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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135941
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】液体処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/32 20230101AFI20230922BHJP
   A61L 2/10 20060101ALI20230922BHJP
   H01J 61/24 20060101ALI20230922BHJP
   H01J 61/52 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
C02F1/32
A61L2/10
H01J61/24 V
H01J61/52 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041300
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】山田 一輝
【テーマコード(参考)】
4C058
4D037
【Fターム(参考)】
4C058AA20
4C058BB06
4C058CC04
4C058DD02
4C058EE26
4C058KK02
4C058KK13
4C058KK25
4C058KK26
4C058KK46
4D037AA01
4D037AA02
4D037AA03
4D037AB03
4D037AB18
4D037BA18
4D037BB01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】最冷部の温度を適切なものとすることができる液体処理装置を提供する。
【解決手段】液体が供給される容器と;容器の内部を延びる保護管と;保護管内部で紫外線照射する放電ランプと;放電ランプの一方の端部の近傍に設けられた温度制御部と;を具備し、放電ランプは内部空間に希ガスと水銀、又は希ガスとアマルガムが封入された筒状バルブと;バルブの両側の端部に設けられた封止部と;一方の封止部に設けられ、バルブの内部空間に露出する第1の電極と;他方の封止部に設けられ、バルブの内部空間に露出する第2の電極と;を有し、バルブの内部空間に露出する第1の電極の端部と、第1の電極が設けられる封止部の端部との間の距離は、バルブの内部空間に露出する第2の電極の端部と第2の電極が設けられる封止部の端部との間の距離よりも長く、温度制御部はバルブの第1の電極が設けられる側の端部の近傍を覆い、放電ランプの最冷部の温度を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体に紫外線を照射する液体処理装置であって、
前記液体が供給される空間を内部に有する容器と;
前記容器の内部を延びる少なくとも1つの保護管と;
前記保護管の内部を延び、前記紫外線を照射可能な少なくとも1つの放電ランプと;
前記放電ランプの一方の端部の近傍に設けられた温度制御部と;
を具備し、
前記放電ランプは、
筒状を呈し、内部空間に、希ガスと水銀、または、希ガスとアマルガム、が封入されたバルブと;
前記バルブの両側の端部のそれぞれに設けられた封止部と;
一方の前記封止部に設けられ、前記バルブの内部空間に露出する第1の電極と;
他方の前記封止部に設けられ、前記バルブの内部空間に露出する第2の電極と;
を有し、
前記バルブの内部空間に露出する前記第1の電極の端部と、前記第1の電極が設けられる封止部の端部との間の距離は、前記バルブの内部空間に露出する前記第2の電極の端部と、前記第2の電極が設けられる封止部の端部との間の距離よりも長く、
前記温度制御部は、前記バルブの、前記第1の電極が設けられる側の端部の近傍を覆い、前記放電ランプの最冷部の温度を制御する液体処理装置。
【請求項2】
前記バルブの内部空間に露出する前記第1の電極の端部と、前記第1の電極が設けられる封止部の端部との間の距離をL1(mm)とし、
前記バルブの外径をD(mm)とした場合に以下の式を満足する請求項1記載の液体処理装置。
0.34<D(mm)/L1(mm)<1.0
【請求項3】
前記放電ランプの、前記第1の電極が設けられる側の端部は、前記放電ランプの、前記第2の電極が設けられる側の端部よりも重力方向下側に位置している請求項1または2に記載の液体処理装置。
【請求項4】
前記液体の温度に応じて、前記放電ランプが延びる方向における、前記温度制御部と、前記放電ランプと、の相対的な位置を移動させる移動部をさらに備えた請求項1~3のいずれか1つに記載の液体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水などの液体に紫外線を照射して、液体に含まれている有機物を除去したり、液体を殺菌したりする液体処理装置がある。紫外線による処理を行えば、熱や薬品などによる処理に比べて、処理の対象となる液体をほとんど変質させることがなく、また、多種類の不純物、菌、ウイルスなどの処理に対応することができる。
そのため、紫外線を液体に照射する液体処理装置は、例えば、半導体装置などの電子部品の洗浄工程、飲料水の殺菌や不純物の除去工程、商業用水(漁業用水、農業用水、食品工場用水など)の殺菌や不純物の除去工程、各種工業用水の殺菌や不純物の除去工程などの幅広い技術分野において用いられている。
【0003】
この様な液体処理装置として、処理を行う液体中に設けられる保護管と、保護管の内部に設けられ、紫外線を照射する低圧水銀ランプと、を備えた液体処理装置が提案されている。
ここで、低圧水銀ランプを点灯すると、バルブの内部に封入されている水銀の一部が点灯による熱で蒸気化する。蒸気化した水銀に電子が衝突すると、ピーク波長が254nmの紫外線、または、ピーク波長が185nm及び254nmの紫外線が発生する。この場合、水銀の蒸気圧が低すぎると紫外線の照度が不足し、水銀の蒸気圧が高すぎると発生した紫外線が水銀に吸収されて紫外線の照度が減衰する。そのため、水銀の蒸気圧が適切な範囲内となるようにする必要がある。
【0004】
水銀の蒸気圧は、点灯中に最も温度が低くなる部分(最冷部)をバルブに設けることで制御することができる。
ところが、液体処理装置に設けられる低圧水銀ランプは、保護管を介して液体中に設けられる。そのため、液体の温度に応じて、最冷部の温度が変化しやすくなる。液体の温度に応じて、最冷部の温度が変化すると、低圧水銀ランプから照射される紫外線の照度が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、最冷部の温度を適切なものとすることができる液体処理装置の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-144912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、最冷部の温度を適切なものとすることができる液体処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る液体処理装置は、液体に紫外線を照射する液体処理装置である。前記液体処理装置は、前記液体が供給される空間を内部に有する容器と;前記容器の内部を延びる少なくとも1つの保護管と;前記保護管の内部を延び、前記紫外線を照射可能な少なくとも1つの放電ランプと;前記放電ランプの一方の端部の近傍に設けられた温度制御部と;を具備している。前記放電ランプは、筒状を呈し、内部空間に、希ガスと水銀、または、希ガスとアマルガム、が封入されたバルブと;前記バルブの両側の端部のそれぞれに設けられた封止部と;一方の前記封止部に設けられ、前記バルブの内部空間に露出する第1の電極と;他方の前記封止部に設けられ、前記バルブの内部空間に露出する第2の電極と;を有している。前記バルブの内部空間に露出する前記第1の電極の端部と、前記第1の電極が設けられる封止部の端部との間の距離は、前記バルブの内部空間に露出する前記第2の電極の端部と、前記第2の電極が設けられる封止部の端部との間の距離よりも長い。前記温度制御部は、前記バルブの、前記第1の電極が設けられる側の端部の近傍を覆い、前記放電ランプの最冷部の温度を制御する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、最冷部の温度を適切なものとすることができる液体処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態に係る液体処理装置を例示するための模式断面図である。
図2】放電ランプの模式断面図である。
図3図1における放電ランプの上側の端部の近傍を例示するための模式断面図である。
図4図1における放電ランプの下側の端部の近傍を例示するための模式断面図である。
図5】温度制御部の効果を例示するためのグラフである。
図6】温度制御部の上側の端部に対する放電ランプの位置を変更する場合を例示するための模式図である。
図7】温度制御部の上側の端部に対する放電ランプの位置を変更する場合を例示するための模式図である。
図8】液体の温度に応じて距離L4(mm)を変える場合を例示するための模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0012】
図1は、本実施の形態に係る液体処理装置100を例示するための模式断面図である。 なお、図1中の「上」は、重力方向上側を表している。「下」は、重力方向下側を表している。
液体処理装置100は、処理の対象となる液体300に紫外線を照射する。液体300は、例えば、水を含む液体とすることができる。
【0013】
図1に示すように、液体処理装置100は、例えば、放電ランプ1、温度制御部10、保護管101、蓋102、シール部材103、容器104、ホルダ105、シール部材106、および設置部107を有する。
【0014】
放電ランプ1は、低圧水銀ランプとすることができる。この場合、低圧水銀ランプは、ピーク波長が254nmの紫外線を照射するランプとしたり、ピーク波長が185nm及び254nmの紫外線を照射するランプとしたりすることができる。
【0015】
放電ランプ1は、少なくとも1つ設けることができる。図1に例示をした液体処理装置100には、放電ランプ1が1つ設けられている。放電ランプ1は、保護管101の内部を延びている。
【0016】
図2は、放電ランプ1の模式断面図である。
図1および図2に示すように、放電ランプ1は、例えば、バルブ2、封止部3、第1の電極4a、第2の電極4b、ソケット5、リード線6、およびリード線7を有する。
【0017】
バルブ2は、筒状を呈し、管径に比べて全長(管軸方向の長さ)が長い形態を有する。バルブ2は、例えば、円筒管である。バルブ2の外径D(mm)は、例えば、10mm以上、25mm以下である。バルブ2の肉厚は、例えば、1mm程度である。
【0018】
バルブ2の管軸方向の長さは、液体処理装置100の仕様などに応じて適宜変更することができる。例えば、放電ランプ1の発光長は、後述する容器104の底板104aと天井板104bとの間の距離よりも長くすることができる。
【0019】
バルブ2の内部空間(放電空間)には、希ガスと水銀、または、希ガスとアマルガム、が封入されている。アマルガムは、水銀と、金属との合金である。金属は、例えば、亜鉛、ビスマス、インジウム、錫などである。水銀またはアマルガムの封入量は、例えば、1mg~300mg程度である。希ガスは、例えば、クリプトン、キセノン、アルゴン、ネオンなどの単ガス、あるいは、複数種類のガスを混合させた混合ガスとすることができる。
【0020】
バルブ2の内部空間における25℃の希ガスの圧力(封入圧力)は、例えば、0.1Torr(13.3Pa)以上、10Torr(1333Pa)以下とすることができる。すなわち、放電ランプ1は、低圧水銀ランプである。なお、バルブ2の内部空間における25℃の希ガスの圧力(封入圧力)は、気体の標準状態(SATP(Standard Ambient Temperature and Pressure):温度25℃、1bar)により求めることができる。
【0021】
バルブ2の管軸方向において、封止部3は、バルブ2の両側の端部のそれぞれに設けられている。封止部3を設けることで、バルブ2の内部空間を気密に封止することができる。また、一方の封止部3には第1の電極4aが設けられ、他方の封止部3には第2の電極4bが設けられている。
【0022】
バルブ2の内部空間には、第1の電極4a、および第2の電極4bが露出している。第2の電極4bは、第1の電極4aと対向している。図1に示すように、第1の電極4aは、バルブ2の下側の端部に設けられた封止部3に設けられている。第2の電極4bは、バルブ2の上側の端部に設けられた封止部3に設けられている。
【0023】
図3は、図1における放電ランプ1の上側の端部の近傍を例示するための模式断面図である。
図3に示すように、第2の電極4bは、例えば、ウェルズ4b1、フィラメント4b2、およびエミッタ4b3を有する。
【0024】
ウェルズ4b1は、線状を呈し、封止部3の内部に一対設けられている。ウェルズ4b1の一方の端部は、封止部3からバルブ2の内部に突出している。ウェルズ4b1の一方の端部は、フィラメント4b2の端部を保持している。ウェルズ4b1の他方の端部は、封止部3の外部に露出している。ウェルズ4b1の他方の端部は、ソケット5を介して、リード線7と電気的に接続されている。
【0025】
フィラメント4b2は、バルブ2の内部に設けられている。フィラメント4b2は、例えば、タングステンや、レニューム・タングステン合金などを含む線状部材を螺旋状に巻いたものである。なお、フィラメント4b2は、線状部材を巻回したフィラメントを二重巻にした、いわゆるダブルフィラメントとすることもできるし、三重巻にした、いわゆるトリプルフィラメントとすることもできる。
【0026】
エミッタ4b3は、フィラメント4b2に設けられている。エミッタ34は、例えば、仕事関数が低いBaO、SrO、CaOの混合体をフィラメント4b2に塗布することで形成される。また、エミッタ34の材料が蒸発するのを抑制するために、ZrOなどを混合体にさらに添加することもできる。エミッタ4b3が設けられていれば、始動電圧や管電圧を低減させることができる。
【0027】
図4は、図1における放電ランプ1の下側の端部の近傍を例示するための模式断面図である。
図4に示すように、第1の電極4aは、例えば、ウェルズ4a1、フィラメント4b2、およびエミッタ4b3を有する。
【0028】
ウェルズ4a1は、線状を呈し、封止部3の内部に一対設けられている。ウェルズ4a1の一方の端部は、封止部3からバルブ2の内部に突出している。ウェルズ4a1の一方の端部は、フィラメント4b2の端部を保持している。ウェルズ4a1の他方の端部は、封止部3の外部に露出している。ウェルズ4a1の他方の端部は、ソケット5を介して、リード線6と電気的に接続されている。
【0029】
図3および図4に示すように、バルブ2の管軸方向において、ウェルズ4a1の長さは、ウェルズ4b1の長さよりも長い。ウェルズ4a1の、封止部3からの突出長さは、ウェルズ4b1の、封止部3からの突出長さよりも長い。そのため、バルブ2の内部空間に露出する第1の電極4aの端部(フィラメント4b2の端部)と、第1の電極4aが設けられる封止部3の端部との間の距離L1(mm)は、バルブ2の内部空間に露出する第2の電極4bの端部(フィラメント4b2の端部)と、第2の電極4bが設けられる封止部3の端部との間の距離L2(mm)よりも長い。
【0030】
この場合、バルブ2の外径D(mm)と、距離L1(mm)との関係は、「0.34<D(mm)/L1(mm)<1.0」とすることが好ましい。この様にすれば、後述する温度制御部10、10aによる最冷部の温度制御が容易となる。
【0031】
バルブ2の管軸方向において、電極の端部と、この電極が設けられる封止部3の端部との間の距離が長くなれば、バルブ2の、電極の端部と封止部の端部との間の部分の温度が低くなる。そのため、バルブ2の内部において、第1の電極4aの端部と、第1の電極4aが設けられる封止部3との間に最冷部が形成される。なお、最冷部は、放電ランプ1の点灯中において、バルブ2の、最も温度が低くなる部分である。最冷部においては、水銀の蒸気の一部が凝縮して、水銀またはアマルガムが生成される。
【0032】
また、距離L1(mm)を長くすれば最冷部の温度が下がり、距離L1(mm)を短くすれば最冷部の温度が上がる。そのため、距離L1(mm)により最冷部の温度を制御することで、水銀の蒸気の蒸気圧が適切な範囲内となるようにすることができる。
【0033】
また、図1に示すように、放電ランプ1の、第1の電極4aが設けられる側の端部は、放電ランプ1の、第2の電極4bが設けられる側の端部よりも重力方向下側に位置していることが好ましい。前述した様に、最冷部においては、水銀の蒸気の一部が凝縮して、水銀またはアマルガムが生成される。そのため、最冷部が重力方向上側に設けられていると、生成された水銀またはアマルガムが最冷部の下方に流出しやすくなる。生成された水銀またはアマルガムが流出すると、水銀の蒸気の蒸気圧が不安定となる。これに対して、最冷部が重力方向下側に設けられていると、生成された水銀またはアマルガムが、最冷部から流出するのを抑制することができる。そのため、水銀の蒸気の蒸気圧を安定させることができる。
【0034】
また、距離L1(mm)と距離L2(mm)との差を小さくし過ぎると、最冷部の温度を安定させるのが困難となる。本発明者の得た知見によれば、「距離L1(mm)-距離L2(mm)≧10mm」とすれば、最冷部の温度を安定させることができる。
【0035】
図1および図2に示すように、ソケット5は、1つの封止部3に対して1つ設けられている。ソケット5は、筒状を呈し、封止部3と、封止部3から露出するウェルズ4a1、4b1を覆っている。ソケット5は、例えば、樹脂や、セラミックスなどの絶縁性材料から形成される。
【0036】
リード線6は、ソケット5を介して、第1の電極4aのウェルズ4a1と電気的に接続されている。すなわち、リード線6は、第1の電極4aのフィラメント4b2と電気的に接続されている。
リード線7は、ソケット5を介して、第2の電極4bのウェルズ4b1と電気的に接続されている。すなわち、リード線7は、第2の電極4bのフィラメント4b2と電気的に接続されている。
【0037】
リード線6とリード線7は、例えば、高周波電源などと電気的に接続される。高周波電源は、例えば、正弦波を発生させる電源や、パルス電源などである。
高周波電源により、リード線6とリード線7に電圧を印加すると、第1の電極4aのフィラメント4b2と、第2の電極4bのフィラメント4b2との間に放電が生ずる。バルブ2の内部空間において放電が生ずると、放電により発生した電子が、水銀原子と衝突して、ピーク波長が254nmの紫外線、または、ピーク波長が185nm及び254nmの紫外線が放射される。
【0038】
この場合、例えば、バルブ2の材料が、石英ガラスや、合成石英ガラスなどであれば、ピーク波長が254nmの紫外線、または、ピーク波長が185nm及び254nmの紫外線をバルブ2の外部に照射することができる。
また、例えば、バルブ2の材料が、ピーク波長が185nmの紫外線を吸収し、ピーク波長が254nmの紫外線を透過するガラスであれば、ピーク波長が254nmの紫外線をバルブ2の外部に照射することができる。
【0039】
ここで、図1に示すように、放電ランプ1は、保護管101を介して、液体300の中に設けられる。そのため、最冷部の温度が液体300の温度の影響を受ける。この場合、処理の対象となる液体300の温度は、0℃~50℃程度である。例えば、液体300の温度が低い場合(例えば、0℃の場合)には、最冷部の温度が所定の温度よりも低くなるおそれがある。液体300の温度が高い場合(例えば、50℃の場合)には、最冷部の温度が所定の温度よりも高くなるおそれがある。この場合、最冷部の温度は、40℃程度となるようにすることが好ましい。液体300の温度に応じて、最冷部の温度が変化すると、水銀の蒸気の蒸気圧が適切な範囲から外れて、放電ランプ1から照射される紫外線の照度が低下するおそれがある。
【0040】
この場合、液体処理装置100の用途が決まれば、処理の対象となる液体300の温度をある程度特定することができる。そのため、特定された液体300の温度に応じて、距離L1(mm)を設定することもできる。しかしながら、この様にすると、放電ランプ1の種類が多くなるので、放電ランプ1の在庫管理の繁雑化や製造コストの増大を招くことになる。また、液体300の温度が変更された場合には、放電ランプ1の交換が必要となる。
【0041】
そこで、液体処理装置100には、放電ランプ1の最冷部の温度を制御する温度制御部10が設けられている。図1図2、および図4に示すように、温度制御部10は、放電ランプ1(バルブ2)の、第1の電極4aが設けられる側の端部の近傍に設けることができる。すなわち、温度制御部10は、バルブ2の、最冷部が形成される部分に設けることができる。温度制御部10は、バルブ2の外面に設けられ、最冷部と液体300との間の熱伝達を制御する。
【0042】
図4に示すように、温度制御部10は、例えば、筒状を呈し、バルブ2の外面を覆っている。温度制御部10は、例えば、バルブ2の、第1の電極4aが設けられる側の端部の近傍を覆っている。なお、温度制御部10は、封止部3の外面をさらに覆うこともできる。温度制御部10とバルブ2の外面との間には僅かな隙間があってもよいし、温度制御部10とバルブ2の外面とが接触していてもよい。温度制御部10は、例えば、弾性力によりバルブ2の外面に取り付けることもできる。例えば、筒状の温度制御部10に、バルブ2の管軸方向に延びるスリットを設け、温度制御部10をバルブ2に装着した際に弾性力が生ずるようにすることができる。
【0043】
温度制御部10は、例えば、輻射熱を反射することができる。この場合、温度制御部10は、例えば、赤外線に対する反射率の高い材料から形成される。温度制御部10は、例えば、銀、金、銅、アルミニウムなどの金属から形成することができる。この場合、酸化し難いことや、製造コストを考慮すると、温度制御部10は、アルミニウムから形成することが好ましい。
温度制御部10が赤外線に対する反射率の高い材料から形成されていれば、温度制御部10aの厚みを薄くしても、最冷部と液体300との間の熱伝達を制御することができる。
【0044】
また、温度制御部10は、例えば、熱伝導を抑制するものとしてもよい。この場合、温度制御部10は、例えば、熱伝導率の低い材料から形成することができる。温度制御部10は、例えば、ポリプロピレン、ポリスチレン、フッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂から形成することができる。また、温度制御部10は、例えば、熱収縮チューブなどを用いて形成することもできる。熱収縮チューブを用いて温度制御部10を形成すれば、温度制御部10をバルブ2に密着させるのが容易となる。
温度制御部10が熱伝導率の低い材料から形成されていれば、最冷部と液体300との間の熱伝達を制御することができる。
【0045】
図5は、温度制御部10の効果を例示するためのグラフである。
なお、図5は、前述した距離L1(mm)が36mmの場合である。
また、図5中の距離L3(mm)は、温度制御部10の端部と、第1の電極4aが設けられた封止部3の端部との間の距離である(図4を参照)。
また、「距離L3(mm)≦距離L1(mm)」である。なお、図2および図4においては、「距離L3(mm)<距離L1(mm)」としている。
【0046】
図5から分かるように、温度制御部10が設けられていれば、液体300の温度が変化した場合に、放電ランプ1から照射される紫外線の照度の変動幅を小さくすることができる。
また、液体300の温度に応じて、距離L3(mm)を調整すれば、紫外線の照度をより高くすることができる。
【0047】
なお、放電ランプ1を点灯させた際に発生する熱は、入力電圧などにより決まるので、液体300の温度に対する最適な距離L3(mm)は、シミュレーションや実験を行うことで求めることができる。
【0048】
また、以上においては、バルブ2の管軸方向における温度制御部10の長さを変更する場合を説明したが、温度制御部10の上側の端部(第2の電極4b側の端部)と、最冷部との間の相対的な位置を変化させることができればよい。
例えば、所定の長さの温度制御部10aを用い、バルブ2の管軸方向において、温度制御部10aの上側の端部に対する放電ランプ1の位置(最冷部の位置)を変更してもよい。また、所定の長さの温度制御部10aを用い、バルブ2の管軸方向において、放電ランプ1の位置(最冷部の位置)に対する温度制御部10aの上側の端部の位置を変更してもよい。
また、温度制御部10、および温度制御部10aを設けるようにしてもよい。
【0049】
図6および図7は、温度制御部10aの上側の端部に対する放電ランプ1の位置を変更する場合を例示するための模式図である。
図6および図7に示すように、温度制御部10aは、例えば、筒状を呈し、蓋102の上に設けられる。温度制御部10aの内部には、放電ランプ1の、第1の電極4aが設けられる側の端部を設けることができる。温度制御部10aは放電ランプ1と接触してもよいし、温度制御部10aと放電ランプ1との間に隙間が設けられていてもよい。温度制御部10aの材料は、温度制御部10の材料と同じとすることができる。
【0050】
例えば、液体300の温度が低い場合には、図6に示すように、放電ランプ1の、第1の電極4aが設けられる側の端部と、温度制御部10aの上側の端部との間の距離L4(mm)を長くする。この様にすれば、温度制御部10aにより遮られる最冷部からの熱を多くすることができる。そのため、最冷部の熱が液体300に伝達され難くなるので、液体300の温度が低い場合であっても最冷部の温度を所定の温度に保つのが容易となる。
【0051】
例えば、液体300の温度が高い場合には、図7に示すように、距離L4(mm)を短くする。この様にすれば、温度制御部10aにより遮られる最冷部からの熱を少なくすることができる。そのため、最冷部の熱が液体300に伝達され易くなるので、液体300の温度が高い場合であっても最冷部の温度を所定の温度に保つのが容易となる。
【0052】
距離L4(mm)は、例えば、図7に示すように、放電ランプ1と蓋102との間に設けられたスペーサ11の長さにより変えることができる。また、例えば、温度制御部10aに放電ランプ1を保持させ、温度制御部10aが放電ランプ1を保持する位置により、距離L4(mm)を変えるようにしてもよい。また、例えば、蓋102に、放電ランプ1の、第1の電極4aが設けられる側の端部と接触するボルトを設け、蓋102からのボルトの突出長さにより、距離L4(mm)を変えるようにしてもよい。
【0053】
また、液体300の温度に応じて距離L4(mm)を変えることもできる。
図8は、液体300の温度に応じて距離L4(mm)を変える場合を例示するための模式断面図である。
図8に示すように、例えば、距離L4を変化させる移動部12を設けることができる。
移動部12は、例えば、伝導部12a、および駆動部12bを有する。
伝導部12aは、例えば、ネジやボールネジなどである。伝導部12aは、例えば、蓋102に設けることができる。伝導部12aの端部は、放電ランプ1の、第1の電極4aが設けられる側の端部と接触している。
【0054】
駆動部12bは、例えば、液体300の温度を検出するセンサからの信号に基づいて、伝導部12aの位置を変化させる。例えば、液体300の温度が高い場合には、伝導部12aを上昇させて、距離L4を短くする。例えば、液体300の温度が低い場合には、伝導部12aを下降させて、距離L4を長くする。
駆動部12bは、例えば、サーボモータなどの制御モータを備えたものとすることができる。
【0055】
なお、温度制御部10aに対する放電ランプ1の位置を移動させる場合を説明したが、放電ランプ1に対する温度制御部10aの位置を移動させてもよい。例えば、伝導部12aの端部は、温度制御部10aの下側の端部と接触させてもよい。
すなわち、移動部12は、液体300の温度に応じて、放電ランプ1が延びる方向における、温度制御部10aと、放電ランプ1と、の相対的な位置を移動させるものであればよい。
【0056】
液体300の温度に応じて距離L4(mm)を変化させることができれば、液体300の処理中に温度が変わった場合であっても、最冷部の温度を適切なものとすることができる。また、液体300の温度ごとに長さの異なる温度制御部10を設ける必要がないので、在庫管理の簡略化や生産性の向上を図ることができる。
【0057】
次に、図1に戻って、液体処理装置100に設けられた他の要素について説明する。
放電ランプ1は、液体300の中に直接設けることができない。そのため、図1に示すように、放電ランプ1は保護管101の内部に収納される。
【0058】
保護管101は、筒状を呈し、管径に比べて全長(管軸方向の長さ)が長い形態を有する。保護管101は、例えば、円筒管である。保護管101の両側の端部は開口している。保護管101の端部にはフランジ101aを設けることができる。
保護管101は、容器104の内部を延びている。例えば、保護管101は、天井板104bと、底板104aとの間を延びている。保護管101の上側の端部は、天井板104bから上方に突出している。保護管101の下側の端部は、底板104aから下方に突出している。
【0059】
保護管101の内部空間には、少なくとも1つの放電ランプ1が収納される。図1に例示をした液体処理装置100の場合には、保護管101の内部空間に1つの放電ランプ1が収納されている。保護管101の内部空間に1つの放電ランプ1が収納される場合には、放電ランプ1は、保護管101と略同軸となるように設けることができる。保護管101の寸法は、収納される放電ランプ1の寸法や数に応じて適宜変更することができる。
【0060】
保護管101は、少なくとも1つ設けることができる。図1に示すように、容器104の内部空間は、液体300が流通する流路となる。そのため、放電ランプ1が、保護管101を介して液体300の中に設けられることになる。
【0061】
この場合、放電ランプ1の発光長は、容器104の底板104aと天井板104bとの間の距離よりも長くなっている。この様にすれば、容器104の中心軸方向において、容器104の内部空間の全域に、放電ランプ1の発光部分が設けられる。そのため、容器104の内部空間の全域において、液体300に紫外線を照射することができるので処理効率が向上する。
【0062】
放電ランプ1において発生した紫外線は、保護管101を介して液体300に照射される。そのため、保護管101は、紫外線の透過率が高い材料から形成される。例えば、保護管101は、石英ガラスや、合成石英ガラスなどから形成することができる。
【0063】
放電ランプ1から液体300に紫外線が照射されると、紫外線により、例えば、液体300に含まれている菌やウイルスの、殺菌や不活性化が行われる。
【0064】
蓋102は、保護管101の開口を塞いでいる。例えば、蓋102は、保護管101のフランジ101aに取り付けられる。蓋102には厚み方向を貫通する孔が設けられている。放電ランプ1に設けられたリード線6、7は、蓋102に設けられた孔を介して外部に引き出されている。リード線6、7と孔の内壁との間の隙間は、封止材により封止されている。蓋102は、例えば、ステンレスなどの金属や、フッ素樹脂などの樹脂から形成される。
【0065】
シール部材103は、蓋102と、保護管101(フランジ101a)との間に設けられている。シール部材103は、例えば、Oリングなどである。蓋102とシール部材103を保護管101に取り付けることで、保護管101の内部空間が気密となるように封止される。
【0066】
ここで、保護管101の内部空間に酸素があると、放電ランプ1から照射された紫外線が減衰するおそれがある。そのため、蓋102とシール部材103により封止された保護管101の内部空間には、窒素ガスや不活性ガスを封入することができる。
【0067】
容器104は、筒状を呈し、断面寸法(中心軸に直交する方向の長さ)に比べて全長(中心軸方向の長さ)が長い形態を有する。容器104は、例えば、円筒形状を呈している。容器104は、例えば、ステンレスなどの金属から形成される。
【0068】
容器104の側面の底板104aの近傍には、液体300の供給口104cを設けることができる。供給口104cには、例えば、液体300を供給する供給装置などを接続することができる。容器104の側面の天井板104bの近傍には、処理が施された液体300aの排出口104dを設けることができる。排出口104dには、例えば、処理が施された液体300aを収納するタンクや、液体300aを用いる洗浄装置などを接続することができる。
【0069】
容器104の下側の開口は、底板104aにより塞がれている。底板104aと容器104は、例えば、溶接などにより液密に接合される。また、例えば、容器104にフランジを設け、パッキンなどを介して、フランジに底板104aをネジ止めなどすることもできる。底板104aは、板状を呈し、例えば、ステンレスなどの金属から形成される。
【0070】
底板104aには、厚み方向を貫通する孔104a1を設けることができる。例えば、孔104a1は、底板104aの中央に設けることができる。
【0071】
容器104の上側の開口は、天井板104bにより塞がれている。天井板104bと容器104は、例えば、溶接などにより液密に接合される。また、例えば、容器104にフランジを設け、パッキンなどを介して、フランジに天井板104bをネジ止めなどすることもできる。天井板104bは、板状を呈し、例えば、ステンレスなどの金属から形成される。
【0072】
天井板104bには、厚み方向を貫通する孔104b1を設けることができる。例えば、孔104b1は、天井板104bの中央に設けることができる。
【0073】
孔104a1と孔104b1の内部には、保護管101が設けられる。そのため、孔104a1は、孔104b1と同軸に設けることができる。
【0074】
以上に説明した様に、容器104は、下側の端部に設けられた底板104aと、上側の端部に設けられた天井板104bと、を有し、液体300が供給される空間を内部に有する。
【0075】
ホルダ105は、板状を呈し、例えば、1つの保護管101に対して一対設けることができる。例えば、一方のホルダ105は、保護管101の上側の端部の近傍を保持する。一方のホルダ105は、例えば、シール部材106を介して、天井板104bに取り付けられる。例えば、他方のホルダ105は、保護管101の下側の端部の近傍を保持する。他方のホルダ105は、例えば、シール部材106を介して、底板104aに取り付けられる。
【0076】
シール部材106は、例えば、Oリングなどである。シール部材106は、保護管101と、底板104aの孔104a1の内壁との間の隙間を液密となるように封止する。シール部材106は、保護管101と、天井板104bの孔104b1の内壁との間の隙間を液密となるように封止する。
【0077】
設置部107は、ベース107a、およびスタンド107bを有する。設置部107は、例えば、鉄やステンレスなどの金属から形成することができる。
ベース107aは、例えば、液体処理装置100を設置する場所の床面に設けられる。ベース107aは、板状を呈し、容器104の底板104aと対向している。スタンド107bは、柱状を呈し、容器104の底板104aと、ベース107aとの間に設けられている。例えば、スタンド107bは、複数設けることができる。スタンド107bが設けられていれば、容器104の底板104aと、ベース107aとの間に空間を設けることができる。図1に示すように、容器104の底板104aと、ベース107aとの間の空間には、保護管101の下側の端部、および蓋102を設けることができる。
【0078】
なお、液体処理装置100を設置する場所の床面に設ける場合を例示したが、これに限定されるわけではない。例えば、液体処理装置100は、設置する場所の天井面に設けることもできる。この場合、設置部107は、例えば、容器104の天井板104bに設けることができる。例えば、液体処理装置100は、設置する場所の壁面に設けることもできる。この場合、設置部107は、例えば、容器104の側面に設けることができる。
【0079】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 放電ランプ、2 バルブ、4a 第1の電極、4b 第2の電極、4b2 フィラメント、5 ソケット、10 温度制御部、10a 温度制御部、11 スペーサ、12 移動部、100 液体処理装置、101 保護管、102 蓋、104 容器、300 液体、300a 液体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8