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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135831
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】水位表示装置
(51)【国際特許分類】
   E01F 9/00 20160101AFI20230922BHJP
   G01F 23/30 20060101ALI20230922BHJP
   G08B 21/10 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
E01F9/00
G01F23/30 A
G08B21/10
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041119
(22)【出願日】2022-03-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】522106857
【氏名又は名称】小栗 勇樹
(74)【代理人】
【識別番号】110003487
【氏名又は名称】弁理士法人東海特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100180781
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 友和
(72)【発明者】
【氏名】小栗 勇樹
【テーマコード(参考)】
2D064
2F013
5C086
【Fターム(参考)】
2D064AA13
2D064AA22
2D064BA01
2D064EA02
2D064FA04
2F013AA04
2F013BG20
2F013CA21
5C086AA12
5C086CA25
5C086CB31
5C086FA17
5C086GA07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】信頼性が高くメンテナンス性にも優れた簡易な構成の水位表示装置を提供する。
【解決手段】水位表示装置1は、対象地点Pに固定される固定部材20と、固定部材20に回動自在に軸支され浮力によって上下動する可動部材30と、を備える。可動部材30は、表示部31と、軸部33と、被係止部35と、を有し、固定部材20は、軸部33を上下動および回動可能に支持する支持部21と、被係止部35を係止して可動部材30の回動を規制する係止部25と、を有する。表示部31は、可動部材30が上下動に伴って回動することで表示面32を一の方向に向けた収容位置と表示面32を他の方向に向けた表示位置との間を変位し、被係止部35は、可動部材30の上下動に伴って係止部25に案内されるように構成される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の地点における水位に関連する表示を行う水位表示装置であって、
前記地点に固定される固定部材と、
前記固定部材に回動自在に軸支され、浮力によって上下動する可動部材と、を備え、
前記可動部材は、
前記表示を行う表示面が設けられた表示部と、
前記表示部に連結された軸部と、
前記固定部材に係止される被係止部と、を有し、
前記固定部材は、
前記軸部を上下動および回動可能に支持する支持部と、
水平方向に対して傾斜するように設けられた傾斜案内面と、
前記被係止部を係止して前記可動部材の回動を規制する係止部と、を有し、
前記表示部は、前記可動部材が上下動に伴って前記傾斜案内面に当接して回動することで、前記表示面を一の方向に向けた収容位置と前記表示面を他の方向に向けた表示位置との間を変位し、
前記被係止部は、前記可動部材の上下動に伴って前記係止部に案内される、水位表示装置。
【請求項2】
前記支持部は、上方に位置する上側支持部と、下方に位置する下側支持部と、を含み、
前記傾斜案内面は、前記上側支持部の下面に設けられた上側傾斜案内面と、前記下側支持部の上面に設けられた下側傾斜案内面と、を含み、
前記係止部は、前記上側傾斜案内面の最上端部に形成された上側係止部と、前記下側傾斜案内面の最下端部に形成された下側係止部と、を含み、
前記可動部材の上下動に伴って、前記被係止部が前記上側傾斜案内面または前記下側傾斜案内面に当接して前記上側係止部または前記下側係止部に案内される、請求項1に記載の水位表示装置。
【請求項3】
前記固定部材は、取付部をさらに有し、
前記上側支持部および前記下側支持部は、前記取付部に固定されている、請求項2に記載の水位表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水位表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば鉄道もしくは道路の下を通るくぐり抜け式道路や、地下道のようなアンダーパスでは、台風や集中豪雨等の際に、大量の水が流れ込んで局所的に冠水したり、周囲よりも冠水水位が著しく大きくなったりすることがある。立往生等の危険を回避するため、このような地点には、水位に関連する情報を通行者に知らせる水位表示装置が設置されることが望ましい。
【0003】
従来、水位表示装置としては、超音波計やセンサ等からなる水位測定手段と、測定された水位データを処理する処理手段と、処理データに基づいて信号や回転灯等により水位に関する情報を表示する表示手段と、を備えるものが多く用いられてきた。このように複雑な構成の水位表示装置は、コストが高く、メンテナンスに手間がかかり、さらには浸水によって電気系統が故障したり、停電時に機能しなくなったりする懸念があった。
【0004】
そこで、例えば下記特許文献1には、冠水時に受ける浮力によって道路の中心側にせり出す表示部材を具備した、簡易な構成の冠水表示装置が開示されている。この冠水表示装置の前記表示部材は、上端部が回動可能に軸支された状態で立設されており、下端部が冠水時に受ける浮力によって回転しながら浮上することで、道路の中心側にせり出すように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5650096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の冠水表示装置は、表示部材の不要な回動を規制する手段を備えていない。そのため、台風等のように強風を伴う豪雨等の際に、せり出した表示部材の向きが意図せず変わってしまう可能性がある。また、側壁等に沿って収容されている表示部材等が、風にあおられて周辺構造物に打ち付けられ、破損する可能性がある。
【0007】
本明細書が開示する技術は、上記問題点を解決するものであって、信頼性が高くメンテナンス性にも優れた簡易な構成の水位表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本開示に係る水位表示装置は、一の地点における水位に関連する表示を行う水位表示装置であって、前記地点に固定される固定部材と、前記固定部材に回動自在に軸支され、浮力によって上下動する可動部材と、を備え、前記可動部材は、前記表示を行う表示面が設けられた表示部と、前記表示部に連結された軸部と、前記固定部材に係止される被係止部と、を有し、前記固定部材は、前記軸部を上下動および回動可能に支持する支持部と、水平方向に対して傾斜するように設けられた傾斜案内面と、前記被係止部を係止して前記可動部材の回動を規制する係止部と、を有し、前記表示部は、前記可動部材が上下動に伴って前記傾斜案内面に当接して回動することで、前記表示面を一の方向に向けた収容位置と前記表示面を他の方向に向けた表示位置との間を変位し、前記被係止部は、前記可動部材の上下動に伴って前記係止部に案内されるように構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、信頼性が高くメンテナンス性にも優れた簡易な構成の水位表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る水位表示装置の設置状況の概要を示した模式図である。
図2図2は、水位表示装置を構成する各部材の斜視図である。(2A)は、固定部材の斜視図である。(2B)は、可動部材の斜視図である。
図3図3は、水位表示装置を道路中心側から見た正面図である。(3A)は、表示部が収容位置にある通常時の水位表示装置の正面図である。(3B)は、表示部が表示位置にある高水位時の水位表示装置の正面図である。
図4図4は、水位表示装置を通行者の進行方向から見た側面図である。(4A)は、(3A)の水位表示装置の側面図である。(4B)は、(3B)の水位表示装置の側面図である。
図5図5は、水位表示装置を上方から見た上面図である。(5A)は、(3A)の水位表示装置の上面図である。(5B)は、(3B)の水位表示装置の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
以下、本開示に係る水位表示装置の実施態様について、図面を参照しつつ具体的に説明する。以下の説明では、図1における紙面手前側を、水位表示装置の正面とする。また、同図において右側から左側に向かう方向を、通行者の進行方向とする。なお、各図面における部材の相対的な寸法や配置は必ずしも正確でなく、説明の便宜を考慮して一部の部材の縮尺等を変更しているものがある。
【0012】
図1は、本実施形態に係る水位表示装置1の設置状況の概要を示した模式図である。本実施形態では、図1に示すように、例えば線路の下方を通過するように掘り下げられたアンダーパス道路の側壁Sに設置される水位表示装置1について、例示する。水位表示装置1は、アンダーパス道路の所望の地点を対象地点Pとして、この対象地点Pにおける水位Wに関連する表示を行う。
【0013】
以下、水位表示装置1の構造について、主に図2を参照しながら説明する。
水位表示装置1は、側壁Sに取り付けられる固定部材20と、水位Wに応じて上下動する可動部材30と、を備える。(2A)は固定部材20の斜視図であり、(2B)は可動部材30の斜視図である。
【0014】
固定部材20は、(2A)の図に示すように、長方形板状の取付部27を備える。取付部27は、長手方向を鉛直方向と一致させ、一方の板面が道路の中心側に向くように、他方の板面を側壁Sに沿わせて取り付けられる。本実施形態に係る取付部27は、後述する下側支持部21Bの下端よりも下方に延出しており、下端を路面に当接させた状態で、締結具等によって側壁Sに固定される。取付部27の下端部の延出長は、所望の表示タイミング(水位)等に応じて適宜に決定できる。
【0015】
固定部材20はまた、後述する可動部材30の軸部33を上下動および回動可能に支持する支持部21を備える。本実施形態に係る支持部21は、上側支持部21Aおよび下側支持部21Bを含む。上側支持部21Aと下側支持部21Bは、中心軸に垂直な断面が真円をなす同径の直管から構成されており、何れも上下両端が開口している。上側支持部21Aおよび下側支持部21Bは、取付部27の一方の板面上に、所定の間隔を空けて鉛直方向に直列して設けられている。
【0016】
固定部材20はまた、水平面に対して傾斜した傾斜案内面23を備える。本実施形態に係る傾斜案内面23は、上側傾斜案内面23Aおよび下側傾斜案内面23Bを含む。本実施形態では、上側支持部21Aの下端が斜めにカットされており、上側支持部21Aの下面が、上側傾斜案内面23Aとして後述する可動部材30の被係止部35を案内する。本実施形態に係る上側傾斜案内面23Aは、水位表示装置1を進行方向側から見た側面における中央位置が、最も高くなるように傾斜している(図4等参照)。また、下側支持部21Bの上端も斜めにカットされており、下側支持部21Bの上面が、下側傾斜案内面23Bとして機能する。下側傾斜案内面23Bは、水位表示装置1の正面に位置する部分が最も低くなるように傾斜している(図3等参照)。
【0017】
固定部材20はまた、後述する可動部材30の被係止部35を係止する係止部25を備える。本実施形態に係る係止部25は、上側係止部25Aおよび下側係止部25Bを含む。上側支持部21Aに形成された上側係止部25Aは、上側傾斜案内面23Aの最上端から上方に延びるスリット状に形成されている。また、下側支持部21Bに形成された下側係止部25Bは、下側傾斜案内面23Bの最下端から下方に延びるスリット状に形成されている。よって、本実施形態では、上側係止部25Aは水位表示装置1の側面中央において鉛直方向に延在し(図4等参照)、下側係止部25Bは水位表示装置1の正面中央において鉛直方向に延在する(図3等参照)。すなわち、スリット状に形成された両係止部25A,25Bは、上方視で、支持部21の中心軸に対して90°回転した方向に開口している。
【0018】
固定部材20における各部の寸法や相対的な寸法位置関係は、所望の表示タイミングや所望の表示高さ等に応じて、適宜に決定できる。本実施形態では、(2A)に示すように、上側支持部21Aの方が下側支持部21Bよりもかなり長尺とされている。このようにすれば、比較的早いタイミングで後述する表示部31を表示位置に変位させるとともに、高水位時の上方への変位を大きくして表示の視認性を高めることができる。また、上側支持部21Aの最下端と下側支持部21Bの最上端は略同じ高さに配されており、上側傾斜案内面23Aと下側傾斜案内面23Bの鉛直方向の間隔が比較的小さくなるように設定されている。このようにすれば、表示部31が回動可能である期間を短くして表示安定性等を向上させることができる。
【0019】
上記した固定部材20の材質は限定されるものではないが、例えば耐候性に優れた樹脂で形成してもよい。後述する可動部材30も樹脂製として、水位表示装置1の全体を樹脂のみで形成すれば、一の製造拠点で製造することができ、好ましい。或いは、取付や設置の状況を考慮して、固定部材20の一部もしくは全部をステンレス鋼で形成してもよい。
【0020】
他方、可動部材30は、(2B)の図に示すように、水位Wに関する表示を行う表示面32が設けられた表示部31を備える。本実施形態に係る表示部31は長方形板状をなし、少なくとも一方の板面が表示面32とされている。図には表されていないが、他方の板面も、水位Wに関する表示が可能な表示面32とされていてもよい。可動部材30は、表示部31の長手方向を水平方向と一致させた姿勢で、固定部材20に支持される。
【0021】
可動部材30はまた、表示部31に連結された軸部33を備える。軸部33は、軸に垂直な断面が真円をなす、まっすぐで長尺な丸棒で構成されている。軸部33の中心軸が、可動部材30が回動する際の回動軸Rとなる。軸部33の一方の端部は、表示部31の一方の短辺に固定されている。軸部33の外径は、既述した支持部21の内径よりも僅かに小さいことが好ましい。軸部33の外径と支持部21の内径は、軸部33が支持部21に支持された状態で、両部材のがたつきを抑えつつ、可動部材30がスムーズに上下動および回動可能であるように、決定される。可動部材30は、軸部33の長手方向を鉛直方向と一致させた姿勢で、固定部材20に支持される。
【0022】
可動部材30はまた、固定部材20の係止部25に係止可能な被係止部35を備える。本実施形態に係る被係止部35は、軸部33の所定の位置から径方向に突出する突起で構成されている。被係止部35基部の水平方向の外寸は、スリット状に形成された既述した係止部25の水平方向の内寸よりも僅かに小さいことが好ましい。水平方向における被係止部35の外寸と係止部25の内寸は、被係止部35が係止部25に係止された状態で、両部材のがたつきを抑えつつ、可動部材30がスムーズに上下動可能であるように、決定される。軸部33における被係止部35の配設位置は、所望の表示タイミング等に応じ、軸部33の長さや上側係止部25Aおよび下側係止部25Bの配設高さ等を考慮して、適宜に決定できる。
【0023】
本実施形態に係る可動部材30はまた、抜け止め部37を備える。抜け止め部37は、軸部33の他方の端部(表示部31に連結されていない方の端部)が、径方向に膨出することで形成されている。抜け止め部37の外径は、既述した支持部21の内径よりも大きく、固定部材20に支持された可動部材30が上方に抜けてしまうことがないようになっている。なお、本実施形態では、対象地点Pが冠水していなければ、抜け止め部37の下端が路面に接地するように設定されている。このようにすれば、固定部材20に支持された可動部材30に通常時に余計な負荷がかかり難く、好ましい。
【0024】
上記した可動部材30は、浮力によって全体が上下動するように軽量に形成される。可動部材30の材質は限定されるものではないが、例えば耐候性に優れた硬質樹脂で中空形状に形成した枠体の内部にウレタン等を発泡充填して形成してもよい。このようにすれば、表面に亀裂等が生じた場合であっても内部への水の浸入を抑制しつつ全体を軽量にできる。
【0025】
可動部材30は、軸部33が支持部21内に挿通され、上側支持部21Aの上方に表示部31が配され、下側支持部21Bの下方に抜け止め部37が配された状態で、固定部材20に支持される(図3等参照)。例えば軸部33が一定のクリアランスを有して支持部21内に支持されることにより、可動部材30は、固定部材20に対して上下動および回動軸R周りに回動可能とされている。可動部材30が上下動および回動すると、被係止部35は、下側係止部25Bと上側係止部25Aの間を移動する。
【0026】
水位表示装置1は、例えば、対象地点Pで、可動部材30の構成部品を組み付けながら固定部材20に取り付けて枠体を作製し、その場で枠体内に発泡充填して製造することも可能である。詳しくは、以下のようである。(i)被係止部35が一体形成された軸部33の枠体と表示部31とが連結された可動部材30の一の構成部品と、抜け止め部37の枠体からなる可動部材30の他の構成部品と、固定部材20と、を準備する。なお、固定部材20の上側係止部25Aは、上側支持部21Aの上端に開口するように設けておくとよい。(ii)対象地点Pの側壁Sに、例えば取付部27の下端を路面に接地させて、固定部材20を取り付ける。(iii)固定部材20の上方から、被係止部35が上側係止部25Aを通過するようにして、一の構成部品の軸部33側を支持部21内に差し込む。(iv)下側支持部21Bよりも下方に突出した軸部33の下端部に他の構成部品を取り付けて、可動部材30の枠体を作製する。(v)作製した枠体の一部に設けた注入口から、発泡樹脂を注入して発泡充填する。以上により、可動部材30を完成すると同時に、水位表示装置1の製造および設置を完了できる。
【0027】
続いて、水位表示装置1の作動について、主に図3から図5を参照しながら説明する。
(3A)、(4A)、(5A)の図は、表示部31が収容位置にある通常時の水位表示装置1を、順に、道路中心側、通行者の進行方向、上方から見た図である。また、(3B)、(4B)、(5B)の図は、表示部31が表示位置にある高水位時の水位表示装置1を、順に、道路中心側、通行者の進行方向、上方から見た図である。なお、本明細書において、収容位置は、表示部31の板面が側壁Sとほぼ平行となる位置をいい、表示位置は、表示部31の板面が側壁Sにほぼ垂直となる位置をいう。
【0028】
本実施形態に係る水位表示装置1では、通常時すなわち対象地点Pが冠水していないか水位が比較的低いときは、(3A)および(4A)に示すように、可動部材30の被係止部35が下側係止部25Bに係止される。このとき表示部31は、(6A)に示すように、表示面32が側壁Sとほぼ平行な収容位置に維持される。収容位置では、(4A)に示すように、道路を通行する通行者からは表示面32は見えず、表示部31が通行の妨げになることもない。
【0029】
対象地点Pに水が溜まり始めると、水面の上昇に伴い、可動部材30が浮力によって上方に移動する。これにより、被係止部35が下側係止部25Bから外れ、可動部材30は回動軸R周りに回動可能となる。可動部材30がさらに上昇して被係止部35が上側傾斜案内面23Aに当接すると、被係止部35が上側傾斜案内面23Aに沿って移動することで、可動部材30は上昇しながら回動軸R周りに回動する。被係止部35が上側傾斜案内面23Aの最上端部に形成された上側係止部25Aに到達してこの内部に係止されると、可動部材30の回動が規制される。このとき、上方視で、可動部材30は通常時から90°回動しており、表示部31は表示面32が収容位置から90°回転した位置にある((5B)参照)。すなわち、表示部31は、表示面32を通行者の進行方向に向けた表示位置に配される((4B)参照)。
【0030】
被係止部35が上側係止部25Aに係止されて以降も水面が上昇し続けると、(3B)、(4B)、(5B)に示すように、可動部材30は表示部31を表示位置に維持しながらさらに上方に移動する。これに伴って、表示面32がさらに上方に掲示されることになり、表示の視認性が向上する。つまり、必要時には、収容位置よりもずっと高い表示位置に表示部31を移動させて表示を行うことができるため、例えばアンダーパスに侵入しようとする車の運転席からも、対象地点Pに設けられた表示を読み取り易くなる。
【0031】
後に、対象地点Pの水が引き始めると、水面の下降に伴い、浮力によって押し上げられていた可動部材30が下方に移動する。可動部材30とともに被係止部35が下降して上側係止部25Aから外れると、可動部材30は再び回動軸R周りに回動可能となる。可動部材30がさらに下降して被係止部35が下側傾斜案内面23Bに当接すると、被係止部35が下側傾斜案内面23Bに沿って移動することで、可動部材30は下降しながら回動軸R周りに回動する。被係止部35が下側傾斜案内面23Bの最下端部に形成された下側係止部25Bに到達してこの内部に係止されると、可動部材30の回動が規制される。このとき、上方視で、可動部材30は高水位時から90°回動しており、表示部31は表示面32が表示位置から90°回転した収容位置に戻っている((5A)参照)。このように、水位Wが低下して通常時に戻ると、表示部31は、表示面32が通行の妨げにならない収容位置に自動的に収容される((4A)参照)。
【0032】
以上のように、水位表示装置1は、対象地点Pの水位Wのみによって、表示部31が収容位置にある状態と表示位置にある状態との間を繰り返し変位可能であり、メンテナンスの負担を大幅に軽減できる。
【0033】
続いて、本実施形態に係る水位表示装置1の主な構成およびその作用効果について、改めて説明する。
本実施形態に係る水位表示装置1は、対象地点(一の地点)Pにおける水位Wに関連する表示を行う水位表示装置1であって、対象地点Pに固定される固定部材20と、固定部材20に回動自在に軸支され浮力によって上下動する可動部材30と、を備え、可動部材30は、表示を行う表示面32が設けられた表示部31と、表示部31に連結された軸部33と、固定部材20に係止される被係止部35と、を有し、固定部材20は、軸部33を上下動および回動可能に支持する支持部21と、水平方向に対して傾斜するように設けられた傾斜案内面23と、被係止部35を係止して可動部材30の回動を規制する係止部25と、を有し、表示部31は、可動部材30が上下動に伴って傾斜案内面23に当接して回動することで、表示面32を一の方向に向けた収容位置と表示面32を他の方向に向けた表示位置との間を変位し、被係止部35は、可動部材30の上下動に伴って係止部25に案内されるように構成されている。
【0034】
上記構成によれば、浮力を利用した簡易な構成の水位表示装置1において、表示の信頼性および耐久性を向上させることができる。具体的には、被係止部35が係止部25に係止されることで意図しない可動部材30の回動が抑制され、表示部31を所定の姿勢に維持できる。この結果、強風等によって可動部材30が回動して、意図せず収容位置や表示位置から変位したり、或いは、周辺構造物等に接触して破損したり、といった事態を軽減できる。
【0035】
本実施形態に係る水位表示装置1において、支持部21は、上方に位置する上側支持部21Aと、下方に位置する下側支持部21Bと、を含み、傾斜案内面23は、上側支持部21Aの下面に設けられた上側傾斜案内面23Aと、下側支持部21Bの上面に設けられた下側傾斜案内面23Bと、を含み、係止部25は、上側傾斜案内面23Aの最上端部に形成された上側係止部25Aと、前記下側傾斜案内面23Bの最下端部に形成された下側係止部25Bと、を含み、可動部材30の上下動に伴って、被係止部35が上側傾斜案内面23Aまたは下側傾斜案内面23Bに当接して上側係止部25Aまたは下側係止部25Bに案内されるように構成されている。
【0036】
上記構成によれば、特別な操作を行わなくとも、可動部材30の上下動に伴って、被係止部35が上側傾斜案内面23Aまたは下側傾斜案内面23Bによって係止部25に案内される。そして、被係止部35は、上側傾斜案内面23Aの最上端部よりも高い位置にあるとき、或いは、下側傾斜案内面23Bの最下端部よりも低い位置にあるときに、上側係止部25Aまたは下側係止部25Bに係止される。この結果、最も長期間にわたる通常時、並びに、最も表示が必要とされる高水位時に、可動部材30の回動を規制して破損の低減および表示信頼性の向上を図ることができる。
【0037】
本実施形態に係る水位表示装置1において、固定部材20は、取付部27をさらに有し、上側支持部21Aおよび下側支持部21Bは、取付部27に固定されている。
【0038】
上記構成によれば、取付部27によって上側支持部21Aと下側支持部21Bとの間が一定に維持されるため、固定部材20の設置を容易に行うことができる。
【0039】
また、本実施形態に係る取付部27は、下側支持部21Bの下端よりも所定長だけ下方に延出されている。下側支持部21Bからの延出長を水位表示装置1の取付け高さに合わせて適宜に調整し、取付部27の下端が路面等に接地するように側壁Sに取り付けることで、固定部材20を容易に所望の高さに設置できるようになっている。
【0040】
<他の実施形態>
本明細書が開示する技術は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば次のようなものも技術的範囲に含まれる。
【0041】
(1)可動部材の表示部には、表示位置に維持した際の風の影響を軽減するため、例えば風を通過させ易いメッシュ状のものや、風を受け流す球体状のもの等を用いてもよい。
【0042】
(2)可動部材は、全体が水よりも比重が小さくなるように形成されていることが好ましいが、一部(例えば上記実施形態における抜け止め部37)をフロートとしてもよい。
【0043】
(3)可動部材は、水平方向に延びる軸部によって、固定部材に上下動および回動可能に軸支されていてもよい。
【0044】
(4)可動部材は、可動部材のうち被係止部とは異なる部分が、上下動に伴って傾斜案内面に当接して案内されることで、回動するように構成されていてもよい。
【0045】
(5)水位表示装置は、対象地点の既設の構造体(上記実施形態では側壁S)に取り付けて使用するものに限定されず、固定部材を対象地点に立設するように構成してもよい。
【0046】
(6)水位表示装置は、道路のように通常時は乾いている地点に限らず、通常時から水が溜まっている地点にも設置できる。例えば漁港や海水浴場等のように、水位の監視が必要な箇所に設置し、必要時に所定の高さや方向に向けて水位に関連する表示を行うように構成してもよい。
【0047】
以上、本開示に係る水位表示装置の好適な実施形態について説明したが、これらは例示であって、発明の範囲を限定することを意図するものではない。実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0048】
1…水位表示装置
20…固定部材
21…支持部
21A…上側支持部
21B…下側支持部
23…傾斜案内面
23A…上側傾斜案内面
23B…下側傾斜案内面
25…係止部
25A…上側係止部
25B…下側係止部
27…取付部
30…可動部材
31…表示部
32…表示面
33…軸部
35…被係止部
37…抜け止め部
P…対象地点(一の地点)
S…側壁
W…(対象地点Pにおける)水位
R…回動軸


図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-01-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の地点における水位に関連する表示を行う水位表示装置であって、
前記地点に固定される固定部材と、
前記固定部材に回動自在に軸支され、浮力によって上下動する可動部材と、を備え、
前記可動部材は、
前記表示を行う表示面が設けられた表示部と、
前記表示部に連結された軸部と、
前記固定部材に係止される被係止部と、を有し、
前記固定部材は、
前記軸部を上下動および回動可能に支持する支持部と、
水平方向に対して傾斜するように設けられた傾斜案内面と、
前記被係止部を係止して前記可動部材の回動を規制する係止部と、を有し、
前記表示部は、前記可動部材が上下動に伴って前記傾斜案内面に当接して回動することで、前記表示面を一の方向に向けた収容位置と前記表示面を他の方向に向けた表示位置との間を変位し、
前記係止部は、前記傾斜案内面から鉛直方向に延びるスリット状に形成されており、
前記被係止部は、前記可動部材の上下動に伴って前記係止部に案内される、水位表示装置。
【請求項2】
一の地点における水位に関連する表示を行う水位表示装置であって、
前記地点に固定される固定部材と、
前記固定部材に回動自在に軸支され、浮力によって上下動する可動部材と、を備え、
前記可動部材は、
前記表示を行う表示面が設けられた表示部と、
前記表示部に連結された軸部と、
前記固定部材に係止される被係止部と、を有し、
前記固定部材は、
前記軸部を上下動および回動可能に支持する支持部と、
水平方向に対して傾斜するように設けられた傾斜案内面と、
前記被係止部を係止して前記可動部材の回動を規制する係止部と、を有し、
前記表示部は、前記可動部材が上下動に伴って前記傾斜案内面に当接して回動することで、前記表示面を一の方向に向けた収容位置と前記表示面を他の方向に向けた表示位置との間を変位し、
前記被係止部は、前記可動部材の上下動に伴って前記係止部に案内され、
前記支持部は、上方に位置する上側支持部と、下方に位置する下側支持部と、を含み、
前記傾斜案内面は、前記上側支持部の下面に設けられた上側傾斜案内面と、前記下側支持部の上面に設けられた下側傾斜案内面と、を含み、
前記係止部は、前記上側傾斜案内面の最上端部に形成された上側係止部と、前記下側傾斜案内面の最下端部に形成された下側係止部と、を含み、
前記可動部材の上下動に伴って、前記被係止部が前記上側傾斜案内面または前記下側傾斜案内面に当接して前記上側係止部または前記下側係止部に案内される、水位表示装置。
【請求項3】
前記固定部材は、取付部をさらに有し、
前記上側支持部および前記下側支持部は、前記取付部に固定されている、請求項2に記載の水位表示装置。