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特開2023-135910軸流ファンのインペラおよび軸流ファン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135910
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】軸流ファンのインペラおよび軸流ファン
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/64 20060101AFI20230922BHJP
   F04D 29/32 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
F04D29/64 C
F04D29/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041235
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000228730
【氏名又は名称】ニデックアドバンスドモータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】加藤 義彦
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB26
3H130AB52
3H130AC19
3H130BA22C
3H130CB05
3H130DD01Z
3H130EA06C
3H130EA07C
3H130EB00C
3H130EB01C
3H130EB02C
3H130EB05C
3H130EC17C
3H130ED01C
(57)【要約】      (修正有)
【課題】重量および樹脂量が増加することなく、強度を保持できる軸流ファンのインペラおよび軸流ファンを提供する。
【解決手段】本発明の軸流ファンのインペラの一つの態様は、一方向に延びる中心軸J周りに回転可能な軸流ファンのインペラであって、前記インペラは、ゲート痕Gと、樹脂溜まり25と、整流部24と、を有し、前記樹脂溜まり25は、前記ゲート痕Gから軸方向に直交する第1方向の一方側に配置され、前記整流部24は、前記樹脂溜まり25の前記第1方向の一方側に配置され、前記第1方向と交差する第2方向に延びるとともに前記樹脂溜まり25よりも軸方向の厚さが少ない薄肉部26を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に延びる中心軸周りに回転可能な軸流ファンのインペラであって、
前記インペラは、ゲート痕と、樹脂溜まりと、整流部と、を有し、
前記樹脂溜まりは、前記ゲート痕から軸方向に直交する第1方向の一方側に配置され、
前記整流部は、前記樹脂溜まりの前記第1方向の一方側に配置され、前記第1方向と交差する第2方向に延びるとともに前記樹脂溜まりよりも軸方向の厚さが少ない薄肉部を有する、軸流ファンのインペラ。
【請求項2】
前記インペラは、前記中心軸から径方向に延びる天板部と、筒部と、翼部とを備え、
前記ゲート痕と、前記整流部と、前記樹脂溜まりは、前記天板部に配置されている、
請求項1に記載の軸流ファンのインペラ。
【請求項3】
前記樹脂溜まりは、前記ゲート痕の径方向外側に配置され周方向に延びる円環状であり、
前記整流部は、前記樹脂溜まりの径方向外側に隣接され周方向に延びる円弧状であり、
前記天板部は、前記整流部の径方向外側に隣接した円環状の天板外縁部を備え、
前記天板外縁部の径方向外側に前記筒部と、前記翼部とが配置される、
請求項2に記載の軸流ファンのインペラ。
【請求項4】
前記ゲート痕と前記樹脂溜まりの間に、周方向に並ぶ複数の孔を有する、
請求項3に記載の軸流ファンのインペラ。
【請求項5】
前記樹脂溜まりの径方向寸法は、前記孔の周方向寸法よりも長い、
請求項4に記載の軸流ファンのインペラ。
【請求項6】
前記樹脂溜まりの軸方向寸法は、前記孔よりも径方向外側の前記樹脂溜まりの径方向寸法よりも長い、
請求項4または5に記載の軸流ファンのインペラ。
【請求項7】
前記整流部には、径方向に延びるリブ部が設けられ、
前記リブ部は、前記孔と径方向に対向する、
請求項4から6のいずれか一項に記載の軸流ファンのインペラ。
【請求項8】
前記整流部の径方向寸法は、前記樹脂溜まりの径方向寸法よりも長い、
請求項1から7のいずれか一項に記載の軸流ファンのインペラ。
【請求項9】
前記整流部の軸方向寸法は、前記樹脂溜まりの軸方向寸法の半分以下である、
請求項1から8のいずれか一項に記載の軸流ファンのインペラ。
【請求項10】
前記整流部の径方向外側の軸方向寸法は、径方向内側の軸方向寸法よりも短い、
請求項3から8のいずれか一項に記載の軸流ファンのインペラ。
【請求項11】
前記ゲート痕は、前記中心軸の位置に一つ配置されている、
請求項3から10のいずれか一項に記載の軸流ファンのインペラ。
【請求項12】
前記ゲート痕は、前記中心軸を中心に周方向に間隔をあけて複数配置されている、
請求項3から10のいずれか一項に記載の軸流ファンのインペラ。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の軸流ファンのインペラと、
前記インペラを回転させるモータ部と、
を備える軸流ファン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸流ファンのインペラおよび軸流ファンに関する。
【背景技術】
【0002】
軸流ファンのインペラには、回転に伴う遠心力や風を起こした反力など多くの応力が作用する。また、近年では、風量-静圧特性や軽薄短小への要求が高まり、インペラも応力に対して必要最低限の形状に設計される。モールド成形するインペラの場合、使用する樹脂の特性を考慮した形状に設計される。しかし、成形時に樹脂の特性が十分に発揮されない場合がある。例えば、成形時に金型内で、樹脂の流れが合流する場合には、ウエルドと言われる非連続部が発生する場合がある。ウエルドでは樹脂本来の特性が得られず、機械的特性等が低下し、インペラの変形、破損等の原因となる虞があった。
【0003】
特許文献1には、ファンの成形工程にて、金型に注入された樹脂が合流する箇所に、樹脂に含有されるガラス繊維の配向を複雑化するための樹脂攪拌部を有する樹脂製ファン、が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4969493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された軸流ファンは、樹脂攪拌部として半円柱状の突部が周方向に複数設けられているため、重量が増加するとともに、樹脂量が増加することでコスト増が生じる。
【0006】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、重量および樹脂量が増加することなく、強度を保持できる軸流ファンのインペラおよび軸流ファンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の軸流ファンのインペラの一つの態様は、一方向に延びる中心軸周りに回転可能な軸流ファンのインペラであって、前記インペラは、ゲート痕と、樹脂溜まりと、整流部と、を有し、前記樹脂溜まりは、前記ゲート痕から軸方向に直交する第1方向の一方側に配置され、前記整流部は、前記樹脂溜まりの前記第1方向の一方側に配置され、前記第1方向と交差する第2方向に延びるとともに前記樹脂溜まりよりも軸方向の厚さが少ない薄肉部を有する。
【0008】
本発明の軸流ファンの一つの態様は、上記の軸流ファンのインペラと、前記インペラを回転させるモータ部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一つの態様によれば、重量および樹脂量が増加することなく、強度を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態の軸流ファンを上側から見た図である。
図2図2は、第1実施形態の軸流ファンを示す図であって、図1におけるII-II断面図である。
図3図3は、第1実施形態のインペラを上側から見た図である。
図4図4は、第1実施形態の天板部を部分的に拡大した断面図である。
図5図5は、インペラ成形時の樹脂流れを示す図である。
図6図6は、第1実施形態の天板部の斜視断面図である。
図7図7は、第2実施形態の軸流ファンを上側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る軸流ファンのインペラおよび軸流ファンについて説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。
【0012】
[軸流ファンの第1実施形態]
図1に示すように、第1実施形態の軸流ファン10は、例えば、電子機器を空冷するための電動式冷却ファンとして用いられる。
図1から図3に示すように、軸流ファン10は、インペラ20と、ハウジング70と、回路基板80と、を有する。
【0013】
インペラ20は、一方向に延びる中心軸J周りに回転可能である。インペラ20の詳細については後述する。
【0014】
各図に示すXYZ座標系において、Z軸方向は、中心軸Jが延びる方向と平行な方向であり上下方向とする。X軸方向は、Z軸方向と直交する水平方向とする。Y軸方向は、Z軸方向およびX軸方向の両方と直交する水平方向とする。
以下の説明においては、Z軸方向、すなわち中心軸Jと平行な方向を単に「軸方向」と呼び、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。Z軸方向と平行な方向を「上下方向」と呼ぶ。また、Z軸方向の正の側を「上側」と呼び、Z軸方向の負の側を「下側」と呼ぶ。本実施形態において、「上側」は軸方向一方側に相当し、「下側」は軸方向他方側に相当する。なお、上下方向、水平方向、上側および下側は、単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係および方向を限定しない。
【0015】
ハウジング70は、枠部50と、複数の静翼部60と、モータハウジング部40と、モータ部30と、を備えている。図2に示すように、モータ部30は、インペラ20の径方向内側に配置され、中心軸J周りにインペラ20を回転させる。より詳細には、モータ部30は、インペラ20における後述するインペラカップ20Aの内部に配置される。本実施形態においてモータ部30は、インペラ20を、例えば、上側から視て反時計回りの向きに回転させる。以下の説明においては、周方向において翼部23が進む側、すなわち上側から視て反時計回りに進む側を「下流側」と呼ぶ場合があり、周方向において翼部23が進む側と逆側、すなわち上側から視て時計回りに進む側を「上流側」と呼ぶ場合がある。各図において示す矢印DRは、インペラ20の回転する向きを示している。
【0016】
モータ部30は、シャフト31と、ステータ34と、ロータカップ32と、ロータマグネット33と、を有する。シャフト31は、中心軸Jを中心として軸方向に延びている。シャフト31は、後述するステータ支持部41の径方向内側に挿入されている。シャフト31は、ベアリングを介してステータ支持部41の径方向内側面に回転可能に支持されている。シャフト31の上端には、ロータカップ32が固定されている。ステータ34は、シャフト31を周方向に囲む環状である。ステータ34は、ステータ支持部41の外周面に固定されている。ステータ34の固定方法は、嵌め合わせ、接着、圧入等、特に限定されない。ステータ34は、回路基板80と電気的に接続されている。
【0017】
ロータカップ32は、下側に開口する筒状であり、ステータ34の径方向外側に配置されている。ロータカップ32の上部は、インペラカップ20Aの径方向内側に配置されている。ロータカップ32は、インペラカップ20Aに固定されている。なお、ロータカップ32、インペラカップ20Aおよびシャフト31の固定構造は、これに限定されない。ロータマグネット33は、ロータカップ32の内周面に固定されている。ロータマグネット33は、例えば、円筒状である。ロータマグネット33は、ステータ34の径方向外側において、ステータ34と径方向に隙間を介して対向している。
【0018】
モータハウジング部40は、モータ部30を上側で支持する。モータハウジング部40は、インペラ20の下側においてモータ部30を支持する。モータハウジング部40は、収容部42と、ステータ支持部41と、を有する。収容部42は、上側に開口するカップ状である。収容部42は、回路基板80を収容する。収容部42は、モータ部30の下側に配置されている。ステータ支持部41は、収容部42から上側に延びている。ステータ支持部41は、中心軸Jを中心とした円筒状である。
【0019】
回路基板80は、径方向に拡がる板状である。回路基板80は、収容部42の径方向内側に配置されている。回路基板80は、モータ部30の下側に配置され、少なくとも一部においてモータ部30と軸方向に重なっている。回路基板80は、例えば、モータハウジング部40に固定されている。回路基板80には、ステータ34のコイルが接続されている。これにより、回路基板80は、モータ部30と電気的に接続されている。
【0020】
枠部50は、軸方向に延びる角筒状である。枠部50は、インペラ20およびモータ部30を径方向外方から周方向に囲んでいる。枠部50は、周壁部51を有する。周壁部51は、軸方向に伸びる筒状である。枠部50は、周壁部51における円筒面からなる内側面51Aにより風洞部52を構成する。すなわち、枠部50は、空気が流れる風洞部52を内側面51Aに備える。
【0021】
複数の静翼部60は、それぞれ枠部50における内側面51Aから径方向内側に延びる。複数の静翼部60は、周方向に沿って等間隔に配置されている。静翼部60は、枠部50における内側面51Aと、モータハウジング部40とを繋いでいる。
【0022】
インペラ20は、例えば、樹脂製である。インペラ20は、インペラカップ20Aと、複数の翼部23と、を備える。図2に示すように、複数の翼部23は、インペラカップ20Aにおける後述する筒部22の径方向外側面に位置する。複数の翼部23は、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置される。図3に示すように、翼部23の数は、例えば、5個である。
【0023】
インペラカップ20Aは、下側に開口する筒状である。インペラカップ20Aは、天板部21と、筒部22と、を備える。天板部21は、軸方向と直交し径方向に拡がる円板状である。筒部22は、天板部21の径方向外縁から下側に延びた円筒状である。筒部22の内部には、モータ部30およびロータカップ32が配置される。筒部22には、ロータカップ32が固定されている。
【0024】
図3および図4に示すように、天板部21は、中央円板部21Aと、傾斜部21Bと、円環部21Cと、天板外縁部21Dと、ゲート痕Gと、整流部24と、樹脂溜まり25と、孔28と、リブ部29と、を有する。
【0025】
中央円板部21Aは、中心軸Jを中心とする円板状である。中央円板部21Aは、軸方向と直交し径方向に拡がる。中央円板部21Aは、ゲート痕Gを有する。ゲート痕Gは、中央円板部21Aの上面に配置されている。ゲート痕Gは、中心軸Jの位置に一つ配置されている。ゲート痕Gは、金型を用いてインペラ20を射出成形する際に、金型に設けられ樹脂が充填されるゲート部の痕跡である。ゲート痕Gは、一例として、ピンポイントゲートの痕跡である。
【0026】
傾斜部21Bは、中央円板部21Aの径方向外側に位置する。傾斜部21Bは、中央円板部21Aの外縁から径方向外側に向かうにつれて上側に向かう方向に傾斜している。傾斜部21Bには、孔28における径方向内側が配置されている。孔28は、孔28における径方向内側は、傾斜部21Bを軸方向に貫通している。円環部21Cは、傾斜部21Bの径方向外側に位置する。円環部21Cは、軸方向と直交し周方向に延びる円環状である。
【0027】
円環部21Cには、孔28における径方向外側が配置されている。孔28における径方向外側は、円環部21Cを軸方向に貫通している。つまり、孔28は、傾斜部21Bおよび円環部21Cに跨がって軸方向に貫通している。孔28は、ゲート痕Gと樹脂溜まり25の間に配置される。図3に示すように、孔28は、周方向に間隔をあけて複数(図3では、10個)並んで配置されている。孔28の周方向の長さは、径方向外側に向かうにつれて漸次大きくなる。
【0028】
樹脂溜まり25は、円環部21Cに配置されている。樹脂溜まり25は、ゲート痕Gから軸方向に直交する第1方向一方側に配置される。本実施形態の樹脂溜まり25は、ゲート痕Gから第1方向一方側である径方向外側に配置される。樹脂溜まり25は、孔28の径方向外側に位置する。樹脂溜まり25は、ゲート痕Gを中心として周方向に延びる円環状である。
【0029】
整流部24は、円環部21Cに配置されている。図3に示すように、整流部24は、周方向に間隔をあけて複数(図3では、10個)配置されている。整流部24は、樹脂溜まり25の径方向外側に隣接される。整流部24は、周方向に延びる円弧状である。整流部24は、円環部21Cの上面から下側に窪んだ窪み24Aを有する。整流部24は、窪み24Aの下側に位置する薄肉部26を有する。薄肉部26の軸方向の厚さは、樹脂溜まり25よりも軸方向の厚さが少ない。整流部24は、樹脂溜まり25の径方向外側に配置されている。整流部24は、径方向と交差する第2方向である周方向に延びる。整流部24の周方向中心位置は、周方向で隣り合う孔28同士の周方向で中間位置である。本実施形態では、整流部24の周方向中心位置は、孔28の周方向中心位置に対して18°ずれている。
【0030】
これにより、金型を用いてインペラ20を射出成形する際には、図5に示すように、金型におけるゲート痕Gの位置のゲート部からキャビティに導入された樹脂Rは、孔28を成形するコア部で分岐した後に樹脂溜まり25に達する。樹脂溜まり25の径方向外側には、整流部24における窪み24Aを成形するコア部の存在するため、樹脂Rの流動抵抗が大きくなる。樹脂溜まり25に達した樹脂Rは、樹脂溜まり25を流動抵抗が小さい周方向に流動し孔28の径方向外側で合流する。孔28の径方向外側で合流した樹脂Rは、樹脂溜まり25で混ざり合って攪拌された後に、薄肉部26が成形される薄くて幅が広いキャビティを径方向外側に向けて流動する。
【0031】
整流部24は、射出成形時に薄肉部26が成形される薄くて幅が広いキャビティを径方向外側に向けて樹脂Rが流動することで、周方向に沿った幅広のフィルムゲートとして作用する。このため、整流部24の径方向外側に流動する樹脂Rは、ウエルドを抑制して変形やひずみなどの不具合を抑制できるとともに、インペラ20の機械強度を保持できる。薄肉部26は、成形品の一部であるため、ゲートカット等の二次加工が不要であり製造コスト増を回避できる。整流部24は、窪み24Aにより薄肉部26となるため、樹脂量を低減してコスト減に寄与できる。
【0032】
図6に示すように、樹脂溜まり25の径方向寸法L1は、孔28の周方向寸法L2よりも長いことが好ましい。径方向寸法L1が周方向寸法L2以下の場合には、樹脂溜まり25において合流した樹脂Rの攪拌が不十分になる可能性がある。径方向寸法L1を周方向寸法L2よりも長くすることで、樹脂溜まり25において合流した樹脂Rを十分に攪拌してウエルドの発生を抑制できる。
【0033】
樹脂溜まり25の軸方向寸法L3は、孔28よりも径方向外側の樹脂溜まり25の径方向寸法L1よりも長いことが好ましい。軸方向寸法L3が径方向寸法L1以下の場合には、樹脂溜まり25において合流した樹脂Rの攪拌が不十分になる可能性がある。軸方向寸法L3を径方向寸法L1よりも長くすることで、樹脂溜まり25において合流した樹脂Rを十分に攪拌してウエルドの発生を抑制できる。
【0034】
整流部24の径方向寸法L4は、樹脂溜まり25の径方向寸法L1よりも長いことが好ましい。径方向寸法L4が径方向寸法L1以下の場合には、樹脂溜まり25から薄肉部26が成形されるキャビティに流入した樹脂Rの流動長が短く、樹脂Rの流動先端が周方向に沿った面状になりにくい。径方向寸法L4を径方向寸法L1よりも長くすることで、樹脂Rの流動先端が周方向に沿った面状のフィルムゲートとして作用しやすくなる。フィルムゲートは、ピンポイントゲートよりも断面積を大きくできるため、樹脂Rの流動速度が減速される。流動速度が減速されることで、樹脂Rは一定状態で安定してキャビティに充填されインペラ20にそりや変形が生じることを抑制できる。
【0035】
整流部24の軸方向寸法L5は、樹脂溜まり25の軸方向寸法L3の半分以下であることが好ましい。軸方向寸法L5が軸方向寸法L3の半分を超えた場合、薄肉部26が成形されるキャビティの軸方向寸法が小さくなり、樹脂溜まり25から薄肉部26が成形されるキャビティに流入する樹脂Rの流動抵抗が大きくなってしまう。軸方向寸法L5を軸方向寸法L3の半分以下とすることで、樹脂溜まり25から薄肉部26が成形されるキャビティに流入する樹脂Rの流動抵抗を小さくでき、薄肉部26が成形されるキャビティを流動した樹脂Rがフィルムゲートとして作用しやすくなる。
【0036】
整流部24の径方向外側の軸方向寸法L6は、径方向内側の軸方向寸法L3よりも短いことが好ましい。軸方向寸法L6が軸方向寸法L3以上の場合、樹脂溜まり25が成形されるキャビティの樹脂Rを介して整流部24の径方向外側に位置するキャビティの樹脂Rに十分な樹脂充填圧が掛かりづらくなる。軸方向寸法L6を軸方向寸法L3よりも短くすることで、樹脂溜まり25が成形されるキャビティの樹脂Rを介して整流部24の径方向外側に位置するキャビティの樹脂Rに十分な樹脂充填圧を付加することができ、ヒケ等の成形不良を抑制できる。
【0037】
リブ部29は、周方向で隣り合う整流部24の間に配置される。リブ部29は、孔28と径方向に対向する。リブ部29は、径方向に延びる。リブ部29は、樹脂溜まり25と天板外縁部21Dとを径方向に繋ぐ。リブ部29が孔28と径方向に対向することで、樹脂溜まり25で攪拌された樹脂Rが径方向外側に流動しやすくなる。リブ部29における上面の軸方向の位置は、円環部21Cにおける上面の軸方向の位置と同一である。リブ部29の上面は、円環部21Cの上面と面一である。
リブ部29が設けられることで、窪み24Aを周方向に区画できる。インペラ20は、窪み24Aに錘(バランスウェイト)を取り付けることで、インペラ単体の釣り合いと軸流ファン10のバランスを調整し、振動を低減させている。リブ部29によって窪み24Aを周方向に区画することで、バランスウェイトの取り付け位置を把握しやすくなり作業性が向上する。
【0038】
天板外縁部21Dは、整流部24の径方向外側に隣接する。天板外縁部21Dは、円環状である。天板部21は、天板外縁部21Dの径方向外側に筒部22と翼部23とが配置される。
帯状のフィルムゲートとして作用する整流部24の径方向外側に天板外縁部21Dが隣接することで、射出成形時に流動する樹脂Rの下流側に位置する筒部22と翼部23とに対して、ウエルドを抑制し、変形やひずみなどの不具合を抑制することができる。
【0039】
上記構成のインペラ20および軸流ファン10では、ゲート痕Gから径方向外側に樹脂溜まり25が配置され、樹脂溜まり25の径方向外側に樹脂溜まり25の径方向外側に樹脂溜まり25よりも軸方向の厚さが少ない薄肉部26を有する整流部24が配置されているため、重量および樹脂量が増加することなく、樹脂溜まり25において合流した樹脂Rを十分に攪拌してウエルドの発生を抑制してインペラ20の機械強度を保持できる。
【0040】
[軸流ファンの第2実施形態]
軸流ファン10の第2実施形態について、図7を参照して説明する。
この図において、図1から図6に示す第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0041】
図7に示すように、本実施形態の軸流ファン10は、インペラ20が複数(図7では3個)のゲート痕G1、G2、G3を有する。ゲート痕G1、G2、G3は、中心軸Jを中心に周方向に間隔(例えば、120°間隔)をあけて複数配置されている。複数のゲート痕G1、G2、G3が設けられることで、射出成形時に金型内への樹脂の充填速度を高めることができる。これにより、サイクルタイムの短縮による生産性向上を図ることができる。本実施形態では、インペラ20に孔部は設けられていない。
【0042】
上記構成のインペラ20を射出成形する際には、ゲート痕G1、G2、G3の位置に配置されたゲート部からそれぞれ樹脂が射出される。ゲート部からキャビティに射出された樹脂は、周方向で隣り合うゲート部同士の中間位置で合流する。
【0043】
図7に示すように、例えば、ゲート痕G1、G2の位置に配置されたゲート部から射出された樹脂は、直線W12に沿って合流する。直線W12は、ゲート痕G1、G2の位置から等距離となる直線である。同様に、ゲート痕G1、G3の位置に配置されたゲート部から射出された樹脂は、直線W13に沿って合流する。ゲート痕G2、G3の位置に配置されたゲート部から射出された樹脂は、直線W23に沿って合流する。直線W12、W13、W23の周方向の位置は、それぞれ整流部24と交差する位置である。
【0044】
これにより、ゲート部から射出された樹脂の合流部は、直線W12、W13、W23に沿って径方向外側に流動して樹脂溜まり25に達する。樹脂溜まり25に達した樹脂は、上述したように、樹脂溜まり25で混ざり合って攪拌された後に、薄肉部26が成形される薄くて幅が広いフィルムゲートとしてのキャビティを径方向外側に向けて流動する。
【0045】
本実施形態では、上記第1実施形態と同様の作用・効果が得られることに加えて、複数のゲート痕G1、G2、G3が設けられることで生産性向上を図ることができる。本実施形態では、3個のゲート痕が設けられる構成を例示したが、この構成に限定されず、2個設けられる構成または4個以上設けられる構成であってもよい。
【0046】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0047】
例えば、上記実施形態では、ゲート痕が天板部21における中央円板部21Aに設けられる構成を例示したが、この構成に限定されない。ゲート痕は、中央円板部21Aとは別の天板部21に設けられる構成、筒部22に設けられる構成、翼部23に設けられる構成としてもよい。これらの構成を採る場合には、ゲート痕の第1方向一方側に樹脂溜まりを配置し、樹脂溜まりの第1方向一方側に樹脂溜まりよりも軸方向の厚さが少ない薄肉部を有する整流部を配置することで、上記第1実施形態および第2実施形態と同様の作用・効果が得られる。
【符号の説明】
【0048】
10…軸流ファン、 20…インペラ、 21…天板部、 21D…天板外縁部、 22…筒部、 23…翼部、 24…整流部、 25…樹脂溜まり、 26…薄肉部、 28…孔、 29…リブ部、 G…ゲート痕
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7