(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135863
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】不活化装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/10 20060101AFI20230922BHJP
A61L 9/20 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
A61L2/10
A61L9/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041165
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石倉 明
(72)【発明者】
【氏名】山田 宏二
【テーマコード(参考)】
4C058
4C180
【Fターム(参考)】
4C058AA23
4C058BB06
4C058DD01
4C058DD03
4C058DD13
4C058DD16
4C058EE03
4C058KK02
4C058KK23
4C058KK32
4C180AA07
4C180AA10
4C180DD03
4C180HH05
4C180HH17
4C180HH19
4C180HH20
4C180KK04
4C180LL20
(57)【要約】
【課題】利便性を向上させた不活化装置を提供する。
【解決手段】不活化装置は、病原体を不活化する紫外光を出射する光源を備えた光照射器と、前記光照射器の本体を着脱可能な固定基部と、前記本体が前記固定基部に取り付けられたときと、前記本体が前記固定基部から取り外されたときの間で、前記光照射器の点灯状態の制御を切替える制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
病原体を不活化する紫外光を出射する光源を備えた光照射器と、
前記光照射器の本体を着脱可能な固定基部と、
前記本体が前記固定基部に取り付けられたときと、前記本体が前記固定基部から取り外されたときの間で、前記光照射器の点灯状態の制御を切替える制御部と、を備えることを特徴とする、不活化装置。
【請求項2】
前記光照射器は、さらに、前記光源を点灯させる点灯スイッチを備え、
前記制御部は、
前記光照射器を前記固定基部に取り付けたとき、前記点灯スイッチの状態にかかわらず第一制御モードを起動し、
前記光照射器が前記固定基部から取り外されたとき、前記不活化装置の使用者が前記点灯スイッチをONにすることで第二制御モードを起動する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の不活化装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第一制御モードのとき、人を含む環境に対する紫外光照射条件に基づいて設定された規定値を超えないように前記紫外光の照射強度と照射時間を制御し、前記第二制御モードのとき、前記規定値を超えて前記光源の照射強度を制御することを特徴とする、請求項2に記載の不活化装置。
【請求項4】
前記光照射器は、前記光照射器が前記固定基部から取り外されたことを検出できる検出部を備えていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の不活化装置。
【請求項5】
前記光照射器は、さらに、人感センサを備え、
前記第二制御モードにおいて、前記人感センサが人を検出すると前記光源を点灯させないことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の不活化装置。
【請求項6】
前記光照射器は、さらに、距離センサを備え、
前記制御部は、前記第一制御モードにおいて、前記距離センサが第一規定値よりも近くに物体を検出しないときに前記光源を点灯させ、前記第二制御モードにおいて、前記距離センサが第二規定値よりも近くに物体を検出したときに前記光源を点灯させることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の不活化装置。
【請求項7】
前記光照射器が前記固定基部に取り付けられたときの出射光の配光角は、前記光照射器が前記固定基部から取り外されたときの出射光の配光角より大きいことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の不活化装置。
【請求項8】
前記固定基部は光拡散部を備え、
前記光照射器が前記固定基部に取り付けられたとき、前記光照射器からの出射光は前記光拡散部を透過することにより前記配光角が拡大されることを特徴とする、請求項7に記載の不活化装置。
【請求項9】
前記光照射器が前記固定基部に取り付けられたときの前記紫外光の照射強度は、前記光照射器が前記固定基部から取り外されたときの前記紫外光の照射強度より小さいことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の不活化装置。
【請求項10】
前記固定基部は減光フィルタを備え、
前記光照射器が前記固定基部に取り付けられたとき、前記光照射器からの出射光は前記減光フィルタを透過することにより前記照射強度が小さくなることを特徴とする、請求項10に記載の不活化装置。
【請求項11】
前記光照射器は、さらに、前記光照射器の本体と分離可能な把手を備え、
前記把手は、前記光源を点灯させる蓄電池を備えていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の不活化装置。
【請求項12】
前記固定基部は、卓上、床上、壁、柱、又は天井に配置されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の不活化装置。
【請求項13】
前記固定基部は、机、床、壁、柱、又は天井の一部であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の不活化装置。
【請求項14】
前記光照射器が前記固定基部に取り付けられたとき、出射光は有人空間から隔離された環境に照射されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の不活化装置。
【請求項15】
病原体を不活化する紫外光を出射する光源を備えた光照射器であって、
前記光照射器は、病原体を不活化する紫外光を出射する光源と、前記光照射器が固定基部に取り付けられたときと、前記光照射器が前記固定基部から取り外されたときの間で、前記光照射器の点灯状態の制御を切替える制御部と、を備え、かつ、前記固定基部に着脱可能に構成されることを特徴とする、光照射器。
【請求項16】
病原体を不活化する紫外光を出射する光源を備えた光照射器と、
前記光照射器を着脱可能であり、光拡散部及び減光フィルタの少なくとも一つを備える固定基部と、を備え、
前記光照射器が前記固定基部に取り付けられたとき、前記光照射器からの出射光は、前記光拡散部及び前記減光フィルタの前記少なくとも一つを透過することを特徴とする、不活化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病原体を不活化する不活化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、細菌やウイルス等の病原体を紫外光で不活化する不活化装置が知られている。不活化装置には、天井に固定して空間に向けて紫外光を照射させる不活化装置のみならず、使用者が不活化装置を持って使用する携帯型の不活化装置が存在する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今、新型コロナウイルス感染症の流行の影響もあり、ウイルス等の病原体を不活化させるニーズが拡大している。そこで、紫外光で病原体を不活化する不活化装置に関して、利便性を向上させた不活化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の不活化装置は、病原体を不活化する紫外光を出射する光源を備えた光照射器と、
前記光照射器の本体を着脱可能な固定基部と、
前記本体が前記固定基部に取り付けられたときと、前記本体が前記固定基部から取り外されたときの間で、前記光照射器の点灯状態の制御を切替える制御部を有する。
【0006】
前記不活化装置は、光照射器を固定基部に取り付けて使用する方法と、光照射器を固定基部から取り外して、使用者が携帯して使用する方法の二通りの使用方法を有する。よって、前記不活化装置は、高い利便性を有する。さらに、前記不活化装置は、光照射器を固定基部に取り付けて使用する場合と、使用者が持って使用する場合で点灯状態を切替えることができる。そのため、それぞれの使用方法に合った点灯状態を選択でき、不活化装置をより安全で、より効果的に使用できる。
【0007】
本明細書において、病原体とは、細菌、真菌及びウイルス等の微生物を指す。病原体は、人体の表面(例えば、皮膚や髪の毛)、人が頻繁に接触する物体(例えば、家具、事務機器、床又は壁)の表面、又は、人が近くにいる空間中に浮遊して存在する。特に、ウイルスは、人又は動物の口又は鼻から、呼気、唾、咳又はくしゃみとして飛散する飛沫、又はエアロゾルに含まれることも多い。よって、特にウイルスは、空間を広範囲に浮遊し、家具、床及び壁等の物体、並びに人体の表面に付着する。
【0008】
本明細書において、不活化とは、原生生物の場合、細胞内のDNAもしくは酵素(タンパク質)又は細胞膜を破壊すること等により死滅させること、又は細胞の増殖機能を取り除くことのいずれかを指す。不活化とは、ウイルスの場合、DNA又はRNAを破壊することにより、細胞への感染力を失わせることを指す。
【0009】
紫外光は、病原体を不活化する。特に、発光波長が190nm以上240nm未満の紫外光は、人体に対して安全であり、人体に向けて照射することができる。よって、不活化装置は、発光波長が190nm以上240nm未満の紫外光を放射する光源を使用するとよい。しかしながら、例えば、後述する第四実施形態のように、不活化装置の実施態様に依っては、発光波長が190nm以上240nm未満の紫外光を放射しない光源を使用しても構わない。
【0010】
前記光照射器は、さらに、前記光源を点灯させる点灯スイッチを備え、
前記制御部は、
前記光照射器を前記固定基部に取り付けたとき、前記点灯スイッチの状態にかかわらず第一制御モードを起動し、
前記光照射器が前記固定基部から取り外されたとき、前記不活化装置の使用者が前記点灯スイッチをONにすることで、前記第一制御モードより高照度の第二制御モードを起動しても構わない。
【0011】
前記制御部は、前記第一制御モードのとき、規定値を超えないように前記紫外光の照射強度と照射時間を制御し、前記第二制御モードのとき、前記規定値を超えて前記光源の照射強度を制御しても構わない。
【0012】
前記光照射器は、前記光照射器が前記固定基部から取り外されたことを検出する検出部を備えても構わない。検出部の検出結果は、制御部の制御モード切替えに使用される。検出部として、例えば、押釦型スイッチを備えていても構わない。
【0013】
前記光照射器は、さらに、人感センサを備え、
前記第二制御モードにおいて、前記人感センサが人を検出すると前記光源を点灯させなくても構わない。さらに安全性を高めることができる。
【0014】
前記光照射器は、さらに、距離センサを備え、
前記制御部は、前記第一制御モードにおいて、前記距離センサが第一規定値よりも近くに物体を検出しないときに前記光源を点灯させ、前記第二制御モードにおいて、前記距離センサが第二規定値よりも近くに物体を検出したときに前記光源を点灯させても構わない。詳細は後述するが、これにより、距離センサの検出の有無に対する光照射器1の点灯制御が、第一制御モードと第二制御モードの間で逆になる。
【0015】
前記光照射器が前記固定基部に取り付けられたときの出射光の配光角は、前記光照射器が前記固定基部から取り外されたときの出射光の配光角より小さくても構わない。
【0016】
前記固定基部は光拡散部を備え、
前記光照射器が前記固定基部に取り付けられたとき、前記光照射器からの出射光は前記光拡散部を透過することにより前記配光角が拡大されても構わない。光照射器を前記固定基部に取り付けて使用するときには、紫外光を拡散させ、光照射器を携帯して使用するときには、紫外光を拡散することなく使用できる。
【0017】
前記光照射器が前記固定基部に取り付けられたときの前記紫外光の照射強度は、前記光照射器が前記固定基部から取り外されたときの前記紫外光の照射強度より小さくても構わない。
【0018】
前記固定基部は減光フィルタを備え、
前記光照射器が前記固定基部に取り付けられたとき、前記光照射器からの出射光は前記減光フィルタを透過することにより前記照射強度が小さくなっても構わない。光照射器を前記固定基部に取り付けて使用するときには、紫外光を減光させ、光照射器を携帯して使用するときには、紫外光を減光することなく使用できる。
【0019】
前記光照射器は、さらに、前記光照射器の本体と分離可能な把手を備え、
前記把手は、前記光源を点灯させる蓄電池を備えても構わない。
【0020】
前記固定基部は、卓上、床上、壁、柱、又は天井に配置されても構わないし、前記光照射器を保持する設備に配置されても構わない。また、前記固定基部は、机、床、壁、柱、又は天井の一部であっても構わないし、前記光照射器の本体を保持する設備の一部であっても構わない。
【0021】
前記光照射器が前記固定基部に取り付けられたとき、出射光は有人空間から隔離された環境に照射されても構わない。有人空間から隔離された環境とは、例えば、人の存在しない空間であり、斯かる空間には、空気清浄機や空調機の筐体内部を含む。
【0022】
本発明の光照射器は、病原体を不活化する紫外光を出射する光源を備えた光照射器であって、
前記光照射器は、病原体を不活化する紫外光を出射する光源と、前記光照射器が固定基部に取り付けられたときと、前記光照射器が前記固定基部から取り外されたときの間で、前記光照射器の点灯状態の制御を切替える制御部と、を備え、かつ、前記固定基部に着脱可能に構成される。
【0023】
本発明の不活化装置は、病原体を不活化する紫外光を出射する光源を備えた光照射器と、
前記光照射器を着脱可能であり、光拡散部及び減光フィルタの少なくとも一つを備える固定基部と、を備え、
前記光照射器が前記固定基部に取り付けられたとき、前記光照射器からの出射光は、前記光拡散部及び前記減光フィルタの前記少なくとも一つを透過する。光照射器を前記固定基部に取り付けて使用するときには、紫外光を拡散又は減光させ、光照射器を携帯して使用するときには、紫外光を拡散又は減光することなく使用できる。
【発明の効果】
【0024】
利便性を向上させた不活化装置を提供できる。上述の不活化装置を提供することは、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標3「あらゆる年齢の全ての人々が健康的な生活を確保し、福祉を促進する」に対応し、また、ターゲット3.3「2030年までに、エイズ、結核、マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに、肝炎、水系感染症及びその他の感染症に対処する」に大きく貢献するものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】第一実施形態の不活化装置につき、光照射器を固定して使用する場合の外観図である。
【
図2】第一実施形態の不活化装置につき、光照射器を携帯して使用する場合の外観図である。
【
図3A】第一実施形態の不活化装置につき、光照射器を固定して使用する場合のブロック図である。
【
図3B】第一実施形態の不活化装置につき、光照射器を携帯して使用する場合のブロック図である。
【
図4A】第一実施形態の不活化装置の、制御のフロー図を示す。
【
図4B】第一実施形態の不活化装置の、制御のフロー図を示す。
【
図5】第二実施形態の不活化装置につき、光照射器を固定して使用する場合の外観図である。
【
図6】第二実施形態の不活化装置につき、光照射器を携帯して使用する場合の外観図である。
【
図7】第三実施形態の不活化装置につき、光照射器を固定して使用する場合の外観図である。
【
図8A】第四実施形態の不活化装置を組み込んだ空気清浄機の外観図である。
【
図8B】第四実施形態の不活化装置を組み込んだ空気清浄機の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
不活化装置の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書に開示された各図面は模式的に図示されたものである。すなわち、図面上の寸法比と実際の寸法比とは必ずしも一致しておらず、また、各図面間においても寸法比は必ずしも一致していない。
【0027】
以下において、図面の一部はXYZ座標系を参照しながら説明される。本明細書において、正負の向きを区別して方向を表現する場合には、例えば、「+X方向」、「-X方向」のように、正負の符号を付して記載される。正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、例えば「X方向」又は「X軸」のように、正負の符号を付すことなく記載される。Y方向及びZ方向についても同様である。本明細書では、重力方向を「-Z方向」として示している。
【0028】
<第一実施形態>
[不活化装置の概要]
第一実施形態は、紫外光の光照射器を卓上に固定して使用する方法と、光照射器を手に持って使用する方法で使用できる不活化装置である。
図1は、光照射器を固定して使用する場合の外観図である。
図2は、光照射器を携帯して使用する場合の外観図である。
【0029】
図1に示されるように、不活化装置10は、紫外光を照射する光照射器1と、光照射器1を着脱可能な固定基部7と、を備える。光照射器1は、光源(
図1,2では不図示)を内部に有する本体2と、本体2と分離可能な把手3を備える。本体2を固定基部7に取り付けて使用するとき、把手3は使用しない。本実施形態では、把手3は、本体2と分離され、固定基部7の凹部に嵌め込まれるように載置される。
【0030】
図2は、使用者が光照射器1を携帯する様子を示す。
図1に示した不活化装置10において、固定基部7から本体2と把手3を取り外し、本体2に把手3を取り付けて光照射器1を使用する。
図2において、光照射器1を持つ使用者の手Haが点線で示されている。使用者は、把手3を握って光照射器1を使用する。
【0031】
把手3には、紫外光を照射するための点灯スイッチ5が配置されている。本実施形態では、使用者が点灯スイッチ5を押下している間のみ、光照射器1は光取出し部4より紫外光を出射する。ただし、詳細は後述するが、人感センサ及び距離センサの検出状態によっては点灯スイッチ5を押下しても紫外光を出射しない場合がある。使用者が点灯スイッチ5を押下してから一定時間、被照射物に向けて紫外光を出射するようにしてもよい。
【0032】
紫外光を照射する「一定時間」とは、携帯した光照射器1を使用して、所望の物体表面を不活化するのに要する時間である。不活化に要する時間は、光照射器1の光取出し部4から物体表面までの離間距離、または不活化対象などによって異なる。一例として、光照射器1の光取出し部4から物体表面までの離間距離を10cmとする場合、物体表面に存在するウイルスの不活化に約3秒を要し、物体表面に存在する菌の不活化は約30秒を要する。
【0033】
[光照射器を固定して使用する方法]
図3Aは、第一実施形態の不活化装置10につき、光照射器1の本体2を固定して使用する場合のブロック図である。ブロック図では、不活化装置10を構成する部品と部品間の電気的な接続を模式的に示している。各部品間を連絡する線は電気的に接続される様子を表す。
【0034】
図3Aに示されるように、光照射器1は、本体2の内部に、光源11と、光源11に供給する電圧を生成する電源部12と、光源11の点灯状態を制御する制御部13と、光学フィルタ14と、距離センサ17と、人感センサ18と、冷却器19とを有する。
【0035】
光照射器1は、把手3の内部に、蓄電池42を有する。光照射器1を携帯して使用するとき、蓄電池42の電力を使用して光照射器1を動作させる。蓄電池42は、例えば、直流12V、又は24Vの電力を供給できる。把手3の内部には、さらに、蓄電池制御部41を有する。蓄電池制御部41は、点灯スイッチ5、電気接点3c及び蓄電池に電気的に接続される。蓄電池制御部41は、蓄電池42の充放電を制御する。なお、携帯型で使用する場合でも、外部電源とコードで接続し、外部電源の電力で光照射器1を動作させても構わない。
【0036】
光源11は、破線の矢印で示された紫外光L1を放射する。光源11として、エキシマランプ、LED又はLDが使用される。エキシマランプとして、発光管の内部にKrClを含む発光ガスが封入されたKrClエキシマランプが例示される。KrClエキシマランプは、主たるピーク波長が222nm近傍の紫外光を出射する。上述したように、発光波長が190nm以上240nm未満の紫外光は、人体に対して安全である。
【0037】
KrClエキシマランプの他に、発光管の内部にKrBrを含む発光ガスが封入された、KrBrエキシマランプを使用しても構わない。KrBrエキシマランプは、主たるピーク波長が207nm近傍の紫外光を出射するため、人体に対して安全である。
【0038】
光学フィルタ14は、光源11から放射される光に含まれる、有害波長帯域(240nm以上280nm未満)の光の透過を抑制するバンドパスフィルタとして機能する。光源11から出射される光は、必ずしも人体に対して安全な波長の光だけを放射するとは限らない。例えば、KrClエキシマランプは、微弱な光強度ではあるが有害波長帯域の光を放射する。そこで、光学フィルタ14を、光源11の光を取り出す光取出し部4の全域に配置する。これにより、有害波長帯域の光の照射量を抑える。
【0039】
光学フィルタ14は、屈折率の異なる複数の層を積層してなる誘電体多層膜を含む。光学フィルタ14の配置場所や形状は特に限定されない。本実施形態のように、光学フィルタ14は、光源11と離間するように配置されてもよい。また、光学フィルタ14は、光源11と一体的に形成されてもよい。
【0040】
固定基部7は、本体2を支持する本体支持部25と(
図1、
図3A参照)、光照射器1から出射される光の特性を変化させる光学部材26(
図3A参照)と、主電源スイッチ28(
図1,
図3A参照)を有する。
【0041】
固定基部7は、角度調整部(27a,27b)を介して本体支持部25を支持する(
図1参照)。角度調整部27aは、本体支持部25をX軸回りに回転させることができる。これにより、本体2のX軸回りの傾きを変更できる。角度調整部27bは、本体支持部25をY軸回りに回転させることができる。これにより、本体2のY軸回りの傾きを変更できる。さらに、角度調整部27aは、固定基部7に対して上下動できるため、本体2と不活化装置10の載置面との高さを変更できる。
【0042】
固定基部7は、さらに、把手3を嵌め込んで載置する凹部7rを有する(
図3A参照)。把手3を凹部7rに嵌め込むと、把手3の電気接点3cが固定基部7の電気接点7cに接触する。ただし、
図3Aでは、把手3と固定基部7とを区別し易いように、電気接点(3c,7c)を互いに僅かに離して示している。外部電源30から電力が供給されているとき、蓄電池制御部41は、蓄電池42を充電する。
【0043】
主電源スイッチ28は、外部電源30からの電力を本体2へ供給する/供給停止するためのスイッチである。なお、本実施形態では、主電源スイッチ28をOFFにして、本体2への電力供給を停止しても、蓄電池42を充電できる。
【0044】
本実施形態の外部電源30(
図1、
図3A参照)は、交流の商用電源に接続されたAC/DCコンバータである。しかし、外部電源30の具体的な態様はこれに限定されない。また、光照射器1を固定して使用するときは、外部電源30から供給された電力を使用してもよく、蓄電池42から供給された電力を使用してもよい。
【0045】
本体支持部25は、本体2の上下を挟んで本体2を支持する。本体2と本体支持部25とは、本体2の電気接点2cと本体支持部25の電気接点25cとを介して電気的に接続される。
図3Aでは、本体2と本体支持部25とを区別し易いように、電気接点(2c,25c)を互いに僅かに離して示している。
【0046】
本体2を本体支持部25に対して位置決めし易いように、本体支持部25及び/又は本体2がガイド部材(不図示)を備えていてもよい。ガイド部材の具体例として、本体2を本体支持部25にスライドさせるように挿入可能な凸状レールガイドでもよい。また、本体2が本体支持部25から落下しないように、本体2を本体支持部25に対して固定するロック機構(不図示)を備えていてもよい。
【0047】
光学部材26(
図3Aのハッチングされた領域)は、光取出し部4の近傍の本体支持部25内に配置される。本実施形態の不活化装置10では、本体2を本体支持部25に取り付けたとき、光取出し部4から出射される紫外光が、光学部材26を透過して出射する。光学部材26は、紫外光の特性、例えば、配光角又は照射強度を変更する。
【0048】
本実施形態における光学部材26は、光拡散部として機能する光拡散レンズである。これにより、紫外光の配光角を拡大できる。詳細は後述するが、光照射器1を固定基部7に取り付けて使用する場合には、光照射器1を携帯する場合と異なり、広範囲に光を照射することが好ましい場合がある。そのため、広範囲に光を照射できるように、光拡散部で配光角を拡大する。また、光学部材26に、光拡散シートを使用してもよい。
【0049】
光学部材26は、光の透過量を制限する減光フィルタであってもよい。詳細は後述するが、光照射器1を固定基部7に取り付けて使用する場合には、光照射器1を携帯する場合に比べて、小さい照射強度の紫外光を照射すると好ましい場合がある。そのため、照射強度を低下させるために、減光フィルタを使用してもよい。
【0050】
電源部12は、制御部13から供給される電力を、光源11に適した電圧に変換する。また、本体2の内部に配置された部品、特に、電源部12は熱を発する。そこで、冷却器19で、本体2の部品を冷却する。冷却器19として、例えば、放熱ファンを使用してもよい。通風孔(不図示)を通じて、本体2の外から低温気体を導入し、本体2の内部の高温気体を本体2の外に排出することで、本体2の部品を冷却する。
【0051】
制御部13は、距離センサ17と、人感センサ18と、冷却器19と、制御切替えスイッチ16と、外部電源30とに電気的に接続される。制御部13は、光照射器1が固定基部7に取り付けられたときと、光照射器1が固定基部7から取り外されたときの間で、光照射器1の点灯状態の制御方法を切替える。
【0052】
本体2は、制御切替えスイッチ16を備えている。制御切替えスイッチ16を使用して光照射器1の制御モードの切替えを行う。本実施形態では、制御切替えスイッチ16は押釦型スイッチである。押釦型スイッチが本体支持部25の突起25pに押されると、当該スイッチを含む回路が閉じ、制御部13は、光照射器1が固定基部7に取り付けられたと認識して、第一制御モードを起動する。押釦型スイッチが突起25pに押されず、当該スイッチを含む回路が開くと、制御部13は、光照射器1が固定基部7から離れたと認識して、第二制御モードの起動判断ステップに進む。第一制御モード及び第二制御モードの詳細は後述する。
【0053】
本実施形態の距離センサ17は超音波式である。距離センサ17は、送波器17aと受波器17bを備える(
図2参照)。送波器17aから対象物に向けて超音波を発信し、その反射波を受波器17bで受信することで、光照射器1の本体2から対象物までの距離Dを測る。距離センサ17は、これに特定されず、例えば、レーザ光等の電磁波を使用したセンサでも構わない。距離センサ17の使用目的は後述する。
【0054】
人感センサ18は、人又は動物の発する赤外光を検知して作動する。人感センサ18の詳細は後述する。
【0055】
[光照射器を持って使用する方法]
図3Bは、光照射器1を持って使用する携帯型の光照射器1のブロック図である。ブロック図では、光照射器1を構成する部品と部品間の電気的な接続を模式的に示している。各部品間を連絡する線は電気的に接続される様子を表す。また、「光照射器を固定して使用する方法」の項で説明した内容と同じ内容については、その説明を省略する。
【0056】
光照射器1は、把手3を本体2に取り付けてなる。把手3を本体2に取り付けたとき、本体2の電気接点2cは、把手3の電気接点3cに接触する。本実施形態の光照射器1は、把手3内の蓄電池42の電力により動作する。
【0057】
[制御方法]
図4A及び
図4Bは、それぞれ、第一実施形態の不活化装置10の制御のフロー図を示す。
図4Aを参照して、ステップS1では、光照射器1の本体2が固定基部7に取り付けられているか、それとも、固定基部7から取り外されているかを、制御切替えスイッチ16のON/OFFにより検出する。本実施形態では、制御切替えスイッチ16がOFFのとき(回路が開いているとき)、制御部13は、光照射器1の本体2が固定基部7から取り外されていると認識する。制御切替えスイッチ16がONのとき(回路が閉じているとき)、制御部13は、光照射器1の本体2が固定基部7から取り付けられていると認識する。
【0058】
制御モードの切替えを行うためのスイッチは、制御切替えスイッチ16に限らない。変形例として、本体2には、把手3が取り付けられたときに回路が閉じる別の押釦型スイッチ(不図示)を有していてもよい。当該別の押釦型スイッチが押されて回路が閉じたとき、把手3が本体2に取り付けられたと認識し、第二制御モードの起動判断ステップ(詳細は後述する)に進んでもよい。また、スイッチ以外の方法で光照射器1の本体2が固定基部7への取り付け/取り外しを検出してもよい。
【0059】
光照射器1の本体2が固定基部7から取り外されていないと認識される場合(
図4AにおけるNoの場合)、制御部13は第一制御モードを起動する。光照射器1が固定基部7から取り外されていると認識される場合(
図4AにおけるYesの場合)、制御部13はステップS2に進む。
【0060】
ステップS2は第二制御モードの準備ステップである。ステップS2において、点灯スイッチ5が押下されないとき(通電しないとき)、光源11は消灯状態にある。点灯スイッチ5が押下されるとき(通電するとき)のみ、第二制御モードが起動する。変形例として、点灯スイッチ5が押下されてから所定時間内(例えば10秒間)、第二制御モードが起動するようにしてもよい。
【0061】
制御モードの切替えを、制御モード切替えスイッチにより行うことを上述したが、斯かるスイッチを使用せず、点灯スイッチ5が押下されたとき、第二制御モードを開始し、点灯スイッチ5が押下されないとき、第一制御モードを開始しても構わない。
【0062】
[第一制御モード]
第一制御モードについて説明する。光照射器1が固定基部7に取り付けられているとき、光照射器1は照射された物体の表面のみならず、人を含む環境に向けて紫外光を照射することを目的とする。紫外光により、物体の表面に存在する病原体のみならず、空間中に浮遊する病原体を不活化できる。
【0063】
人を含む環境に対する紫外光照射は、その照射量を抑えることが求められる場合がある。例えば、ACGIH(American Conference of Governmental Industrial Hygienists:米国産業衛生専門家会議)、又はJIS Z 8812(有害紫外放射の測定方法)では、人体への1日(8時間)あたりの紫外光照射量が、波長ごとに許容限界値(TLV:Threshold Limit Value)以下となるように、規定されている。
【0064】
上述したように、本発明で使用される出射光の波長は、人体に対する有害性が極めて低い波長であるが、さらに安全性を高めるためには、上述したTLVの規定を満たすように紫外光の照射量を設定することが望ましい。そこで、本実施形態では、第一制御モードで紫外光を照射するとき、人を含む環境に対する紫外光照射条件であるTLVに基づいて規定値を設定し、当該規定値を超えないように紫外光の照射強度と積算照射時間を制御する。
【0065】
よって、第一制御モードでは、後述する第二制御モードに比べて照射強度が低く、かつ、長時間にわたる点灯を行う。ここでいう「長時間」とは、点灯中の積算時間を意図しており、連続点灯状態のほか、短い時間で間欠的に点灯と消灯を繰り返す状態を含む。また、第一制御モードでは、第二制御モードより広い領域に紫外光を照射する。
【0066】
図4Bを参照しながら第一制御モードのフローの一例を説明する。ステップS11では、距離センサ17が、本体2から被照射物体までの距離Dを測定する。被照射物体の狭領域にのみ紫外光が照射される状態が続くことを防ぐため、距離センサ17が第一規定値D1よりも近くに物体を検出するとき(すなわち、本体2と最近接物体までの距離Dが第一規定値D1より小さいとき)、光照射器1を消灯する。距離センサ17が第一規定値D1よりも近くに物体を検出しないとき(すなわち、本体2と最近接物体までの距離Dが第一規定値D1以上のとき)、ステップS12に進む。第一規定値D1は、5cm以上200cm以下であるとよい。ただし、光学部材26により被照射物体の狭領域にのみ紫外光が照射されることがない場合、または、本体2から被照射物体までの距離がほぼ固定されている場合には、ステップS11による距離の判定はなくても構わない。
【0067】
ステップS12は設定選択ステップである。ステップS12では、不活化装置10の設置者が予め設定しておく設定条件(ここでは、第一設定C1~第三設定C3)に基づいて、光照射器1の設定を選択する。ステップS13は人検出ステップである。人感センサが人を検出する場合と検出しない場合とで、光照射器1の動作が異なる。ステップS13の詳細を、ステップS12の設定条件別に説明する。
【0068】
(第一設定C1)
光照射器1を無人環境下で配置する場合、設置者は、制御部13が第一設定C1を選択するように、予め設定する。例えば、本実施形態のように不活化装置10が卓上型または床上型であるとき、光照射器1は人の近くに位置することがある。このとき、安全性をより高めるため、人感センサ18が人を検出する場合に光照射器1を消灯する。人が光照射器1から離れて、人感センサ18が人を検出しない場合には、点灯モードC10で光照射器1を点灯する。点灯モードC10は、人に向けた照射ではないため、上述したTLVに基づいた規定値を超えた照射強度で照射しても構わない。
【0069】
(第二設定C2)
光照射器1が人から少し離れた位置で固定される場合、設置者は、制御部13が第二設定C2を選択するように、予め設定する。例えば、不活化装置10を人の背の高さから1m以内の上方に配置するとき、光照射器1は人から少し離れた場所に位置することになる。この配置のとき、人感センサ18が人を検出する場合に、点灯モードC12で光照射器1を点灯する。点灯モードC12は、点灯モードC11より弱い照射強度又は短い放射時間である。人が光照射器1から離れて、人感センサ18が人を検出しない場合には、点灯モードC11で光照射器1を点灯する。点灯モードC11はC10より弱い照射強度又は短い放射時間である。
【0070】
(第三設定C3)
光照射器1が人から遠く離れた位置で固定される場合、設置者は、制御部13が第三設定C3を選択するように、予め設定する。例えば、不活化装置10を人の背の高さから1mを超える上方(例えば、壁若しくは柱の高い位置、又は高い天井)に配置するとき、光照射器1は人から遠く離れた場所に位置することになる。このとき、人感センサ18が人を検出する場合に、点灯モードC13で光照射器1を点灯する。点灯モードC13は、点灯モードC11より弱い照射強度又は短い放射時間であり、点灯モードC12より強い照射強度又は長い放射時間である。人が光照射器1から離れて、人感センサ18が人を検出しない場合には、上述した点灯モードC11で光照射器1を点灯する。
【0071】
光照射器1から出射される紫外光は、発光波長が190nm以上240nm未満の人体に対して安全な紫外光であり、有害波長帯域(240nm以上280nm未満)の光をほとんど含まない。しかしながら、使用者のさらなる安全性を追求するために、上述のように、光照射器1を固定する位置が、人が存在し得る位置より離れるにしたがって、光源11の照射強度が大きくなるように設定してもよい。
【0072】
上記設定は、第一設定C1~第三設定C3の三段階であったが、より多段階の設定条件にしてもよい。また、不活化装置10の設置者が予め設定しておいた設定条件にしたがって制御部13が設定を選択する例を上述したが、これに限らない。例えば、ステップS11で測定した距離センサ17の測定結果(光照射器1から被照射物体までの距離D)に応じて、制御部13が、第一設定C1~第三設定C3を選択してもよい。
【0073】
[第二制御モード]
第二制御モードについて説明する。光照射器1を携帯できる場合、使用者は所望の物体表面を不活化するために、光照射器1を当該表面に近づけて紫外光を照射する。第二制御モードでは、上述した第一制御モードに比べて照射強度が高く、かつ、限られた短い時間(例えば、3~30秒)のみ点灯を行う。短時間点灯であり、人に向けた照射ではないため、上述したTLVに基づいた規定値を超えた照射強度で照射しても構わない。また、限られた物体表面にのみ紫外光を照射するため、第二制御モードの紫外光の配光角は、第一制御モード紫外光の配光角より狭いほうがよい。第二制御モードの配光角は、例えば、70度以下である。
【0074】
図4Aに戻り、第二制御モードのフローの一例を説明する。ステップS21では人感センサ18が人を検出した場合には、光照射器1を消灯状態にする。人感センサ18が人を検出しない場合には、ステップS22に進む。
【0075】
第二制御モードでは、光照射器1を携帯して使用するため、光照射器1の近くには人が存在することになる。しかしながら、人感センサ18は本体2の筐体の凹部に配置されており、人感センサ18の検出範囲は、紫外光が照射される範囲に近くなるように指向されている。そのため、紫外光の照射範囲を人に向けないように使用するとき、人感センサ18は人を検出しない。
【0076】
ステップS22では、本体2と被照射物体までの距離Dを測定する。光照射器1を携帯して使用するとき、特定の対象物体の不活化を目的とするため、光照射器1を被照射物体に近づけて使用する。距離センサ17が第二規定値D2よりも近くに物体を検出しないとき(すなわち、本体2と最近接物体までの距離Dが第二規定値D2より大きいとき)、特定の対象物より広い範囲に紫外光が漏れることを防ぐため、光照射器1を消灯するとよい。
【0077】
距離センサ17が第二規定値D2よりも近くに物体を検出したとき(すなわち、本体2と最近接物体までの距離Dが第二規定値D2より以下のとき)、点灯モードC20で光照射器1を点灯するとよい。第二規定値D2は、5cm以上100cm以下であるとよく、5cm以上50cm以下であるとより好ましく、10cm以上30cm以下であるとさらに好ましい。第二規定値D2は、第一規定値D1と同じ値であっても異なる値であっても構わない。
【0078】
第二制御モードにおける紫外光の照射は、人を除く対象物へ短時間照射であるため、点灯モードC20における照射強度は、人を含む環境に対する紫外光照射条件に基づいて設定された規定値を超えて設定してもよい。
【0079】
このように、第二制御モードでは、距離センサ17が検出して所定距離以下になった場合に光照射器1を点灯状態にするのに対し、第一制御モードでは、距離センサ17が検出して所定距離以下になった場合に消灯状態にする。距離センサ17の検出の有無に対する光照射器1の点灯制御は、第一制御モードと第二制御モードの間で逆になる。
【0080】
図4A及び
図4Bのフロー図では、点灯又は消灯が選択された後のフローを示していない簡略図面であるが、実際には、光照射器1は、点灯又は消灯が選択された後もステップS1に戻って繰り返し制御される。例えば、光照射器1が固定基部7に取り付けられて点灯している最中に、光照射器1が固定基部7から取り外す場合には、第一制御モードから第二制御モードの起動判断ステップに切り替える。例えば、第二制御モードで点灯している最中に、人感センサ18が人を検出した場合には、光照射器1を消灯状態にする。
【0081】
<第二実施形態>
図5及び
図6を参照しながら、第二実施形態の不活化装置を説明する。以下に述べる事項は、第一実施形態と異なる点を中心に述べる。よって、以下に述べる以外の事項は、上述した第一実施形態と同様の構成を有し、同様に実施できる。また、第三実施形態以降の説明についても同様である。
【0082】
図5及び
図6に示されるように、第二実施形態の不活化装置40の光照射器1は、本体2が把手3と分離可能に構成されていない。把手3を本体2から分離することなく、光照射器1を固定基部7に取り付けることができる。本実施形態では、蓄電池42及び蓄電池制御部41は本体2に内蔵されている。蓄電池制御部41は、制御部13と一体化していてもよい。
【0083】
点灯スイッチ5は、把手3の、光照射器1を保持する手で操作できる位置に設けられている。また、光照射器1を固定基部7に取り付けたとき、点灯スイッチ5を押すことができない位置に、点灯スイッチ5が配置されていてもよい。このように配置することで、光照射器1を固定基部に7に取り付けたにもかかわらず、何らかの不具合で制御モードが第二制御モードから第一制御モードに切り替わらない場合に、光照射器1が、第二制御モードの高い照射強度で点灯することを防ぐ。
【0084】
<第三実施形態>
図7を参照しながら、第三実施形態の不活化装置50を説明する。不活化装置50は卓上ではなく、床上に載置する。そして、固定基部7は、人の背の高さより長いポールである。人の背の高さより高い位置から光照射器1の本体2より紫外光を出射する。不活化装置50の変形例として、固定基部7を柱又は壁に取り付けてもよい。また、固定基部7を天井に取り付けてもよい。固定基部7が、机、床、壁、柱、又は天井の一部を構成するように、固定基部7と、机、床、壁、柱、又は天井とが一体化していてもよい。また、不活化装置50を室内ではなく、屋外に配置しても構わない。
【0085】
<第四実施形態>
図8A及び
図8Bを参照しながら、第四実施形態の不活化装置を説明する。不活化装置は設備に固定される。本実施形態において、設備は、空気清浄機である。
図8Aは不活化装置を組み込んだ空気清浄機の一例を示す外観図であり、
図8Bは、当該空気清浄機の概念図である。
【0086】
本実施形態の空気清浄機60は下方に空気取入口61を有し、上方に空気排出口62を有する。空気清浄機60内の空気の流れをAFと付した破線の矢印で示す。空気の流れAFは、粗目フィルタ67を通り、ブロワー63を経て細目フィルタ64を通り、空気排出口62から出ていく。ブロワー63と細目フィルタ64との間に紫外光照射器の本体2を、光取出し部4が上を向くように配置し、紫外光L1を、細目フィルタ64へ向かう空気の流れAFに照射する。紫外光L1は光学部材26によって拡散させる。このようにして、空気清浄機60内の空気の流れAFに存在する病原体を不活化する。
【0087】
本実施形態では、光照射器1の本体2が、空気清浄機60の内部空間という、有人空間から隔離された環境に固定される。よって、紫外光の照射量を、上述したTLVの規定を満たすよう設定しなくてよい。また、本実施形態の不活化装置で使用する光源11は、発光波長が190nm以上240nm未満の紫外光を放射しなくてもよい。
【0088】
空気清浄機60の把手65を引っ張ると、空気清浄機60の筐体の中央部66を引き出すことができる。
図8Bには示されていないが、本体2は空気清浄機60の内部で固定基部に着脱可能に取り付けられている。固定基部は、筐体の中央部66に固定されている。筐体の中央部66を引き出して、空気清浄機60から本体2を取り出すことができる。取り出した本体2に把手(不図示)を取り付けることで、携帯型の不活化装置として使用できる。
【0089】
光照射器1を、空気清浄機60以外の設備に内蔵することができる。例えば、光照射器1を冷暖房機又は掃除機に内蔵しても構わない。
【0090】
以上で、不活化装置の各実施形態を説明した。しかしながら、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、上記各実施形態及び各変形例を組み合わせたり、上記の実施形態に種々の変更又は改良を加えたりできる。
【符号の説明】
【0091】
1 :光照射器
2 :本体
2c :電気接点
3 :把手
3c :電気接点
4 :光取出し部
5 :点灯スイッチ
7 :固定基部
7c :電気接点
10,40,50 :不活化装置
11 :光源
12 :電源部
13 :制御部
14 :光学フィルタ
16 :制御切替えスイッチ
17 :距離センサ
17a :送波器
17b :受波器
18 :人感センサ
19 :放熱ファン
25 :本体支持部
25c :電気接点
25p :突起
26 :光学部材
27a,27b:角度調整部
28 :主電源スイッチ
30 :外部電源
41 :蓄電池制御部
42 :蓄電池
60 :空気清浄機
61 :空気取入口
62 :空気排出口
63 :ブロワー
64 :細目フィルタ
65 :(空気清浄機の)把手
66 :(引き出し可能な筐体の)中央部
67 :粗目フィルタ
Ha :手
L1 :紫外光