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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135936
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/291 20210101AFI20230922BHJP
   H01G 2/10 20060101ALI20230922BHJP
   H01G 11/10 20130101ALI20230922BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20230922BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20230922BHJP
【FI】
H01M50/291
H01G2/10 600
H01G11/10
H01G11/78
H01M50/209
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041283
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】奥野 泰徳
【テーマコード(参考)】
5E078
5H040
【Fターム(参考)】
5E078AA14
5E078HA05
5E078HA21
5E078JA02
5H040AA03
5H040AS01
5H040AS04
5H040AS05
5H040AS06
5H040AS07
5H040AT01
5H040AT02
5H040AT04
5H040AY05
5H040AY08
5H040AY10
5H040CC17
5H040CC25
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】信頼性が向上された蓄電装置を提供すること。
【解決手段】蓄電装置1は、蓄電素子100と、蓄電素子100を保持するセルホルダ130とを備える。蓄電素子100及びセルホルダ130はX軸方向に並んで配置されている。セルホルダ130は、蓄電素子100のX軸方向の側面である長側面110aに対向するホルダ本体部134と、蓄電素子100の、X軸方向に直交するY軸方向の側面である短側面110bに対向する第一側壁部135Aを有する。第一側壁部135Aは、ホルダ本体部134のY軸方向の端部から、短側面110bに沿って配置されている。第一側壁部135Aには、ホルダ本体部134から離間した位置に配置され、短側面110bに接触する第一突起138Aが設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電素子と、前記蓄電素子を保持するホルダとを備え、
前記蓄電素子及び前記ホルダは第一方向に並んで配置されており、
前記ホルダは、
前記蓄電素子の前記第一方向の側面である第一側面に対向する本体部と、
前記蓄電素子の、前記第一方向に直交する第二方向の側面である第二側面に対向する第一側壁部であって、前記本体部の前記第二方向の端部から、前記第二側面に沿って配置された第一側壁部とを有し、
前記第一側壁部には、前記本体部から離間した位置に配置され、前記第二側面に接触する第一突起が設けられている、
蓄電装置。
【請求項2】
前記本体部の、前記第一方向で前記第一突起と対向する位置に、前記第一方向に貫通する貫通孔が形成されている、
請求項1記載の蓄電装置。
【請求項3】
さらに、前記ホルダの前記本体部を挟んで前記蓄電素子とは反対側に配置された他の蓄電素子であって、前記ホルダに保持された他の蓄電素子を備え、
前記ホルダはさらに、前記他の蓄電素子の前記第二方向の側面である第二側面に対向する第二側壁部を有し、
前記第二側壁部には、前記他の蓄電素子の前記第二側面に接触する第二突起が設けられており、
前記第一方向から見た場合、前記第二突起は、前記第一方向及び前記第二方向に直交する第三方向において、前記第一突起と重複しない位置に配置されている、
請求項1または2記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記ホルダはさらに、前記蓄電素子の前記第二側面とは反対側の側面である第三側面に対向する第三側壁部を有し、
前記第三側壁部は、前記第三側面に面で接触する平面部を有する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電素子を備える蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、セルホルダによって保持された電池を複数配列してなる配列体を有する電池モジュールが開示されている。この電池モジュールにおいて、セルホルダは、互いに対向する底壁部及び頂壁部と、互いに対向する一対の側壁部と、背壁部と、を備えている。セルホルダは、底壁部、頂壁部、及び側壁部が背壁部を取り囲むように構成されており、これら複数の壁部によって電池を保持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-225166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の電池モジュールが備えるセルホルダは、角形の電池(蓄電素子)のケース(容器)の一対の側面に対向する位置に一対の側壁部を有しており、これら一対の側壁部の間に電池が配置される。この構造において、蓄電素子の位置を安定させるには、一対の側壁部のそれぞれを、当該側壁部に対向する位置にある、蓄電素子のケースの側面に接触させることが好ましい。蓄電素子の位置を安定させることは、例えば蓄電素子とバスバーとの接合部における不具合発生の抑制等につながり、このことは、蓄電装置の信頼性の向上に寄与する。しかしながら、蓄電素子のケースのサイズ及びセルホルダのサイズのそれぞれには公差が存在する。従って、複数の蓄電素子のそれぞれに、複数のセルホルダから選択した1つのセルホルダを取り付けた場合、蓄電素子とセルホルダとの組み合わせによっては、セルホルダが蓄電素子を安定的に支持できない可能性がある。
【0005】
本発明は、本願発明者が上記課題に新たに着目することによってなされたものであり、信頼性が向上された蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る蓄電装置は、蓄電素子と、前記蓄電素子を保持するホルダとを備え、前記蓄電素子及び前記ホルダは第一方向に並んで配置されており、前記ホルダは、前記蓄電素子の前記第一方向の側面である第一側面に対向する本体部と、前記蓄電素子の、前記第一方向に直交する第二方向の側面である第二側面に対向する第一側壁部であって、前記本体部の前記第二方向の端部から、前記第二側面に沿って配置された第一側壁部とを有し、前記第一側壁部には、前記本体部から離間した位置に配置され、前記第二側面に接触する第一突起が設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、信頼性が向上された蓄電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態に係る蓄電装置の外観を示す斜視図である。
図2】実施の形態に係る蓄電装置の分解斜視図である。
図3】実施の形態に係る蓄電素子ユニットの分解斜視図である。
図4】実施の形態に係るセルホルダ及び2つの蓄電素子の外観を示す第1の斜視図である。
図5】実施の形態に係るセルホルダ及び2つの蓄電素子の外観を示す第2の斜視図である。
図6】実施の形態に係るセルホルダの第一側壁部を含む端部の構成を示す斜視切断図である。
図7】実施の形態に係るセルホルダの第三側壁部を含む端部の構成を示す斜視切断図である。
図8】実施の形態に係るセルホルダが2つの蓄電素子を保持している状態を示す平面図である。
図9】実施の形態に係るセルホルダの外観を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様に係る蓄電装置は、蓄電素子と、前記蓄電素子を保持するホルダとを備え、前記蓄電素子及び前記ホルダは第一方向に並んで配置されており、前記ホルダは、前記蓄電素子の前記第一方向の側面である第一側面に対向する本体部と、前記蓄電素子の、前記第一方向に直交する第二方向の側面である第二側面に対向する第一側壁部であって、前記本体部の前記第二方向の端部から、前記第二側面に沿って配置された第一側壁部とを有し、前記第一側壁部には、前記本体部から離間した位置に配置され、前記第二側面に接触する第一突起が設けられている。
【0010】
この構成によれば、ホルダにおける、蓄電素子の第二側面に対向する位置に、第一側壁部に設けられた第一突起が配置される。従って、例えば、第二方向における第一側壁部の位置または蓄電素子のサイズに公差によるばらつきがある場合であっても、第一側壁部は第一突起を介して第二側面と接触することができる。さらに、第一突起は、第一側壁部の本体部から離間した位置に配置されているため、第一突起が蓄電素子の第二側面に接触した場合に、第一側壁部が反りやすい。これにより、第一突起の高さ(突出長さ)を比較的に大きくした場合であっても第一突起を第二側面に接触させることができ、その結果、第一突起による蓄電素子の保持効果を得ることができる。つまり、第二方向におけるホルダのサイズまたは蓄電素子のサイズの公差が比較的に大きい場合であっても、ホルダは、第二方向における保持力を蓄電素子に与えることができる。これにより、ホルダがより確実に蓄電素子を保持することができる。その結果、例えば、蓄電装置の製造時、使用時または運搬時等における振動または衝撃による蓄電素子の移動(位置ずれ)が抑制され、これにより、振動または衝撃に起因する不具合の可能性が低減する。このように、本態様に係る蓄電装置は、信頼性が向上された蓄電装置である。
【0011】
前記本体部の、前記第一方向で前記第一突起と対向する位置に、前記第一方向に貫通する貫通孔が形成されている、としてもよい。
【0012】
この構成によれば、例えば、樹脂製のホルダを金型を用いて成形する際に、第一突起を成形するための金型を本体部を貫通した状態で配置することができる。つまり、第一方向に沿って当該金型を抜き出すことが許容される。従って、第一方向に垂直な本体部と、第二方向に突出する第一突起を有する、第一方向に平行な第一側壁部とを、第一方向に移動する1以上の金型で成形することができる。すなわち、側壁部の本体部から離間した位置に第一突起を有するホルダの作製が容易化される。
【0013】
前記蓄電装置はさらに、前記ホルダの前記本体部を挟んで前記蓄電素子とは反対側に配置された他の蓄電素子であって、前記ホルダに保持された他の蓄電素子を備え、前記ホルダはさらに、前記他の蓄電素子の前記第二方向の側面である第二側面に対向する第二側壁部を有し、前記第二側壁部には、前記他の蓄電素子の前記第二側面に接触する第二突起が設けられており、前記第一方向から見た場合、前記第二突起は、前記第一方向及び前記第二方向に直交する第三方向において、前記第一突起と重複しない位置に配置されている、としてもよい。
【0014】
この構成によれば、他の蓄電素子に対して、第二突起による保持力を与えることができる。第三方向における第一突起の位置と第二突起の位置とが重複しないことで、例えば、第一突起を成形するための金型が、第二突起の成形の邪魔にならず、かつ、第二突起を成形するための金型が、第一突起の成形の邪魔にならない。従って、ともに突起を有する第一側壁部及び第二側壁部を備えるホルダの作製が容易化される。
【0015】
前記ホルダはさらに、前記蓄電素子の前記第二側面とは反対側の側面である第三側面に対向する第三側壁部を有し、前記第三側壁部は、前記第三側面に面で接触する平面部を有する、としてもよい。
【0016】
この構成によれば、第一突起を介して第一側壁部に押される蓄電素子の、第二方向における位置が、平面部によって制限される。つまり、ホルダに保持された蓄電素子を第一方向に並べた場合、複数のホルダの平面部の第二方向における位置を一致させることで、これら複数の蓄電素子の第二方向の位置を揃えることができる。これにより、例えば、蓄電素子に対するバスバー等の他の部材の位置精度が向上し、このことは、蓄電装置の信頼性の向上に寄与する。
【0017】
本発明は、上記いずれかの態様に係る、蓄電素子を保持するホルダとして実現することもできる。
【0018】
以下の説明及び図面中において、蓄電素子の短側面の対向方向、または、蓄電素子の容器の蓋板の長手方向を、Y軸方向と定義する。複数の蓄電素子の並び方向、または、蓄電素子の長側面の対向方向を、X軸方向と定義する。蓄電装置の外装体の本体(外装体本体)と蓋体との並び方向、または、上下方向を、Z軸方向と定義する。これらX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに交差(本実施の形態では直交)する方向である。使用態様によってはZ軸方向が上下方向にならない場合も考えられるが、以下では説明の便宜のため、Z軸方向を上下方向として説明する。
【0019】
以下の説明において、例えば、X軸プラス方向とは、X軸の矢印方向を示し、X軸マイナス方向とは、X軸プラス方向とは反対方向を示す。Y軸方向及びZ軸方向についても同様である。単に「X軸方向」という場合は、X軸に平行な双方向またはいずれか一方の方向を意味する。Y軸及びZ軸に関する用語についても同様である。
【0020】
さらに、平行及び直交などの、相対的な方向または姿勢を示す表現は、厳密には、その方向または姿勢ではない場合も含む。例えば、2つの方向が直交している、とは、当該2つの方向が完全に直交していることを意味するだけでなく、実質的に直交していること、すなわち、例えば数%程度の差異を含むことも意味する。以下の説明において、「絶縁」と表現する場合、「電気的な絶縁」を意味する。
【0021】
(実施の形態)
[1.蓄電装置の全般的な説明]
まず、実施の形態に係る蓄電装置1の概略構成について説明する。図1は、実施の形態に係る蓄電装置1の外観を示す斜視図である。図2は、実施の形態に係る蓄電装置1の分解斜視図である。図3は、実施の形態に係る蓄電素子ユニット20の分解斜視図である。外装体10の内部には、図2以降の図に示される部材に加え、温度及び電圧計測用のセンサ、並び、センサに接続された電線等の他の部材も収容されているが、これらの部材の図示及び説明は省略する。
【0022】
蓄電装置1は、外部からの電気を充電し、また外部へ電気を放電することができる装置である。蓄電装置1は、例えば、電力貯蔵用途または電源用途等に使用される電池モジュール(組電池)である。具体的には、蓄電装置1は、例えば、自動車、自動二輪車、ウォータークラフト、船舶、スノーモービル、農業機械、建設機械、または、電気鉄道用の鉄道車両等の移動体の駆動用またはエンジン始動用等のバッテリ等として用いられる。上記の自動車としては、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)及び化石燃料(ガソリン、軽油、液化天然ガス等)自動車が例示される。上記の電気鉄道用の鉄道車両としては、電車、モノレール、リニアモーターカー、並びに、ディーゼル機関及び電気モーターの両方を備えるハイブリッド電車が例示される。蓄電装置1は、家庭用または事業用等に使用される定置用のバッテリ等としても用いることができる。
【0023】
図1及び図2に示すように、蓄電装置1は、外装体10と、外装体10に収容された蓄電素子ユニット20とを備えている。蓄電素子ユニット20の上方には、蓄電素子100に接合されるバスバー60を保持するバスバーホルダ30が配置されている。
【0024】
外装体10は、蓄電装置1の筐体を構成する箱形の容器(モジュールケース)である。つまり、外装体10は、蓄電素子ユニット20及びバスバーホルダ30の外方に配置され、これらを所定の位置で固定し、衝撃等から保護する。外装体10は、本実施の形態では、鉄、アルミニウムまたはアルミニウム合金等の金属で形成されている。外装体10を形成する材料としては、金属の他に樹脂等も採用することができる。当該樹脂としては、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE(変性PPEを含む))、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリアミド(PA)、または、ABS樹脂が例示される。
【0025】
外装体10は、Z軸プラス方向の端部に設けられた、蓄電素子ユニット20の挿入が可能な開口部12aと、開口部12aに対向する位置に設けられた底壁部19とを有している。具体的には、外装体10は、外装体本体12と蓋体11とを備えており、開口部12a及び底壁部19は、外装体本体12に設けられている。外装体本体12は、開口部12aが形成された有底矩形筒状のハウジングであり、蓄電素子ユニット20を収容する。外装体本体12は、Y軸方向で対向し、かつ、外装体10の内部と外部とを仕切る側壁部15及び17を有している。蓄電素子ユニット20は、Y軸方向において、側壁部17と側壁部15との間に配置されている。外装体10は、外装体10の内部のガスを外部に排出するための排気管などの、図1及び図2に図示しない要素を備えてもよい。
【0026】
蓋体11は、外装体本体12の開口部12aを閉塞する矩形状の部材である。蓋体11は、複数のボルト41によって外装体本体12と接合され、これにより、蓋体11は外装体本体12に固定される。具体的には、蓋体11の周縁部にボルト41が貫通する貫通孔43が設けられており、外装体本体12の開口部12aの周縁部である開口周縁部12bに、固定穴部42が設けられている。ボルト41は、蓋体11の貫通孔43を貫通した状態で、外装体本体12の固定穴部42にねじ込まれる。これにより、蓋体11が外装体本体12の開口周縁部12bと接合される。
【0027】
蓄電素子ユニット20は、複数の蓄電素子100と、複数の蓄電素子100のそれぞれを保持するセルホルダ130とを有する。蓄電素子100は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池(単電池)であり、より具体的には、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池である。蓄電素子100は、図3に示すように、扁平な直方体形状(角形)の容器110と容器110に固定された一対の(正極及び負極の)電極端子120とを有している。容器110の内方には図示しない電極体、集電体及び電解液等が収容されている。蓄電素子100が有する電極体としては、正極板と負極板との間にセパレータが挟み込まれるように層状に配置されたものが巻回されて形成された巻回型の電極体が例示される。その他、複数の平板状の極板が積層されて形成された積層型(スタック型)の電極体、または、極板を蛇腹状に折り畳んだ蛇腹型の電極体が蓄電素子100に備えられてもよい。電極体の形状は限定されない。
【0028】
蓄電素子100は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。蓄電素子100は、二次電池ではなく、使用者が充電をしなくても蓄えられている電気を使用できる一次電池であってもよい。蓄電素子100は、固体電解質を用いた電池であってもよい。蓄電素子100は、パウチタイプの蓄電素子であってもよい。また、蓄電素子100の形状は、上記角形には限定されず、それ以外の多角柱形状、円柱形状、楕円柱形状、長円柱形状等であってもよい。
【0029】
本実施の形態では、容器110は、図3に示すように、容器本体111と、容器本体111の開口を塞ぐ蓋板112とを有する。容器110は、電極体等を容器本体111の内部に収容後、容器本体111と蓋板112とが溶接等によって接合されることにより、内部が密封される構造となっている。容器110(容器本体111及び蓋板112)の材質は、特に限定されず、例えばステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、メッキ鋼板など溶接可能(接合可能)な金属とすることができるが、樹脂を用いることもできる。
【0030】
容器本体111は、一対の長側面110aと、一対の短側面110bと、蓋板112に対向する位置に配置された底面110cを有する。本実施の形態では、長側面110aは、第一側面の一例である。一対の短側面110bのうちの、Y軸プラス方向の短側面110bは第二側面の一例であり、Y軸マイナス方向の短側面110bは第三側面の一例である。
【0031】
蓋板112には、正極及び負極の電極端子120、並びに、ガス排出弁105が配置されている。ガス排出弁105は、容器110の内圧が過度に上昇した場合に、その内圧を受けて開放(開弁)し、これにより容器110の内部のガスを外部に排出する部位である。蓄電素子ユニット20において、複数の蓄電素子100それぞれは、長側面110aが並び方向(X軸方向)に向けられ、かつ短側面110bが当該並び方向に直交するY軸方向に対向する姿勢で並べられている。本実施の形態では、X軸方向は第一方向の一例であり、Y軸方向は第一方向と直交する第二方向の一例であり、Z軸方向は第三方向の一例である。
【0032】
蓄電素子ユニット20は、上記のように構成された蓄電素子100を12個有している。12個の蓄電素子100のそれぞれは、本実施の形態では、2つのセルホルダ130の間に配置されている。つまり、本実施の形態に係る蓄電素子ユニット20は、13個のセルホルダ130を有している。これらセルホルダ130のうち、X軸方向の両端に位置する一対のセルホルダ130を他とは区別する場合、セルホルダ131と表記する。これらセルホルダ130のうち、互いに隣り合う2つの蓄電素子100の間に位置するセルホルダ130を他とは区別する場合、セルホルダ132と表記する。以下の「セルホルダ130」についての説明は、特に断りのない限り、セルホルダ131及びセルホルダ132に共通して適用される。
【0033】
本実施の形態に係るセルホルダ130は、蓄電素子を保持するホルダの一例であり、蓄電素子100を保持することで蓄電素子100の位置を安定させる機能を有する。セルホルダ130はさらに、蓄電素子100の容器110と、当該蓄電素子100に隣り合う他の蓄電素子100の容器110とを絶縁する機能を有する。セルホルダ130は、上記の外装体10の材料として採用可能な材料のうちの、電気的絶縁性を有する樹脂材料のいずれかで形成されている。セルホルダ130の詳細な構成については、図4図9を用いて後述する。
【0034】
バスバーホルダ30は、蓄電素子100の蓋板112に対向して配置され、複数のバスバー60を保持する扁平な矩形状の絶縁部材である。バスバーホルダ30は、例えば、上記の外装体10の材料として採用可能な材料のうちの、電気的絶縁性を有する樹脂材料のいずれかで形成されている。バスバーホルダ30に配置されたバスバー60は、接合相手である電極端子120に対して位置決めされ、その状態で、例えばレーザー溶接によって電極端子120に接合される。本実施の形態では、蓄電素子ユニット20が有する12個の蓄電素子100において、連続して並ぶ3つの蓄電素子100がバスバー60により並列接続される。これにより、並列接続された蓄電素子100の組が4組形成される。さらに、4組の蓄電素子100が3つのバスバー60によって直列に接続されている。
【0035】
つまり、直列に接続された4組の蓄電素子100における両端部の組の蓄電素子100の電極端子120が、蓄電素子ユニット20の正極(総プラス端子)及び負極(総マイナス端子)である。本実施の形態では、12個の蓄電素子100のうちの、X軸マイナス方向端部の1組(3個)の蓄電素子100の正極の電極端子120が、蓄電素子ユニット20の正極(総プラス端子)である。12個の蓄電素子100のうちの、X軸プラス方向端部の1組(3個)の蓄電素子100の負極の電極端子120が、蓄電素子ユニット20の負極(総マイナス端子)である。
【0036】
図には表されていないが、外装体10の側壁部15には、蓄電素子ユニット20の正極及び負極のそれぞれに接合されたバスバー60の端部が貫通する開口部が設けられている。これら2つのバスバー60それぞれの端部は、側壁部15に設けられた開口部を介して外装体10の外部に露出しており(図1参照)、蓄電装置1の正極外部端子及び負極外部端子として機能する。
【0037】
外装体10の内部に、蓄電素子ユニット20が有する複数の蓄電素子100の充電状態を制御するための制御装置及びリレー等の電気機器が配置されてもよい。この場合、蓄電装置1は、例えば、蓋体11に固定された正極外部端子及び負極外部端子であって、電気機器及びバスバー60を介して蓄電素子ユニット20と電気的に接続された正極外部端子及び負極外部端子を備えてもよい。
【0038】
バスバー60による、12個の蓄電素子100の電気的な接続態様は上記の態様に限定されず、例えば、12個の蓄電素子100の全てが複数のバスバー60によって直列に接続されてもよい。また、蓄電素子ユニット20が備える蓄電素子100の数は12には限定されない。蓄電素子100の数は、例えば蓄電装置1に要求される仕様に応じて適宜決定されてもよい。
【0039】
このように構成された蓄電装置1において、蓄電素子100を保持するセルホルダ130は、蓄電素子100及びセルホルダ130のサイズの公差を吸収しやすい構造を有している。これにより、蓄電素子100はより安定的にセルホルダ130に保持され、その結果、蓄電装置1の信頼性が向上する。このような効果を奏するセルホルダ130の構成について、以下、図4図9を参照しながら説明する。
【0040】
[2.セルホルダの構成について]
図4は、実施の形態に係るセルホルダ132及び2つの蓄電素子100の外観を示す第1の斜視図であり、図5は、実施の形態に係るセルホルダ132及び2つの蓄電素子100の外観を示す第2の斜視図である。図4及び図5では、セルホルダ132に保持される2つの蓄電素子100を、セルホルダ132から分離して図示し、かつ、これらを区別するために互いに異なる符号を付している。具体的には、セルホルダ132のX軸プラス方向に配置される蓄電素子100を蓄電素子100Aと表記し、セルホルダ132のX軸マイナス方向に配置される蓄電素子100を蓄電素子100Bと表記している。X軸プラス方向を前方とした場合、図4では、セルホルダ132を斜め前方から見た場合の斜視図が表されており、図5では、セルホルダ132を斜め後方から見た場合の斜視図が表されている。図6は、実施の形態に係るセルホルダ132の第一側壁部135Aを含む端部の構成を示す斜視切断図である。図7は、実施の形態に係るセルホルダ132の第三側壁部135Cを含む端部の構成を示す斜視切断図である。図6及び図7では、それぞれ、セルホルダ132のY軸方向の端部を、XZ平面に平行な面で切断して斜視図で表している。図8は、実施の形態に係るセルホルダ132が2つの蓄電素子100を保持している状態を示す断面図である。図8では、図6におけるVIII-VIII線断面が簡易的に表されており、蓄電素子100A及び100Bについては斜線が付された領域で、それらのおおよその配置範囲が表されている。図9は、実施の形態に係るセルホルダ131の外観を示す斜視図である。図9では、蓄電素子ユニット20のX軸マイナス方向の端部に配置されるセルホルダ131が図示されている。
【0041】
図4図8に示すように、本実施の形態に係るセルホルダ132は、ホルダ本体部134と、一対の側面カバー部135と、底面カバー部136と、上面カバー部137とを有する。ホルダ本体部134は、蓄電素子100の長側面110aに沿って配置される。一対の側面カバー部135は、ホルダ本体部134のY軸方向の両端部のそれぞれに接続されている。一対の側面カバー部135のそれぞれは、蓄電素子100の短側面110bの一部を覆う。底面カバー部136は、ホルダ本体部134のZ軸マイナス方向の端部に接続されており、蓄電素子100の底面110cの一部を覆う。底面カバー部136のY軸方向の両端部のそれぞれには側面カバー部135が接続されている。上面カバー部137は、ホルダ本体部134のZ軸プラス方向の端部に接続されており、蓄電素子100の蓋板112の上面の一部を覆う。
【0042】
具体的には、図4図5及び図8に示すように、一対の側面カバー部135、底面カバー部136及び上面カバー部137のそれぞれは、ホルダ本体部134からX軸方向の両側に突出している。これにより、X軸方向においてホルダ本体部134の両側に配置された蓄電素子100A及び100Bは、Y軸方向及びZ軸方向において、一対の側面カバー部135、底面カバー部136及び上面カバー部137に囲まれた状態となる。この状態において、一対の側面カバー部135のうちのY軸プラス方向の側面カバー部135は、蓄電素子100A及び100Bそれぞれの短側面110bに接触する突起を有している。
【0043】
より詳細には、セルホルダ132のY軸プラス方向の端部の側面カバー部135は、図4図6及び図8に示すように、第一側壁部135Aを有している。第一側壁部135Aは、セルホルダ132が蓄電素子100Aに取り付けられた状態において、ホルダ本体部134のY軸プラス方向の端部から蓄電素子100Aの短側面110bに沿って配置される。このように、蓄電素子100Aの短側面110bに対向して配置される第一側壁部135Aには、短側面110bに接触する第一突起138Aが配置されている。
【0044】
この第一突起138Aは、図4図6及び図8に示すように、第一側壁部135Aの、ホルダ本体部134から離間した位置に配置されている。本実施の形態では、第一側壁部135AのX軸プラス方向の端部に、蓄電素子100Aの短側面110bに向けて突出する第一突起138Aが配置されている。
【0045】
この第一突起138Aは、蓄電素子100のサイズの公差及びセルホルダ132のサイズの公差を考慮して突出長さが決定されている。つまり、複数のセルホルダ132のうちの任意に選択されたセルホルダ132を、複数の蓄電素子100の中から任意に選択された蓄電素子100Aに取り付けた場合であっても、第一突起138Aは、蓄電素子100Aの短側面110bに接触することができる。この状態において、第一突起138Aは、第一側壁部135Aのホルダ本体部134から離間した位置に配置されている。そのため、第一側壁部135Aは、図8に示すように、蓄電素子100Aから受ける押圧力によって効率よく弾性変形することができ、かつ、弾性変形によって生じる復元力を、第一突起138Aを介して蓄電素子100Aに与えることができる。これにより、第一側壁部135Aと、Y軸マイナス方向の側面カバー部135(図4図7及び図8参照)とによって蓄電素子100AがY軸方向で挟持される。その結果、外装体10の内部における蓄電素子100Aの位置が安定化される。
【0046】
このように構成されたセルホルダ132において、Y軸プラス方向の端部の側面カバー部135はさらに、図4図6、及び図8に示すように、第二側壁部135Bを有している。第二側壁部135Bは、セルホルダ132が蓄電素子100Bに取り付けられた状態において、ホルダ本体部134のY軸プラス方向の端部から蓄電素子100Bの短側面110bに沿って配置される。このように、蓄電素子100Bの短側面110bに対向して配置される第二側壁部135Bには、図5図6及び図8に示すように、短側面110bに接触する第二突起138Bが配置されている。本実施の形態では、セルホルダ132が保持する蓄電素子100A及び100Bは同一機種の蓄電素子であるため、第二突起138Bは、上記の第一突起138Aと同じサイズに形成されている。つまり、複数のセルホルダ132のうちの任意に選択されたセルホルダ132を、複数の蓄電素子100の中から任意に選択された蓄電素子100Bに取り付けた場合であっても、第二突起138Bは、蓄電素子100Bの短側面110bに接触することができる。この状態において、第二突起138Bは、第二側壁部135Bのホルダ本体部134から離間した位置に配置されている。そのため、第二側壁部135Bは、図8に示すように、蓄電素子100Bから受ける押圧力によって効率よく弾性変形することができ、かつ、弾性変形によって生じる復元力を、第二突起138Bを介して蓄電素子100Bに与えることができる。これにより、第二側壁部135Bと、Y軸マイナス方向の側面カバー部135(図5図7、及び図8参照)とによって蓄電素子100BがY軸方向で挟持される。その結果、外装体10の内部における蓄電素子100Bの位置が安定化される。
【0047】
蓄電素子100を1つのみ保持するセルホルダ131も、セルホルダ132と同じく、第一側壁部135Aを有しており、第一側壁部135Aには、短側面110bに接触する第一突起138Aが配置されている(図9参照)。従って、セルホルダ131は、蓄電素子100に取り付けられた場合、第一側壁部135Aと、Y軸マイナス方向の側面カバー部135とによって蓄電素子100をY軸方向で挟持することができる。従って、外装体10の内部における蓄電素子100の位置が安定化される。図9では、蓄電素子ユニット20(図3参照)のX軸マイナス方向の端部に配置されたセルホルダ131が図示されているが、蓄電素子ユニット20のX軸プラス方向の端部に配置されたセルホルダ131も、第一突起138Aを有する第一側壁部135Aを有している。つまり、X軸方向に並べられた複数の蓄電素子100のうちのX軸プラス方向の端部の蓄電素子100も、セルホルダ131によって安定的に保持される。
【0048】
以上説明したように、本実施の形態に係る蓄電装置1は、蓄電素子100と、蓄電素子100を保持するセルホルダ130とを備える。蓄電素子100及びセルホルダ130はX軸方向に並んで配置されている。セルホルダ130は、蓄電素子100のX軸方向の側面である第一側面(長側面110a)に対向するホルダ本体部134と、蓄電素子100の、X軸方向に直交するY軸方向の側面である第二側面(短側面110b)に対向する第一側壁部135Aを有する。第一側壁部135Aは、ホルダ本体部134のY軸方向の端部から、短側面110bに沿って配置されている。第一側壁部135Aには、ホルダ本体部134から離間した位置に配置され、短側面110bに接触する第一突起138Aが設けられている。
【0049】
この構成によれば、セルホルダ130における、蓄電素子100の短側面110bに対向する位置に、第一側壁部135Aに設けられた第一突起138Aが配置される。従って、例えば、Y軸方向における第一側壁部135Aの位置または蓄電素子100のサイズに公差によるばらつきがある場合であっても、第一側壁部135Aが第一突起138Aを介して短側面110bに接触することができる。さらに、第一突起138Aは、第一側壁部135Aのホルダ本体部134から離間した位置に配置されているため、第一突起138Aが蓄電素子100の短側面110bに接触した場合に、第一側壁部135Aが反りやすい。これにより、第一突起138Aの高さ(突出長さ)を比較的に大きくした場合であっても第一突起138Aを短側面110bに接触させることができ、これにより、第一突起138Aによる蓄電素子100の保持効果を得ることができる。つまり、Y軸方向におけるセルホルダ130のサイズまたは蓄電素子100のサイズの公差が比較的に大きい場合であっても、セルホルダ130は、Y軸方向における保持力を蓄電素子100に与えることができる。これにより、セルホルダ130がより確実に蓄電素子100を保持することができる。その結果、外装体10の内部における蓄電素子100の位置が安定化する。具体的には、例えば、蓄電装置1の製造時、使用時または運搬時等における振動または衝撃による蓄電素子100の移動(位置ずれ)が抑制され、これにより、振動または衝撃に起因する不具合の可能性が低減する。このように、本実施の形態に係る蓄電装置1は、信頼性が向上された蓄電装置である。
【0050】
なお、第一側壁部135Aにおいて、ホルダ本体部134から離間しない位置に突起を設けた場合を想定する。つまり、第一側壁部135A及びホルダ本体部134の両方に接続された突起を設けた場合を想定する。この場合であっても、第一側壁部135Aに対向する蓄電素子100の短側面110bに、突起を接触させることは可能である。しかしながらこの場合、蓄電素子100の容器110の、ホルダ本体部134に近い角部(短側面110bと長側面110aとの接続部分)を突起が押圧する可能性がある。その結果、突起からの反力に、蓄電素子100をホルダ本体部134から遠ざける方向(X軸プラス方向)の成分が多く含まれる可能性がある。これにより、蓄電素子100及びセルホルダ130の一方が他方から外れやすくなる(または取り付け難い)という問題が生じる。このことは、突起による蓄電素子100に対する押圧力を向上させるために、突起の突出長さを大きくした場合により顕著となる。また、突起によって第一側壁部135Aとホルダ本体部134とが接続されるため、第一側壁部135Aが、Y軸プラス方向に反り難くなる。このことは、第一側壁部135Aが変形することによる、セルホルダ130または蓄電素子100のサイズの公差の吸収、という観点からは不利である。これに対し、本実施の形態に係るセルホルダ130では、第一突起138Aは、第一側壁部135Aの、ホルダ本体部134から離間した位置に配置されているため、第一突起138Aが、蓄電素子100の容器110の、ホルダ本体部134に近い角部に接触し難い。その結果、第一突起138Aからの押圧力によって蓄電素子100及びセルホルダ130の一方が他方から外れやすくなる等の問題が生じ難い。さらに、第一突起138Aは、ホルダ本体部134から離間した位置に配置されているため、第一突起138Aによって第一側壁部135Aの反りが阻害される、という問題は生じ難い。
【0051】
本実施の形態では、図4図6に示すように、ホルダ本体部134の、X軸方向で第一突起138Aと対向する位置に、X軸方向に貫通する貫通孔139が形成されている。
【0052】
この構成によれば、例えば、樹脂製のセルホルダ130を金型を用いて成形する際に、第一突起138Aを成形するための金型を、ホルダ本体部134を貫通した状態で配置することができる。つまり、X軸方向に沿って当該金型を抜き出すことが許容される。従って、X軸方向に垂直なホルダ本体部134と、Y軸方向に突出する第一突起138Aを有する、X軸方向に平行な第一側壁部135Aとを、X軸方向に移動する1以上の金型で成形することができる。すなわち、第一側壁部135Aのホルダ本体部134から離間した位置に第一突起138Aを有するセルホルダ130の作製が容易化される。ホルダ本体部134に貫通孔139を設けることで、セルホルダ130の作製に用いる材料の削減、または、セルホルダ130の軽量化等も期待できる。なお、セルホルダ130の軽量化等のための貫通孔は、第一突起138Aと対向する位置に限られず、他の位置に形成されていてもよい。
【0053】
本実施の形態に係る蓄電装置1が備える複数のセルホルダ130のうち、2つの蓄電素子100の間に配置されるセルホルダ132は、2つの蓄電素子100それぞれの位置を安定化させる構成を有している。これら2つの蓄電素子100を、蓄電素子100A及び100B(図4及び図5参照)とした場合、セルホルダ132の構成は以下のように説明される。
【0054】
すなわち、蓄電装置1は、セルホルダ132のホルダ本体部134を挟んで蓄電素子100Aとは反対側に配置された他の蓄電素子100(蓄電素子100B)であって、セルホルダ132に保持された蓄電素子100Bを備える。セルホルダ132はさらに、蓄電素子100BのY軸方向の側面である短側面110bに対向する第二側壁部135Bを有する。第二側壁部135Bには、蓄電素子100Bの短側面110bに接触する第二突起138Bが設けられている。X軸方向から見た場合、第二突起138Bは、図6に示すように、X軸方向及びY軸方向に直交するZ軸方向において、第一突起138Aと重複しない位置に配置されている。
【0055】
本実施の形態では、図6に示すように、第一側壁部135Aに、所定の間隔をあけてZ軸方向に並ぶ3つの第一突起138Aが設けられている。第二側壁部135Bには、図6に示すように、所定の間隔をあけてZ軸方向に並ぶ4つの第二突起138Bが設けられている。4つの第二突起138Bのそれぞれは、Z軸方向において3つの第一突起138Aのいずれとも重複しない位置に配置されている。具体的には、X軸方向から見た場合、Z軸方向に沿って第二突起138Bと第一突起138Aとが交互に並ぶように、これら第二突起138Bと第一突起138Aとが配置されている。
【0056】
この構成によれば、蓄電素子100Bに対して、第二突起138Bによる保持力を与えることができる。さらに、Z軸方向における第一突起138Aの位置と第二突起138Bの位置とが重複しない。これにより、例えば、第一突起138Aを成形するための金型が、第二突起138Bの成形の邪魔にならず、かつ、第二突起138Bを成形するための金型が、第一突起138Aの成形の邪魔にならない。より詳細には、ホルダ本体部134には、X軸方向で、3つの第一突起138Aそれぞれに対向する位置に貫通孔139が設けられており、かつ、X軸方向で、4つの第二突起138Bそれぞれに対向する位置に貫通孔139が設けられている。これら貫通孔139のそれぞれは、第一突起138Aまたは第二突起138Bを形成する金型を貫通させる孔である。つまり、第二突起138Bを形成する金型と、第一突起138Aを形成する金型とは、Z軸方向で交互に並んで配置される。これにより、第一側壁部135A及び第二側壁部135Bのそれぞれに、ホルダ本体部134から離間した位置に突起(第一突起138Aまたは第二突起138B)を形成することができる。このように、本実施の形態に係るセルホルダ132では、第一突起138Aと第二突起138BとがZ軸方向で重複しない位置に配置されていることで、2つの蓄電素子100の位置の安定化が図られるとともに、セルホルダ132の作製が容易化される。
【0057】
本実施の形態では、3つの第一突起138Aは、第一側壁部135AのZ軸方向における両端部の間の範囲(中間部)に配置されている。しかし、第一突起138Aは、第一側壁部135AのZ軸方向の端部に配置されてもよい。ただし、蓄電素子100と、蓄電素子100のX軸プラス方向に位置する導電性を有する部材(例えば金属製の外装体10の側壁部17(図2参照))との絶縁の確実性の観点からは、1以上の第一突起138Aは、第一側壁部135Aの中間部に配置されていることが好ましい。具体的には、蓄電素子100の容器110には、一対の長側面110a及び一対の短側面110bに沿って絶縁フィルムが巻かれる場合がある。この場合、短側面110bは絶縁フィルムに覆われているのに対し、蓋板112及び底面110cは絶縁フィルムに覆われずに露出した状態である。従って、第一突起138Aが短側面110bに接触することで第一側壁部135Aの中間部が外側(Y軸プラス方向)に反り、その結果、第一側壁部135Aの中間部と、そのX軸プラス方向に位置する他のセルホルダ130との間に隙間ができた場合であっても、当該隙間に起因する絶縁の問題は生じ難い。つまり、当該隙間のZ軸方向における位置が、絶縁フィルムが配置された範囲内であるため、蓄電素子100の容器110と、その外側に位置する外装体10の側壁部17(図2参照)とは、絶縁フィルムによって良好に絶縁される。一方、第一突起138Aを、第一側壁部135AのZ軸方向の端部に配置した場合、第一側壁部135Aが外側に反ることで生じる隙間は、絶縁フィルムに覆われていない蓋板112または容器110の底面110cの近くに位置する。このことは、蓄電素子100の容器110と外装体10の側壁部17等との良好な絶縁状態の確保という観点からは好ましくない。従って、本実施の形態では、複数の第一突起138Aは、第一側壁部135AのZ軸方向における中間部に配置され、複数の第二突起138Bは、第二側壁部135BのZ軸方向における中間部に配置されている。第一側壁部135AのZ軸方向における中間部は、例えば第一側壁部135AのZ軸方向の両端部を除く範囲であり、当該両端部のそれぞれは、第一側壁部135AのZ軸方向の全長の10%程度である。第二側壁部135BのZ軸方向の中間部についても同様である。
【0058】
本実施の形態では、セルホルダ130は、蓄電素子100の、第一側壁部135Aに対向する短側面110bとは反対側の短側面110b(Y軸マイナス方向の短側面110b)に対向する第三側壁部135Cを有している(図4図9参照)。第三側壁部135Cは、短側面110bに面で接触する平面部140を有している。
【0059】
より具体的には、セルホルダ132は、図4図8に示すように、一対の側面カバー部135を有し、その一方(Y軸プラス方向)の側面カバー部135は、第一側壁部135A及び第二側壁部135Bを有している。一対の側面カバー部135の他方(Y軸マイナス方向)の側面カバー部135は、Y軸方向で第一側壁部135Aに対向する位置に、第三側壁部135Cを有している。セルホルダ131も同様に、Y軸方向で第一側壁部135Aと対向する位置に第三側壁部135Cを有している(図9参照)。第三側壁部135Cは、第三側壁部135Cと対向する短側面110bに面で接触する平面部140を有している。つまり、複数のセルホルダ130のそれぞれは、蓄電素子100のY軸方向の両側から、第一突起138Aと平面部140とで挟持することができる。
【0060】
この構成によれば、第一突起138Aを介して第一側壁部135Aに押される蓄電素子100の、Y軸方向における位置が、平面部140によって制限される。つまり、セルホルダ130に保持された蓄電素子100をX軸方向に並べた場合(図2及び図3参照)、複数のセルホルダ130の平面部140のY軸方向の位置を一致させることで、これら複数の蓄電素子100のY軸方向の位置を揃えることができる。これにより、例えば、蓄電素子100に対する他の部材(バスバー60等)の位置精度が向上し、このことは、蓄電装置1の信頼性の向上に寄与する。
【0061】
さらに、本実施の形態では、セルホルダ132が備えるY軸マイナス方向の側面カバー部135は、図4図5図7、及び図8に示すように、Y軸方向で第二側壁部135Bに対向する位置に、第四側壁部135Dを備えている。第四側壁部135Dは、図7及び図8に示すように、第四側壁部135Dと対向する短側面110bに面で接触する平面部140を有している。つまり、本実施の形態に係るセルホルダ132は、X軸方向においてホルダ本体部134を挟んで配置された蓄電素子100A及び100Bのそれぞれを、Y軸方向の両側から、突起(第一突起138Aまたは第二突起138B)と平面部140とで挟持することができる。さらに、第四側壁部135Dに設けられた平面部140及び第三側壁部135Cに設けられた平面部140のY軸方向の位置は同じである。これにより、本実施の形態において13個のセルホルダ130に保持された12個の蓄電素子100について、Y軸マイナス方向の短側面110bに面で接触する平面部140によってY軸方向の位置決めを行うことができる。つまり、12個の蓄電素子100のY軸方向の位置を揃えることができる。
【0062】
[3.変形例について]
以上、本発明の実施の形態に係る蓄電装置1について説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。つまり、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではなく、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【0063】
例えば、第一側壁部135Aに配置された第一突起138Aの数は3である必要はない。少なくとも1つの第一突起138Aが第一側壁部135Aに配置されていることで、蓄電素子100またはセルホルダ130のサイズに公差によるばらつきがある場合であっても、セルホルダ130は、蓄電素子100をY軸方向の両側から挟持することができる。第二側壁部135Bが有する第二突起138Bの数についても同じであり、少なくとも1つの第二突起138Bが、第二側壁部135Bに配置されていればよい。
【0064】
第一突起138Aの第一側壁部135AにおけるX軸方向の配置位置は、X軸プラス方向の端部でなくてもよい。第一突起138Aは、少なくともホルダ本体部134から離間した位置に配置されていれば、蓄電素子100の短側面110bに接触した場合に、第一側壁部135Aに外側に反る方向のモーメントを与えることができ、かつ、当該反りを阻害することが抑制される。つまり、第一側壁部135Aを効率よく弾性変形させることができ、これにより得られる復元力を、蓄電素子100の保持に有効に利用することができる。第二突起138Bについても同様であり、第二突起138Bは、第二側壁部135Bにおいて、少なくともホルダ本体部134から離間した位置に配置されていればよい。
【0065】
第一突起138Aの形状に特に限定はない。第一突起138Aは、蓄電素子100を一対の側面カバー部135の間に挿入し易くするための傾斜面または湾曲面を有してもよい。第一突起138Aは、蓄電素子100の短側面110bからの押圧力によってつぶされやすくするために、突出方向の先端が尖った形状であってもよい。第一突起138Aは、蓄電素子100の短側面110bからの押圧力に降伏し難いように、Y軸方向から見た場合のサイズが図6等に示すサイズよりも大きく形成されてもよい。
【0066】
セルホルダ130は、上面カバー部137を有しなくてもよい。蓄電素子100のZ軸プラス方向への移動(位置ずれ)の抑制は、例えばバスバーホルダ30に担わせてもよい。
【0067】
セルホルダ130は、全体がPCまたはPP等の樹脂材料で形成されている必要はない、例えば、アルミニウム合金等の金属で形成された基材の表面に、PCまたはPP等の樹脂材料がコーティングされることで、セルホルダ130が形成されてもよい。この場合、第一突起138A及び第二突起138Bのそれぞれについては、対向する蓄電素子100の短側面110bによってつぶされやすいように、全体が樹脂で形成されていてもよい。
【0068】
蓄電素子ユニット20を収容する外装体10は、蓄電装置1の最外殻をなす筐体でなくてもよい。例えば、蓄電装置1の最外殻をなす筐体の内部に配置されたケースであって、蓄電素子100を収容するケース本体と、ケース本体の開口部を塞ぐ蓋体とを有するケースが、外装体10として採用されてもよい。外装体10の内部と外部とを仕切る壁部に、放熱等のための開口部を1以上有するケースが外装体10として採用されてもよい。
【0069】
蓄電装置1が備える複数の蓄電素子100において、隣り合う2つの蓄電素子100の間の全てに、セルホルダ130(セルホルダ132、図3参照)が配置されている必要はない。例えば、隣り合う2つの蓄電素子100が電気的に並列に接続されている場合、当該2つの蓄電素子100の間にセルホルダ130が配置されていなくてもよい。この場合であっても、当該2つの蓄電素子100のそれぞれは1つのセルホルダ130に保持されているため、当該2つの蓄電素子100の、外装体10の内部における移動を制限することは可能である。つまり、1つの蓄電素子100は、1つのセルホルダ130が有する少なくとも1つの第一突起138Aと、1つの平面部140によってY軸方向で挟持された状態であり、これにより、当該1つの蓄電素子100の位置は安定化される。隣り合う2つの蓄電素子100の間にセルホルダ130が配置されていない場合、例えば、単なる平板状の絶縁部材(スペーサ)が、これら2つの蓄電素子100の容器110間を絶縁する部材として配置されてもよい。隣り合う2つの蓄電素子100の容器110間の絶縁は、例えば、これら2つの容器110のそれぞれに巻かれた絶縁シートに担わせてもよい。
【0070】
蓄電素子ユニット20は、複数の蓄電素子100及び複数のセルホルダ130だけでなく、複数の蓄電素子100の電極端子120に接合された複数のバスバー60及びバスバーホルダ30(図2参照)を含んでもよい。つまり、実施の形態に係る蓄電素子ユニット20に、バスバーホルダ30及び複数のバスバー60を加えた構成を、「蓄電素子ユニット」と称することもできる。
【0071】
上記実施の形態及びその変形例に含まれる構成要素を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、リチウムイオン二次電池等の蓄電素子を備えた蓄電装置に適用できる。
【符号の説明】
【0073】
1 蓄電装置
100、100A、100B 蓄電素子
110 容器
110a 長側面
110b 短側面
110c 底面
111 容器本体
112 蓋板
120 電極端子
130、131、132 セルホルダ
134 ホルダ本体部
135 側面カバー部
135A 第一側壁部
135B 第二側壁部
135C 第三側壁部
135D 第四側壁部
136 底面カバー部
137 上面カバー部
138A 第一突起
138B 第二突起
139 貫通孔
140 平面部
図1
図2
図3
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図5
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図9