:Flexible Printed Circuits)18,19は、内側に折り込んで収納部48内に収納されている。これにより、放射ノイズをシールドすることができる。
【0019】
上カバー20は、2つのレンズユニット21,22の光軸方向に対して直交する方向に立設しており、嵌合穴27,28を備える保持壁20aを有する。2つのレンズユニット21,22は、上カバー20の保持壁20aに設けられている嵌合穴27,28に螺合される。これにより、レンズユニット21,22はそれぞれの光軸が平行となり、かつ、各イメージセンサ23、24の撮像面が略同一平面となるように係止されて固定される。なお、レンズユニット21,22及び各嵌合穴27,28は、鏡胴を形成する。すなわち、上カバー20の保持壁20aは、左右のカメラ装置C0,C1における鏡胴およびプリント基板25,26を一体的に保持する。
【0020】
イメージセンサ23,24が設けられたプリント基板25,26は、上カバー20の保持壁20aに固定されたレンズユニット21,22に対して光軸方向(z方向)及び光軸と直交するxy平面内での位置、及び、xyzの各軸周りのチルト成分αβγの傾きの6軸に対して、適正な結像特性を示すようにアライメント調整される。
【0021】
(レンズ鏡胴とイメージセンサのプリント基板との接着)
ここで、上カバー20の保持壁20aの後面部49には、プリント基板25が接着される「ロの字状」の面部を備えた第1の取付面部31、プリント基板26が接着される「ロの字状」の面部を備えた第1の取付面部32が設けられている。この第1の取付面部31,32に、イメージセンサ23,24が設けられたプリント基板25,26が接着される。
【0022】
また、上カバー20の保持壁20aの後面部49には、第1の取付面部31の左右の側面部の略中央近傍の外側からそれぞれ突出して、第1の取付面部31と同一面上に位置するように、一対の第2の取付面部33が設けられている。同様に、上カバー20の保持壁20aの後面部49には、第1の取付面部32の左右の側面部の略中央近傍の外側からそれぞれ突出して、第1の取付面部32と同一面上に位置するように、一対の第2の取付面部34が設けられている。換言すると、一対の第2の取付面部33,34は、第1の取付面部31,32の外周部から、イメージセンサ23,24の反対方向に所定分だけ離間した位置に設けられている。
【0023】
図4は、プリント基板25の中央近辺からx軸方向に沿ってステレオカメラ装置100を切断した切断面のうち、プリント基板25の周辺部分の断面のみを示した断面図である。
図4において、内側に突出している一対の突出部が、プリント基板25が接着される「ロの字状」の面部を備えた第1の取付面部31である。一対の第2の取付面部33は、第1の取付面部31からそれぞれ所定の距離だけ離れた位置に設けられる。換言すると、第1の取付面部31と一対の第2の取付面部33との間には、溝部55が形成されている。これにより、第1の取付面部31と一対の第2の取付面部33との間は、所定の距離分、離間している。なお、プリント基板26が接着される「ロの字状」の面部を備えた第1の取付面部32に対する第2の取付面部34の位置関係も、同様の位置関係である。
【0024】
図4に示す第2の取付面部33とプリント基板25との間、及び、第2の取付面部34とプリント基板26との間には、紫外線硬化型接着剤(UV硬化型接着剤)53が装填される。そして、上述のようにアライメント調整されたプリント基板25、26の位置及び姿勢を維持した状態で、UV硬化型接着剤53に対してUV光を照射し、UV硬化型接着剤53を硬化させる。
【0025】
これにより、アライメント調整された位置を維持した状態の各プリント基板25,26が、UV硬化型接着剤53を介して第2の取付面部33,34に仮固定される。換言すると、レンズユニット21,22に対してイメージセンサ23,24の撮像面の配置を維持した状態で、各プリント基板25,26の両端部が第2の取付面部33,34に仮固定される。
【0026】
図5は、各プリント基板25,26のうち、プリント基板25側に対する接着剤の付着位置を示す図である。
図5からわかるように、第2の取付面部33に塗布されたUV硬化型接着剤53が、プリント基板25の左右の両端部近傍に付着してUV硬化されることで、プリント基板25が第2の取付面部33に仮固定される。なお、プリント基板26も、同様に、第2の取付面部34に仮固定される。また、一例ではあるが、UV硬化型接着剤53としては、ヤング率の低いアクリル樹脂又はウレタン樹脂を主剤としたUV硬化型接着剤53を用いることができる。
【0027】
なお、この例では、第2の取付面部33,34に塗布されたUV硬化型接着剤53にUV光を照射してUV硬化させる例である。しかし、第2の取付面部33,34に熱硬化型接着剤を塗布し、例えば高エネルギーのレーザ光を照射して熱硬化させ、又は、熱風をノズル噴射して熱硬化させてもよい。これにより、仮固定用の接着剤として、UV硬化型接着剤53の代わりに熱硬化型接着剤を用いることができる。
【0028】
一方、第1の取付面部31、32には、「ロの字状」の面部に対して、例えばガラス転移温度が高いエポキシ樹脂を主剤とした熱硬化型接着剤50が、予め塗布されている。このため、プリント基板25をUV硬化型接着剤53で第2の取付面部33に仮固定すると、
図5に示すようにイメージセンサ23の周囲を囲むように、熱硬化型接着剤50がプリント基板25に付着する。プリント基板26側も同様に、イメージセンサ24の周囲を囲むように、熱硬化型接着剤50がプリント基板25に付着する。この状態で、ステレオカメラ装置100を加熱炉に投入すると、熱硬化型接着剤50が熱硬化する(本固定)。これにより、車載で求められる-40℃~80℃の温度環境下でも接着強度を維持可能なステレオカメラ装置100を製造することができる。
【0029】
このように、上カバー20の保持壁20aは、イメージセンサ23,24の周囲を囲うように土手状に形成された第1の取付面部31,32を備えている。また、上カバー20の保持壁20aは、第1の取付面部31,32の外側において、プリント基板25,26の外縁近傍を複数個所にわたって仮固定するための第2の取付面部33、34を備えている。
【0030】
第1の取付面部31,32に対して熱硬化型接着剤50を塗布すると共に、第2の取付面部33、34に対してUV硬化型接着剤53を塗布する。第2の取付面部33、34はイメージセンサ23,24の中心軸に対して対称となる位置に形成されている。これにより、硬化収縮に伴ってプリント基板25、26に偏った引張力が発生しないようにして、位置ずれを抑制している。
【0031】
(温度変化による結像特性の変化の抑制構造)
次に、実施の形態のステレオカメラ装置100の温度変化による結像特性の変化の抑制構造を説明する。実施の形態のステレオカメラ装置100の場合、広角化を図るために、
図3に示すように、レンズユニット21、22として、前段の凹レンズと後段の凸レンズの軸芯を合わせてレンズセル60に収納して形成された、いわゆるレトロフォーカスレンズ(逆望遠レンズ)が用いられている。レンズセル60の外周には、光軸を位置決めするための嵌合部62、光軸方向に所定の軸力で締付けるための螺合部63及び係止部64が形成されている。
【0032】
一般に、広角レンズは、焦点距離が短く、
図3に「×印」で示す光学系の主点位置65が、イメージセンサ23側に偏った配置となる。従って、このような配置であっても、嵌合穴27、28内でレンズの位置ずれ及び姿勢変化による主点位置65の変動を生ずることがない保持構造が望まれる。
【0033】
このため、実施の形態のステレオカメラ装置100の場合、レンズセル60のイメージセンサ23側の端部近傍に設けられた嵌合部62により、少なくとも光学系の主点位置65の位置及び光軸の平行度を維持している。
【0034】
螺合部63は、レンズセル60の嵌合部62よりも被写体側(レンズセル60の反イメージセンサ23側の端部近傍)に設けられている。係止部64は、螺合部63よりも、さらに被写体側に設けられている。係止部64は、各嵌合穴27,28に螺合したレンズユニット21,22に対して所定の軸力で突き当たる。これにより、各イメージセンサ23,24の中心とレンズユニット21,22の光軸が合致するように位置決めされる。このように、各嵌合穴27,28に対してレンズユニット21,22を螺合させることで、温度変化による膨張収縮、経年劣化によるクリープ(歪みの増大)、振動又は衝撃に耐え得る軸力を保持できる。
【0035】
ところで、上述したようにカメラハウジングを構成する上カバー20は、アルミダイキャスト等の耐熱部材で成形される。高温で溶かしたアルミニウム(溶湯)を短時間で金型内に充填し圧力を加えたまま凝固させる鋳造法の一種であるダイキャストによれば、高速で充填する際に金型内部に混入した空気の気泡によって凝固する際に生じた鋳巣が、上カバー20の内部に残存することがある。充填速度が高速であるほど、この傾向は顕著である。特に、溶湯の流入方向と直交する方向においては、外側から内側に回り込むように充填されるため、湯口の両脇や縁部など溶湯が遅れて充填される部位において、鋳巣が発生しやすくなっている。
【0036】
このような鋳巣が、レンズユニット21,22を保持する上カバー20の保持壁20aに設けられている嵌合穴27,28の近傍に残存すると、その充填密度の違いから温度変化時の膨張収縮に異方性を生じる。例えば、充填密度が密になると膨張係数が低く、充填密度が疎になると膨張係数が高くなる。そのため、鋳巣が嵌合穴27,28の近傍に残存すると、温度変化によりカメラハウジングを構成する上カバー20は一様に膨張収縮せず偏った変形によって反りが発生し、左右のレンズユニット21,22の保持姿勢が変化する。
【0037】
ステレオカメラ装置100では、左右のレンズユニット21,22の光軸が平行でないと視差誤差となるため、温度変化によって光軸の傾きが発生すると測距精度が低下するという問題がある。
【0038】
そこで、本実施形態においては、上カバー20の保持壁20aの後面部49の上方に設けられ、プリント基板25、26を保持する空間である上カバー20の後ろ側の後面部49の少なくとも一部を覆うように、保持壁20aに延出して形成される延出部80を備える。延出部80における左右のレンズユニット21,22の中心線の延長上は、カメラハウジングを構成する上カバー20の鋳造時に金型内部に高温で溶かしたアルミニウム(溶湯)を注入するゲート(湯口)に該当する。すなわち、延出部80は、ゲート(湯口)を頂点として、当該ゲート(湯口)からカメラハウジングを構成する上カバー20の幅方向(左右のレンズユニット21,22が並列する視差方向)に、先開き状(扇型状)に延びる部位を有する。
【0039】
すなわち、複数のカメラ装置C0,C1における鏡胴は光軸方向を揃えて配置され、光軸方向に沿って、ゲート(湯口)から溶湯が金型内部に注入する。複数のカメラ装置C0,C1における鏡胴は、ゲート(湯口)から溶湯が金型内部に注入する方向に対して直交する方向に整列される。複数のカメラ装置C0,C1における鏡胴は、ゲート(湯口)を通り複数のカメラ装置C0,C1における鏡胴が並んで配置される方向に直交する軸に対して対称に配置してなる。
【0040】
ここで、
図6は上カバー20の鋳造例を示す図である。
図6に示す例は、2個の上カバー20を同時に鋳造した様子を示している。
【0041】
図6に示す鋳造例によれば、上カバー20の鋳造時、スリーブ104を介してスプルー(鋳込口)101から射出された溶湯(高温で溶かしたアルミニウム)は、ランナー(湯道)102により2方向に分岐され、ゲート(湯口)103により上カバー20の金型内に充填される。ランナー(湯道)102は、上カバー20の鋳造後に、ゲート(湯口)103において切断される。
【0042】
上カバー20はL型形状であるため、ゲート(湯口)103からz方向に注入した溶湯(高温で溶かしたアルミニウム)は、延出部80の先開き状(扇型状)の形状に沿ってxz面内で幅方向(x方向)に均等に分配され、流速を一定にして左右のレンズユニット21,22を保持する嵌合穴27,28が形成されるxy面内においてy方向に充填され、上カバー20の収容部48の上面が形成されるxz面内においてz方向に充填される。
【0043】
なお、上カバー20の鋳造の際、上カバー20の保持壁20aに設けられている嵌合穴27,28が形成されるxy面内におけるx方向で凝固する時間差がないように、延出部80の先開き状(扇型)の形状の角度を調整するようにしてもよい。実施形態においては、延出部80の先開き状(扇型)の形状の角度は153°以下としている。
【0044】
加えて、本実施形態においては、上カバー20は、延出部80の縁に沿ってリブ状に断面積を広げた部位であるリブ部81を少なくとも一部に設けている。このような構成にすることで、上カバー20の外縁への湯回りを向上させるようにしている。
【0045】
これにより、上カバー20の幅方向(左右のレンズユニット21,22が並列する視差方向)、つまり視差誤差に効く上カバー20の保持壁20aに設けられている嵌合穴27,28の内側と外側とにおいて充填時間の差がなくなり、鋳巣の発生を抑制し、XY平面内での充填密度を均一にすることができる。また、充填速度も高速化することができるので、生産性が向上し低コスト化を図ることができる。
【0046】
このように本実施形態によれば、金型内部に注入するゲート(湯口)を上カバー20の保持壁20aの後面部49の上方を覆う延出部80における左右のレンズユニット21,22の中心線の延長上に配置し、ゲート(湯口)から上カバー20の幅方向(左右のレンズユニット21,22が並列する視差方向)に、延出部80を先開き状(扇型)に延びる形状にした。これにより、ゲート(湯口)から金型内部に注入した溶湯を整流し、上カバー20の幅方向(左右のレンズユニット21,22が並列する視差方向)、つまり視差誤差に効く上カバー20の保持壁20aに設けられている嵌合穴27,28の内側と外側とで充填時間が等しくなるように流速を均一化することで、嵌合穴27,28近傍における鋳巣の発生を抑制し、温度変化があっても左右のレンズユニット21,22でレンズ保持姿勢が変動しないようにして、測距精度を安定的に保つことができる。
【0047】
なお、本実施形態においては、上カバー20の鋳造時に金型内部に高温で溶かしたアルミニウム(溶湯)を注入するゲート(湯口)に延出部80を設けたが、これに限るものではなく、延出部80は、上カバー20の鋳造時に金型内部から高温で溶かしたアルミニウム(溶湯)を排出するオーバーフロー用の湯口に配置されるものであってもよい。
【0048】
また、本実施形態においては、上カバー20の保持壁20aの後面部49の上方に延出部80を設けたが、これに限るものではない。ここで、
図7は上カバー20の鋳造例の別の例を示す図である。
図7に示すように、延出部80が、上カバー20の保持壁20aの後面部49の上方以外の位置であって、溶湯を排出するオーバーフロー用の湯口105を含む位置に設けられるようにしても、溶湯の滞留を抑制でき、同様の効果を奏することができる。
【0049】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態にかかる自動車について説明する。この自動車は、移動体の一例である。
【0050】
図8は、第2の実施の形態にかかる自動車300を例示する図である。自動車300は、室内にステレオカメラ装置100を有する。ステレオカメラ装置100は、自動車300の周囲に存在する物体200を、左右のカメラ装置C0,C1により、フロントウインドシールド301を介して撮像する。ステレオカメラ装置100は、撮像された第1画像および第2画像に基づき、物体200との間の距離を測定できる。
【0051】
自動車300は、ステレオカメラ装置100を有することにより、測距精度を安定的に保つことができる。
【0052】
最後に、上述の実施の形態は、一例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことも可能である。このような実施の形態及び実施の形態の変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0053】
20a 保持壁
21,22,27,28 鏡胴
23,24 撮像素子
25,26 基板
80 延出部
81 リブ部
100 撮像装置
103 湯口
C0,C1 複数の撮像部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0054】