(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135967
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/16 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
A61B3/16 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041333
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】坂本 陽祐
(72)【発明者】
【氏名】古垣内 丈人
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA20
4C316AB16
4C316FA12
4C316FZ03
(57)【要約】
【課題】眼に気体を吹き付ける機構を有する眼科装置において、より簡素化および低コスト化を実現する。
【解決手段】被検眼に気体を吹き付ける気体を押し出すピストン103と、ピストン103を内側に収めたシリンダ101と、ピストン103をシリンダ101の奥の方向に押し込む力を発揮するコイルばね104と、コイルばね104のピストン103と反対の側に接触したばね固定壁106と、ばね固定壁106をピストン103の軸方向で移動させることが可能な台形ネジ107を用いた移動機構を備える眼科装置300。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼に吹き付ける気体を押し出すピストンと、
前記ピストンを内側に収めたシリンダと、
前記ピストンを前記シリンダの奥の方向に押し込む力を発揮するばねと、
前記ばねの前記ピストンと反対の側に接触したばね固定部材と、
前記ばね固定部材を前記ピストンの軸方向で移動させることが可能な移動機構と
を備える眼科装置。
【請求項2】
前記ピストンはピストン軸に固定され、
前記ピストン軸には、第1のストッパが固定され、
前記シリンダに対して固定された第2のストッパを備え、
前記第1のストッパが前記第2のストッパに接触することで、前記ピストンの前記シリンダに対する移動が制限される請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記第1のストッパと前記第2のストッパの位置関係により、前記ピストンの上死点が決められている請求項2に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記ピストンはピストン軸に固定され、
前記ピストン軸を軸方向に直線的に移動させる直動機構を備える請求項1~3のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記直動機構により前記ピストン軸を前記シリンダから離れる方向に動かすことで、前記ばねに反発力が蓄えられ、
前記直動機構による前記ピストンの束縛が開放されることで、前記ばねの前記反発力により前記ピストンが前記シリンダに押し込まれる請求項4に記載の眼科装置。
【請求項6】
前記直動機構は、
前記ピストン軸に設けられたラックと、
前記ラックに噛み合ったピ二オンと、
前記ピ二オンを回転させる駆動手段と
を有し、
前記ピ二オンは歯が設けられていない部分があり、
前記ピ二オンを回転させる過程において、前記歯が設けられていない部分で前記ピ二オンと前記ラックとの噛み合いが外れ、この噛み合いが外れることで、前記ばねの反発力が開放され、前記ばねにより前記ピストンが前記シリンダに押し込まれる請求項5に記載の眼科装置。
【請求項7】
前記移動機構と前記直動機構を駆動する一つのモータと、
前記モータの第1の回転方向の回転を伝達する第1のワンウェイクラッチと、
前記モータの前記第1の回転方向と逆方向の第2の回転方向の回転を伝達する第2のワンウェイクラッチと
を更に備え、
前記第1のワンウェイクラッチから伝達される前記第1の回転方向の回転により、前記移動機構が駆動され、
前記第2のワンウェイクラッチから伝達される前記第2の回転方向の回転により、前記直動機構が駆動される請求項5または6に記載の眼科装置。
【請求項8】
前記ピストンを前記シリンダにそれ以上押し込めない状態において、前記ばねによる付勢力が前記ピストンに作用しており、
該付勢力は、前記ばね固定部材の前記ピストンの軸方向における位置を可変することで調整され、
該調整により、前記被検眼に吹き付けられる前記気体の勢いが設定される請求項1~7のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項9】
前記移動機構は、ボールネジ機構、送りねじ機構、ラックピ二オン機構またはウォームホイール機構を利用している請求項1~8のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項10】
被検眼に照射された反射光を検出する手段を備え、
前記反射光の検出に基づき、前記ばね固定部材の前記ピストンの軸方向での移動が行われる請求項1~9のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項11】
被検眼に照射された反射光を検出する手段を備え、
前記反射光の検出に基づき、前記ピストンの動きが停止される請求項1~10のいずれか一項に記載の眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検眼に気体を吹きつけて被検眼の眼球を変形させ、その変形の程度を光学的に計測し、眼圧を測定する眼科装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この眼科装置では、気体を被検眼に吹き付ける機構が必要となる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6797048号
【特許文献2】特開2008-237516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
気体を被検眼に吹き付ける機構には、より簡素化および低コスト化が求められている。このような背景において、眼に気体を吹き付ける機構を有する眼科装置において、より簡素化および低コスト化を実現する技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、被検眼に吹き付ける気体を押し出すピストンと、前記ピストンを内側に収めたシリンダと、前記ピストンを前記シリンダの奥の方向に押し込む力を発揮するばねと、前記ばねの前記ピストンと反対の側に接触したばね固定部材と、前記ばね固定部材を前記ピストンの軸方向で移動させることが可能な移動機構とを備える眼科装置である。
【0006】
本発明において、前記ピストンはピストン軸に固定され、前記ピストン軸には、第1のストッパが固定され、前記シリンダに対して固定された第2のストッパを備え、前記第1のストッパが前記第2のストッパに接触することで、前記ピストンの前記シリンダに対する移動が制限される態様が挙げられる。
【0007】
本発明において、前記第1のストッパと前記第2のストッパの位置関係により、前記ピストンの上死点が決められている態様が挙げられる。本発明において、前記ピストンはピストン軸に固定され、前記ピストン軸を軸方向に直線的に移動させる直動機構を備える態様が挙げられる。
【0008】
本発明において、前記直動機構により前記ピストン軸を前記シリンダから離れる方向に動かすことで、前記ばねに反発力が蓄えられ、前記直動機構による前記ピストンの束縛が開放されることで、前記ばねの前記反発力により前記ピストンが前記シリンダに押し込まれる態様が挙げられる。
【0009】
本発明において、前記直動機構は、前記ピストン軸に設けられたラックと、前記ラックに噛み合ったピ二オンと、前記ピ二オンを回転させる駆動手段とを有し、前記ピ二オンは歯が設けられていない部分があり、前記ピ二オンを回転させる過程において、前記歯が設けられていない部分で前記ピ二オンと前記ラックとの噛み合いが外れ、この噛み合いが外れることで、前記ばねの反発力が開放され、前記ばねにより前記ピストンが前記シリンダに押し込まれる態様が挙げられる。
【0010】
本発明において、前記移動機構と前記直動機構を駆動する一つのモータと、前記モータの第1の回転方向の回転を伝達する第1のワンウェイクラッチと、前記モータの前記第1の回転方向と逆方向の第2の回転方向の回転を伝達する第2のワンウェイクラッチとを更に備え、前記第1のワンウェイクラッチから伝達される前記第1の回転方向の回転により、前記移動機構が駆動され、前記第2のワンウェイクラッチから伝達される前記第2の回転方向の回転により、前記直動機構が駆動される態様が挙げられる。
【0011】
本発明において、前記ピストンを前記シリンダにそれ以上押し込めない状態において、前記ばねによる付勢力が前記ピストンに作用しており、該付勢力は、前記ばね固定部材の前記ピストンの軸方向における位置を可変することで調整され、該調整により、前記被検眼に吹き付けられる前記気体の勢いが設定される態様が挙げられる。
【0012】
本発明において、前記移動機構は、ボールネジ機構、送りねじ機構、ラックピ二オン機構またはウォームホイール機構を利用している態様が挙げられる。本発明において、被検眼に照射された反射光を検出する手段を備え、前記反射光の検出に基づき、前記ばね固定部材の前記ピストンの軸方向での移動が行われる態様が挙げられる。本発明において、被検眼に照射された反射光を検出する手を備え、前記反射光の検出に基づき、前記ピストンの動きが停止される態様が挙げられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、眼に気体を吹き付ける機構を有する眼科装置において、より簡素化および低コスト化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.第1の実施形態
(構成)
図1には、眼科装置300が示されている。眼科装置300は、被検眼の眼圧を測定する。眼科装置300は、高圧空気を生成する駆動部100と、被検眼の眼圧の測定に必要な光学測定を行う測定部200を備える。測定部200による測定に基づき、計測部207において被検眼の眼圧の計測に係る処理が行なわれる。
【0016】
駆動部100は、シリンダ101を備える。シリンダ101は、図示しない眼科装置300の筐体に固定されている。シリンダ101は筒形状を有し、その一端(
図1の左端)には、空気の排出口102が設けられ、他端(
図1の右端)は開放されている。シリンダ101の開放されている側の端部からピストン103がシリンダ101の内側に摺動可能な状態で差し込まれている。
【0017】
ピストン103には、コイルばね104の一端が接触し、またピストン軸105が固定されている。ピストン軸105は、コイルばね104の内側に収まるように配置されている。ピストン軸105は、ピストン103と一体となってシリンダ101の軸方向で移動可能とされている。
【0018】
コイルばね104の他端は、ばね固定壁106に接触している。ばね固定壁106は、ピストン103の軸方向(移動方向)において、移動が可能で、またその位置を固定可能な半固定構造を有している。
【0019】
すなわち、ばね固定壁106は雌ネジ部を有し、この雌ネジ部に台形ネジ(ネジロッド)107が噛み合い、ボールネジ機構または送りねじ機構が構成されている。台形ネジ107は駆動モータ108により駆動されて回転する。駆動モータ108は、図示しない眼科装置300の筐体に固定されている。駆動モータ108を回転させると、台形ネジ107が回転し、ばね固定壁106がピストン軸105の軸方向に移動する。また、駆動モータ108の回転を止めると、送りねじ機構の原理により、ばね固定壁106の位置は固定される。
【0020】
符号115は、バネ固定壁106の初期位置を計測するセンサである。この例では、駆動モータ108はステッピングモータであり、その回転量からバネ固定壁106の初期位置からの変位量が計測され、それによりばね固定壁106の位置の計測が行われる。ばね固定壁106の位置の計測方法は上記の例に限定されず、リニア変位センサ等を用いて計測する方法が挙げられる。
【0021】
図1の状態、すなわちピストン103がシリンダ101の奥まで押し込まれた状態において、コイルばね104は、ある程度圧縮され、ピストン103をシリンダ101の奥の方向(空気の排出口102の方向)に付勢している。この圧縮の程度の設定は、ばね固定壁106の位置を調整することで制御が可能である。
【0022】
ピストン軸105には、ストッパ109が固定され、図示しない装置の筐体にストッパ110が固定されている。ストッパ110とストッパ109の接触により、シリンダ101がピストン103の奥の部分に接触する際の衝撃が緩和される。例えば、シリンダ101がピストン103内側の奥の部分(
図1の左端)に接触するぎりぎりの位置で、ストッパ109とストッパ110が接触するように、ストッパ109と110の位置関係を調整することで、上記の衝撃の発生を抑えることができる。また、例えばシリンダ101がピストン103内側の奥の部分(
図1の左端)に接触できないように、ストッパ109と110の位置関係を調整することで、上記の衝撃が発生しないようにすることができる。
【0023】
ストッパ109とストッパ110との接触がゴム等の弾性体を介して行われるようにしてもよい。こうすることで、ストッパ109とストッパ110の接触時における衝撃を緩和し、衝撃時の振動や音の発生を抑えることができる。
【0024】
ストッパ109とストッパ110により、シリンダ101にピストン103を押し込んだ際の両者の相対位置が制限される。また、ストッパ109とストッパ110により、ピストン103の上死点(ピストン103をシリンダ101にそれ以上押し込めない位置)が決まる。
【0025】
ピストン軸105には、ラック(歯竿)111が配置され、ラック111には、ピ二オン(歯車)112が噛み合っている。ピ二オン112は、歯が全周に形成されておらず、一部歯が無い部分がある。ピ二オン112は、駆動モータ113により駆動され回転する。ピ二オン112の回転角は、ホールIC116により検出される。
【0026】
この歯の無い部分の範囲を設定することで、ラック111をどこまで駆動するか、すなわちピストン103を図の右の方向にどこまで引っ張るかが設定される。
【0027】
例えば、ピ二オン112の回転に伴うラック111の移動に際して、ラック111とピ二オン112の噛み合いが相対的に長い距離で継続されるようにピ二オン112の歯の範囲を設定すると、ピストン103(ピストン軸105)がシリンダ101からより長く引き出される設定となる。
【0028】
また逆に、ピ二オン112の回転に伴うラック111の移動に際して、ラック111とピ二オン112の噛み合いが相対的に短い距離で継続されるようにピ二オン112の歯の範囲を設定すると、ピストン103(ピストン軸105)がシリンダ101から引き出される距離が短くなる。
【0029】
つまり、ピ二オン112の歯が形成された範囲を調整することで、ピストン103をどこまで引き出すか、言い換えるとコイルばね104をどこまで圧縮するかの設定を調整できる。
【0030】
測定部200は、チャンバー室201、圧力センサ202、ノズル203、光透過窓204、光学部205、光学フィルタ206を備える。チャンバー室201には、ピストン103により押し出された圧縮空気が送り込まれる。チャンバー室201内の圧力は圧力センサ202により計測される。駆動部100からチャンバー201内に送り込まれた圧縮空気は、ノズル203から被検眼に噴射される。
【0031】
光学部205は、被検眼に照射する測定光の発光素子とその光学系、被検眼から反射してきた測定光を受光する受光素子とその光学系を有する。光学部205から出射された測定光は、光学フィルタ206と光学窓204を透過して、被検眼に照射される。被検眼から反射された反射光は、上記測定光と逆の経路をたどり、光学部205に入射し、受光素子により検出される。
【0032】
ノズル203から噴射される空気の圧力により、被検眼の眼球が変形し、反射光量が変化する。具体的には、眼球が凸面⇒平面⇒凹面と変化し、反射光量が増加⇒極大値⇒減少と変化する。この光量の変化を受光素子で検出する。
【0033】
上記光量の検出値と眼圧の関係を基礎データとして予め標準眼球模型を用いて取得しておく。眼圧の測定では、上記光量の検出値と上記基礎データに基づき、被検眼の眼圧の値を算出する。この処理は、計測部207で行われる。眼圧の測定方法の詳細には、様々の方法があるが、特定の方法に限定されるものではない。
【0034】
(基本動作)
駆動モータ113によりピ二オン112を
図1の時計周り方向に回転させると、ラック111がシリンダ101から離れる方向(
図1の右方向)に駆動され、それと共にピストン103がばね固定壁106の方向に移動する。ピストン103がばね固定壁106の方向に移動することで、コイルばね104の圧縮が進み、コイルばね104の反発力が大きくなる。この状態が
図2に示されている。また、ピストン102がシリンダ101から引き出されることで空間120が形成される。
【0035】
ピ二オン112がある程度回転し、歯が無い部分に到達すると、ピ二オン112とラック111の噛み合いが外れ、ピ二オン112によるラック111(ピストン103)の束縛が解除される。この結果、コイルばね104の反発力により、ピストン102がシリンダ101の奥に向かって押され、
図2の空間120の空気がピストン102によりシリンダ101の奥に押し込まれ、空気の排出口102から空気が噴出する。このシリンダ101から噴出した空気がチャンバー室201に送り込まれ、最終的にノズル203から被検眼に向かって噴出される。
【0036】
より強い空気の噴射を行う場合、ばね固定壁106の位置をよりシリンダ101に近づける(
図3参照)。そうすると、ピストン103がシリンダに最大限押し込まれた状態において、コイルばね104がより圧縮される。そして、ピストン軸105をシリンダ101から引き出すと、
図2の場合よりも更に強い反発力がコイばね104に蓄えられる。これにより、より強い空気の噴射が可能となる。被検眼の眼圧に応じて、吹き付ける空気圧を調整する必要があるが、上記の構成によれば、ばね固定壁106の位置の可変により容易に対応できる。
【0037】
(特性)
図4には、本実施形態1、本実施形態2、従来例1、従来例2の特性が示されている。本実施形態1は、コイルばねの付勢力小(
図1参照)の設定であり、本実施形態2は、コイルばねの付勢力大(
図3参照)の設定である。本実施形態1と本実施形態2の特性は理論値である。従来例1と従来例2は、ロータリーソレノイドによりピストンを駆動した場合の特性である。
【0038】
コイルばねの反発力を用いた駆動では、ピストンの位置uは、ばね定数をk、ピストンとピストン軸の質量をm、ω=(k/m)として、u=umaxcos(ωt)により示される。ピストンの速度vは、v=-umaxωcos(ωt)、ピストンの角速度a=-umaxω2cos(ωt)となる。
【0039】
図4に示すように、本発明を利用したピストンの駆動は、従来のロータリーソレノイドを用いた駆動の場合よりもピストンの動きの立ち上がりが速く、応答性が良い。これは、電磁力による駆動よりも上記の数式で示されるコイルばねの反発力による駆動の方が原理的にピストンの動きの立ち上がりが速いからである。
【0040】
眼圧の測定は、測定装置の被検眼へのアライメント(位置合わせ)を行い、その後に被検眼に空気を吹き付け、その際の眼球の変形を光学的に計測することで行われる。ところで、眼球は微妙に動いており、また顔の位置や向きも厳密には一定ではない(例えば、呼吸や動悸により動くことがある)。したがって、アライメント後に時間をおかずに速やかに眼圧の測定に移行することが望まれる。
【0041】
ロータリーソレノイド等の電磁力を用いた駆動では、
図4に示すように、立ち上がりに時間を要し、それがアライメントのズレにつながり、測定精度に影響する可能性がある。本発明を用いた場合、応答性がよいので、この問題を軽減できる。
【0042】
(優位性)
本実施形態は、簡素な構造である。また簡素な構造で噴射する空気圧を可変できる。また、歯の形成位置を調整したピ二オンによりピストン軸を引く機構は、歯の噛み合いが外れたタイミングでばねによるピストンの駆動が生じるので、複雑な駆動制御を必要としない。
【0043】
2.第2の実施形態
図5には、ばね固定壁106をラックピ二オン機構で駆動する例が示されている。この例では、ばね固定壁106に長手形状の駆動部材117が固定され、駆動部材117には、ラック118が設けられ、ラック118にはピ二オンギア119が噛み合い、ピ二オンギア119はモータ121により駆動される。ピ二オンギア119の回転角は、ホール素子を用いたホールIC120により検出される。
【0044】
モータ121によりピ二オンギア119を回転させると、ピ二オンギア119によりラック118が駆動され、駆動部材117がピストン103の軸方向に動き、ばね固定壁106の位置が調整される。
【0045】
3.第3の実施形態
(構成)
図6には、一つのモータでピストンの駆動とばね固定壁の位置の調整を行う構成が示されている。この例では、ばね固定壁106に長手形状の駆動部材131が固定され、駆動部材131にラック132が設けられている。ラック132には、ピ二オンギア133が噛み合い、ピ二オンギア133の軸は、図の奥行き方向に延長し、その軸には、ホイールギア134が固定されている。ホイールギア134は、螺旋ネジ構造を有するウォーム135と噛み合い、ウォーム135の軸はワンウェイクラッチ136を介して、プーリー137とつながっている。
【0046】
プーリー137は駆動ベルト138によって駆動される。駆動ベルト138は、モータ130により駆動される駆動プーリー139により駆動される。また、駆動ベルト138は、プーリー141を駆動する。プーリー141の軸は、ワンウェイクラッチ142を介して、ウォーム143につながっている。ウォーム143は、ホイールギア144と噛み合い、ホイールギア144とピ二オンギア145は同軸で、ホイールギア144が回転すると、ピ二オンギア145も回転する。ピ二オンギア145は、ピストン軸105に配置されたラック146に噛み合っている。
【0047】
(ばね固定壁の位置の調整)
以下、動作を説明する。ここでは、モータ130の回転を図面の右方向から見た場合で考える。また、ワンウェイクラッチ136は右回転のみを伝え、ワンウェイクラッチ142は左回転のみを伝えるとする。この回転方向の右左は、図の右の方向から見た場合で考える。
【0048】
モータ130を右回転させると、ワンウェイクラッチ136からウォーム135に右回転が伝わり、ウォーム135が右回転する。すると、ウォーム135に噛み合ったホイールギア133が右回転し、同時にピ二オンギア133も右回転する。なお、ワンウェイクラッチ142は右回転を伝えないので、この場合、プーリー141は右回転するがウォーム143に駆動力は伝わらない。
【0049】
この結果、ラック132が左に駆動され、駆動部材131がシリンダ101の方向に移動する。これにより、ばね固定壁106がシリンダ101の方向に動き、コイルばね104が圧縮される。ピ二オンギア133は一部歯が形成されていない部分があり、ピ二オンギア133がある程度右回転すると、ピ二オンギア133とラック132との噛み合いが外れ、コイルばね104の反発力によってばね固定壁106がストッパ110の部分に戻る。
【0050】
ピ二オンギア133の回転を途中で止めても、ウォーム135とホイールギア134の噛み合いにより、ばね固定壁106の位置は固定される。このように、モータ130の右回転により、ばね固定壁106の位置の調整ができる。
【0051】
(ピストンの駆動)
モータ130を左回転させると、プーリー141が左回転する。この際、ワンウェイクラッチ136は左回転を伝えないので、プーリー137も左回転するが、ウォーム135に駆動力は伝わらない。
【0052】
プーリー141が左回転すると、ワンウェイクラッチ142を介してウォーム143に回転力が伝わり、ウォーム143が左回転する。ウォーム143が左回転すると、ホイールギア144が右回転し、同時にピ二オンギア145が右回転する。
【0053】
ピ二オンギア145が右回転すると、ラック146が右の方向(シリンダ101から離れる方向)に移動し、ピストン軸105がシリンダ101から離れる方向に動き、ピストン103がシリンダ101から引き抜かれる方向に移動する。これにより、コイルばね104が圧縮される。
【0054】
ピ二オンギア145は一部歯が形成されていない部分があり、ピ二オンギア145がある程度右回転すると、ピ二オンギア145とラック146との噛み合いが外れ、圧縮されたコイルばね104の反発力によってピストン103がシリンダ101の奥の方向に押し込まれる。これにより、空気の排出口102から空気が噴出す。こうして、モータ130の左回転により、空気の噴射が行われる。
【0055】
(優位性)
一つの駆動手段(モータ130)により、ばね固定壁の位置の調整による噴出する気体の勢いの調整と、噴出の動作のためのピストンの駆動とを行うことができる。モータの数が減るので、駆動機構の簡素化、全体構造の小型化、そして省電力化を達成できる。
【0056】
4.第4の実施形態
コイルばね104のばね定数が変化すると、被検眼に吹き付ける空気圧が変化する。例えば、ばねの力が弱くなった場合、被検眼に吹き付ける空気圧が低下する。この場合、ばね固定壁106をシリンダ101側に移動させ、コイルばね101をより圧縮させると、低下した噴射空気圧を回復できる。
【0057】
例えば、定期的に標準眼球模型を用いた校正を行う。この際、得られる計測値が標準値となるようにばね固定壁106の位置を調整する制御が行われる。例えば、
図1の場合、計測値が標準値となるように、モータ108によりばね固定壁106の位置の調整が行われる。これにより、眼圧測定値の精度と信頼性を維持できる。
【0058】
5.第5の実施形態
測定光の被検眼からの反射が予め定めた強度となった段階でそれ以上の高圧空気の吹き付けを停止することが望まれる。これは、被検眼への不要な負担を避けるためである。
【0059】
以下、この目的を達成する方法について説明する。例えば、シリンダ102に制御弁を設け、この制御弁の開閉を反射光の検出信号に基づいて行う。この場合、予め定めた反射光の検出レベルが得られた段階で上記制御弁を開放する。これにより、チャンバー室201内の圧力が低下し、被検眼への無用な高圧空気の噴射を停止できる。
【0060】
ピストン103の動きを途中で停止させることで、被検眼への空気の噴射を停止させる形態も可能である。例えば、予め定めた反射光の検出レベルが得られた段階でピストン軸105の移動にブレーキをかけて停止させる。具体的には、摩擦ブレーキ手段を利用して移動するピストン軸105を停止させる方法、ギアを噛み合わせることで移動するピストン軸105を停止させる方法、ストッパ109の移動経路上に障害物を挿入し、その移動を制限あるいは静止させる方法等が挙げられる。
【0061】
6.その他の実施形態
気体として、空気以外の気体を用いることもできる。また、ボンベに充填された気体を利用することもできる。ピストンに逆止弁を設け、ピストンをシリンダから引き出す際に上記逆止弁から空気がシリンダ内に供給されるようにしてもよい。
【0062】
ピストン軸105を動かすための機構は、例示したものに限定されず電磁ソレノイドや各種のリニアアクチュエータを利用できる。また手動でピストン軸105を引く形態も可能である。例えば、手動でピストン軸105をシリンダ101から引き出し、その状態を鉤(フック)等により固定し、鉤を外すことでコイルばね104の反発力により、ピストン軸105をシリンダ101内に突入させる形態も可能である。
【0063】
手動でばね固定壁106の位置を調整する構造も可能である。例えば、
図1の構造において、台形ネジ107を手動で回転可能とする構造が可能である。