(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135942
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】配線モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 50/519 20210101AFI20230922BHJP
H01M 50/583 20210101ALI20230922BHJP
H01M 50/503 20210101ALI20230922BHJP
H01M 50/284 20210101ALI20230922BHJP
H01G 11/10 20130101ALI20230922BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20230922BHJP
H01M 50/298 20210101ALI20230922BHJP
【FI】
H01M50/519
H01M50/583
H01M50/503
H01M50/284
H01G11/10
H01M50/209
H01M50/298
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041301
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 修哉
(72)【発明者】
【氏名】中山 治
(72)【発明者】
【氏名】池田 亮太
【テーマコード(参考)】
5E078
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5E078AA14
5E078AB01
5E078JA02
5H040AA07
5H040AS07
5H040AY08
5H040DD08
5H043AA02
5H043BA11
5H043CA05
5H043FA02
5H043GA03
(57)【要約】
【課題】ヒューズ機能の付与にかかる製造コストの増大を抑制するとともに、フレキシブル基板の損傷を抑制することができる配線モジュールを提供する。
【解決手段】配線モジュール20は、複数の蓄電素子11に取り付けられる配線モジュール20であって、複数の蓄電素子11の電極端子12A,12Bに接続されるバスバー21と、フレキシブル基板30と、バスバー21とフレキシブル基板30とを接続する金属片22と、電線23と、を備え、フレキシブル基板30には、金属片22と接続される第1ランド41と、電線23と接続される第2ランド42と、第1ランド41と第2ランド42との間に設けられるヒューズ部43と、を有する導電路39が形成されており、フレキシブル基板30は、基板本体31と、基板本体31に対する金属片22の変位を許容しつつ、基板本体31と金属片22とを連結する連結部33と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電素子に取り付けられる配線モジュールであって、
前記複数の蓄電素子の電極端子に接続されるバスバーと、
フレキシブル基板と、
前記バスバーと前記フレキシブル基板とを接続する金属片と、
電線と、を備え、
前記フレキシブル基板には、前記金属片と接続される第1ランドと、前記電線と接続される第2ランドと、前記第1ランドと前記第2ランドとの間に設けられるヒューズ部と、を有する導電路が形成されており、
前記フレキシブル基板は、基板本体と、前記基板本体に対する前記金属片の変位を許容しつつ、前記基板本体と前記金属片とを連結する連結部と、を備える、配線モジュール。
【請求項2】
前記連結部は、伸縮可能に構成されている、請求項1に記載の配線モジュール。
【請求項3】
前記連結部は、前記基板本体から延び、少なくとも1つの湾曲部を備える線ばね状をなして構成されている、請求項2に記載の配線モジュール。
【請求項4】
前記フレキシブル基板は、前記基板本体における前記第2ランドが含まれる領域に貼り付けられる補強板を備える、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の配線モジュール。
【請求項5】
少なくとも1つの前記フレキシブル基板には、前記導電路が複数形成されている、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の配線モジュール。
【請求項6】
前記ヒューズ部は、前記導電路に半田で接続されるチップヒューズで構成されている、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の配線モジュール。
【請求項7】
前記ヒューズ部は、パターンヒューズで構成されている、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の配線モジュール。
【請求項8】
車両に搭載される前記複数の蓄電素子に電気的に取り付けられる車両用の配線モジュールであって、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の配線モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車等に用いられる高圧のバッテリーパックは、通常、多数のバッテリーセルが積層され、配線モジュールによって直列あるいは並列に電気接続されている。このような配線モジュールとして、従来、特表2019-500736号公報(下記特許文献1)に記載のバスバーアセンブリが知られている。特許文献1に記載のバスバーアセンブリは、少なくとも一側に電極リードが突出し、相互積層される複数のバッテリーセルに取り付けられるバスバーアセンブリであって、電極リードを通過させるリードスロットを備えるバスバーフレームと、リードスロットを通過した電極リードを電気的に連結するバスバーと、を備えて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成では、バスバーアセンブリはヒューズ機能を有していない。配線モジュールにヒューズ機能を付与するには、ヒューズを備えた回路基板を配線モジュールに組み込むことが考えられる。しかしながら、回路基板の使用により配線モジュールの製造コストが増大するおそれがある。
【0005】
また、車両の使用に伴う温度変化により、バッテリーセルは膨張または収縮する。これにより、主としてバスバーと回路基板との接続部分において回路基板が損傷し、バスバーと回路基板との電気的な接続が損なわれる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の配線モジュールは、複数の蓄電素子に取り付けられる配線モジュールであって、前記複数の蓄電素子の電極端子に接続されるバスバーと、フレキシブル基板と、前記バスバーと前記フレキシブル基板とを接続する金属片と、電線と、を備え、前記フレキシブル基板には、前記金属片と接続される第1ランドと、前記電線と接続される第2ランドと、前記第1ランドと前記第2ランドとの間に設けられるヒューズ部と、を有する導電路が形成されており、前記フレキシブル基板は、基板本体と、前記基板本体に対する前記金属片の変位を許容しつつ、前記基板本体と前記金属片とを連結する連結部と、を備える、配線モジュールである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ヒューズ機能の付与にかかる製造コストの増大を抑制するとともに、フレキシブル基板の損傷を抑制することができる配線モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態1にかかる蓄電モジュールが搭載された車両を示す模式図である。
【
図3】
図3は、フレキシブル基板の周辺について示す蓄電モジュールの一部拡大平面図である。
【
図4】
図4は、フレキシブル基板について示す平面図である。
【
図7】
図7は、実施形態2にかかるフレキシブル基板の周辺について示す蓄電モジュールの一部拡大平面図である。
【
図8】
図8は、実施形態3にかかるフレキシブル基板のヒューズ部を示す蓄電モジュールの一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列挙して説明する。
【0010】
(1)本開示の配線モジュールは、複数の蓄電素子に取り付けられる配線モジュールであって、前記複数の蓄電素子の電極端子に接続されるバスバーと、フレキシブル基板と、前記バスバーと前記フレキシブル基板とを接続する金属片と、電線と、を備え、前記フレキシブル基板には、前記金属片と接続される第1ランドと、前記電線と接続される第2ランドと、前記第1ランドと前記第2ランドとの間に設けられるヒューズ部と、を有する導電路が形成されており、前記フレキシブル基板は、基板本体と、前記基板本体に対する前記金属片の変位を許容しつつ、前記基板本体と前記金属片とを連結する連結部と、を備える、配線モジュールである。
【0011】
このような構成によると、配線モジュールにはフレキシブル基板に加えて電線が設けられるため、電線が設けられない場合に比べて、フレキシブル基板の使用量を低減することができる。よって、配線モジュールの製造コストを削減することができる。
また、連結部によって、基板本体に対する金属片の変位を許容することができる。よって、蓄電素子が温度変化に伴って膨張または収縮した場合や、配線モジュールに外力が加わりバスバーが変形した場合でも、フレキシブル基板が損傷しにくく、バスバーとフレキシブル基板との電気的な接続を維持することができる。
【0012】
(2)前記連結部は、伸縮可能に構成されていることが好ましい。
【0013】
このような構成によると、連結部が伸縮することにより、基板本体に対する金属片の変位をより一層許容しやすくなる。
【0014】
(3)前記連結部は、前記基板本体から延び、少なくとも1つの湾曲部を備える線ばね状をなして構成されていることが好ましい。
【0015】
このような構成によると、簡易な構成で、基板本体に対する金属片の変位を許容することができる。
【0016】
(4)前記フレキシブル基板は、前記基板本体における前記第2ランドが含まれる領域に貼り付けられる補強板を備えることが好ましい。
【0017】
このような構成によると、補強板により、基板本体における第2ランドと電線との接続部分を補強することができる。
【0018】
(5)少なくとも1つの前記フレキシブル基板には、前記導電路が複数形成されていることが好ましい。
【0019】
このような構成によると、配線モジュールに用いるフレキシブル基板の数を減らすことができるため、配線モジュールの組み付けの作業性を向上できる。
【0020】
(6)前記ヒューズ部は、前記導電路に半田で接続されるチップヒューズで構成されていることが好ましい。
【0021】
このような構成によると、導電路に過電流が流れた際に、チップヒューズが溶断することによって、導電路を過電流から保護することができる。
【0022】
(7)前記ヒューズ部は、パターンヒューズで構成されていることが好ましい。
【0023】
このような構成によると、フレキシブル基板の製造過程においてヒューズ部を構成できる。
【0024】
(8)上記の配線モジュールは、車両に搭載される前記複数の蓄電素子に電気的に取り付けられる車両用の配線モジュールである。
【0025】
[本開示の実施形態の詳細]
以下に、本開示の実施形態について説明する。本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0026】
<実施形態1>
本開示の実施形態1について、
図1から
図6を参照しつつ説明する。本実施形態の配線モジュール20を備えた蓄電モジュール10は、例えば、
図1に示すように、車両1に搭載される蓄電パック2に適用される。蓄電パック2は、電気自動車またはハイブリッド自動車等の車両1に搭載されて、車両1の駆動源として用いられる。以下の説明においては、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材の符号を省略する場合がある。
【0027】
図1に示すように、車両1の中央付近には蓄電パック2が配設されている。車両1の前部にはPCU3(Power Control Unit)が配設されている。蓄電パック2とPCU3とは、ワイヤーハーネス4によって接続されている。蓄電パック2とワイヤーハーネス4とは図示しないコネクタによって接続されている。蓄電パック2は複数の蓄電素子11を備えた蓄電モジュール10を有する。蓄電モジュール10(および配線モジュール20)は、任意の向きで搭載可能であるが、以下では、
図1を除き、矢線Zの示す方向を上方、矢線Xの示す方向を前方、矢線Yの示す方向を左方として説明する。
【0028】
[蓄電素子、電極端子]
蓄電モジュール10は、
図2に示すように、左右方向に一列に並べられた複数の蓄電素子11と、複数の蓄電素子11の上面に装着される配線モジュール20とを備える(蓄電モジュール10の左側部分は図示省略)。蓄電素子11は、扁平な直方体状をなす。蓄電素子11の内部には、図示しない蓄電要素が収容されている。蓄電素子11は、上面に正極及び負極の電極端子12A,12Bを有する。蓄電素子11は特に限定されず、二次電池でもよく、またキャパシタでもよい。本実施形態にかかる蓄電素子11は二次電池とされる。
【0029】
[配線モジュール]
配線モジュール20は、電極端子12A,12Bに接続されるバスバー21と、フレキシブル基板30と、バスバー21とフレキシブル基板30とを接続する金属片22と、フレキシブル基板30に接続される電線23と、バスバー21、フレキシブル基板30、金属片22、及び電線23を保持するプロテクタ50と、を備える。配線モジュール20は、複数の蓄電素子11の前側及び後側に取り付けられるようになっている。以下では、後側に配される配線モジュール20の構成について詳細に説明する。なお、前側に配される配線モジュール20では、前後方向、左右方向の双方が反転するが、その他の点においては、前側に配される配線モジュール20の構成と後側に配される配線モジュール20の構成に差異はない。
【0030】
プロテクタ50は、絶縁性の合成樹脂製であって、板状をなしている。プロテクタ50は、バスバー21が収容されるバスバー収容部51と、フレキシブル基板30が保持される基板保持部52と、電線23が配索される電線配索部53と、を備える。バスバー収容部51は枠状をなしている。バスバー収容部51の下部には、電極端子12A,12Bとバスバー21とを接続するための接続孔51Aが形成されている。
図3に示すように、バスバー収容部51の周壁には、バスバー収容部51内においてバスバー21を保持する係止部51Bが設けられている。
図6に示すように、バスバー収容部51の側壁は、一部下方に凹んだ凹部51Cを備える。凹部51C内には、バスバー21とフレキシブル基板30とを接続する金属片22が配置されている。
【0031】
図3に示すように、電線配索部53は、左右方向に延びる溝状をなしている。バスバー収容部51と電線配索部53との間に基板保持部52が配されている。電線配索部53の基板保持部52側の溝壁には、電線挿通部53Aが凹状をなして形成されている。電線挿通部53Aに挿通された電線23は、フレキシブル基板30に接続されている。基板保持部52は、フレキシブル基板30の固定孔31Aに挿通される突起部52Aと、フレキシブル基板30の左右中央部を係止する係止爪52Bと、を備える。
【0032】
[バスバー]
バスバー21は、導電性を有する金属板材からなる。バスバー21を構成する金属としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼(SUS)等が挙げられる。
図2に示すように、バスバー21は、平面視で長方形状をなしている。バスバー21と電極端子12A,12Bとは溶接により電気的に接続される。バスバー21には、隣り合う蓄電素子11の電極端子12A,12Bを接続するバスバー21と、複数の蓄電素子11の総正極または総負極に接続されるバスバー21と、があるが、以下、特に区別しない。
【0033】
[金属片]
金属片22は、導電性を有する金属から構成されている。例えば、金属片22を構成する金属としては、ニッケル、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等が挙げられる。
図3に示すように、金属片22は、前後方向に長い形状をなしている。金属片22の一方の端部(
図3では後端部)はバスバー21に接続されている。本実施形態では、金属片22とバスバー21とは、溶接により接続されている。金属片22の他方の端部(
図3では前端部)はフレキシブル基板30に接続されている。本実施形態では、金属片22とフレキシブル基板30とは半田付けにより接続されている。
【0034】
[電線]
図3に示すように、電線23は、芯線23Aと、芯線23Aを覆う絶縁被覆23Bと、を有している。電線23の一端に露出された芯線23Aは、第2ランド42に半田付けにより接続される。電線23の一端の絶縁被覆23Bは、電線挿通部53Aに挿通され、固定される。図示しないが、電線23の他端は、コネクタを介して外部のECU(Electronic Control Unit)等に接続されている。ECUは、マイクロコンピュータ、素子等が搭載されたものであって、各蓄電素子11の電圧、電流、温度等の検知や、各蓄電素子11の充放電制御コントロール等を行うための機能を備えた周知の構成のものである。
【0035】
[フレキシブル基板]
フレキシブル基板30は、可撓性を有する回路基板であって、本実施形態では、フレキシブルプリント基板とされている。
図4に示すように、フレキシブル基板30は左右方向に長く、左右対称に構成されている。フレキシブル基板30は、基板本体31と、基板本体31と金属片22とを連結する連結部33と、を備える。基板本体31は、上下方向に貫通する固定孔31Aと位置決め孔31Bとを有する。固定孔31Aは、基板本体31の左端部と右端部とに1つずつ設けられている。位置決め孔31Bは左右中央部寄りの位置に2つ設けられている。フレキシブル基板30に補強板32を貼り付ける際、位置決め孔31Bと補強板32に設けられる貫通孔32Aとに位置決め用のピン(図示せず)を挿通することで、フレキシブル基板30と補強板32との位置決めがされるようになっている。
図3に示すように、固定孔31Aにプロテクタ50の突起部52Aが挿通されることで、基板本体31のプロテクタ50に対する左右方向及び前後方向における移動が規制されている。
【0036】
また、位置決め孔31B及び貫通孔32Aに対応する位置にも突起部52Aを設け、位置決め孔31B及び貫通孔32Aに突起部52Aを挿通してもよい。電線23に接触するような位置に突起部52Aを設け、突起部52Aにより電線23の引き出し方向を規制してもよい。
【0037】
[補強板]
図4に示すように、基板本体31の左右中央部の下面には、補強板32が貼り付けられている。本実施形態では、補強板32は絶縁性の部材とされている。例えば、ガラス繊維布にエポキシ樹脂を含浸させて硬化させることにより補強板32が形成される。また、本実施形態とは異なり、補強板は金属板でもよく、例えば、アルミ板であってもよい。補強板32により補強される基板本体31の左右中央部の領域は、補強部31Cとされている。
図3に示すように、補強部31Cには、電線23に接続される第2ランド42が配されている。補強部31C及び補強板32は、プロテクタ50の係止爪52Bにより上方から係止されている。このように、補強板32は、基板本体31をプロテクタ50に対して保持するためにも利用することができる。
【0038】
[連結部、湾曲部]
連結部33は、前後方向、左右方向、及び上下方向にある程度変位可能に構成されている。
図4に示すように、本実施形態の連結部33は、基板本体31から左右方向に延出される第1直線部34と、第1直線部34の延出端において略U字状に湾曲する湾曲部35と、湾曲部35の延出端から左右方向に延出される第2直線部36と、第2直線部36の延出端に形成され、金属片22に接続される接続端部37と、を備える。すなわち、連結部33は全体として線ばね状をなして構成されている。これにより、連結部33は、前後方向、左右方向、及び上下方向に伸縮可能とされている。第1直線部34と第2直線部36との間に折り返し状の湾曲部35が配されることにより、第1直線部34と第2直線部36とは平面視において前後方向に並列して配されている。本実施形態では、1つのフレキシブル基板30に左右一対の連結部33が設けられている。
【0039】
図6は連結部33の周辺の構成について示す図であって、
図6では連結部33を見やすくするために一部の構成を省略している。
図6に示すように、配線モジュール20において、バスバー21に接続された金属片22は、連結部33を介して、プロテクタ50に保持された基板本体31と連結された状態となっている。連結部33が伸縮することによって、バスバー21(及び金属片22)は、バスバー21の並び方向(左右方向)、基板本体31に対して離間または接近する方向(前後方向)、及び基板本体31の厚さ方向(上下方向)のいずれにも、ある程度変位できるようになっている。このため、蓄電モジュール10が搭載される車両1の使用により温度が変化し、蓄電素子11(及びバスバー21)が膨張または収縮するような場合でも、連結部33が伸縮することでフレキシブル基板30と金属片22との接続部分が破損しにくく、金属片22を介したバスバー21とフレキシブル基板30との電気的な接続を維持しやすくなっている。
【0040】
[導電路]
図5に示すように、フレキシブル基板30は、ベースフィルム38と、ベースフィルム38の表面に配索された導電路39と、導電路39を被覆するカバーレイフィルム40と、を備えている。ベースフィルム38及びカバーレイフィルム40は、絶縁性と柔軟性を有するポリイミド等の合成樹脂からなる。導電路39は、銅や銅合金等の金属箔により構成されている。
図3に示すように、本実施形態のフレキシブル基板30は、電気的に接続されていない、2つの別個の導電路39を備える。1つの導電路39は、金属片22に接続される第1ランド41と、電線23に接続される第2ランド42と、第1ランド41と第2ランド42の間に設けられるヒューズ部43と、を有して構成されている。
【0041】
[第1ランド、第2ランド]
図4に示すように、第1ランド41は、連結部33の接続端部37に形成され、導電路39の一端に配されている。第2ランド42は、補強部31Cに形成され、導電路39の他端に配されている。
図3に示すように、第1ランド41は、金属片22を介してバスバー21と電気的に接続されている。第2ランド42は、電線23の芯線23Aと半田付けにより接続されている。
【0042】
[ヒューズ部]
図4に示すように、導電路39において、第1ランド41から第2ランド42に至る途中の部分には、ヒューズ部43が設けられている。ヒューズ部43は基板本体31に配置されている。
図5に示すように、本実施形態のヒューズ部43は、チップヒューズ44を有しており、チップヒューズ44と導電路39とは半田S1により接続されている。詳細には、チップヒューズ44の一対の電極45のうち一方が第1ランド41側の導電路39Aに接続され、他方が第2ランド42側の導電路39Bに接続されている。
【0043】
ヒューズ部43が設けられることにより、蓄電モジュール10が接続される外部回路に不具合が生じて、導電路39同士が短絡し過電流が発生した場合であっても、チップヒューズ44が溶断することで、蓄電素子11から導電路39に過電流が流れることを制限することができる。
【0044】
図5に示すように、本実施形態では、チップヒューズ44と導電路39との接続部分は、封止部46に覆われている。ここで、チップヒューズ44と導電路39との接続部分とは、少なくともチップヒューズ44全体と、半田S1と、チップヒューズ44の電極45に接続される導電路39の端部であって、カバーレイフィルム40に覆われていない部分と、を含むものとする。封止部46は、硬化性の絶縁性樹脂から構成されている。封止部46がチップヒューズ44と導電路39との接続部分を覆っているため、結露により水滴等がフレキシブル基板30上に生じた場合であっても、導電路39の短絡を抑制することができる。
【0045】
本実施形態では、
図4に示すように、第1ランド41と、ヒューズ部43と、第2ランド42と、を形成するために必要最小限の寸法でフレキシブル基板30が形成されている。また、
図3に示すように、フレキシブル基板30と図示しないECU側のコネクタとを接続する導体として安価な電線23が用いられている。したがって、ヒューズ機能の付与にかかる配線モジュール20の製造コストの増大を抑制することができる。
【0046】
本実施形態の配線モジュール20は、2つの導電路39を備えて構成されるフレキシブル基板30を備える。これにより、1つのフレキシブル基板30に1つの導電路39のみを形成する場合に比べて、配線モジュール20におけるフレキシブル基板30の数を減らすことができるから、フレキシブル基板30をプロテクタ50に配置する作業を効率化させることができる。
【0047】
図3に示すように、フレキシブル基板30において、2つの第1ランド41はフレキシブル基板30の左右両側に配され、これらの左右方向における中間位置に2つの第2ランド42が配されている。このような構成によれば、隣接する2つのバスバー21の左右方向における中間位置にフレキシブル基板30を配置しやすい。また、左右方向におけるバスバー21の間隔に合わせてフレキシブル基板30を小型化しやすい。
【0048】
[配線モジュールの製造方法]
配線モジュール20の構成は以上であって、以下、配線モジュール20の製造方法の一例を説明する。
まず、フレキシブル基板30をプリント配線技術により製造する。連結部33は、打ち抜かれたフレキシブル基板30の個片に切り込みを入れることで形成される。フレキシブル基板30には、補強板32が接着剤等により貼り付けられる。フレキシブル基板30にチップヒューズ44及び金属片22をリフローで半田付けする。
【0049】
次に、チップヒューズ44を封止する封止部46を形成する。硬化する前の液状の絶縁性樹脂が、ディスペンサ等によって、フレキシブル基板30上のチップヒューズ44と導電路39との接続部分に滴下され、ドーム状に塗布される。塗布された絶縁性樹脂を公知の手法により硬化させる。絶縁性樹脂を硬化させる手法としては、冷却、硬化剤の混合、光照射等、任意の手法を適宜に選択できる。
【0050】
プロテクタ50のバスバー収容部51にバスバー21を収容する。バスバー21は係止部51Bによりバスバー収容部51内に保持される。次いで、プロテクタ50の基板保持部52に上記のフレキシブル基板30を配置する。固定孔31Aに突起部52Aを挿通し、補強部31C及び補強板32を係止爪52Bにより係止する。バスバー21の上面に金属片22の下面を当接させて、溶接を行う。
【0051】
電線23を電線配索部53に配索し、芯線23Aが露出した電線23の端部を電線挿通部53A内に挿通する。半田付けにより電線23の芯線23Aを第2ランド42に接続する。以上により、配線モジュール20の製造が完了する。
【0052】
なお、上記は配線モジュール20の製造方法の一例であって、各工程の順序を変更してもよい。例えば、フレキシブル基板30にチップヒューズ44等を半田付けする工程において電線23を半田付けしてもよい。また、バスバー21を電極端子12A,12Bに溶接した後で、バスバー21と金属片22との溶接を行ってもよい。
【0053】
[実施形態1の作用効果]
実施形態1によれば、以下の作用、効果を奏する。
実施形態1にかかる配線モジュール20は、複数の蓄電素子11に取り付けられる配線モジュール20であって、複数の蓄電素子11の電極端子12A,12Bに接続されるバスバー21と、フレキシブル基板30と、バスバー21とフレキシブル基板30とを接続する金属片22と、電線23と、を備え、フレキシブル基板30には、金属片22と接続される第1ランド41と、電線23と接続される第2ランド42と、第1ランド41と第2ランド42との間に設けられるヒューズ部43と、を有する導電路39が形成されており、フレキシブル基板30は、基板本体31と、基板本体31に対する金属片22の変位を許容しつつ、基板本体31と金属片22とを連結する連結部33と、を備える。
【0054】
このような構成によると、配線モジュール20にはフレキシブル基板30に加えて電線23が設けられるため、電線23が設けられない場合に比べて、フレキシブル基板30の使用量を低減することができる。よって、配線モジュール20の製造コストを削減することができる。
また、連結部33によって、基板本体31に対する金属片22の変位を許容することができる。よって、蓄電素子11が温度変化に伴って膨張または収縮した場合や、配線モジュール20に外力が加わりバスバー21が変形した場合でも、フレキシブル基板30が損傷しにくく、バスバー21とフレキシブル基板30との電気的な接続を維持することができる。
【0055】
実施形態1では、連結部33は、伸縮可能に構成されている。
【0056】
このような構成によると、連結部33が伸縮することにより、基板本体31に対する金属片22の変位をより一層許容しやすくなる。
【0057】
実施形態1では、連結部33は、基板本体31から延び、少なくとも1つの湾曲部35を備える線ばね状をなして構成されている。
【0058】
このような構成によると、簡易な構成で、基板本体31に対する金属片22の変位を許容することができる。
【0059】
実施形態1では、フレキシブル基板30は、基板本体31における第2ランド42が含まれる領域に貼り付けられる補強板32を備える。
【0060】
このような構成によると、補強板32により、基板本体31における第2ランド42と電線23との接続部分を補強することができる。
【0061】
実施形態1では、少なくとも1つのフレキシブル基板30には、導電路39が複数(2つ)形成されている。
【0062】
このような構成によると、配線モジュール20に用いるフレキシブル基板30の数を減らすことができるため、配線モジュール20の組み付けの作業性を向上できる。
【0063】
実施形態1では、ヒューズ部43は、導電路39に半田S1で接続されるチップヒューズ44で構成されている。
【0064】
このような構成によると、導電路39に過電流が流れた際に、チップヒューズ44が溶断することによって、導電路39を過電流から保護することができる。
【0065】
実施形態1にかかる配線モジュール20は、車両1に搭載される複数の蓄電素子11に電気的に取り付けられる車両用の配線モジュール20である。
【0066】
<実施形態2>
本開示の実施形態2について、
図7を参照しつつ説明する。実施形態2の構成は、フレキシブル基板130が含まれる点を除いて、実施形態1の構成と同一とされている。以下、実施形態1と同一の部材には実施形態1で用いた符号を付し、実施形態1と同一の構成、作用効果については説明を省略する。
【0067】
実施形態2にかかる配線モジュール120(蓄電モジュール110)は、フレキシブル基板130を備える。フレキシブル基板130には、導電路39が1つだけ形成されている。このようなフレキシブル基板130を用いると、例えば、フレキシブル基板130が配線モジュール120の左右方向の端部に配置される場合等に、余分な導電路39を廃止し、フレキシブル基板130を小型化できる場合がある。その他の作用効果については、実施形態1と同様であるため、省略する。
【0068】
<実施形態3>
本開示の実施形態3について、
図8を参照しつつ説明する。実施形態3の配線モジュール220(蓄電モジュール210)は、フレキシブル基板230のヒューズ部243を除いて、実施形態1と同様に構成されている。以下、実施形態1と同一の構成、作用効果については説明を省略し、フレキシブル基板230のヒューズ部243についてのみ説明する。
【0069】
図8に示すように、実施形態3にかかるフレキシブル基板230は、ヒューズ部243を備える。ヒューズ部243は、導電路239を細く形成することによって設けられるパターンヒューズ244で構成されている。パターンヒューズ244は細く形成されているため、過電流が流れた際に発熱して溶断するようになっており、導電路239に過電流が流れることを制限することができる。
【0070】
本実施形態では、通常のフレキシブル基板230の製造工程において、導電路239を形成する際にパターンヒューズ244(ヒューズ部243)を構成することができる。したがって、実施形態1におけるヒューズ部43を構成する工程、すなわちチップヒューズ44を導電路39の端部に接続する工程を省くことができる。
【0071】
[実施形態3の作用効果]
実施形態3によれば、以下の作用、効果を奏する。
実施形態3では、ヒューズ部243は、パターンヒューズ244で構成されている。
【0072】
このような構成によると、フレキシブル基板230の製造過程においてヒューズ部243を構成できる。
【0073】
<他の実施形態>
(1)上記実施形態では、連結部33は1つの湾曲部35を備えていたが、これに限られることはなく、連結部は2つ以上の湾曲部を備えてもよい。
(2)実施形態1では1つのフレキシブル基板30は2つの導電路39を備え、実施形態2では1つのフレキシブル基板130は1つの導電路39を備えていたが、これに限られることはなく、1つのフレキシブル基板は3つ以上の導電路を備えてもよい。
(3)実施形態1及び実施形態2では、チップヒューズ44と導電路39との接続部分は、封止部46に封止されている構成としたが、これに限られることはなく、チップヒューズが封止部で封止されていない構成としてもよい。
(4)上記実施形態では、配線モジュール20,120,220はプロテクタ50を備えていたが、これに限られることはなく、配線モジュールはプロテクタを備えなくてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1: 車両
2: 蓄電パック
3: PCU
4: ワイヤーハーネス
10,110,210: 蓄電モジュール
11: 蓄電素子
12A,12B: 電極端子
20,120,220: 配線モジュール
21: バスバー
22: 金属片
23: 電線
23A: 芯線
23B: 絶縁被覆
30,130,230: フレキシブル基板
31: 基板本体
31A: 固定孔
31B: 位置決め孔
31C: 補強部
32: 補強板
32A: 貫通孔
33: 連結部
34: 第1直線部
35: 湾曲部
36: 第2直線部
37: 接続端部
38: ベースフィルム
39,239: 導電路
39A: 第1ランド側の導電路
39B: 第2ランド側の導電路
40: カバーレイフィルム
41: 第1ランド
42: 第2ランド
43,243: ヒューズ部
44: チップヒューズ
45: 電極
46: 封止部
50: プロテクタ
51: バスバー収容部
51A: 接続孔
51B: 係止部
51C: 凹部
52: 基板保持部
52A: 突起部
52B: 係止爪
53: 電線配索部
53A: 電線挿通部
244: パターンヒューズ
S1: 半田