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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135897
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 644B
H01L21/304 643A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041219
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】林 宗儒
(72)【発明者】
【氏名】石井 弘晃
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AB02
5F157AB14
5F157AB33
5F157AB90
5F157AC01
5F157AC26
5F157BA02
5F157BA03
5F157BA13
5F157BA31
5F157BB23
5F157BB24
5F157BB45
5F157CE03
5F157CE10
5F157CE25
5F157CE27
5F157DB02
5F157DB20
(57)【要約】
【課題】ブラシと薬液ノズルの干渉を防止しながら基板のパーティクル除去効率を向上させることができる基板処理方法および基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板処理方法は、保持回転部2で回転される基板Wの上面に固定ノズル3からリンス液を吐出しながら、基板Wの中心から基板Wの端部に向けて、基板Wの上面に作用させたブラシ31を移動させるリンス液・ブラシ洗浄工程と、基板Wの端部に向けて移動するブラシ31が、基板Wの中心と基板の端部との間で予め設定された切替位置に移動されたときに、固定ノズル3からのリンス液の吐出を停止するリンス液吐出停止工程と、そのリンス液吐出停止工程の後に、回転される基板Wの上面に薬液ノズル51から薬液を吐出しながら、切替位置から基板Wの端部に向けて、基板Wの上面に作用させたブラシ51を移動させる薬液・ブラシ洗浄工程と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平姿勢の基板を保持して回転させる保持回転部と、
前記基板の中心から前記基板の端部に向けて移動可能であり、前記基板の上面に作用してブラシ洗浄を行うブラシと、
前記基板の中心から外れた固定位置に設けられ、前記基板の上面に対してリンス液を吐出するリンス液ノズルと、
前記基板の中心から外れた退避位置から前記基板の中心に向けて移動可能であり、前記基板の中心の上方から前記基板の上面に対して薬液を下向きに吐出する薬液ノズルと、
を備えた基板処理装置の基板処理方法において、
前記保持回転部によって回転される前記基板の上面に前記リンス液ノズルからリンス液を吐出しながら、前記基板の中心から前記基板の端部に向けて、前記基板の上面に作用させた前記ブラシを移動させるリンス液・ブラシ洗浄工程と、
前記基板の端部に向けて移動する前記ブラシが、前記基板の中心と前記基板の端部との間で予め設定された切替位置に移動されたときに、前記リンス液ノズルからのリンス液の吐出を停止するリンス液吐出停止工程と、
前記リンス液吐出停止工程の後に、前記回転される基板の上面に前記薬液ノズルから薬液を吐出しながら、前記切替位置から前記基板の端部に向けて、前記基板の上面に作用させた前記ブラシを移動させる薬液・ブラシ洗浄工程と、
を備えていることを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理方法において、
前記リンス液・ブラシ洗浄工程、前記リンス液吐出停止工程、および前記薬液・ブラシ洗浄工程を予め設定された回数、繰り返すことを特徴とする基板処理方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の基板処理方法において、
前記ブラシが前記基板の中心の上面に作用する前に、前記基板の上方かつ、前記ブラシと干渉しない予め設定された位置に前記薬液ノズルを移動させる第1薬液ノズル移動工程を更に備えていることを特徴とする基板処理方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の基板処理方法において、
前記基板の端部に向けて移動する前記ブラシが前記切替位置に移動されたときに、前記基板の中心の上方に前記薬液ノズルを移動させる第2薬液ノズル移動工程を更に備えており、
前記切替位置は、更に、前記薬液ノズルが前記基板の中心の上方に位置するときに、前記ブラシが前記薬液ノズルと干渉しない位置であることを特徴とする基板処理方法。
【請求項5】
請求項3に記載の基板処理方法において、
前記リンス液・ブラシ洗浄工程を行っているときに、前記薬液ノズルが前記ブラシと干渉しない状態を保ちながら、前記基板の中心の上方に前記薬液ノズルを移動させる第3薬液ノズル移動工程を更に備えていることを特徴とする基板処理方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の基板処理方法において、
前記薬液・ブラシ洗浄工程において、前記回転される基板の上面に到達した薬液が前記基板の中心を覆うように前記基板の上面に前記薬液ノズルから薬液を吐出しながら、前記切替位置から前記基板の端部に向けて、前記基板の上面に作用させた前記ブラシを移動させることを特徴とする基板処理方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の基板処理方法において、
前記ブラシは、前記基板の上面に接触状態に作用させてブラシ処理を行うことを特徴とする基板処理方法。
【請求項8】
水平姿勢の基板を保持して回転させる保持回転部と、
前記基板の中心から前記基板の端部に向けて移動可能であり、前記基板の上面に作用してブラシ洗浄を行うブラシと、
前記ブラシを移動させるブラシ移動機構と、
前記基板の中心から外れた固定位置に設けられ、前記基板の上面に対してリンス液を吐出するリンス液ノズルと、
前記基板の中心から外れた退避位置から前記基板の中心に向けて移動可能であり、前記基板の中心の上方から前記基板の上面に対して薬液を下向きに吐出する薬液ノズルと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記保持回転部によって回転される前記基板の上面に前記リンス液ノズルからリンス液を吐出しながら、前記基板の中心から前記基板の端部に向けて、前記基板の上面に作用させた前記ブラシを前記ブラシ移動機構により移動させ、
前記制御部は、前記基板の端部に向けて移動する前記ブラシが、前記基板の中心と前記基板の端部との間で予め設定された切替位置に移動されたときに、前記リンス液ノズルからのリンス液の吐出を停止し、
前記制御部は、前記リンス液の吐出を停止した後に、前記回転される基板の上面に前記薬液ノズルから薬液を吐出しながら、前記切替位置から前記基板の端部に向けて、前記基板の上面に作用させた前記ブラシを前記ブラシ移動機構により移動させることを特徴とする基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理するための基板処理方法および基板処理装置に関する。基板は、例えば、半導体基板、FPD(Flat Panel Display)用の基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが挙げられる。FPDは、例えば、液晶表示装置、有機EL(electroluminescence)表示装置などが挙げられる。
【背景技術】
【0002】
従来の基板処理装置は、水平姿勢で保持した基板を回転させる保持回転部と、ブラシアームと、薬液アームと、純水を吐出する純水ノズルとを備える(例えば、特許文献1,2参照)。ブラシアームは、基板の表面に接触してブラシ処理するブラシを備える。また、薬液アームは、薬液を吐出する薬液ノズルを備える。
【0003】
このような基板処理装置は、2つの洗浄方法を備える。第1の洗浄方法は、回転されている基板の表面に純水ノズルから純水を吐出しながら基板にブラシを接触させることで基板を洗浄する方法である。また、第2の洗浄方法は、ブラシを用いず、回転されている基板に薬液ノズルから薬液を吐出することで基板を洗浄する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-183711号公報
【特許文献2】特開2017-175062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の基板処理装置は次の問題を有する。すなわち、従来の基板処理装置において、純水とブラシの第1の洗浄方法およびブラシなしの薬液の第2の洗浄方法は各々、パーティクル除去効率が低い場合がある。そこで、薬液とブラシ処理を組み合わせた洗浄方法を採用することが考えられる。しかし、基板の中心でブラシ(またはブラシアーム)と薬液ノズル(または薬液アーム)が干渉するので、ブラシが基板の中心に位置するときに、薬液ノズルを基板の中心の上方に位置することができない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ブラシと薬液ノズルの干渉を防止しながら基板のパーティクルの除去効率を向上させることができる基板処理方法および基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。すなわち、本発明に係る基板処理方法は、水平姿勢の基板を保持して回転させる保持回転部と、前記基板の中心から前記基板の端部に向けて移動可能であり、前記基板の上面に作用してブラシ洗浄を行うブラシと、前記基板の中心から外れた固定位置に設けられ、前記基板の上面に対してリンス液を吐出するリンス液ノズルと、前記基板の中心から外れた退避位置から前記基板の中心に向けて移動可能であり、前記基板の中心の上方から前記基板の上面に対して薬液を下向きに吐出する薬液ノズルと、を備えた基板処理装置の基板処理方法において、前記保持回転部によって回転される前記基板の上面に前記リンス液ノズルからリンス液を吐出しながら、前記基板の中心から前記基板の端部に向けて、前記基板の上面に作用させた前記ブラシを移動させるリンス液・ブラシ洗浄工程と、前記基板の端部に向けて移動する前記ブラシが、前記基板の中心と前記基板の端部との間で予め設定された切替位置に移動されたときに、前記リンス液ノズルからのリンス液の吐出を停止するリンス液吐出停止工程と、前記リンス液吐出停止工程の後に、前記回転される基板の上面に前記薬液ノズルから薬液を吐出しながら、前記切替位置から前記基板の端部に向けて、前記基板の上面に作用させた前記ブラシを移動させる薬液・ブラシ洗浄工程と、を備えていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明に係る基板処理方法によれば、基板の中心側では、リンス液とブラシで基板の上面を洗浄する。これは、リンス液を供給しながら基板の中心部から基板の端部にブラシを移動させる洗浄を行ったときに、基板の中心側で比較的にパーティクルの除去効率が高いことを利用している。また、リンス液の吐出を停止した後は、薬液による化学的洗浄とブラシによる洗浄の相互効果により基板の上面を洗浄する。これにより、基板の端部側では、基板のパーティクルの除去効率を向上させることができる。また、ブラシが基板の中心に位置するときに、薬液を下方に吐出する薬液ノズルを基板の中心の上方に位置しなくてもよいので、ブラシと薬液ノズルの干渉を防止できる。したがって、ブラシと薬液ノズルの干渉を防止しながら基板のパーティクル除去効率を向上させることができる。
【0009】
また、パーティクル除去効率、すなわち洗浄力が向上しているので、EUV(Extreme Ultraviolet)工程における静電チャックにより基板の裏面に付着したチャック痕を除去することができる。また、リンス液とブラシの第1洗浄と、ブラシなしの薬液の第2洗浄とを順番に行う処理方法に比べて処理時間を削減できる。また、薬液だけでなくリンス液もブラシ洗浄で使用するので、ブラシが薬液に曝される時間が短くなり、ブラシの寿命を延ばすことができる。更に、ブラシが基板の中心側に作用する間は薬液を供給しないので薬液の使用量を抑えることができる。
【0010】
また、上述の基板処理方法において、前記リンス液・ブラシ洗浄工程、前記リンス液吐出停止工程、および前記薬液・ブラシ洗浄工程を予め設定された回数、繰り返すことが好ましい。基板の上面に薬液が供給されると、パーティクルの付着力が低下し、ブラシ洗浄の際にパーティクルが除去され易くなる。そのため、リンス液・ブラシ洗浄工程、リンス液吐出停止工程、および薬液・ブラシ洗浄工程を繰り返すことで、パーティクル除去効率が向上する。
【0011】
また、上述の基板処理方法は、前記ブラシが前記基板の中心の上面に作用する前に、前記基板の上方かつ、前記ブラシと干渉しない予め設定された位置に前記薬液ノズルを移動させる第1薬液ノズル移動工程を更に備えていることが好ましい。基板の中心の上方に薬液ノズルを移動させる際に、薬液ノズルの移動距離を小さく抑えることができる。
【0012】
また、上述の基板処理方法は、前記基板の端部に向けて移動する前記ブラシが前記切替位置に移動されたときに、前記基板の中心の上方に前記薬液ノズルを移動させる第2薬液ノズル移動工程を更に備えており、前記切替位置は、更に、前記薬液ノズルが前記基板の中心の上方に位置するときに、前記ブラシが前記薬液ノズルと干渉しない位置であることが好ましい。ブラシが薬液ノズルと干渉しない切替位置に移動した後に、薬液ノズルを移動させることができる。
【0013】
また、上述の基板処理方法は、前記リンス液・ブラシ洗浄工程を行っているときに、前記薬液ノズルが前記ブラシと干渉しない状態を保ちながら、前記基板の中心の上方に前記薬液ノズルを移動させる第3薬液ノズル移動工程を更に備えていることが好ましい。これにより、ブラシが切替位置に移動され、リンスノズルからのリンス液の吐出が停止した後、直ぐに、薬液ノズルから基板の中心に薬液を吐出することができる。
【0014】
また、上述の基板処理方法の前記薬液・ブラシ洗浄工程において、前記回転される基板の上面に到達した薬液が前記基板の中心を覆うように前記基板の上面に前記薬液ノズルから薬液を吐出しながら、前記切替位置から前記基板の端部に向けて、前記基板の上面に作用させた前記ブラシを移動させることが好ましい。基板の回転により基板の中心から均等に基板上の薬液を広げることができる。
【0015】
また、上述の基板処理方法において、前記ブラシは、前記基板の上面に接触状態に作用させてブラシ処理を行うことが好ましい。これにより、薬液による化学的洗浄とブラシによる物理的洗浄の相互効果により基板の上面を洗浄することができる。
【0016】
また、本発明に係る基板処理装置は、水平姿勢の基板を保持して回転させる保持回転部と、前記基板の中心から前記基板の端部に向けて移動可能であり、前記基板の上面に作用してブラシ洗浄を行うブラシと、前記ブラシを移動させるブラシ移動機構と、前記基板の中心から外れた固定位置に設けられ、前記基板の上面に対してリンス液を吐出するリンス液ノズルと、前記基板の中心から外れた退避位置から前記基板の中心に向けて移動可能であり、前記基板の中心の上方から前記基板の上面に対して薬液を下向きに吐出する薬液ノズルと、制御部と、を備え、前記制御部は、前記保持回転部によって回転される前記基板の上面に前記リンス液ノズルからリンス液を吐出しながら、前記基板の中心から前記基板の端部に向けて、前記基板の上面に作用させた前記ブラシを前記ブラシ移動機構により移動させ、前記制御部は、前記基板の端部に向けて移動する前記ブラシが、前記基板の中心と前記基板の端部との間で予め設定された切替位置に移動されたときに、前記リンス液ノズルからのリンス液の吐出を停止し、前記制御部は、前記リンス液吐出停止工程の後に、前記回転される基板の上面に前記薬液ノズルから薬液を吐出しながら、前記切替位置から前記基板の端部に向けて、前記基板の上面に作用させた前記ブラシを前記ブラシ移動機構により移動させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る基板処理方法および基板処理装置によれば、ブラシと薬液ノズルの干渉を防止しながら基板のパーティクルの除去効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例に係る基板処理装置の概略構成を示す図である。
図2】基板処理装置の平面図である。
図3】基板処理装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図4】(a)は、薬液ノズルの退避位置の一例を説明するための平面図であり、(b)は、(a)の側面図であり、(c)は、リンス液・ブラシ処理を説明するための平面図であり、(d)は、(c)の側面図であり、(e)は、薬液・ブラシ処理を説明するための平面図であり、(f)は、(e)の側面図である。
図5】繰り返されるブラシ洗浄のブラシの移動経路を示す側面図である。
図6】DIW・ブラシ洗浄、SC1のみの洗浄(ブラシ洗浄なし)、およびSC1・ブラシ洗浄のパーティクル除去効率を示す図である。
図7】変形例に係る、基板処理装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図8】変形例を説明するための側面図である。
図9】変形例に係る基板処理装置の平面図である。
【実施例0019】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。図1は、実施例に係る基板処理装置の概略構成を示す図である。図2は、基板処理装置の平面図である。
【0020】
(1)基板処理装置1の構成
図1図2を参照する。基板処理装置1は、保持回転部2、固定ノズル3、ブラシアーム5および薬液アーム7を備える。保持回転部2は、水平姿勢の基板Wを保持して回転させるものである。なお、基板Wは円板状に形成されている。本実施例において、基板Wの直径は、例えば300mmであるが、この大きさに限定されない。
【0021】
保持回転部2は、スピンチャック9、回転シャフト11および回転駆動部13を備える。回転駆動部13は、電動モータを備える。回転駆動部13は、回転シャフト11を介してスピンチャック9を鉛直軸AX1周りに回転させる。
【0022】
スピンチャック9は、スピンベース15および3本以上(例えば6本)の保持ピン17を備える。スピンベース15は、円板状に形成される。スピンベース15の中心には、鉛直軸AX1が通過する。3本以上の保持ピン17は、鉛直軸AX1周りにリング状に等間隔に立設される。3本以上の保持ピン17の一部または全部は可動するように構成される。可動する保持ピン17は、自身を通過する鉛直軸周りに回転する。これにより、スピンチャック9は、3本以上の保持ピン17によって、基板Wの側面を挟み込むように基板Wを保持する。なお、スピンチャック9は、基板Wの下面を吸着することで基板Wを保持するように構成されていてもよい。
【0023】
保持回転部2は、気体吐出口19、気体供給管21、気体配管23、気体供給源25および開閉弁V1を備える。気体吐出口19は、リング状のスリットを有し、鉛直軸AX1から水平のほぼ全方向に気体を吐出する。気体供給管21は、気体吐出口19に気体を送る。気体供給管21は、鉛直軸AX1に沿って回転シャフト11および回転駆動部13を貫通するように設けられる。
【0024】
気体配管23は、気体供給源25から気体供給管21に気体(例えば窒素などの不活性ガス)を送る。気体配管23には、開閉弁V1が設けられる。開閉弁V1が開状態のときに、気体吐出口19から気体が吐出される。開閉弁V1が閉状態のときに、気体吐出口19からの気体の吐出が停止される。気体吐出口19は、基板Wとスピンベース15との隙間において、基板Wの中心側から基板Wの端部(外縁)に気体が流れるように、気体を吐出する。
【0025】
固定ノズル3は、基板Wの上面に対して純水(リンス液)を斜め下向きに吐出するものである。純水として、例えばDIW(Deionized Water)が用いられる。固定ノズル3は、基板Wの中心から外れた固定位置に設けられる。固定ノズル3の固定位置は、後述するブラシ31および薬液ノズル51の移動を邪魔しないような位置である。本実施例では、固定ノズル3は、保持回転部2で保持された基板Wの外側に設けられる。また、固定ノズル3は、図2に示すように、後述するブラシ旋回機構41とノズル旋回機構57の間に設けられる。また、固定ノズル3は、水平方向に移動しないように構成されるが、水平方向に移動可能であってもよい。また、固定ノズル3は、所定の鉛直軸周りに旋回されないように構成されてもよく、昇降されないように構成されてもよい。なお、固定ノズル3は、本発明のリンス液ノズルに相当する。
【0026】
固定ノズル3には、純水配管27の先端部が接続される。純水配管27の基端部は、純水供給源29に接続される。純水配管27は、純水供給源29から固定ノズル3に純水を送るものである。純水配管27には、開閉弁V2が設けられる。開閉弁V2が開状態のときに、固定ノズル3から純水が吐出される。また、開閉弁V2が閉状態のときに、固定ノズル3からの純水の吐出が停止される。
【0027】
ブラシアーム5は、ブラシ31、シャフト33、ブラシアーム本体35および電動モータ37を備える。ブラシ31は、基板Wの上面に接触してブラシ洗浄を行うためのものである。ブラシ31は、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン:polytetrafluoroethylene)などのフッ素樹脂で形成される。また、ブラシ31は、円柱状に形成される。ブラシ31は、スポンジのように柔らかくなく、押し込まれると少し変形する硬さの部材である。
【0028】
ブラシ31の上端は、鉛直方向に延びるシャフト33の下端に取り付けられる。シャフト33の上部は、水平方向に延びるブラシアーム本体35によって鉛直軸AX2周りに回転可能に保持される。シャフト33は、例えばベルトまたはギヤを介して、電動モータ37によって鉛直軸AX2周りに回転される。ブラシ31およびシャフト33は、ブラシアーム本体35の先端側に設けられる。
【0029】
ブラシアーム5は、昇降機構(リニアアクチュエータ)39とブラシ旋回機構41を備える。昇降機構39は、ブラシ31およびブラシアーム本体35等を昇降させる。昇降機構39は、ガイドレール43と駆動部45を備える。ブラシアーム本体35の基端部は、ガイドレール43によって昇降可能に支持される。ガイドレール43は、ブラシアーム本体35を上下方向に案内する。駆動部45は、例えば電動モータとねじ軸を備える。
【0030】
なお、駆動部45は、電動モータ等に代えて、エアシリンダと電空レギュレータとを備えてもよい。電空レギュレータは、後述する制御部71からの電気信号に基づいて設定された圧力の空気などの気体をエアシリンダに供給する。
【0031】
ブラシ旋回機構41は、保持回転部2で保持された基板Wの外側に設けられる。ブラシ旋回機構41は、ブラシ31、ブラシアーム本体35および昇降機構39等を鉛直軸AX3周りに旋回させる。すなわち、ブラシ31は、ブラシ旋回機構41によって、基板Wの中心から基板Wの端部に向けて移動可能である。ブラシ旋回機構41は、電動モータを備える。ブラシ31の待機位置は、図2に示すように、ブラシ旋回機構41の+Y方向の位置である。なお、ブラシ旋回機構41は、本発明のブラシ移動機構に相当する。
【0032】
薬液アーム7は、薬液ノズル51、アーム本体53、旋回シャフト55およびノズル旋回機構57を備える。薬液ノズル51は、基板Wの上面に対して薬液を下向きに吐出する。
【0033】
薬液ノズル51には、薬液配管59の先端部が接続される。薬液配管59の基端部は、薬液供給源61に接続される。薬液配管59は、薬液供給源61から薬液ノズル51に薬液を送るものである。薬液配管59には、開閉弁V3が設けられる。開閉弁V3が開状態でかつ、後述する開閉弁V4が閉状態のときに、薬液ノズル51から薬液が吐出される。また、開閉弁V3が閉状態のときに、薬液ノズル51からの薬液の吐出が停止される。
【0034】
また、薬液ノズル51は、薬液だけでなく、純水(例えばDIW)を吐出することが可能である。すなわち、薬液ノズル51は、薬液と純水を選択的に供給できるように構成される。第2純水配管67の先端部は、薬液ノズル51と開閉弁V3の間の薬液配管59に連通接続される。また、第2純水配管67の基端部は、第2純水供給源69に接続される。第2純水配管67は、薬液配管59を介して第2純水供給源69から薬液ノズル51に純水を送るものである。第2純水配管67には、開閉弁V4が設けられる。開閉弁V4が開状態でかつ開閉弁V3が閉状態のときに、薬液ノズル51から純水が吐出される。また、開閉弁V4が閉状態のときに、薬液ノズル51からの純水の吐出が停止される。なお、薬液配管59および第2純水配管67は、アーム本体53および旋回シャフト55の各々の内部を通過するように配置される。
【0035】
薬液としては、例えば、SC1、FOM(オゾン含有フッ酸溶液)、フッ酸(HF)、希釈アンモニア水(dNHOH)、フッ酸(フッ化水素酸)を水で希釈した溶液である希釈フッ酸(DHF)が用いられる。SC1は、アンモニアと過酸化水素水(H)と水との混合液である。アンモニアと過酸化水素水と水との比率は、例えば1:8:60である。FOMは、フッ酸とオゾン(O)水の混合液である。
【0036】
薬液ノズル51は、アーム本体53の先端に設けられる。アーム本体53は、水平方向に延びるように構成される。アーム本体53の基端部は、旋回シャフト55の上部に連結される。旋回シャフト55は、鉛直方向に延びるように構成される。旋回シャフト55の下部には、ノズル旋回機構57が設けられる。
【0037】
ノズル旋回機構57は、電動モータを備える。ノズル旋回機構57が旋回シャフト55を鉛直軸AX4周りに回転させると、薬液ノズル51およびアーム本体53は、鉛直軸AX4周りに旋回する。なお、薬液アーム7は、薬液ノズル51を昇降させる電動モータを備えてもよい。
【0038】
なお、図2において、薬液ノズル51の待機位置は、ブラシ旋回機構41の近くであって、ノズル旋回機構57の-X方向の位置である。ブラシ31および薬液ノズル51が待機位置にあるとき、ブラシアーム5および薬液アーム7は、図2に示すように、平面視でL字状に配置される。
【0039】
図1に戻る。基板処理装置1は、制御部71と記憶部(図示しない)を備えている。制御部71は、基板処理装置1の各構成を制御する。制御部71は、例えば中央演算処理装置(CPU)などの1つまたは複数のプロセッサを備える。記憶部は、例えば、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random-Access Memory)、およびハードディスクの少なくとも1つを備えている。記憶部は、基板処理装置1の各構成を制御するために必要なコンピュータプログラムを記憶する。
【0040】
(2)基板処理装置1の動作(裏面洗浄)
次に、図3のタイミングチャートを参照しながら基板処理装置1の動作について説明する。なお、基板Wの裏面とは、電子回路が形成された側の面(デバイス面)である基板Wの表面に対して、電子回路が形成されていない側の面をいう。
【0041】
図示しない搬送ロボットは、裏面が上向きの基板Wを保持回転部2に搬送する。保持回転部2は、基板Wを保持する(時点t0)。
【0042】
その後、開閉弁V1は開状態に操作される。これにより、基板Wとスピンベース15との隙間において、基板Wの中心側から基板Wの端部に気体が流れるように、気体吐出口19から気体が吐出される。そのため、例えば、基板Wの下面(デバイス面)に薬液が回り込むことを防止できる。
【0043】
時点t1において、保持回転部2は、鉛直軸AX1周りの基板Wの回転を開始する。(図1参照)。また、時点t1において、薬液アーム7のノズル旋回機構57は、基板Wの外側の待機位置から基板Wの中心の上方位置に薬液ノズル51を移動させる。なお、時点t2~時点t14において、基板Wは例えば500rpmで回転される。
【0044】
その後、時点t3において、開閉弁V2は開状態に操作される。これにより、保持回転部2によって回転される基板Wの上面(裏面)には、固定ノズル3から純水(例えばDIW)が吐出される。固定ノズル3からの純水は、基板Wの中心付近に着液する。すなわち、ブラシ31が基板Wの中心に接触しているときに、固定ノズル3から吐出された純水がブラシ31に直接当たらない位置に純水が着液する。
【0045】
なお、基板Wの中心付近に着液した純水の広がりによって、基板Wの中心は純水によって覆われる。また、基板Wの回転により、純水は、基板W上で広げられ、また、余剰の純水は、基板Wの外側に排出される。
【0046】
また、時点t3において、ノズル旋回機構57は、基板Wの中心の上方位置から予め設定された位置NPに薬液ノズル51を移動させる(図4(a)、図4(b)参照)。
【0047】
ここで、制御部71は、ブラシ31を基板Wの中心の上方に移動させる前に、薬液ノズル51を基板Wの中心の上方に移動させる。更に、制御部71は、後述する時点t5でブラシ31が基板Wの中心の上面に接触する前に、基板Wの上方かつ、ブラシ31と干渉しない予め設定された位置NPに薬液ノズル51を移動させる(第1薬液ノズル移動工程)。これにより、ブラシ31と干渉しないように薬液ノズル51を位置NPに移動させることができる。また、基板Wの中心から基板Wの端部に向けてブラシ31を移動させた際に、薬液ノズル51を位置NPから基板Wの中心の上方に円滑に移動させることができる。
【0048】
薬液ノズル51が移動される位置NPは、基板Wの中心を介して薬液ノズル51の待機位置の反対側に設定される。すなわち、平面視で、基板Wの中心は、位置NPと薬液ノズル51の待機位置との間の薬液ノズル51の移動経路に存在する。なお、図4(b)において、図示の都合上、固定ノズル3は、図4(b)の右側に図示される。
【0049】
位置NPは、基板Wの中心から外れた位置であり、予め設定された位置である。位置NPは、ブラシ31(またはブラシアーム5)と薬液ノズル51(または薬液アーム7)とが干渉しないような位置である。例えば、位置NPは、平面視で、基板Wの中心から60mm離れた位置に設定される。ブラシ31またはブラシアーム5の大きさが小さい場合には、例えば、位置NPは、基板Wの中心から10mm離れた位置に設定してもよい。
【0050】
また、時点t3において、ブラシ旋回機構41は、基板Wの外側の待機位置から基板Wの中心の上方にブラシ31を移動させる。ブラシ31と薬液ノズル51とが互いに干渉(接触)しないように、ブラシ31と薬液ノズル51は移動される。
【0051】
その後、時点t4と時点t5の間において、ブラシアーム5の昇降機構39は、ブラシ31の下降を開始する。そして、時点t5において、昇降機構39は、基板Wの上面でかつ基板Wの中心にブラシ31を接触させることで、ブラシ洗浄を開始する。また、ブラシ31が基板Wの上面に接触したのとほぼ同時に、ブラシ旋回機構41は、ブラシ31を移動させる(図4(c)、図4(d)参照)。
【0052】
すなわち、制御部71は、回転される基板Wの上面(裏面)に固定ノズル3から純水を吐出しながら、基板Wの中心から基板Wの端部に向けて、基板Wの上面に接触させたブラシ31を移動させる(リンス液・ブラシ洗浄工程)。なお、ブラシ洗浄を行う際、ブラシ31は、電動モータ37によって鉛直軸AX2周りに回転される。
【0053】
その後、時点t6において、基板Wの端部に向けて移動するブラシ31が切替位置BPに移動されたときに、開閉弁V2が閉状態に操作されることで、固定ノズル3からの純水の吐出を停止する(リンス液吐出停止工程)。
【0054】
切替位置BPは、基板Wの中心と基板Wの端部との間において予め設定される。例えば、基板Wの半径が150mmである場合、その半分の位置である基板Wの中心から75mmの位置に切替位置BPが設定される。切替位置BPは、薬液ノズル51が基板Wの中心の上方(鉛直上方向の付近を含む)にあるときに、ブラシ31と薬液ノズル51とが互いに干渉しないように設定される。
【0055】
時点t6~時点t7において、純水の吐出を停止した後に、回転される基板Wの上面に薬液ノズル51から薬液を吐出しながら、切替位置BPから基板Wの端部に向けて、基板Wの上面に作用させたブラシ31を移動させる(薬液・ブラシ洗浄工程、図4(e)、図4(f)参照)。
【0056】
具体的に説明する。基板Wの端部に向けて移動するブラシ31が切替位置BPに移動されたときに(時点t6)、ノズル旋回機構57は、位置NPの上方から基板Wの中心の上方に薬液ノズル51の移動を開始させる。そして、薬液ノズル51が基板Wの中心の上方(鉛直上方向)に移動されたときに、薬液ノズル51から基板Wの上面でかつ基板Wの中心に薬液が吐出される。薬液ノズル51からの薬液は、開閉弁V3が開状態、開閉弁V4が閉状態のときに吐出される。時点t6において、ブラシ31の移動は、停止せずに続行される。純水の吐出が停止した後、薬液の吐出までに基板Wに液が吐出されない期間があるが、基板Wの上面は乾燥されない。
【0057】
時点t7において、ブラシ31は、基板Wの端部に移動される。また、時点t7において、ブラシ31は、昇降機構39によって上昇される。これにより、時点t5~時点t7の間における1回のブラシ洗浄が行われる。
【0058】
その後、更に、ブラシ洗浄を1回または複数回繰り返す。すなわち、制御部71は、リンス液・ブラシ洗浄工程、リンス液吐出停止工程、および薬液・ブラシ洗浄工程を含む工程(時点t4~時点t8の間)を予め設定された回数、繰り返す(時点t8~時点13の間)。本実施例では、3回のブラシ洗浄(時点t8~時点13の間)を繰り返し行い、合計4回のブラシ洗浄を行う。なお、図5は、繰り返されるブラシ洗浄のブラシ31の移動経路を示す側面図である。
【0059】
時点t8において、開閉弁V3,V4を閉状態に操作することで、薬液ノズル51からの薬液の吐出を停止する。また、時点t8において、薬液ノズル51を基板Wの中心の上方から位置NPに移動させる。また、時点t8において、開閉弁V2を開状態に操作することで、固定ノズル3から基板Wの中心付近に純水を吐出する。また、時点t8において、ブラシ旋回機構41は、基板Wの端部の上方から基板Wの中心の上方にブラシ31を移動させる。
【0060】
その後、時点t9~時点t10の間において、昇降機構39は、基板Wの中心の上方に移動されたブラシ31の下降を開始する。そして、時点t10において、昇降機構39は、基板Wの中心にブラシ31を接触させることで、ブラシ洗浄を開始する。また、ブラシ31が基板Wの上面に接触したのとほぼ同時に、ブラシ旋回機構41は、ブラシ31を移動させる。
【0061】
時点t10~時点t11において、制御部71は、回転される基板Wの上面に固定ノズル3から純水を吐出しながら、基板Wの中心から基板Wの端部に向けて、基板Wの上面に接触させたブラシ31を移動させる(リンス液・ブラシ洗浄工程)。その後、時点t11において、基板Wの端部に向けて移動するブラシ31が切替位置BPに移動されたときに、固定ノズル3からの純水の吐出を停止する(リンス液吐出停止工程)。
【0062】
時点t11~時点t12において、純水の吐出を停止した後に、回転される基板Wの上面に薬液ノズル51から薬液を吐出しながら、切替位置BPから基板Wの端部に向けて、基板Wの上面に作用させたブラシ31を移動させる(薬液・ブラシ洗浄工程)。また、時点t12において、ブラシ31は、基板Wの端部に移動される。また、時点t12において、ブラシ31は、昇降機構39によって上昇される。
【0063】
なお、時点t10~時点t12の動作は、時点t5~t7の動作とほぼ同じであるので、詳細な説明を省略する。
【0064】
合計4回のブラシ洗浄を行った後、時点t13において、開閉弁V3を閉状態に操作し、かつ開閉弁V4を開状態に操作することで、薬液に代えて、薬液ノズル51から純水を吐出する。この際、薬液ノズル51は、基板Wの中心の上方に配置される。また、時点t13以降の任意のタイミングで、ブラシアーム5(ブラシ旋回機構41等)は、基板Wの端部の上方から待機位置にブラシ31を移動させる。
【0065】
時点t14において、制御部71は、開閉弁V3,V4を共に閉状態に操作させることで、薬液ノズル51からの純水の吐出を停止する。また、時点t14において、保持回転部2は、基板Wを高速回転させる。例えば、基板Wの回転数は、1500rpmである。これにより、基板Wを乾燥させるスピン乾燥処理を行う。なお、スピン乾燥処理において、乾燥効果を向上させるために、図示しないノズルにより基板Wの上面に窒素などの不活性ガスを吹き付けてもよい。
【0066】
また、時点t14において、薬液アーム7のノズル旋回機構57は、基板Wの中心の上方から待機位置に薬液ノズル51を移動させる。ブラシ31と薬液ノズル51は、ブラシ31と薬液ノズル51が互いに干渉しないように移動される。
【0067】
その後、時点t15において、保持回転部2は、基板Wの回転を停止する。また、制御部71は、開閉弁V1を閉状態に操作することで、気体吐出口19からの気体の吐出を停止する。その後、保持回転部2は、基板Wの保持を解除する。図示しない搬送ロボットは、裏面洗浄が行われた基板Wを保持回転部2から受け取り、次の目的地にその基板Wを搬送する。
【0068】
(3)実験結果
図6は、DIW・ブラシ洗浄、SC1のみの洗浄(ブラシ洗浄なし)、およびSC1・ブラシ洗浄のパーティクル除去効率を示す図である。本実験において、図1図2に示す基板処理装置1が用いられる。実験に用いられる基板Wの処理面には、パーティクル除去効率を評価するためのPSL粒子(ポリスチレンラテックス粒子)が付着される。実験用の基板Wの直径は300mmである。図6に示す実験結果の各欄には、50nm以上のPSL粒子の個数が示される。
【0069】
(3-1)DIW・ブラシ洗浄について
DIW・ブラシ洗浄は、図3のタイミングチャートに基づいて薬液ノズル51を用いずに行われる。ここで、ブラシ処理は合計4回行われる。また、基板Wに接触されたブラシ31を基板Wの中心から基板Wの端部に移動させる間、薬液を供給せずに、固定ノズル3から基板Wの上面にDIWだけが供給される。その後、図3に示すDIWによるリンス処理および、高速回転によるスピン乾燥処理が行われる。
【0070】
図6に示すように、DIW・ブラシ洗浄後において、基板Wの中心側の領域(ブラシの直径よりも大きくDIWの着液点付近で囲まれる領域)でPSL粒子が比較的良好に除去される結果になった。基板Wの中心側の領域は、単位面積あたりのDIW量も多く、ブラシ31の接触時間も長いので、PSL粒子が比較的除去されやすいと考えられる。
【0071】
(3-2)SC1のみ(ブラシ洗浄なし)の洗浄について
次に、SC1のみ(ブラシ洗浄なし)の洗浄は、800rpmで回転する基板Wの中心の上方に配置された薬液ノズル51から下向きにSC1(薬液)を所定時間、吐出して行われる。その後、DIWによるリンス処理および、高速回転によるスピン乾燥処理が行われる。図6に示すように、SC1のみの洗浄後において、PSL粒子の除去効果が得られない結果になった。
【0072】
(3-3)SC1・ブラシ洗浄について
次に、SC1・ブラシ洗浄は、図3のタイミングチャートに基づいて行われる。すなわち、基板Wの中心側では、DIW・ブラシ洗浄が行われ、基板Wの端部側では、SC1・ブラシ洗浄が行われる。このようなブラシ洗浄(DIW・ブラシ洗浄とSC1・ブラシ洗浄)が合計4回行われる。その後、図3に示すDIWによるリンス処理および、高速回転によるスピン乾燥処理が行われる。なお、4回のSC1・ブラシ洗浄におけるSC1の吐出時間の合計は、SC1のみの洗浄におけるSC1の吐出時間よりも短い。
【0073】
図6に示すように、SC1・ブラシ洗浄後において、基板Wの全面においてPSL粒子が良好に除去される結果になった。そのため、SC1・ブラシ洗浄は、DIW・ブラシ洗浄およびSC1のみの洗浄の各々よりもパーティクル除去効率が良いことが理解される。
【0074】
本実施例によれば、基板Wの中心側では、純水とブラシ31で基板Wの上面を洗浄する。これは、純水を供給しながら基板Wの中心部から基板Wの端部にブラシ31を移動させる洗浄を行ったときに、基板Wの中心側で比較的にパーティクルの除去効率が高いことを利用している。また、純水の吐出を停止した後は、薬液による化学的洗浄とブラシ31による物理的洗浄の相互効果により基板Wの上面を洗浄する。これにより、基板Wの端部側では、基板Wのパーティクルの除去効率を向上させることができる。また、ブラシ31が基板Wの中心に位置するときに、薬液を下方に吐出する薬液ノズル51を基板Wの中心の上方に位置しなくてもよいので、ブラシ31と薬液ノズル51の干渉を防止できる。したがって、ブラシ31と薬液ノズル51の干渉を防止しながら基板Wのパーティクルの除去効率を向上させることができる。
【0075】
また、パーティクルの除去効率、すなわち洗浄力が向上しているので、EUV(Extreme Ultraviolet)工程における静電チャックにより基板Wの裏面に付着したチャック痕を除去することができる。また、純水とブラシ31の第1洗浄と、ブラシ31なしの薬液の第2洗浄とを順番に行う処理方法に比べて処理時間を削減できる。また、薬液だけでなく純水もブラシ洗浄で使用するので、ブラシ31が薬液に曝される時間が短くなり、ブラシ31の寿命を延ばすことができる。更に、ブラシ31が基板Wの中心側に作用する間は薬液を供給しないので薬液の使用量を抑えることができる。
【0076】
また、リンス液・ブラシ洗浄工程、リンス液吐出停止工程、および薬液・ブラシ洗浄工程は、予め設定された回数、繰り返される(時点t4~時点t8、時点t8~時点13)。基板Wの上面に薬液が供給されると、パーティクルの付着力が低下し、ブラシ洗浄の際にパーティクルが除去され易くなる。そのため、リンス液・ブラシ洗浄工程、リンス液吐出停止工程、および薬液・ブラシ洗浄工程を繰り返すことで、パーティクル除去効率が向上する。
【0077】
また、ブラシ31が基板Wの中心の上面に作用する前に、基板Wの上方かつ、ブラシ31と干渉しない予め設定された位置NPに薬液ノズル51が移動される。基板Wの中心の上方に薬液ノズル51を移動させる際に、薬液ノズル51の移動距離を小さく抑えることができる。
【0078】
また、基板Wの端部に向けて移動するブラシ31が切替位置BPに移動されたときに、基板Wの中心の上方に薬液ノズル51が移動される。また、切替位置BPは、更に、薬液ノズル51が基板Wの中心の上方に位置するときに、ブラシ31が薬液ノズル51と干渉しない位置である。ブラシ31が薬液ノズル51と干渉しない切替位置BPに移動した後に、薬液ノズル51を移動させることができる。
【0079】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0080】
(1)上述した実施例では、図3において、基板Wの端部に向けて移動するブラシ31が切替位置BPに移動されたときに、基板Wの中心の上方に薬液ノズル51の移動を開始させた。この点、図7の矢印で示す時点t5~時点t6の間において、ブラシ31が切替位置BPに移動される前から、薬液ノズル51の移動を開始させてもよい。そして、図7の時点t6において、薬液ノズル51が基板Wの中心の上方に移動されてもよい。
【0081】
この場合、制御部71は、リンス液(純水)・ブラシ洗浄を行っているときに、薬液ノズル51がブラシ31と干渉しない状態を保ちながら、ノズル旋回機構57によって基板Wの中心の上方に薬液ノズル51を移動させてもよい。これにより、ブラシ31が切替位置BPに移動され、固定ノズル3からの純水の吐出が停止した後、直ぐに、薬液ノズル51から基板Wの中心に薬液を吐出することができる。
【0082】
(2)上述した実施例および変形例(1)では、基板Wの中心の上方(鉛直上方向)に薬液ノズル51を移動させた後に、その薬液ノズル51から基板Wの中心に薬液を下向きに吐出した。これにより、薬液は、基板Wの中心に着液された。この点、基板Wに到達した薬液が基板Wの中心を覆えば、薬液は、基板Wの中心から外れた位置に着液されてもよい。そのため、図8に示すように、薬液ノズル51が基板Wの中心の鉛直上方向の位置に存在していなくてもよい。
【0083】
すなわち、制御部71は、薬液・ブラシ洗浄を行う際に、回転される基板Wの上面に到達した薬液が基板Wの中心を覆うように基板Wの上面に薬液ノズル51から薬液を吐出しながら、基板Wの端部に向けて、基板Wの上面に接触させたブラシ31を移動させればよい。そのため、基板Wの回転により基板Wの中心から均等に広げることができる。
【0084】
(3)上述した実施例および各変形例では、薬液ノズル51は、基板Wの中心から外れた退避位置としての位置NPから基板Wの中心に向けて移動可能であったが、退避位置は、位置NPに限られない。退避位置として、例えば基板Wの外側の待機位置であってもよい。
【0085】
(4)上述した実施例および各変形例では、図3の時点t13~t14の間において、薬液ノズル51から純水が吐出された。この点、固定ノズル3から純水が吐出されてもよい。
【0086】
(5)上述した実施例および各変形例では、固定ノズル3および薬液ノズル51は、リンス液として純水を吐出したが、リンス液は純水に限定されない。リンス液として、例えば、炭酸水、水素水、または電解イオン水であってもよい。
【0087】
(6)上述した実施例および各変形例では、切替位置BPは、基板Wの半径(例えば150mm)の半分の位置であったが、この位置に限定されない。例えば、薬液ノズル51が基板Wの中心の上方に位置するときに、薬液ノズル51がブラシ31と干渉しなければ、基板Wの半径の半分の位置よりも基板Wの中心側であってもよい。これにより、リンス液・ブラシ洗浄から薬液・ブラシ洗浄に早く切り替えすることができる。
【0088】
(7)上述した実施例および各変形例では、ブラシ洗浄は3回繰り返され、ブラシ洗浄は合計4回繰り返された。この点、1回のブラシ洗浄で十分なパーティクルの除去効率が得られるのであれば、ブラシ洗浄を繰り返さなくてもよい。例えば、リンス液・ブラシ洗浄のパーティクル除去効率が高い領域(図6参照)と、薬液・ブラシ洗浄の領域とが重なる場合が挙げられる。
【0089】
(8)上述した実施例および各変形例では、ブラシ31は、PTFEなどフッ素樹脂で形成された。この点、必要により、ブラシ31は、PVA(ポリビニルアルコール、polyvinyl alcohol)スポンジであってもよい。また、ブラシ31は、複数の毛束が部材に植え込まれたものであってもよい。
【0090】
(9)上述した実施例および各変形例では、ブラシ31は、基板Wの上面に接触状態で作用してブラシ洗浄を行った。この点、ブラシ31の下面と基板Wの上面との間に薬液または純水を介在させるための隙間が形成されるように、ブラシ31は、基板Wの上面に非接触でブラシ洗浄を行ってもよい。
【0091】
(10)上述した実施例および各変形例では、図2に示すように、待機位置において、ブラシアーム5と薬液アーム7は、L字状に配置された。この点、図9に示すように、待機位置において、ブラシアーム5と薬液アーム7は、平行に配置されていてもよい。また、図9において、薬液ノズル51とノズル旋回機構57が逆に配置されていてもよい。
【0092】
(11)上述した実施例および各変形例では、ブラシ移動機構としてのブラシ旋回機構41は、鉛直軸AX3周りにブラシ31を旋回させた。この点、ブラシ移動機構は、ブラシ31を水平方向に直線状に移動させるように構成されてもよい。また、ブラシ移動機構は、ブラシ31をX方向およびY方向に移動させるように構成されてもよい。薬液ノズル51も同様である。
【0093】
(12)上述した実施例および各変形例において、薬液ノズル51から吐出され、基板Wの上面に到達した薬液は、必要により、基板Wの中心まで広がらなくてもよい。
【符号の説明】
【0094】
1 … 基板処理装置
2 … 保持回転部
3 … 固定ノズル
5 … ブラシアーム
7 … 薬液アーム
31 … ブラシ
41 … ブラシ旋回機構
51 … 薬液ノズル
57 … ノズル旋回機構
AX1~AX4 … 鉛直軸
NP … 位置
BP … 切替位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9