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特開2023-135857製造用原料及びポリウレタンフォームの製造方法
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  • 特開-製造用原料及びポリウレタンフォームの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135857
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】製造用原料及びポリウレタンフォームの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20230922BHJP
   C08G 18/63 20060101ALI20230922BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20230922BHJP
【FI】
C08G18/00 H
C08G18/63
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041159
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003425
【氏名又は名称】株式会社東洋クオリティワン
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】腰塚 絹香
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB07
4J034DQ01
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC12
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC71
4J034KA01
4J034KB02
4J034KB05
4J034KD03
4J034KD12
4J034KE02
4J034NA02
4J034NA03
4J034PA03
4J034QB01
4J034QB14
4J034QC01
(57)【要約】
【課題】耐荷重性能に優れるポリウレタンフォームを、不具合を生じさせることなく製造でき、かつ環境負荷が低いポリウレタンフォーム製造用原料及びポリウレタンフォームの製造方法を提供すること。
【解決手段】 実施形態によると、40%ILD硬さが100N以上であるポリウレタンフォームを製造するための製造用原料が提供される。製造用原料は、ポリオールと、イソシアネートと、第1発泡剤と、第2発泡剤とを含む。第1発泡剤は水からなる。第2発泡剤は、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン及びシス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンからなる群から選択される少なくとも1種を含む。製造用原料における第2発泡剤の含有量が、ポリオール100重量部に対して1重量部以上10重量部未満である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
40%ILD硬さが100N以上であるポリウレタンフォームを製造するための製造用原料であって、
前記製造用原料は、ポリオールと、イソシアネートと、第1発泡剤と、第2発泡剤とを含み、
前記第1発泡剤は水からなり、
前記第2発泡剤は、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン及びシス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンからなる群から選択される少なくとも1種を含み、
前記製造用原料における前記第2発泡剤の含有量が、前記ポリオール100重量部に対して1重量部以上10重量部未満である、製造用原料。
【請求項2】
前記ポリオールは、粒子状ポリマーを含有するポリマーポリオールを含む、請求項1に記載の製造用原料。
【請求項3】
難燃剤、衛生性改善剤及び天然物からなる群から選択される少なくとも1種からなる添加剤をさらに含む、請求項1または2に記載の製造用原料。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の製造用原料を発泡させる工程を含む、40%ILD硬さが100N以上であるポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造用原料及びポリウレタンフォームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低比重のポリウレタンフォームの原料には、主発泡剤としての水の他に、補助発泡剤が配合される。補助発泡剤の例には、ジクロロメタン(DCM)がある。しかし、ジクロロメタンは、環境への有害性が指摘されているほか、人体に対しては発がん性があるとされ、特定化学物質に指定されている。これらの理由から、ジクロロメタンの代用となる補助発泡剤が検討されている。
【0003】
ジクロロメタンの代用として検討されている補助発泡剤の一例としては、液化炭酸ガスが挙げられる。しかし、液化炭酸ガスと、その他のポリウレタンフォーム原料とが混合された反応原液は、混合後に吐出される際、急激に減圧されることによって突沸することがある。突沸した反応原液から製造されるポリウレタンフォーム中には、粗大な気泡が形成されるため、好ましくない。また、液化炭酸ガスは沸点が低いため、保存及び使用には、高圧ガスに対応した設備が必要となる。
【0004】
特許文献1には、突沸を防止できる液化炭酸ガス発泡装置が記載されている。液化炭酸ガス発泡装置には、液化炭酸ガスの圧力を徐々に減少させることによって突沸を防ぐため、メッシュ状の圧力徐変装置が設けられている。しかし、液化炭酸ガス発泡装置は、フィラーを含む配合のポリウレタンフォームの製造に用いると、圧力徐変装置にフィラーが詰まることで発泡異常を生じる問題がある。フィラーとは機能性付与などを目的に添加される粉体状のものであり、例えば、難燃剤、顔料、抗菌剤、ポリマーポリオール中のポリマー粒子などが挙げられる。
【0005】
他の補助発泡剤を用いた例としては、特許文献2に、液状ハロゲン化オレフィンをポリオール100質量部に対して10~30質量部配合したポリウレタンフォーム製造用組成物が記載されている。特許文献2の段落0033には、液状ハロゲン化オレフィンの含有量が、ポリオール100質量部に対して10質量部未満であると、補助発泡剤の効果が十分に発揮されず、発泡体の見かけ密度が高くなると共に、得られるポリウレタンフォームが硬くなることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1332857号公報
【特許文献2】国際公開2018/225651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、耐荷重性能に優れるポリウレタンフォームを、不具合を生じさせることなく製造でき、かつ環境負荷が低いポリウレタンフォーム製造用原料及びポリウレタンフォームの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面によると、40%ILD硬さが100N以上であるポリウレタンフォームを製造するための製造用原料が提供される。製造用原料は、ポリオールと、イソシアネートと、第1発泡剤と、第2発泡剤とを含む。第1発泡剤は水からなる。第2発泡剤は、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン及びシス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンからなる群から選択される少なくとも1種を含む。製造用原料における第2発泡剤の含有量が、ポリオール100重量部に対して1重量部以上10重量部未満である。
【0009】
本発明の他の側面によると、40%ILD硬さが100N以上であるポリウレタンフォームの製造方法が提供される。製造方法は、上記製造用原料を発泡させる工程を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、耐荷重性能に優れるポリウレタンフォームを、不具合を生じさせることなく製造でき、かつ環境負荷が低いポリウレタンフォーム製造用原料及びポリウレタンフォームの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る製造用原料からポリウレタンフォームを製造する製造設備の構成を示す説明図。
図2】比較例の製造用原料からポリウレタンフォームを製造する製造設備の構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態について適宜図面を参照して説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施の形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術とを参酌して、適宜設計変更することができる。
【0013】
ポリウレタンフォームの用途としては、例えばマットレスなどの耐荷重用途がある。ポリウレタンフォームの耐荷重性能が不足していると、マットレスとしての使用時に、使用者の体重による荷重を支えきれず、いわゆる底付き感を生じることがある。また、ポリウレタンフォームの製造用原料には、環境負荷が低く、製造中に不具合を生じにくいことが要求される。
【0014】
実施形態に係る製造用原料は、40%ILD硬さが100N以上であるポリウレタンフォームを製造するための製造用原料である。製造用原料は、ポリオールと、イソシアネートと、第1発泡剤と、第2発泡剤とを含む。第1発泡剤は水からなる。第2発泡剤は、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン及びシス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンからなる群から選択される少なくとも1種を含む。製造用原料における第2発泡剤の含有量が、ポリオール100重量部に対して1重量部以上10重量部未満である。
【0015】
製造用原料は、ポリオールとイソシアネートとを含有するため、これらが重合することで、ポリウレタンを生成できる。また、製造用原料は、水からなる第1発泡剤と、第2発泡剤とを含有する。そのため、ポリウレタンの重合反応の進行と同時に発泡し、ポリウレタンフォームを形成できる。
【0016】
製造用原料中の第1発泡剤の含有量を調整することで、ポリウレタンフォームの密度(見かけ密度)を調整できる。例えば、第1発泡剤を多く含有する製造用原料を発泡させると、低密度なポリウレタンフォームを製造できる。しかし、製造用原料中の第1発泡剤の含有量が過剰に多いと、反応熱が大きくなりすぎ、製造中にポリウレタンフォームが燃焼するおそれがある。そのため、第1発泡剤のみを用いてポリウレタンフォームを低密度化するのは限界がある。実施形態の製造用原料は、第1発泡剤に加えて第2発泡剤を含有するため、低密度なポリウレタンフォームの製造時にも、第1発泡剤の含有量を低く留めることができ、反応熱が大きくなりすぎることを回避できる。
【0017】
第2発泡剤は、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO1233zd(E))及びシス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO1233zd(Z))からなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0018】
トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン及びシス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンは、いずれも特定化学物質に指定されていない。そのため、これらの物質が配合された製造用原料の環境負荷を低くすることができる。
【0019】
また、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンは沸点が19℃、シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンは沸点が39℃である。そのため、実施形態に係る製造用原料は、突沸するおそれが低い。よって、ポリウレタンフォームの製造時に、圧力徐変装置を必要とせず、吐出口詰まりなどの不具合を生じにくい。
【0020】
製造用原料中の第2発泡剤の含有量は、ポリオール100重量部に対して1重量部以上10重量部未満であることが好ましい。第2発泡剤の含有量がポリオール100重量部に対して10重量部未満である製造用原料は、40%ILD硬さが100N以上であるポリウレタンフォームを得られやすい。
【0021】
40%ILD硬さが100N以上であるポリウレタンフォームは、耐荷重性能に優れる。40%ILD硬さは、JIS K 6400-2:2012に規定される測定方法に準拠して測定することができる。
【0022】
実施形態に係る製造用原料について、さらに説明する。
【0023】
実施形態に係る製造用原料は、ポリオールと、イソシアネートと、第1発泡剤と、第2発泡剤とを含む。製造用原料は、各原料が混合されずに独立に存在している形態でも良い。また、各原料が混合された原料混合物の形態であっても良い。製造用原料は、上記の原料に加えて、触媒、整泡剤、添加剤などを更に含んでいてもよい。
【0024】
各原料について、以下に説明する。
【0025】
(ポリオール)
ポリオールの例には、多官能ポリオール、及びポリマーポリオールが含まれる。使用するポリオールの種類は1種または2種以上にすることができる。
【0026】
ポリマーポリオールは、ポリオール中に、固体の粒子状ポリマーが分散したものである。粒子状ポリマーは、ポリウレタンフォームの硬さをさらに向上させることができる。ポリマーポリオールの含有量は、ポリオールの総重量100部に対し5重量部以上100重量部以下であることが好ましい。ポリマーポリオールに含有される粒子状ポリマーのメジアン径は、0.2μm以上500μm以下であることが好ましい。
【0027】
(イソシアネート)
イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネートを用いることが好ましい。製造用原料へのイソシアネートの配合量は、製造用原料全体のイソシアネートインデックス(NCOindex)が90以上120以下の値となる量とすることが好ましい。イソシアネートインデックスとは、水酸基とイソシアネート基の反応比率の指標を指し、以下の式を使って算出できる。
【数1】
【0028】
(第1発泡剤)
第1発泡剤は、水からなる。製造用原料中の第1発泡剤の含有量の好ましい範囲は、ポリオール100重量部に対して4重量部以上6重量部以下である。第1発泡剤の含有量がポリオール100重量部に対して4重量部以上であると、発泡効果が得られやすい。第1発泡剤の含有量がポリオール100重量部に対して6重量部以下であると、反応熱が大きくなりすぎない。
【0029】
(第2発泡剤)
第2発泡剤は、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO1233zd(E))及びシス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO1233zd(Z))からなる群から選択される少なくとも1種を含む。特に、シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンは、沸点が39℃と高いため、常温かつ常圧の環境にて保存及び使用をすることができる。よって、高圧ガス用の設備を必要とせず、低コストかつ簡便にポリウレタンフォームを製造できるため、より好ましい。
【0030】
(触媒)
製造用原料は、触媒をさらに含有しても良い。触媒の例としては、スズ触媒、アミン触媒などが挙げられる。使用する触媒の種類は、1種または2種以上にすることができる。
【0031】
(添加剤)
製造用原料は、添加剤をさらに含有しても良い。添加剤の例としては、酸化防止剤、フレームラミネート改質剤、難燃剤、衛生性改善剤、顔料及び天然物などが挙げられる。難燃剤の例としては、メラミン、尿素、ポリ塩化ビニル(PolyVinyl Chloride,PVC)、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、膨張性黒鉛及びリン系固体材料などが挙げられる。衛生性改善剤の例としては、抗菌剤、防ダニ剤、防カビ剤、抗ウイルス剤及び消臭剤などが挙げられる。天然物の例としては、緑茶パウダー、カテキン、炭、針葉粉体及びハーブなどが挙げられる。使用する添加剤の種類は、1種または2種以上にすることができる。
【0032】
製造用原料に添加剤を含有させると、添加剤の種類に応じた性質をポリウレタンフォームに付加できるため、好ましい。例えば、製造用原料に難燃剤を含有させると、ポリウレタンフォームの難燃性を向上できる。衛生性改善剤を含有させると、ポリウレタンフォームの衛生性を向上できる。
【0033】
製造用原料中の添加剤の好ましい含有量は、添加剤の種類によって異なる。例えば、抗菌剤の含有量はポリオール100重量部に対して0.1重量部以上2重量部以下であると好ましい。緑茶パウダーの含有量はポリオール100重量部に対して0.1重量部以上2重量部以下であると好ましい。
【0034】
添加剤は、フィラーの形態であっても良い。ここで、フィラーとは、機能性付与などを目的に添加される粉体状のものである。添加剤が含有するフィラーのメジアン径は、0.2μm以上500μm以下であることが好ましい。フィラーの形態の例として、メジアン径が5μmの粒子からなる抗菌剤、メジアン径が50μmの粒子からなる緑茶パウダー、メジアン径が300μmの粒子からなる針葉粉体などが挙げられる。
【0035】
(整泡剤)
整泡剤の種類は特に制限されないが、シリコーン系整泡剤であり得る。この場合、整泡力が高まることで反応によって発生する発泡ガスを保持しやすくなり、成形性を高める効果が得られる。
【0036】
製造用原料における整泡剤の含有量は、ポリオール100重量部に対して、例えば0.5重量部以上15重量部の範囲内にある。製造用原料における整泡剤の含有量が少なすぎると発生する発泡ガスを保持しにくく、成形性が悪化する傾向にある。製造用原料における整泡剤の含有量は、ポリオール100重量部に対して、好ましくは1.0重量部以上3.0重量部以下の範囲内にある。
【0037】
(窒素ガス)
製造用原料は、窒素ガスの存在下で発泡させても良い。窒素ガスの存在下で発泡させて製造したポリウレタンフォームと、窒素ガスを追加せずに製造したポリウレタンフォームとを比較すると、ポリウレタンフォームの密度が同じである場合、窒素ガスの存在下で製造用原料を発泡させて製造したポリウレタンフォームの方が、小さな気泡を多く含有するものとなる。よって、窒素ガスの存在下で原料を混合し、発泡させると、粗大な気泡が少なく、均質なポリウレタンフォームを製造することができる。
【0038】
(ポリウレタンフォームの製造方法)
ポリウレタンフォームの製造方法について説明する。ポリウレタンフォームは、例えば、各原料が収容されているタンクから、任意の比率で原料をミキサーへと供給し、混合攪拌後、ミキサーの吐出口から吐出して発泡させることにより製造できる。
【0039】
原料は、それぞれの原料をすべて別のタンクに分けて収容してもよい。もしくは、複数種類の原料をあらかじめ混合しておき、混合液の状態でタンクから供給してもよい。混合液を構成する原料は、2種以上にすることができる。例えば、ポリオールと、触媒及び整泡剤などの原料は、あらかじめ混合しておくことができる。また、固体状態の原料は、例えば、あらかじめポリオールなどの液体状態の原料に分散させておき、分散液の状態でタンクから供給してもよい。タンク及び配管の内部は、それぞれの原料の沸点及び融点などの性質に応じて、温度及び圧力を調整しても良い。
【0040】
上述の各原料を混合し、原料混合物をミキサーの吐出口から吐出する。吐出口には、異物除去用のメッシュを備えることが好ましい。吐出される方向には、コンベアが備えられていてもよい。さらに、コンベア上には工程シートが連続的に繰り出されてもよい。工程シートは、例えば、紙面剤またはプラスチックフィルムなどであり得る。このような構成であると、吐出された原料混合物がコンベア上で移動し、連続的に発泡を行うことができる。
【0041】
かくして、スラブ発泡ポリウレタンフォームを製造できる。
【0042】
実施形態の製造用原料を用いたポリウレタンフォームの製造方法について、以下に図1を参照しながら説明する。
【0043】
図1は、実施形態に係る製造用原料からポリウレタンフォームを製造する製造設備の一例を、模式的に示す。
【0044】
製造設備は、ポリオール供給部1と、イソシアネート供給部2と、第1助剤供給部3と、第2助剤供給部4と、窒素ガス供給部5と、第1配管11と、第2配管12と、第3配管14と、第1分岐配管13と、第2分岐配管15と、ミキサー6とを備える。
【0045】
ポリオール供給部1は、ミキサー6と、第1配管11を介して接続されている。第1配管11は、第1分岐配管13に分岐している。第1分岐配管13に、第1助剤供給部3が接続されている。イソシアネート供給部2は、ミキサー6と、第2配管12を介して接続されている。第2配管12は、第2分岐配管15に分岐している。第2分岐配管15に、窒素ガス供給部5が接続されている。第2助剤供給部4は、ミキサー6と、第3配管14を介して接続されている。
【0046】
ポリオール供給部1は、第1配管11にポリオールを供給できる構成になっている。ポリオール供給部1は、例えば、ポリオールを収容する1または2以上のタンクを備えることができる。ポリオールの例には、前に説明したものを挙げることができる。2以上の種類のポリオールをポリオール供給部1から供給する場合には、ポリオールの種類ごとにタンクを分けて収容しても良い。ポリマーポリオールを含有するポリオールは、20℃以上に保持するのが好ましい。
【0047】
また、ポリオール供給部1は、ポリオールに加えて、ポリオール以外の原料を収容することができる。ポリオール以外の原料の例には、添加剤の一例として挙げた抗菌剤及び天然素材などが含まれる。ポリオール供給部1は、例えば、ポリオール以外の原料をポリオール中に分散して調製した分散液を収容することができる。このような方法は、例えば、フィラーなどの粉末状の原料を製造用原料に配合する際に好適である。ポリオール中に分散するポリオール以外の原料は、1種または2種以上にすることができる。
【0048】
イソシアネート供給部2は、第2配管12にイソシアネートを供給できる構成になっている。例えば、イソシアネートを収容する1または2以上のタンクを備えることができる。
【0049】
第1助剤供給部3は、第1分岐配管13に第1助剤を供給できる構成になっている。第1助剤の例としては、添加剤、アミン触媒、整泡剤、第1発泡剤及び第2発泡剤を挙げることができる。第1助剤供給部3は、例えば、第1助剤を収容する1または2以上のタンクを備えることができる。2以上の種類の第1助剤を第1助剤供給部3から供給する場合には、第1助剤の種類ごとにタンクを分けて収容しても良い。沸点が低い第1助剤を収容するタンクの内部は、高圧とするか、または原料の沸点よりも低い温度とするのが好ましい。ポリオール供給部1に収容した種類の第1助剤は、第1助剤供給部3に収容しなくても良い。
【0050】
第2助剤供給部4は、第3配管14に第2助剤を供給できる構成になっている。第2助剤の例としては、触媒を挙げることができる。触媒の例には、前に説明したものを挙げることができる。第2助剤供給部4は、例えば、第2助剤を収容する1または2以上のタンクを備えることができる。2以上の種類の第2助剤を第2助剤供給部4から供給する場合には、第2助剤の種類ごとにタンクを分けて収容しても良い。第2助剤のうち、第1助剤供給部3に収容した種類の原料(例えば、アミン触媒)は、第2助剤供給部4に収容しなくても良い。
【0051】
窒素ガス供給部5は、第2分岐配管15に窒素ガスを供給できる構成になっている。窒素ガス供給部5は、例えば、気体状態の窒素ガスを収容することができる。
【0052】
製造設備は、図示しない制御部をさらに備える。制御部は、各原料の供給量、供給開始タイミング及び供給停止タイミングを制御できる構成になっている。
【0053】
上記構成を有する製造設備を用いた、ポリウレタンフォームの製造方法の流れを以下に説明する。
【0054】
ポリオール供給部1からポリオールを第1配管11中に供給し、第1配管11中を矢印に沿って送る。また、第1助剤供給部3から第1助剤を第1分岐配管13中に供給し、第1分岐配管13中を矢印に沿って送り、第1配管11中に供給する。ポリオールと、第1助剤とを、第1配管11中を矢印に沿ってさらに送る。よって、ポリオールと、第1助剤とは、混合された状態で第1配管11からミキサー6に供給される。
【0055】
さらに、イソシアネート供給部2からイソシアネートを第2配管12中に供給し、第2配管12中を矢印に沿って送る。また、窒素ガス供給部5から窒素ガスを第2分岐配管15中に供給し、第2分岐配管15中を矢印に沿って送り、第2配管12中に供給する。イソシアネートと、窒素ガスとを、第2配管12中を矢印に沿ってさらに送る。よって、イソシアネートと窒素ガスは、混合された状態で第2配管12からミキサー6に供給される。
【0056】
また、第2助剤供給部4に収容されている第2助剤を第3配管14中に供給し、第3配管14中を矢印に沿って送り、ミキサー6に供給する。
【0057】
ミキサー6は、第1配管11、第2配管12、第3配管14を通じて供給された各原料を混合攪拌し、原料混合物を吐出口7から吐出できる。吐出された原料混合物は、重合反応に伴って発泡し、ポリウレタンフォームを形成する。
【0058】
なお、第1配管11、第2配管12、第3配管14、第1分岐配管13及び第2分岐配管15は、高圧ガス対応の配管であっても良い。高圧ガス対応の配管であると、内部圧力が高くなったとしても製造設備の強度を保つことができる。そのため、沸点が低い原料を液体状態で配合することができる。
【実施例0059】
以下、実施例について説明する。
各実施例及び比較例で使用した原料は、以下の通りである。
ポリオール1:アクトコール T-3000S(三井化学SKCポリウレタン株式会社製)
ポリオール2:サンニックス FA-375(三洋化成工業株式会社製)
ポリマーポリオール:シャープフロー FS-7301(三洋化成工業株式会社製)
イソシアネート:コスモネート T-80(三井化学SKCポリウレタン株式会社製)
スズ触媒:KOSMOS T 9(エボニック・ジャパン株式会社製)
アミン触媒1:DABCO(登録商標) 33 LV(エボニック・ジャパン株式会社製)
アミン触媒2:DABCO(登録商標) NE300(エボニック・ジャパン株式会社製)
アミン触媒3:TOYOCAT-NP(東ソー株式会社製)
整泡剤1:Niax(登録商標) silicone L-598(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)
整泡剤2:TEGOSTAB B 8228(エボニック・ジャパン株式会社製)
整泡剤3:VORASURF(登録商標) SZ-1142 Fluid(ダウ・東レ株式会社製)
酸化防止剤:NIAX COLOR STABILIZER CS-17(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)
フレームラミネート改質剤:Niax(登録商標) flame lamination additive FLE-500LF(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)
難燃剤:CR-504L(大八化学工業株式会社製)
第1発泡剤:水(HO)
第2発泡剤1:HFO1233zd(Z)/(シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、UniPo株式会社製)
第2発泡剤2:HFO1233zd(E)/(トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、UniPo株式会社製)
第3発泡剤3:メチレンクロライド(ジクロロメタン、信越化学工業株式会社製)
第3発泡剤4:液化炭酸ガス(CO、エア・ウォーター炭酸株式会社製)
抗菌剤:バクテキラー BM-102TG(メジアン径:5μm、富士ケミカル株式会社製)
天然素材:緑茶パウダー(メジアン径:50μm、高田茶園株式会社製)
なお、ポリマーポリオール中に分散している粒子状ポリマーの粒子径のメジアンは0.6μmである。
【0060】
<ポリウレタンフォームの製造>
(実施例1,3,5,7,9,比較例11,13)
図1に示す製造設備を用いて、以下に説明する方法でポリウレタンフォームを製造した。
【0061】
図1の製造設備として、ポリオール供給部1及び第1助剤供給部3のそれぞれが複数のタンクを備えるものを用いた。また、窒素ガスは使用しなかった。
【0062】
抗菌剤をポリオール1に分散して、抗菌剤分散液を調製した。また、天然素材をポリオール1に分散して、天然素材分散液を調製した。
【0063】
ポリオール供給部1が備える複数のタンクに、ポリオール1と、ポリオール2と、ポリマーポリオールと、抗菌剤分散液と、天然素材分散液とを、それぞれ分けて収容した。ポリマーポリオールは、27℃に維持されるようにした。それぞれのタンクから原料が供給できるように、ポリオール供給部1と第1配管11とを接続した。
【0064】
イソシアネート供給部2が備えるタンクにイソシアネートを収容し、イソシアネート供給部2と第2配管12とを接続した。
【0065】
第1助剤供給部3が備える複数のタンクに、アミン触媒1、アミン触媒2、アミン触媒3、整泡剤1、整泡剤2、整泡剤3、酸化防止剤、フレームラミネート改質剤、難燃剤、第1発泡剤、第2発泡剤1を、それぞれ分けて収容した。それぞれのタンクから原料を供給できるように、第1助剤供給部3と第1分岐配管13とを接続した。
【0066】
第2助剤供給部4が備えるタンクに、スズ触媒を収容し、第2助剤供給部4と第3配管14とを接続した。
【0067】
次いで、製造設備を駆動させ、ポリオール供給部1、イソシアネート供給部2、第1助剤供給部3及び第2助剤供給部4のそれぞれから、ミキサー6に原料を供給した。各原料の配合量は、表1,2に示す値となるように、制御部にて制御した。なお、表1,2に示す数値は、ポリオール1、ポリオール2及びポリマーポリオールの配合量の合計を100重量部としたときの、各原料の配合量を重量部で示したものである。表中、「-」で示された原料は、配合されていないことを示す。
【0068】
供給された各原料をミキサー6で混合攪拌した。走行するコンベア(図示せず)上に、工程シートを連続的に繰り出し、工程シート上にミキサー6の吐出口7から原料混合物を吐出した。吐出口7には、異物除去用メッシュ(図示せず)を設置した。原料混合物の吐出と、コンベアの走行とを連続的に行うことにより、吐出される原料混合物を移動させながら発泡させた。以上の方法で、発泡体を連続成型した。発泡終了後、発泡体から工程シートを除去して、ポリウレタンフォームを得た。
【0069】
(実施例2,4,6,8,10,比較例12,14)
実施例1で用いた図1の製造設備から、下記の点を変更した製造設備を用いてポリウレタンフォームを製造した。
【0070】
第1助剤供給部3に、第2発泡剤1に代えて第2発泡剤2を収容した。これにより、第1分岐配管13に第2発泡剤2が供給されるようにした。また、第2発泡剤2は、温度が10℃以下に維持されるようにした。さらに、製造設備を高圧ガス対応のものとした。そのほかは、実施例1で用いた図1の製造設備と同様の構成とした。
【0071】
各原料の配合量は、表1,2に示す値となるように、制御部にて制御した。
【0072】
上記のこと以外は、実施例1と同様にしてポリウレタンフォームを得た。
【0073】
(比較例1,3,5,7,9)
実施例1で用いた図1の製造設備から、下記の点を変更した製造設備を用いてポリウレタンフォームを製造した。
【0074】
第1助剤供給部3に、第2発泡剤1に代えて第3発泡剤3を収容した。これにより、第1分岐配管13に第3発泡剤3が供給されるようにした。そのほかは、実施例1で用いた図1の製造設備と同様の構成とした。
【0075】
各原料の配合量は、表1,2に示す値となるように、制御部にて制御した。
【0076】
上記のこと以外は、実施例1と同様にしてポリウレタンフォームを得た。
【0077】
(比較例2,4,6,8,10)
図2に示す製造設備を用いて、以下に説明する方法で比較例2,4,6,8,10のポリウレタンフォームを製造した。
【0078】
図2は、第3発泡剤4(液化炭酸ガス)を含む製造用原料からポリウレタンフォームを製造する製造設備を模式的に示す。
【0079】
図2に示す製造設備は、図1を参照して説明した製造設備に加えて、液化炭酸ガス供給部8と、第1配管11から分岐した第3分岐配管18とをさらに備える。第3分岐配管18に、液化炭酸ガス供給部8が接続されている。液化炭酸ガス供給部8は、第3分岐配管18に液化炭酸ガスを供給することができる構成になっている。
【0080】
また、図2に示す製造設備は、ミキサー6に代えて、ミキサー9を備える。ミキサー9は、第1配管11、第2配管12及び第3配管14を通じて供給された各原料を混合攪拌し、原料混合物を吐出口10から吐出できる。ミキサー9は、図示しない液化炭酸ガス発泡装置をさらに備える。液化炭酸ガス発泡装置は、メッシュ状の圧力徐変装置を備えるため、原料混合物の圧力を徐々に減少させることができる。よって、吐出時に、原料混合物の圧力が急激に減少することによる突沸を防止できる。
【0081】
また、図2の製造設備は高圧ガス対応である。そのため、沸点が低い液化炭酸ガスを液体状態で配合することができる。
【0082】
図2の製造設備を駆動させ、液化炭酸ガスを液化炭酸ガス供給部8から供給し、第3分岐配管18及び第1配管11中を矢印に沿って送り、ミキサー9に供給した。その他の原料は、ポリオール供給部1、イソシアネート供給部2、第1助剤供給部3及び第2助剤供給部4のそれぞれから、ミキサー9に供給した。各原料の配合量は、表1,2に示す値となるように、制御部にて制御した。供給された各原料をミキサー9で混合攪拌した。走行するコンベア(図示せず)上に、工程シートを連続的に繰り出し、工程シート上に、ミキサー9の吐出口10から原料混合物を吐出した。吐出時には、圧力徐変装置により原料混合物の圧力を徐々に減少させた。原料混合物の吐出と、コンベアの走行とを連続的に行うことにより、吐出される原料混合物を移動させながら発泡させた。以上の方法で、発泡体を連続成型した。発泡終了後、発泡体から工程シートを除去して、ポリウレタンフォームを得た。
【0083】
<測定>
上記のようにして得られた各種のポリウレタンフォームについて、見かけ密度、40%ILD硬さ及び耐荷重性能について測定を行った。
【0084】
(見かけ密度の測定方法)
見かけ密度は、JIS K 7222:2005に規定される測定方法に準拠して測定した。
【0085】
(40%ILD硬さの測定方法)
40%ILD硬さは、JIS K 6400-2:2012に規定される測定方法に準拠して測定した。
【0086】
(耐荷重性能の測定方法)
ポリウレタンフォームの耐荷重性能は、底付き感の官能評価にて測定した。実施例及び比較例の製造用原料から製造したポリウレタンフォームを、縦×横×厚さが200cm×100cm×7cmの大きさにそれぞれ切り出し、各処方のサンプルとした。
【0087】
底付き感は、単層で床に敷いたサンプルの中心部の上で、被験者が寝姿勢を取ったときの底付き感について評価した。評価は、男女12人の被験者が、仰向け及び横向きの2種類の寝姿勢について行った。底付き感の評価基準は、被験者が床に当たっていると感じるときに「底付き感あり」として0点、床に当たっていると全く感じないときに「底付き感なし」として2点、「底付き感あり」と「底付き感なし」の中間であると感じるときに「底付き感ややあり」として1点、とした。評価は、他サンプルとの相対評価ではなく、絶対評価で実施した。
【0088】
各サンプルについて、寝姿勢が仰向けである時の底付き感の平均点と、寝姿勢が横向きである時の底付き感の平均点を、表3,4に示した。耐荷重性能は、仰向けの時の底付き感の平均点で評価した。平均点が1点以上であるとき○、平均点が0点より大きく1点未満であるとき△、平均点が0点であるとき×として、表3,4に示した。
【0089】
[結果]
以下、表1~4を参照して、実験結果を説明する。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
【表3】
【0093】
【表4】
【0094】
実施例1~10は、第2発泡剤として第2発泡剤1(シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン)又は第2発泡剤2(トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン)を、ポリオール100重量部に対して1重量部以上10重量部未満含有する製造用原料である。これらの製造用原料は、特定化学物質を配合しないため、環境負荷が小さい。また、発泡中に吐出口詰まりを生じなかった。実施例1~10の製造用原料から製造したポリウレタンフォームは、いずれも40%ILD硬さが100N以上であった。
【0095】
表3,4の底付き感の評価結果では、全体を通して、寝姿勢が横向きの場合に、仰向けと比較すると底付き感の平均点が低く、底付き感が大きい傾向にあった。しかし、40%ILD硬さが100N以上であるポリウレタンフォームは、いずれも底付き感の平均点が、仰向け、横向き共に比較例11~14よりも高かった。よって、実施例1~10の製造用原料から製造したポリウレタンフォームは、底付き感が小さく、耐荷重性能に優れるポリウレタンフォームであることが明らかとなった。
【0096】
これは、製造用原料中の第2発泡剤1(シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン)又は第2発泡剤2(トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン)の配合量が1重量部以上10重量部未満であることに起因すると考えられる。第2発泡剤1又は第2発泡剤2の配合量が10重量部未満であると、ポリウレタンフォームの見かけ密度が低くなり過ぎず、40%ILD硬さが100N以上に保たれる。よって、底付き感を生じにくく、耐荷重性能が良好となったと考えられる。
【0097】
したがって、実施例の製造用原料は、耐荷重性能に優れたポリウレタンフォームを、不具合を生じさせることなく製造でき、かつ環境負荷が低いポリウレタンフォーム製造用原料であることが明らかとなった。
【0098】
第3発泡剤3(ジクロロメタン)を配合した比較例1,3,5,7,9は、特定化学物質を含有するため、環境負荷が大きい製造用原料となった。また、第3発泡剤4(液化炭酸ガス)を配合し、図2の製造設備を用いて製造した比較例2,4,6,8,10は、製造中に図2の製造設備が備える圧力徐変装置が詰まる不具合を生じた。
【0099】
第2発泡剤1(シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン)又は第2発泡剤2(トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン)を配合した製造用原料であっても、第2発泡剤1又は第2発泡剤2の配合量が10重量部以上である比較例11~14の製造用原料から製造したポリウレタンフォームは、実施例の製造用原料から製造したポリウレタンフォームよりも、耐荷重性能が劣っていた。
【0100】
表4に示す通り、比較例11~14は、ポリウレタンフォームの40%ILD硬さが100N未満であった。底付き感の評価において、40%ILD硬さが100N未満であるポリウレタンフォームは、仰向け、横向き共に平均点が1を下回っていた。
【0101】
比較例11~14は、上記の通り製造用原料における第2発泡剤の含有量がポリオール100重量部に対して10重量部以上であった。そのため、ポリウレタンフォームの40%ILD硬さが不足し、被験者の体重による荷重を支えきれず、被験者が感じる底付き感が強くなったため、耐荷重性能の評価が低くなったと考えられる。
【0102】
実施例1,2,5~8、比較例1,5,7は、ポリマーポリオールを含む製造用原料であるが、発泡中に詰まりを生じなかった。これに対し、比較例2,6,8は吐出口詰まりを生じた。原因として、以下のようなことが考えられる。比較例2,6,8は、ポリマーポリオールに加えて第3発泡剤4(液化炭酸ガス)を含有し、図2の製造設備を用いて製造した。よって、図2の製造設備が備える圧力徐変装置に粒子状ポリマーが詰まったと考えられる。
【0103】
実施例3~6、9,10は、添加剤として抗菌剤又は天然素材を含む製造用原料であるが、発泡中に詰まりを生じなかった。特に、実施例5、6は、メジアン径が50μmと大きい天然素材を含む製造用原料であるにも関わらず、不具合なく発泡可能であった。これに対し、添加剤として抗菌剤又は天然素材を含み、かつ第3発泡剤4(液化炭酸ガス)を含有する比較例4,6,10は、圧力徐変装置に詰まりを生じた。
【0104】
実施例1,3,5,7,9と実施例2,4,6,8,10とを比較する。実施例2,4,6,8,10の製造時には、第2発泡剤2(トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン)の圧力及び温度の管理が必要であった。そのため、高圧ガス用の設備を要した。これに対し、実施例1,3,5,7,9は、沸点が39℃と高い第2発泡剤1(シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン)を含有するため、常温かつ常圧で製造できた。そのため、高圧ガス用の設備が不要であった。したがって、より簡便な設備で製造することができ、コスト面で有利であった。
【0105】
上記の通り、実施例1~10の製造用原料を発泡させる工程を含む製造方法は、耐荷重性能に優れるポリウレタンフォームを、不具合を生じさせることなく製造でき、かつ環境負荷が低い方法である。
【0106】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0107】
1…ポリオール供給部、2…イソシアネート供給部、3…第1助剤供給部、4…第2助剤供給部、5…窒素ガス供給部、6、9…ミキサー、7、10…吐出口、8…液化炭酸ガス供給部、11…第1配管、12…第2配管、13…第1分岐配管、14…第3配管、15…第2分岐配管、18…第3分岐配管。
図1
図2