(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135993
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】放電ランプ用点灯装置、および車両用照射装置
(51)【国際特許分類】
H05B 41/24 20060101AFI20230922BHJP
H05B 47/28 20200101ALI20230922BHJP
B60Q 3/30 20170101ALI20230922BHJP
B60Q 3/80 20170101ALI20230922BHJP
【FI】
H05B41/24
H05B47/28
B60Q3/30
B60Q3/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041374
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】石川 達章
(72)【発明者】
【氏名】長野 信久
【テーマコード(参考)】
3K040
3K072
3K273
【Fターム(参考)】
3K040AA02
3K040AA04
3K040CA06
3K040FA09
3K040JA04
3K040JB00
3K072AA12
3K072AA13
3K072AC11
3K072CB06
3K072DD04
3K072EB04
3K072GB11
3K273AA02
3K273BA34
3K273CA05
3K273DA08
3K273EA17
3K273EA24
3K273EA36
3K273FA14
3K273FA22
3K273GA06
3K273GA13
3K273HA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】環境温度の変化が大きい場合であっても、共振外れの状態となるのを抑制することができる放電ランプ用点灯装置、および車両用照射装置を提供する。
【解決手段】放電ランプ用点灯装置は放電ランプに所定の動作周波数の駆動電圧を印加する。放電ランプ用点灯装置は、スイッチング素子を有し、直流電圧を動作周波数の交流電圧に変換するスイッチング出力回路と、一次側巻線が、共振用コンデンサを介してスイッチング出力回路と電気的に接続され、二次側巻線が、放電ランプと電気的に接続されたトランスとスイッチング出力回路と電気的に接続され、スイッチング素子の駆動信号を生成する制御回路と、制御回路と電気的に接続され、抵抗と、抵抗と直列接続された感温素子とを有する動作周波数設定回路と、を具備している。感温素子は、温度が上昇すると抵抗値が小さくなる。制御回路は、抵抗と前記感温素子の合成抵抗の値に基づいて、動作周波数を設定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電ランプに、所定の動作周波数の駆動電圧を印加する点灯装置であって、
スイッチング素子を有し、直流電圧を前記動作周波数の交流電圧に変換するスイッチング出力回路と;
一次側巻線が、共振用コンデンサを介して前記スイッチング出力回路と電気的に接続され、二次側巻線が、前記放電ランプと電気的に接続されたトランスと;
前記スイッチング出力回路と電気的に接続され、前記スイッチング素子の駆動信号を生成する制御回路と;
前記制御回路と電気的に接続され、抵抗と、前記抵抗と直列接続された感温素子とを有する動作周波数設定回路と;
を具備し、
前記感温素子は、温度が上昇すると抵抗値が小さくなり、
前記制御回路は、前記抵抗と前記感温素子の合成抵抗の値に基づいて、前記動作周波数を設定する放電ランプ用点灯装置。
【請求項2】
前記動作周波数設定回路は、前記感温素子と並列接続され、クランプ電圧を前記制御回路に印加するクランプ素子をさらに有する請求項1記載の放電ランプ用点灯装置。
【請求項3】
前記クランプ素子は、ダイオード、またはツェナーダイオードである請求項2記載の放電ランプ用点灯装置。
【請求項4】
前記感温素子は、負特性サーミスタである請求項1~3のいずれか1つに記載の放電ランプ用点灯装置。
【請求項5】
放電ランプと;
前記放電ランプと電気的に接続された、請求項1~4のいずれか1つに記載の放電ランプ用点灯装置と;
を具備した車両用照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、放電ランプ用点灯装置、および車両用照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放電ランプを点灯させる点灯装置がある。例えば、放電ランプを点灯させる点灯装置として、スイッチング素子、共振用コンデンサ、トランスなどを有するLLC共振回路を備えた点灯装置が提案されている。LLC共振回路の出力電圧は動作周波数の値により変動するので、動作周波数の値が予め設定されている。
【0003】
ところが、LLC共振回路に用いられるトランスには、温度特性がある。例えば、環境温度が高い場合には、トランスのインダクタンス値が小さくなるので、共振周波数の値が大きくなる。一方、環境温度が低い場合には、トランスのインダクタンス値が大きくなるので、共振周波数の値が小さくなる。
【0004】
そのため、例えば、環境温度が高くなると、設定した動作周波数の値が共振周波数の値よりも小さくなる場合がある。設定した動作周波数の値が共振周波数の値よりも小さくなると、いわゆる共振外れの状態となり、放電ランプの始動ができず不点灯となる。
ここで、点灯装置が車両用照射装置に用いられる場合がある。自動車などに設けられる車両用照射装置は、例えば、-40℃~85℃の環境においても正常に動作することが求められる。そのため、点灯装置が車両用照射装置に用いられる場合には、共振外れの状態になり易くなるので、放電ランプの始動ができず不点灯となりやすくなる。
【0005】
そこで、環境温度の変化が大きい場合であっても、共振外れの状態となるのを抑制することができる技術の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、環境温度の変化が大きい場合であっても、共振外れの状態となるのを抑制することができる放電ランプ用点灯装置、および車両用照射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る放電ランプ用点灯装置は、放電ランプに、所定の動作周波数の駆動電圧を印加する。前記放電ランプ用点灯装置は、スイッチング素子を有し、直流電圧を前記動作周波数の交流電圧に変換するスイッチング出力回路と;一次側巻線が、共振用コンデンサを介して前記スイッチング出力回路と電気的に接続され、二次側巻線が、前記放電ランプと電気的に接続されたトランスと;前記スイッチング出力回路と電気的に接続され、前記スイッチング素子の駆動信号を生成する制御回路と;前記制御回路と電気的に接続され、抵抗と、前記抵抗と直列接続された感温素子とを有する動作周波数設定回路と;を具備している。前記感温素子は、温度が上昇すると抵抗値が小さくなる。前記制御回路は、前記抵抗と前記感温素子の合成抵抗の値に基づいて、前記動作周波数を設定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、環境温度の変化が大きい場合であっても、共振外れの状態となるのを抑制することができる放電ランプ用点灯装置、および車両用照射装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施の形態に係る車両用照射装置を例示するための模式斜視図である。
【
図2】
図1における車両用照射装置のA-A線方向の模式断面図である。
【
図4】周波数の値と昇降圧比との関係を例示するためのグラフである。
【
図5】環境温度と共振周波数の値との関係を例示するためのグラフである。
【
図6】動作周波数の値の設定を例示するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
本実施の形態に係る放電ランプ用点灯装置は、温度変化が大きい環境に設けられる照明装置や照射装置などに用いることができる。例えば、本実施の形態に係る放電ランプ用点灯装置は、自動車や鉄道などの車両に設けられる車両用照射装置に好適に用いることができる。
そのため、以下においては、一例として、放電ランプ用点灯装置が車両用照射装置に用いられる場合を説明する。
【0012】
車両用照射装置は、例えば、自動車の車室内やトランクルームなどに設けたり、鉄道車両の車室内などに設けたりすることができる。ただし、車両用照射装置の設置場所は、例示をしたものに限定されるわけではない。
【0013】
図1は、本実施の形態に係る車両用照射装置100を例示するための模式斜視図である。
図2は、
図1における車両用照射装置100のA-A線方向の模式断面図である。
図1および
図2に示すように、車両用照射装置100には、例えば、点灯装置1、筐体2、基板3、放電ランプ4、ランプカバー5、配線6、窓7、およびシールド8が設けられている。
【0014】
まず、本実施の形態に係る点灯装置1について例示する。
図2に示すように、例えば、点灯装置1は、筐体2の内部に設けることができる。点灯装置1は、例えば、基板3の、放電ランプ4が設けられる側の面に設けられている。放電ランプ4と点灯装置1が基板3の同じ側の面に設けられていれば、筐体2の厚み寸法Tを小さくするのが容易となる。点灯装置1は、例えば、配線コードや金属板などの配線部材を用いて、放電ランプ4が装着される一対の端子ホルダ41と電気的に接続されている。そのため、放電ランプ4を一対の端子ホルダ41に装着することで、点灯装置1と放電ランプ4とを電気的に接続することができる。
【0015】
点灯装置1は、放電ランプ4に、所定の周波数の駆動電圧を印加する。また、点灯装置1は、放電ランプ4に印加する駆動電圧の周波数(動作周波数)の値を制御する。放電ランプ4に駆動電圧が印加されると、例えば、放電ランプ4に設けられた一対の電極間に放電が生じて、放電ランプ4から紫外線などの光が放射される。
【0016】
図3は、点灯装置1を例示するための回路図である。
図3に示すように、点灯装置1は、例えば、スイッチング出力回路11、トランス12、共振用コンデンサ13、制御回路14、および動作周波数設定回路15を有する。
【0017】
スイッチング出力回路11は、共振用コンデンサ13を介して、トランス12の一次側巻線と電気的に接続されている。スイッチング出力回路11は、直流電圧を所定の周波数の交流電圧に変換する。例えば、スイッチング出力回路11は、直流電源200からの直流電圧を所定の周波数の交流電圧、例えば、擬似的な正弦波電圧に変換する。直流電源200は、例えば、電池や、自動車などの車両に搭載されたバッテリ-などである。
【0018】
図3に例示をしたスイッチング出力回路11は、ハーフブリッジ回路である。ハーフブリッジ回路であるスイッチング出力回路11は、例えば、スイッチング素子11a、およびスイッチング素子11bを有する。
【0019】
スイッチング素子11a、11bは、例えば、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)である。スイッチング素子11a、11bが、電圧駆動形素子であるMOSFETであれば、回路の電力ロスを小さくすることができる。また、スイッチング素子11a、11bが、MOSFETであれば、スイッチングの高速化や、スイッチングロスの低減を図ることができる。
なお、スイッチング出力回路11がハーフブリッジ回路である場合を例示したが、スイッチング出力回路11は、例えば、フルブリッジ回路などであってもよい。
【0020】
トランス12の一次側巻線は、共振用コンデンサ13を介してスイッチング出力回路11と電気的に接続されている。トランス12の二次側巻線は、放電ランプ4に設けられた一対の電極と電気的に接続されている。
【0021】
LLC共振回路を用いているため、回路効率を向上させることができるので、回路部品の発熱量を低減させたり、点灯装置1を小さくしたりすることができる。点灯装置1が小さくなれば、点灯装置1が設けられる車両用照射装置100の小型化を図ることができる。車両用照射装置100は、車室内などの狭いスペースに設けられる場合が多い。そのため、点灯装置1の小型化を図ることができれば、車両用照射装置100の設置が容易となる。
【0022】
制御回路14は、スイッチング出力回路11と電気的に接続されている。
制御回路14は、動作周波数設定回路15の抵抗値(抵抗15aと感温素子15bの合成抵抗の値)に基づいて、動作周波数の値を設定する。
【0023】
制御回路14は、動作周波数設定回路15の抵抗値の減少量に応じて動作周波数の値を高くし、動作周波数設定回路15の抵抗値の増加量に応じて動作周波数の値を低くする。動作周波数設定回路15の抵抗値と、動作周波数の設定値との関係は、予め実験やシミュレーションを行うことで求めることができる。
なお、動作周波数設定回路15の抵抗値(抵抗15aと感温素子15bの合成抵抗の値)に関する詳細は後述する。
【0024】
制御回路14は、生成された信号に基づいて、スイッチング素子11aのゲート電極への電圧の印加と、スイッチング素子11bのゲート電極への電圧の印加と、を交互に切り替えて、直流電源200からの直流電圧を所定の動作周波数の交流電圧に変換する。例えば、動作周波数は、100kHz~300kHz程度である。
【0025】
また、スイッチング出力回路11、トランス12、および共振用コンデンサ13を有するLLC共振回路を、制御回路14により間欠動作させれば、放電ランプ4に印加される駆動電圧の波高値を維持することができるので、安定した調光ができる。
【0026】
ここで、LLC共振回路は、動作周波数の値により昇降圧比、ひいては出力電圧が変動する。
図4は、周波数の値と昇降圧比との関係を例示するためのグラフである。
図4から分かるように、動作周波数の設定値が共振周波数の値よりも大きくなるほど、昇降圧比が低下する。動作周波数の設定値が共振周波数の値よりも小さければ、動作周波数の設定値が共振周波数の値よりも大きい場合に比べて昇降圧比が高くなる。動作周波数の設定値が共振周波数の値よりも小さくなる領域は、いわゆる共振外れの領域となる。共振外れの領域においては、放電ランプ4の始動ができないため、放電ランプ4が不点灯となる。
そのため、一般的なLLC共振回路の場合には、共振周波数の値よりも大きい値の動作周波数が予め設定される。
【0027】
ところが、LLC共振回路に用いられるトランス12には、温度特性がある。そのため、環境温度の変化によって、共振周波数の値が変化する。
図5は、環境温度と共振周波数の値との関係を例示するためのグラフである。
環境温度が高くなると、トランス12のインダクタンス値Lが小さくなるので、
図5に示すように、共振周波数の値(1/(2π√(L×C)))が大きくなる。一方、環境温度が低くなると、トランス12のインダクタンス値Lが大きくなるので、共振周波数の値が小さくなる。
【0028】
そのため、例えば、環境温度が25℃の場合の共振周波数の値に基づいて動作周波数の値を設定すると、環境温度が85℃となった際に、設定された動作周波数の値が、85℃の場合の共振周波数の値よりも小さくなる場合がある。前述した様に、設定した動作周波数の値が共振周波数の値よりも小さくなると、いわゆる共振外れの状態となり、放電ランプ4の始動ができず不点灯となる。
【0029】
この場合、最も高い環境温度の場合の共振周波数の値に基づいて動作周波数の値を設定すると、環境温度が変化したとしても、共振外れの状態となるのを抑制することができる。しかしながら、この様にすると、昇降圧比、ひいては出力電圧が小さくなりすぎて、放電ランプ4が不点灯となる。
【0030】
そこで、本実施の形態に係る点灯装置1には、動作周波数設定回路15が設けられている。
図3に示すように、動作周波数設定回路15は、制御回路14と電気的に接続されている。動作周波数設定回路15は、制御回路14の端子と、グランドとの間に電気的に接続されている。
動作周波数設定回路15は、例えば、抵抗15a、感温素子15b、およびクランプ素子15cを有する。
【0031】
感温素子15bは、抵抗15aと直列接続されている。感温素子15bは、温度が上昇すると抵抗値が小さくなる素子である。感温素子15bは、例えば、負特性サーミスタ(NTCサーミスタ;Negative Temperature Coefficient Thermistor)などである。
【0032】
前述した様に、制御回路14は、動作周波数設定回路15の抵抗値に基づいて、動作周波数の値を設定する。
図6は、動作周波数の値の設定を例示するためのグラフである。
図6に示すように、所定の環境温度(例えば、25℃)において、抵抗15aと感温素子15bの合成抵抗の値を調整することで、動作周波数の値が、共振周波数の値よりも大きくなるようにする。
【0033】
この場合、環境温度が変わらなければ感温素子15bの抵抗値は変化しないので、抵抗15aの抵抗値を調整することで所望の合成抵抗の値、ひいては所望の動作周波数の値となるようにする。例えば、所定の環境温度における感温素子15bの抵抗値に応じて、適切な抵抗値を有する抵抗15aを選択したり、可変抵抗である抵抗15aの抵抗値を調整したりする。なお、複数の抵抗15aを設けて、抵抗値の調整を容易としたり、調整精度を高めたりすることもできる。
【0034】
次に、抵抗15a、および感温素子15bの作用について説明する。
環境温度が、共振周波数の値を設定した際の環境温度よりも高くなった場合(例えば、85℃になった場合)、抵抗15aの抵抗値はほとんど変化しないが、感温素子15bの抵抗値は小さくなる。そのため、抵抗15aと感温素子15bの合成抵抗の値が小さくなる。合成抵抗の値が小さくなれば、制御回路14の端子電圧が低下する。前述した様に、制御回路14は、抵抗15aと感温素子15bの合成抵抗の値の減少量に応じて動作周波数の値を大きくする。動作周波数の値が大きくなれば、環境温度の上昇に伴い共振周波数の値が大きくなったとしても、共振外れの状態となるのを抑制することができる。
【0035】
環境温度が、共振周波数の値を設定した際の環境温度よりも低くなった場合、抵抗15aの抵抗値はほとんど変化しないが、感温素子15bの抵抗値は大きくなる。そのため、抵抗15aと感温素子15bの合成抵抗の値が大きくなる。合成抵抗の値が大きくなれば、制御回路14の端子電圧が増加する。前述した様に、制御回路14は、抵抗15aと感温素子15bの合成抵抗の値の増加量に応じて動作周波数の値を小さくする。動作周波数の値が小さくなれば、環境温度の低下に伴い共振周波数の値が小さくなったとしても、共振周波数の値と、動作周波数の値との差が大きくなるのを抑制することができる。そのため、所望の出力電圧維持が可能となる。
【0036】
ここで、感温素子15bが負特性サーミスタである場合には、温度に対する抵抗値の変化は一次関数的とはならない。そのため、低温時に、感温素子15bの抵抗値が急激に大きくなる。合成抵抗の値が急激に大きくなると、設定された動作周波数の値が共振外れの領域に入る場合がある。
【0037】
そこで、動作周波数設定回路15にはクランプ素子15cが設けられている。
図3に示すように、クランプ素子15cは感温素子15bと並列接続されている。クランプ素子15cは、クランプ電圧を制御回路14の端子に印加する。クランプ素子15cは、例えば、ダイオードである。クランプ素子15cがダイオードである場合には、アノードを、抵抗15aと感温素子15bの間に電気的に接続し、カソードをグランドに電気的に接続する。この様にすれば、ダイオードの順方向電圧Vfを制御回路14の端子に印加することができる。この場合、順方向電圧Vfがクランプ電圧となる。そのため、低温時に、合成抵抗の値が急激に大きくなったとしても、制御回路14の端子電圧をクランプすることができる。その結果、設定された動作周波数の値が共振外れの領域に入るのを抑制することができる。
【0038】
クランプ電圧は、負特性サーミスタの温度特性に応じて適宜決定することができる。例えば、負特性サーミスタの温度特性に応じて、適切な順方向電圧Vfを有するダイオードを選択すれば良い。
【0039】
この場合、複数のダイオードを、直列接続、並列接続、直並列接続するなどして、クランプ電圧(順方向電圧Vf)を調整することもできる。
また、クランプ電圧が、例えば、2V以上であれば、ダイオードの代わりにツェナーダイオードを用いることもできる。
【0040】
なお、環境温度の下限温度が高い場合などにおいては、クランプ素子15cを省くこともできる。ただし、クランプ素子15cが設けられていれば、対応可能な環境温度の範囲を大きくすることができる。すなわち、点灯装置1の汎用性を高めることができる。
【0041】
次に、
図1および
図2に戻って、車両用照射装置100に設けられた筐体2、基板3、放電ランプ4、ランプカバー5、配線6、窓7、およびシールド8について例示する。
図1および
図2に示すように、筐体2は、箱状を呈し、内部に、基板3、放電ランプ4、ランプカバー5、および点灯装置1を収納する空間を有する。なお、点灯装置1は、筐体2の外部に設けることもできる。ただし、点灯装置1が筐体2の内部に設けられていれば、車両用照射装置100の設置作業や取り扱いが容易となる。
【0042】
筐体2の厚み寸法Tは、筐体2の平面寸法よりも小さくすることができる。車両用照射装置100は、車室内などの狭いスペースに、車両の運行などに用いられる電子機器と一緒に設けられる場合がある。そのため、筐体2の厚み寸法Tを小さくすることができれば、車両用照射装置100の設置が容易となる。
【0043】
また、筐体2は、筐体2の厚み方向において、第1の部分21と第2の部分22とに分割されている。第1の部分21は、例えば、基板3、放電ランプ4、ランプカバー5、および点灯装置1が取り付けられるベースとすることができる。第2の部分22は、例えば、第1の部分21の開口側を覆うカバーとすることができる。第2の部分22には、紫外線や光を出射させるための孔22aを設けることができる。孔22aは、放電ランプ4と対向する位置に設けることができる。
【0044】
第2の部分22は、第1の部分21に着脱可能に設けることができる。例えば、第1の部分21と第2の部分22は、開口部分同士を嵌め合わせることで発生させた弾性力により、着脱可能に接続されている。
【0045】
第1の部分21と第2の部分22は、例えば、絶縁性を有する樹脂から形成することができる。この場合、第2の部分22の材料は、第1の部分21の材料と同じであってもよいし、異なっていてもよい。第1の部分21と第2の部分22が絶縁性を有していれば、第1の部分21および第2の部分22の内壁と、放電ランプ4および点灯装置1などとの間の距離を短くすることができる。そのため、筐体2の薄型化が容易となる。
【0046】
基板3は、板状を呈している。基板3は、例えば、スペーサ31などを介して、第1の部分21に設けることができる。なお、スペーサ31に代えて、第1の部分21に設けられた凸部に基板3を設けてもよい。
【0047】
放電ランプ4は、基板3と第2の部分22との間に位置している。放電ランプ4は、第2の部分22の孔22aに対向する位置に設けることができる。放電ランプ4は、一対の端子ホルダ41に着脱可能に設けることができる。一対の端子ホルダ41は、例えば、基板3に設けることができる。なお、
図2および
図3においては、1つの放電ランプ4が設けられる場合を例示したが、複数の放電ランプ4が設けられるようにしてもよい。放電ランプ4は、少なくとも1つ設けられていればよい。
【0048】
放電ランプ4は、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、誘電体バリア放電ランプなどとすることができる。ただし、放電ランプ4は、例示をしたものに限定されるわけではなく、紫外線や光(例えば、可視光)を照射可能なものであればよい。
【0049】
ランプカバー5は、基板3と第2の部分22との間に位置している。ランプカバー5は、例えば、基板3に設けることができる。ランプカバー5は、箱状を呈し、基板3側とは反対側の端部が開口している。ランプカバー5の開口5aは、第2の部分22の孔22aに対向している。ランプカバー5の内部には、放電ランプ4と一対の端子ホルダ41を設けることができる。例えば、ランプカバー5は、絶縁性を有する樹脂から形成することができる。ランプカバー5の材料は、例えば、筐体2の材料と同じとすることができる。ただし、ランプカバー5は、放電ランプ4から照射された紫外線に曝されるので、筐体2の材料よりも紫外線に対する耐性の高い材料を用いることが好ましい。
【0050】
ランプカバー5が設けられていれば、放電ランプ4から照射された紫外線や光が、筐体2の内壁、基板3、および点灯装置1に入射するのを抑制することができる。そのため、これらが紫外線などにより劣化するのを抑制することができる。
【0051】
また、ランプカバー5にリフレクタの機能を持たせることもできる。例えば、ランプカバー5を白色などの樹脂から形成したり、ランプカバー5の内壁に反射膜を形成したり、ランプカバー5の内壁を曲面としたりすることができる。ランプカバー5にリフレクタの機能を持たせれば、放電ランプ4から照射された紫外線や光の利用効率を向上させることができる。
【0052】
配線6の一端は、筐体2の内部において、点灯装置1と電気的に接続されている。配線6の他端は、筐体2の外部に引き出され、例えば、直流電源200と電気的に接続される。
【0053】
窓7は、筐体2(第2の部分22)の孔22aが設けられた部分に設けられている。例えば、窓7は、第2の部分22の内壁に設けられ、孔22aを覆っている。窓7は、放電ランプ4から照射された紫外線や光を透過させる。窓7は、例えば、複数の開口を有する。窓7は、例えば、複数の線材を編み込んで形成されたもの、エッチング加工やプレス加工などにより複数の開口を形成したものなどとすることができる。
【0054】
ここで、放電ランプ4を点灯させた際に、放電ランプ4の電極間において放電が生じると、紫外線や光とともに、電磁波が放射される場合がある。また、放電ランプ4を点灯させた際に、点灯装置1に設けられたスイッチング素子11a、11bやスイッチング素子11a、11bに電気的に接続された配線などから電磁波が放射される場合がある。
【0055】
前述した様に、車両用照射装置100は、車室内などの狭いスペースに、車両の運行などに用いられる電子機器と一緒に設けられる場合がある。この様な場合には、車両用照射装置100と電子機器との間の距離が短くなり易い。そのため、筐体2の内部に設けられた放電ランプ4や点灯装置1などにおいて発生した電磁波が、筐体2の外部に放射されると、車両用照射装置100の近傍に設けられた電子機器に電磁波が入射する場合がある。電磁波が電子機器に入射すると、電磁波ノイズとなって電子機器の誤動作などが生じるおそれがある。
そこで、本実施の形態に係る車両用照射装置100には、シールド8が設けられている。
【0056】
シールド8は、筐体2の内部において発生した電磁波が、筐体2の外部に放射されるのを抑制する。シールド8は、導電性を有し、例えば、筐体2の外壁に設けることができる。シールド8は、例えば、アルミニウムなどの金属から形成することができる。導電性を有するシールド8とすれば、シールド8における反射損失を大きくすることができるので、筐体2の内部において発生した電磁波が、筐体2の外部に放射されるのを効果的に抑制することができる。
【0057】
この場合、第1の部分21の外壁にシールド8aを設け、第2の部分22の外壁にシールド8bを設けることができる。そして、第1の部分21と第2の部分22との接続部分2aにおいて、第1の部分21の外壁に設けられたシールド8aと、第2の部分22の外壁に設けられたシールド8bとが、接触する様にすることができる。例えば、第1の部分21の開口側の端部にもシールド8aを設け、第2の部分22の開口側の端部にもシールド8bを設けることができる。
【0058】
この様にすれば、シールド8aとシールド8bとを電気的に接続することができる。そのため、シールド8aとシールド8bとを、車両のグランドに電気的に接続することができるので、シールド効果が低減するのを抑制することができる。
【0059】
ここで、前述した様に、窓7には放電ランプ4から照射された紫外線や光を透過させる複数の開口が設けられている。そのため、窓7に設けられた複数の開口を介して、電磁波が筐体2の外部に放射されるおそれがある。この場合、窓7の外面にシールド8を設けると、紫外線や光が筐体2の外部に照射されなくなる。
【0060】
そこで、窓7は、導電性を有するものとしている。窓7は、例えば、アルミニウムなどの金属から形成することができる。
【0061】
窓7が導電性を有していれば、前述したシールド8の場合と同様に、窓7における反射損失を大きくすることができるので、電磁波が窓7を介して筐体2の外部に放射されるのを抑制することができる。また、窓7が金属から形成されていれば、放電ランプ4から照射された紫外線などに対する耐性を高めることもできる。
【0062】
また、窓7が、車両のグランドに電気的に接続されていないと、窓7のシールド効果が低減するおそれがある。そのため、窓7は、筐体2に設けられたシールド8と電気的に接続することができる。
【0063】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 点灯装置、2 筐体、4 放電ランプ、11 スイッチング出力回路、11a スイッチング素子、11b スイッチング素子、12 トランス、13 共振用コンデンサ、14 制御回路、15 動作周波数設定回路、15a 抵抗、15b 感温素子、15c クランプ素子、100 車両用照射装置、200 直流電源