(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135862
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】通信制御装置および通信方法
(51)【国際特許分類】
G06F 13/00 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
G06F13/00
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041164
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】笹倉 克友
(72)【発明者】
【氏名】小村 峻平
(57)【要約】
【課題】通信での誤り検出機能が搭載されないシステムにおいて、通信での誤りに簡易かつ可能な限り早期に対処する。
【解決手段】通信制御装置は、通信装置と制御部を備える。通信装置は、受信したデータを受信バッファに保存し、受信バッファから転送先バッファに受信したデータを転送し、転送したデータを受信バッファから消去し、異常を検知すると、転送を中断する。制御部は、通信装置にデータまたは指令を送信する。そして、制御部は、通信装置にデータを送信した後、受信バッファにデータが保存されているかを確認し、データの少なくとも一部が保存されている場合には、通信装置にソフトウェアによるリセットを実行させるための指令を送信する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信したデータを受信バッファに保存し、前記受信バッファから転送先バッファに受信した前記データを転送し、転送した前記データを前記受信バッファから消去し、
異常を検知すると、前記転送を中断する
通信装置と、
前記通信装置に前記データまたは指令を送信する制御部と
を備える通信制御装置であって、
前記制御部は、前記通信装置に前記データを送信した後、前記送信されたデータが前記受信バッファに保存されているかを確認し、前記送信されたデータの少なくとも一部が前記受信バッファに保存されている場合には、前記通信装置にソフトウェアによるリセットを実行させるための指令を送信する通信制御装置。
【請求項2】
前記通信装置は、前記通信装置のハードウェアリセットにより前記転送を中断し、前記制御部は、前記ハードウェアリセットの実行前に前記リセットを実行させるための指令を送信する請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記データを送信する前に前記通信装置へのデータの書き込み可能サイズを前記通信装置から取得し、さらに前記データを送信した後に前記通信装置へのデータの書き込み可能サイズを前記通信装置から取得し、前記データを送信する前後において前記通信装置へのデータの書き込み可能サイズが一致しない場合に前記送信されたデータの少なくとも一部が前記受信バッファに保存されていると判断する請求項1または2に記載の通信制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記データを送信した後に前記通信装置へのデータの書き込み可能サイズを前記通信装置から取得し、前記取得した書き込み可能サイズが前記通信装置に書き込み可能な最大値でない場合に前記送信されたデータの少なくとも一部が前記受信バッファに保存されていると判断する請求項1または2に記載の通信制御装置。
【請求項5】
受信したデータを受信バッファに保存し、前記受信バッファから転送先バッファに受信した前記データを転送し、転送した前記データを前記受信バッファから消去し、
異常を検知すると、前記転送を中断する
通信装置と、
前記通信装置に前記データまたは指令を送信する制御部との間の通信方法であって、
前記制御部は、前記通信装置に前記データを送信した後、前記送信されたデータが前記受信バッファに保存されているかを確認し、前記送信されたデータの少なくとも一部が前記受信バッファに保存されている場合には前記通信装置にソフトウェアによるリセットを実行させるための指令を送信する通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信制御装置および通信方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器等のシステムには、様々な集積回路(Integrated Circuit(IC))が搭載され、複数のICが相互に通信を実行し、システムの機能を実現する。このようなIC間の通信では、システムの仕様または通信環境により、通信誤りを検出する仕組みが搭載されない場合がある。例えば、IC間で簡易にデータ転送を実行することが優先される場合、または、元々通信誤りの発生が想定されにくい場合等があるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、通信誤りを検出する仕組みが搭載されないと、システムで実際に通信誤りが発生したときの対応が困難となる場合がある。開示の実施形態の側面は、通信誤りを検出する機能が搭載されないシステムにおいて、通信誤りに簡易かつ可能な限り早期に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
開示の実施の形態の1つの側面は、通信制御装置によって例示される。本通信制御装置は、通信装置と、この通信装置と通信する制御部を備える。通信装置は、受信したデータを受信バッファに保存し、前記受信バッファから転送先バッファに受信した前記データを転送し、転送した前記データを前記受信バッファから消去し、異常を検知すると、前記転送を中断する。制御部は、通信装置に前記データまたは指令を送信する。そして、制御部は、通信装置にデータを送信した後、受信バッファに前記データが保存されているかを確認し、前記データの少なくとも一部が保存されている場合には、通信装置にソフトウェアによるリセットを実行させるための指令を送信する。
【発明の効果】
【0006】
本通信制御装置は、通信誤りに簡易かつ早期に対処できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る通信制御装置の構成を例示する図である。
【
図2】
図2は、通信エラーがない正常動作時のデータ送信シーケンスを例示する図である。
【
図3】
図3は、比較例における通信エラーによる異常動作時のデータ送信シーケンスを例示する図である。
【
図4】
図4は、本実施の形態における通信制御装置が通信エラーの発生を検知し、検知された通信エラーに対処するデータ送信シーケンスを例示する図である。
【
図5】
図5は、本実施の形態におけるホストマイコンの処理を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、一実施の形態に係る通信制御装置および通信方法を説明する。
本通信制御装置は、複数のIC、例えば、マイクロコンピュータまたはマイクロコントローラ(以下、両者をいずれも単に「マイコン」という)、画像処理IC、または、外部との通信のためのIC等を有する。また、本実施の形態では、これらのICのうち、少なくとも一部のICは、相互の通信で誤りを検出する仕組みを有していない。
【0009】
図1は、本実施の形態に係る通信制御装置1の構成を例示する。なお、
図1では、通信制御装置1と接続可能な相手装置2も記載されている。通信制御装置1は、例えば、Electric Vehicle(EV)に搭載される充電システムである。また、相手装置2は、例えば、充電スタンドの充電設備である。したがって、通信制御装置1は、ホストマイコン11とともに、充電スタンド等と外部通信を実行する通信IC 12を有している。一方、相手装置2は、車載の充電システムである通信制御装置1と通信を実行する通信IC 22を有している。通信IC 12、22等は、EVと充電スタンドとを接続し外部通信を行うICである。通信IC 12、22等は、内部に電力線から絶縁されたCentral Processing Unit(CPU)と、メモリと、入出力インターフェース、通信インターフェース等を
有する。
【0010】
ホストマイコン11は、CPUと、メモリと、入出力インターフェース等を有する。ホストマイコン11は、メモリに実行可能に展開されたコンピュータプログラムを実行し、通信制御装置1として動作する。ホストマイコン11は、通信IC 12を介して、相手装置2と通信をし、充電設備の電力でEVに搭載されたバッテリを充電する。
【0011】
本実施の形態では、ホストマイコン11は、Serial Peripheral Interface(SPI)
通信により通信IC 12と接続され、通信IC 12を制御する。なお、ホストマイコン11と通信IC 12の接続がSPI通信による接続に限定される訳ではない。例えば、ホストマイコン11と通信IC 12は、Inter-Integrated Circuit(I2C)その
他のインターフェースで接続されてもよい。
【0012】
本実施の形態の通信IC 12のCPUは、メモリに実行可能に展開されたファームウェア、ソフトウェア等のコンピュータプログラムによりホストマイコン11との間でSPI通信を実行する。すなわち、通信IC 12は、ホストマイコン11から、SPI通信にしたがったコマンドまたはデータを受信し、ホストマイコン11からのコマンドにしたがって、ファームウェア、ソフトウェア等のコンピュータプログラムによる処理を実行する。ただし、本実施の形態の通信IC 12は、SPI通信の実行時にチェックサム、Cyclic Redundancy Check(CRC)といった通信データの確からしさを判断する仕組みを
有していない。このため、通信IC 12は、ホストマイコン11との通信時のビットずれや通信フレームが分断されるといった通信エラー等による異常判断ができない。通信IC 12は、SPI通信時の受信バッファとなるSPI通信バッファと、外部通信実行時の転送先バッファを有している。通信IC 12は、ホストマイコン11からのデータを一旦SPI通信バッファで受信し、転送先バッファに移動する。このとき、通信IC 12は、転送先バッファに移動されたデータをSPI通信バッファから消去する。そして、通信IC 12は、転送先バッファのデータを外部通信により、相手装置2に送信する。
【0013】
また、通信IC 12は、通信エラー等に起因する異常状態が継続すると、タイマのタイムアウト等により自身でSPI通信受信待ち処理での滞留を検知し、ハードリセットを行うようになっている。なお、異常状態では、通信IC 12は、SPI通信バッファから転送先バッファへのデータ転送および転送先バッファからの外部通信による送信処理等を続行できないSPI通信受信待ち処理での滞留状態となる。ハードリセットによって、メモリに実行可能に展開されたファームウェア、ソフトウェア等のコンピュータプログラムは、一旦クリアされる。したがって、ハードリセット後、通信IC 12は、メモリ上にコンピュータプログラムを実行可能な形式で再度展開する。このため、例えば、充電ス
タンドでの充電動作中に、通信エラー等に起因する異常が発生すると、ユーザが待機可能な許容時間を超えて通信制御装置1を含む充電システムが停止するといった事態に繋がる可能性がある。
【0014】
<比較例>
まず、
図2および
図3を参照して、比較例に係る通信制御装置501の処理を例示する。
図2は、通信エラーがない正常動作時のデータ送信シーケンスを例示する図である。通信制御装置501は、ホストマイコン511と、通信IC 12を有している。
【0015】
この処理では、ホストマイコン511は、通信IC 12のSPI通信バッファの空き容量をチェックするため、書き込み可能サイズの確認を実施する(S1)。この処理では、ホストマイコン511は、通信IC 12に、SPI通信バッファの空き容量である書き込み可能サイズを確認するための確認コマンドを送信し、その応答としてSPI通信バッファの空き容量を取得する。
【0016】
次に、ホストマイコン511は、今回の書き込みデータサイズが通信IC 12のSPI通信バッファの空き容量(書き込み可能サイズ)よりも小さいか否かをチェックする。そして、今回の書き込みデータサイズが通信IC 12のSPI通信バッファの空き容量(書き込み可能サイズ)より小さいときに、ホストマイコン511は、書き込みデータサイズを通信IC 12に指定する(S2)。そして、ホストマイコン511は、通信IC
12にデータ書き込みを行う(S3)。ホストマイコン511によるデータ書き込みが正常な場合、通信IC 12は、SPI通信バッファに書き込まれたデータを外部通信のための転送先バッファに移動し、移動したデータをSPI通信バッファから消去する。すなわち、通信IC 12はSPI通信バッファをクリアし、転送先バッファのデータを外部通信により相手装置2にデータ転送する(S4)。その後、通信制御装置501は製品動作を継続する。例えば、充電スタンドにおいて、EVへの充電が実行される。
【0017】
以上のように、SPI通信バッファは通信IC 12におけるSPI通信での受信バッファということができる。また、S4の処理は、受信したデータを受信バッファ(SPI通信バッファ)に保存し、受信バッファ(SPI通信バッファ)から転送先バッファに受信したデータを転送し、転送したデータを受信バッファ(SPI通信バッファ)から消去するものである。すなわち、S4の処理は、データ処理機能の一例ということができる。
【0018】
図3は、比較例における通信エラーによる異常動作時のデータ送信シーケンスを例示する図である。
図3において、S1乃至S3の処理は、
図2と同様である。ただし、
図3においては、ホストマイコン511による通信IC 12へのデータ転送としてのデータ書き込みにおいて異常が発生する。例えば、異常は、SPI通信ライン上にノイズ等が入り、データが通信IC 12に正しく届かない場合である。すると、通信IC 12は、設定された書き込みデータサイズよりも送信されたデータ数が少ないと判断し、設定された書き込みデータサイズになるまで待つ。ただし、所定の時間が経過しても、設定された書き込みデータサイズよりも送信されたデータ数が少ない場合には、通信IC 12は異常を検知する。例えば、所定のタイマがタイムアウトすることで、通信IC 12は異常を検知してもよい。そして、通信IC 12は、ハードリセットを行う(S5)。S5の処理により、SPI通信バッファから転送先バッファへの転送が中断される。したがって、S5の処理は、異常を検知すると、転送を中断する異常処理機能の一例ということができる。また、通信IC 12は、上記データ処理機能と異常処理機能を有する通信装置の一例ということができる。
【0019】
ハードリセットした通信IC 12は起動し直し、起動通知をホストマイコン511に通知する(S6)。ただし、ハードリセットにより、通信IC 12内のメモリ上のファ
ームウェア等のプログラムはクリアされ、通信IC 12が再起動されることになる。また、通信IC 12が再起動されることにより、製品動作は比較的長時間停止することになる。その結果、通信制御装置501の処理、例えば、充電処理が所定時間以上実行できない状況となる。
【0020】
<実施の形態>
以下、
図4および
図5を参照して、本実施の形態に係る通信制御装置1の処理を例示する。
図4は、本実施の形態の通信制御装置1が通信エラーの発生を検知し、検知された通信エラーに対処するデータ送信シーケンスを例示する図である。
図4において、S1乃至S3の処理は、
図2および
図3と同様である。ホストマイコン11は、通信装置である通信IC 12にデータまたは指令を送信する制御部の一例ということができる。
【0021】
本実施の形態においても、ホストマイコン11による通信IC 12へのデータ書き込み(S3)において異常が発生する場合を想定する。例えば、通信IC 12のデータ受信処理において、タイムアウト等により異常が検知され、処理が中断する。ただし、
図4の処理においては、ホストマイコン11は、S3のデータ書き込みの後、通信IC 12のSPI通信バッファの空き容量をチェックするため、書き込み可能サイズ確認を再度実施する(S11)。この処理では、ホストマイコン11は、通信IC 12に、SPI通信バッファの空き容量である書き込み可能サイズを確認するための確認コマンドを送信し、その応答としてSPI通信バッファの空き容量を取得する。S3のデータ書き込みが正常に実施された場合には、ホストマイコン11と通信IC 12とのコマンド授受時間よりも遙かに短い時間のオーダで、SPI通信バッファに書き込まれたデータが転送先バッファに移動される。そして、SPI通信バッファに書き込まれたデータがクリアされる。したがって、ホストマイコン11は、SPI通信バッファの空き容量、すなわち、書き込み可能サイズを確認することで、S3のデータ書き込みが正常であったか否かを判定できる。すなわち、ホストマイコン11は、制御部として、通信装置としての通信IC 12にデータを送信した後、書き込み可能サイズを確認することで、受信バッファであるSPI通信バッファにデータが保存されているかを確認する。
【0022】
そして、ホストマイコン11は、書き込み可能サイズが、S3によるデータ書き込み前の値に戻ったか否かを判定する。すなわち、ホストマイコン11は、S3での通信IC 12へのデータ書き込み前に、S1で書き込み可能サイズの確認を実施済みである。そして、ホストマイコン11は、S3での通信IC 12へのデータ書き込み後に、S11で再度、書き込み可能サイズの確認を実施する。そして、ホストマイコン11は、データ送信としてのデータ書き込みの前後において通信IC 12へのデータの書き込み可能サイズが一致しない場合に、書き込み可能サイズがデータ書き込み前の値に戻っていないと判断する。この場合には、ホストマイコン11は、S3によるデータ書き込みで通信IC 12に送信されたデータの少なくとも一部がSPI通信バッファに保存されていることを認識する。すなわち、SPI通信バッファから転送先バッファへの移動処理が途中で止まっていることになる。
【0023】
そして、ホストマイコン11は、書き込み可能サイズがS3によるデータ書き込み前の値に戻っていないことを検知すると(S12)、ソフトリセットを実行するリセットコマンドを通信IC 12に送信する(S13)。リセットコマンドは、リセットを実行させるための指令の一例ということができる。すなわち、ホストマイコン11は、S3のデータ書き込みで送信したデータの少なくとも一部がSPI通信バッファに保存されている場合には、通信IC 12にリセットコマンドにしたがってソフトウェアによるリセットを実行させる。なお、本実施の形態では、書き込み可能サイズが、S3によるデータ書き込み前の値に戻った場合に、SPI通信バッファが空になったという。これは、データ書き込みによってSPI通信バッファに書き込まれたデータが転送先バッファに移動され、S
PI通信バッファに書き込まれたデータがSPI通信バッファからクリアされることを意味する。S11からS13までの処理は、書き込み可能サイズ確認(S11)とソフトリセットを実行するコマンドの送信(S13)の時間程度で実行できる。したがって、ホストマイコン11は、通信IC 12がタイムアウト等により異常を検知し、ハードリセットを行う前に、リセットコマンドを通信IC 12に送信し、ソフトウェアによるリセットを実行させることができる。
【0024】
通信IC 12は、コマンドを受けて、ソフトリセットを実行する。通信IC 12は、ソフトリセットにより、異常が検知されたデータの受信処理を停止し、当該処理で受信したデータをSPI通信バッファから消去する。これによって、通信IC 12は、S3のデータ書き込みを受ける前の状態に復帰する。通信IC 12によるソフトウェアリセット完了後、ホストマイコン11と通信IC 12は通常状態に復帰する。そこで、ホストマイコン11は、異常が検知されたS3のデータ書き込みを再度実行する。
【0025】
図5は、本実施の形態におけるホストマイコン11の処理を例示するフローチャートである。この処理では、ホストマイコン11は、通信IC 12にコマンドを送信し、書き込み可能サイズを確認する(P1)。そして、ホストマイコン11は、通信IC 12に、確認できた書き込み可能サイズ以内のサイズで書き込みバッファサイズ(書き込みデータサイズともいう)を指定する(P2)。そして、ホストマイコン11は、通信IC 12にデータ書き込みを実行する(P3)。
【0026】
そして、ホストマイコン11は、通信IC 12にコマンドを送信し、再度、書き込み可能サイズを再確認する(P4)。そして、ホストマイコン11は、通信IC12のSPI通信バッファが全領域利用可能か否か、換言すれば通信IC12のSPI通信バッファが空か否か、すなわち、書き込み可能サイズがP3によるデータ書き込み前の値に戻った否かを判定する(P5)。書き込み可能サイズがP3によるデータ書き込み前の値に戻った場合、ホストマイコン11は、データ書き込み処理を終了する。一方、P5の判定で、書き込み可能サイズがP3によるデータ書き込み前の値に戻ってない場合、ホストマイコン11は、ソフトリセットを実行するコマンドを通信IC 12に送信する(P6)。そして、ホストマイコン11は、処理を終了する。通信IC 12でのソフトリセット完了後、ホストマイコン11は、データ書き込み処理を再度実行する。
【0027】
<実施の形態の効果>
以上述べたように、本実施の形態の通信制御装置1では、ホストマイコン11が通信IC 12へのデータ書き込みの後、SPI通信バッファが空か否か、すなわち、書き込み可能サイズが
図5のP3によるデータ書き込み前の値に戻った否かを判定する。この判定により、ホストマイコン11は、通信IC 12において、正常にデータ受信がされ、SPI通信バッファに書き込まれたデータが転送先バッファに移動されたか否かを判定できる。そして、SPI通信バッファに書き込まれたデータが転送先バッファに移動されていない場合には、ホストマイコン11は、通信IC 12へのデータ書き込みに異常があったと判定し、通信IC 12にソフトリセットを実行させるコマンドを送信する。ここで、SPI通信バッファに書き込まれたデータが転送先バッファに移動されていない場合とは、書き込まれたデータの少なくとも一部がSPI通信バッファに保存されている場合である。その結果、通信IC 12において、異常の発生が検知され、ハードリセットが実行されることを回避できる。ハードリセットにより通信IC 12内のメモリ上のファームウェア、ソフトウェア等のコンピュータプログラムがクリアされる。その結果、通信制御装置1は復旧に時間を要し、ユーザに提供する様々な処理が停止する。この処理の停止は、ユーザにとって可能な待ち時間の限度を超える場合もあり得る。例えば、ユーザはこの処理の停止により、通信制御装置1によるバッテリの充電が困難と感じることもあり得る。
【0028】
しかしながら、本実施の形態では、ホストマイコン11がデータ書き込みに異常があったことを検知し、通信IC 12にソフトリセットを実行させる。このため、例えば、1つのデータ書き込みの処理だけをリセットし、再実行することで、通信制御装置1は正常状態に復帰し、短時間で正常状態に復帰できる可能性を高めることができる。また、通信制御装置1は一度失敗したデータ書き込みを成功させる可能性を高めることできる。また、通信制御装置1は極力本来の機能を維持することができる。すなわち、通信制御装置1は、通信誤りを検出する仕組みが搭載されないものであっても、通信誤りに簡易に対処し、システムの機能を可能な限り早期に回復し、または、極力維持できる。したがって、通信誤りの発生に伴うユーザの負担を軽減することができる。
【0029】
また、本実施の形態では、ホストマイコン11は、通信IC 12が異常を検知し、ハードリセットを実行前にソフトウェアリセットを実行させるリセットコマンドを通信IC
12に送信する。したがって、ホストマイコン11は、通信IC 12において、異常の発生が検知され、ハードリセットが実行されることを回避できる。
【0030】
また、本実施形態では、ホストマイコン11から通信IC 12へのデータ書き込み、すなわちデータ送信の前後において通信IC 12へのデータの書き込み可能サイズが取得される。そして、データ書き込み、すなわちデータ送信の前後において書き込み可能サイズが一致しない場合に、ホストマイコン11書き込まれたデータの少なくとも一部が保存されていること、すなわち、データ書き込みで異常があったと判断する。したがって、データ書き込み、すなわちデータ送信の前後において、異常の発生が確実に把握されやすくなる。
【0031】
<変形例>
上記実施の形態では、EVに搭載される充電システムを一例として通信制御装置1が例示された。しかし、本実施の形態の通信制御装置1がEVに搭載される充電システムに限定される訳ではない。通信制御装置1の構成は、EV以外の様々な設備、電子機器等に利用可能である。本実施の形態の通信制御装置1の構成により、システム内、例えば、1つの基板上の複数IC間の通信で誤り検出の仕組みがない場合でも、システムは、簡易に通信誤りを検出し、ハードリセットになってしまう事態を回避しやすくなる。その結果、システム本来の機能を早期に回復でき、または、可能な限り維持できる。
【0032】
上記実施の形態では、ホストマイコン11は、書き込み可能サイズが、S3によるデータ書き込み前の値に戻ったか否かを判定する。すなわち、ホストマイコン11は、データ書き込みの前後において通信IC 12へのデータの書き込み可能サイズが一致しない場合に、書き込み可能サイズがデータ書き込み前の値に戻っていないと判断する。そして、ホストマイコン11は、ソフトリセットを実行するコマンドを通信IC 12に送信する。しかし、ソフトリセットを実行するコマンドの送信の要否の判断は、このような処理に限定される訳ではない。例えば、ホストマイコン11は、S3のデータ書き込み後、S11で取得される書き込み可能サイズが最大値か否かで、ソフトリセットを実行するコマンドの送信の要否を判断してもよい。ここで、書き込み可能サイズが最大値であるとは、書き込み可能サイズがSPI通信バッファのバッファサイズであることを意味する。
【0033】
例えば、ホストマイコン11による通信IC 12へのデータの書き込みごとに、通信IC 12が書き込まれたすべてのデータをSPI通信バッファから転送先バッファに移動し、SPI通信バッファをクリアすることが想定される。通信IC 12がこのような処理を実行する場合には、データの書き込みが正常な場合には、SPI通信バッファにはデータが保存されず、クリアされる。そのためホストマイコン11は、S3のデータ書き込み後、S11で取得される書き込み可能サイズが、最大値か否かで、ソフトリセットを
実行するコマンドの送信の要否を判断すればよい。ここで、最大値とは、例えば、SPI通信バッファのバッファサイズである。したがって、ホストマイコン11は、簡易に、通信IC 12へのデータの書き込みが正常に実施されたか否か、書き込まれたデータがSPI通信バッファに保存されているか否かを判定できる。そのため、ホストマイコン11は、簡易にソフトリセットを実行するコマンドの送信の要否を判断できる。
【符号の説明】
【0034】
1、501 通信制御装置
2 相手装置
11、511 ホストマイコン
12、22 通信IC