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特開2023-135895臨界近接監視装置、臨界近接監視方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135895
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】臨界近接監視装置、臨界近接監視方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G21C 17/06 20060101AFI20230922BHJP
   G21C 17/108 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
G21C17/06 060
G21C17/108 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041215
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】林 卓人
(72)【発明者】
【氏名】森 健多
(72)【発明者】
【氏名】大島 拓洋
【テーマコード(参考)】
2G075
【Fターム(参考)】
2G075AA01
2G075BA04
2G075CA08
2G075DA08
2G075FA06
2G075FB09
2G075GA28
(57)【要約】
【課題】原子炉の臨界操作において、臨界達成に必要な希釈量を精度よく算出することができる臨界近接監視装置を提供する。
【解決手段】臨界近接監視装置は、ほう素の希釈量に対する炉外検出器応答を測定し、逆倍増率を算出する逆倍増率算出部と、前記逆倍増率算出部によって算出された前記逆倍増率に基づいて、前記逆倍増率の推移を示す予測線を算出する補正部と、前記予測線に基づき設定された希釈停止目標に前記逆倍増率が達した場合、希釈操作の停止指示を行う停止指示部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ほう素の希釈量に対する炉外検出器応答を測定し、逆倍増率を算出する逆倍増率算出部と、
前記逆倍増率算出部によって算出された前記逆倍増率に基づいて、前記希釈量に対する前記逆倍増率の推移を示す予測線を算出する補正部と、
前記予測線に基づき設定された希釈停止目標に前記逆倍増率が達した場合、希釈操作の停止指示を行う停止指示部と、
を備える臨界近接監視装置。
【請求項2】
前記逆倍増率算出部は、前記炉外検出器応答が測定される度に前記逆倍増率を算出し、
前記補正部は、前記逆倍増率算出部によって前記逆倍増率が算出される度に算出された前記逆倍増率に基づいて、前記予測線を算出する、
請求項1に記載の臨界近接監視装置。
【請求項3】
前記補正部は、炉心の反応度や、2次中性子源強度をパラメータとして、前記炉心の反応度や、2次中性子源強度を調整することにより、前記希釈量に対する前記逆倍増率の推移を示す解析線を複数生成し、複数の前記解析線の中から、前記逆倍増率算出部によって算出された前記逆倍増率の推移に最も近い前記解析線を前記予測線として算出する、
請求項1または請求項2に記載の臨界近接監視装置。
【請求項4】
前記補正部は、原子炉の炉心モデルのパラメータのうち、前記炉心の反応度や、2次中性子源強度をパラメータとして、前記希釈量に対する原子炉内の中性子束分布を解析し、解析した前記中性子束分布に基づいて炉外検出器応答の予測値を算出し、前記希釈量の変化に応じた前記炉外検出器応答の予測値に基づいて、前記解析線を生成する、
請求項3に記載の臨界近接監視装置。
【請求項5】
前記補正部は、前記希釈量の変化に応じた前記炉外検出器応答の予測値に対し、所定の曲線によってフィッティングを行い、前記解析線を生成する、
請求項4に記載の臨界近接監視装置。
【請求項6】
前記補正部は、前記逆倍増率算出部によって算出された前記逆倍増率と、前記解析線との誤差を計算し、誤差が最小となる前記解析線を前記予測線として選択する、
請求項3から請求項5の何れか1項に記載の臨界近接監視装置。
【請求項7】
前記補正部は、制御棒を所定の初期位置からに所定の目標位置へ制御した場合の反応度の変化量を算出し、その変化量と前記予測線が示す臨界を達成するときの前記希釈量とに基づいて、前記希釈停止目標を算出する、
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の臨界近接監視装置。
【請求項8】
前記予測線を表示する表示装置、
をさらに備える請求項1から請求項7の何れか1項に記載の臨界近接監視装置。
【請求項9】
前記表示装置は、前記希釈停止目標を示す停止目標線と、前記希釈量が前記停止目標線と前記予測線の交点に達するまでの時間を表示する、
請求項8に記載の臨界近接監視装置。
【請求項10】
ほう素の希釈量に対する炉外検出器応答を測定し、逆倍増率を算出するステップと、
前記算出するステップにて算出された前記逆倍増率に基づいて、前記希釈量に対する前記逆倍増率の推移を示す予測線を算出するステップと、
前記予測線に基づき設定された希釈停止目標に前記逆倍増率が達した場合、希釈操作の停止指示を行うステップと、
を有する臨界近接監視方法。
【請求項11】
コンピュータに、
ほう素の希釈量に対する炉外検出器応答を測定し、逆倍増率を算出するステップと、
前記算出するステップにて算出された前記逆倍増率に基づいて、前記希釈量に対する前記逆倍増率の推移を示す予測線を算出するステップと、
前記予測線に基づき設定された希釈停止目標に前記逆倍増率が達した場合、希釈操作の停止指示を行うステップと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、臨界近接監視装置、臨界近接監視方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントの炉物理検査には、原子炉を起動して臨界状態に到達させる工程が存在する。この工程では、運転員が、以下の式(1)で定義される1/M(逆倍増率)の値を監視しながら、臨界操作(制御棒の挿入・引抜や、ほう素の濃縮・希釈)を行う。
1/M=(基準状態での線源領域中性子検出値)/(測定時点での線源領域中性子検出値)・・・(1)
式(1)の分子の「基準状態での線源領域中性子検出値」とは、炉物理検査における臨界操作開始前の線源領域中性子検出値であり、分母の「測定時点での線源領域中性子検出値」は、臨界操作を行って原子炉が臨界状態に至るまでの各時点における線源領域中性子検出値である。線源領域中性子検出値は、原子炉の外部に設けられた炉外検出器によって測定される。式(1)の値は、臨界操作の開始時には「1」となり、臨界時には「0」となる。
【0003】
特許文献1には、原子炉の臨界操作中に、炉外検出器によって中性子束を検出し、少なくとも3つの異なる時点での1/Mを、上記の式(1)によって計算し、計算した1/Mの値から原子炉が臨界状態となるまでの1/Mの推移を、所定の連立方程式を解くことによって推定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平04-069759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の臨界接近監視方法では、事前に臨界操作中の1/Mの推移を示す1/M予測線を算出し、算出した1/M予測線に基づいて、臨界の達成に必要な臨界操作量(例えば、希釈量)の予測などを行う。しかし、実際の場面では、臨界操作中に測定される1/Mの測定値と、事前の解析によって得られた1/M予測線が示す1/Mに乖離が生じ、1/M予測線に基づいて臨界操作を行ったとしても、臨界を達成することができなかったり、予想より早く臨界を達成してしまったりする可能性が生じる。臨界達成に必要な操作量を正確に算出する技術が必要とされている。
【0006】
本開示は、上記課題を解決することができる臨界近接監視装置、臨界近接監視方法及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の臨界近接監視装置は、ほう素の希釈量に対する炉外検出器応答を測定し、逆倍増率を算出する逆倍増率算出部と、前記逆倍増率算出部によって算出された前記逆倍増率に基づいて、前記希釈量に対する前記逆倍増率の推移を示す予測線を算出する補正部と、前記予測線に基づき設定された希釈停止目標に前記逆倍増率が達した場合、希釈操作の停止指示を行う停止指示部と、を備える。
【0008】
本開示の臨界近接監視方法は、ほう素の希釈量に対する炉外検出器応答を測定し、逆倍増率を算出するステップと、前記算出するステップにて算出された前記逆倍増率に基づいて、前記希釈量に対する前記逆倍増率の推移を示す予測線を算出するステップと、前記予測線に基づき設定された希釈停止目標に前記逆倍増率が達した場合、希釈操作の停止指示を行うステップと、を有する。
【0009】
本開示のプログラムは、コンピュータに、ほう素の希釈量に対する炉外検出器応答を測定し、逆倍増率を算出するステップと、前記算出するステップにて算出された前記逆倍増率に基づいて、前記希釈量に対する前記逆倍増率の推移を示す予測線を算出するステップと、前記予測線に基づき設定された希釈停止目標に前記逆倍増率が達した場合、希釈操作の停止指示を行うステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
上述の臨界近接監視装置、臨界近接監視方法及びプログラムによれば、臨界達成に必要な臨界操作量を正確に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る炉物理検査装置の一例を示すブロック図である。
図2】1/M予測線について説明する図である。
図3】実施形態に係る1/M予測線の算出について説明する図である。
図4】実施形態に係る希釈停止1/Mの算出について説明する図である。
図5】実施形態に係る臨界接近監視処理の一例を示すフローチャートである。
図6】実施形態に係る炉物理検査装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態>
以下、本開示の臨界接近監視方法について、図1図6を参照して説明する。
(構成)
図1は、実施形態に係る炉物理検査装置の一例を示すブロック図である。炉物理検査装置10は、炉物理検査における臨界状態を達成する工程において、臨界達成に必要な臨界操作の制御量(希釈量)を精度よく算出する。
【0013】
炉物理検査装置10は、原子力プラント20と通信可能に接続されている。原子力プラント20は、制御棒挿入・引抜操作盤21と、ほう素の希釈・濃縮操作盤22と、炉外検出器23と、を有している。運転員が、制御棒挿入・引抜操作盤21に対して引抜などの指示を行うと、その指示に基づく制御棒の挿入・引抜信号が、原子力プラント20から炉物理検査装置10へ送信される。運転員が、ほう素の希釈・濃縮操作盤22に対して希釈などの指示を行うと、その指示に基づくほう素の希釈・濃縮信号が、原子力プラント20から炉物理検査装置10へ送信される。炉外検出器23は、線源領域中性子検出値(炉外検出器応答測定値)を測定し、その値を炉物理検査装置10へ送信する。炉物理検査装置10は、炉物理検査中の原子力プラント20から、制御棒ステップ位置を含む制御棒の挿入・引抜信号、ほう素濃度および希釈量・濃縮量を含むほう素の希釈・濃縮信号、炉外検出器応答測定値を取得する。
【0014】
炉物理検査装置10は、タイマー11と、データ記録・制御装置12と、1/M測定値算出装置13と、1/M予測線補正装置14と、炉外検出器応答解析装置15と、オペレータコンソール16と、表示装置17とを備える。これらのうち、データ記録・制御装置12と、1/M測定値算出装置13と、炉外検出器応答解析装置15と、1/M予測線補正装置14と、オペレータコンソール16とは、PC(personal computer)やサーバ端末装置などのコンピュータによって構成される。
【0015】
タイマー11は、時間を測定する。
データ記録・制御装置12は、原子力プラント20から取得したデータ(制御棒の挿入・引抜信号、ほう素の希釈・濃縮信号、炉外検出器応答測定値)や、炉物理検査装置10にて演算したデータ(1/M測定値、炉外検出器応答予測値、1/M解析線、1/M予測線など)を記録、記憶する。また、データ記録・制御装置12は、臨界接近監視処理の制御や表示装置17の表示制御等を行う。
【0016】
1/M測定値算出装置13は、1/M(逆倍増率)を算出する。1/M測定値算出装置13は、臨界操作の開始時点(基準状態)において炉外検出器23が測定した炉外検出器応答測定値を分子、臨界操作中の各時点において炉外検出器23が測定した炉外検出器応答測定値を分母として、上記の式(1)によって、臨界操作中の1/Mを算出する。1/M測定値算出装置13が算出した1/Mを「1/M測定値」と呼ぶ。また、1/M測定値算出装置13は、制御棒ステップ位置、ほう素の希釈量・濃縮量を取得して、後に図2~4に例示するような縦軸に1/M測定値をとり、横軸に臨界操作の制御量(制御棒引抜量・希釈量)をとったグラフに1/M測定値をプロットした「1/M曲線図」を作成する。
【0017】
1/M予測線補正装置14は、1/M測定値算出装置13が1/M測定値を算出する度に、これまでに算出された1/M測定値に基づいて、1/Mの推移を予測する1/M予測線を算出する。1/M予測線補正装置14は、事前に、炉心の反応度などをパラメータとして感度解析することによって得られた、様々な炉心の状態を模擬して得られた1/Mの予測値に基づいて(感度解析、炉心状態の模擬、1/Mの予測値の算出等は次に説明する炉外検出器応答解析装置15が実行する。)、1/Mの推移を示す1/M解析線を1/M予測値のフィッテング(6次の多項式近似など)により複数作成し、1/M解析線の中から、実際の1/M測定値の推移に最も近い1/M解析線を選択する。選択された1/M解析線が1/M予測線である。
【0018】
炉外検出器応答解析装置15は、原子炉の反応度などをパラメータとして、様々な反応度などに応じた炉心内の状態を模擬し、そのときの炉外検出器応答の予測値を解析により算出する。炉外検出器応答解析装置15は、炉心内中性子束解析装置151と、炉外検出器応答算出装置152と、を有している。
【0019】
炉心内中性子束解析装置151は、炉心の状態を模擬する炉心モデルを有している。炉心内中性子束解析装置151は、炉心モデルを用いて、ほう素濃度を調整して様々に変化させることにより、様々なほう素濃度下における原子炉内の中性子束の分布を解析する。例えば、炉心内中性子束解析装置151は、初期状態において、あるほう素濃度を設定し、その後、ある速度でほう素を希釈していった場合の時々刻々の炉内の中性子束の分布を解析する。炉心内中性子束解析装置151は、初期状態の炉心の反応度や2次中性子源強度など、および、希釈開始後の炉心の反応度や、2次中性子源強度などを希釈量に応じて様々に変化させた「感度解析シナリオ(以下、シナリオと記載する。)」を複数作成し、シナリオごとに、炉心の反応度や、2次中性子源強度などに応じた炉心内中性子束の解析を行う。炉心内中性子束解析装置151は、シナリオごとの解析結果の炉心内中性子束の情報を炉外検出器応答算出装置152に出力する。また、炉心内中性子束解析装置151は、制御棒の位置に応じた反応度(引抜価値)を算出する。
【0020】
炉外検出器応答算出装置152は、炉心内中性子束解析装置151が解析したシナリオごとの炉心内中性子束の情報を取得し、炉心が、シナリオの解析結果が示す状態にあるときに炉外検出器23によって測定される炉外検出器応答の測定値を算出する。この値を、炉外検出器応答予測値と呼ぶ。炉外検出器応答算出装置152は、シナリオごとの希釈の進行に伴う炉外検出器応答予測値の推移を含むデータ(各時点のほう素濃度と炉外検出器応答予測値を組みにしたデータセット)をデータ記録・制御装置12に記録する。なお、炉心内中性子束解析装置151、炉外検出器応答算出装置152の機能を発揮する計算コード(プログラム)は、原子力の分野では公知である。
【0021】
オペレータコンソール16は、運転員が、炉物理検査装置10へ各種の指示を行うために用いられる端末装置である。例えば、運転員は、オペレータコンソール16を用いて、ほう素の希釈・濃縮に関する水やほう素の流量や添加量の指示を行う。
【0022】
表示装置17は、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイなどである。表示装置17は、図2図4に例示する1/M曲線図や、臨界達成に必要な制御量、希釈の停止を指示する情報などを表示する。
【0023】
図2に、1/M曲線図を示す。図2の縦軸は1/M、横軸は希釈量および制御棒引抜量である。図2のL1は、事前解析により得られた1/Mの推移を示す1/M予測線、点M0~M11は、臨界操作中に測定された1/M測定値である。炉物理検査の臨界状態を達成する工程では、臨界操作の開始前に制御棒をXステップの位置まで引き抜いておき、その状態でほう素の希釈を開始する。そして、ある目標点まで希釈を行った後に、制御棒をXステップの位置から更にYステップ引き抜くことにより臨界を達成する。従来は、所望の速度で希釈を行ったときの1/Mの推移を示す1/M予測線L1を事前の解析により推定し、希釈後に制御棒をYステップ引き抜くことにより臨界が達成できるように、この1/M予測線L1の値が0(臨界達成)になる点P1よりも、Yステップの引抜に対応する分だけ未臨界の点P0を目標として、1/M測定値を監視し、1/M測定値が目標の点P0に対応する1/Mの値である「希釈停止1/M」となるまで希釈を行う。しかし、この方法では、図2の例のように、実際の臨界操作中に測定される1/M測定値M0~M11と、事前の解析により得られた1/M予測線L1に差が生じた場合、1/M測定値が「希釈停止1/M」となるまで希釈を行うと、その後の制御棒の引抜工程ではYステップより小さい、又は、大きい引抜量で臨界に到達する可能性がある。希釈後の引抜量が異なると、炉物理検査のその後の工程に影響する。従って、計画通りにYステップの引抜で臨界を達成できるようにすることが望ましい。その為には、炉物理検査中に測定される1/M測定値に合致するような1/M予測線L1を正確に算出する必要がある。その為、1/M測定値算出装置13は、臨界操作中に炉外検出器23が炉外検出器応を測定する度に1/Mを算出し、1/M予測線補正装置14は、1/M測定値が算出される度に、1/M予測線の更新・補正を行って、正確な1/M予測線を算出する。
【0024】
(1/M予測線の更新・補正)
図3を参照して、実施形態に係る予測線の算出について説明する。1/M予測線補正装置14は、炉外検出器応答解析装置15によって事前に解析された、シナリオごとの炉外検出器応答予測値をデータ記録・制御装置12から読み出して、実際の炉物理検査における臨界操作前の原子炉のほう素濃度による基準状態での炉外検出器応答予測値を線形内挿などにより算出し、式(1)により希釈の進行に伴う1/Mの値を計算し、シナリオごとの1/M予測値に対してフィッテング(6次の多項式近似など)することで「1/M解析線」を複数生成する。このとき、未臨界状態の1/M予測値を用いて線形内挿や所定の曲線(6次の多項式の近似曲線など)によるフィティングを行うことにより、臨界達成近傍までの1/M解析線を算出するようにする。これにより、精度の良い1/M解析線が得られる。図3に、1/M解析線L1~L4を示す。
【0025】
1/M予測線補正装置14は、1/M解析線L1~L4の中から、炉物理検査中に測定された1/M測定値M0~M5が示す軌跡に最も近い1/M解析線を選択し、選択した1/M解析線を、その時点で“最も確からしい”1/M予測線として設定する。図3の例の場合、1/M予測線補正装置14は、1/M解析線L3を1/M予測線として設定する。事前に解析された炉外検出器応答予測値に基づく複数の1/M解析線の中から1/M予測線を選択する方法には、例えば、次のような方法がある。即ち、1/M予測線補正装置14は、1/M測定値M0~M5のそれぞれと1/M解析線L1~L4それぞれとの距離を算出し、1/M測定値M0~M5それぞれとの距離の2乗和が最小となる1/M解析線を1/M予測線として選択する。あるいは、1/M予測線補正装置14は、1/M測定値M0~M5の中から一部、例えば、最新の1/M測定値から遡って所定個(例えば、測定値M3~M5)を選択し、選択した1/M測定値の各々について算出した1/M解析線L1~L4それぞれとの距離の2乗和が最小となる1/M解析線を1/M予測線として選択してもよい。あるいは、1/M予測線補正装置14は、例えば、1/M解析線L1については、1/M測定値ごとに任意の重み係数A1~A5を付した以下の式(2)で、1/M測定値と1/M解析線L1の差に関する評価値D1を算出してもよい。
D1=A1(1/M測定値M0と1/M解析線L1の距離)+A2(1/M測定値M1と1/M解析線L1の距離)+A3(1/M測定値M2と1/M解析線L1の距離)+A4(1/M測定値M3と1/M解析線L1の距離)+A5(1/M測定値M4と1/M解析線L1の距離)+A6(1/M測定値M5と1/M解析線L1の距離)・・・(2)
1/M予測線補正装置14は、他の1/M解析線L2~L4についても同様に評価値D2~D4を計算し、評価値D1~D4の値が最も小さくなる1/M解析線を1/M予測線として選択する。また、1/M測定値と1/M解析線の距離については、距離の2乗ではなく距離そのもの(絶対値)を使用してもよい。
【0026】
(希釈停止1/M)
1/M予測線を算出すると、1/M予測線補正装置14は、希釈を止めるときの1/Mの値である希釈停止1/Mを算出する。図4に実施形態に係る希釈停止1/Mの算出方法を示す。炉心内中性子束解析装置151の炉心モデルを用いると、制御棒の位置に応じた反応度を算出することができる。この性質を利用すると、例えば、制御棒がXステップの位置にある状態から更にYステップ引き抜いたときの反応度の増加分を計算することができる。1/M予測線補正装置14は、炉心内中性子束解析装置151を使って、Yステップ引抜分に相当する反応度の増加量(引抜価値)を計算する。1/M予測線補正装置14は、引抜価値に相当する希釈量の分だけ、1/M予測線L3が予測する臨界点P1よりも未臨界の方向に戻した点P0を算出し、点P0を通る垂線と予測線L3の交点P2の1/Mの値を算出する。この値が、希釈停止1/Mである。臨界操作中に1/M測定値算出装置13が算出する1/M測定値の値が希釈停止1/Mとなるまで希釈を行うと、残りは制御棒をYステップ引き抜くことにより臨界を達成することができる。
【0027】
(動作)
次に図5を参照して、臨界操作中の臨界接近監視の処理の流れを説明する。
図5は、実施形態に係る臨界接近監視処理の一例を示すフローチャートである。
事前に、炉外検出器応答解析装置15が、炉心の反応度や、2次中性子源強度などをパラメータとする感度解析を行って、炉内中性子束解析および炉外検出器応答評価を行い、シナリオ毎の炉外検出器応答予測値を算出する(ステップS1)。炉外検出器応答解析装置15は、炉外検出器応答予測値をデータ記録・制御装置12へ記録する。
【0028】
次に運転員が臨界操作を開始する(ステップS2)。原子力プラント20からは、臨界操作開始前(基準状態)のほう素濃度が炉物理検査装置10へ送信される。また、臨界操作が開始されると、原子力プラント20からは、制御棒の挿入・引抜信号、ほう素の希釈・濃縮信号、炉外検出器応答測定値が、定期的に、又は、信号が出力されたときに炉物理検査装置10へ送信される。これらの情報は、データ記録・制御装置12へ記録される。
【0029】
1/M測定値算出装置13は、ほう素の希釈量に対する炉外検出器応答の測定値を取得すると、1/M測定値を算出する(ステップS3)。1/M測定値算出装置13は、1/M測定値を算出すると、その値を1/M曲線図にプロットする。また、1/M予測線補正装置14は、事前に作成した炉外検出器応答予測値から実際の臨界操作開始前(基準状態)のほう素濃度での炉外検出器応答予測値を線形内挿などにより算出し、式(1)により希釈の進行に伴うシナリオごとの1/M予測値に対してフィッテング(6次の多項式近似など)することで1/M解析線を複数作成する。
【0030】
次に1/M予測線補正装置14は、1/M測定値と1/M解析線の誤差を算出する(ステップS4)。例えば、1/M予測線補正装置14は、臨界操作中に測定された各時刻の1/M測定値と複数の1/M解析線それぞれとの距離を算出する。次に1/M予測線補正装置14は、誤差が最も小さい1/M解析線を1/M予測線として選択する(ステップS5)。例えば、1/M予測線補正装置14は、臨界操作中に測定された各時刻の1/M測定値と1/M解析線の距離の2乗を合計した値が最小となる1/M解析線を1/M予測線として選択する。1/M予測線補正装置14は、選択した1/M予測線を1/M曲線図に表示する。
【0031】
1/M予測線が算出できると、1/M予測線補正装置14は、その1/M予測線と希釈後の引抜量(例えば、Yステップ)に基づいて、希釈停止1/Mを算出する(ステップS6)。1/M予測線補正装置14は、1/M曲線図における、1/M予測線が示す臨界点P1から、Yステップの引抜価値に相当する分の希釈量だけ未臨界側へ戻った位置である点P0を算出し、1/M予測線上の点P0の希釈量に対応する1/Mの値を求めて、その値を希釈停止1/Mとして算出する。1/M予測線補正装置14は、算出した希釈停止1/Mを1/M曲線図に表示する。データ記録・制御装置12は、図4の左図400に例示するような1/M曲線図を表示装置17へ出力する。
【0032】
また、データ記録・制御装置12は、希釈量が、希釈停止1/Mと1/M予測線の交点P2(=点P0)に達するまでの時間を表示してもよい。具体的には、データ記録・制御装置12は、希釈量を原子力プラント20から取得しているので現在の原子炉内のほう素濃度や希釈量を検出することができる。また、これまでの時系列の希釈量の変化から、データ記録・制御装置12は、希釈スピードを算出することができる。データ記録・制御装置12は、現在の希釈量と、1/M予測線上の点P2が示す希釈量との差を計算し、その差を希釈スピードで除算することにより、希釈量が、希釈停止1/Mと1/M予測線の交点P2(=点P0)に達するまでの時間(希釈中の1/M測定値が希釈停止1/Mとなるまでの時間)を算出し、算出した時間、現在の希釈量、交点P2(=点P0)における希釈量を、1/M曲線図とともに表示装置17へ出力する。表示装置17は、最も確からしい1/M予測線および1/M測定値とともに1/M測定値が希釈停止1/Mに達する時間を表示する。これによりユーザは、あとどれぐらい希釈を行えばよいか、現在の希釈スピードを維持したとして、1/M測定値が希釈停止1/Mとなるまでに残りどれぐらいの時間が掛かるかなどを把握することができる。
【0033】
次に、データ記録・制御装置12は、希釈停止1/Mに1/M測定値が達したかどうかを判定する(ステップS7)。データ記録・制御装置12は、1/M測定値算出装置13が最後に算出した最新の1/M測定値と希釈停止1/Mとを比較して、最新の1/M測定値が希釈停止1/Mに至ると、又は、両者の差が所定の範囲内となると、1/M測定値が希釈停止1/Mに達したと判定し、そうでない場合には、1/M測定値が希釈停止1/Mに達していないと判定する。1/M測定値が希釈停止1/Mに達した場合(ステップS7;Yes)、データ記録・制御装置12は、希釈操作の停止を指示する情報を表示装置17に出力する。表示装置17は、例えば、監視対象の1/M測定値が希釈停止1/Mに達したこと及び、希釈操作の停止を指示する内容の文言を表示する(ステップS8)。運転員は、希釈操作を停止し、制御棒のYステップの引抜を行って臨界を達成する。データ記録・制御装置12は、運転員が余裕をもって操作できるように、1/M測定値が希釈停止1/Mに達するよりも所定時間前に、希釈操作の停止を指示する内容の文言を表示するようにしてもよい。あるいは、データ記録・制御装置12は、1/M測定値が希釈停止1/Mに達するよりも所定時間前に、あと少しで1/M測定値が希釈停止1/Mに達することを知らせる内容の文言を表示するようにしてもよい。運転員は、これらの通知と1/M測定値が希釈停止1/Mに達する時間が表示された1/M曲線図を確認しながら、目標点で希釈を停止できるように希釈操作を行う。一方、1/M測定値が希釈停止1/Mに達しない場合(ステップS7;No)、ステップS3からの処理を繰り返し行う。
【0034】
上記説明したように、本実施形態によれば、臨界操作中に1/M予測線を1/M測定値に基づいて補正し、正確な1/M予測線を算出する。そして、1/M測定値が測定される度に1/M予測線を更新する。これにより、希釈によって臨界を達成する場合の操作量(希釈量)を表す点P1(図2図4)を正確に算出することができる。また、希釈後に計画されている制御棒の引抜量に基づく引抜価値(Yステップ引抜後にちょうど臨界を達成するとしたときのYステップ引抜前の反応度)を算出し、引抜価値の分だけ点P1より手前の点P0(引抜価値の分だけ希釈が進んでいない時点)を算出し、そのときの希釈量に対応する希釈停止1/Mを算出する。これにより、臨界達成に必要な臨界操作の制御量(希釈量、引抜量)を精度よく算出することができる。臨界操作の予測精度が向上することにより、予定通りの臨界操作で計画通りに臨界を達成することができるので、安全性が向上する。例えば、1/M測定値の急激な低下による予期せぬ臨界を防止することができるので、安全性が向上する。また、補正された正確な1/M予測線、希釈停止1/Mとともに、1/M測定値が希釈停止1/Mに達するまでの時間を表示することで、安全性の確保に必要な時間的余裕や希釈量を把握することができる。
【0035】
また、希釈停止のばらつきを抑えることで、制御棒の引抜量のばらつきを小さくでき、予定したYステップの引抜で臨界達成を行うことができので、その後の工程で余計な希釈・濃縮操作を行う必要が無い。その為、炉物理検査における臨界状態を達成する工程だけでなく、関連する後工程の時間を短縮することができる。
【0036】
図6は、実施形態に係る炉物理検査装置のハードウェア構成の一例を示す図である。コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、入出力インタフェース904、通信インタフェース905を備える。
上述のデータ記録・制御装置12と、1/M測定値算出装置13と、1/M予測線補正装置14と、炉外検出器応答解析装置15と、オペレータコンソール16は、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各機能は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU901は、プログラムに従って、記憶領域を主記憶装置902に確保する。また、CPU901は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域を補助記憶装置903に確保する。
【0037】
データ記録・制御装置12と、1/M測定値算出装置13と、1/M予測線補正装置14と、炉外検出器応答解析装置15と、オペレータコンソール16の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各機能部による処理を行ってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、CD、DVD、USB等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行しても良い。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0038】
以上のとおり、本開示に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0039】
<付記>
各実施形態に記載の臨界近接監視装置、臨界近接監視方法及びプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0040】
(1)第1の態様に係る臨界近接監視装置(炉物理検査装置10)は、ほう素の希釈量に対する炉外検出器応答(中性子束出力値)を測定し、逆倍増率(1/M測定値)を算出する逆倍増率算出部(1/M測定値算出装置13)と、前記逆倍増率算出部によって算出された前記逆倍増率に基づいて、前記逆倍増率の推移を示す予測線を算出する補正部(1/M予測線補正装置14)と、前記予測線に基づき設定された希釈停止目標(希釈停止1/M)に前記逆倍増率が達した場合、希釈操作の停止指示を行う停止指示部(データ記録・制御装置12)とを備える。
これにより、正確な1/M予測線を算出し、臨界を達成するために必要な希釈量を精度よく算出することができる。
【0041】
(2)第2の態様に係る臨界近接監視装置(炉物理検査装置10)は、(1)の臨界近接監視装置であって、前記逆倍増率算出部(1/M測定値算出装置13)は、前記炉外検出器応答が測定される度に、前記逆倍増率を算出し、前記補正部(1/M予測線補正装置14)は、前記逆倍増率算出部によって前記逆倍増率が算出される度に、算出された前記逆倍増率に基づいて、前記予測線を算出する。
これにより、希釈によって変化する原子炉内の反応度に応じた1/M予測線を正確に算出し、臨界到達までの時間や臨界達成に必要な希釈量の予測精度を維持することができる。
【0042】
(3)第3の態様に係る臨界近接監視装置(炉物理検査装置10)は、(1)~(2)の臨界近接監視装置であって、前記補正部(1/M予測線補正装置14と炉外検出器応答解析装置15)は、炉心の反応度や、2次中性子源強度などをパラメータとして、前記炉心の反応度や、2次中性子源強度などを調整することにより、複数の前記逆倍増率の推移を示す解析線を生成し、複数の前記解析線の中から、算出された前記逆倍増率の推移に最も近い前記解析線を前記予測線として算出する。
事前に、炉心の反応度や、2次中性子源強度をパラメータとして感度解析を行い、複数の炉外検出器応答予測値を作成し、実際の臨界操作開始前(基準状態)のほう素濃度での炉外検出器応答予測値を線形内挿などにより算出し、式(1)により1/M解析線を複数作成する。これにより、1/M予測線の正確性を維持することができる。
【0043】
(4)第4の態様に係る臨界近接監視装置(炉物理検査装置10)は、(3)の臨界近接監視装置であって、前記補正部(炉外検出器応答解析装置15)は、原子炉の炉心モデルのパラメータのうち、前記炉心の反応度や、2次中性子源強度などをパラメータとして、前記希釈量(臨界操作量)に対する原子炉内の中性子束分布を解析し、解析した前記中性子束分布に基づいて炉外検出器応答の予測値(炉外検出器応答予測値)を算出し、前記希釈量の変化に応じた前記炉外検出器応答の予測値を生成する。
炉心モデルを用いて、炉心の反応度や、2次中性子源強度などをパラメータとする感度解析を行って様々なパターンの炉外検出器応答予測値を作成しておく、これにより、実際の臨界操作の場面で測定される1/M測定値に対応することができ、予測線の正確性を維持することができる。
【0044】
(5)第5の態様に係る臨界近接監視装置(炉物理検査装置10)は、(4)の臨界近接監視装置であって、前記補正部は、前記希釈量の変化に応じた前記炉外検出器応答の予測値に対し、所定の曲線(例えば、6次多項式で表される曲線)によってフィッティングを行い、前記解析線を複数生成する。
これにより、炉外検出器応答予測値から解析線を生成することができる。
【0045】
(6)第6の態様に係る臨界近接監視装置(炉物理検査装置10)は、(3)~(5)の臨界近接監視装置であって、前記逆倍増率算出部によって算出された前記逆倍増率と、前記解析線との誤差を計算し、誤差が最小となる前記解析線を前記予測線として選択する。
これにより、実際の1/M測定値に合致する予測線を算出することができる。
【0046】
(7)第7の態様に係る臨界近接監視装置(炉物理検査装置10)は、(1)~(6)の臨界近接監視装置であって、前記補正部(1/M予測線補正装置14)は、制御棒を所定の初期位置(Xステップ)から所定の目標位置(X+Yステップ)へ制御した場合の反応度の変化量(引抜価値、反応度価値)を算出し、その変化量と前記予測線が示す臨界を達成するときの希釈量とに基づいて、前記希釈停止目標を算出する。
これにより、希釈後の引抜量を考慮して、希釈停止目標を算出することができる。
【0047】
(8)第8の態様に係る臨界近接監視装置(炉物理検査装置10)は、(1)~(7)の臨界近接監視装置であって、前記予測線を表示する表示装置、をさらに備える。
これにより、運転員は、希釈による1/Mの変化を予測することができる。
【0048】
(9)第9の態様に係る臨界近接監視装置(炉物理検査装置10)は、(8)の臨界近接監視装置であって、前記表示装置は、前記希釈停止目標を示す停止目標線と、前記希釈量が前記停止目標線と前記予測線の交点に達するまでの時間を表示する。
これにより、希釈量の停止位置と希釈停止までの時間を把握することができる。
【0049】
(10)第10の態様に係る臨界近接監視方法は、ほう素の希釈量に対する炉外検出器応答を測定し、逆倍増率を算出するステップと、算出された前記逆倍増率に基づいて、前記逆倍増率の推移を示す予測線を算出するステップと、前記予測線に基づき設定された希釈停止目標に前記逆倍増率が達した場合、希釈操作の停止指示を行うステップと、を有する。
【0050】
(11)第11の態様に係るプログラムは、コンピュータ900に、ほう素の希釈量に対する炉外検出器応答を測定し、逆倍増率を算出するステップと、算出された前記逆倍増率に基づいて、前記逆倍増率の推移を示す予測線を算出するステップと、前記予測線に基づき設定された希釈停止目標に前記逆倍増率が達した場合、希釈操作の停止指示を行うステップと、を実行させる。
【符号の説明】
【0051】
10・・・炉物理検査装置
11・・・タイマー
12・・・データ記録・制御装置
13・・・1/M測定値算出装置
14・・・1/M予測線補正装置
15・・・炉外検出器応答解析装置
151・・・炉心内中性子束解析装置
152・・・炉外検出器応答算出装置
16・・・オペレータコンソール
17・・・表示装置
20・・・原子力プラント
21・・・制御棒挿入・引抜操作盤
22・・・ほう素の希釈・濃縮操作盤
23・・・炉外検出器
900・・・コンピュータ
901・・・CPU
902・・・主記憶装置
903・・・補助記憶装置
904・・・入出力インタフェース
905・・・通信インタフェース
図1
図2
図3
図4
図5
図6