(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135873
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】空気清浄装置
(51)【国際特許分類】
F24F 8/22 20210101AFI20230922BHJP
A61L 9/20 20060101ALI20230922BHJP
A61L 9/00 20060101ALI20230922BHJP
F24F 8/80 20210101ALI20230922BHJP
F24F 8/167 20210101ALN20230922BHJP
【FI】
F24F8/22
A61L9/20
A61L9/00 C
F24F8/80 216
F24F8/80 238
F24F8/167
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041180
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100011
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 省三
(72)【発明者】
【氏名】望月 克也
(72)【発明者】
【氏名】水木 庸介
(72)【発明者】
【氏名】山崎 良介
(72)【発明者】
【氏名】田村 裕人
【テーマコード(参考)】
4C180
【Fターム(参考)】
4C180AA07
4C180CC03
4C180DD03
4C180EA34X
4C180HH05
4C180HH19
(57)【要約】 (修正有)
【課題】紫外線の漏洩防止を維持しながら空気清浄効率を高くできる空気清浄装置を提供する。
【解決手段】中心軸Ax上に吸気口及び排気口を有し、内部に棒状紫外線照射ユニット3を有する円筒状筐体1と空気取込ユニットからなる空気清浄装置であって、棒状紫外線照射ユニットと排気口の間に円錐状遮光部材41及び円環状遮光部材42からなる排気口側遮光部4が設けられ、棒状紫外線照射ユニットと吸気口の間に円錐状遮光部材及び円環状遮光部材からなる吸気口側遮光部が設けられ、ここで、円錐状遮光部材41の直径D1は、(L1/L2)・D2a+(1-L1/L2)・W≦D1<D0[但し、D2aは円環状遮光部材の内側開孔の内径、D0は円筒状筐体の内径、L1は棒状紫外線照射ユニットの最遠端と円錐状遮光部材間の距離、L2は棒状紫外線照射ユニットの最遠端と円環状遮光部材間の距離、Wは棒状紫外線照射ユニットの幅]である。
【選択図】
図6B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸上に吸気口及び排気口を有する筐体と、
前記筐体の前記吸気口の外側に設けられ、ファンユニットを有する空気取込ユニットと、
前記吸気口と前記排気口との間の前記筐体内に設けられた紫外線照射ユニットと、
前記紫外線照射ユニットと前記排気口との間の前記筐体内に設けられ、前記筐体の前記中心軸を含みかつ前記筐体の前記内面に接触していない第1の遮光部材と、
前記第1の遮光部材と前記排気口との間の前記筐体内に設けられ、前記筐体の前記中心軸を含まず前記筐体の前記内面に接触した第2の遮光部材と
を具備し、
前記第1の遮光部材の前記筐体の前記中心軸横方向の直径D1は、
(L1/L2)・D2a+(1-L1/L2)・W≦D1<D0
但し、D2aは前記第2の遮光部材の内側開孔の内径、
D0は前記筐体の内径、
L1は前記第1の遮光部材の前記排気口側の端部と前記紫外線照射ユニットの該第1の遮光部材からの最遠端との距離、
L2は前記第2の遮光部材の前記排気口側の端部と前記紫外線照射ユニットの該第2の遮光部材からの最遠端との距離、
Wは前記紫外線照射ユニットの前記筐体の前記中心軸横方向の幅
である空気清浄装置。
【請求項2】
前記筐体及び前記紫外線照射ユニットは該筐体の前記中心軸に対して軸対象である請求項1に記載の空気清浄装置。
【請求項3】
前記第1、第2の遮光部材は前記筐体の前記中心軸に対して軸対称である請求項1又は2に記載の空気清浄装置。
【請求項4】
前記第1の遮光部材は前記紫外線照射ユニットに対して錘状に突出し、
前記第2の遮光部材は円環状をなし、前記第2の遮光部材の断面形状は前記筐体の前記中心軸から離れる程前記紫外線照射ユニットに近づくように傾斜している請求項1~3のいずれかに記載の空気清浄装置。
【請求項5】
さらに、前記第1、第2の遮光部材の前記紫外線照射ユニットに対向する面に設けられた光触媒層を具備する請求項1~4のいずれかに記載の空気清浄装置。
【請求項6】
さらに、
前記吸気口と前記紫外線照射ユニットとの間の前記筐体内に設けられ、前記筐体の前記中心軸を含みかつ前記筐体の内面に接触していない第3の遮光部材と、
前記第3の遮光部材と前記紫外線照射ユニットとの間の前記筐体内に設けられ、前記筐体の前記中心軸を含まず前記筐体の前記内面に接触した第4の遮光部材と
を具備し、
前記第3の遮光部材の前記筐体の前記中心軸横方向の直径D3は、
(L3/L4)・D4a+(1-L3/L4)・W≦D3<D0
但し、D4aは前記第4の遮光部材の内側開孔の内径、
L3は前記第3の遮光部材の前記排気口側の端部と前記紫外線照射ユニットの該第3の遮光部材からの最遠端との距離、
L4は前記第4の遮光部材の前記排気口側の端部と前記紫外線照射ユニットの該第4の遮光部材からの最遠端との距離
である請求項1~5のいずれかに記載の空気清浄装置。
【請求項7】
前記筐体は該筐体の前記中心軸に対して軸対称であり、
前記第3、第4の遮光部材は前記筐体の前記中心軸に対して軸対称である請求項6に記載の空気清浄装置。
【請求項8】
前記第3の遮光部材は前記吸気口に対して錘状に突出し、
前記第4の遮光部材は円環状をなし、前記第4の遮光部材の断面形状は前記筐体の前記中心軸から離れる程前記紫外線照射ユニットから遠ざかるように傾斜している請求項7又は8に記載の空気清浄装置。
【請求項9】
さらに、前記第3、第4の遮光部材の前記紫外線照射ユニットに対向する面に設けられた光触媒層を具備する請求項6~8のいずれかに記載の空気清浄装置。
【請求項10】
前記筐体及び前記紫外線照射ユニットは円筒形状である請求項1~9のいずれかに記載の空気清浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紫外線の漏洩防止を維持しながら空気清浄効率を高くできる空気清浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、空気清浄装置は、吸気口及び排気口を有する筐体と、吸気口と排気口との間の筐体内に設けられ、筐体内の空気を殺菌するための紫外線を照射する紫外線照射ユニットと、空気を筐体内に送風するためのファンユニットとによって構成されている。
【0003】
上述の空気清浄装置においては、紫外線照射ユニットから人体に有害な紫外線が空気清浄装置外に漏れるのを防止するために、排気口と紫外線照射ユニットとの間及び吸気口と紫外線照射ユニットとの間の筐体内に遮光部材を設けている。
【0004】
図16は第1の従来の空気清浄装置を示す(参照:特許文献1の
図4、
図7)。
図16においては、排気口101aと紫外線照射ユニット102との間の筐体101内に排気口側遮光部103を設ける。排気口側遮光部103は、筐体101に対して同一傾斜角度αで配列された多数の遮光板1031aよりなる角度固定遮光ルーバ1031と、筐体101に対して同一傾斜角度αで配列された多数の遮光板1032aよりなる角度固定遮光ルーバ1032とを対称となるように重ね合わせて構成される。この結果、角度固定遮光ルーバ1031の遮光板1031aと角度固定遮光ルーバ1032の遮光板1032aとが紫外線U1を遮光させると共に、筐体101内の空気流A1を通過させるように「く」の字形状となる。尚、図示しないが、筐体101の吸気口側も同一構成をなしている。
【0005】
図16の第1の従来の空気清浄装置においては、紫外線照射ユニット102からの紫外線U1は排気口側遮光部103の角度固定遮光ルーバ1031、1032の「く」の字形状の遮光板1031a、1032aによって完全に吸収又は反射される、つまり、遮光される。より詳細には、紫外線U1は遮光板1031aによって遮光され、また、遮光板1031a間を通過した紫外線U1は遮光板1032aによって遮光される。他方、筐体101内の空気流A1は排気口側遮光部103の遮光板1031a、1032aによって分岐され、排気口側遮光部103と筐体101の排気口101aとの間で合流されて排気口101aより排気される。この場合、「く」の字形状の遮光板1031a、1032aが筐体101内で非対称なので、筐体101の排気口101aからの空気流A1は筐体101に対して非対称となる。
【0006】
図17は第2の従来の空気清浄装置を示す(参照:特許文献2の
図3、
図5)。
図17においても、排気口201aと紫外線照射ユニット202との間の筐体201内に排気口側遮光部203を設けている。排気口側遮光部203は、筐体201に対して同一傾斜角度βで配列された多数の遮光板2031aよりなる角度固定遮光ルーバ2031と、筐体201に対して同一傾斜角度γで配列された多数の遮光板2032aよりなる角度可変遮光ルーバ2032とを重ね合わせて構成される。この結果、遮光板2031aと遮光板2032aとが紫外線U2を遮光させると共に、筐体201内の空気流A2を通過させるように角度が異なる段差状の「く」の字形状となる。尚、図示しないが、筐体201の吸気口側も同一構成をなしている。
【0007】
図17の第2の従来の空気清浄装置においても、紫外線照射ユニット202からの紫外線U2は排気口側遮光部203の角度固定遮光ルーバ2031、角度可変遮光ルーバ2032の段差状の「く」の字形状の遮光板2031a、2032aによって完全に吸収又は反射される、つまり、遮光される。より詳細には、紫外線U2は遮光板2031aによって遮光され、また、遮光板2031a間を通過した紫外線U2は遮光板2032aによって遮光される。他方、筐体201内の空気流A2は排気口側遮光部203の遮光板2031a、2032aによって分岐され、排気口側遮光部203と筐体201の排気口201aとの間で合流されて排気口201aより排気される。この場合、「く」の字形状の遮光板2031a、2032aが筐体201内で非対称なので、筐体201の排気口201aからの空気流A2は筐体201に対して非対称となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009-90088号公報
【特許文献2】特開2009-195369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、
図16、
図17の第1、第2の従来の空気清浄装置においては、遮光部の2つの遮光ルーバの多数の遮光板による空気流A1、A2の圧力損失が大きくなる。特に、遮光板間での傾斜角度が変曲する大きな変曲領域で空気流A1、A2が変曲して塞き止められ、空気流A1、A2の圧力損失が大きくなる。この結果、風量が小さくなり、従って、空気清浄効率が低いという課題がある。
【0010】
また、
図16、
図17の第1、第2の従来の空気清浄装置においては、多数の遮光板よりなる複雑なルーバのために製造コストが高くなるという課題もある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するために、本発明に係る空気清浄装置は、中心軸上に吸気口及び排気口を有する筐体と、筐体の吸気口の外側に設けられ、ファンユニットを有する空気取込ユニットと、吸気口と排気口との間の筐体内に設けられた紫外線照射ユニットと、紫外線照射ユニットと排気口との間の筐体内に設けられ、筐体の中心軸を含みかつ筐体の内面に接触していない第1の遮光部材と、第1の遮光部材と排気口との間の筐体内に設けられ、筐体の中心軸を含まず筐体の内面に接触した第2の遮光部材とを具備し、第1の遮光部材の筐体の中心軸横方向の直径D1は、
(L1/L2)・D2a+(1-L1/L2)・W≦D1<D0
但し、D2aは第2の遮光部材の内側開孔の内径、
D0は筐体の内径、
L1は第1の遮光部材と紫外線照射ユニットの該第1の遮光部材からの最遠端との距離、
L2は第2の遮光部材と紫外線照射ユニットの該第2の遮光部材からの最遠端との距離、
Wは紫外線照射ユニットの筐体の中心軸横方向の幅
である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、空気流が変曲する変曲領域が小さいので、空気流の圧力損失が小さくなる。この結果、風量が大きくなり、従って、紫外線の漏洩防止を維持しながら空気清浄効率を高くできる。また、部品数が少ない遮光部材のために、製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る空気清浄装置の実施の形態を示す全体正面図である。
【
図2】
図1の棒状紫外線照射ユニットの取付方法を説明するための円筒状筐体内部を示す斜視図である。
【
図3】
図1の排気口側の円錐状遮光部材の取付方法を説明するための円筒状筐体の内部を示す斜視図である。
【
図4】
図1の排気口側の円環状遮光部材の接合方法を説明するための円筒状筐体の内部を示し、(A)は断面図、(B)は斜視図である。
【
図5】
図1の排気口側遮光部の円錐状遮光部材及び円環状遮光部材の拡大断面図であって、第1の遮光条件を説明する図である。
【
図6A】
図1の排気口側遮光部の棒状紫外線照射ユニットからの斜め紫外線の遮光を説明するための図であって、第2の遮光条件を説明する図である。
【
図7】
図1の排気口側遮光部近傍の空気流を説明するための図である。
【
図8】
図1の吸気口側遮光部近傍の空気流を説明するための図である。
【
図9】
図1の空気清浄装置の空気流シミュレーションを説明するための図であって、(A)はシミュレーション条件、(B)はシミュレーション結果である。
【
図10】比較例として
図16の「く」の字形状遮光部材を採用した場合の空気清浄装置の空気流シミュレーションを説明するための図であって、(A)はシミュレーション条件、(B)はシミュレーション結果である。
【
図11】
図1の空気清浄装置に導入された光触媒層を説明するための図である。
【
図12】
図1の遮光部の第1の変更例を示す斜視図である。
【
図13】
図1の遮光部の第2の変更例を示す斜視図である。
【
図14】
図1の遮光部の参考例を示す斜視図である。
【
図16】第1の従来の空気清浄装置を示す断面図である。
【
図17】第2の従来の空気清浄装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明に係る空気清浄装置の実施の形態を示す全体正面図である
【0015】
図1において、空気清浄装置は、中心軸Ax上に吸気口1a及び排気口1bを有する縦長の円筒状筐体1と、円筒状筐体1の吸気口1aの外側に設けられた空気取込ユニット2とによって構成されている。
【0016】
円筒状筐体1内には、円筒状筐体1内の空気流Aに殺菌効果の大きい波長210~310nm、例えば265nmの深紫外線を照射するための円筒状の棒状紫外線照射ユニット3が設けられている。棒状紫外線照射ユニット3は、例えば冷陰極型紫外線ランプ、または一端あるいは両端に深紫外線発光ダイオード(LED)素子が接続された導光棒などである。但し、紫外線は深紫外線に限定されない。ここで、円筒状筐体1に円筒状の棒状紫外線照射ユニット3を適用することで、筐体1内に一様に光を照射することができ、効率的な殺菌が可能となる。棒状紫外線照射ユニット3と排気口1bとの間の円筒状筐体1内には、上流側の円錐状遮光部材41及び下流側の円環状遮光部材42よりなる排気口側遮光部4が設けられ、棒状紫外線照射ユニット3からの紫外線が排気口1bから漏れないようにする。同様に、吸気口1aと棒状紫外線照射ユニット3との間の円筒状筐体1内には、上流側の円錐状遮光部材51及び下流側の円環状遮光部材52よりなる吸気口側遮光部5が設けられ、棒状紫外線照射ユニット3からの紫外線が吸気口1aから漏れないようにする。円錐状遮光部材41(51)及び円環状遮光部材42(52)はたとえば黒色処理されたアルミニウムによって形成される。
【0017】
空気取込ユニット2は、空気取込口21から円筒状筐体1へ空気流Aを取込むためのファンユニット6を有する。この場合、ファンユニット6は空気取込ユニット2から円筒状筐体1側に若干突出している。これにより、円筒状筐体1と空気取込ユニット2のファンユニット6とが密着し易くなっている。また、空気取込口21とファンユニット6との間に、取込まれた空気流Aから小さな物質、例えば微粒子、菌、ウイルス等を捕集するための集塵フィルタ(HEPAフィルタ)(図示せず)を設けることもできる。
【0018】
尚、円筒状筐体1と空気取込ユニット2とは接着層7によって固定されている。
【0019】
図1においては、空気流Aの流路は、
上流点としての空気取込口21
→空気取込ユニット2(ファンユニット6)
→吸気口1a
→吸気口側遮光部5
→棒状紫外線照射ユニット3の周囲
→排気口側遮光部4
→下流点としての排気口1b
で形成される。
【0020】
図2は
図1の棒状紫外線照射ユニット3の取付方法を説明するための円筒状筐体1内部を示す斜視図である。
【0021】
図2に示すように、円筒状筐体1の内面の中心軸Ax方向に沿って複数の溝付き取付ステー11、12…を予め溶接によって設けておく。棒状紫外線照射ユニット3は溝付き取付ステー11、12…の溝に挿入され、最上端の溝付き取付ステー11及び最下端の溝付き取付ステー(図示せず)においてグロメット31で保持する。これにより、棒状紫外線照射ユニット3は溝付き取付ステー11、12…を介して円筒状筐体1の内面に固定され、円筒状筐体1の中心軸Ax上に位置することになる。
【0022】
図3は
図1の排気口1b側の円錐状遮光部材41の取付方法を説明するための円筒状筐体1の内部を示す斜視図である。
【0023】
図3に示すように、円錐状遮光部材41には予め取付ステー41aが溶接されている。取付ステー41aの溝孔にねじ41a、41bを挿入し、円錐状遮光部材41を円筒状筐体1の内面にねじ止めする。これにより、円錐状遮光部材41は取付ステー41aを介して円筒状筐体1の内面に固定され、円筒状筐体1の中心軸Ax上に位置することになる。
【0024】
図1の吸気口1a側の円錐状遮光部材51の取付方法も
図3に示す取付方法と同様である。
【0025】
図4は
図1の排気口1b側の円環状遮光部材42の接合方法を説明するための円筒状筐体1の内部を示し、(A)は断面図、(B)は斜視図である。
【0026】
円筒状筐体1には円環状遮光部材42が溶接されている。尚、筐体内側部1と円環状遮光部材42の接合方法は溶接に限らず、接着剤で接合することも可能であり、また金型で一体形成することも可能である。
【0027】
図5は
図1の排気口側遮光部4の円錐状遮光部材41及び円環状遮光部材42の拡大断面図であって、第1の遮光条件を説明する図である。
【0028】
図5に示すように、円錐状遮光部材41は、円筒状筐体1の中心軸Axを含み円筒状筐体1の内面を含まないように構成され、棒状紫外線照射ユニット3に対向した円錐状面部41c及び円環状遮光部材42に対向した底面部41dを有する。円錐状面部41cは、円筒状筐体1の中心軸Axから周辺に向う程、棒状紫外線照射ユニット3より遠くなるように傾斜している。尚、円錐状遮光部材41は中空であってもなくてもよい。また、円環状遮光部材42は、円筒状筐体1の内面に接触し円筒状筐体1の中心軸Axを含まないように構成され、円錐状遮光部材41に対向した円環状面部42bを有する。円環状面部42bは円筒状筐体1の内面から中心軸Axに向う程、円錐状遮光部材41より遠くなるように傾斜している。
【0029】
図5においては、円筒状筐体1の内径D0に対して棒状紫外線照射ユニット3が非常に大きな縦長と仮定する。第1の遮光条件では、棒状紫外線照射ユニット3からの紫外線Uは円筒状筐体1内で中心軸Axに対して平行な光を考慮すれば円筒状筐体1の外部に漏洩しない。
図5に示すように、棒状紫外線照射ユニット3からの紫外線Uは円筒状筐体1内の空気流Aを中心軸Axに対して平行に照射しながら、排気口側遮光部4に到達する場合を説明する。このとき、平行な紫外線Uが円錐状遮光部材41の円錐状面部41c及び円環状遮光部材42の円環状面部42bのいずれかに到達すれば、完全に遮光される。この結果、紫外線Uは円錐状遮光部材41及び円環状遮光部材42を通過することはなく、従って、紫外線Uは排気口1bを介して漏れることはない。この場合、中心軸Axに対して平行な紫外線U
C1のみを考慮すると、紫外線U
C1の第1の遮光条件は次のごとくなる。円錐状遮光部材41の底面部41dの直径をD1とし、円環状遮光部材42の内径、外径をD2a、D2bとすれば、
D2a≦D1<D2b=D0 (1)
但し、D0は円筒状筐体1の内径
の関係を満たせばよい。
すなわち、円錐状遮光部材41の大きさ(D1)は上述の(1)式を満足すればよいが、風量を大きくするために、円錐状遮光部材41の直径D1は円環状遮光部材42の内径D2aに近い方がよく、また円環状遮光部材42の内径(D2a)は可能な限り大きい方が好ましい。
【0030】
尚、吸気口側遮光部5の円錐状遮光部材51及び円環状遮光部材52も、
図5の排気口側遮光部4の円錐状遮光部材41及び円環状遮光部材42と同一構成をなしている。
【0031】
図6Aは
図1の排気口側遮光部4の棒状紫外線照射ユニット3からの紫外線Uの遮光を説明するための図であって、第2の遮光条件を説明する図である。
図6Aにおいては、円筒状筐体1の内径D0に対して棒状紫外線照射ユニット3は比較的短いと仮定する。第2の遮光条件では、棒状紫外線照射ユニット3からの紫外線Uは円筒状筐体1内で中心軸Axに対して斜めの光を考慮しなければならない。
【0032】
図6Aに示すように、棒状紫外線照射ユニット3からの紫外線Uは円筒状筐体1内の空気流Aを中心軸Axに対して斜めに照射しながら、排気口側遮光部4に到達する場合を説明する。このとき、棒状紫外線照射ユニット3の最遠端3a(
図6B)からの紫外線Uは、円錐状遮光部材41の円錐状面部41c及び円環状遮光部材42の円環状面部42bのいずれかに到達すれば、完全に遮光される。この結果、紫外線Uは円錐状遮光部材41及び円環状遮光部材42を通過することはなく、従って、紫外線Uは排気口1bを介して漏れることはない。
【0033】
【0034】
図6Bにおいては、棒状紫外線照射ユニット3の最遠端3aからの紫外線U
C2が円錐状遮光部材41の端部を通過し、円環状遮光部材42の内径端に到達する。この場合、棒状紫外線照射ユニット3の直径(円筒状筐体1の中心軸Ax横方向幅)をWとし、棒状紫外線照射ユニット3の最遠端3aと円錐状遮光部材41の端部である底面部41dとの円筒状筐体1の中心軸Ax方向距離をL1とし、棒状紫外線照射ユニット3の最遠端3aと円環状遮光部材42との円筒状筐体1の中心軸Ax方向距離をL2とし、棒状紫外線照射ユニット3と棒状紫外線照射ユニット3の最遠端3aを中心とした円錐状遮光部材41の端部及び円環状遮光部材42の内径端との角度をθとすれば、
tanθ=(D1-W)/(2・L1)
=(D2a-W)/(2・L2)
従って、
D1=(L1/L2)・D2a+(1-L1/L2)・W
となる。つまり、上述の(1)式の遮光条件は、
(L1/L2)・D2a+(1-L1/L2)・W≦D1<D2b=D0 (2)
となる。
この場合も、円錐状遮光部材41の直径(D1)は上述の(2)式を満足すればよいが、風量を大きくするために、円錐状遮光部材41の直径(D1)は(2)式の下限に近い方がよい。
【0035】
尚、第1の遮光条件式(1)は第2の遮光条件式(2)の特別な場合である。
【0036】
尚、同様に、紫外線Uは吸気口側遮光部5から吸気口1aを介して漏れることはない。但し、
図1においては、たとえ吸気口1aを介して紫外線Uが漏れても、空気取込ユニット2の存在のために、紫外線Uが装置外に漏れることはない。
【0037】
図7は
図1の排気口側遮光部4近傍の空気流Aを説明するための図である。
【0038】
図7に示すように、空気流Aは棒状紫外線照射ユニット3の周囲を中心軸Axに対して対称に通過しながら、排気口側遮光部4に到達する。このとき、空気流Aは、円錐状遮光部材41の円錐状面部41cの周囲の傾斜に沿って通過し、円錐状遮光部材41と円環状遮光部材42との間に回り込む。さらに、円環状遮光部材42の中心軸Ax付近を通過し、空気流Aは排気口1bから排出される。すなわち、上述の式(1)又は(2)を満足しながら、円錐状遮光部材41の底面部41dの直径D1を十分小さくすれば、空気流Aの変曲領域が小さくなる。また、円環状遮光部材42の中心軸Ax近傍における空気流Aの変曲領域も小さくなる。従って、空気流Aの圧力損失が小さくなり、風量を大きくできる。また、円錐状遮光部材41及び円環状遮光部材42は円筒状筐体1の中心軸Axに関して軸対称なので、棒状紫外線照射ユニット3回りの空気流Aが円筒状筐体1の中心軸Axに関して軸対称であれば、排気口1bにおける空気流Aも円筒状筐体1に関して軸対称となる。尚、この点に関し、
図8に示すように、吸気口側遮光部5も円筒状筐体1の中心軸Axに関して軸対称であるので、棒状紫外線照射ユニット3回りの空気流Aは円筒状筐体1に関して軸対称である。これにより、空気流Aは円筒状筐体1で中心軸Axを対称軸として概ね一様に流れる。
【0039】
図9は
図1の空気清浄装置の空気流Aのシミュレーションを説明するための図であって、(A)はシミュレーション条件、(B)はシミュレーション結果である。
【0040】
シミュレーション条件は
図9の(A)に示すごとく設定した。
D0(円筒状筐体1の内径、吸気口1aの直径、排気口1bの直径)=116mm
D1(円錐状遮光部材41、51の底面部41d、51dの直径)=86mm
D2a(D4a)(円環状遮光部材42(52)の内径)=80mm
D2b(D4b)(円環状遮光部材42(52)の外径)=116mm
W(棒状紫外線照射ユニット3の直径)=15mm
D5(空気取込ユニット2の直径)=319mm
とする。この場合、
図9の(B)に示すごとく、変曲領域が小さい円錐状遮光部材41、円環状遮光部材42、円錐状遮光部材51、円環状遮光部材52のために、棒状紫外線照射ユニット3の周囲及び排気口1bで空気流Aのばらつきは小さく、この結果、排気口1bにおいて、平均流速3.0m/s、風量1.9m
3/minが得られた。また、円筒状筐体1全体において、空気流Aは円筒状筐体1の中心軸Axに関して軸対称となっている。
【0041】
図10は比較例として
図16の「く」の字形状遮光部材を採用した場合の空気清浄装置の空気流A1のシミュレーションを説明するための図であって、(A)はシミュレーション条件、(B)はシミュレーション結果である。
【0042】
シミュレーション条件は
図10の(A)に示すごとく設定した。
D0(円筒状筐体1の内径、吸気口1aの直径、排気口1bの直径)=116mm
W(棒状紫外線照射ユニット3の直径)=15mm
D5(空気取込ユニット2の直径)=319mm
D6(「く」の字形状遮光部材103の直径)=116mm(「く」のピッチ14mm)
とする。この場合、
図10の(B)に示すごとく、変曲領域が大きい「く」の字形状遮光部材103のために、棒状紫外線照射ユニット3の周囲及び排気口1bで空気流A1のばらつきは大きく、また、圧力損失が大きく、この結果、平均流速1.6m/s、風量1.25m
3/minが得られた。また、空気流A1は、円筒状筐体1全体において、変曲領域が大きい「く」の字形状遮光部材103のために、円筒状筐体1の中心軸Axに関して非対称となっている。
【0043】
図11は
図1の空気清浄装置に導入された光触媒層を説明するための図である。
【0044】
図11に示すごとく、排気口側遮光部4の棒状紫外線照射ユニット3側、つまり、円錐状遮光部材41の円錐状面部41c、円環状遮光部材42の円環状面部42b、及び吸気口側遮光部5の棒状紫外線照射ユニット3側、つまり、円錐状遮光部材51の底面部51d、円環状遮光部材52の円環状面部52cに光触媒層8を形成する。光触媒層8は酸化チタン(TiO
2)等の微粒子を無機又は有機バインダで混合して遮光部材41、42、51、52上に担持させることによって形成される。光触媒層8の酸化チタンは紫外線照射ユニット3の紫外線Uを吸収して強い酸化還元作用を発現し、その酸化作用により発生したOHラジカルによって空気中の汚染物質を分解して空気を浄化する。従って、光触媒層8は紫外線Uに対して遮光作用を発揮すると共に、殺菌作用も発揮する。尚、光触媒層8は円錐状遮光部材41(51)、円環状遮光部材42(52)の全面または円筒状筐体1の内壁に形成してもよい。
【0045】
尚、上述の実施の形態の排気口側遮光部4(吸気口側遮光部5)においては、円錐状遮光部材41(51)を上流側に設けると共に、円環状遮光部材42(52)を下流側に設けているが、風量が若干劣るが、円環状遮光部材42(52)を上流側に設けると共に、円錐状遮光部材41(51)を下流側に設けてもよい。
【0046】
また、上述の実施の形態においては、排気口側遮光部4(吸気口側遮光部5)を円錐状遮光部材41(51)及び円環状遮光部材42(52)で構成しているが、円錐状遮光部材41(51)の代りに、第1の変更例である柱状遮光部材たとえば
図12に示す円柱状遮光部材41-1(51-1)を用いることができ、また、第2の変更例である双錐状遮光部材たとえば
図13に示す双円錐状遮光部材41-2(51-2)を用いることもできる。ここで、参考例である多角錐状遮光部材たとえば
図14の(A)に示す四角錐遮光ルーバ41-3(51-3)または
図14の(B)に示す六角錐遮光ルーバ41-4(51-4)を用いる場合、つまり底面部41dが円形状ではない場合、中心軸Axから底面部(41d)の端部までの距離が最も短い領域が式(1)、(2)を満たせば紫外線Uの漏れは少ない。尚、
図12、
図13、
図14の遮光部材41-1(51-1)、41-2(51-2)、41-3(51-3)、41-4(51-4)は中空であってもなくてもよい。
【0047】
図1の空気清浄装置(実施の形態)、第1の変更例(
図12)、第2の変更例(
図13)、参考例(
図14)の遮光部を用いた空気清浄装置及び
図10の空気清浄装置(比較例)に対して、同一シミュレーション条件で行ったシミュレーション結果を
図15に示す。風量は「く」の字形状遮光ルーバと比較して第1、第2の変更例及び参考例は44%~50.4%増加傾向であった。いずれにおいても、「く」の字形状遮光ルーバを用いた比較例に対して大きな改善が観察された。よって、遮光部材を上述した実施の形態、変更例又は参考例とすることで、円筒状筐体1を通過する空気流が概ね一様となり、風量も増加することで紫外線の漏洩を防止しつつ空気清浄効率を高めることができる。
【0048】
また、上述の実施の形態においては、円筒状筐体1は円筒状である必要はなく、楕円状筐体、多角形状筐体等でもよい。この場合、遮光部材も楕円状、多角形状等になる。
【0049】
また、上述の実施の形態においては、棒状紫外線照射ユニット3は棒状である必要はなく、筐体の中央に設けられた点状の深紫外線LED素子又は紫外線LED素子でもよい。
【0050】
さらに、本発明は上述の実施の形態の自明の範囲内でのいかなる変更にも適用し得る。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係る空気清浄装置は、例えば、病院等の施設用、自動車等の車載用、一般家庭の室内、オフィス室内等の屋内環境に利用できる。
【符号の説明】
【0052】
1:円筒状筐体
Ax:中心軸
1a:吸気口
1b:排気口
11、12、…:溝付き取付ステー
2:空気取込ユニット
21:空気取込口
3:棒状紫外線照射ユニット
4:排気口側遮光部
41:円錐状遮光部材
41-1:円柱状遮光部材
41-2:双円錐状遮光部材
41-3:四角錘状遮光部材
41-4:六角錐状遮光部材
41a:取付ステー
41b:ねじ
41c:円錐状面部
41d:底面部
42:円環状遮光部材
42b:円環状面部
5: 吸気口側遮光部
51:円錐状遮光部材
51-1:円柱状遮光部材
51-2:双円錐状遮光部材
51-3:四角錘状遮光部材
51-4:六角錐状遮光部材
51a:取付ステー
51b:ねじ
51c:円錐状面部
51d:底面部
52:円環状遮光部材
52a:円環状面部
6:ファンユニット
7:接着層
8:光触媒層
101:筐体
101a:排気口
102:紫外線照射ユニット
103:排気口側遮光部
1031:角度固定遮光ルーバ
1031a:遮光板
1032:角度固定遮光ルーバ
1032a:遮光板
201:筐体
201a:排気口
202:紫外線照射ユニット
203:排気口側遮光部
2031:角度固定遮光ルーバ
2031a:遮光板
2032:角度可変遮光ルーバ
2032a:遮光板
A、A1、A2:空気流
U、U1、U2:紫外線
W:棒状紫外線照射ユニットの幅