(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135802
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】レンズ枠のガイド装置及び撮影装置
(51)【国際特許分類】
G02B 7/04 20210101AFI20230922BHJP
H02N 2/04 20060101ALI20230922BHJP
H04N 23/55 20230101ALI20230922BHJP
【FI】
G02B7/04 E
H02N2/04
H04N5/225 400
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041076
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】311015207
【氏名又は名称】リコーイメージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100166408
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦陽
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 栄一
【テーマコード(参考)】
2H044
5C122
5H681
【Fターム(参考)】
2H044BE04
2H044BE10
5C122EA01
5C122FB03
5C122GE11
5C122HA82
5H681BB13
5H681BC01
5H681DD02
5H681DD15
5H681DD23
5H681DD37
5H681DD55
5H681DD66
5H681DD83
5H681EE20
(57)【要約】
【課題】レンズ枠の偏芯微動を防止することができるレンズ枠のガイド装置及び撮影装置を得る。
【解決手段】圧電素子と直列接続された可動体ガイド軸と、前記可動体ガイド軸に軸方向及び回転方向に移動可能に支持された可動体と、前記可動体ガイド軸と平行に延びるレンズ枠ガイド軸と、前記レンズ枠ガイド軸に軸方向及び回転方向に移動可能に支持されたレンズ枠と、前記可動体ガイド軸及び前記レンズ枠ガイド軸と平行に延びるとともに、前記可動体と前記レンズ枠を回転方向に移動可能に連結する連結軸と、軸方向から見たとき、前記可動体ガイド軸の中心と前記連結軸の中心を結んだ直線と、前記レンズ枠ガイド軸の中心と前記連結軸の中心を結んだ直線とが鈍角をなす状態で、かつ、前記鈍角を維持する方向に、前記可動体及び前記レンズ枠を付勢する付勢部材と、を有することを特徴とするレンズ枠のガイド装置。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子と直列接続された可動体ガイド軸と、
前記可動体ガイド軸に軸方向及び回転方向に移動可能に支持された可動体と、
前記可動体ガイド軸と平行に延びるレンズ枠ガイド軸と、
前記レンズ枠ガイド軸に軸方向及び回転方向に移動可能に支持されたレンズ枠と、
前記可動体ガイド軸及び前記レンズ枠ガイド軸と平行に延びるとともに、前記可動体と前記レンズ枠を回転方向に移動可能に連結する連結軸と、
軸方向から見たとき、前記可動体ガイド軸の中心と前記連結軸の中心を結んだ直線と、前記レンズ枠ガイド軸の中心と前記連結軸の中心を結んだ直線とが鈍角をなす状態で、かつ、前記鈍角を維持する方向に、前記可動体及び前記レンズ枠を付勢する付勢部材と、
を有することを特徴とするレンズ枠のガイド装置。
【請求項2】
前記付勢部材は、前記鈍角を0°方向または180°方向に向けるように、前記可動体及び前記レンズ枠を付勢する、
ことを特徴とする請求項1に記載のレンズ枠のガイド装置。
【請求項3】
前記可動体及び前記レンズ枠を軸方向に付勢する圧縮コイルバネをさらに有し、
前記付勢部材は、前記圧縮コイルバネと同軸に位置する回転付勢つるまきバネからなる、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレンズ枠のガイド装置。
【請求項4】
前記圧縮コイルバネ及び前記回転付勢つるまきバネは、前記連結軸を中心とする同軸に位置する、
ことを特徴とする請求項3に記載のレンズ枠のガイド装置。
【請求項5】
前記レンズ枠は、前記レンズ枠ガイド軸と平行に延びるサブガイド軸を収容する収容溝部を有し、
前記付勢部材が前記可動体及び前記レンズ枠を付勢することによって、前記レンズ枠の前記収容溝部に前記サブガイド軸が浮遊状態で収容される、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のレンズ枠のガイド装置。
【請求項6】
前記レンズ枠は、フォーカスレンズを支持するフォーカスレンズ枠である、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のレンズ枠のガイド装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載のレンズ枠のガイド装置を有する、
ことを特徴とする撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ枠のガイド装置及び撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、一眼レフカメラレンズのオートフォーカス用のレンズ駆動に積層型超音波素子を使用したフォーカシング機構が知られている。また、パルスモータとリードスクリューを組み合わせたリニア駆動方式によるフォーカシング機構も知られている。
【0003】
特許文献1には、電気機械変換素子を使用した駆動装置が記載されている。この駆動装置は、静止部材と、静止部材にその伸縮方向の一端を固定された電気機械変換素子と、電気機械変換素子の伸縮方向のもう一端に結合されて電気機械変換素子の伸縮方向に移動できるように支持された駆動部材と、駆動部材に摩擦結合されて電気機械変換素子の伸縮方向に移動できるように支持された移動部材と、駆動部材と移動部材間に摩擦力を発生させる摩擦力付加部材と、電気機械換素子の伸びと縮みを異なる速度で行うように電気機械変換素子に電流を供給できる電気回路とを有している。駆動部材が所定の目的方向とこれと逆方向のいずれの方向に動くときも、駆動部材と移動部材間に滑りを生じさせて駆動するとき、自由端に駆動部材を固定し、もう一端を固定端とした場合の電気機械変換素子の共振周波数f1に対して電気機械変換素子の駆動周波数fを、f1/3≦f≦2f1/3に設定する。
【0004】
特許文献1では、圧電素子と駆動軸が直列接続されており、駆動軸には、レンズ保持枠の一部であるスライダブロックが貫通している。駆動回路を介して圧電素子に電流を流すと、圧電素子が伸縮することで、レンズ保持枠が駆動軸に沿って移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、レンズ保持枠が駆動軸に沿って移動する際に、レンズ保持枠が駆動軸を中心として回転してしまうという問題がある。レンズ保持枠がフォーカスレンズ枠である場合、フォーカスレンズに偏芯方向の微動が生じ、撮像素子上の画像も微動する結果、撮影画像の品質劣化に繋がってしまう。
【0007】
本発明は、以上の問題意識に基づいてなされたものであり、レンズ枠の偏芯微動を防止することができるレンズ枠のガイド装置及び撮影装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態のレンズ枠のガイド装置は、圧電素子と直列接続された可動体ガイド軸と、前記可動体ガイド軸に軸方向及び回転方向に移動可能に支持された可動体と、前記可動体ガイド軸と平行に延びるレンズ枠ガイド軸と、前記レンズ枠ガイド軸に軸方向及び回転方向に移動可能に支持されたレンズ枠と、前記可動体ガイド軸及び前記レンズ枠ガイド軸と平行に延びるとともに、前記可動体と前記レンズ枠を回転方向に移動可能に連結する連結軸と、軸方向から見たとき、前記可動体ガイド軸の中心と前記連結軸の中心を結んだ直線と、前記レンズ枠ガイド軸の中心と前記連結軸の中心を結んだ直線とが鈍角をなす状態で、かつ、前記鈍角を維持する方向に、前記可動体及び前記レンズ枠を付勢する付勢部材と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、レンズ枠の偏芯微動を防止することができるレンズ枠のガイド装置及び撮影装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ガイド装置のフォーカシングユニットに注目した軸直交方向から見た図である。
【
図2】ガイド装置のフォーカシングユニットに注目した軸方向から見た図である。
【
図3】ガイド装置のフォーカシングユニットに注目した第1の斜視図である。
【
図4】ガイド装置のフォーカシングユニットに注目した第2の斜視図である。
【
図5】ガイド装置のフォーカシングユニットに注目した可動体の拡大斜視図である。
【
図6】ガイド装置の連結シャフト周辺に注目した詳細図である。
【
図7】ガイド装置の可動体周辺に注目した軸方向から見た図である。
【
図8】圧電素子の電圧印加による可動体ひいてはフォーカスレンズ枠の駆動方法の第1の例を示す往路に対応する図である。
【
図9】圧電素子の電圧印加による可動体ひいてはフォーカスレンズ枠の駆動方法の第1の例を示す復路に対応する図である。
【
図10】圧電素子の電圧印加による可動体ひいてはフォーカスレンズ枠の駆動方法の第2の例を示す往路に対応する図である。
【
図11】圧電素子の電圧印加による可動体ひいてはフォーカスレンズ枠の駆動方法の第2の例を示す復路に対応する図である。
【
図12】フォーカスレンズ枠のU字溝に収容されたサブガイド軸の位置の一例を示す図である。
【
図13】回転付勢つるまきバネによる可動体とフォーカスレンズ枠の付勢構造の第1の例を示す図である。
【
図14】回転付勢つるまきバネによる可動体とフォーカスレンズ枠の付勢構造の第2の例を示す図である。
【
図15】本実施形態のガイド装置を搭載した撮影装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本実施形態に係るレンズ枠のガイド装置(以下単にガイド装置)及び撮影装置について詳細に説明する。なお、本実施形態のように、積層型圧電素子とガイド棒を直列に接続し、ガイド棒に可動枠を付勢し、圧電素子に三角波(電圧)を入力することにより、ガイド棒に対して可動枠を直線駆動するタイプのAF駆動機構を、例えば、キツツキ型AF駆動機構と呼んでもよい。
【0012】
図1~
図5はガイド装置のフォーカシングユニットに注目した図であって、
図1は軸直交方向から見た図、
図2は軸方向から見た図、
図3は第1の斜視図、
図4は第2の斜視図、
図5は可動体の拡大斜視図である。
図6は、ガイド装置の連結シャフト周辺に注目した詳細図である。
図7は、ガイド装置の可動体周辺に注目した軸方向から見た図である。
【0013】
ガイド装置は、撮影装置(カメラ)の筐体内に支持されたフレーム10を有している。フレーム10には、圧電素子台21を介して圧電素子(積層型圧電素子、積層型超音波素子)20が支持されている。圧電素子20には、可動体ガイド軸(ガイド棒)30が直列接続されている。圧電素子台21と圧電素子20と可動体ガイド軸30は、互いに接合(接着)されて一体化されている。圧電素子20には、圧電素子台21を介して、圧電素子20に駆動電圧(駆動電流)を供給するための制御装置22が電気的に接続されている。圧電素子20に供給される駆動電圧に応じて、圧電素子20の厚さが変化する。可動体ガイド軸30は、その一端部が圧電素子20に直列接続されており、その他端部がフレーム10に設けられた可動体ガイド軸受(ガイド棒受)11に支持されている。
【0014】
可動体ガイド軸30には、軸方向及び回転方向に移動可能に可動体40が支持されている。可動体40は、可動体ガイド軸30の寸法に対応させた寸法のガイド溝41を有しており、このガイド溝41に可動体ガイド軸30が支持されている。ガイド溝41は、一端が開放されたV字溝からなり、V字溝に可動体ガイド軸30が支持され、且つ、V字溝の開放側から与圧バネ42によって可動体ガイド軸30がガイド溝41に付勢されている(互いに当て付けられている)。このため、可動体ガイド軸30とガイド溝(V字溝)41の間には摩擦力が作用する。
【0015】
ガイド装置は、可動体ガイド軸30と平行に延びるフォーカスレンズ枠ガイド軸(レンズ枠ガイド軸)50を有している。また、ガイド装置は、可動体ガイド軸30及びフォーカスレンズ枠ガイド軸50と平行に延びるサブガイド軸51を有している。本実施形態では、可動体ガイド軸30、フォーカスレンズ枠ガイド軸50及びサブガイド軸51の延在方向を軸方向と呼ぶ。
【0016】
フォーカスレンズ枠ガイド軸50には、軸方向及び回転方向に移動可能にフォーカスレンズ枠(レンズ枠、フォーカシング鏡枠)60が支持されている。フォーカスレンズ枠60は、フォーカスレンズ枠ガイド軸50の寸法に対応させた寸法のガイド孔61を有しており、このガイド孔61にフォーカスレンズ枠ガイド軸50が挿通されている。また、フォーカスレンズ枠60は、サブガイド軸51の寸法よりも若干大きい寸法のU字溝(収容溝部)62を有しており、このU字溝62にサブガイド軸51が収容されている。フォーカスレンズ枠60は、フォーカスレンズ(図示略)を支持している。フォーカスレンズ枠60に支持されたフォーカスレンズの中心を通り、且つ、可動体ガイド軸30、フォーカスレンズ枠ガイド軸50及びサブガイド軸51の延在方向と平行な軸を光軸と呼ぶ。フォーカスレンズを支持したフォーカスレンズ枠60が光軸方向に移動(進退)することにより、撮像素子(図示略)上のピント位置を移動させて、無限遠から近距離への合焦(フォーカシング)が行われる。
【0017】
可動体40とフォーカスレンズ枠60は、連結軸70によって回転方向に移動可能に連結されている。連結軸70は、可動体ガイド軸30、フォーカスレンズ枠ガイド軸50及びサブガイド軸51の延在方向と平行な方向に延びる軸部材である。フォーカスレンズ枠60は、連結軸70の挿通孔が形成された一対の支持部63を有しており、可動体40は、一対の支持部63の間に入り込むとともに連結軸70の挿通孔が形成された連結軸係合部43を有している。連結軸70は、フォーカスレンズ枠60の一対の支持部63と、可動体40の連結軸係合部43とにそれぞれ形成された挿通孔に挿通されて支持される。
【0018】
特に
図6に示すように、フォーカスレンズ枠60の一対の支持部63の間には、連結軸70の周囲に配置されたバネ押さえコマ71が設けられている。フォーカスレンズ枠60の一対の支持部63の間には、連結軸70の周囲に位置するようにして、バネ押さえコマ71と可動体40の連結軸係合部43の間に位置して可動体40とフォーカスレンズ枠60を軸方向に付勢する圧縮コイルバネ80が設けられている。圧縮コイルバネ80によって可動体40がフォーカスレンズ枠60を所定方向(
図1、
図6の右方向)に付勢しており、この付勢力によって光軸方向(フォーカシング方向)のガタが除去されている。さらに、フォーカスレンズ枠60の一対の支持部63の間には、連結軸70及びバネ押さえコマ71の外周に位置するようにして、回転付勢つるまきバネ(付勢部材)90が設けられている。このように、圧縮コイルバネ80と回転付勢つるまきバネ90は、連結軸70を中心とする同軸に位置している。
【0019】
回転付勢つるまきバネ90は、円環状の本体から径方向の外側に突出する可動体着力部91とフォーカスレンズ枠着力部92とを有している。回転付勢つるまきバネ90のうち、可動体着力部91が可動体40を付勢し、フォーカスレンズ枠着力部92がフォーカスレンズ枠60を付勢することにより、フォーカスレンズ枠60がフォーカスレンズ枠ガイド軸50を中心として回転微動することを防止することができる。このメカニズムについては、後に詳細に説明する。
【0020】
図8、
図9は、圧電素子20の電圧印加による可動体40ひいてはフォーカスレンズ枠60の駆動方法の第1の例を示している。
図8は往路(光軸方向の一方)の駆動を示しており、
図9は復路(光軸方向の他方)の駆動を示している。圧電素子20に電圧を印加することにより、圧電素子20の積層方向の寸法が増加する。
【0021】
図8に示すように、時間t0から時間t1までは圧電素子20への印加電圧を0Vとし、時間t1から時間t2にかけて圧電素子20への印加電圧をV1まで引き上げる。この電圧印加パターンを交互に繰り返すことによって、可動体40ひいてはフォーカスレンズ枠60を光軸方向の一方に向けて駆動する。印加電圧を0VからV1まで引き上げる間は、圧電素子20の厚さが上昇するに連れて、可動体ガイド軸30が光軸方向の一方に向けて移動し、可動体ガイド軸30と摩擦係合している可動体40も光軸方向の一方に向けて移動する。印加電圧をV1から0Vまで引き下げた後は、急速な電圧変化によって圧電素子20の厚さが高速で縮み、与圧バネ42による摩擦力<慣性力となる結果、可動体40ひいてはフォーカスレンズ枠60はその場にとどまる。
【0022】
図9に示すように、時間t0から時間t1までは圧電素子20への印加電圧をV1から0Vに引き下げ、時間t1から時間t2にかけて圧電素子20への印加電圧を0Vに維持する。この電圧印加パターンを交互に繰り返すことによって、可動体40ひいてはフォーカスレンズ枠60を光軸方向の他方に向けて駆動する。印加電圧を0VからV1まで急速に引き上げるときは、可動体ガイド軸30が軸方向に高速に移動し、与圧バネ42による摩擦力<慣性力となる結果、可動体40ひいてはフォーカスレンズ枠60はその場にとどまる。印加電圧をV1から0Vまで引き下げる間は、印加電圧が徐々に減少し、それとともに圧電素子20の厚さが減少し、可動体ガイド軸30が光軸方向の他方に向けて移動する。可動体ガイド軸30と摩擦係合している可動体40も光軸方向の他方に向けて移動する。
【0023】
図10、
図11は、圧電素子20の電圧印加による可動体40ひいてはフォーカスレンズ枠60の駆動方法の第2の例を示している。
図10は往路(光軸方向の一方)の駆動を示しており、
図11は復路(光軸方向の他方)の駆動を示している。第2の例の駆動方法は、中間電圧を中心として、中間電圧から高電圧側への制御、中間電圧から低電圧側への制御により、可動体40ひいてはフォーカスレンズ枠60を光軸方向の一方と他方に駆動するものである。
【0024】
図10に示すように、時間t0から時間t1までは圧電素子20への印加電圧をV0に維持し、時間t1から時間t2にかけて圧電素子20への印加電圧をV0からV1まで引き上げる。この電圧印加パターンを交互に繰り返すことによって、可動体40ひいてはフォーカスレンズ枠60を光軸方向の一方に向けて駆動する。印加電圧をV0からV1まで引き上げる間は、圧電素子20の厚さが上昇するに連れて、可動体ガイド軸30が光軸方向の一方に向けて移動し、可動体ガイド軸30と摩擦係合している可動体40も光軸方向の一方に向けて移動する。印加電圧をV1からV0まで引き下げた後は、急速な電圧変化によって圧電素子20の厚さが高速で縮み、与圧バネ42による摩擦力<慣性力となる結果、可動体40ひいてはフォーカスレンズ枠60はその場にとどまる。
【0025】
図11に示すように、時間t0から時間t1までは圧電素子20への印加電圧をV0からV2に引き下げ、時間t1から時間t2にかけて圧電素子20への印加電圧をV0に維持する。この電圧印加パターンを交互に繰り返すことによって、可動体40ひいてはフォーカスレンズ枠60を光軸方向の他方に向けて駆動する。印加電圧をV0からV2まで引き下げるときは、印加電圧が徐々に減少し、それとともに圧電素子20の厚さが減少し、可動体ガイド軸30が光軸方向の他方に向けて移動する。可動体ガイド軸30と摩擦係合している可動体40も光軸方向の他方に向けて移動する。印加電圧をV2からV0まで引き上げた後は、可動体ガイド軸30が軸方向に高速に移動し、与圧バネ42による摩擦力<慣性力となる結果、可動体40ひいてはフォーカスレンズ枠60はその場にとどまる。
【0026】
図8、
図9において、V1-0Vの電圧差を増加することにより、可動体40ひいてはフォーカスレンズ枠60の移動速度を大きくすることができる。
図10、
図11において、V1-V0、V2-V0の電圧差を増加することにより、可動体40ひいてはフォーカスレンズ枠60の移動速度を大きくすることができる。
図8~
図11において、(t2-t1)/(t2-t0)を増加することにより、加速度を低下して滑りを抑制することになる結果、可動体40ひいてはフォーカスレンズ枠60の移動速度を大きくすることができる。
図8~
図11において、(t2-t1)/(t2-t0)を減少させると、加速度が高くなり、摩擦力による保持が負けてしまい滑ってしまう結果、可動体40ひいてはフォーカスレンズ枠60の移動速度が小さくなる。
【0027】
図12A、
図12Bは、フォーカスレンズ枠60のU字溝62に収容されたサブガイド軸51の位置の一例を示す図である。
図12Aではフォーカスレンズ枠60のU字溝62の中央部にサブガイド軸51が浮遊状態で収容されており、
図12Bではフォーカスレンズ枠60のU字溝62の端部にサブガイド軸51が当て付いて収容されている。
【0028】
図12Aに示すように、サブガイド軸51はU字溝62に収容されており、U字溝62の幅寸法はサブガイド軸51よりも若干大きいサイズ(余裕、遊びを持ったサイズ)となっている。加工精度の限界もあるが、サブガイド軸51とU字溝62のサイズを近付けすぎると、材質の違いによる温度変化により、隙間がなくなる事象も発生してしまう(隙間が無い状態では摩擦負荷が増大して摺動不可能となってしまう)。このため、U字溝62の幅寸法はサブガイド軸51よりも若干大きいサイズとせざるを得ない。
【0029】
図12Bは、
図12Aの状態からフォーカスレンズ枠60がフォーカスレンズ枠ガイド軸50を中心として回転することにより、U字溝62の片側にフォーカスレンズ枠60が寄った状態となっている。フォーカスレンズ枠60への重力の影響、及び/又は、可動体ガイド軸30とフォーカスレンズ枠ガイド軸50の平行誤差等によって、フォーカスレンズ枠60に対して偏芯する力が作用する。U字溝62の端部にサブガイド軸51が当て付いた状態では、そのガタ相当分だけフォーカスレンズ枠60が傾き、フォーカスレンズ枠60の中心が偏芯する。フォーカスレンズ枠60が偏芯すると、フォーカスレンズ枠60支持された光学部材(フォーカスレンズ)が偏芯し、撮像素子上の画像が微動してしまう。
【0030】
このように、フォーカスレンズ枠60は、フォーカスレンズ枠ガイド軸50及びサブガイド軸51に沿って光軸方向に移動可能となっているが、フォーカスレンズ枠60のU字溝(収容溝部)62は、サブガイド軸51よりも周方向に若干の遊びを持っている。このため、厳密には(理論的には)、フォーカスレンズ枠60は、フォーカスレンズ枠ガイド軸50を中心とした若干の回転微動が発生する可能性がある。仮に、回転微動が発生すると、フォーカスレンズに偏芯方向の微動が生じ、撮像素子上の画像も微動する結果、撮影画像の品質劣化に繋がってしまう。
【0031】
本実施形態では、上記の問題点を重要な技術課題として捉えて、回転付勢つるまきバネ(付勢部材)90による可動体40とフォーカスレンズ枠60の付勢構造を最適設定することで、フォーカスレンズ枠60の偏芯微動を防止して、高品質な撮影画像を得ることに成功している。
【0032】
図13は、回転付勢つるまきバネ(付勢部材)90による可動体40とフォーカスレンズ枠60の付勢構造の第1の例を示す図である。
【0033】
図13に示すように、軸方向から見たとき、可動体ガイド軸30の中心と連結軸70の中心を結んだ直線と、フォーカスレンズ枠ガイド軸50の中心と連結軸70の中心を結んだ直線とが鈍角をなす状態で交わっている。回転付勢つるまきバネ90は、可動体着力部91によって可動体40を図中の矢印の反時計方向に付勢し、フォーカスレンズ枠着力部92によってフォーカスレンズ枠60を図中の時計方向に付勢する。その結果、回転付勢つるまきバネ90は、上記2つの直線がなす鈍角を維持する方向、すなわち、上記鈍角を180°方向に向けるように(2つの直線が離れて一直線となるように)、可動体40とフォーカスレンズ枠60を付勢する。回転付勢つるまきバネ90がこのように可動体40とフォーカスレンズ枠60を付勢することで、フォーカスレンズ枠60のU字溝62の中央部にサブガイド軸51が浮遊状態で収容され、フォーカスレンズ枠60の偏芯微動を防止して、高品質な撮影画像を得ることができる。可動体ガイド軸30の中心と連結軸70の中心を結んだ直線の長さと、フォーカスレンズ枠ガイド軸50の中心と連結軸70の中心を結んだ直線の長さは不変であり、回転付勢つるまきバネ90による付勢力が作用しているため、フォーカスレンズ枠60は設計中心にてガタなく保持される。また、フォーカスレンズ枠60のU字溝62にサブガイド軸51が付勢されることがないため、摩擦負荷も発生しない。
【0034】
図14は、回転付勢つるまきバネ(付勢部材)90による可動体40とフォーカスレンズ枠60の付勢構造の第2の例を示す図である。
【0035】
図14に示すように、軸方向から見たとき、可動体ガイド軸30の中心と連結軸70の中心を結んだ直線と、フォーカスレンズ枠ガイド軸50の中心と連結軸70の中心を結んだ直線とが鈍角をなす状態で交わっている。回転付勢つるまきバネ90は、可動体着力部91によって可動体40を図中の矢印の時計方向に付勢し、フォーカスレンズ枠着力部92によってフォーカスレンズ枠60を図中の反時計方向に付勢する。その結果、回転付勢つるまきバネ90は、上記2つの直線がなす鈍角を維持する方向、すなわち、上記鈍角を0°方向に向けるように(2つの直線が近づいて一直線となるように)、可動体40とフォーカスレンズ枠60を付勢する。フォーカスレンズ枠60はフォーカスレンズ枠ガイド軸50を中心にして回転付勢されており、フォーカスレンズ枠60のU字溝62にサブガイド軸51が当て付くことで、回転ガタが除去される。ただし、フォーカシング時はフォーカスレンズ枠60のU字溝62にサブガイド軸51が当て付きながら摺動するので、摩擦負荷が発生し、モータの必要なトルクや消費電力が増大する。
【0036】
最後に、
図15を参照して、本実施形態のガイド装置を搭載した撮影装置(デジタルカメラ)100について説明する。
【0037】
図15に示すように、デジタルカメラ100は、そのカメラボディ101に着脱自在に装着された撮影レンズ102を備えており、撮影レンズ102は、被写体側(図の左側)から順に、撮影光学系としての撮影レンズ群103及び絞り104を備え、カメラボディ101は、シャッタ105及び2次元の撮像素子(エリアセンサ、イメージセンサ)106を備えている。撮影レンズ群103から入射し、絞り104及び開放されたシャッタ105を通った被写体光束による被写体像が、撮像素子106の受光面に形成され、露光される。撮像素子106の受光面に形成された被写体像は、マトリックス状に配置された多数の画素によって、電気的な画素信号に変換され、画像信号としてCPU(Central Processing Unit)107に出力される。CPU107は、DSP(Digital Signal Processor)と読み替えられてもよい。
【0038】
CPU107は、画像信号に所定の処理を施して、これを表示部材108に表示し、着脱可能なメモリカード109に書き込む。CPU107は、電源スイッチ、レリーズスイッチ、ダイヤルスイッチなどの操作部材110、絞り104とシャッタ105を駆動制御する絞り/シャッタ駆動回路111、撮像素子駆動機構112を介して撮像素子106を駆動する撮像素子駆動回路113、及びカメラ機能に関する各種プログラムが書き込まれたメモリ114と接続されている。
【0039】
撮影レンズ102は、絞り104の開口径(絞り値)情報、撮影レンズ群103の解像力(MTF)情報を記憶したメモリ114を搭載していて、これらの情報がCPU107に読み込まれる。撮影レンズ群103は、通常、絞り104を光軸方向に挟んで複数のレンズ群を有する(
図1では単レンズとして簡略化して描いている)。撮影レンズ群103は、撮影時に光軸方向に移動しない固定レンズ(群)、変倍時に光軸方向に移動するズームレンズ(群)、合焦時に光軸方向に移動するフォーカスレンズ群等を含み得る。上述した本実施形態のガイド装置は、例えば、撮影レンズ群103の一部であるフォーカスレンズを保持するフォーカスレンズ枠60のガイド装置とすることができる。
【0040】
また、撮像素子106は、撮影レンズ102の光軸Zと直交するX軸方向とY軸方向(直交二方向)に移動可能に撮像素子駆動機構112に搭載されている。CPU107は、像振れ防止動作(手振れ防止動作、防振動作)時に、図示しない角速度センサによりデジタルカメラ100の振れを検出して、撮像素子106に対して被写体像が相対移動しないように撮像素子振動回路113を介して撮像素子駆動機構112の可動ステージ(撮像素子106)を像振れ防止動作(手振れ防止動作、防振動作)させる。
【0041】
CPU107は、絞り/シャッタ駆動回路111や撮像素子駆動回路113を駆動制御する駆動制御部と、撮像素子106による撮影画像に対して所定の画像処理を施す画像処理部とを有している(駆動制御部と画像処理部の図示は省略している)。
【0042】
このように、本実施形態のレンズ枠のガイド装置は、圧電素子と直列接続された可動体ガイド軸と、前記可動体ガイド軸に軸方向及び回転方向に移動可能に支持された可動体と、前記可動体ガイド軸と平行に延びるレンズ枠ガイド軸と、前記レンズ枠ガイド軸に軸方向及び回転方向に移動可能に支持されたレンズ枠と、前記可動体ガイド軸及び前記レンズ枠ガイド軸と平行に延びるとともに、前記可動体と前記レンズ枠を回転方向に移動可能に連結する連結軸と、軸方向から見たとき、前記可動体ガイド軸の中心と前記連結軸の中心を結んだ直線と、前記レンズ枠ガイド軸の中心と前記連結軸の中心を結んだ直線とが鈍角をなす状態で、かつ、前記鈍角を維持する方向に、前記可動体及び前記レンズ枠を付勢する付勢部材と、を有している。これにより、レンズ枠の偏芯微動を防止することができる。すなわち、可動体と可動体ガイド軸の間に予期せぬ回転力が発生した場合でも、レンズ枠(例えばフォーカシングユニット)の偏芯微動を防止することができる。
【0043】
前記付勢部材は、前記鈍角を0°方向または180°方向に向けるように、前記可動体及び前記レンズ枠を付勢する。これにより、特別な当て付け部を設けることなく、且つ、ガタを発生させることなく、可動体とレンズ枠の回転付勢を行うことができる。
【0044】
本実施形態のレンズ枠のガイド装置は、前記可動体及び前記レンズ枠を軸方向に付勢する圧縮コイルバネをさらに有し、前記付勢部材は、前記圧縮コイルバネと同軸に位置する回転付勢つるまきバネからなる。前記圧縮コイルバネ及び前記回転付勢つるまきバネは、前記連結軸を中心とする同軸に位置する。これにより、レンズ枠のガイド装置の構成要素をコンパクトかつ高いスペース効率で配置することができる。
【0045】
前記レンズ枠は、前記レンズ枠ガイド軸と平行に延びるサブガイド軸に収容される収容溝部を有し、前記付勢部材が前記可動体及び前記レンズ枠を付勢することによって、前記レンズ枠の前記収容溝部に前記サブガイド軸が浮遊状態で収容される。レンズ枠の収容溝部にサブガイド軸がぶつかることは、レンズ枠(例えばフォーカシングユニット)の偏芯微動が発生したことを意味するので、レンズ枠の収容溝部にサブガイド軸が浮遊状態で収容されることで、レンズ枠(例えばフォーカシングユニット)の偏芯微動を防止することができる。
【0046】
本発明は上記の実施の形態及び変形例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらに、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【0047】
例えば、上記の実施形態では、レンズ枠が、フォーカスレンズを支持するフォーカスレンズ枠である場合を例示して説明した。しかし、レンズ枠は、フォーカスレンズ以外のレンズ(例えば変倍時に光軸方向に移動するズームレンズ)を支持するレンズ枠(例えばズームレンズ枠)であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
10 フレーム
11 可動体ガイド軸受(ガイド棒受)
20 圧電素子(積層型圧電素子、積層型超音波素子)
21 圧電素子台
22 制御装置
30 可動体ガイド軸(ガイド棒)
40 可動体
41 ガイド溝(V字溝)
42 与圧バネ
43 連結軸係合部
50 フォーカスレンズ枠ガイド軸(レンズ枠ガイド軸)
51 サブガイド軸
60 フォーカスレンズ枠(レンズ枠、フォーカシング鏡枠)
61 ガイド孔
62 U字溝(収容溝部)
63 支持部
70 連結軸
71 バネ押さえコマ
80 圧縮コイルバネ
90 回転付勢つるまきバネ(付勢部材)
91 可動体着力部
92 フォーカスレンズ枠着力部
100 撮影装置(デジタルカメラ)
103 撮影レンズ群(フォーカスレンズ)