(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135997
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】化粧シート、化粧タックシート、化粧板、及び化粧シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20230922BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230922BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
B32B27/32 Z
B32B27/00 E
B32B27/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041379
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】佐野 麻美子
(72)【発明者】
【氏名】戸賀崎 浩昌
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA01E
4F100AA20
4F100AK03B
4F100AK03E
4F100AK07
4F100AK51
4F100AR00A
4F100AR00C
4F100AR00D
4F100AT00E
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100CA18
4F100CA18B
4F100CA23E
4F100DE01
4F100DE01B
4F100EJ65
4F100EJ65E
4F100GB07
4F100HB31
4F100HB31C
4F100JK06
4F100JK14D
4F100JL10D
4F100JL11
4F100JL11E
4F100JL14E
4F100JN01
4F100JN01B
4F100JN01E
4F100YY00D
(57)【要約】
【課題】製造工程数を削減すると共に、十分な隠蔽性を有する化粧シートを提供する。
【解決手段】化粧シート10は、透明オレフィンシートから構成される透明原反20と、透明原反20の一方の面に順に形成された印刷絵柄層50及び着色層40と、透明原反20の他方の面に形成された表面保護層60と、を有し、透明原反20には、ナノサイズの添加剤としての分散剤が添加され、透明原反20の両面のいずれにも、他のフィルムからなるラミネート層を有しておらず、針葉樹合板上にあるときと広葉樹合板上にあるときとの色差が2.0以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明オレフィンシートから構成される透明原反と、
当該透明原反の一方の面に順に形成された印刷絵柄層及び着色層と、
前記透明原反の他方の面に形成された表面保護層と、を有し、
前記透明原反には、ナノサイズの添加剤としての分散剤が添加され、前記透明原反の両面のいずれにも、他のフィルムからなるラミネート層を有しない化粧シートであって、
針葉樹合板上にあるときと広葉樹合板上にあるときとの色差が2.0以下であることを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記表面保護層とは逆側の面の算術平均粗さRaが0.4μm以上1.2μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記透明原反は、透明スキン層、透明コア層、透明スキン層の順に積層された2種3層であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記透明スキン層には、無機フィラーが添加されていることを特徴とする請求項3に記載の化粧シート。
【請求項5】
前記表面保護層側の表面には、前記印刷絵柄層の絵柄と同調するエンボス部が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の化粧シート。
【請求項6】
前記表面保護層とは逆の面側に、プライマー層が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の化粧シート。
【請求項7】
前記表面保護層とは逆の面側に、粘着剤層と剥離紙とがこの順に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の化粧シートを用いた化粧タックシート。
【請求項8】
前記表面保護層とは逆の面側に、基板が接着されていることを特徴とする請求項6に記載の化粧シートを用いた化粧板。
【請求項9】
化粧シートの製造方法であって、
透明のポリオレフィン系の熱可塑性樹脂にナノサイズの添加剤としての分散剤を添加して押出し成形した透明原反を製造する第1の工程と、
前記第1の工程で製造した前記透明原反の一方の面側に、印刷絵柄層及び着色層をこの順に形成する第2の工程と、
前記透明原反の他方の面側に、表面保護層を形成する第3の工程と、を有し、
インラインで製造し、且つ針葉樹合板上にあるときと広葉樹合板上にあるときとの色差が2.0以下となるように形成することを特徴とする化粧シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シート、化粧タックシート、化粧板及び化粧シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧シートは、燃焼時のガスの問題から近年ではオレフィン系材料のものが主に使用されている(特許文献1~3参照)。
表面の摩耗から絵柄を守るために、化粧シートを複層にし、着色オレフィンシート上に印刷したものの上に透明のオレフィンシートを貼り合わせたものが広く使われている(特許文献2の段落[0034]及び
図1参照、特許文献3の段落[0059]及び
図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-110929号公報
【特許文献2】特開2015-199313号公報
【特許文献3】特開2016-101663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の化粧シートの製造には、印刷工程とラミネートの工程が必要となるという問題がある。この問題を解消する方法として、化粧シートを、透明オレフィンシートの裏面に印刷した単層フィルムとすることで、ラミネート工程を省き、印刷から表面保護層を付与するまでの製造工程数を減少する方法が考えられる。しかしながら、単層フィルムとなると、化粧シートの隠蔽性が課題となる。つまり、化粧シートを貼り合わせる化粧材基材の表面の色彩は、必ずしも所望の意匠に適合したものであるとは限らず、また、化粧材基材の表面には色ムラ、節、割れ目等の欠陥や継ぎ目などを有する場合等もある。そのため、これらが化粧シートの絵柄を透かして表面から透けて見えることがないように、十分に隠蔽する必要がある。
【0005】
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、製造工程数を削減すると共に、十分な隠蔽性を有する化粧シート、化粧タックシート、化粧材及び化粧シートの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る化粧シートは、透明オレフィンシートから構成される透明原反と、透明原反の一方の面に順に形成された印刷絵柄層及び着色層と、透明原反の他方の面に形成された表面保護層と、を有し、透明原反には、ナノサイズの添加剤としての分散剤が添加され、透明原反の両面のいずれにも、他のフィルムからなるラミネート層を有しない化粧シートであって、針葉樹合板上にあるときと広葉樹合板上にあるときとの色差が2.0以下であることを特徴としている。
また、本発明の他の態様に係る化粧タックシートは、上記態様の化粧シートの、表面保護層とは逆の面側に、粘着剤層と剥離紙とがこの順に形成されていることを特徴としている。
また、本発明の他の態様に係る化粧板は、上記態様の化粧シートの、表面保護層とは逆の面側に、基板が接着されていることを特徴としている。
さらに、本発明の他の態様に係る化粧シートの製造方法は、透明のポリオレフィン系の熱可塑性樹脂にナノサイズの添加剤としての分散剤を添加して押出し成形した透明原反を製造する第1の工程と、第1の工程で製造した透明原反の一方の面側に、印刷絵柄層及び着色層をこの順に形成する第2の工程と、透明原反の他方の面側に、表面保護層を形成する第3の工程と、を有し、インラインで製造し、且つ針葉樹合板上にあるときと広葉樹合板上にあるときとの色差が2.0以下となるように形成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、製造工程数を削減することができると共に、隠蔽性を有する化粧シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態1に係る化粧シートの一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】実施形態2に係る化粧シートの一例を模式的に示す断面図である。
【
図3】実施形態3に係る化粧シートの一例を模式的に示す断面図である。
【
図4】実施形態4に係る化粧シートの一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態1)
次に、本発明の一実施形態(以下、「実施形態1」という。)について、以下に図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
図1は、実施形態1に係る化粧シートを模式的に示す断面図である。
図1中、10は、化粧シートであり、図示しないが、例えば室内に使用され、建具(室内ドア、玄関収納)・造作材(見切り、廻り縁、巾木、窓枠、ドア枠)などの表面に貼られ、家や部屋毎に建具・造作材の柄を合わせたりして使用される。
化粧シート10は、次の各層を含み、各層が(1)から順に設けられる。
なお、次の(1)~(5)については後述する。
(1)プライマー層30
(2)着色層40
(3)印刷絵柄層50
(4)透明原反20
(5)表面保護層60
このような構成を有する化粧シート10は、針葉樹MDF(Medium Density Fiberboard)(針葉樹合板)上にあるときと広葉樹MDF(広葉樹合板)上にあるときとの色差ΔEが、ΔE≦2.0を満足する。また、化粧シート10は、表面保護層60とは逆側の面の線粗さ(算術平均粗さ)Raが、Ra=0.4μm以上1.2μm以下を満足する。なお、ここでいう色差ΔEとは、ΔE*
ab=〔(ΔL*)
2+(Δa*)
2+(Δb*)
2〕
1/2 という式で表される値である。
【0011】
なお、化粧シート10の各層は、上記した(1)~(5)に限定されず、例えば、
図1に示すように、プライマー層30の側に、(6)粘着剤層70と、(7)剥離紙80とを追加し、化粧タックシート11としても良い。また、化粧シート10は、表面保護層60の表面側に、印刷絵柄層50の絵柄と同調させたエンボス部90を形成しても良いし、図示しないが、プライマー層30の着色層40とは逆側の面に基板を接着し、化粧板としても良い。
また、上記「(1)プライマー層30」を省略しても良い。すなわち、上記「(2)着色層40」にプライマー層としての機能があれば、プライマー層30を省略可能である。
また、
図2に示すように、印刷絵柄層50と透明原反20との間に、透明原反20の印刷適性や、印刷絵柄層50との密着性を高めることを目的としてシーラー層100を設けてもよい。
【0012】
(化粧シート10の主な特徴)
実施形態1に係る化粧シート10の主な特徴は、次の通りである。
(1)化粧シート10は、透明オレフィンシートから構成される単層フィルムである透明原反20の裏面側に、絵柄を印刷してなる印刷絵柄層50、着色層40、及びプライマー層30が、透明原反20側から順に形成され、透明原反20の表面側に、表面保護層60が形成され、透明原反20の表面側及び裏面側のいずれにも、他のフィルムからなるラミネート層を有しない化粧シートである。透明原反20は、透明スキン層21、透明コア層22、透明スキン層21の順に、2種3層の構成となるように、透明のポリプロピレン系の熱可塑性樹脂を用いて押出し成形により製造されたものであり、透明スキン層21には、ナノサイズの添加剤としての分散剤が添加されている。
【0013】
実施形態1に係る化粧シート10は、製造時に、他のシートのラミネート工程がないため、製造工程数を削減することができると共に、印刷から表面保護層60を付与するまでの製造工程を1工程のインラインで行うことができる。
また、実施形態1に係る化粧シート10は、必要に応じて、表面保護層60にグロス/マットコートをすることで、絵柄と同調させることもできる。
さらに、従来の化粧シートは複層であるために、シートを薄膜化するにも成膜上の限界があり、また、シートの硬さが得られないという問題があったが、実施形態1に係る化粧シート10は、単層であるため、薄膜化が容易であり、さらにナノサイズの添加剤を使用することで、薄膜でもシートを硬くすることができる。
【0014】
(2)実施形態1に係る化粧シート10は、ナノサイズの添加剤としての分散剤に加え、無機フィラーが添加されている。
そのため、一層の薄膜化と共に、耐傷付き性能を向上できる。
(3)実施形態1に係る化粧シート10は、針葉樹MDF上にあるときと広葉樹MDF上にあるときとの色差ΔEが、ΔE≦2.0を満足するように形成されている。
ここで、針葉樹MDF及び広葉樹MDFは、化粧シート10の基材として広く用いられている。また、針葉樹MDFは比較的淡色であり、広葉樹MDFは比較的濃色である。したがって、化粧シート10は、針葉樹MDF上にあるときと広葉樹MDF上にあるときとの色差ΔEがΔE≦2.0である。つまり、化粧シート10の、針葉樹MDF上にあるときと広葉樹MDF上にあるときとの色差が比較的小さければ、比較的淡色な針葉樹MDFと比較的濃色である広葉樹MDFとのそれぞれに対して隠蔽性を十分に発揮できていることになる。すなわち、化粧シート10を針葉樹MDF又は広葉樹MDFからなる基材に接着して用いるという、化粧シート10の一般的な利用環境において、隠蔽性を発揮することができ、また、比較的淡色や能色のMDFであっても隠蔽性を発揮することができ、より多くの利用環境において隠蔽性を発揮することができる。
化粧シート10が、針葉樹MDF上にあるときと広葉樹MDF上にあるときとの色差ΔEがΔE≦2.0を満足するようにする方法として、着色層40の塗布量を増加させ、より厚みを持たせる方法、着色層40に添加される、酸化チタン等無機フィラーの添加量を増加させ、着色層40の色を濃くする方法、また、着色層40に限らず、印刷絵柄層50の透明原反20とは逆側に設けられる、プライマー層30等の他の層に顔料等を添加して着色する方法、さらには、印刷絵柄層50の色を濃くする方法等が考えられる。
(4)実施形態1に係る化粧シート10は、表面保護層60とは逆側の面の線粗さRa、すなわち、プライマー層30の着色層40とは逆側の面の線粗さRaが、Ra=0.4μm以上1.2μm以下を満足するようにしている。つまり、化粧シート10の基材と接着する側の面に、ある程度の粗さを設けたため、投錨効果によって、基材との密着性を向上させることができる。
ここで、化粧シート10に隠蔽性を持たせるために、上述のように、着色層40をより厚くしたり、着色層40への添加量を増量したりすると、隠蔽性を持たせることができる一方で、基材との密着性の低下が生じる。実施形態1に係る化粧シート10では、針葉樹MDF上にあるときと広葉樹MDF上にあるときとの色差ΔEの範囲を規定することで隠蔽性を向上させると共に、化粧シート10の表面保護層60とは逆側の面(
図1の場合には、プライマー層30)の線粗さを規定することで、基材との密着性を向上させている。そのため、密着性の低下を伴うことなく隠蔽性を向上させることができる。
線粗さRaが、Ra=0.4μm以上1.2μm以下を満足するようにする方法として、化粧シート10の、表面保護層60とは逆側の面を構成する層、例えば
図1の場合にはプライマー層30に添加するシリカの粒径を調整すること、シリカの添加量を調整すること、また、透明原反の製造時に表面保護層とは逆の面の粗さを調整すること等が考えられる。
(5)実施形態1に係る化粧シート10は、印刷絵柄層50の絵柄と同調させたエンボス部90が形成されている。
ここで、化粧シートが複層である場合、印刷絵柄層50の付与と、ラミネートフィルム表面の表面保護層60との同調表現が困難である。これに対し、実施形態1に係る化粧シート10は、透明オレフィンシートである透明原反20の表裏面側に、インラインで絵柄印刷とエンボス部90とを付与することで、容易に同調させることができる。
【0015】
(6)実施形態1に係る化粧シート10によれば、第一に、枠材を単色にしておくと、ドア部がどのような柄であっても事前に対応することが可能となるため、ドア部の柄を後で決めることが可能になったり、老朽化してドア部の柄を変更する際にも枠材を壊して取り変えなくてもドア部だけの変更で対応することが可能だったりもする。もちろん、ドア部自体も単色にしておくこともできる。また、実施形態1に係る化粧シート10によれば、アパートなどでも全ての部屋を単色で統一することでロットを増やして生産性を上げることや単価を下げることもしやすくなるため、単色のシートを使うことによるメリットがある。
さらに、実施形態1に係る化粧シート10は、白で仕上げた後に木目調にしたくなった場合であっても、化粧シート10は、薄くても硬いことから、後で木目調に変えることも可能である。
例えば、白で仕上げられた化粧板の表面を、後で木目調にしたくなった場合には、実施形態1に係る化粧タックシート11を上に貼り合わせることで、木目調に変えることも可能である。
【0016】
(7)実施形態1に係る化粧タックシート11は、プライマー層30の側に、粘着剤層70と、剥離紙80とを有することから、容易に且つ迅速に接着できる。
【0017】
(8)実施形態1に係る化粧板は、プライマー層30の側に、基板が接着されていることから、化粧板として容易に且つ迅速に使用できる。
(9)実施形態1に係る化粧シート10の製造方法を用いることで、高機能な化粧シート10を簡便に且つ迅速に製造できる。
【0018】
(各層の構成)
(透明原反20)
透明原反20は、化粧シート10の支持体となるものであって、透明オレフィンシートからなる。
透明原反20は、透明ポリプロピレンの単層、もしくは
図1に示すように、透明スキン層21、透明のポリプロピレン製の透明コア層22、透明スキン層21の順に2種3層で製造している。
透明スキン層21は、透明のポリプロピレン系の熱可塑性樹脂に、ナノサイズの添加剤としての分散剤を添加して形成している。また、透明スキン層21には、ナノサイズの添加剤としての分散剤に加え、無機フィラーが添加されている。
【0019】
(プライマー層30)
プライマー層30は、
図1に示すように、着色層40の、印刷絵柄層50とは逆側に位置し、主として接着性改善を目的で設けられる。
なお、プライマー層30の機能には、接着性改善のほか、表面処理後の表面安定化、金属表面の防食、粘着性の付与、接着剤の劣化防止等も含まれる。
プライマー層30は、例えばグラビア印刷法により固形分量が1g/m
2となるようにウレタン系樹脂を塗工して形成している。
プライマー層30には、例えばウレタン系、アクリル系、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系、ポリエステル系等を採用することができる。特に、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの配合による2液硬化型ウレタン系のプライマー剤等が好ましい。また、これらの材料にシリカや硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の無機質粉末を添加してプライマー層30を形成すると、投錨効果による接着力の向上に有効である。
線粗さRaが、Ra=0.4μm以上1.2μm以下を満足するように形成される。プライマー層30の表面にある程度の粗さを設けたため、投錨効果によって、基材との密着性が向上する。
【0020】
(着色層40)
着色層40は、
図1に示すように、印刷絵柄層50の透明原反20とは逆側の面に位置し、印刷方法を用いて形成され、主として隠蔽性を付与する目的で設けられる隠蔽層である。着色層40は、例えばグラビア印刷法により、例えばウレタン樹脂で酸化チタンの白顔料を混ぜた2液ウレタン系樹脂で印刷したものである。着色層40には、40%以上の無機フィラーが添加されている。なお、着色層40は、ベタ層でも良い。
【0021】
(印刷絵柄層50)
印刷絵柄層50は、
図1に示すように、透明原反20の表面保護層60とは逆側の面に位置し、印刷方法を用いて形成され、化粧シート10に意匠性を付与する目的で設けられるものである。
印刷絵柄層50は、例えばグラビア印刷法によりウレタン系樹脂で絵柄を印刷したものである。
印刷方法としては、例えばグラビア印刷法を例示したが、これに限定されず、例えばオフセット印刷方法、凸版印刷方法、フレキソ印刷方法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、静電印刷法等の各種の印刷方法を適用することができる。
【0022】
印刷絵柄層50の模様の種類は、使用目的や使用者の嗜好等により任意であり、例えば木目柄、石目柄、抽象柄等が一般的である。模様の種類は、上記例示した種類に限定されず、例えば全面ベタ印刷等であっても良い。
なお、印刷インキとしては、ウレタン系樹脂を例示したが、これに限定されず、例えば有機又は無機の染料又は顔料等の着色剤等でも良いし、又、充填剤、粘着付与剤、可塑剤、安定剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、界面活性剤、乾燥剤等の適宜の添加剤や、溶剤又は希釈剤等と共に、合成樹脂等からなる結着剤中に分散してなるものである。
【0023】
(表面保護層60)
表面保護層60は、トップコートともいい、
図1に示すように、透明原反20の印刷絵柄層50とは逆側に位置し、印刷方法を用いて形成され、耐磨耗性や耐水性等の表面物性を付与する目的で設けられるものである。
表面保護層60は、
図1に示すように、透明原反20の表面に塗布する下塗り層61と、下塗り層61の表面に塗布する、上塗り層62とから構成され、上塗り層62は下塗り層61よりも艶が低い。
【0024】
下塗り層61は、アクリル系二液硬化型樹脂(DICグラフィックス株式会社製アクリルウレタン樹脂)を6μmの厚さになるように塗布する。
上塗り層62は、同じ樹脂で艶を低くしたものを塗布し、印刷絵柄層50と同調した絵柄で印刷している。
すなわち、表面保護層60にグロス/マットコートをすることで、絵柄と同調させることもできる。
【0025】
また、上塗り層62の表面には、印刷絵柄層50の絵柄と同調させたエンボス部90を形成しても良い。
ここで、エンボス部90というと、それなりの高低差のイメージを持つが、下塗り61と絵柄と同調した上塗り層62との高低差は、実際には数μmオーダーの高低差しかなく、表面保護層60にグロス/マットコートをすることで、絵柄と同調させる、という表現と同様の意味である。
【0026】
さらに、表面保護層60には、抗ウイルス処理を施している。
抗ウイルス処理としては、表面保護層60に抗ウイルス剤を添加する。抗ウイルス剤としては、例えば、銀イオンを担持させたタイショーテクノス株式会社製の銀系無機添加剤(ビオサイドTB-B100)を使用している。
ここで、表面保護層60への抗ウイルス剤の添加は、表面保護層60が下塗り層61及び上塗り層62から構成されていることから、下塗り層61及び上塗り層62の両方に添加しても良いし、或いは表面保護層60の表面側に位置する上塗り層62だけに添付しても良い。
なお、表面保護層60に抗ウイルス剤を添加したが、これに限定されず、表面保護層60の表面側、少なくとも上塗り層62の表面に、抗ウイルス剤を塗布しても良い。
【0027】
(透明コア層22)
透明原反20は、図面上、透明コア層22、透明スキン層21が別層を形成する様に表現しているが、実際は透明コア層22、透明スキン層21は連続的であり、界面は存在しない構成である。
透明コア層22には、例えば透明ポリプロピレン樹脂に、耐候剤をブレンドしたものを使用する。
透明原反20を、透明オレフィンシート(透明スキン層21/透明コア層22/透明スキン層21)から構成したが、これに限定されず、
図3に示すように、例えば透明オレフィンシートから構成される単層フィルム(透明層)から構成しても良い。このとき、単層フィルム(透明層)が透明原反20に相当する。
上記単層フィルム(透明層)の「透明層」は、後述する透明スキン層21と同様に、ナノサイズの添加剤として分散剤が添加されている。また、「透明層」には、後述する透明コア層22と同様に、耐候剤もブレンドしている。
【0028】
(透明スキン層21)
透明スキン層21には、ナノサイズの添加剤としての分散剤に加え、無機フィラーを添加し、透明ポリプロピレン樹脂を使用する。
透明スキン層21:透明コア層22:透明スキン層21が、0.5:9:0.5の厚み比率になるように同時押出し、総厚50μmで透明原反20を作製する。
【0029】
(透明コア層22の樹脂材料)
透明コア層22を構成する樹脂材料としては、例えば熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、従来の化粧シート10で基材層等として用いられていた熱可塑性樹脂と同様の材料を用いることができる。
【0030】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート-イソフタレート共重合体、1,4-シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体金属中和物(アイオノマー)等のオレフィン系共重合体樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系樹脂、6-ナイロン、6,6-ナイロン、6,10-ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のビニル系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン-テトラフロロエチレン共重合体、エチレン-パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素系樹脂等、或いはそれらの2種以上の混合物、共重合体、複合体、積層体等を使用できる。
【0031】
なかでも、近年の環境問題に対する社会的な関心の高まりに鑑みれば、熱可塑性樹脂としてポリ塩化ビニル樹脂等の塩素(ハロゲン)を含有する熱可塑性樹脂を使用することは好ましくなく、非ハロゲン系の熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。
特に、各種物性や加工性、汎用性、経済性等の面からは、非ハロゲン系の熱可塑性樹脂としてポリエステル系樹脂(非晶質又は二軸延伸)又はポリオレフィン系樹脂、特にポリオレフィン系樹脂を使用することが最も好ましい。例えば、ポリオレフィン系樹脂として、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%以上の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂を30質量%以上100質量%以下含むポリプロピレン樹脂を使用することが好ましい。
透明コア層22には、必要に応じて、例えば、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上が添加されていても良い。
【0032】
(透明スキン層21の樹脂材料)
透明スキン層21を構成する樹脂材料としては、例えば熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、透明コア層22と同様の樹脂材料を用いることができる。
【0033】
(ナノサイズの添加剤等(造核剤))
透明スキン層21には、ナノサイズの添加剤としての分散剤に加え、無機フィラーを含み、以下、「ナノサイズの造核剤」ともいう。
ナノサイズの造核剤は、単層膜の外膜を具備するベシクルに内包された、造核剤ベシクルの形でポリプロピレン樹脂に添加されて使用されることが好ましい。
また、実施形態1に係る化粧シート10は、透明スキン層21を構成する樹脂中の造核剤は、当該造核剤の一部を露出させた状態で、ベシクルに内包されていても良い。透明スキン層21は造核剤を含むため結晶化度を向上でき、化粧シート10の耐擦傷性(耐傷性)を向上することができる。
【0034】
(ナノサイズの造核剤の粒径)
ナノサイズの造核剤は、平均粒径が可視光の波長領域の1/2以下であることが好ましく、具体的には、可視光の波長領域が400nm以上750nm以下であるので、平均粒径が375nm以下であることが好ましい。
ナノサイズの造核剤は、粒径が極めて小さいため、単位体積当たりに存在する造核剤の数と表面積とが粒子直径の三乗に反比例して増加する。その結果、各造核剤粒子間の距離が近くなるため、樹脂に添加された一の造核剤粒子の表面から結晶成長が生じた際に、結晶が成長している端部が直ちに、一の造核剤粒子に隣接する他の造核剤粒子の表面から成長している結晶の端部と接触し、互いの結晶の端部が成長を阻害して各結晶の成長が止まる。そのため、結晶性樹脂の結晶部における、球晶の平均粒径を小さく、例えば、球晶サイズを小さくして1μm以下とすることができる。
【0035】
この結果、結晶化度の高い高硬度の樹脂フィルムとすることができると共に、曲げ加工時に生じる球晶間の応力集中が効率的に分散されるため、曲げ加工時の割れや白化を抑制した樹脂フィルムを実現することができる。
造核剤を単純添加した場合、樹脂中の造核剤が2次凝集することで粒径が大きくなる。
一方、造核剤ベシクルを添加する場合、樹脂中における分散性が向上するため、造核剤を単純添加した場合と比較して添加した造核剤量に対しする結晶核の数が大幅に増加する。
このため、樹脂の結晶部における球晶の平均粒径が小さくなり、曲げ加工時の割れや白化の発生を抑制することができる。よって、造核剤ベシクルを添加することにより結晶化度をより高めることができ、弾性率向上と加工性をより両立可能となる。
【0036】
透明スキン層21は、例えば、主成分としてのポリプロピレン樹脂、100質量部に対して好ましくは0.05質量部以上0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上0.3質量部以下の範囲内で造核剤が添加された樹脂材料により形成される。
造核剤ベシクルを用いる場合、樹脂材料への造核剤の添加量は、造核剤ベシクル中の造核剤に換算した添加量である。
造核剤の添加量が0.05質量部未満の場合、ポリプロピレンの結晶化度が十分に向上せず、透明スキン層21の耐傷性が十分に向上しないおそれがある。
また、造核剤の添加量が0.5質量部を超える場合、結晶核が過多のためポリプロピレンの球晶成長が逆に阻害され、結果的にポリプロピレンの結晶化度が十分に向上せず、透明スキン層21の耐傷性が十分に向上しないおそれがある。
ここで、「主成分」とは、透明スキン層21を構成する樹脂材料の50質量%以上を占める樹脂材料をいう。
【0037】
(造核剤をナノ化する手法)
また、造核剤をナノ化する手法としては、例えば、造核剤に対して主に機械的な粉砕を行ってナノサイズの粒子を得る固相法、造核剤や造核剤を溶解させた溶液中でナノサイズの粒子の合成や結晶化を行う液相法、造核剤や造核剤からなるガス・蒸気からナノサイズの粒子の合成や結晶化を行う気相法等の方法を適宜用いることができる。
固相法としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、ロッドミル、コロイドミル、コニカルミル、ディスクミル、ハンマーミル、ジェットミル等が挙げられる。
また、液相法としては、例えば、晶析法、共沈法、ゾルゲル法、液相還元法、水熱合成法等が挙げられる。更に、気相法としては、例えば、電気炉法、化学炎法、レーザー法、熱プラズマ法等が挙げられる。
【0038】
(超臨界逆相蒸発法)
造核剤をナノ化する手法としては、超臨界逆相蒸発法が好ましい。超臨界逆相蒸発法とは、超臨界状態又は臨界点以上の温度条件下又は圧力条件下の二酸化炭素を用いて対象物質を内包したカプセル(ナノサイズのベシクル)を作製する方法である。
超臨界状態の二酸化炭素とは、臨界温度(30.98℃)及び臨界圧力(7.3773±0.0030MPa)以上の超臨界状態にある二酸化炭素を意味し、臨界点以上の温度条件下又は圧力条件下の二酸化炭素とは、温度だけ又は圧力だけが臨界条件を越えた条件下の二酸化炭素を意味する。
また、超臨界逆相蒸発法による具体的なナノ化処理としては、まず超臨界二酸化炭素と外膜形成物質としてのリン脂質と内包物質としての造核剤との混合流体中に水相を注入し、攪拌することによって、超臨界二酸化炭素と水相のエマルジョンを生成させる。
【0039】
つぎに、減圧することで、二酸化炭素が膨張・蒸発して転相が生じ、リン脂質が造核剤粒子の表面を単層膜で覆ったナノカプセル(ナノベシクル)を生成させる。
この超臨界逆相蒸発法を用いることにより、造核剤粒子表面で外膜が多重膜となる従来のカプセル化方法とは異なり、容易に単層膜のカプセルを生成することができるので、より小径なカプセルを調製することができる。
なお、造核剤ベシクルは、例えば、Bangham法、エクストルージョン法、水和法、界面活性剤透析法、逆相蒸発法、凍結融解法、超臨界逆相蒸発法などによって調製される。造核剤ベシクルは、その中でも特に超臨界逆相蒸発法を用いて調整されることが好ましい。
【0040】
(造核剤ベシクルを構成する外膜)
造核剤ベシクルを構成する外膜は、例えば単層膜から構成される。また、その外膜は、例えば、リン脂質等の生体脂質を含む物質から構成される。
本明細書では、外膜がリン脂質のような生体脂質を含む物質から構成される造核剤ベシクルを、造核剤リポソームと称する。
外膜を構成するリン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオピン、黄卵レシチン、水添黄卵レシチン、大豆レシチン、水添大豆レシチン等のグリセロリン脂質、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール等のスフィンゴリン脂質が挙げられる。
【0041】
(外膜となるその他の物質)
ベシクルの外膜となるその他の物質としては、例えば、ノニオン系界面活性剤や、これとコレステロール類もしくはトリアシルグリセロールの混合物などの分散剤が挙げられる。
このうち、ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリグリセリンエーテル、ジアルキルグリセリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリブタジエン-ポリオキシエチレン共重合体、ポリブタジエン-ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリスチレン-ポリアクリル酸共重合体、ポリエチレンオキシド-ポリエチルエチレン共重合体、ポリオキシエチレン-ポリカプロラクタム共重合体等の1種又は2種以上を使用することができる。コレステロール類としては、例えば、コレステロール、α-コレスタノール、β-コレスタノール、コレスタン、デスモステロール(5、24-コレスタジエン-3β-オール)、コール酸ナトリウム又はコレカルシフェロール等を使用することができる。
また、リポソームの外膜は、リン脂質と分散剤との混合物から形成するようにしても良い。
【0042】
実施形態1に係る化粧シート10においては、造核剤ベシクルを、リン脂質からなる外膜を具備したラジカル捕捉剤リポソームとすることが好ましく、外膜をリン脂質から構成することによって、化粧シート10の主成分である樹脂材料とベシクルとの相溶性を良好なものとすることができる。
造核剤としては、樹脂が結晶化する際に結晶化の起点となる物質であれば特に限定するものではない。造核剤としては、例えば、リン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩、ベンジリデンソルビトール、キナクリドン、シアニンブルー及びタルク等が挙げられる。特に、ナノ化処理の効果を最大限に得るべく、非溶融型で良好な透明性が期待できるリン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩を用いることが好ましいが、ナノ化処理によって材料自体の透明化が可能な場合には、有色のキナクリドン、シアニンブルー、タルクなども用いることができる。また、非溶融型の造核剤に対して、溶融型のベンジリデンソルビトールを適宜混合して用いるようにしても良い。
【0043】
(透明スキン層21の特徴)
上述のように、実施形態1に係る化粧シート10は、透明スキン層21が樹脂材料と造核剤とを含有する点に特徴を有している。
また、本実施形態1に係る化粧シート10は、透明スキン層21を形成する際に、樹脂材料に対してベシクルに内包された造核剤を添加して樹脂材料を結晶化させる点に特徴を有している。造核剤をベシクルに内包させた状態で樹脂組成物に添加することで、樹脂材料中、すなわち透明スキン層21中への造核剤の分散性を飛躍的に向上するという効果が奏する。一方、ベシクルに内包された造核剤を、完成された化粧シート10の状態における物の構造や特性にて直接特定することが、状況により困難な場合も想定され、非実際的であるといえる。その理由は次の通りである。
【0044】
ベシクルの状態で添加された造核剤は、高い分散性を有して分散された状態になっており、作製された化粧シート10の前駆体である積層体の状態においても透明スキン層21に高分散されている。
しかしながら、化粧シート10の作製工程において、通常、積層体は圧縮処理や硬化処理などの種々の処理が施され、このような処理によって造核剤を内包するベシクルの外膜が破砕したり、化学反応が生じたりする場合がある。
このため、化粧シート10の処理工程によって、完成後の化粧シート10における造核剤の外膜が破砕したり、化学反応の発生状態がばらつき、造核剤が外膜で包含(包皮)されていない可能性も高い。
【0045】
そして、造核剤が外膜で包含されていない場合、造核剤の物性自体を数値範囲で特定することが困難であり、また破砕された外膜の構成材料が、ベシクルの外膜なのか造核剤とは別に添加された材料なのか判定が困難な場合も想定される。
このように、本開示は、従来に比して、化粧シート10に対し、造核剤が高分散で配合されている点で相違があるものの、造核剤を内包するベシクルの状態で添加されたためなのかどうかが、化粧シート10の状態において、その構造や特性を測定に基づき解析した数値範囲で特定することが非実際的である場合も想定される。
(シーラー層100)
シーラー層100は、透明原反20と印刷絵柄層50との密着性を向上させるために設けられる。シーラー層100の材料は、例えばウレタン樹脂、アクリル樹脂、塩酢ビ樹脂等である。なお、シーラー層100の材料は、印刷絵柄層50で使用されるインキから染料又は顔料等の着色剤等を抜いた透明インキでも良い。また、シーラー層100には、例えば充填剤、粘着付与剤、可塑剤、安定剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、界面活性剤、乾燥剤等の適宜の添加剤や、溶剤又は希釈溶剤と共に、合成樹脂からなる結着剤中に分散していてもよい。化粧シート10は、シーラー層100を有することから、透明原反20の印刷適性や、印刷絵柄層50との密着性を高めることができる。
なお、シーラー層100は、必ずしも設けなくともよい。
(化粧シート10の色差ΔE)
化粧シート10は、針葉樹MDF上にあるときと、広葉樹MDF上にあるときとの色差ΔEが、ΔE≦2.0を満足する。
なお、色差ΔEを測定する際には、針葉樹MDF(淡色)の上に載置して色測定を行った化粧シートを、広葉樹MDF(濃色)の上での色測定を行う化粧シートとして用いる。つまり、一つの化粧シートを、針葉樹MDF(淡色)上に載置した場合と広葉樹MDF(濃色)上に載置した場合との色差ΔEを求め、さらに、化粧シートの同一箇所における色測定を行う。
化粧シート10を構成する各層、特に着色層40は、化粧シート10が針葉樹MDF上にあるときと広葉樹MDF上にあるときとの色差ΔEがΔE≦2.0を満足するように、選定される。
(化粧シート10の線粗さRa)
化粧シート10は、表面保護層60とは逆側の面の線粗さ(算術平均粗さ)Raが、Ra=0.4μm以上1.2μm以下を満足する。例えば
図1の場合には、プライマー層30の印刷絵柄層50とは逆側の面の線粗さRaが、Ra=0.4μm以上1.2μm以下を満足する。プライマー層30を持たない化粧シート10の場合には、化粧シート10の表面保護層60とは逆側の最表面となる着色層40の表面の線粗さRaがRa=0.4μm以上1.2μm以下を満足する。
【0046】
(化粧シート10の製造方法)
化粧シート10は、上記した構成を有するものであり、その製造方法は、次の第1の工程から第3の工程を有し、インラインで製造するものである。
ここで、「インライン」は、フィルム同士をラミネートするラミネート工程が無いため、通常、複数の工程となる印刷を、一つのライン、すなわちワンラインで加工できることを意味する。すなわち、印刷から表面保護層60を付与するまでの製造工程を1工程のインラインで行うことができる。
【0047】
(1)第1の工程
第1の工程は、透明のポリプロピレン系の熱可塑性樹脂にナノサイズの添加剤としての分散剤を添加して押出し成形した透明原反20を製造する工程である。
【0048】
(2)第2の工程
第2の工程は、第1の工程で製造した透明原反20の一方の面(裏面)側に、印刷絵柄層50と、着色層40と、プライマー層30とを順に形成する工程である。
なお、第2の工程で形成する層は、印刷絵柄層50、着色層40、プライマー層30の3層に限らず、例えば少なくとも印刷絵柄層50を含む1層だけでも良いし、又、印刷絵柄層50に加え、着色層40又はプライマー層30の1層を加えた計2層でも良いし、或いは4層以上でも良い。
【0049】
(3)第3の工程
第3の工程は、第2の工程の後、又は第2の工程に先立ち、前記第1の工程で製造した透明原反20の他方の面(表面)側に、表面保護層60を形成する工程である。
上記工程の順番は、第1の工程、第2の工程、第3の工程の順番と、第1の工程、第3の工程、第2の工程の順番との二通りである。
【0050】
(化粧タックシート11)
化粧タックシート11は、
図1に示すように、上記した構成を有する化粧シート10であって、そのプライマー層30の側に、粘着剤層70と、剥離紙80とを付けたものである。
【0051】
(化粧板)
化粧板は、図示しないが、上記した構成を有する化粧シート10のプライマー層30の側に接着剤などを使用し、基板を接着したものである。また、化粧板は、
図1の化粧タックシート11の剥離紙80を剥がし、粘着剤層70に基板を直接接着することでも構成できる。
ここで、基板は、木材、鋼材、樹脂材等、種類を問わないが、例えば不燃仕様の鋼板又は建設省告示1400号で定められた不燃材料から構成しても良い。
【0052】
(透明原反20の裏面側の層構造の他の実施形態)
透明原反20の裏面側の層構造は、図示しないが、次の態様でも良い。
(a)透明原反20の裏面側に、印刷絵柄層50及び着色層40のみをこの順に形成しても良い。
(b)透明原反20の裏面側に、印刷絵柄層50、着色層40及びプライマー層30のみをこの順に形成しても良い。
【0053】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2に係る化粧シート10について、
図2を用いて説明する。
実施形態2の特徴は、第1に、エンボス部90に関し、当該エンボス部90が表面保護層60から透明原反20まで深く延びている点にある。
すなわち、実施形態1のエンボス部90は、表面保護層60の表面から透明原反20に向かって延び、上塗り層62に到る。これに対し、本実施形態2のエンボス部90は、
図2に示すように、表面保護層60の表面から透明原反20に向かって延び、透明原反20に一部が侵入している。
エンボス部90は、透明原反20の樹脂が硬化する前に形成している。これは、樹脂の硬化後は、硬度が高くなるためである。
エンボス部90は、実施形態1のエンボス部90と比較し、透明原反20まで延びていることから、凹部の輪郭がくっきりと鮮明になり、立体的な意匠感を更に向上できる。
なお、本実施形態2の他の点については、
図1の実施形態1と同一の符号を付し、説明を省略する。
【0054】
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3に係る化粧シートについて、
図3を用いて説明する。
実施形態3の特徴は、透明原反20に関し、当該透明原反20が単層で形成された点にある。
すなわち、
図1の実施形態1に係る化粧シート10では、透明原反20を2種3層から構成している。これに対し、本実施形態3の透明原反20は、
図3に示すように、単層から構成している。
透明原反20は、ナノサイズの添加剤としての分散剤が添加されている点を特徴とする。
透明原反20は、実施形態1の複数層の透明原反20と比較し、単層であるため、薄膜化が容易であり、更にナノサイズの添加剤を使用することで、薄膜でもシートを硬くすることができる。
なお、本実施形態3の他の点については、
図1の実施形態1と同一の符号を付し、説明を省略する。
【0055】
(本実施形態3の化粧シート10の製造方法)
本実施形態3の化粧シート10の製造方法について、以下に説明する。
本実施形態3の製造方法は、先に説明した実施形態1のものと同様に、第1の工程から第3の工程を有し、インラインで製造するものである。
第1の工程は、透明のポリオレフィン系の熱可塑性樹脂にナノサイズの添加剤としての分散剤を添加して押出し成形した透明原反を製造する工程である。第2の工程は、第1の工程で製造した透明原反の裏面側に、印刷絵柄層を形成する工程である。第3の工程は、第2の工程の後、又は第2の工程に先立ち、透明原反の表面側に、表面保護層を形成する工程である。
【0056】
(実施形態4)
次に、本発明の実施形態4に係る化粧シートについて、
図4を用いて説明する。
実施形態4は、実施形態2の1個の特徴点と、実施形態3の1個の特徴点を兼ね備えたものである。
なお、本実施形態4の他の点については、
図1の実施形態1、
図2の実施形態2、
図3の実施形態3と同一の符号を付し、説明を省略する。
【実施例0057】
以下に、本発明に係る化粧シートの実施例1~7、並びに比較例1~2について説明する。
なお、本発明は、下記の実施例1~7に限定されるものではない。
【0058】
(実施例1)
実施例1は、単層シートである化粧シートを下記の材料と手順で作製した。
第一に、透明原反として透明ポリプロピレン樹脂に耐候剤、ナノサイズの添加物としての分散剤等を添加した樹脂を使用して押出し成形を行い、厚みが100μmの透明原反を作成した。
第二に、透明原反の一方の面を裏面側とし、この裏面側に、グラビア印刷によりウレタン系樹脂で絵柄を印刷して印刷絵柄層を形成し、続いて、無機フィラーを添加した2液ウレタン系樹脂により、印刷絵柄層の上に、厚みが約15μmの着色層を形成した。
さらに、着色層の印刷絵柄層とは逆側の面に、シリカを添加したプライマー層を設けた。
第三に、表面保護層として、艶の低いアクリル系二液硬化型樹脂として、DICグラフィックス株式会社製のアクリルウレタン樹脂を6μmの厚さになるように塗布して下塗り層を形成し、その上に同じ樹脂で艶を高くしたものを印刷絵柄層と同調するようにして上塗り層を形成し、化粧シートを得た。
(実施例2)
実施例2は、実施例1の化粧シートにおいて、透明原反の厚みを100μmから70μmに変更したこと以外は、同一である。
(実施例3)
実施例3は、実施例1の化粧シートにおいて、プライマー層を設けずに、着色層としてプライマー機能を有する着色層を形成したこと以外は、同一である。
(実施例4)
実施例4は、実施例1の化粧シートにおいて、プライマー層に、実施例1のプライマー層に添加されるシリカよりも粒径が小さいシリカを添加したこと以外は、同一である。
(実施例5)
実施例5は、実施例1の化粧シートにおいて、着色層に含まれる酸化チタンの量を増量したこと以外は、同一である。
(実施例6)
実施例1の化粧シートにおいて、裏面側の線粗さRaが、Ra=0.25μmがとなるように形成したこと以外は、同一である。
(実施例7)
実施例1の化粧シートにおいて、プライマー層に、実施例1のプライマー層に添加されるシリカよりも粒径が大きいシリカを添加したこと以外は、同一である。
(比較例1)
実施例1の化粧シートにおいて、着色層の厚みを6μmとしたこと以外は、同一である。
(比較例2)
比較例2は、実施例1の化粧シートにおいて、着色層に含まれる酸化チタンの量を減量したこと以外は、同一である。
(評価方法および評価基準)
上述のようにして作製した実施例1~7及び比較例1~2の各化粧シートについて、性能評価を行った。評価方法は、次の通りである。
(1)隠蔽度測定
(2)基材密着性試験
【0059】
(隠蔽度測定)
色彩色差計として、コニカミノルタ株式会社製のCR-400を使用した。
実施例及び比較例の各化粧シートについて、CIE標準光源D65を使用して、針葉樹MDF(淡色)上に置いた場合と広葉樹MDF(濃色)の上に置いた場合の色差ΔEを化粧シート毎に測定した。
このとき、正確な隠蔽性を測定できるように、色差測定は、化粧シート毎に同一個所で行い、また淡色の化粧シートを用いた。濃色の化粧シートを用いて色差測定を行った場合、隠蔽性が高く出る傾向にあるため、これを回避するため淡色の化粧シートを用いて測定した。
(基材密着性)
基材密着性試験は、各化粧シートを基材に接着させた化粧板に対して行った。
具体的には、各化粧シートの裏面(表面保護層とは逆側の面)に、水系ウレタン系接着剤を塗布した厚さ3mmのMDF板を貼り合わせた。続いて、30℃以上50℃以下の温度環境下で、プレス機を用いて圧縮し、化粧板を形成した。
化粧板の、化粧シートが貼付された側の面に1inch幅に切り込みを入れて化粧シートを剥がし、そのときの密着強度を測定した。また、剥がした界面の状態を確認した。
密着強度は、オートグラフAGS-X(株式会社島津製作所製)を使用し、シートと基材は180°となるようにセットをして200mm/minの負荷速度で測定した。
(評価基準)
密着強度は、2.0kgf/inch以上を「○(合格)」とし、1.5kgf/inchより大きく2.0kgf/inch未満であるときを「△」とし、1.5kgf/inch以下であるときを「×(不合格)」とした。
また界面の状態は、目視で確認し、基材材破の状態であるときを合格(○)とし、着色層が凝集破壊して基材側に着色層が残っている場合を不合格(×)とした。なお、基材材破とは、化粧シートが切断した場合、又はシートの層間で剥がれず、木質基材の表層がシート側に取られていることを示す。
そして、隠蔽性を有し(ΔE≦2.0)、基材の密着強度及び界面の状態が共に合格であるとき、総合評価を「◎」、隠蔽性を有し界面の状態が合格であるが密着強度が「△」であるとき、総合評価を「○」、隠蔽性を有するが、密着強度が「△」であり界面の状態が不合格であるときを「△」、隠蔽性を持たないとき、総合評価を「×」とした。
【0060】
(評価結果)
評価シートの評価結果は、次の表1の通りである。
【表1】
【0061】
(実施例1~7並びに比較例1~2)
実施例1~5の化粧シートは、色差ΔEが2.0以下であり、表面粗さ(線粗さ)Raが0.4μm以上1.2μm以下の範囲内であった。これら実施例1~5の化粧シートは、隠蔽性を有することが確認され、また、密着強度はいずれも2.0kgf/inch以上であり、界面の状態は基材材破の状態であることから、基材密着性を有することが確認できた。
一方、実施例6の化粧シートは、色差ΔEは2.0以下であり隠蔽性を有するが、表面粗さが規定範囲0.4μmよりも小さいため、密着強度は2.0kgf/inchを多少下回り、界面は凝集破壊の状態であった。
また、実施例7の化粧シートは、色差ΔEは2.0以下であり隠蔽性を有するが、表面粗さが規定範囲1.2μmよりも大きいため、密着強度は2.0kgf/inchを多少下回り、界面は基材材破の状態であることが確認された。
これに対し、比較例1、比較例2の化粧シートは、色差ΔEは2.0よりも大きく十分な隠蔽性を持たないが、表面粗さは規定範囲内であるため、十分な密着強度を有し、界面は基材材破の状態であることが確認された。
実施例1及び比較例1から、着色層40の厚みを替えることで、基材密着性はそれほど変化はないが、色差ΔEが変化し、着色層40の厚みが薄い方が隠蔽性が低くなることが確認された。また、実施例1及び実施例6から、表面粗さRaを替えることで、表面強度が変化し、表面粗さRaが規定範囲よりも小さいと、表面強度は小さくなり、界面の状態も凝集破壊となることが確認された。さらに実施例1及び比較例2から、着色層の無機フィラーの含有量を替えることで、色差ΔEが変化し、着色層の無機フィラーの含有量が少ないほうが隠蔽性が低くなることが確認された。