IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中国電力株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-誤接続防止装置 図1
  • 特開-誤接続防止装置 図2
  • 特開-誤接続防止装置 図3
  • 特開-誤接続防止装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135921
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】誤接続防止装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 31/06 20060101AFI20230922BHJP
   H01H 9/22 20060101ALI20230922BHJP
   H02B 5/02 20060101ALI20230922BHJP
   H02B 3/00 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
H01H31/06
H01H9/22
H02B5/02 A
H02B3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041258
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】小林 将也
(72)【発明者】
【氏名】西村 祥
【テーマコード(参考)】
5G052
【Fターム(参考)】
5G052AA40
5G052BB10
5G052LA01
5G052LB05
5G052LC01
(57)【要約】
【課題】既存の工事用開閉器に簡単に後付けでき、簡易な構成のために容易な製造やメン
テナンスが可能な誤接続防止装置を提供する。
【解決手段】誤接続防止装置1は、工事用開閉器50の他方のブッシング53にケーブル
を接続する際の誤接続を防止する誤接続防止装置であって、回転直線変換機構2と、保持
体3と、ブッシング蓋4が、筐体51の外部にそれぞれ設けられ、回転直線変換機構2は
、筐体51から外方に突出する回動軸体56の突出端56aの回動運動が入力される入力
部5と、入力された回動運動が直線運動に変換されて出力される出力部6を有し、保持体
3は、出力部6を保持し、ブッシング蓋4は、出力部6に保持され、出力部6の直線運動
に伴ってスライドし、他方のブッシング53の接続端面を被覆または露出させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1乃至第4の周面を有する筐体と、前記第1及び第2の周面にそれぞれ設けられて、
一方及び他方のケーブルがそれぞれ接続される一方及び他方のブッシングと、この一方及
び他方のブッシングに挿通固定される一方及び他方の電極と、前記第3又は第4の周面を
貫通して外方に突出する突出端を有し、前記一方及び他方の電極同士を電気的に接続又は
切断するための回動軸体を有する工事用開閉器の、前記他方のブッシングに前記他方のケ
ーブルを接続する際の誤接続を防止する誤接続防止装置であって、
回転直線変換機構と、保持体と、ブッシング蓋が、前記筐体の外部にそれぞれ設けられ

前記回転直線変換機構は、前記突出端の回動運動が入力される入力部と、入力された前
記回動運動が直線運動に変換されて出力される出力部を有し、
前記保持体は、前記出力部を保持し、
前記ブッシング蓋は、前記出力部に保持され、この出力部の前記直線運動に伴ってスラ
イドし、前記他方のブッシングの接続端面を被覆または露出させることを特徴とする誤接
続防止装置。
【請求項2】
第1の回動軸と、固定部材が、前記筐体の外部にそれぞれ設けられ、
前記第1の回動軸は、前記回動軸体と平行に配置され、
前記固定部材は、前記筐体に前記第1の回動軸を回動自在に固定し、
前記回転直線変換機構は、前記第3及び第4の周面にそれぞれ設けられ、
前記第1の回動軸の両端部のうちの一方の端部は、この一方の端部と、前記突出端とに
巻き掛けられる無端状体が設けられ、
前記保持体は、前記出力部同士を連結するステーであり、
前記入力部は、前記一方の端部と、前記第1の回動軸の他方の端部であることを特徴と
する請求項1に記載の誤接続防止装置。
【請求項3】
前記回転直線変換機構は、スライダクランク機構であって、
一端が前記第1の回動軸に連結されるとともに、他端が前記第1の回動軸の中心軸を
中心として回動するクランクと、
第1の端部がクランクピンを介して前記クランクの前記他端と連結されるロッドと、
基端がスライドピンを介して前記ロッドの第2の端部と連結されるとともに、末端が
前記ブッシング蓋を保持するスライドシャフトを備えることを特徴とする請求項2に記載
の誤接続防止装置。
【請求項4】
前記スライドピンは、前記筐体の外部に前記回動軸体と平行に配置される第2の回動軸
の両方の端部であることを特徴とする請求項3に記載の誤接続防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工事用開閉器にケーブルを接続する際の誤接続を防止する誤接続防止装置に
係り、特に、工事用開閉器に簡単に後付けできる簡易な構成の誤接続防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配電線路の工事においては、工事区間にバイパス回路を設け、工事区間以外を無
停電としている。そして、バイパス回路には、この回路を接続または切断する切替手段を
備えた工事用開閉器が設置されている。
しかし、工事用開閉器の切替手段がバイパス回路を接続する「入」状態になっている場
合にも、工事用開閉器はバイパス回路を構成するケーブルを接続可能な構造となっている
。この場合、感電、短絡、地絡といった事故が発生するおそれがある。
そこで、近年、感電等の事故の発生を防止するための技術が開発されており、それに関
して既に発明が開示されている。
【0003】
特許文献1には「工事用開閉器」という名称で、無停電の配電線工事中に感電事故等の
発生を防止し得る工事用開閉器に関する発明が開示されている。
以下、特許文献1に開示された発明について説明する。特許文献1に開示された発明は
、内部に開閉機器を収納した筐体である本体の一つの面に、この面上の一箇所を軸に回動
自在に取り付けられたスイッチレバーを有し、該面に隣接する対向する二つの面に、それ
ぞれ同数のケーブルの一端が接続されている工事用開閉器であり、ケーブルに沿って取り
付けられた可撓性材料からなる細管と、本体のスイッチレバーと同じ面に、スイッチレバ
ーと連動して回動するスイッチレバー側歯車と、スイッチレバー側歯車と噛み合って逆側
に回転する滑車側歯車と、滑車側歯車に同軸に密接して、滑車側歯車と連動して同方向に
回動する滑車を備える動力伝達機構と、一端が滑車の外周に接続され、細管を通じて他端
が細管の外まで伸びる線材と、ケーブルと細管とを外嵌する大きさの筒状のキャップと、
を備え、キャップの内壁には、線材の先端が接続するとともに、キャップの円筒の内部に
は、ケーブルと細管が挿入され、スイッチレバーが「入」状態にあるときは、キャップは
ケーブルの他端を遮蔽しており、スイッチレバーを「切」状態に回動すると、線材が滑車
に巻き込まれ、キャップが線材に引かれて本体側に移動してケーブルの他端を露出するこ
とを特徴とする。
このような構成の発明においては、開閉器本体に取り付けられたスイッチレバーを操作
すると、開閉器のスイッチを「入」状態又は「切」状態にするとともに、各ケーブルの先
端をキャップから露出又はキャップで遮蔽する。したがって、「入」状態ではケーブルの
先端部がキャップに遮蔽しておりケーブルと配電線とを接続できないため、短絡事故や感
電事故を確実に予防することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-50253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された発明においては、動力伝達機構等は、本体の筐
体内に収容されている。よって、このような工事用開閉器を新規に導入する場合には特に
改造に関する問題はない。しかし、既存の工事用開閉器に動力伝達機構等を後付けしよう
とすると、改造にかかる費用と手間が問題となる。そのため、特許文献1に開示された発
明に係る工事用開閉器の導入が進まないおそれがある。
また、特許文献1に開示された発明は、細管、スイッチレバー側歯車、滑車側歯車等か
ら構成されており、部品点数が多いことから、製造やメンテナンスが容易でないおそれが
ある。
【0006】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、工事用開閉器の筐体
の周面に取り付け可能であることで、既存の工事用開閉器にも簡単に後付けできるととも
に、簡易な構成のために容易な製造やメンテナンスが可能となる誤接続防止装置を提供す
ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、第1の発明は、第1乃至第4の周面を有する筐体と、第1及
び第2の周面にそれぞれ設けられて、一方及び他方のケーブルがそれぞれ接続される一方
及び他方のブッシングと、この一方及び他方のブッシングに挿通固定される一方及び他方
の電極と、第3又は第4の周面を貫通して外方に突出する突出端を有し、一方及び他方の
電極同士を電気的に接続又は切断するための回動軸体を有する工事用開閉器の、他方のブ
ッシングに他方のケーブルを接続する際の誤接続を防止する誤接続防止装置であって、回
転直線変換機構と、保持体と、ブッシング蓋が、筐体の外部にそれぞれ設けられ、回転直
線変換機構は、突出端の回動運動が入力される入力部と、入力された回動運動が直線運動
に変換されて出力される出力部を有し、保持体は、出力部を保持し、ブッシング蓋は、出
力部に保持され、この出力部の直線運動に伴ってスライドし、他方のブッシングの接続端
面を被覆または露出させることを特徴とする。
【0008】
このような構成の発明において、回転直線変換機構として、例えば、スライダクランク
機構、ラックとピニオン、カムとカムフォロア等が使用される。また、ブッシング蓋は、
板状であって、その上縁が蝶番を介して出力部に吊り下げられるほか、柔軟性を有して屈
曲可能なブッシング蓋の上縁が直接出力部に吊り下げられる構成が考えられる。
【0009】
また、筐体の外部に設けられる回転直線変換機構は、例えば、第3の周面及び第4の周
面のいずれにも設けられるほか、第3及び第4の周面のうち、突出端が突出する側のみに
設けられてもよい。よって、前者では、回転直線変換機構の一対の入力部のうちの一方に
回動軸体の回動運動が直接入力される。そして、一対の入力部のうちの他方の入力部には
、例えば、突出端と連動して回動運動を行う部材を介して、突出端の回動運動が間接的に
入力される。
さらに、保持体は、例えば、回転直線変換機構が第3及び第4の周面の双方、またはい
ずれか一方に設けられるかに関わらず、出力部を、直線運動を可能に保持する。このうち
、回転直線変換機構が第3及び第4のいずれか一方に設けられる場合は、筐体に固定され
た保持体が出力部を保持する構成が考えられる。また、回転直線変換機構が第3及び第4
の周面の双方に設けられる場合では、保持体は必ずしも筐体に固定されなくてもよい。こ
の場合、一対の出力部の間に介在し、これらを保持する構成の保持体が考えられる。
【0010】
上記構成の発明においては、回転直線変換機構が設けられることで、突出端の回動に連
動する入力部の回動に伴って、保持体に保持された出力部が直線運動を行うため、出力部
に保持されたブッシング蓋も直線運動を行う。
よって、回動軸体を操作した結果、一方及び他方の電極同士が電気的に切断される「切
」状態となる場合のみに、ブッシング蓋が筐体の第2の周面に近づく方向へスライドし、
他方のブッシングの接続端面が露出する。よって、「切」状態となる場合に限って、他方
のブッシングの接続端面に、他方のケーブルが接続可能となる。
これに対し、回動軸体を逆方向に回動させた結果、一方及び他方の電極同士が電気的に
接続される「入」状態となる場合には、ブッシング蓋が筐体の第2の周面から遠ざかる方
向へスライドし、他方のブッシングの接続端面がブッシング蓋によって被覆される。その
ため、「入」状態となる場合では、他方のブッシングの接続端面に他方のケーブルを接続
することができない。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、第1の回動軸と、固定部材が、筐体の外部にそれ
ぞれ設けられ、第1の回動軸は、回動軸体と平行に配置され、固定部材は、筐体に第1の
回動軸を回動自在に固定し、回転直線変換機構は、第3及び第4の周面にそれぞれ設けら
れ、第1の回動軸の両端部のうちの一方の端部は、この一方の端部と、突出端とに巻き掛
けられる無端状体が設けられ、保持体は、出力部同士を連結するステーであり、入力部は
、一方の端部と、第1の回動軸の他方の端部であることを特徴とする。
【0012】
このような構成の発明においては、第1の発明の作用に加えて、第3の周面又は第4の
周面から突出した突出端と無端状体を介して、第1の回動軸の一方の端部に突出端の回動
運動が直接入力され、第1の回動軸が回動する。
また、回転直線変換機構は、第3及び第4の周面にそれぞれ設けられるから、これらの
うち、突出端が設けられる側における回転直線変換機構の入力部は、第1の回動軸の一方
の端部となる。そして、突出端が設けられない側の回転直線変換機構の入力部は、第1の
回動軸の他方の端部となる。
すなわち、無端状体と、第1の回動軸が設けられることで、突出端の回動が回転直線変
換機構の一対の出力部の直線運動へと変換される。
さらに、出力部同士を連結するステーが保持体として備えられるため、一対の出力部の
直線運動の方向やタイミングが揃うこととなる。
【0013】
第3の発明は、第2の発明において、回転直線変換機構は、スライダクランク機構であ
って、一端が第1の回動軸に連結されるとともに、他端が第1の回動軸の中心軸を中心と
して回動するクランクと、第1の端部がクランクピンを介してクランクの他端と連結され
るロッドと、基端がスライドピンを介してロッドの第2の端部と連結されるとともに、末
端がブッシング蓋を保持するスライドシャフトを備えることを特徴とする。
このような構成の発明においては、第2の発明の作用に加えて、第1の回動軸の回動に
伴って、クランクの他端が第1の回動軸の中心軸を中心として回動する。この回動により
、ロッドの第2の端部が筐体に近づくと、スライドシャフトも筐体の方へ直線移動し、ブ
ッシング蓋がスライドシャフトに引っ張られて筐体の方へ直線移動する。
【0014】
第4の発明は、第3の発明において、スライドピンは、筐体の外部に回動軸体と平行に
配置される第2の回動軸の両方の端部であることを特徴とする。
このような構成の発明においては、第3の発明の作用に加えて、スライドピンは、第2
の回動軸の両方の端部であるため、第3及び第4の周面にそれぞれ設けられる一対の入力
部にそれぞれ入力された突出端の回動運動の方向やタイミングが、揃った状態で一対の出
力部に伝達される。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明によれば、一方及び他方の電極同士が電気的に切断される「切」状態となる
場合のみに、他方のブッシングの接続端面に、他方のケーブルが接続可能となるため、感
電等の事故の発生を確実に防止することができる。
また、回転直線変換機構と、保持体と、ブッシング蓋は、筐体の外部にそれぞれ設けら
れることから、これらを筐体の周面に取り付け可能である。よって、誤接続防止装置を、
既存の工事用開閉器にも簡単に後付けすることができる。
【0016】
第2の発明によれば、第1の発明の効果に加えて、無端状体と、第1の回動軸が設けら
れることで、突出端の回動が回転直線変換機構の一対の出力部の直線運動へと変換される
ことから、ブッシング蓋を二か所において間隔を空けて保持することができる。
さらに、ステーによって、一対の出力部の直線運動の方向やタイミングが揃うこととな
るので、ブッシング蓋が他方のブッシングの接続端面に対して傾斜してスライドすること
を防ぎ、この接続端面の被覆や露出が困難となることを防止できる。
【0017】
第3の発明によれば、第2の発明の効果に加えて、回転直線変換機構がスライダクラン
ク機構であり、簡易な構成であるため、誤接続防止装置を容易に製造可能である。
【0018】
第4の発明によれば、第3の発明の効果に加えて、スライドピンが設けられることで、
一対の入力部にそれぞれ入力された突出端の回動運動の方向やタイミングが揃った状態で
一対の出力部に伝達されることとなるので、各回転直線変換機構の動きの精度を高めるこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例に係る誤接続防止装置を斜め上方から見た場合の斜視図である。
図2】(a)及び(b)は、それぞれ図1におけるA方向矢視図及びB方向矢視図である。
図3】(a)及び(b)は、それぞれ図1におけるA方向矢視図であって、(a)は他方のブッシングの接続端面がブッシング蓋によって被覆された場合であり、(b)は同接続端面が露出した場合である。
図4】従来技術に係る工事用開閉器の構造を説明するための透視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0020】
最初に、工事用開閉器の一般的な構造について、図4を用いて説明する。図4は、従来
技術に係る工事用開閉器の構造を説明するための透視図である。
図4に示すように、工事用開閉器50は、筐体51と、一方のブッシング52及び他方
のブッシング53と、一方の電極54及び他方の電極55と、回動軸体56を有する。
このうち、筐体51は、第1の周面51a、第2の周面51b、第3の周面51c及び
第4の周面51dで囲まれた略直方体形状をなす。
また、一方のブッシング52は、第1の周面51aの三箇所に設けられて、一方のケー
ブル57がそれぞれ接続される。同様に、他方のブッシング53は、第2の周面51bの
三箇所に設けられて、他方のケーブル58がそれぞれ接続される。
【0021】
さらに、一方の電極54及び他方の電極55は、それぞれ一方ブッシング52及び他方
のブッシング53に挿通固定される。
そして、回動軸体56は、一方の電極54及び他方の電極55同士を電気的に接続又は
切断する際に操作される部材であって、第3の周面51cを貫通して外方に突出する突出
端56aを有している。
このほか、一方の電極54及び他方の電極55の各先端には、円弧状の消弧室59,5
9がそれぞれ設けられる。
【0022】
また、回動軸体56には、この回動軸体56の中心軸A56を中心として回動する略S
字状の回動刃60が設けられている。よって、この回動刃60の一端60aと他端60b
のいずれもが一方の電極54及び他方の電極55から離隔しているときに、一方の電極5
4及び他方の電極55同士が電気的に切断される「切」状態となる。
これに対し、一端60aと他端60bのいずれもが一方の電極54及び他方の電極55
へ接触しているときに、一方の電極54及び他方の電極55同士が電気的に接続される「
入」状態となる。なお、突出端56aには、通常、レバー(図示せず)が取り付けられて
おり、このレバーを手動操作することで回動軸体56を回動させ、「切」状態と、「入」
状態を切り替えることができる。
【0023】
本発明の実施の形態に係る誤接続防止装置について、図1乃至図3を用いて詳細に説明
する。図1は、実施例に係る誤接続防止装置を斜め上方から見た場合の斜視図である。図
2(a)及び図2(b)は、それぞれ図1におけるA方向矢視図及びB方向矢視図である
。なお、図4で示した構成要素については、図1及び図2においても同一の符号を付して
、その説明を省略する。
図1に示すように、実施例に係る誤接続防止装置1は、工事用開閉器50の、他方のブ
ッシング53に他方のケーブル58(図4参照)を接続する際の誤接続を防止する誤接続
防止装置であって、回転直線変換機構2と、保持体3と、ブッシング蓋4が、筐体51の
外部にそれぞれ設けられる。
【0024】
回転直線変換機構2は、第3の周面51cと、第4の周面51dにそれぞれ設けられて
おり、突出端56aの中心軸A56を中心とする回動運動が入力される入力部5と、入力
された回動運動が直線運動に変換されて出力される円柱状の出力部6を有する。
また、保持体3は、出力部6の直線運動が可能となるように、この出力部6を保持する
。詳細には、保持体3は、出力部6,6同士を連結するステーであって、保持体3の両端
に出力部6が挿通する環状部3a,3aと、この環状部3a,3a同士を連結する棒状部
3bを備える。また、保持体3は、並列して二本設けられ、その棒状部3b,3b同士を
連結する連結体3c,3cが、棒状部3b,3bに沿って間隔を空けて設けられる。
【0025】
さらに、ブッシング蓋4は、出力部6,6に保持される。具体的には、ブッシング蓋4
は、その上縁4aに間隔を空けて取り付けられた蝶番7,7を介し、出力部6,6から吊
り下げられる。なお、蝶番7,7は、出力部6,6の間に架け渡される長尺板状の吊り下
げ部材8に固定されており、吊り下げ部材8は、板止めクランプ8a,8aを用いて出力
部6,6の下面にそれぞれ取り付けられる。
【0026】
また、誤接続防止装置1は、第1の回動軸9と、固定部材10,10が、筐体51の外
部にそれぞれ設けられる。
このうち、第1の回動軸9は、一方の端部9aと、他方の端部9bを備える円柱形状を
なし、回動軸体56と平行に配置される。そして、固定部材10,10は、筐体51の第
2の周面51bに、第1の回動軸9を回動自在に固定する環状構造であって、例えば第2
の周面51bに溶着される。
【0027】
さらに、図2(a)に示すように、筐体51の第3の周面51cでは、第1の回動軸9
の一方の端部9aは、この一方の端部9aと、回動軸体56の突出端56aとに巻き掛け
られる無端状体11が設けられる。よって、第1の回動軸9は、無端状体11を介して突
出端56aの回動運動が入力される。
ただし、図2(b)に示すように、筐体51の第4の周面51dでは、無端状体11は
設けられない。なお、無端状体11として、本実施例ではベルトが使用されているが、こ
れ以外にもチェーンが使用されてもよい。
よって、回転直線変換機構2,2の入力部5,5は、いずれも突出端56aの回動運動
が入力される部材であるから、それぞれ、第1の回動軸9の一方の端部9aと、他方の端
部9bとなる。
【0028】
図1に戻ると、回転直線変換機構2は、スライダクランク機構であって、クランク12
と、ロッド13と、スライドシャフト14を備える。
クランク12は、一端12aが第1の回動軸9の一方の端部9aに連結されるとともに
、他端12bが第1の回動軸9の中心軸Aを中心として回動する。また、ロッド13は
、第1の端部13aが、クランク12の他端12bから突出するクランクピン12cを介
してクランク12の他端12bと連結される。さらに、スライドシャフト14は、基端1
4aがスライドピンを介してロッド13の第2の端部13bと連結されるとともに、末端
14bがブッシング蓋4を保持する。
なお、スライドシャフト14は出力部6に該当するため、詳細には、末端14bは吊り
下げ部材8と蝶番7を介してブッシング蓋4を保持する。
また、スライドピンは、筐体51の外部に回動軸体56と平行に配置される第2の回動
軸15の両方の端部15a,15bである。
【0029】
次に、誤接続防止装置の作用について、図3を用いて説明する。図3(a)及び図3
b)は、それぞれ図1におけるA方向矢視図であって、図3(a)は他方のブッシングの
接続端面がブッシング蓋によって被覆された場合であり、図3(b)は同接続端面が露出
した場合である。なお、図1図2及び図4で示した構成要素については、図3において
も同一の符号を付して、その説明を省略する。また、消弧室の図示も省略する。
図3(a)に示すように、工事用開閉器50の筐体51内に収容される回動刃60の一
端60a及び他端60bのいずれもが、それぞれ一方の電極54及び他方の電極55に接
触し、これらが電気的に接続される「入」状態となるときに、ブッシング蓋4が他方のブ
ッシング53の接続端面53aを被覆するよう、クランク12と、ロッド13と、スライ
ドシャフト14の長さや配置が設計されている。
【0030】
次に、図3(b)に示すように、回動軸体56の突出端56aを、中心軸A56を中心
として時計周りに回動させると、一端60aと他端60bのいずれもが、それぞれ一方の
電極54及び他方の電極55から離隔し、これらが電気的に切断される「切」状態となる

このとき、クランク12の他端12bは、第1の回動軸9の中心軸Aを中心として時
計回りに回動するため、ロッド13の第1の端部13aも同様に回動する。これにより、
ロッド13の第2の端部13bが筐体51の第2の周面51bに近づくため、スライドシ
ャフト14と、保持体3も第2の周面51bの方へ移動する。詳細には、クランク12と
、ロッド13と、スライドシャフト14の長さ等の組み合わせによって、スライドシャフ
ト14は他方のブッシング53の長軸方向A53に対して平行または傾斜して移動するこ
とになるが、いずれの場合においても、スライドシャフト14の末端14bは、長軸方向
53に対して平行に、直線運動を行う。
【0031】
末端14bの直線運動により、吊り下げ部材8と、蝶番7を介して、スライドシャフト
14の末端14bに吊り下げられたブッシング蓋4の上縁4aが、他方のブッシング53
の接続端面53aと、他方のブッシング53の最上部とがなす角部53bに当接する。よ
って、ブッシング蓋4の上縁4aが、第2の周面51bの方へ引っ張られると、ブッシン
グ蓋4の下縁4bが蝶番7を中心に反時計回りに回動する。さらに上縁4aが引っ張られ
ると、ブッシング蓋4が他方のブッシング53の長軸方向A53と平行になるため、他方
のブッシング53の接続端面53aが露出する。
【0032】
その後、他方のケーブル58を他方のブッシング53から取り外したときには、回動軸
体56の突出端56aを、中心軸A56を中心として反時計周りに回動させると、スライ
ドシャフト14と、保持体3が第2の周面51bから遠ざかる方へ移動する。よって、ス
ライドシャフト14の末端14bが長軸方向A53に対して平行に直線運動を行うため、
ブッシング蓋4が他方のブッシング53の接続端面53aを被覆する。
すなわち、ブッシング蓋4は、スライドシャフト14の末端14bの往復直線運動に伴
って、他方のブッシング53の長軸方向A53に沿って往復してスライドし、他方のブッ
シング53の接続端面53aを被覆または露出させる。
【0033】
上記構成の誤接続防止装置1においては、工事用開閉器50が「切」状態となる場合に
限って、他方のブッシング53の接続端面53aに、他方のケーブル58が接続可能とな
る。よって、工事用開閉器50が「入」状態となる場合では、他方のブッシング53の接
続端面53aに、他方のケーブル58を接続することができない。
また、誤接続防止装置1においては、回転直線変換機構2,2が、筐体51の第3の周
面51cと、第4の周面51dにそれぞれ設けられることから、ブッシング蓋4の上縁4
aが二本のスライドシャフト14,14によって保持される。
さらに、回転直線変換機構2,2は、第1の回動軸9の一方の端部9aと、他方の端部
9bを入力部5,5としているため、スライドシャフト14,14は同期して往復直線移
動を行う。よって、ブッシング蓋4の上縁4aは、他方のブッシング53の接続端面53
aに対して常に平行となる。
【0034】
加えて、誤接続防止装置1においては、スライドシャフト14,14同士を連結するス
テーが保持体3,3として備えられるため、スライドシャフト14,14の往復運動の方
向やタイミングが揃うこととなる。
そして、誤接続防止装置1においては、スライドシャフト14は、基端14aがスライ
ドピンを介してロッド13の第2の端部13bと連結されており、このスライドピンは、
第2の回動軸15の両方の端部15a,15bであるため、第1の回動軸9の一方の端部
9a及び他方の端部9bにそれぞれ入力された突出端56aの回動運動の方向やタイミン
グが揃った状態でスライドシャフト14,14に伝達される。
【0035】
以上説明したように、誤接続防止装置1によれば、回転直線変換機構2、保持体3、ブ
ッシング蓋4、第1の回動軸9、固定部材10及び第2の回動軸15が、いずれも筐体5
1の外部に設けられるため、導入の際に、筐体51の内部を改造する必要がない。よって
、誤接続防止装置1を容易に既存の工事用開閉器50へ後付けすることができるとともに
、改造に関する費用や手間の負担を少なくすることができる。
また、誤接続防止装置1は、回転直線変換機構2や保持体3等からなる簡易な構成であ
り、かつ前述のように筐体51の外部に設けられることから、容易な製造やメンテナンス
が可能である。
さらに、誤接続防止装置1によれば、工事用開閉器50が「切」状態となる場合に限っ
て、他方のブッシング53の接続端面53aに、他方のケーブル58が接続可能となるこ
とから、工事区間に設けたバイパス回路を接続する際に、感電等の事故の発生を確実に防
止することができる。
加えて、回動軸体56を回動させるという簡単な手動操作により、ブッシング蓋4の姿
勢を変更でき、しかもこれを直接視認できるので、使い勝手もよい。
【0036】
そして、誤接続防止装置1によれば、保持体3,3によって、スライドシャフト14,
14の往復運動の方向やタイミングが揃うこととなるので、ブッシング蓋4が他方のブッ
シング53の接続端面53aに対して傾斜してスライドすることを防ぎ、この接続端面5
3aの被覆や露出が困難となることを防止できる。
さらに、第2の回動軸15の両方の端部15a,15bが設けられることで、第1の回
動軸9の一方の端部9a及び他方の端部9bにそれぞれ入力された突出端56aの回動運
動の方向やタイミングが揃った状態でスライドシャフト14,14に伝達されることとな
るので、回転直線変換機構2,2の動きの精度を高めることができる。
加えて、誤接続防止装置1によれば、回転直線変換機構2がスライダクランク機構であ
り、簡易な構成であるため、誤接続防止装置1を容易に製造可能である。
【0037】
なお、本発明に係る誤接続防止装置1は、実施例に示すものに限定されない。例えば、
回転直線変換機構2を構成するクランク12、ロッド13及びスライドシャフト14の各
長さや配置は、ブッシング蓋4が他方のブッシング53の接続端面53aを被覆または露
出させることができる限り、図示されたものに限定されない。
また、保持体3の連結体3c,3cの一端が延設されて、筐体51の第2の周面51b
に固定されてもよい。この場合、出力端6,6のみが環状部3a,3aの内部を通過する
直線運動を行う。
さらに、吊り下げ部材8は出力部6,6の上面に設置されてもよく、第2の回動軸15
の代わりに、スライダクランク機構で一般的に採用されるスライドピンが設けられてもよ
い。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、工事用開閉器にケーブルを接続する際の誤接続を防止する誤接続防止装置と
して利用可能である。
【符号の説明】
【0039】
1…誤接続防止装置 2…回転直線変換機構 3…保持体 3a…環状部 3b…棒状
部 3c…連結体 4…ブッシング蓋 4a…上縁 4b…下縁 5…入力部 6…出力
部 7…蝶番 8…吊り下げ部材 8a…板止めクランプ 9…第1の回動軸 9a…一
方の端部 9b…他方の端部 10…固定部材 11…無端状体 12…クランク 12
a…一端 12b…他端 12c…クランクピン 13…ロッド 13a…第1の端部
13b…第2の端部 14…スライドシャフト 14a…基端 14b…末端 15…第
2の回動軸 15a,15b…端部 50…工事用開閉器 51…筐体 51a…第1の
周面 51b…第2の周面 51c…第3の周面 51d…第4の周面 52…一方のブ
ッシング 53…他方のブッシング 53a…接続端面 53b…角部 54…一方の電
極 55…他方の電極 56…回動軸体 56a…突出端 57…一方のケーブル 58
…他方のケーブル 59…消弧室 60…回動刃 60a…一端 60b…他端
図1
図2
図3
図4