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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135872
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】薬剤揮散器
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/12 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
A61L9/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041179
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】立原 裕子
【テーマコード(参考)】
4C180
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180AA03
4C180CA06
4C180FF01
(57)【要約】
【課題】装飾体が薬剤の揮散機能の妨げになることを回避し、装飾体を見せやすくして動的な趣向を楽しませつつ薬剤の残量を容易に確認する。
【解決手段】揮散成分が揮散し体積が収縮するゲル状の薬剤12と、薬剤12を収容する薬剤用容器14とを備える薬剤揮散器10Aに、薬剤12に埋設されると共に薬剤12の表面から突出するアンカー部材20と、薬剤用容器14の内部で揺動可能に支持されその先端に装飾体32Aが設けられた揺動アーム30とを備え、連動機構Lにより、薬剤12の体積の収縮に伴うアンカー部材20の下降に連動して装飾体32Aを薬剤用容器14の上方で揺動させる。連動機構Lは、アンカー部材20と揺動アーム30とが揺動可能に結合されたリンク機構L1で構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮散成分が揮散し体積が収縮するゲル状の薬剤と、前記薬剤を収容する薬剤用容器とを備える薬剤揮散器であって、
前記薬剤に埋設されると共に前記薬剤の表面から突出するアンカー部材と、
前記薬剤用容器の内部で揺動可能に支持され、その先端に装飾体が設けられた揺動アームと、
前記薬剤の体積の収縮に伴う前記アンカー部材の下降に連動して前記揺動アームを揺動させ、前記装飾体を前記薬剤用容器の上方で揺動させる連動機構と、
を備えることを特徴とする薬剤揮散器。
【請求項2】
前記連動機構は、前記アンカー部材と前記揺動アームとが揺動可能に結合されたリンク機構で構成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の薬剤揮散器。
【請求項3】
前記揺動アームは、第1揺動アームと第2揺動アームとを有し、
前記第1揺動アームは、その延在方向の中間部が前記薬剤用容器の内部に設けられた第1支軸により揺動可能に支持され、その延在方向の一端が前記薬剤用容器の内部で前記アンカー部材の上端に揺動可能に連結され、
前記第2揺動アームは、その延在方向の一端が前記薬剤用容器の内部に設けられた第2支軸により揺動可能に支持され、その延在方向の他端に前記装飾体が設けられ、
前記第1揺動アームの延在方向の他端は、前記第2揺動アームまたは前記装飾体に下方から当接可能である、
ことを特徴とする請求項2記載の薬剤揮散器。
【請求項4】
前記薬剤揮散器の未使用状態で、前記第1揺動アームの延在方向の他端は、前記第2揺動アームまたは前記装飾体に下方から当接している、
ことを特徴とする請求項3記載の薬剤揮散器。
【請求項5】
前記薬剤揮散器の未使用状態で、前記第1揺動アームの延在方向の他端は、前記第2揺動アームまたは前記装飾体の下方に隙間をあけて対向している、
ことを特徴とする請求項3記載の薬剤揮散器。
【請求項6】
前記揺動アームは、その延在方向の中間部が前記薬剤用容器の内部に設けられた支軸により揺動可能に支持され、
前記揺動アームは、その延在方向の一端が前記薬剤用容器の内部で前記アンカー部材の上端に連結され、その延在方向の他端に前記装飾体が設けられている、
ことを特徴とする請求項2記載の薬剤揮散器。
【請求項7】
少なくとも前記薬剤の表面から突出する前記アンカー部材の箇所にラックが設けられ、
前記薬剤用容器の内部で前記薬剤の上方に回転可能に支持され前記ラックに噛合するピニオンが設けられ、
前記揺動アームは前記ピニオンに一体回転可能に連結され、
前記連動機構は、前記ラックと前記ピニオンとを有するラックピニオン機構で構成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の薬剤揮散器。
【請求項8】
前記薬剤揮散器の未使用状態で、前記装飾体は前記薬剤用容器の内部に位置しており、
前記薬剤の体積の収縮に伴う前記アンカー部材の下降に連動して前記装飾体は前記薬剤用容器の上方で揺動する、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項記載の薬剤揮散器。
【請求項9】
前記薬剤揮散器の未使用状態で、前記装飾体は前記薬剤用容器の上方に位置しており、
前記薬剤の体積の収縮に伴う前記アンカー部材の下降に連動して前記装飾体は前記薬剤用容器の上方から揺動して前記薬剤用容器の内部に入る、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項記載の薬剤揮散器。
【請求項10】
前記薬剤揮散器の未使用状態で、前記装飾体は前記薬剤用容器の内部に位置しており、
前記薬剤の体積の収縮に伴う前記ラックの下降に連動して前記装飾体は前記薬剤用容器の上方で揺動し、
前記薬剤揮散器の使用終期で、前記装飾体は前記薬剤用容器の内部に入る、
ことを特徴とする請求項7記載の薬剤揮散器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤揮散器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、芳香剤や消臭剤などの種々の揮散性を有する薬剤の残量を容易に確認でき、装飾体の動的な風合いを楽しむことができる薬剤揮散器が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
この薬剤揮散器は、薬剤用容器の上部に開口部を設け、この開口部に上下に移動可能に装飾体を挿入して装飾体の上部を薬剤用容器の上方に位置させ、装飾体の下端を薬剤の上面に載せ、薬剤の減少に伴って装飾体を下降させるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-6671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような薬剤揮散器では、薬剤用容器の開口部の上方に開口部を覆うように装飾体である葉と花弁が位置し、薬剤の減少に伴って萎みながら開口部を形成する首部に収容されるため、装飾体が薬剤用容器の開口部を塞ぎ、薬剤の揮散機能の妨げになってしまう。
また、薬剤の減少に伴って装飾体を下降させるため、薬剤揮散器を使用するにつれて装飾体が薬剤用容器の内部に引き込まれて隠れてしまい、使用終了時ごろには装飾体が見えにくくなってしまう。
本発明は、前記事情に鑑み案出されたものであって、装飾体が薬剤の揮散機能の妨げになることを回避するとともに、使用開始時から終了時まで装飾体を見せやすくして動的な趣向を楽しませつつ薬剤の残量を容易に確認できる薬剤揮散器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的を達成するため本発明の一実施形態は、揮散成分が揮散し体積が収縮するゲル状の薬剤と、前記薬剤を収容する薬剤用容器とを備える薬剤揮散器であって、前記薬剤に埋設されると共に前記薬剤の表面から突出するアンカー部材と、前記薬剤用容器の内部で揺動可能に支持され、その先端に装飾体が設けられた揺動アームと、前記薬剤の体積の収縮に伴う前記アンカー部材の下降に連動して前記揺動アームを揺動させ、前記装飾体を前記薬剤用容器の上方で揺動させる連動機構とを備えることを特徴とする。
また、本発明の一実施形態は、前記連動機構は、前記アンカー部材と前記揺動アームとが揺動可能に結合されたリンク機構で構成されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施形態は、前記揺動アームは、第1揺動アームと第2揺動アームとを有し、前記第1揺動アームは、その延在方向の中間部が前記薬剤用容器の内部に設けられた第1支軸により揺動可能に支持され、その延在方向の一端が前記薬剤用容器の内部で前記アンカー部材の上端に揺動可能に連結され、前記第2揺動アームは、その延在方向の一端が前記薬剤用容器の内部に設けられた第2支軸により揺動可能に支持され、その延在方向の他端に前記装飾体が設けられ、前記第1揺動アームの延在方向の他端は、前記第2揺動アームまたは前記装飾体に下方から当接可能であることを特徴とする。
また、本発明の一実施形態は、前記薬剤揮散器の未使用状態で、前記第1揺動アームの延在方向の他端は、前記第2揺動アームまたは前記装飾体に下方から当接していることを特徴とする。
また、本発明の一実施形態は、前記薬剤揮散器の未使用状態で、前記第1揺動アームの延在方向の他端は、前記第2揺動アームまたは前記装飾体の下方に隙間をあけて対向していることを特徴とする。
また、本発明の一実施形態は、前記揺動アームは、その延在方向の中間部が前記薬剤用容器の内部に設けられた支軸により揺動可能に支持され、前記揺動アームは、その延在方向の一端が前記薬剤用容器の内部で前記アンカー部材の上端に連結され、その延在方向の他端に前記装飾体が設けられていることを特徴とする。
また、本発明の一実施形態は、少なくとも前記薬剤の表面から突出する前記アンカー部材の箇所にラックが設けられ、前記薬剤用容器の内部で前記薬剤の上方に回転可能に支持され前記ラックに噛合するピニオンが設けられ、前記揺動アームは前記ピニオンに一体回転可能に連結され、前記連動機構は、前記ラックと前記ピニオンとを有するラックピニオン機構で構成されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施形態は、前記薬剤揮散器の未使用状態で、前記装飾体は前記薬剤用容器の内部に位置しており、前記薬剤の体積の収縮に伴う前記アンカー部材の下降に連動して前記装飾体は前記薬剤用容器の上方で揺動することを特徴とする。
また、本発明の一実施形態は、前記薬剤揮散器の未使用状態で、前記装飾体は前記薬剤用容器の上方に位置しており、前記薬剤の体積の収縮に伴う前記アンカー部材の下降に連動して前記装飾体は前記薬剤用容器の上方から揺動して前記薬剤用容器の内部に入ることを特徴とする。
また、本発明の一実施形態は、前記薬剤揮散器の未使用状態で、前記装飾体は前記薬剤用容器の内部に位置しており、前記薬剤の体積の収縮に伴う前記ラックの下降に連動して前記装飾体は前記薬剤用容器の上方で揺動し、前記薬剤揮散器の使用終期で、前記装飾体は前記薬剤用容器の内部に入ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施形態によれば、連動機構により、薬剤の体積の収縮に伴うアンカー部材の下降に連動して揺動アームを揺動させ、装飾体を薬剤用容器の上方で揺動させるため、装飾体が薬剤の揮散機能の妨げになることを回避するとともに、使用開始時から終了時まで装飾体を見せやすくして動的な趣向を楽しませつつ薬剤の残量を容易に確認できるという効果を奏する。
また、本発明の一実施形態によれば、連動機構をリンク機構で構成すれば、連動機構を簡単に構成でき、装飾体を薬剤用容器の上方で確実に揺動させる上で有利となる。
また、本発明の一実施形態によれば、揺動アームを、第1揺動アームと第2揺動アームとで構成し、第1揺動アームの延在方向の他端が第2揺動アームまたは装飾体に下方から当接可能に構成すれば、装飾体の取り付け位置の自由度を向上させる上で有利となる。
また、本発明の一実施形態によれば、薬剤揮散器の未使用状態で、第1揺動アームの延在方向の他端が第2揺動アームまたは装飾体に下方から当接している構成とすれば、薬剤の体積の収縮に伴うアンカー部材の下降による動力を、第1揺動アームを介して速やかに第2揺動アームに伝達できるため、薬剤揮散器の使用に伴って装飾体を揺動させる上で有利となる。
また、本発明の一実施形態によれば、薬剤揮散器の未使用状態で、第1揺動アームの延在方向の他端が第2揺動アームまたは装飾体の下方に隙間をあけて対向している構成とすれば、薬剤の体積の収縮に伴うアンカー部材の下降による動力を、所定期間経過した後に第1揺動アームから第2揺動アームに伝達できるため、装飾体の揺動を開始する時期を調整する上で有利となる。
また、本発明の一実施形態によれば、揺動アームがその延在方向の中間部で薬剤用容器の内部に設けられた支軸により揺動可能に支持され、一端が薬剤用容器の内部でアンカー部材の上端に連結され、他端に装飾体が設けられた構成とすれば、構造の簡素化を図れ、コストダウンを図る上で有利となる。
また、本発明の一実施形態によれば、連動機構をラックピニオン機構で構成すれば、連動機構を簡単に構成でき、装飾体を薬剤用容器の上方で確実に揺動させる上で有利となる。
また、本発明の一実施形態によれば、薬剤揮散器の未使用状態で装飾体が薬剤用容器の内部に位置し、薬剤の体積の収縮に伴うアンカー部材の下降に連動して装飾体が薬剤用容器の上方で揺動する構成とすれば、薬剤揮散器を使用するにつれて装飾体が薬剤用容器から出てくるようにできるため、装飾体を見せやすくして動的な趣向を楽しませる上で有利となる。
また、本発明の一実施形態によれば、薬剤揮散器の未使用状態で装飾体が薬剤用容器の上方に位置し、薬剤の体積の収縮に伴うアンカー部材の下降に連動して装飾体が薬剤用容器の上方から揺動して薬剤用容器の内部に入るように構成すれば、薬剤揮散器を使用するにつれて装飾体が薬剤用容器に入っていくようにできるため、装飾体を見せやすくして動的な趣向を楽しませる上で有利となる。
また、本発明の一実施形態によれば、薬剤揮散器の未使用状態で装飾体が薬剤用容器の内部に位置し、薬剤の体積の収縮に伴うラックの下降に連動して装飾体が薬剤用容器の上方で揺動し、薬剤揮散器の使用終期で装飾体が薬剤用容器の内部に入るように構成すれば、薬剤揮散器を使用するにつれて装飾体が薬剤用容器から出て再び入っていくようにできるため、装飾体を見せやすくして動的な趣向を楽しませる上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施の形態にかかる薬剤揮散器を斜め上方から見た斜視図であって、(A)は薬剤揮散器の未使用状態、(B)は薬剤揮散器を使用している状態、(C)は薬剤揮散器の使用終期状態を示す図である。
図2】第2の実施の形態にかかる薬剤揮散器の断面図であって、(A)は薬剤揮散器の未使用状態、(B)は薬剤揮散器の使用終期状態を示す図である。
図3】第3の実施の形態にかかる薬剤揮散器の断面図であって、(A)は薬剤揮散器の未使用状態、(B)は薬剤揮散器の使用終期状態を示す図である。
図4】第4の実施の形態にかかる薬剤揮散器の断面図であって、(A)は薬剤揮散器の未使用状態、(B)は薬剤揮散器の使用終期状態を示す図である。
図5】第5の実施の形態にかかる薬剤揮散器の断面図であって、(A)は薬剤揮散器の未使用状態、(B)は薬剤揮散器の使用終期状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
まず、図1を参照して第1の実施の形態から説明する。
図1に示すように、第1の実施の形態の薬剤揮散器10Aは、薬剤12と、薬剤12を収容する薬剤用容器14と、アンカー部材20と、第1支軸22と、第2支軸24と、揺動アーム30と、装飾体32Aと、連動機構Lとを含んで構成されている。
薬剤12として、例えば、芳香剤や消臭剤などが挙げられる。
薬剤12は、揮散成分と揮散成分を揮散可能に保持する収縮性を有するゲル基剤とで構成されたゲル状であって、時間の経過に伴って揮散成分が揮散し体積が減少してき、すなわち収縮していき、平面視形状が小さくなり、また、厚さも薄くなる。
なお、薬剤12は、後述するアンカー部材20のように何か部材が埋め込まれていると、その部材を中心として収縮する性質を有している。
【0009】
薬剤用容器14は、容器本体16と蓋体18とを備えている。
図1に示すように、容器本体16は、円形の底板部1602と、底板部1602の周縁から起立する周壁部1604とを備えている。
周壁部1604の上端は円形の開口部1606となっている。
【0010】
蓋体18は、容器本体16の開口部1606の一部を覆うように装着される蓋であって、蓋体18の上面に、後述する装飾体32Aに関連した固定装飾体1802が固定されて取り付けられている。本実施の形態では、装飾体32Aは猫であり、固定装飾体1802は、皿と、皿の上に載せられた魚である。
【0011】
容器本体16は、例えばポリエチレンテフタレート(PET)樹脂により形成されており、蓋体18は、例えばポリプロピレン(PP)樹脂により形成されている。
容器本体16および蓋体18を形成する素材は、上記のものに限定されるものではなく、例えば、収容する揮散性薬剤の成分に合わせて、ポリエチレン(PE)樹脂やポリスチレン(PS)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂やポリ塩化ビニル(PVC)樹脂など従来公知の様々な材料が使用可能である。
【0012】
アンカー部材20は、薬剤12に埋設されると共に薬剤12の表面から突出している。
具体的には、本実施の形態のアンカー部材20は、鉛直方向に延在させた棒状部材と、この棒状部材の下端に設けられ薬剤12に埋設されるアンカー2002とを含んで構成されている。
アンカー2002は、薬剤12の収縮に伴って薬剤12から外れず薬剤12と一体に下降するように棒状部材よりも外径が大きい環状や大径部、球状、立方体状、直方体状などに形成されている。アンカー2002の形状は、薬剤12の収縮時に薬剤12が食い込み、かつ外れにくい点から、本実施の形態のような環状とすることが望ましい。
また、アンカー部材20の上端には、後述する第1揺動アーム26に連結するための連結ピン2004が設けられている。
アンカー部材20は、薬剤揮散器10Aが使用され、薬剤12の体積が収縮していくと、埋設されたアンカー2002が薬剤12の収縮に伴って下方に引っ張られることで下降していく。
【0013】
第1支軸22および第2支軸24は、容器本体16の内部の上部に水平方向に延在して設けられている。
具体的には、第1支軸22および第2支軸24は、それぞれその両端またはそれらの一端が周壁部1604の内周面の上部に取り付けられている。また、第2支軸24は、第1支軸22の斜め上方で、第1支軸22と平行に取り付けられている。
本実施の形態の第1支軸22は、周壁部1604の内周面の上部に沿って配置された環状部材1608を介して容器本体16に取り付けられている。
【0014】
連動機構Lは、薬剤12の体積の収縮に伴うアンカー部材20の下降に連動して揺動アーム30を揺動させ、装飾体32Aを薬剤用容器14の上方で揺動させるものである。
本実施の形態の揺動アーム30は、アンカー部材20に連結された第1揺動アーム26と、装飾体32Aが設けられた第2揺動アーム28とを有して構成されている。
【0015】
第1揺動アーム26は、その延在方向の中間部が薬剤用容器14の内部に設けられた第1支軸22により揺動可能に支持され、その延在方向の一端が薬剤用容器14の内部でアンカー部材20の上端に揺動可能に連結されている。
具体的には、本実施形態では、第1揺動アーム26は、ほぼ同一直線上に並べられた第1アーム2602および第2アーム2604と、それらアーム2602、2604を接続する取り付け部材2606と、第1アーム2602の先端に設けられた連結部材2608とを含んで構成されている。
取り付け部材2606は、C字状を呈し、取り付け部材2606が第1支軸24に嵌め込まれることで、第1揺動アーム26は、第1支軸22の長手方向に移動不能でかつ第1支軸22を中心にして揺動可能に支持されている。
連結部材2608は孔部を有し、この孔部にアンカー部材20の上端に設けられた連結ピン2004が挿入され、第1アーム2602の先端(第1揺動アーム26の延在方向の一端)はアンカー部材20の上端に回転可能に結合されている。
【0016】
第2揺動アーム28は、その延在方向の一端2802が薬剤用容器14の内部に設けられた第2支軸24により揺動可能に支持され、その延在方向の他端2804に装飾体32Aが設けられている。
具体的には、本実施の形態では、第2揺動アーム28は、その延在方向の一端2802にC字状の取り付け部材2806が設けられ、その延在方向の他端2804に猫の形をした装飾体32Aが設けられている。
そして、取り付け部材2806が第2支軸24に嵌め込まれることで、第2揺動アーム28は、第2支軸24の長手方向に移動不能でかつ第2支軸24を中心にして揺動可能に支持されている。
【0017】
第2アーム2604の先端(第1揺動アーム26の延在方向の他端)は、第2揺動アーム28または装飾体32Aに下方から当接可能であって、本実施の形態では、薬剤揮散器10Aの未使用状態で、第2揺動アーム28または装飾体32Aに下方から当接している。
【0018】
なお、本実施の形態では、第1揺動アーム26とアンカー部材20は連結部材2608と連結ピン2004により連結されているが、アンカー部材20の下降に連動して第1揺動アーム26が揺動可能であれば、他の連結方法を用いてもよい。例えば、第1揺動アーム26の一端側に長穴が設けられ、当該長穴にアンカー部材20の連結ピンが連結され、連結ピンが長穴をスライドすることで、第1揺動アーム26がアンカー部材20に連結されていてもよく、第1揺動アーム26とアンカー部材20の連結構造には従来公知の様々な構造が採用可能である。
また、本実施の形態では、第1揺動アーム26および第2揺動アーム28がC字状の取り付け部材2606、2806により第1支軸22や第2支軸24に取り付けられているが、第1揺動アーム26および第2揺動アーム28の第1支軸22、第2支軸24への取り付け構造には従来公知の様々な構造が採用可能である。
【0019】
次に、薬剤揮散器10Aを使用した場合の装飾体32Aの動作について説明する。
まず、図1(A)に示すように、未使用状態の薬剤揮散器10Aでは、薬剤12が薬剤用容器14の容器本体16の上部まで収容されているため、薬剤12の表面は上部に位置し、アンカー2002は容器本体16の上下方向の中間部に位置し、第1揺動アーム26は水平方向に延在している。
また、未使用状態の薬剤揮散器10Aでは、第1揺動アーム26の第2アーム2604の先端が装飾体32Aに下方から当接しており、第2揺動アーム28は、水平方向より少し傾いた状態で延在し、他端2804に設けられた装飾体32Aは開口部1606付近に位置している。
【0020】
薬剤揮散器10Aの使用を開始し、薬剤12の体積が収縮していくと、図1(B)に示すように、その収縮に伴ってアンカー部材20が下降していく。
アンカー部材20の下降に伴い、リンク機構L1により、アンカー部材20の上端に連結された第1揺動アーム26の第1アーム2602の先端が連動して下降していき、第1揺動アーム26が第1支軸22を中心に揺動する。
これにより、第1揺動アーム26の第2アーム2604の先端が、第2揺動アーム28に設けられた装飾体32Aを押圧し、第2揺動アーム28が第2支軸24を中心に揺動する。
第2揺動アーム28の揺動に伴い、装飾体32Aは第2支軸24を中心として揺動して開口部1606から容器本体16の上方に移動し、容器本体16の上方で上昇しつつ移動していく。
図1(B)では、薬剤12の体積の収縮により、薬剤12の表面(上面)が容器本体16の鉛直方向における中央付近まで下がった位置にあり、この状態で、第1揺動アーム26と第2揺動アーム28は水平方向に対してほぼ45度程度傾いた状態となり、装飾体32Aは開口部1606から完全に離れる。
【0021】
さらに、薬剤12の体積が収縮していくと、アンカー部材20の下降に伴う第1揺動アーム26と第2揺動アーム28の揺動により、装飾体32Aは第2支軸24を中心として揺動し、容器本体16の上方で上昇しつつ移動していく。
図1(C)は揮散成分が全て揮散した薬剤揮散器10Aの使用終期を示しており、薬剤揮散器10Aの使用終期では、薬剤12の表面とアンカー2002は、容器本体16の下部に位置しており、アンカー部材20と、アンカー部材20の上端に連結された第1揺動アーム26は鉛直方向に延在している。
そして、第2揺動アーム28は鉛直方向に近い状態で延在しており、装飾体32Aは蓋体18の上面に取り付けられた固定装飾体1802に近接する。すなわち、猫の顔が、皿の上の魚に近接する。
つまり、本実施の形態では、薬剤揮散器10Aを使用するにつれて、猫の形の装飾体32Aが薬剤用容器14の内部から出てきて、蓋体18の上面の皿と魚の形の固定装飾体1802に近づいていくことになり、すなわち猫が餌の魚に向かっていくという動的な趣向を楽しむことができる。
【0022】
したがって、本実施の形態では、薬剤12の体積の収縮に伴うアンカー部材20の下降に連動して装飾体32Aを薬剤用容器14の上方で揺動させる連動機構Lは、アンカー部材20と揺動アーム30とが揺動可能に結合されたリンク機構L1、すなわちアンカー部材20、連結ピン2004、第1揺動アーム26、第2揺動アーム28、第1支軸22、第2支軸24を含んだリンク機構L1で構成されている。
【0023】
このように、第1の実施の形態では、薬剤揮散器10Aに、薬剤12に埋設されると共に薬剤12の表面から突出するアンカー部材20と、薬剤用容器14の内部で揺動可能に支持されその先端に装飾体32Aが設けられた揺動アーム30とを備え、連動機構Lにより、薬剤12の体積の収縮に伴うアンカー部材20の下降に連動して揺動アーム30を揺動させ、装飾体32Aを薬剤用容器14の上方で揺動させるため、装飾体32Aが薬剤12の揮散機能の妨げになることを回避するとともに、使用開始時から終了時まで装飾体32Aを見せやすくして動的な趣向を楽しませつつ薬剤12の残量を容易に確認できるという効果を奏する。
また、本実施の形態では、連動機構Lをリンク機構L1で構成したため、連動機構Lを簡単に構成でき、装飾体32Aを薬剤用容器14の上方で確実に揺動させる上で有利となる。
また、本実施の形態では、揺動アーム30を、第1揺動アーム26と第2揺動アーム28とで構成し、第2アーム2604の先端(第1揺動アーム26の延在方向の他端)が第2揺動アーム28または装飾体32Aに下方から当接可能に構成したため、装飾体32Aの取り付け位置の自由度を向上させる上で有利となる。すなわち、例えば、第2揺動アーム28を長くして装飾体32Aを薬剤用容器14の外部に位置するように設けることもできる。
また、本実施の形態では、揺動アーム30を、第1揺動アーム26と第2揺動アーム28とで構成したため、第2揺動アーム28を使用開始時に取り付けることもできる。これにより例えば、輸送時に、複雑な形状の装飾体32Aが破損することを防いだり、第2揺動アーム28および装飾体32Aの動きにより薬剤12に傷をつけることを防ぐことができる。
また、本実施の形態では、薬剤揮散器10Aの未使用状態で、第2アーム2604の先端が第2揺動アーム28または装飾体32Aに下方から当接している構成とすれば、薬剤12の体積の収縮に伴うアンカー部材20の下降による動力を、第1揺動アーム26を介して速やかに第2揺動アーム28に伝達できるため、薬剤揮散器10Aの使用に伴って装飾体32Aを揺動させる上で有利となる。
【0024】
なお、第1の実施の形態では、容器本体16の開口部1606の一部を覆う蓋体18が設けられた場合について説明したが、本発明において、蓋体18はあってもよくなくてもよい。
また、蓋体18は、容器本体16の開口部1606の一部を覆うものであっても全域を覆うものであってもよい。
蓋体が開口部1606の全域を覆う場合には、蓋体18に、薬剤12の揮散用の複数の開口部を設けると共に、第1揺動アーム26や第2揺動アーム28、装飾体32Aの揺動を許容する溝を設けておけばよい。
また、蓋体18は、予め取り付けられた構成としてもよいし、使用開始時に取り付ける構成としてもよい。
また、蓋体18の固定装飾体1802の手前に、装飾体32Aが通過する筒状のハウスなどを設けるなど、蓋体18に、装飾体32Aに関連付けた様々な固定装飾体1802を設けるなど任意であり、装飾体32Aが通過する筒状のハウスを設ける場合には、ハウスの底部に第1揺動アーム26や第2揺動アーム28が通過する溝を設けておけばよい。
【0025】
(第2の実施の形態)
次に、図2を参照して第2の実施の形態について説明する。
第1の実施の形態では、薬剤揮散器10Bの未使用状態で、第1揺動アーム26の他端(第2アーム2604の先端)が第2揺動アーム28または装飾体32Aに下方から当接していたのに対して、第2の実施の形態では、第1揺動アームの他端が第2揺動アームまたは装飾体の下方に隙間Sをあけて対向している点が異なっている。
なお、以下の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同様な個所、部材に同一の符号を付してその説明を省略し、第1の実施の形態と異なった個所について重点的に説明する。
また、以下の実施の形態では、薬剤用容器14の蓋体18について説明を省略しているが、蓋体18は上述のようにあってもよくなくてもよい。
【0026】
第1揺動アーム36は、第1の実施の形態と同様に、取り付け部材2606を介して第1支軸22により第1支軸22の長手方向に移動不能にかつ第1支軸22を中心に揺動可能に支持され、第1アーム2602の先端がアンカー部材20の上端に連結され、第2アーム2604の先端に、屈曲部を介して第2アーム2604の延在方向と直交する方向に延在する第3アーム3604が設けられている。
【0027】
第3アーム3604の先端(第1揺動アーム36の延在方向の他端)は、第2揺動アーム28または装飾体32Aの下方から当接可能であって、本実施の形態では、薬剤揮散器10Bの未使用状態で、第3アーム3604の先端は、第2揺動アーム28の下方に隙間Sをあけて対向している。
本実施の形態では、第2揺動アーム28が図2(A)に示す初期位置より下がらないように支えるためのストッパー38が、容器本体16の周壁部1604の内周面に取り付けられている。
なお、ストッパー38を設けず、環状部材1608(図1参照)にストッパー38の機能を持たせるなど任意である。
【0028】
次に、薬剤揮散器10Bを使用した場合の装飾体32Aの動作について、第1の実施の形態と異なる部分を詳細に説明する。
まず、図2(A)に示すように、未使用状態の薬剤揮散器10Bでは、第1の実施の形態と同様に、アンカー部材20に連結された第1揺動アーム36が水平方向に延在している。
本実施の形態では、第3アーム3604の先端が第2揺動アーム28の下方に隙間Sをあけて対向しており、第2揺動アーム28は、水平方向より少し傾いた状態で延在し、他端2804に設けられた装飾体32Aは開口部1606付近に位置している。
【0029】
薬剤揮散器10Bの使用を開始し、薬剤12の体積が収縮していくと、第1の実施の形態と同様、その収縮に伴ってアンカー部材20が下降し、第1揺動アーム36が第1支軸22を中心に揺動する。
このとき、第3アーム3604の先端と装飾体32Aの下方とは隙間Sがあいているため、第2揺動アーム28は薬剤揮散器10Bの使用後すぐに第1揺動アーム36に押圧されず、初期位置をしばらく保持することができる。
さらに、アンカー部材20が下降し、第3アーム3604の先端が、第2揺動アーム28に当接して第2揺動アーム28を押圧すると、第2揺動アーム28が第2支軸24を中心に揺動し始め、装飾体32Aが上方に揺動し始める。
【0030】
さらに、薬剤12の体積が収縮していくと、第1の実施の形態と同様に、アンカー部材20の下降に連動して第1揺動アーム36、第2揺動アーム28が揺動し、装飾体32Aは、第2支軸24を中心として揺動し開口部1606から容器本体16の上方へ揺動しつつ上昇していく。
そして、薬剤揮散器10Bの使用終期では、図2(B)に示すように、装飾体32Aは開口部1606の中央の上方でほぼ水平状態となる。
【0031】
したがって、第1の実施の形態と同様に、第2の実施の形態も、薬剤12の体積の収縮に伴うアンカー部材20の下降に連動して装飾体32Aを薬剤用容器14の上方で揺動させる連動機構Lが、アンカー部材20、連結ピン2004、第1揺動アーム26、第2揺動アーム28、第1支軸22、第2支軸24を含んだリンク機構L2で構成されている。
【0032】
このように、第2の実施の形態では、第1の実施の形態と同様の効果に加え、以下の効果を奏する。
本実施の形態では、薬剤揮散器10Bの未使用状態で、第3アーム3604の先端が第2揺動アーム28の下方に隙間Sをあけて対向しているため、薬剤12の体積の収縮に伴うアンカー部材20の下降による動力を、薬剤揮散器10Bの使用初期において所定期間経過した後に第1揺動アーム36から第2揺動アーム28に伝達できるため、装飾体32Aの揺動を開始する時期を調整する上で有利となる。
【0033】
(第3の実施の形態)
次に、図3を参照して第3の実施の形態について説明する。
第1の実施の形態では、揺動アーム30が、第1揺動アーム26および第2揺動アーム28の2つのアームで構成されていたのに対して、第3の実施の形態では、揺動アーム40が単一のアームで構成されている点が異なっている。
【0034】
揺動アーム40は、第1アーム4002および第2アーム4004と、それらアーム4002、4004をほぼ同一直線上に接続する取り付け部材4006と、第1アーム4002の先端に設けられた連結部材2608とを含んで構成されている。
スノーボードをしている人の形をした装飾体32Bは、第2アーム4004の先端(揺動アーム40の延在方向の他端)に設けられている。
取り付け部材4006は、円筒状を呈し、取り付け部材4006が支軸42に嵌め込まれることで、揺動アーム40は、支軸42の長手方向に移動不能でかつ支軸42を中心にして揺動可能に支持されている。
連結部材2608は、孔部を有し、この孔部にアンカー部材20の上端に設けられた連結ピン2004が挿入され、第1アーム4002の先端(揺動アーム40の延在方向の一端)はアンカー部材20の上端に回転可能に結合されている。
【0035】
薬剤揮散器10Cを使用した場合の装飾体32Bの動作は第1の実施の形態と同様であり、薬剤揮散器10Cの未使用状態では、容器本体16の開口部1606に近い内部に位置している装飾体32Bが、薬剤揮散器10Cの使用に伴って開口部1606から出て薬剤用容器14の上方で上昇しつつ移動する。
すなわち、図3(A)に示すように、未使用状態の薬剤揮散器10Cでは、薬剤12が薬剤用容器14の容器本体16の上部まで収容されているため、薬剤12の表面も上部に位置し、アンカー部材20は鉛直方向に延在し、揺動アーム40は水平方向に延在し、装飾体32Bは容器本体16の内部に位置している。
したがって、アンカー部材20も容器本体16の上部側に位置しているため、アンカー部材20の上端に連結された揺動アーム40は、水平方向に延在し、装飾体32Bは容器本体16の内部に位置している。
【0036】
薬剤揮散器10Cの使用を開始し、薬剤12の体積が収縮していくと、その収縮に伴ってアンカー部材20が下降し、リンク機構L3により、揺動アーム40が支軸42を中心に揺動する。これにより、装飾体32Bは開口部1606から上方に移動し、装飾体32Bは薬剤用容器14の上方で次第に上昇する方向に揺動する。
揮散成分が全て揮散した薬剤揮散器10Cの使用終期では、図3(B)に示すように、アンカー部材20と揺動アーム40は鉛直線上でほぼ同一直線上に位置し、装飾体32Bは、薬剤用容器14の上方の最も高位に位置する。
すなわち人がスノーボードで滑っているという動的な趣向を楽しむことができる。
【0037】
したがって、第3の実施の形態では、薬剤12の体積の収縮に伴うアンカー部材20の下降に連動して装飾体32Bを薬剤用容器14の上方で揺動させる連動機構Lが、アンカー部材20、連結ピン2004、揺動アーム40、支軸42を含んだリンク機構L3で構成されている。
【0038】
このように、第3の実施の形態では、第1の実施の形態と同様の効果に加え、以下の効果を奏する。
第3の実施の形態では、揺動アーム40を1つのアームで構成し、第1アーム4002の先端が薬剤用容器14の内部でアンカー部材20の上端に連結され、第2アーム4004の先端に装飾体32Bが設けられた構成としたので、第1の実施の形態に比べリンク機構L3の構造の簡素化を図れ、コストダウンを図る上で有利となる。
【0039】
(第4の実施の形態)
次に、図4を参照して第4の実施の形態について説明する。
第1~第3の実施の形態では、薬剤揮散器10A、10B、10Cの未使用状態では、容器本体16の開口部1606に近い内部に位置している装飾体32A、32Bが、薬剤揮散器10A、10B、10Cの使用に伴って容器本体16から出て次第に上昇していくのに対して、第4の実施の形態では、薬剤揮散器10Dの未使用状態では、容器本体16の上方に位置している装飾体32Bが、薬剤揮散器10Dの使用に伴って次第に下降し容器本体16に入っていく点が第1~第3の実施の形態と異なっている。
また、第4の実施の形態では、揺動アーム44が単一のアームで構成されている点は第3の実施の形態と同様であるが、揺動アーム44の構成が第3の実施の形態と異なっている。
【0040】
揺動アーム44は、第1アーム4402および第2アーム4404と、それらアーム4402、4404をほぼ直角に接続する取り付け部材4406と、第1アーム4402の先端に設けられた連結部材2608とを含んで構成されている。
スノーボードをしている人の形をした装飾体32Bが、第2アーム4004の先端に設けられている点、取り付け部材4406が支軸46に支持される点、連結部材2608および連結ピン2004を介して第1アーム4402の先端とアンカー部材20の上端が結合される点、リンク機構L4の構成は第3の実施の形態と同様である。
【0041】
次に、薬剤揮散器10Dを使用した場合の装飾体32Bの動作について説明する。
まず、図4(A)に示すように、薬剤揮散器10Dの未使用状態では、薬剤12が薬剤用容器14の容器本体16の上部まで収容されているため、薬剤12の表面も上部に位置している。
アンカー部材20と第2アーム4404は鉛直方向に延在し、第1アーム4402は、薬剤12の表面の上方で水平方向に延在し、装飾体32Bは薬剤用容器14の上方で最も高位に位置している。
薬剤揮散器10Dの使用を開始し薬剤12の体積が収縮していくと、その収縮に伴ってアンカー部材20が下降していき、リンク機構L4により、揺動アーム44が支軸46を中心に揺動する。
これにより、第2アーム4404の先端に設けられた装飾体32Bは支軸46を中心に揺動し、容器本体16の上方で下降しつつ移動し、開口部1606に次第に近づいていき、開口部1606から容器本体14の内部に入っていく。
そして、図4(B)に示すように、薬剤揮散器10Dの使用終期では、アンカー部材20と第1アーム4402とが鉛直方向でほぼ同一直線上に並べられ、第2アーム4404がほぼ水平方向に延在し、装飾体32Bのほぼ全体が容器本体16の内部に入り込む。
【0042】
したがって、第4の実施の形態では、薬剤12の体積の収縮に伴うアンカー部材20の下降に連動して装飾体32Bを薬剤用容器14の上方で揺動させる連動機構Lが、第3の実施の形態とほぼ同様なアンカー部材20、連結ピン2004、揺動アーム44、支軸46を含んだリンク機構L4で構成されている。
本実施の形態では、薬剤揮散器10Dを使用するにつれて、スノーボードをしている人の形の装飾体32Bが容器本体16の上方から内部に入っていくことになり、すなわち人がスノーボードで滑っているという動的な趣向を楽しむことができる。
このような第4の実施の形態によっても第3の実施の形態と同様の効果が奏される。
【0043】
(第5の実施の形態)
次に、図5を参照して第5の実施の形態について説明する。
第1~第4の実施の形態では、連動機構Lとしてリンク機構L1~L4を用いていたのに対して、第5の実施の形態では、連動機構Lとして、ラック50とピニオン54を用いたラックピニオン機構L5を用いる点が異なっている。
図5に示すように、薬剤揮散器10Eは、薬剤12と、薬剤12を収容する薬剤用容器14と、ラック50と、支軸52と、ピニオン54と、揺動アーム56とを含んで構成されている。
【0044】
ラック50は、板状の部材の表面に複数の歯部5004を設けたものである。
ラック50は、平面視した場合、容器本体16の中央に配置され、鉛直方向に延在させてその下部が薬剤12に埋設されその上部が薬剤12の上方に位置している。
ラック50の上端は、容器本体16の周壁部1604の上端よりも低い箇所に位置している。
なお、第1~第4の実施の形態のアンカー部材20の少なくとも薬剤12の上方に位置する箇所のみにラック50を設けるなど任意であるが、本実施の形態では、ラック50のみで第1~第4の実施の形態のアンカー部材20を構成している。
【0045】
支軸52は、薬剤用容器14の内部の上部に、水平方向に延在して設けられている。
ピニオン54は、薬剤用容器14の内部で薬剤12の上方に支軸52により回転可能に支持され、ピニオン54の歯部5402は、ラック50の歯部5004に噛合している。
揺動アーム56は、一端5602がピニオン54に一体回転可能に連結され、他端5604に装飾体32Bが設けられている。
【0046】
また、ラック50の歯部5004とピニオン54の歯部5402とが常時噛合するように、ラック50とピニオン54との相対的な位置関係を保つケース58が設けられている。
ケース58には、ラック50の鉛直方向の移動を許容する不図示のラック用溝と、支軸52を挿通する不図示の孔と、ピニオン54を回転可能に収容する不図示の収容部と、揺動アーム56の揺動を許容する不図示の溝とが設けられている。
【0047】
次に、薬剤揮散器10Eを使用した場合の装飾体32Bの動作について説明する。
図5(A)に示すように、薬剤揮散器10Eの未使用状態では、薬剤12が薬剤用容器14の容器本体16の上部まで収容されているため、薬剤12の表面も上部に位置している。
ラック50は、鉛直方向に延在し、その上端は、容器本体16の周壁部1604の上端とほぼ同じ高さか、容器本体16の周壁部1604の上端よりも低い箇所に位置している。
揺動アーム56は、水平方向に延在し、装飾体32Bは容器本体16の内部に位置している。
【0048】
薬剤揮散器10Eの使用を開始し、薬剤12の体積が収縮していくと、その収縮に伴ってラック50が下降していく。
これにより、ラック50の歯部5004に噛合されたピニオン54が回転し、ピニオン54の回転と一体に揺動アーム56が支軸52を中心に揺動する。
そして、装飾体32Bが支軸52を中心に上方に揺動し、開口部1606から容器本体16の上方に移動する。
さらに、薬剤12の体積が収縮していくと、その収縮に伴ってラック50が下降してピニオン54が回転し、ピニオン54と一体に揺動アーム56が支軸52を中心に揺動し、装飾体32Bは、容器本体16の上方で上昇しつつ容器本体16の中央に向かって移動していく。
【0049】
やがて、揺動アーム56がラック50と平行して鉛直方向に延在した位置となり、この位置で装飾体32Bは容器本体16のほぼ中央に位置し、最も高位に位置する。
さらに、薬剤12の体積が収縮していくと、その収縮に伴ってラック50が下降してピニオン54が回転し、ピニオン54と一体に揺動アーム56が支軸52を中心に揺動し、今度は、装飾体32Bは容器本体16の中央の上方から下降しつつ容器本体16の内部に向かって移動していく。
そして、薬剤揮散器10Eの使用終期では、図5(B)に示すように、揺動アーム56は薬剤揮散器10Eの未使用状態の時とは反対の方向で水平方向に延在し、装飾体32Bは容器本体16の内部に入り込む。
本実施の形態の例では、薬剤揮散器10Eを使用するにつれて、スノーボードをしている人の形の装飾体32Bが容器本体16の内部から出てきて上方にいき、再度容器本体16の内部に入ることになり、すなわち人がスノーボードで滑っているという動的な趣向を楽しむことができる。
【0050】
このような第5の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な効果が奏される他、次の効果が奏される。
連動機構Lとしてラックピニオン機構L5を設けたので、装飾体32Bの揺動範囲を大きくとることができる。
すなわち、第1~第4の実施の形態では、連動機構Lとしてリンク機構L1~L4を用いていたため装飾体32A、32Bが取り付けられた揺動アーム30、40、44の揺動範囲がほぼ90度であったのに対し、連動機構Lとしてラックピニオン機構L5を用いると、装飾体32Bが取り付けられた揺動アーム56の揺動範囲をほぼ180度まで拡大でき、装飾体32Bの動的な趣向を楽しむ上でより有利となる。
なお、連動機構Lとしてラックピニオン機構L5を用いた場合、例えば、ピニオン54の直径を大きくしていくことで、第1~第4の実施の形態のように、揺動アーム56の揺動範囲を小さく調整でき、また、ピニオン54の直径を小さくしていくことで揺動アーム56の揺動範囲を大きく調整できる。
【0051】
なお、本実施の形態では、連動機構Lとして、リンク機構L1~L4とラックピニオン機構L5を用いた場合について説明したが、連動機構Lとして従来公知の様々な機構が採用可能である。ただし、実施の形態のように、連動機構Lとして、リンク機構L1~L4やラックピニオン機構L5を用いると、連動機構Lを簡単に構成でき、装飾体32A、32Bを容器本体16の上方で確実に揺動させる上で有利となる。
【符号の説明】
【0052】
10A、10B、10C、10D、10E 薬剤揮散器
12 薬剤
14 薬剤用容器
16 容器本体
1606 開口部
18 蓋体
1802 固定装飾体
20 アンカー部材
2002 アンカー
22 第1支軸
24 第2支軸
26、36 第1揺動アーム
28 第2揺動アーム
30、40、44、56 揺動アーム
32A、32B 装飾体
42、46、52 支軸
50 ラック
54 ピニオン
L1、L2、L3、L4 リンク機構
L5 ラックピニオン機構
S 隙間
図1
図2
図3
図4
図5