(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135860
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】部材盗難防止用覆着具
(51)【国際特許分類】
E03B 7/07 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
E03B7/07 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041162
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000201593
【氏名又は名称】前澤給装工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073623
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 幸吉
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100098246
【弁理士】
【氏名又は名称】砂場 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】古徳 遼太郎
(57)【要約】
【課題】従来、給水配管に設置されている水道メータについて、盗難等の防止問題があり、水道メータ及びその周辺部材を部材の外側から包覆して盗難等を防止することが行われたが、被覆着部の態様に応じた適切な覆着部収容スペースの形成が問題であった。
【解決手段】中心部に覆着部収容スペース2a、2bを有し、両端部にそれぞれ着合ビス止め部21,21を形成した一対の着合片の、一方に、内壁面に覆着部収容スペースを仕切る仕切板の端縁と嵌合支持する複数の嵌合溝を形成し、収容スペースを仕切るように構成した。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部に覆着部収容スペースを有し、一端又は両端部にそれぞれ着合ビス止め部を形成した一対の覆着片の、一方又は両方に、内壁面に覆着部収容スペースを仕切る仕切板の端縁と嵌合支持する嵌合溝を形成した部材盗難防止用覆着具。
【請求項2】
内壁面に覆着部収容スペースを仕切る仕切板の端縁部を嵌合支持する嵌合溝を設定した支持側覆着片と、被覆着部を一端から導入する開口部と、導入した被覆着部の周縁を収容する空開部とから成る切欠き部を形成した仕切板により支持側覆着片の収容スペースをその態様に対応して仕切って被覆着部を嵌入した支持側覆着片に、前記収容スペースを仕切った仕切板の上部から被覆着部を挟着覆蓋する蓋側覆着片とから成る請求項1記載の部材盗難防止用覆着具。
【請求項3】
仕切板の端縁と嵌合支持する嵌合溝を、複数、等間隔に設定すると共に、両端部に形成する着合ビス止め部の段付き穴部と雌ねじ部を対称位置に形成するようにした請求項1又は請求項2記載の部材盗難防止用覆着具。
【請求項4】
中心部に覆着部収容スペースを有し、一端又は両端部をビス止めによって着合して被覆着部を挟着覆蓋する覆着具の覆着部収容スペースをその態様に対応して仕切る、被覆着部を一端から導入する開口部と、導入した被覆着部の周縁を収容支持する空開部とから成る切欠き部を形成した仕切板から構成される請求項1又は請求項2又は請求項3記載の部材盗難防止用覆着具。
【請求項5】
着合ビスが覆着片端部の着合ビス止め部の段付き穴部に埋没するようにした覆着片から成る請求項1又は請求項2又は請求項3又は請求項4記載の部材盗難防止用覆着具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道メータ及びその周辺部材を部材の外側から包覆して盗難等を防止すると共に、漏水発生等の緊急時に止水栓の操作を可能とした部材盗難防止用覆着具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水道メータには、地中の量水器ボックス内に設置されている水道メータの他に、仮設配管や、工事現場等で水道メータが量水器ボックス内に格納されておらず、露出した状態で設置されている水道メータもあり、これらが盗難に遭うと、これにより水道需要者が一時的に水道を使用できない状態が発生する。
【0003】
しかしながら、水道メータの検針や水道メータの取外し、取替え作業は必須のものであり、盗難されないように完全に固定してしまうと上記作業に支障を来たすという問題がある。
【0004】
そこで、配管に取付けられる部材処理について、例えば、特許文献1記載の発明のように、ねじが形成されたスピゴットを有する取付け部品が不正操作されないように、突出したラグを有する本体と、出口スピゴットのねじ上に取付けるナットと、ナットカバーブラケットが、前記ナットをカバーして、ねじからのナットの許可されない取り外しが防止されるようにナットカバーブラケットを取付けラグに接続する安全固定手段を用いるようにしたり、特許文献2記載の発明にように被締結部材とナットとの間に位置してボルトに外挿されるスペンサーリングと、ナットを包囲するようにスペンサーリングを挟持する抱持体の挟持部に南京錠を掛けロックするといった手段が用いられてきた。
【0005】
更に、特許文献3記載の発明は、配管軸挿通孔を中心に配管部材を覆包する部材包合スペースを囲む枠体を分割した覆着片に、これを重合して螺合締着するビス孔を有する着合片を設けて、重合、解離可能に構成する盗難防止用覆着具の提案も行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2003-516518号公報
【特許文献2】特開2017-25661号公報
【特許文献3】特開2020-122336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の発明はカバーを固定する固定ねじのねじ穴が本体側にあるため、後付けができず、部材に対する防護には対応できない。また、特許文献2記載の発明の場合には、南京錠のように錠前ごとに鍵が異なると、部材の交換時に鍵が多数必要になってしまい、多数の部材管理には対応することができない。
【0008】
特許文献3記載の発明では、水道メータ及び給水機具の盗難防止のため、給水配管施工後に後付けで取付けでき、漏水時等の止水栓の操作を妨げず、覆着片の嵌合部の凹凸を嵌入し、特殊形状の専用ビスで固定して部材盗難防止用としても対応できる。しかし、同発明では覆着片の大きさによって使用可能な締結部材(袋ナット等)が制限されてしまい、多種多様な外形に対応した品種を用意する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記した課題に対応しようとするものであり、水道メータ等との接合取外しに用いられる締結部材により給水配管に接続された水道メータ、止水栓等の締結部を、配管軸に沿って一対の覆着片によって挟着して覆うことにより、第三者の操作を不能として給水配管部材に対する盗難等の防止に対応する方法において、覆着片の内壁面に覆着部収容スペースを仕切る仕切板の端縁部と嵌合支持する嵌合溝を設けると共に、端縁がこの嵌合溝に嵌合し、被覆着部を一端から導入する開口部と、導入した被覆着部の周縁を収容する空開部から成る切欠き部を形成した仕切板を設けて、覆着片によって挟着した被覆着部を嵌着する仕切板によって覆着片内に収容させるようにしたものである。
【0010】
部材盗難防止用覆着具は中心部に覆着部収容スペースを有し、両端部に着合ビス止め部、内壁面に覆着部収容スペースを仕切る仕切板の端縁部と嵌合支持する複数の嵌合溝を形成した一対の覆着片から成り、被覆着部の態様に応じて適切な覆着部収容スペースを形成する嵌合溝が選択される。
【0011】
本発明は、上記のように嵌合溝の選択により仕切板の位置が選定可能となり、多様な被覆着部に対応できると共に、仕切板が覆着片と嵌合することで、覆着片同士のズレを防止できる。着合ビス止め部はビス頭部を段付き穴に収容できるようにすることで、他の工具によるビスの回動を防止できるようにした。
【0012】
覆着片は内壁面の嵌合溝を等間隔とし、段付き穴部と雌ねじ部を対称位置とすることにより、同一製品で一対の覆着片を構成でき、金型数を節約、生産性の向上を図ることができる。また、覆着片中央外周から段付き穴部(又は雌ねじ部)周辺を10~30°程度の傾斜により厚くすることで、着合ビス止め部の切断を困難にし、ビス頭部が段付き穴部に完全に入るので、プライヤー等の工具でビスを回すことを防止できる。更に、覆着具外形の最小部は配管に取付けた際、水道メータの下面よりも小さくすることで、ボックス下枡との干渉を防ぐことができる。
【0013】
仕切板は、覆着片の内周の溝部に嵌合する段部がある円盤状で、仕切板の中心を超えて締結部材に1方向から入れられる切欠きが設けられており、切欠き幅は、管部(覆着部の最小部)より広く、締結部材(袋ナットの対面の幅)より狭い仕切板とすることで締結部を覆着し、切欠き幅を変えることで様々な管部・締結部材に対応することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、上記のように構成したので、嵌合溝の選択により仕切板の位置が選定可能となり、多様な被覆着部に対応できると共に、仕切板が覆着片と嵌合することで、覆着片同士のズレを防止できる。着合ビス止め部はビス頭部を段付き穴に収容できるようにすることで、他の工具によるビスの回動を防止でき、部材の盗難を防止することができた。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例を示すもので、(1)は、本発明による覆着具による覆着対象となる、水道メータ等との接合取外しに用いられる締結部材により給水配管に接続された水道メータ、止水栓等の締結部材の一例を示す覆着部の正面図、(2)は、覆着部の下部に支持側覆着片を着合し、覆着部収容スペースを仕切る仕切板を設定した状態の覆着対象部の正面図、(3)は、上記覆着部を本発明による覆着片により挟着して覆った状態を示す全体正面図である。
【
図2】同じく、本発明による部材盗難防止用覆着具の構造を示す
図3のA-A線による覆着具の縦断断面図である。
【
図3】同じく、本発明による部材盗難防止用覆着具の蓋側覆着片の平面図である。
【
図4】同じく、本発明による部材盗難防止用覆着具の構造を示すもので、(1)は覆着片着合状態における右側面図、(2)は覆着片中央外周から段付き穴部、又は雌ねじ部の周辺を10~30°程度の傾斜により厚く構成した状態を示す覆着片端部着合部の要部縦断面図である。
【
図5】同じく、本発明による部材盗難防止用覆着具の支持側覆着片の内壁面の状態を示す
図4のCーC線による覆着具の横断平面図である。
【
図6】同じく、本発明による部材盗難防止用覆着具の仕切板の構造を示すもので、(1)は正面図、(2)は右側面図である。
【
図7】同じく、(1)は、本発明による部材盗難防止用覆着具の覆着片端部の着合部を螺着する専用ビスの一例を示す左側面図である。(2)は、本発明による部材盗難防止用覆着具の覆着片端部の着合部を螺着する専用ビスの一例を示す全体側面図である。
【
図8】変形例で、(1)は着合ビス止め部を片側とした場合の平面図である。(2)は
図8(1)のD-D線による部材盗難防止用覆着具の構造を示す縦断断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明すると、1は部材盗難防止用覆着具で、樹脂又は金属製の蓋側覆着片11と支持側覆着片12の一対から成り、水道メータ等との接合取外しに用いられる締結部材Rにより管部Pと接続された水道メータM、止水栓S等の締結部を蓋側覆着片11、支持側覆着片12によって挟着して締結部を覆うことにより、第三者の操作を不能として給水配管部材に対する盗難等を防止するものである。
【0017】
覆着片11、12には、それぞれ中心部に覆着部収容スペース2a、2bが形成され、両端部に着合ビス止め部21、21が形成されている。
また、蓋側覆着片11の内壁面には覆着部収容スペース2を仕切る樹脂又は金属製の仕切板3の端縁の段部31を嵌合支持する複数の嵌合溝4,4・・が形成され、被覆着部の態様に応じて適切な覆着部収容スペース2を形成する嵌合溝4が選択される。
【0018】
嵌合溝の選択により仕切板3の位置が選定可能となり、多様な被覆着部に対応できると共に、仕切板3が覆着片11、12と嵌合することで、覆着片同士のズレを防止できる。覆着片11は内壁面の嵌合溝4,4・・を等間隔とし、着合ビス止め部21の段付き穴部22と雌ねじ部23を対称位置とすることにより、蓋側覆着片11と支持側覆着片12を同一製品で一対の覆着片に構成でき、金型数を節約、生産性の向上を図ることができる。
【0019】
着合ビス止め部21はビス頭部を段付き穴部22に収容できるようにすることで、他の工具によるビスの回動を防止できるようにする。仕切板3は、覆着片11の内周の溝4に嵌合する段部31がある円盤状で、仕切板の中心を超える締結部材に1方向から入れられる切欠き32が設けられており、切欠き幅は、管部P(覆着部の最小部)より広く、締結部材R(袋ナットの対面の幅)より狭い仕切板とすることで締結部を覆着し、切欠き幅を変えることで様々な管部・締結部材に対応することができる。
【0020】
両側若しくは片側の着合ビス止め部21を螺締着合する専用ビス5は、
図7に示すように、頭頂部に盛上り51を形成し、頭側面部52を歯車状の形状として、着合ビス止め部21の段付き穴部22内に埋没できるように構成する。その着脱はビス頭部の形状に対応させた歯車状の窪みを設けた段付き穴部22に対応する特殊開錠具とすることにより第三者による操作を不能としているものである。なお、専用ビス5は両端部に使用しても良い。
【0021】
以上により、本発明では覆着片内に設定した複数の嵌合溝と、被覆着部の形態に対応して嵌合溝中の適切な嵌合溝を選択して、これに仕切板の端縁部を嵌合支持させて覆着部収容スペースを適切に仕切る仕切板の活用により多様な被覆着部を、それぞれに対応した適切な収容スペースによって包覆保護することができたものである。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本願発明に係る部材盗難防止用覆着具は、上記のように、締結部材の外側から締結部を包覆して第三者が安易に締結部に触れることが出来ないようにした覆着具において、覆着片内に設定した複数の嵌合溝とこれに端縁部を嵌合支持させて覆着部収容スペースを適切に仕切る仕切板とによって多様な被覆着部を、それぞれに対応した適切な収容スペースによって包覆保護するようにしたもので、埋設配管等、無防備な配管において、盗水や部材盗難等を大幅に防止でき、水道機器産業において利用することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 部材盗難防止用覆着具
11 蓋側覆着片
12 支持側覆着片
2 覆着部収容スペース
2a 蓋側覆着片の覆着部収容スペース
2b 支持側覆着片の覆着部収容スペース
21 着合ビス止め部
22 ビス止め部の段付き穴部
23 ビス止め部の雌ねじ部
3 仕切板
31 仕切板端縁の段部
32 仕切板の切欠き
4 嵌合溝
5 覆着片着合専用ビス
51 専用ビス頭頂部の盛上り
52 専用ビス頭側面部歯車形状
M 水道メータ
P 管部
R 締結部材
S 止水栓