(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135816
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】印刷装置および方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
B41J2/01 109
B41J2/01 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041097
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128451
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 隆一
(72)【発明者】
【氏名】樋口 武士
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056HA07
2C056HA10
(57)【要約】
【課題】インク滴の着弾位置ずれを抑制することができるとともに、立体物の印刷媒体の最下部まで印字可能な印刷装置および方法を提供する。
【解決手段】立体物の印刷媒体の印刷面が鉛直方向および水平方向に対して傾斜するように印刷媒体を支持する支持部60と、支持部60に支持された印刷媒体の印刷面に対して垂直な方向から液滴を吐出する複数のノズルを有するヘッドユニット10とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体物の印刷媒体の印刷面が鉛直方向および水平方向に対して傾斜するように前記印刷媒体を支持する支持部と、
前記支持部に支持された印刷媒体の印刷面に対して垂直な方向から液滴を吐出する複数のノズルを有するヘッド部とを備えた印刷装置。
【請求項2】
前記印刷媒体を搬送する搬送部を備え、
前記支持部が、前記搬送部に対して着脱可能である請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記搬送部が、環状の搬送ベルトを有し、
前記支持部が、前記搬送ベルト上に複数設けられている請求項2記載の印刷装置。
【請求項4】
前記支持部が、前記印刷面の最下部の端部に対して前記ヘッド部が液滴を吐出可能なように前記印刷面を傾斜させる請求項1から3いずれか1項記載の印刷装置。
【請求項5】
立体物の印刷媒体の印刷面が鉛直方向および水平方向に対して傾斜するように前記印刷媒体を支持し、
該支持された印刷媒体の印刷面に対して、複数のノズルを有するヘッド部によって垂直な方向から液滴を吐出して印刷を行う印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体物の印刷媒体に印刷を行う印刷装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷媒体に対してインクを吐出して印刷を施すインクジェット印刷装置が提案されている。
【0003】
インクジェット印刷装置としては、印刷面が水平となるように配置された印刷媒体に対して、鉛直方向上方からインクを吐出するインクジェット印刷装置だけでなく、印刷面が水平以外の方向となるように配置された印刷媒体に対して、印刷面に垂直な方向からインクを吐出して印刷を行うインクジェット印刷装置が提案されている。
【0004】
たとえば特許文献1には、ベルトコンベヤによって段ボール箱を水平に搬送し、搬送された段ボール箱の側面に、インクジェットヘッドによって印刷を行う装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の装置では、以下の課題がある。たとえば段ボール箱の側面に対して、複数のノズルが鉛直方向に配列されるようにインクジェットヘッドを配置した場合、インクジェットヘッドでは、各ノズルにメニスカスが形成されるように各ノズルのインクに対する圧力が調整されるが、たとえば下側のノズルからインクが漏れることなくメニスカスが形成されるように負圧を調整した場合、上側のノズルと下側のノズルでは水頭差があるため、下側のノズルよりも上側のノズルの方が引込圧が高くなる。
【0007】
したがって、上側のノズルと下側のノズルとで同じように吐出制御した場合、上側のノズルの方が引込圧が高いため、吐出エネルギーが弱くなる。その結果、上側のノズルから吐出されたインク滴が、重力の影響により放物落下しやすくなり、印刷媒体の印刷面における着弾位置が下側にずれて位置ずれが生じ、印刷画像の品質低下となる。
【0008】
また、上述したように複数のノズルが鉛直方向に配列されるようにインクジェットヘッドを配置した場合、インクジェットヘッドをベルトコンベヤの搬送面まで近づけると、インクジェットヘッドの装置に対する取り付け部などといったノズル以外の部分が搬送面と干渉するため、段ボール箱の最下部に印字することができない。
【0009】
本発明は、インク滴の着弾位置ずれを抑制することができるとともに、立体物の印刷媒体の最下部まで印字可能な印刷装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の印刷装置は、立体物の印刷媒体の印刷面が鉛直方向および水平方向に対して傾斜するように印刷媒体を支持する支持部と、支持部に支持された印刷媒体の印刷面に対して垂直な方向から液滴を吐出する複数のノズルを有するヘッド部とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の印刷装置によれば、立体物の印刷媒体の印刷面が鉛直方向および水平方向に対して傾斜するように印刷媒体を支持し、その支持された印刷媒体の印刷面に対して、複数のノズルを有するヘッド部によって垂直な方向から液滴を吐出して印刷を行うようにしたので、ヘッド部における各ノズルの引込圧の差を小さくすることができ、液滴の着弾位置ずれを抑制することができるとともに、立体物の印刷媒体の最下部まで印字可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の印刷装置の一実施形態を用いたインクジェット印刷装置における搬送ユニットの概略構成を示す外観斜視図
【
図2】支持部に段ボール箱の印刷媒体を設置した状態を示す図
【
図3】本発明の印刷装置の一実施形態を用いたインクジェット印刷装置の全体構成を示すブロック図
【
図5】搬送ベルトに設けられた固定ピンの一例を示す図
【
図6】搬送ベルトに着脱可能に設けられる支持部の一実施形態を示す図
【
図7】
図6Aに示す支持部を前側、下側および右側から見た図
【
図8】搬送ベルトに着脱可能に設けられる支持部のその他の実施形態を示す図
【
図10】
図8に示す支持部を前側、下側および右側から見た図
【
図11】支持部の搬送ベルトへの取り付け例を示す図
【
図12】支持部に弾性部材を設け、ヘッドユニットにガイド部材を設けた例を示す図
【
図14】ヘッドユニットに設けられたスロープガイド部材の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の印刷装置の一実施形態を用いたインクジェット印刷装置について詳細に説明する。本実施形態のインクジェット印刷装置は、印刷媒体の支持部に特徴を有するものであるため、まず、その支持部を含む搬送ユニットについて説明する。
図1は、本実施形態のインクジェット印刷装置の搬送ユニット2の概略構成を示す外観斜視図である。以下に示す実施形態の説明では、
図1に矢印で示す上下左右前後を、インクジェット印刷装置の上下左右前後方向とする。また、インクジェット印刷装置の上下方向が鉛直方向である。
【0014】
搬送ユニット2は、
図1において矢印で示す搬送方向に印刷媒体Pを搬送する。本実施形態における印刷媒体Pは立体物であり、たとえば段ボール箱などの箱体である。ただし、箱体に限らず、たとえば円柱形状の缶など直方体以外の形状を有する立体物でもよい。
【0015】
搬送ユニット2は、印刷媒体Pの搬送方向に直交する方向に延設された2本のプラテンローラ2aと搬送ベルト2bを備える。2本のプラテンローラ2aは、
図1に示すように、印刷媒体Pの搬送方向について離間して平行に配置される。そして、平行に配列された2本のプラテンローラ2a間に環状の搬送ベルト2bが掛け渡される。後述する制御部50の制御によって駆動モータ51(
図3参照)が駆動してプラテンローラ2aが回転し、これにより搬送ベルト2bが移動して印刷媒体Pが搬送される。
【0016】
また、
図1に示すように、搬送ベルト2b上には、複数の支持部60が設けられている。本実施形態の支持部60は、凹形状を有し、支持部60の凹部に印刷媒体Pが設置される。
【0017】
図2は、支持部60の凹部に段ボール箱の印刷媒体Pが設置された状態を示す図であり、
図1に示す矢印A方向から搬送ユニット2を見た図である。
図2に示すように、本実施形態の支持部60は凹部を形成する第1の設置面60aと第2の設置面60bとを有する。支持部60は、第1の設置面60aと第2の設置面60bとがなす角が約90度となるように形成されている。そして、支持部60の第1の設置面60aに段ボール箱(印刷媒体P)の側面(印刷面に対向する側面)が接し、第2の設置面60bに段ボール箱(印刷媒体P)の底面が接するように配置される。
【0018】
上述したように支持部60に印刷媒体Pを設置することによって、印刷媒体Pの印刷面Psは、鉛直方向および水平方向に対して傾斜する。本実施形態では、印刷面Psは水平方向および鉛直方向に対して45°傾斜する。
【0019】
そして、
図2に示すように、本実施形態のインクジェット印刷装置1は、ヘッドユニット10を備える。なお、
図1においては、ヘッドユニット10を図示省略している。また、本実施形態においては、ヘッドユニット10が、本発明のヘッド部に相当する。
【0020】
ヘッドユニット10は、搬送ユニット2によって搬送された印刷媒体Pの印刷面Psに対してインクを吐出して印刷を施す。具体的には、ヘッドユニット10は、インクジェットヘッドを有し、インクジェットヘッドは、支持部60に支持された印刷媒体Pの印刷面Psに対して垂直な方向からインク滴を吐出する。インクジェットヘッドは、インク滴を吐出する複数のノズルを有し、複数のノズルは、印刷面Psの傾斜方向に沿って配列されている。すなわち、本実施形態のヘッドユニット10は、インクジェットヘッドのインク吐出面が、印刷媒体Pの印刷面Psに対して平行となるように設置される。インク吐出面とは、インク滴を吐出するノズルの吐出口が配列された面である。
【0021】
このようにヘッドユニット10を配置することによって、複数のノズルが鉛直方向に配列されている場合と比較すると、各ノズルの引込圧の差を小さくすることができ、各ノズルから吐出されるインク滴の着弾位置ずれを抑制することができる。また、
図2に示すように、ヘッドユニット10は、印刷面Psの最下部の端部まで印字することができる。
【0022】
なお、支持部60は、上述したように印刷面Psの最下部の端部まで印字可能なように印刷面Psを傾斜させるものであるが、支持部60の第2の設置面60bと搬送ベルト2bの搬送面とが成す角θは、10°以上であることが好ましい。印刷面Psの最下部の端部まで印字可能とすることによって、印刷媒体Pのデザイン性を向上させることができる。
【0023】
なお、ヘッドユニット10のインクジェットヘッドは、単数でもよいし、複数でもよい。また、ヘッドユニット10は、複数のインクジェットヘッドを印刷面Psの傾斜方向に配列したラインヘッドを有するものとしてもよい。また、異なる色のインクを吐出する複数のラインヘッドを印刷媒体Pの搬送方向に平行に配列してヘッドユニット10を構成するようにしてもよい。異なる色のインクを吐出する複数のラインヘッドとして、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)およびK(ブラック)のインクをそれぞれ吐出する4本のラインヘッドを設けるようにしてもよい。
【0024】
図3は、本実施形態のインクジェット印刷装置の全体構成を示すブロック図である。制御部50は、CPU(Central Processing Unit)並びに半導体メモリおよびハードディスクなどの記憶媒体を備え、インクジェット印刷装置全体を制御する。制御部50は、半導体メモリまたはハードディスクなどの記憶媒体に予め記憶された制御プログラムを実行し、かつ電気回路を動作させることによって、インクジェット印刷装置の各部の動作を制御するものである。
【0025】
搬送ユニット2は、プラテンローラ2aを回転駆動する駆動モータ51を備える。駆動モータ51は、制御部50からの制御信号に基づいて駆動する。
【0026】
そして、上述した支持部60に印刷媒体Pが設置された状態でプラテンローラ2aが回転し、これにより印刷媒体Pが搬送方向に搬送させる。そして、制御部50は、印刷媒体Pの搬送にともなってヘッドユニット10を駆動し、搬送される印刷媒体Pに対してインクを吐出し、印刷を行う。
【0027】
また、ヘッドユニット10には、インクユニット11が接続されている。インクユニット11は、ヘッドユニット10にインクを供給するとともに、ヘッドユニット10のインクジェットヘッドの各ノズルの引込圧を調整する。以下、インクユニット11の構成について、
図4を参照しながら説明する。
【0028】
インクユニット11は、
図4に示すように、インク循環部20とインク供給部40を備える。
【0029】
インク循環部20は、インクを循環させつつヘッドユニット10にインクを供給する。インク循環部20は、加圧タンク21と、負圧タンク24と、インクポンプ25と、インク温度調整部26と、インク温度センサ27と、インク循環管28~30とを備える。
【0030】
加圧タンク21は、ヘッドユニット10に供給するインクを貯留する。加圧タンク21のインクは、インク循環管28を介してヘッドユニット10に供給される。加圧タンク21内には、インクの液面上に空気層31が形成されている。加圧タンク21の空気層31は、後述の加圧連通管58を介して、後述の圧力付加部5に接続されている。加圧タンク21は、ヘッドユニット10より低い位置(下方)に配置されている。
【0031】
ヘッドユニット10で消費されなかったインクはインク循環管29を介して負圧タンク24へと流れる。
【0032】
負圧タンク24は、ヘッドユニット10で消費されなかったインクをインク循環管29を介して受け取って貯留する。また、負圧タンク24は、後述するインク供給部40のインクカートリッジ46から供給されるインクを貯留する。負圧タンク24内には、インクの液面上に空気層36が形成されている。負圧タンク24の空気層36は、後述の負圧連通管59を介して、圧力付加部5に連通されている。負圧タンク24は、加圧タンク21と同じ高さに配置されている。
【0033】
インクポンプ25は、負圧タンク24から加圧タンク21へインクを送液する。インクポンプ25は、インク循環管30の途中に設けられている。
【0034】
インク温度調整部26は、インク循環部20におけるインクの温度を調整する。インク温度調整部26は、インク循環管28の途中に設けられている。インク温度調整部26は、ヒータ41と、ヒータ温度センサ42と、ヒートシンク43と、冷却ファン44とを備える。
【0035】
ヒータ41は、インク循環管28内のインクを加熱する。ヒータ温度センサ42は、ヒータ41の温度を検出する。ヒートシンク43は、放熱によりインク循環管28内のインクを冷却する。冷却ファン44は、ヒートシンク43に冷却風を送る。
【0036】
インク温度センサ27は、インク循環部20におけるインクの温度を検出する。インク温度センサ27は、インク循環管28の途中に設けられている。インク温度センサ27は、たとえばパワーサーミスタによって構成することができる。
【0037】
インク循環管30は、負圧タンク24と加圧タンク21とを接続する。インク循環管30には、負圧タンク24から加圧タンク21に向かってインクが流れる。インク循環管28~30により、加圧タンク21とヘッドユニット10と負圧タンク24との間でインクを循環させる循環経路が構成される。
【0038】
インク供給部40は、インクカートリッジ46のインクを、インク供給弁47が開いている間、インク補給管48を介してインク循環部20の負圧タンク24に供給する。
【0039】
圧力付加部5は、加圧タンク21の空気層31および負圧タンク24の空気層36に、インク循環のための圧力を付与する。圧力付加部5は、加圧タンク21の空気層31および負圧タンク24の空気層36を、個別に大気に対して遮断、連通させることができる。
【0040】
そして、圧力付加部5は、加圧連通管58を介して加圧タンク21の空気層31に正圧を付与することができる。また、圧力付加部5は、負圧連通管59を介して負圧タンク24の空気層36に負圧を付与することができる。
【0041】
そして、圧力付加部5による正圧と負圧の調整によって各ノズルの引込圧が調整され、ヘッドユニット10のインクジェットヘッドの各ノズルにメニスカスが形成される。
【0042】
なお、上記実施形態のインクジェット印刷装置1における支持部60は、搬送ユニット2の搬送ベルト2bに対して着脱可能としてもよい。
【0043】
以下、搬送ベルト2bに着脱可能な支持部60の構成について説明する。まず、
図5に示すように、搬送ベルト2bには、支持部60を取り付けるための固定ピン61が設けられている。本実施形態では、
図5に示すように前後左右に4つの固定ピン61が設けられている。固定ピン61の先端部には、後述する雄ネジがねじ込まれるネジ穴が形成されている。
図6Aは、
図5に示す4つの固定ピン61に対して着脱可能に取り付けられる支持部62を示す図である。
図6Aは、支持部62の外観斜視図を示しており、
図6Bは、
図6Aに示す支持部62を上下逆にした図である。
【0044】
図6Aに示す支持部62も
図1に示す支持部60と同様に、印刷媒体Pが設置される凹部を有する。支持部62においても、第1の設置面62aと第2の設置面62bとがなす角が約90度となるように形成されている。そして、支持部62の第1の設置面62aに段ボール箱(印刷媒体P)の側面(印刷面Psに対向する面)が接し、第2の設置面62bに段ボール箱(印刷媒体P)の底面が接するように配置される。
【0045】
そして、
図6Bに示すように、支持部62の底面(搬送ベルト2bに接する面)には、固定ピン61が嵌入する嵌入孔62cと嵌入溝62dが形成されている。嵌入孔62cは、左右方向に長い楕円形状で形成されており、支持部62の前側に、左右に2つ並べて形成されている。嵌入溝62dは、矩形状で形成されており、支持部62の後ろ側に、左右に2つ並べて形成されている。また、嵌入溝62dは、支持部62の後ろ側面では開放状態となっている。嵌入孔62cと嵌入溝62dの深さは、少なくとも固定ピン61の上下方向の長さよりも深く形成されている。
【0046】
【0047】
図6Aおよび
図6Bに示す支持部62を固定ピン61に取り付ける際には、たとえば、まず支持部62の前側の底面に形成された2つの嵌入孔62cに対して2つの固定ピン61が嵌入され、これにより支持部62の前後方向の位置が決められた後、支持部62の後ろ側の底面に形成された2つの嵌入溝62d内に2つの固定ピン61が嵌入される。このように支持部62を取り付けることによって、容易に取り付けることができる。
【0048】
なお、
図6Aおよび
図6Bに示す支持部62は、搬送ベルト2bに対して一時的に取り付けられるものであるため、固定ピン61に対して雄ネジは取り付けられない。そして、支持部62が搬送ベルト2bに一時的に取り付けられた状態で印刷媒体Pが設置され、搬送ベルト2bを動かしながら印刷を行う。そして、搬送ベルト2bの動作を停止した後、印刷媒体Pが取り出され、支持部62が搬送ベルト2bから外される。
【0049】
次に、搬送ベルト2bを動かすことを想定して、搬送ベルト2bに対して着脱可能に取り付けられる支持部63について説明する。
図8は、上述した支持部63を2つ並べて示した図である。
【0050】
図8に示す支持部62も
図1に示す支持部60と同様に、印刷媒体Pが設置される凹部を有する。支持部63においても、第1の設置面63aと第2の設置面63bとがなす角が約90度となるように形成されている。そして、支持部63の第1の設置面63aに段ボール箱(印刷媒体P)の側面が接し、第2の設置面63bに段ボール箱(印刷媒体P)の底面が接するように配置される。
【0051】
そして、
図8に示すように、支持部63の前面には、固定ピン61のネジ穴に取り付けられる雄ネジ部材(図示省略)が嵌入されるネジ孔部63c,63dが形成されている。ネジ孔部63c,63dは、左右方向に2つ並べて形成される。そして、ネジ孔部63cは後述する嵌入孔63eに連通するように形成され、ネジ孔部63dは後述する嵌入孔63fに連通するように形成されている。
【0052】
図9は、
図8に示す支持部63を下側から見た斜視図である。
図9に示すように支持部63の底面(搬送ベルト2bと接する面)には、嵌入孔63e,63fが形成されている。嵌入孔63e,63fは、搬送ベルト2bに設けられた固定ピン61が嵌入される孔であり、左右方向に長い楕円形状で形成されるが、左側の嵌入孔63eの方が右側の嵌入孔63fよりも左右方向の長さが長くなるように形成されている。
【0053】
そして、上述したように嵌入孔63eは、支持部63の内部でネジ孔部63cと連通しており、嵌入孔63fは、支持部63の内部でネジ孔部63dと連通している。
【0054】
【0055】
図8に示す支持部63を固定ピン61に取り付ける際には、たとえば、まず支持部63の底面左側に形成された大きい方の嵌入孔63eに対して固定ピン61が嵌入され、これにより支持部63の左右方向の位置が決められた後、支持部6の底面右側に形成された小さい方の嵌入孔63fに対して固定ピン61が嵌入される。このように支持部63を取り付けることによって、容易に取り付けることができる。
【0056】
そして、上述したように嵌入孔63eと支持部63の前面に形成されたネジ孔部63cは、支持部63の内部で連通しているので、嵌入孔63eに嵌入された固定ピン61のネジ穴が、ネジ孔部63cから視認される。また、嵌入孔63fと支持部63の前面に形成されたネジ孔部63dは、支持部63の内部で連通しているので、嵌入孔63fに嵌入された固定ピン61のネジ穴が、ネジ孔部63dから視認される。
【0057】
そして、ネジ孔部63cから雄ネジ部材が嵌入され、嵌入孔63eから嵌入された固定ピン61のネジ穴にねじ込まれる。また、ネジ孔部63dから雄ネジ部材が嵌入され、嵌入孔63fから嵌入された固定ピン61のネジ穴にねじ込まれる。これにより、支持部63が搬送ベルト2bに対して一時的に固定される。
【0058】
そして、上述したように支持部63は、搬送ベルト2bを動かすことを想定して形成されたものであるので、その搬送方向の厚さが、プラテンローラ2aにおいて周回可能な厚さに設定されている。
図11は、支持部63の搬送ベルト2bへの取り付け例を示す図である。
図11に示すように、支持部63は、搬送ベルト2bの全体に亘って所定の間隔を空けて複数設けられる。
図11に示すように支持部63を設けることによって、搬送ベルト2bが回転しても、常に上側の搬送ベルト2bに支持部63が現れるようにすることができ、複数の印刷媒体Pに対する連続印刷が可能となる。
【0059】
上述した支持部62および支持部63のように搬送ベルト2bに着脱可能に構成することによって、必要に応じて支持部62,63を取り付けた状態での印刷媒体Pの傾斜搬送と、支持部62,63を取り外した状態で印刷媒体Pを搬送ベルト2bに設置して搬送する水平搬送とを切り替えることができる。
【0060】
たとえば段ボール箱(印刷媒体P)の最下部まで印字する場合には、支持部62,63を取り付けて傾斜搬送とし、最下部まで印字せず、着弾位置ずれも気にならないような印刷画像を印字する場合には、支持部62,63を取り外して水平搬送することによって、印刷媒体Pの設置作業が容易となる。
【0061】
なお、上述したように傾斜搬送と水平搬送とを切り替える場合には、ヘッドユニット10についても、この切り替えに合わせて傾斜角度が変更させる。具体的には、ヘッドユニット10を回動させる回動機構を設け、傾斜搬送の場合には、インクジェットヘッドの吐出面が印刷面Psと平行となるようにヘッドユニット10を回動させて傾斜させ、水平搬送の場合には、インクジェットヘッドの吐出面が鉛直方向となるようにヘッドユニット10を回動させるようにする。これにより、印刷面Psとインクジェットヘッドの吐出面とを常に平行にすることができる。
【0062】
また、ヘッドユニット10から印刷媒体Pにインクを吐出して印刷を行う際、ヘッドユニット10と印刷媒体Pの印刷面Psとの距離は一定であることが好ましい。そこで、
図12に示すように、印刷媒体Pの印刷面Psに対向する側面が設置される支持部60の第1の設置面60aに対して弾性部材60cを設け、その弾性部材60cに対して板部材60dを設け、ヘッドユニット10側には、ヘッドユニット10と印刷媒体Pの印刷面Psとの距離を規制するガイド部材70を設けるようにしてもよい。
【0063】
そして、印刷を行う際には、
図12に示すように弾性部材60cによって付勢された板部材60d上に印刷媒体Pを設置し、印刷媒体Pの印刷面Psに対してガイド部材70を当接させた状態で印刷を行う。これにより、印刷媒体Pの印刷面Psとヘッドユニット10との距離を一定に維持した状態で印刷を行うことが可能である。
【0064】
弾性部材60cとしては、たとえばバネ部材が用いられるが、これに限らず、弾性を有する樹脂部材などを用いるようにしてもよい。
【0065】
また、ガイド部材70は、
図13に示すようにローラガイド部材であることが好ましい。
図13は、
図12に示すガイド部材70を矢印B方向から見た図である。また、ガイド部材70は、ローラガイド部材に限らず、
図14に示すようなスロープガイド部材から構成するようにしてもよい。
【0066】
ここで、印刷媒体Pは、搬送ベルト2bによって搬送されるが、上述したようにガイド部材70を印刷媒体Pに当接させることによって摩擦力が生じ、搬送ベルト2bの搬送速度と実際の印刷媒体Pの搬送速度とが異なる可能性がある。このような搬送速度の違いは、インクの着弾位置に影響を及ぼし、印刷画像の位置ずれを発生する可能性がある。
【0067】
そこで、ガイド部材70をローラガイド部材から構成する場合、たとえばローラガイド部材に対してロータリーエンコーダを設けることによって、印刷媒体Pの実際の搬送速度を検出するようにしてもよい。このようにロータリーエンコーダによって印刷媒体Pの実際の搬送速度を検出し、その搬送速度を用いてヘッドユニット10からのインク吐出タイミングを制御するようにすれば、上述したような印刷画像の位置ずれを防止することができる。
【0068】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階でその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。たとえば実施形態に示される全構成要素を適宜組み合わせても良い。このような、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることはもちろんである。
【0069】
本発明に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記)
【0070】
本発明の印刷装置においては、印刷媒体を搬送する搬送部を備え、支持部は、搬送部に対して着脱可能とすることができる。
【0071】
本発明の印刷装置において、搬送部は、環状の搬送ベルトを有し、支持部は、搬送ベルト上に複数設けることができる。
【0072】
本発明の印刷装置において、支持部は、印刷面の最下部の端部に対してヘッド部が液滴を吐出可能なように印刷面を傾斜させることができる。
【0073】
本発明の印刷方法は、立体物の印刷媒体の印刷面が鉛直方向および水平方向に対して傾斜するように印刷媒体を支持し、その支持された印刷媒体の印刷面に対して、複数のノズルを有するヘッド部によって垂直な方向から液滴を吐出して印刷を行う。
【符号の説明】
【0074】
1 インクジェット印刷装置
2 搬送ユニット
2a プラテンローラ
2b 搬送ベルト
5 圧力付加部
10 ヘッドユニット
11 インクユニット
20 インク循環部
21 加圧タンク
24 負圧タンク
25 インクポンプ
26 インク温度調整部
27 インク温度センサ
28~30 インク循環管
31 空気層
36 空気層
40 インク供給部
41 ヒータ
42 ヒータ温度センサ
43 ヒートシンク
44 冷却ファン
46 インクカートリッジ
47 インク供給弁
48 インク補給管
50 制御部
51 駆動モータ
58 加圧連通管
59 負圧連通管
60 支持部
60a 第1の設置面
60b 第2の設置面
60c 弾性部材
60d 板部材
61 固定ピン
62,63 支持部
62a 第1の設置面
62b 第2の設置面
62c 嵌入孔
62d 嵌入溝
63a 第1の設置面
63b 第2の設置面
63c,63d ネジ孔部
63e,63f 嵌入孔
70 ガイド部材
P 印刷媒体
Ps 印刷面